- 1二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:33:34
クリスマス…それは年に一度のイベント、プレゼントや料理などで普段とは違うひと時を楽しむ多くの人々が待ちに待った年に一度の行事。
それはこの学園でも例外ではなく…
「よし、準備はいいな?」
「こっちは大丈夫」
「よく見ろ貴様、服の飾りがズレてるぞ…全く…」
ため息混じりに飾りを直しているのはエアグルーヴ。目の前でそれを直されているのは彼女のトレーナーである。
クリスマスと言う事で彼女はサンタクロースの彼はトナカイをモチーフとした服装に身を包んでいた。
「今日は私が生徒にプレゼントを配る手筈だからな。よろしく頼む……言っておくが気になるからとプレゼントをこっそり持ち出すなんて考えるなよ?貴様はこの中身の事を知っているのだからな」
「そこの所は分かってるよ」
生徒会のクリスマスのイベントとして生徒にプレゼントを渡すという企画が考案された。それを主体となって執り行うのがエアグルーヴなのである。
この日の為にトレーナーに手伝って貰いつつクリスマスにちなんだお菓子を多く作っており、それらを小包に入れた袋をトレーナーが運び、グルーヴが渡す…という流れになっていた。
「貴様も準備が出来たことだ。そろそろ行くぞ」
そうして部屋を出て広場へ出るとそれを見た多くの生徒が彼女達の方へ駆け寄ってきた。
事前にサンタ姿のグルーヴに話しかければプレゼントを貰えると告知していたため当然ではあるのだが。
「エアグルーヴ先輩!」
「プレゼントお願いします!」
「ちゃんと皆の分はあるから慌てるな。プレゼント…確かに渡したからな」
次々にくる生徒に対し笑顔でプレゼントを渡していくグルーヴ。そんなグルーヴを支える様に袋のプレゼントを取り出して彼女に渡していくトレーナー。
多くの人々に囲まれて尊敬や憧れを一手に受ける彼女の姿を見てそれを誇らしく思うトレーナーであった。 - 2二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:34:09
「これエアグルーヴ先輩が作ったんですか!?」
「ああ、そこにいるトレーナー…今はトナカイの力も借りてな」
「凄いです!流石エアグルーヴ先輩です!」
「ふふっ、そう言われると少し照れるな…」
幼き日の頃、母親がクリスマスに作ってくれたお菓子を褒めた事を思い出すグルーヴ。きっとあの時の母もこんな気持ちだったのだろうと改めて実感するのであった。
「ふぅ…全部配り終えたな…」
「ああ、お陰で午前中には配り終える事ができた。貴様には感謝するぞ」
空になった袋を置き一息つくトレーナー。
(彼ががいなければ配り終えた時には日も沈んでいただろうな)
「今日は———」
そうグルーヴが言いかけたその時である。
「あらグルーヴ、さっきはお疲れ様。そういえば向こうで面白いものをやっているわ良かったら一緒に行かない?」
ふらりとサイレンススズカがやってきてグルーヴに話しかけた。それを見たトレーナーは
「グルーヴお疲れ様、今日はみんなでクリスマス楽しんできな」
「あぁ、そうだな」
「グルーヴのトレーナーさん、ありがとうございます。それじゃ行きましょ?」
「そうだなスズカ…では行ってくるぞ」
そう言ってクリスマスのイベントに繰り出すグルーヴ。それを笑顔で見送ったトレーナーは置いてあった袋を持ち上げる。
「さてと、ここからはトナカイからサンタクロースへ変身の時間だな」
そう呟きながらトレーナー室へと向かったのであった。 - 3二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:34:44
夕方、クリスマスイベントを楽しんだグルーヴは寮の入り口へと戻っていた。
(今年もイベントは大成功だったな。次も今年の様に上手く成功させたいものだ…だが…何だこの感じは…どこか晴れない気分だ…)
しかしグルーヴは満足と同時に何か違和感を感じていた。その違和感の答えを見つけ出せずに歩いていると、後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「やぁグルーヴ、今日はお疲れ様」
「寮長、いえこちらこそご協力ありがとうございます」
栗東寮寮長のフジキセキである。
「いいのいいの、可愛いポニーちゃん達が喜んでる姿を見れるならドンとこいだからね!……そういえば…」
わざとらしく上の方を向き、悪戯をする様な顔でグルーヴに向き直るフジ。
「グルーヴ宛にサンタクロースがやってきてね、キミに渡して欲しいってさ。だからちょっと部屋に置かせてもらったよ」
「私宛に…ですか?」
「そう!ふふっ、素敵なサンタさんもいるものだね…それじゃお疲れ様!」
そう言ってフジは部屋へ戻って行った。
(しかし私にサンタクロース?一体誰だ?)
