- 1◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:40:38
- 2◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:41:02
「今年もお疲れ様。まだまだスカーレットには一緒に走ってもらわなきゃな」
「お疲れ様、トレーナー。気の済むまで一緒にいてあげるから、安心なさい」
肩に感じる少しの重みと、頬に刺さるウマ耳。その滑らかさと暖かさを感じながら、ディスプレイに映された写真をスライドしていく。
「ありがとう。今年もいろんな事があったね」
「そうね。まさかあんなに一気に同僚……というか、アンタの担当が増えるなんて思ってなかったわ」
そうなのだ。スカーレットを担当し、その功績が認められたおかげで、多くのウマ娘を担当することになった。目まぐるしい数年間だったが、なんとか彼女たちの期待に答えられた、と思う。
「流石にあの人数はキツかったなぁ。でも、スカーレットが側でアシストしてくれたおかげで何とか切り抜けたよ。ありがとう」
「別に、大したことじゃないわよ。アンタの受け売りで話しただけだし」
「それでも、君に助けられたのは変わらないよ。脚質も合ってる子が多かったし、贔屓目抜きでもベストな回答だったと思う」
「へえ、贔屓にしてるのね、アタシのこと。1番のトレーナーを名乗ってるのに、駄目じゃない」
「手厳しい」
もちろんトレーニングメニューに差をつけているわけじゃない。どの子にも真心を込めて接している。だけど、やっぱりスカーレット、最初の担当である彼女だけには、思い入れを強く持ってしまっているのは――確かにそうかもしれない。たとえそうでも一応、頑張って取り繕えているつもりなのだが。 - 3◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:41:30
「……タルマエさんだったわよね、初めての複数担当」
「え、あ、ああ」
ちょうどスライドにタルマエの姿が映し出されたとき、彼女が呟いた。わずかに空気が揺れた。ちょっと炬燵の温度が足りないんじゃないかな。背筋が少々冷えている。
「二人目の担当にして、初のダート路線ウマ娘。スカーレットの適性が広いおかげで、距離に対応する自信はあったんだけど、巻き上げられる砂、経験のない地方のコース、必要とされるステータス……違うことが多すぎて、苦戦したっけ」
「そうね、傍から見てても大変そうだったわ。ダートについて勉強するのも、ウマ娘に寄り添う姿もアンタらしいけど、一時期はハスカップ漬けになってたし、苫小牧に洗脳されたんじゃないかって心配だったんだから」
いや、洗脳なんて人聞きの悪い。
「アンタがこの連休中に苫小牧に連れて行かれないようにどれだけアタシが苦労させられたか、想像もつかないでしょうね」
もちろん招待されれば行くのだが、ほんの数日の話だろう。特に業務にも、彼女と過ごす時間にも問題はないと思うのだが、何を気にしていたのだろうか。と、首をひねっていると、隣の彼女からため息が聞こえた。 - 4◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:41:56
「朴念仁とはこのことね。……次は、シリウスさんだったわね」
「あ、ああ」
スライドが次に移る。
「アンタって、そっちの気があるの? 責められたほうが嬉しい?」
「やめなさい。どっちでもないよ」
「嘘。『子犬』って呼ばれて悦んでたじゃない」
確かにスカーレット以上に強気な彼女にたじろいだのは確かだ。だが、それを悦んだつもりはない。
「……『扉』は完全に開かずに済んだってことね。今のうちにアタシも、アンタに首輪をつけておこうかしら」
「スカーレットからの、首輪」
「冗談よ。がっかりした?」
するもんか。……していないはずだ。
「まあ、もっと有効な首輪は用意してるし、そこは不安に思ってないけどね」
「いつの間に」
「見えない、大きな首輪がね。今は気にしなくていいわ」
どういう意味だろう。口元をわずかに上げる彼女が少し怖い。
彼女の指が画面を動かす。 - 5◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:42:28
「そして、ラモーヌさん」
「うん、まさかメジロのご令嬢を担当できるなんてな」
ティアラ路線で活躍したスカーレットを前に、なんだか時空が歪んでいるような……まあ、気の所為だろう。
「アンタのレース好きが、彼女の琴線に触れて良かったわね」
「ああ、ティアラ路線での活躍、先行脚質、まさにスカーレットの経験を十全に活かせた子だと思う」
パタパタと、彼女の耳が頬を打つ。心地よいような、なにか責められているような。
「ふーん、アタシで練習して、本命はラモーヌさんってわけ」
「そんなこと言ってないだろう? 担当に本命もなにもないよ」
それは事実だ。目の前の彼女に誓って、それはない。
「本当かしら……『愛しているのね、私を』。否定しなかったわよね?」 - 6◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:43:00
「え?」
……いや、スカーレットさん、それは違うんです。
「否定、しなかったわよね?」
彼女の圧力が、顔のそばまで寄ってくる。
「いや、それはだって、あの、あのときはどういう意味なのか分からなかったし、レースにかける情熱を彼女にも持っているという意味では間違ってないし……」
「知らない。……ねえ、今思ったんだけど、アンタが担当するウマ娘、ちょっと特徴的じゃない? アタシもそうだけど、一部分が大きいというか。まさか趣味で選んでないでしょうね?」
「ち、違う。そんなことはない!」
思わず彼女に振り向く。彼女の瞳と目があった。
「担当の子たち、みんなに光るものを感じたから声をかけたんだ。トレーナーとして、そこに嘘はないよ。君とこうして一緒にいるのも、本当に大切だからだよ」 - 7◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 22:43:24
「……本当?」
「ああ」
見つめ合うこと数秒、彼女が不意に笑って、目を閉じた。
「わかってるわよ。もとから疑ってなんかないし、誂っただけ」
「そ、そうか」
……どうやら、一本取られたらしい。再び肩にかかる暖かさ。今度は自分からも頬を寄せる。
「本当に1年間お疲れ様。来年もまた新しい子を迎えるのかしら」
「まあ、機会があったらね」
「そういえば、シュヴァルグランって子がいるの、知ってる? アンタに興味があるみたいよ」
「お、本当か? シュヴァルグランといえば前から気になってた子だな。努力家で才能もあって、なのに自分に自信がない子で――」
「『だから支えたくなる』のかしら。か弱そうな子だもんね、アタシと違って。胸もそれなりに大きいし」
「勘弁してくれ……」
知った仲、深めた絆を改めて確認しつつ、今年最後の夜が更けていくのだった。 - 8二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 22:43:49
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- 9◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 23:08:01
以上です
皆様、良いお年を! - 10二次元好きの匿名さん23/12/31(日) 23:31:21
良い年末だ
こういう軽いヤキモチ見せてくるの好き
猫かぶってたり本心隠してたりする巨乳が気になるダストレ草 - 11◆bEKUwu.vpc23/12/31(日) 23:54:09
- 12二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 00:06:16
やはり年末年始はトレダスを見ないとな
- 13二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 00:13:54
俺、このトレーナーと話し合いそう
- 14◆bEKUwu.vpc24/01/01(月) 08:38:33
- 15二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:57:50
この距離感はもう秒読みですね
複数担当したウマ娘は今年実装分かな
いいssでした! - 16二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 09:28:29
- 17二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 10:08:42
ダスカとラモーヌを両手に花するのは贅沢がすぎる
- 18二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 11:30:45
ロコドルにシンボリ家にメジロ家
贅沢だねぇ
早く一人に絞りたまえよ
はーやーくー - 19◆bEKUwu.vpc24/01/01(月) 12:33:22
- 20二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 19:20:02
- 21◆bEKUwu.vpc24/01/01(月) 21:39:54