- 1三時のおやつ21/09/02(木) 15:00:29
ある日の事でございます。カレンチャン様は学園の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。
カレンチャン様の肌は、みんな玉のようにまっ白で、御歩きになっておられる様子からは、何とも云えない好いカワイイが、絶間なくあたりへ溢れて、
そのご様子を見ていましたら、なんだか視力まで良くなりそうでありました。ここが極楽なのでございましょう。
やがてカレンチャン様はその池のふちに御佇みになって、水の面をじっと見ながら、水面に映り池を彩るカレンチャン様の容子を御覧になりました。
するとその水面カレンチャン様の隣に、お兄ちゃん様と云う男が一人、お浮かびになられたのでしょう。カレンチャン様は溜息をお吐きになられました。
このお兄ちゃんと云う男は、うまぴょいから逃げたりカワイイに耐えたり、いろいろ悪事を働いた大クソボケでございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。
と申しますのは、ある時このお兄ちゃん様が遊園地で遊んだ帰り道、幼いカレンチャン様が一人、お母さんとはぐれて泣いているのが見えました。
お兄ちゃん様は「一緒に探そうか?」と声をかけ、しばらくお母さんを探してあげていたのですが、カレンチャン様はアトラクションのお城の前に着くと、そこで足を止めたのでございます。
お兄ちゃん様は、お城を見つめるカレンチャン様の横顔があまりにもまっすぐだったので、「夢はお姫様かな」と、聞いてみたところ、カレンチャン様は、「私の夢は──宇宙一“カワイイ”私だよ!」と言ったのでございます。
そしてお兄ちゃん様は、その幼い夢を笑わず肯定し、「とっても素敵な夢だね」と微笑んだのでございました。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:00:46
ここのところ、カレンチャン様のうまぴょい作戦は失敗続き。先日など、カレンチャン様は若干やけくそ気味になり、お兄ちゃん様の部屋に「うまぴょいしなければ出られない部屋」と表札を付けた上で、
「カレンが良いって言うまで、出られないからね♡」
とお兄ちゃん様の耳元でささやいたのでございます。
そしてお兄ちゃん様は──うまぴょい伝説をフルで熱唱。
これには同じく推移を見守っていた同志デジたんも思わず真顔になっておりました。
しかしながら、カレンチャン様はここのところの失敗続きもあり、「俺の愛バが!」の度に手を向けられたことにちょっと満足してしまわれたこと、
そしてうまぴょい部屋に無理やり閉じ込めたのならそれもう実質カレンチャンの方からうまぴょいしてない? とお気づきになられたことで、お兄ちゃん様を解放してそのままお二人でカラオケに行かれてしまわれたのでございます。
わたくしどものような下賤の者はもうさっさと押し倒してしまえと思うところでございますが、カレンチャン様はカワイイの化身なので、あくまでもお兄ちゃん様からうまぴょいさせなければならないという使命感をお持ちなのでございましょう。カワイイですね。
しかし、このところヤキモキしておりましたのはカレンチャン様やファンだけではありませんでした。同僚のトレーナー様達も、もうさっさと押し倒せとヤキモキしておられたのです。
考えが一致した皆様が協力し始めたのは当然の流れでございましょうか。
三人集まれば文殊の知恵でございます。船頭多くして船山に上るの方が近しいかもしれません。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:01:00
とにかく、罪人達は自分のことを棚に上げ、カレンチャン様に協力して一大作戦を立ち上げることにしたのでございます。
題して、「カレンの糸」作戦でございました。
作戦はまず、同僚のトレーナー様達がそれとなくお兄ちゃん様を焦らせることから始まります。
そしてウマ○ィを始めとした婚活雑誌を数か月分ほどお兄ちゃん様の机に並べて置く、買いすぎたからといって穴の開いた○○○―○(カワイイ的規制)を数ダースほど贈る、近場の自販機の販売物と共用冷蔵庫の中身をスポーツドリンクと精力剤だけに置き換える、などさり気なさをどこかへ投げ捨てた攻撃を仕掛けたのでございます。
“お話”不可避でございました。普段の行いで基準が壊れていたのでございましょうか。
こちらはそんな地獄の中で、ほかのトレーナー達と一しょに、浮いたり沈んだりしていたお兄ちゃん様でございます。
何しろどちらを見ても、やれ婚活やれうまぴょいで、たまにそのくら暗からぼんやり浮き上っているものがあると思いますと、それは恐しいタキトレの頭が光るのでございますから、その心細さと云ったらございません。
その上あたりは墓の中のようにしんと静まり返って、たまに聞えるものと云っては、ただ罪人がつくような微な嘆息ばかりでございます。
これはここへ落ちて来るほどの人間は、もうさまざまな極楽の責苦に疲れはてて、泣声を出す力さえなくなっているのでございましょう。
ですからさすが大クソボケのお兄ちゃん様も、カレンチャンカワイイ、カレンチャンカワイイ、とただもがいてばかり居りました。 - 4二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:01:13
ところがカレンチャン様は、逆にそうしたうまぴょい感を一切出さずに振舞ったのでございます。