頭の中で考えが纏まらないまま、自室の前に到着して部屋に入ると先に同室のファインモーションが帰ってきていた。
「あっグルーヴさんおかえり!」
「ああ、今戻ったファイン……でこれが例の奴か」
「そう!丁度寮長さんが来て置いていったの!中身なんだろうね?」
「まあいい…変なものでなければ良いのだが寮長が受け取ったということは安全面には問題ないということか…」
袋のリボンを取り、包装を外すと箱が現れた。上の蓋を外すとそこにはホワイトチョコレートが入っていた。 - 4二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:35:15
「これは……?」
「これ多分手作りだよ!凄い!」
箱の上を持ち上げようとするとその上だけが取れて下にはもう一段、今度は普通のチョコレートとクッキーが入っていた。
(この箱の大きさからすると…おそらくもう一段あるな…)
そう思いながら箱の上だけを持ち上げると思った通り、上だけが外れたのでグルーヴが視線を落とすとそこには
綺麗なネックレスが光り輝いていた。
「こ…これは…」
「わぁ!すっごく綺麗!これきっとオーダーメイドじゃないかしら!?」
そのネックレスは小さいながらも黄色いトパーズや青いサファイア、黒いオニキスが散りばめられている。
———まるでエアグルーヴの勝負服の様に
「……手紙がある」
その箱の隅に小さく折りたたまれている手紙を広げるとそこにはメッセージが書かれていた。
『エアグルーヴへ』
『いつもこんな自分を信じてくれて、頼ってくれてありがとう。今年のクリスマスが素晴らしいものになります様に、そしてこれからの君の道が明るく続きます様に』
『君のよく知るサンタ(たわけ)より』 - 5二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:35:42
「あ…ああっ…とれぇ…なぁ…」
(やっと分かった…あの時の違和感が…)
(確かにクリスマスは皆と楽しめた…だがそこに私のトレーナーはいなかった…)
(私が今日を無事に済ませることが出来たのは、こうして楽しむことができたのはトレーナーが前もって手伝ってくれたからだ…だが私はそんなトレーナーに礼の一つも…プレゼントの一つも…っ!)
「うっ…ううっ…うぁぁっ…」
箱を抱きしめながら嬉しさと後悔が入り混じった静かな嗚咽が響き渡った。
「まだ、クリスマスは終わってないよ」
「え……?」
隣にいたファインはそう語りかける。その姿は優しくもあり、そしてアイルランドの王族としての威厳さを併せ持っていた。
「グルーヴさん…いえ、サンタさん。あなたにはまだあるのでしょう?多くの人…ううん、大切な人を幸せにする使命が」
「し…しかし…」
「ソリもトナカイさんもいないけど大丈夫。きっとあなたの脚なら…まだ間に合う。きっとサンタさんを慕ってくれるみんなが道を作ってくれるから!」
「……っ、ああ!ありがとうファイン!」
涙を拭き、そう答えると箱を抱えながらグルーヴは走りだそうとした。するとドアをノックする音が聞こえ、開けるとそこにはフジキセキが立っていた。 - 6二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:36:05
「サンタさんからのプレゼントはどうだったかいグルーヴ?」
「寮長すまない、今から私は行かなければならない!」
「うーん…でもそろそろ遅い時間だからね…」
「頼む!後で申請は出す!私はサンタクロースとして最後の役目があるんだ!」
「ふふっ、その言葉待ってたよ」
「……え?」
そう言うとフジはわざと別の方向を向く。
まるで何も見ていないかと振る舞う様に。
「まだクリスマスだからねぇ…確かにサンタさんのお仕事を邪魔しちゃ悪いからねぇ…それにサンタさんがグルーヴと一緒にお願いを叶えに行きたいっていうなら仕方がないよねぇ…」
先程の様に悪戯をするかのような笑みを浮かべてチラッとグルーヴの方へ振り返る。
「…ありがとう寮長…ありがとうファイン…!」
「頑張れサンタさん!」
「あ、そうそうサンタさん。彼女にこう伝えといてくれないかい?『申請は出しておくけど、休み明けの授業にはしっかり間に合う様に』ってね」
「ああ!約束する!」
そう言ってグルーヴは部屋を出て駆け出していった。
「なんだか妬けちゃうね…」
「でも私のサンタさんも負けてないんだから!明日だって…ね?」
「ふふっ、そうだね…ちょうど休みだし私もサンタクロースさんと一緒に居ようかな?…『そういえば…』っと」
駆け抜けていくサンタクロースを眺めながら2人も互いの良く知るサンタクロースに想いを馳せるのであった。 - 7二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:36:26
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
日も沈み夜の帳が下りようとしている中、エアグルーヴはあの箱を大事に抱えながら道を走り抜けていた。
寮からトレーナー室までの距離はそこまで遠くはない。ウマ娘の身体能力で走ればあっという間である。
だがしかし、今はその距離が途轍もなく長いとグルーヴは感じていた。
「電気は…付いてる!まだ間に合う!」
トレーナーが遅くまで仕事をする人物である事は彼女が最も知っている。
だからこそ不安だった。普段から遅くまで仕事をしていることが当たり前だと思っていたから。その事が当然だと思っていたからこそ大切なものに気付けなかったから。故にどんなに短い距離でも全力で走った。
(あと少し…この日が終わるまでに伝えなければならない、謝らなければならない…!)
