【SS注意】【トレウマ注意】メジロパーマーと遅れたクリスマス

  • 1二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:06:10

    「うあ~、つ~か~れ~た~」

    吹きすさぶ凩の中。
    トレセン学園の校門に、制服姿の担当で愛バのメジロパーマーの声が響いた。
    声を発した本人は、近くに俺がいることに気が付いていない。

    「お疲れ様、パーマー」

    「わっ! どうしたのトレーナー。いつもこんな時間に外にいないでしょう?」

    「パーマーが、帰ってくるような気がしたから」

    「……そうなの? えへへ、以心伝心みたいで嬉しいな」

    ――実際は、パーマーがメジロのお屋敷を出発たことを、懇意の使用人の方に教えてもらっただけなのだが。
    そこから計算すれば、大体いつ頃校門に着くかはわかる。
    わざわざ、知らせることでもないけど。

    「メジロのクリスマスパーティーのマネージメントやったんだって? 大変だったね」

    「そうなのよ~。それで……。と、こんな寒いところで話す内容じゃないよね。トレーナー室に行く?」

    「そうだね。そうしようか」

  • 2二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:06:50

    彼女と一緒に、トレーナー室へ向かう。
    クリスマスから一夜過ぎた今日は、12月26日。
    帰省している娘、外泊からまだ戻っていない娘、事情は様々だが、冬休みの午前中だというのに、学園内は驚くほどの静寂に包まれている。

    「なんか、静かだね」

    隣を歩くパーマーも、同じ感想を持ったようで。
    ポツリ、と呟いた。
    いつもがあんなに騒がしいだけに、寂しさを感じてしまう。

    トレーナー室に入ると、いつものように紅茶を淹れる。
    疲れている彼女のために、アップルティーにお砂糖を1匙。
    これだけで、飲むアップルパイになる。

    「ありがと」

    美味しそうに、紅茶を啜るパーマー。
    茶菓子に出したチョコチップクッキーも、見る見るうちになくなっていく。
    3人掛けのソファに2人並んで座っていると、そのスピードがよくわかる。

  • 3二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:07:32

    「あ……。これは、その……」

    食べ終わった後に、自分が全部平らげてしまったことに気が付いて。
    赤面するパーマー。
    慌てて、取り繕うとする姿は、レースの時とは違う、年相応のもの。

    「いいよ。それよりも、メジロのクリスマスパーティーでの、パーマーの活躍を聞きたいな」

    「えー、それよりも、トレーナーの話が聞きたいな。クリスマス、どうしてたの?」

    笑いかけてくるパーマー。
    だが、瞳の奥に、少しだけ笑っていない部分が。

    「どうもしないよ。有馬記念の分析をして、いつものようにトレーナーの仕事をして、それで終わり。ああ、かかてくる電話が少なかったから、いつもよりは仕事が捗ったかな」

    「本当に~? 可愛い女の子と、クリスマスを満喫していたんじゃないの~?」

    からかうような声で、こちらを問い詰める彼女。
    冗談ぽく、二の腕を軽くつねられる。
    しかしながら、尻尾が全く動いていないところをみると、結構本気で聞いてきている。

    「本当。だって、メジロパーマーっていう可愛い娘が、隣にいなかったからね。だから、今こうやって戻ってきてくれて、とても嬉しいんだ」

    彼女の問いに、正直に答える。
    安心したのか、尻尾がゆっくりと動き始めて。
    パーマーは、安堵の溜息をそっと洩らした。

  • 4二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:08:20

    肩に預けられたパーマーの髪を、ゆっくりと梳く。
    本当に、疲れていたのだろう。
    「ん~、トレーナー」などと甘える姿は、いつもの3割増しで可愛らしい。

    正午のチャイムが鳴る。
    とは言っても、もうウマ娘たちは冬休みに入っているし、カフェテリアも休業期間中。
    時報の役目しかない。

    「ねえ、トレーナー?」

    「なに?」

    こちらの肩にもたれかかったまま、パーマーから話しかけられる。

    「これから、2人きりで、クリスマスパーティーしない?」

    「今から?」

    「そう、今から。トレーナーも、クリスマス楽しんでないんでしょ? 私もパーティーで手一杯だったからさ。これから、クリスマスパーティーしない? ――2人きりで」

    「ん~、そうだな。パーマーがトナカイの衣装を着てくれるなら、良いよ」

    「……ちょっと待って。なんでそれを知ってんの?」

    「主治医さんから、写メが届いた」

    「主治医め~」

  • 5二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:08:50

    スマホの画面を彼女に向ける。
    そこには、ノリノリでトナカイの衣装を纏ったパーマー。
    御丁寧に、決めポーズまで。

    「まあ、衣装の話はともかくとして、クリスマスパーティーは良いかもな」

    「でしょでしょ! 早速行こうよ!」

    押し切られるままに、パーマー号を駆ってスーパーへ。
    売れ残ったホールのショートケーキやシャンメリーは見つかったものの、流石に2日経ったチキンは衛生的にまずいのか、置いてはいない。
    代わりに並んでいるのは、正月用のお節用品ばかり。

    「……チキン、ないね」

    「だな。ファーストフードのフライドチキンとポテトフライでも買ってくる?」

    「それ良いじゃん! なんで思いつかなかったんだろ? じゃあ、こっちは切り上げて早速行こ?」

    パーマーに押されるままに、大佐のチキンを買いに向かう。
    ドライブスルーは、クリスマスに横目で見た渋滞が嘘のようにガラガラで。
    拍子抜けするほど簡単に、クリスマス用品が揃ってしまった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:09:41

