貴方に会いたかっただけ　【ss】

1二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 21:15:20

　仕事を終えてトレーナー寮に帰ると、ダイイチルビーがソファに座っていた。

　「うわああああああああああああ!?!?!?!?!」

　人がいるのが一番怖い説。いくら担当ウマ娘とは言え恐怖で叫ぶ。
　彼女はこちらの悲鳴にビクッと反応するも、無表情のまま喋らない。じっとこちらを見つめ続けている。

　自分が落ち着くのに数分かかったように思うが、その間彼女は何の反応も返してこなかった。

　「えっ、えっ??」

　及び腰で恐る恐る腕を伸ばす。
　彼女は何の反応も返さない。見慣れた姿が今はただただ怖い。

　ポンと彼女の頭に触れた。少なくとも実体はある。
　そのままゆっくりと手を下に滑らせる。頬を撫でる。滑らかで心地いい。体温もある。

　「る、ルビー？　どうしたの……??　なにか用事でもあった??」

　少なくとも目の前にいるのはダイイチルビーだと判断して話しかける。
　しかし反応はない。とても怖い。

2二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 21:16:21

　そのまま彼女の首元に手を這わせる。

　「ぅぁっ……！」

　ルビーは耐えきれないというように小さな声をあげた。

　彼女の顔が少し赤くなった。

　「…………………………」
　「…………………………」

　どうやらあまり緊急性はなさそうだった。

　そのまま彼女の髪に手を伸ばす。ロール部分を両手で少しだけ引っ張る。手を離すとぴょんと元に戻る。
　そのまま数度繰り返しても、彼女は反応を返さない。ただどこか抗議したそうな目で見てくるだけだった。

　あまりの異常事態におかしくなったのか、自分でも止められないまま今度は再度彼女の頬に手を伸ばす。
　両手でつまんで横に伸ばす。それでも彼女は何も言ってこなかった。

　「えぇ……」
　「………………」

　彼女は何も言わないが、形の良い眉がへにょりとハの字型になる。珍しい表情だが困っているのはこっちだ。

　彼女の右手をそっととる。手のひらをそっとなでると、ルビーは指を絡めてきた。
　いわゆる恋人繋ぎ。ギュッと握りしめられて少しドキリとするが、流石に困惑が勝っていた。

3二次元好きの匿名さん23/12/24(日) 21:17:04

　そのままそっと顔を近づける。鼻先が触れるほどの距離に、ゆっくりと。

　「ぁっ……！」
　変化は劇的だった。一瞬で顔が真っ赤になって、ルビーの目が泳ぐ。きょときょとと揺れる瞳をじっと見つめると彼女は小さな声を漏らした。

　何か覚悟を決めたようにギュッと目をつぶって、くちびるを少しだけ尖らせる彼女を見て少しからかいすぎたかなと判断する。

　「ルビー」
　「…………」

　やっぱり何の返答もしなかったが彼女は目を開けた。

　「やっぱりケーキいっしょに食べたくなっちゃった？」

　昼に聞いた時には「結構です」と断られてしまっていた。

　しかし、その後何かこちらに何か葛藤しているのは気が付いていた。どうやら断ったのはいいもののやっぱり食べたくなってしまったのかもしれない。

　「………………」

　彼女はまだ何も話さなかったが。
　それでも恥ずかしそうにこくりと頷いた。

(fin)