同僚の追い詰めが日に日に激しさをます中で、カレンチャン様の手だけが、まるでひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛の糸が人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するするとお兄ちゃん様の頭の上へ垂れて参るのではございませんか。
というか割と素で慰めておられました。ちょっと焦らせて欲しいという些細なお願いでここまで雑に追い詰めるとはお思いになられなかったようでございます。
お兄ちゃん様はこれを受け、思わず手を拍って喜びました。この糸(比喩)に縋りついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。いや、うまく行くと、同僚のごとく人生の墓もとい極楽へはいる事さえも出来ましょう。
そうすれば、もううまぴょいから逃げる事もなくなれば、カワイイに耐える事もある筈はございません。
カレンチャンカワイイ!
こう思いましたからお兄ちゃん様は逆に意固地になり、自分だけはカレンチャンの夢の為にも絶対に耐えてみせるぞ、とウルツァイト窒化ホウ素のごとく無駄にクソ固い意志を見せたのでございます。おもくそ逆効果にございました。
後にはただ作戦の余波で量産された婚約届が、どさどさと山積みになりながら、明かりの消えた役所の机で、受理の瞬間を待つばかりでございます。 - 5うまぴょいする空気でございます21/09/02(木) 15:01:31
カレンチャン様は極楽の蓮池のふちに立って、あの一部始終をじっと思い返していらっしゃいましたが、やがてトレーニングの御時間が近づいてきますと、悲しそうな御顔をなさりながら、またぶらぶら御歩きになり始めました。
自分ばかりといわず地獄に引きずりこもうとする、同僚トレ達の無慈悲な心が、
そうしてその心相当な罰? をうけて、人生の墓場へ落ちてしまったのが、
カレンチャン様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。
しかしトレーニング場で腰をお掛けになったカレンチャン様のカワイイは、少しもそんな事には頓着致しません。
その玉のような白い肌は変わらず、お兄ちゃん様を待っている間、御釈迦様のような御足をゆらゆらと動かして、何とも云えない好いカワイイが、絶間なくあたりへ溢れて居ります。やはりここは極楽なのでございましょう。
…最終的に、同僚のトレーナー達皆でカレンチャン様とお兄ちゃん様にごめんなさいをして、あの騒動は幕を閉じたのでございます。
そしてわたくしはなんかもうぶっちゃけ始めからこのオチは見えておりましたので、あらかじめエイシンフラッシュ様のトレーナー様に助言を求めておき、その結果、期限間近の極楽温泉旅行ペアチケット(5泊6日)を手に入れ献上していたのでございました。 - 6二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:01:44
待ってた
- 7カレンチャンもギリギリだった21/09/02(木) 15:01:54
その後──
「ねえ、お兄ちゃん♪」
温泉から上がったカレンチャンは浴衣のまま、甘えるようにお兄ちゃんの背中に張り付く。お兄ちゃんは身じろぎして、カレンチャンから離れようとした。
しかしカレンチャンは、少しもそんな事には頓着しない。
浴衣の隙間からは玉のような白い肌が目に映り、尻尾はゆらゆらと揺れて、お兄ちゃんに巻き付く。
カレンチャンからは、何とも云えない好い匂が絶間なくあたりへ溢れ、火照った体から立ち昇った湯気と暖かさが、背中のみならず全身を覆い、塗りつぶしていく。
「分かってるよね?」
視覚、聴覚、嗅覚、触覚。五感を徐々にカレンチャンに染め上げられる中、カレンチャンはお兄ちゃんに体を預けながら、その耳元で焦らすようにささやく。
ここは極楽か、それとも地獄か。その両者に、違いは無い。
勝利を確信し、カレンチャンはそっと後ろからお兄ちゃんを抱きすくめ──
「あと4泊、あるからね♡」
そしてお兄ちゃんは────耐えきった。
カレンチャンも耐えきった。
勝者は無かった。
うまぴょいうまぴょい - 8二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:03:14
乙、待ってた
- 9二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:03:39
もうコイツらは一周回ってそういうプレイなんだろ
- 10二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:05:52
素晴らしい忍耐力だ……一人の男として尊敬するよ……
- 11二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:08:30
大丈夫?他のトレーナー被害甚大じゃない?
- 12二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:08:50
待ってた
- 13二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:10:06
勝利者などい〜な〜い〜♪
- 14二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:12:44
- 15二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:25:27