(今の私には彼に渡せるものなど用意していない…でも…それでも!)
「トレーナー!!!」
階段を勢いよく駆け上り、ついに部屋のドアの前に辿り着き、勢いよく扉を開けると…
———そこにトレーナーは居なかった - 8二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:36:55
「え…なんで…トレーナー…?」
どこかにいるのかとあちこちを探し回る。
だがどこを探してもトレーナーはいない。
「遅かったのか…?間に合わなかったのか…?」
身体が震える。心が後悔の色に染まっていく。
「ははっ…覆水盆に返らずとはこの事か…」
抑えようとしても涙が止まらない。
「私は…私は…っ…本当に愚か者で…ううっ…とれぇなぁ……うあぁぁっ……」
力が抜けた様に、マリオネットの糸が切れた様に、部屋の真ん中で崩れる様に座り込んだサンタクロースは今はただ、泣き続けることしかできなかった…
「さてと、書類も出し終えた事だし切り上げますか……グルーヴは喜んでくれたかな?」
そんな自室の事など知る由もないトレーナーは今晩のことを考えながら廊下を歩いていた。そうして部屋のドアを開けるとそこには…座り込んで泣き続けている担当の姿があったのである。 - 9二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:37:18
「え……グルーヴ……!?」
「あ…え…とれーなー……?」
「何かあったのか?それとも…」
「たわけぇっ!どこに…どこにいってたんだ!もう…もう貴様が帰ってしまったと思ったんだぞ!」
「いや書類をだな……ってその箱…受け取ってくれたんだね。ありがとう」
「たわけぇ…私が…受け取らないとでも思ったのか…私は…わたしは…ううっ…とれぇぇなぁぁっ!!!」
その直後勢いよくグルーヴが抱きつき、トレーナーの身体に顔を埋めながら泣き続けた。
「ありがとう…トレーナー…そしてごめんなさい…ごめんなさい…っ!」
「良いんだよ、それにこっちこそ気を使わせてごめんな」
「でも私は!貴様に何も渡せなくて…!」
「君が笑顔でいてくれれば…幸せになってくれればそれが何よりの贈り物だからさ」
「たわけ!それでは私が納得しない!納得できない!…罰でも報いでも何でもいい!私に何か…」
彼女らしいなと思いながらやれやれと苦笑いするトレーナー。少し深呼吸をするとグルーヴの耳元で語りかける。
「ならサンタさん、一つお願い…我儘を聞いてくれないかい?」 - 10二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:38:06
少し時間が過ぎ、クリスマスで賑わう街にエアグルーヴとトレーナーはいた。
夜になったというのに多くの人々が行き交う店を巡りそして今、レストランで食事をしているのである。
「……本当に良いのか?私が何かする訳でもなく貴様にご馳走になる形に……」
「良いの。こうして君とお出かけしてみたかったし、レース以外の話ももっとしてみたかったからね」
料理に舌鼓を打ちながら互いの思い出話や今日のクリスマスの話に花を咲かせる。
「あのお菓子は貴様の手作りなのか?」
「まぁね…出かける前に食べたけどどうだった?」
「悪くはない…むしろ美味しかったぞ……貴様にも色々得意なものがあるのだな…レースの話や生徒会の仕事の話…そればかりだった故に貴様の事も全く知らなかった……」
「そう落ち込むなって。こっちから話さなければ知る機会だってないし…ちょっとびっくりしただろ?」
「………たわけ」
そうして食事を終えてたどり着いたのは街の中央にあるイルミネーションとクリスマスツリー。その壮大さはツリーを中心とした光の別世界に迷い込んだかのように夜空の下でも光り輝いていた。
「学園のも綺麗だったけどこっちも綺麗だなぁ。いつか君と見に行きたかったんだ」
「そうか…だが私はこちらの方が…」
こっちと言われトレーナーが振り向くとそこには大事そうにあの箱を持っているグルーヴがいた。
「ネックレスを贈る…そのことを貴様は…」
「知ってるよ。正直…引かれると思った。トレーナーが惚れ込んだ担当にネックレスを贈るなんてさ…呆れただろ?」
「全くだ…そんなトレーナーの担当ウマ娘など私以外の者に務まらないからな……このネックレス、今ここで私にかけてもらえないか?」
「え…?いいの?」
