- 1二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 01:55:11
- 2二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 01:55:54
蛍ちゃんがウォーミングアップを始めました
- 3二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 01:56:03
空(懐へもぐりこんできたパイモンは、最適なポジションを探っているのかもぞもぞと動いている。なんだか、主人にすり寄る犬みたいな雰囲気だ)
パイモン「へへ。ちょっとは、寒さも和らいだだろ?」
空「ええと。悪いけど、ちょっと暑苦しい…」
パイモン「えっ」
空(そんな風に驚きながらも、パイモンは俺の腕の中へすっぽり収まるようにうずくまってしまった。文句を言われても、完全にここで寝る気なのだろう)
パイモン「まあいいじゃんか。オイラたち、一心同体だろ?」
空「はいはい」
空(今日の俺たちは、道中で見つけたあばら家で夜を過ごしていた。主を失った小屋はちょっとみすぼらしいが、テントよりは風の心配も少ない。宿代わりには上等なものだろう)
空(バッグに詰められる程度の薄い毛布にくるまった寝床で、背中を痛めてくる硬い木板の感触と、腕に伝わるパイモンの体温を感じながら──俺は目を閉じた…) - 4二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 01:57:52
空「…………」
パイモン「……」
空「…………」
パイモン「…なあ、空……」
空「……なに?」
パイモン「その…今夜も見たのか?……妹が、お前を置いてどこかへ行ってしまうような……悪い夢を…」
空「……」
パイモン「それか、この間話してたような。……底のない暗闇に、ずっと落ちていく夢……」
空「……」
空(俺は…。……パイモンからの問いに、答えられなかった) - 5二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 01:58:40
パイモン「………」
空(パイモンの手が、俺の手に触れた。そのまま手のひらが開かれて、毛布の中でも冷え冷えとしていた指を握ってきた)
パイモン「いつも傍にいるからな。オイラは、空の仲間なんだから」
空(病人を励ますような言い方に、少し可笑しくなりながら……パイモンの小さな手を握り返す)
空(何も言わず、手に込める力を、少しだけ緩めたり、強めたりして。…やがて、解けかけた帯の結び目が自然と開いていくかのようにお互いの指は離れていった)
空「おやすみ、パイモン」
パイモン「うん。…しっかり、寝ろよ」 - 6二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 01:59:37
空(その夜に寝付けなかった理由が、なんだったか。正直なところ、俺はよく覚えていない)
空(パイモンの問いに答えられなかったのは、悪夢を見たかどうかさえも曖昧だったからだ)
空(目が冴えてしまった後に、そんなことを考えていたからか……。ようやく眠りに就けたとき、俺はパイモンの夢を見ることになった)
『えへへ……誰かと寝るなんて久しぶりだな。おやすみ!』
『え、なんだよ?お前だって、きっと妹と旅してるときは近くで寝てたんだろ?』
『まあいいじゃないか。オイラは妹よりずっと体が小さいんだから、ちょっとくらい傍に近付いて寝ても問題ないだろ』
『それに。……体を離して寝るよりも、こうしてる方が温かいだろ…』
空(テイワットに来て、パイモンと出会ってからはじめての夜の記憶だった)
空(初対面の相手を疑うなんて、考えもしないような顔で。今と変わらない体つきのパイモンが、そそくさと同じ毛布に潜り込んできて寝てしまったのだ)
空(お互いに疲れていたのか、その夜は俺もパイモンもぐっすり寝てしまった。………妹と。蛍と離れ離れになってから、久しぶりに……誰かと過ごす夜だった………………) - 7二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 02:01:05
パイモン「ふわぁぁあ。よく眠れたけど体が痛いぞ」
空「俺は逆だな。変な夢を見て、あまり寝れなかったかも」
パイモン「ええ。今度はどんな夢だったんだ?」
空「うーん、パイモンが出てくる夢…?」
パイモン「な、ん、だ、よ、そ、れ!オイラが出てきちゃおかしいってのかよ!」
空「いや、夢の内容がね。夢の中なのにパイモンが寝ようとして、俺も一緒に眠るような……」
パイモン「ほ、本当に変な夢だったんだな。まあ、悪夢よりはいいのか……」
空「それよりも、今日の目的地は──」
パイモン「ああ、そのことなら──」
空(昨夜のちょっとした出来事と、今朝のちょっとしたこういう会話。俺の中にある確信が強まるのには、この2つだけで充分だった)
空(俺は──今日も明日も明後日も、この小さな仲間と共にいる。旅の目的を果たすまで…ずっと)
空(それから……蛍を取り戻して、目的を果たした後も。それから後も……きっと……) - 8二次元好きの匿名さん22/01/10(月) 02:01:49