- 16二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:26:37
来た、見た、良かった
- 17二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:28:43
カラオケでも同じことやってもらってる姿が見えるぜ
- 18二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:31:13
タキトレの頭が光るは物理的に光ってるとわかってしまう
- 19二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:31:18
ここでも一目惚れトレーナー強いのマジで草
- 20二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:33:10
待ってた
- 21二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:33:19
鋼の意思が尋常じゃない硬度になっててダメだった
- 22二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:34:24
結局同僚たちの結婚ラッシュが起こっただけという
- 23二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:34:25
大丈夫大丈夫大丈夫だよねえ…?
- 24二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:38:59
ウルツァイト窒化ホウ素パワーの使い手とか悪魔将軍より強い
- 25二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:49:38
クソボケが大罪扱いは草
弁えのある立派な大人やろがい! - 26二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 15:52:14
穴の空いたゴムはまずいんじゃねえかなぁ
- 27二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 16:55:32
いやでも最早これは大罪じゃない?
- 28二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 19:31:53
次はなんだろ…
吾輩はカレンチャンである。お兄ちゃんとのうまぴょいはまだ無い - 29二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 19:42:16
まず種族の壁があるからねクソボケ扱いは可哀想だね
トレーナーの方から求めてくるまで後50年くらいカレンチャンも耐えればいいんじゃないかな - 30二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 20:57:11
俺はメロスカレンチャンスレでウルツァイト窒化ホウ素という物の存在を知った
おそらく文豪もまた自身のスレで知ったのだろう
ともあれ雑に大暴れするその他大勢の同僚トレーナー達がおもろい - 31二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:44:22
- 32二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:48:07
逆に考えるんだ
カレンチャンが好きだから耐えられたんだと - 33二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:49:25
カレンチャンは毎回戦っているぞ、自分から襲おうとしてカワイイじゃないからやめるを繰り返しているじゃないか
- 34二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 00:23:10
これ温泉以外はデジたん視点なのか
- 35二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 00:24:27
来たな…名作怪文書…
- 36二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 00:26:52
いつかのモブウマ娘でございます。
フィロストラトスのセリフを見てたらなぜか蜘蛛の糸と脳内で一致してしまったのでございます。
でも別にデジたん視点でも良さそうなので自由に想像するのがよろしいでございます。
- 37二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 06:48:01
ところどころに、可愛くない言葉に規制が入るの好き
- 38二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 06:55:55
オレ オマエノ エスエス スキ
モットカケ - 39二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 06:58:38
これは怪文書を自分から名乗る権利がある
- 40二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 07:06:27
カワイイが溢れております……