グルーヴにそう言われトレーナーは目を開いて驚きながらも箱のネックレスを取り出した。
そしてグルーヴの首にネックレスをかけると彼女の尻尾は大きく左右に揺れる。
「似合ってるか…?」
「ああ、とても似合ってるよ…ありがとうグルーヴ。我儘を聞いてくれて…」
「まだ終わりではない。これまでのものは忘れ物をしていたサンタクロースからのプレゼント…そしてこれは私からの………」 - 11二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:38:41
その瞬間、イルミネーションに照らされた2人の影が一つに重なる。
トレーナーの視線の先には間近に迫ったエアグルーヴの瞳。大人びた彼女が本当の大人になる様に背伸びをし、その背伸びを支える様に腕を彼の首の後ろに回し、そしていつ振り解かれるかと不安そうな瞳がそこにはあった。
トレーナーがその腕をグルーヴの背中に回して抱き寄せると安心したのか彼女は目を瞑り更に抱きしめてきた。
一瞬にして悠久な時間が過ぎ、名残惜しそうに唇同士が離れる。
「あ…私…わたし……」
「グルーヴ…最高のプレゼントをありがとう……」
自分で自分のした事に戸惑いを隠せていない彼女にトレーナーは軽く唇を重ねる。すると戸惑いから起きていた彼女の体の震えは消えていた。
「今年は最高のクリスマスだ…それじゃ帰るか」
そう言ってトレーナーは帰路に着こうとしたがその腕をグルーヴが掴んできた。
「まだ…クリスマスは終わっていないぞ…」
「え…?」
「外泊の許可は降りている…だから……」
先ほどの様に不安そうにトレーナーを見つめるグルーヴ。トレーナーは掴んでいる彼女の手を反対の腕で優しく包み込む。
「そうだな、なら帰ろう。2人のサンタクロースが…俺達が帰る家へ」
「…………ありがとう」
そして互いに手を繋ぎながら来た道を戻る。 - 12二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:39:33
「サンタさん…グルーヴのどきゅーとはないかい?」
「たわけ!ここに本人がいるだろう!」
「ははっ、冗談だよ」
「それに…貴様が望むならクリスマスプレゼントではなくとも毎日…その…私をだな…」
「……!そりゃ嬉しいなぁ…お願いしてもいいかい?」
「だが一つだけ条件が…私の願いも聞いて…叶えさせてくれないか…?」
「どんな願い?」
少し思慮した後、彼女は降ってくる雪が解けてしまいそうな熱く艶やかな表情で彼の方を向く。
「それは…貴様…いや…あなたとの……だが今ここでは言うべきではないな。家に着いたら…その時は…」
「その時はサンタさんじゃなくて1人の男としてその夢や願いを叶えるよ。そして…さっきの冗談なんかじゃない俺の本当の願いを聞いてくれるか?」
「ありがとう……そして約束しよう。絶対にその願いを叶えてみせると、応えてみせると!」
役目を終えた2人のサンタクロース。
そして元の姿に戻った2人は互いの願いを叶えるために帰るべき所へ向かい…人混みの中へ消えていったのだった……
クリスマスが過ぎた翌朝———
部屋に入り込む日差しでトレーナーが目を覚ます。
すると目を開けた先にはエアグルーヴが自分の顔を見つめ、そして互いに手を繋いでる光景が広がっていた。
「やっと起きたか。遅いぞたわけ」
「ん〜おはよう…」
「全く…もう起きる時間…いや、もう少しこのままでいよう。折角サンタクロースが願いを叶えてくれたのだからな…」
「分かった。それはこっちもだからね。でも良いのかい?」
「構わぬさ。焦る必要なんてどこにもない。だが絶対に離さない。誰にも譲らない。逃しはしない。どんな事があっても渡さない。だから………」
「だから…素敵な贈り物をありがとう、トレーナー…」
そう言ってグルーヴは唇を重ね、顔をトレーナーの胸にうずめる。
トレーナーはそんな彼女を抱き寄せながら頭を撫でる。
今回は誰にも負けない最高のクリスマス…そう思いながら2人は贈り物を…その暖かさを互いに確かめ合ったのであった…… - 13二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:40:31
「こうして忘れんぼうのサンタクロースは無事、みんなにプレゼントを配ることができましたとさ。めでたしめでたし」
「おかあさん!もっとよんで!」
「駄目だぞ、良い子はもう寝る時間だ」
「えぇ〜っ!?もっとおはなしききたい!」