    「メリー・クリスマース!」

    「メリー・クリスマース」

    チン、と。
    乾いたガラスが交わる、金属質の甲高い音。
    口に含めば、少なめの炭酸の刺激と、甘い味。

    ケーキを切り分け、チキンを頬張る。
    時折口直しに、ポテトを齧る。
    甘くて、しょっぱくて、脂っこくて、シュワシュワのハーモニー。

    「このケーキ、美味しくないな」

    「シャンメリーも、いまいちだよね」

    「それに比べると、やっぱりチキンとポテトは安定しているな」

    「劇的に『美味しい!』ってわけじゃないけど、いつも同じ味だもんね」

  • 7二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:10:14

    昼を食べずに出かけたこともあり、2人で瞬く間に平らげていく。
    一通り食べ終えて、一息つくと。
    2人で顔を見合わせて、笑い転げる。

    「――全部食べちゃったな」

    「本当だよね。絶対買いすぎだと思ったのに」

    「あとは、パーマーのトナカイ姿を見るだけだな」

    「――本当に見たいの?」

    「見たい!」

    そう言うと、彼女は「わかった。ちょっと目を瞑ってて」と言って、傍らから衣装を取り出す。
    瞼を閉じても、聞こえる衣擦れの音。
    むしろ、音だけが強調される分、こっちのほうがエッチな気がする。

  • 8二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:10:44

    「――どう、かな?」

    目を開くと、そこにいたのは、恥ずかしそうに頬を染めながら、くるりと1回転するパーマー。
    全体的に露出は少ないが、わずかに露出している二の腕から腋にかけてと、ちらりと見えるへその部分、それから太ももの絶対領域が健康的なエロスを感じさせる。
    この状況に、ふさわしい言葉を、1つしか知らない。

    「エロちんはパマ」

    吹き出す、パーマー。

    「『エロちんはパマ』って、何ぞれ。あはは、おかしいの! それならまだ『パマちんはエロ』って言ってもらった方がわかるって」

    「でも、ハロウィンのときに、ヘリオスが『パマちんはエロ』って言っていたから。今回は『エロちんはパマ』。前より、さらに魅力的だったから」

    首をかしげる、彼女。
    肩の生地を引っ張ったり、キュロットスカートの裾を治したり、ブラウスを整えてみたり。
    訝しげな、仕草。

    「そんなに、かな? 吸血鬼の時より、大人しいと思うんだけど」

    「でも、パーマーが着ているから、ね。可愛さも性的魅力も段違い」

    「……バカ」

  • 9二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:11:16

    隣に座るパーマー。
    そのままこちらと腕を絡めると、強くその腕を抱き締めてきた。
    柔らかい感触が、押し当てられる。

    「――トレーナーは、エッチな娘が好きなの?」

    「エッチな娘が好きってわけじゃないな。俺が好きなのは、勝負服ではいつもひたむきで、吸血鬼の衣装ではとても蠱惑的で、クリスマス衣装がすごく素敵な、メジロパーマーっていう女の娘だから」

    「……そっか」

    コトリ、とこちらの胸に寄りかかる彼女。

    「来年も、こんな風にトレーナーと一緒に居たいな」

    そんなことを言うので。
    ちょっとだけ、悪戯をしてみたくなる。

    「そう? 俺はそう思わないけど」

    驚きで、息を呑むパーマー。
    目を見開いて、こちらを見上げる。

    「もしかして、それって――」

    「来年は、もっとパーマーと進んだ関係になりたいからね。こんな風じゃなくて」

  • 10二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:11:46

    すると、彼女にポカポカと胸を叩かれる。

    「もう! ビックリしたじゃない! ……もしかして、私と一緒に居たくないのかな、って」

    「ごめんごめん」

    お詫び代わりに、彼女の髪を撫でると。
    先ほどの態勢に戻るパーマー。

    「でも、ここから先の関係は有料だよ?」

    「そうなの?」

    「うん。給料3か月分。払える?」

    悪戯っぽく、聞いてくるので。

    「そうだね。ぜひお願いしたいな。給料3か月分でパーマーが手に入るなら、安いもんだよ」

    「じゃあ、予約して」

    こちらに顔を向けると、艶っぽく微笑むパーマー。
    その色っぽさに、ドキッと心臓が跳ねた。
    平静な振りをしようと試みるものの。

    「予約?」

    「そう、予約。こ・こ・に」

  • 11二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:12:14

    唇を3回、指で叩くと、こちらへ突き出す。
    彼女が、何を求めているか、なんて自明の理。
    パーマーの後頭部に手を回して、唇を合わせる。

    ――彼女とのファースト・キスは。
    ――甘くて、しょっぱくて、脂っこくて、ほんのちょっとだけシュワシュワしていた。

  • 12二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:14:25

    これで終わりです。

    ありがとうございました。


    至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。


    なお、こちらのスレを参考にさせていただきました。

    ありがとうございます。

    クリスマスイブなんですが|あにまん掲示板パマちんはメジロ家のクリスマスパーティー帰りにトレーナー宅に上がり込んで「私がプレゼント」してそうじゃないですか??照れとちょっとの不安が混ざったいじらしい表情してそうじゃないですか???bbs.animanch.com
  • 13二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 01:42:15

    乙です。全部好きだけど

    >しかしながら、尻尾が全く動いていないところをみると、結構本気で聞いてきている。

    辺りのくだりが特に良い…

  • 14二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 09:39:59

    ほしゅ

  • 15二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 20:53:24

    >>13

    感想ありがとうございます。

    ウマ娘は尻尾や耳で感情表現できるから良いですよね。

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