【SS】Boxing Day Party

[1 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:04:57]

　この時期の楽しみといえば……そう、クリスマスの後夜祭です。当日は仲の良い人達でお手頃価格のケーキやご飯を買ってパーッとやるのも良いんですが、翌日スーパーに行くと結構な頻度で色々安売りされているんですよね。
　そんなわけで、今日は授業もそこそこに午後のトレーニングまでの間にちょっとだけ買い出しに。昨日はきらびやかだったポップにも容赦なく値引きシールが貼られ、業務用の大きな冷凍庫にずらりと並んでいました。
「あれ、もうお昼は済ませたのか?」
「あわわ、トレーナーさん。あの、えっとぉ……」
　まさかのここに来て一番出くわしてはいけない人との遭遇。決してやましいことがあるわけじゃないんです。週のカロリー量もちゃんとトレーナーさんには報告していて、今週はこのケーキを二箱買ってもギリギリセーフだということもちゃんと計算しているはず。それでも、罪悪感というのは隠しきれないものでした。
「……なるほど」
「いやー、最近SDGsでしたっけ、フードロスをなくそうなんて言ってますからわたしなりの貢献を……って、やっぱりダメですよね」
　頭をかきながらトレーナーさんに頭を下げました。毎年恒例の楽しみとはいえ、トレーナーさんに見つかってもなお買えるほどの勇気はないので、ゆっくりと後ずさりしていきます。一方のトレーナーさんは何か考えているような様子で、ふいに手元のノートを見て何かを確かめているような様子でした。
「もしかして、これを?」
「毎年この日が楽しみなんですよ。ちょっと高級な、普段じゃ買えないようなスイーツもこの日はお手頃価格で手に入っちゃうので」
　するとトレーナーさんは適当に二箱ほど自分のかごに入れて、わたしの方に向き直っていました。突然のことで何が何やら全く分かってないわたしと、少し感心したような顔をしているトレーナーさん。普段ならこういう時、食事はアスリートの基本だなんて言いそうですが、今日はちょっと違うようで。
「翌日にこんなセールしてるなんて知らなかったよ、教えてくれてありがとう。折角だし、今日の練習が終わったらクリスマス後夜祭、なんてどうかな」
「は、はいっ、もちろん、とっても楽しみです。よーし、今日の練習も頑張っちゃうぞ」

[2 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:05:58]

>>1

　時は過ぎて今日のトレーニング後、軽く汗も流して私服に着替えたわたしはトレーナー室にまっしぐら。もちろんケーキも楽しみですが、わたしの密かな後夜祭にするつもりだった今日を、トレーナーさんと一緒に過ごせるだなんて思ってもなくて。

　ドアをノックして部屋に入ると、いつもは色んなレースの書類が山積している机に鎮座する少しお高いクリスマスケーキ。普段のわたしならちょっと尻込みしちゃいそうな値段ですが、こういう日だけの特別ってのも中々乙なものがありますよね。

「ちょっと解凍しきれてなさそうだけど、それでも良い?」

「全然大丈夫ですよ。むしろちょっと凍ってる方が型崩れしなくて食べやすかったりもしますし」

　給湯室から持ってきたカトラリーでさっくり切り分け、そして熱々のコーヒーで軽く乾杯します。フォークで一口サイズに切って、口に運ぶととろけるような甘さが広がりました。なるほど、これが罪の味。普段はあまり甘いものを食べないというトレーナーさんも、今日ばかりは美味しそうにケーキを口にしてました。

「クリームついちゃってますよ、ほら、こことか」

「ん、ああ、ごめん。気づかなかった」

「トレーナーさんって、たまに抜けてるところありますよね」

[3 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:06:09]

>>2

　あんまり食べ慣れないのか、口の周りをクリームで汚しているトレーナーさんを見て思わず笑っちゃいます。いつもは厳しくも優しいトレーナーさんですが、今日はいつもより少し優しくて、わたしも少しだけ甘えさせてもらってます。

「あっ、また汚しちゃってますよ」

　ティッシュを手に取り、トレーナーさんの口角についたクリームを拭き取ります。頼れるトレーナーさんの思わぬ弱点。こういうのを見つけられるとちょっとだけ嬉しいですね。

「来年も、こうして良い年末を迎えられるように頑張らないと」

「……わたしは、来年だけじゃなくても良いですけど」

　心のうちに留めていたはずの言葉が不意に口をついて出ちゃいました。すぐ近くにいるトレーナーさんには丸聞こえだったようで、そんなわたしの頭を優しくなでてくれました。ふわっとしてまとまりのない私の髪を、少しだけ力強く、それでいて確かな感触が伝わってくる程度の力で優しく。

「ヒシミラクルとなら、これからも楽しい年末が過ごせそうだって思ってるよ」

「……んもう、そういうこと軽々しく言っちゃダメですって」

　すぐ近くにあるトレーナーさんの顔、じっと見ていたいけれど直視できません。しっかり見たら、顔から火が出ちゃいそう。

[4 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:09:34]

クリスマスの後夜祭があると聞いたので、そんな日のお話を書いてみました。

Boxingというスペルですが、スポーツの方のボクシングとは関係がなく配達員や執事に箱詰めのプレゼントを用意する、という意味らしいですね。

年中無休の勢いで担当をサポートしてくれるトレーナーさんも、ある意味ではそういう立場に近いのかもしれません。

折角ですので過去にスレ立てて書いたお話を載せておきます

【SS】エビ・イカ・ホタテ・ズワイガニ｜あにまん掲示板

【SS】ふつーなわたしのスペシャル｜あにまん掲示板

他のキャラではありますが、グラスワンダーでも書かせて頂いています

【SS】夢と知りせば覚めざらましを｜あにまん掲示板

【SS】冬はつとめて｜あにまん掲示板

それでは皆さん、良いクリスマスを!

[6 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:23:31]

甘々ですき

[7 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:24:51]

>>6

ありがとうございます

こういうときはとことん甘やかしちゃうトレーナーさんと、それに甘えるミラ子も良いなって思います

[8 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:36:13]

スレ主、深夜に良SSを投下しないと生きていけないとかの縛りがあるのか？
あ、SSはとても好き

[9 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 02:48:54]

>>8

仕事終わりにゲームする→寝る前にお酒入れてから書いて寝る

みたいなローテが身に染み付いたもので......

気に入っていただけたなら幸いです

[10 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 07:13:57]

そんな日があるとは…確かにトレーナーへの勤労感謝に持って来いですね

[12 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 08:51:16]

>>10

最近は廃れつついるらしいと言うのと、イギリスやアイルランド辺のみの局地的なイベントみたいですね

私も調べてみるまで詳しく知らなかったです

[13 二次元好きの匿名さん 23/12/25(月) 12:06:32]

お昼上げ