「良い子じゃないと夜、サンタさんがプレゼントあげられなくなってしまうぞ?」
「うぅ…わかった!はやくねてサンタさんからプレゼントもらう!おかあさん、サンタさんにありがとうっていってね!」
「ああ、伝えておくよ。それじゃおやすみなさい」
「おやすみ!」 - 14二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:41:14
そう言って電気を消し、部屋の扉を閉める。暫くして何かを持った別の人影が部屋に入り、手にした物を枕元に置き部屋を出る。
その人影がリビングに戻るとそこには先程部屋を出た者…1人のウマ娘がソファに腰掛けていた。
「ちゃんとプレゼントは置けたのか?」
「ああ、今年もバッチリだよ」
そうしてそのソファに人影…1人の男性は彼女の隣に腰掛ける。
「目を覚ました時が楽しみだ……あの時の私達を思い出すな…」
そう語る彼女は首元のネックレスに視線を落としそのネックレスを大事に撫でる。
「思えばそれもあの時からか…いいのか?他にもっと…」
そう言いかけようとした彼を制止する様に彼女はギロリと睨みつける。
「たわけ、私がこれ以外のネックレスを選ぶものか…どんなに煌びやかなものよりも、どんなに私に合致するものよりも…貴様の想いが込められたこの輝きにはどんなものも敵わない…私がそこまで薄情だと思ったか?」
「ご…ごめんな…」
「分かれば宜しい。だが…このネックレスが無ければ…私は今もずっと薄情なウマ娘だっただろう…あのクリスマスはそれを気付かせてくれた…今も忘れるものか」
俯く彼女に彼は更に近寄り腕を肩に回す。
「でも良かったよ。俺はあのとき君の楽しそうな笑顔を見ることが出来てさ…それにさ、あの時…俺に最高のプレゼントをありがとう」
「私の方こそありがとう…私に大切な贈り物を…大切な事を教えてくれて…」
回された腕の手のひらを握る彼女。その握る指にはあの時にはなかった一つの輝きが煌めいていた。 - 15二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:41:36
「さて、しんみりする話はこのくらいに。来年もあの子のためにもサンタとして頑張りますか」
「ああ、そうだな……」
そう呟くと少し考えた後に深呼吸をしてトレーナーの方へ振り向くグルーヴ。
「…もし、できるのなら…サンタではなくて貴様にお願いしたいものがある…貴様…いや…あなたにしか出来ない願いが…」
顔を赤くし、蕩けた目でグルーヴがトレーナーを艶やかに見つめてきた。
そんな彼女の瞳を見つめながらその願いを理解した彼は彼女の頬をその手で優しく撫でる。
「分かった、きっと君の願いを叶えてみせるよ。さあ、もうすぐクリスマスだ。少し悪いけどあの子より少し早くお祝いしよう」
「ありがとう…でも…あなただけじゃない。その願いを私も一緒に叶えていきたい…だから…」
そうして2人は互いの顔を見つめ合う。
秒針がカチコチと音を立てて進む。
そして秒針が12時を示し、1日が変わる瞬間———
「メリークリスマス、グルーヴ」
「メリークリスマス、あなた」
そしてあの時の様に2人の影は重なったのであった。 - 16二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 08:42:57
以上になります
長文失礼致しました
補足
トパーズの石言葉
「成功」「希望」「誠実」「友情」
サファイアの石言葉
「慈愛」「誠実」「忠実」「真実」「徳望」
オニキスの石言葉
「成功・厄除け・夫婦の幸福」 - 17二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 12:05:52
やっぱり女帝とたわけはいいぞ…
- 18二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 17:30:18
イブに素晴らしいSSをありがとう
もっと書いてくれ - 19123/12/24(日) 18:28:10
- 20二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 21:12:55
このレスは削除されています
- 21二次元好きの匿名さん23/12/25(月) 06:36:55
ああ…尊い…
- 22123/12/25(月) 07:29:58