- 1二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:34:09
まだ太陽が登っていない薄暗い空
未だ夜の帳の残滓が浮かぶ空
それでも彼方より光が差し込みつつある空
その空が広がる中、私は坂道を登る
だが私だけではない
隣には私のトレーナーさん
時折こちらを振り向きながら私の隣を歩く
互いの息がその寒さを白色で主張する
人間とウマ娘には身体的に大きな差がある
故に彼の方がその白い主張が多い
それでも彼は隣り合ってこの道をただ進む
私が彼に合わせているのか
彼が私に合わせてくれているのか
それとも私達二人を合わせている
そんな"ダレカサン"がいるのか
そう考えていると丘の上に到着する
冬場故に本格的な山ではない
車で行っても駐車場からかなり歩く場所
それ故にこの場所には誰も居ない
いや、誰も来ようとはしない
だからこそ…私達には好都合 - 2二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:34:45
彼方を見ると海が見える
まだ朝日が登る姿は見えていない
だがはるか先の空は光が差し込んでいる
まるで夜空という名のキャンパスの端に
朝日という名の絵の具を塗り始めた様に
そして次第にそのキャンパスを塗りつぶすのだろう - 3二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:35:03
私達は近くにあったベンチに腰掛ける
腰掛けた私が取り出したのは保温性の水筒
続けてコップを二つ取り出して水筒の中身を注ぐ
水筒の中身には私が出かける前に淹れたコーヒー
それを注いだコップを手渡してもう一つ注ぐ
そして湯気を出し主張するコップに口つける
———温かい
寒空の下、冷たい風が吹き付ける中
コーヒーの温かさが私達の身体に染み渡る
温かいとトレーナーさんは褒めてくれた
美味しいとトレーナーさんは褒めてくれた
持ってきてよかったと内心で自身を褒め称える
コーヒーを淹れるのには手間がかかる
もしかしたら日が昇ってしまうかもしれない
そんな事は承知の上
でも、それでも———
新しい年の初めての温かい飲み物は
トレーナーさんが初めて摂り入れる温かさは
他の飲み物になんて譲りたくなかった - 4二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:35:24
暫くするとトレーナーさんが向こうを指差す
見れば空の彼方から朝日が顔を出す
夜空のキャンパスが明るく染まっていく
常に変わらず明るく輝くそれは
登るや否や私達を明るく照らす
———暖かい
遥か空の彼方、それより遥か宇宙の彼方
途方のない距離を隔てている私達と太陽
それでも尚、私達の身体に熱を与えてくれる
生きる者全てに等しく活力を与える光と熱
新しい年の初めての光と熱を
他に誰もいないこの時この場所で
アナタと共に受け止める事ができてよかった - 5二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:36:16
物音がしたのでふと横を見ると2匹の猫
互いに身体を擦り寄って戯れあっていた
そんな姿を微笑ましいと思った
そんな姿を可愛いと思った
そんな姿に対抗心が芽生えた
隣を向けばトレーナーさんと目が合った
私に微笑んでくれるその顔が
私を見守ってくれるその瞳が
私を信じてくれるその優しさが
他の何より愛おしい
他の誰より愛おしい - 6二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:36:42
貴方を
あなたは
アナタダケハ
ホカノダレニモ、ワタシタクナイ———
私はトレーナーさんのコートの中に
その身体を擦り寄らせるように潜り込んだ
———あたたかい
コーヒーは身体の隅々まで温めてくれた
朝日は私達の身体を照らして暖めてくれた
でも———
このあたたかさは…
このぬくもりは…
私の心をあたためてくれる
私の心を包み込んでくれる
コーヒーの温かさや
太陽の暖かさでは
決して真似できないあたたかさ
今この瞬間をこうして永遠に感じていたい - 7二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:37:14
でもそれはしない
それが全てではないから
それだけがあたたかさを感じる術ではないから
それに初日の出も魔法が解ける様に
昇り切れば普段と変わらぬ太陽になる
だからこそこの短い間の出来事が
貴重なひと時となるのだから
暫く日の出を眺め、感慨に浸る
そして私達はもと来た道を歩き出す
この後は初詣
私達がこの1年を無事でいられるように
私達がこの1年を駆け抜けられるように
私達がこの1年を充実できるように
2人で祈る大切な行い - 8二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:37:24
でも———
無事でいられるのも
駆け抜けられるのも
充実できるようにするのも
大切だけど…
私の祈る事は…
私の望む事は…
このあたたかさと…そしてアナタと…
ずっと…ずっと……! - 9二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:37:44
夜の帳が消えかける空
朝日が差し込みつつある空
夜明けという名のキャンパスに描かれた坂道
そんな坂道を私達は登る
互いに手を繋ぎ、同じ歩幅で歩みながら
足を揃えてあの時の高台に踏み入れる - 10二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:38:03
変わる事のない風景を眺めて
変わる事のないベンチに腰掛けて
変わる事のない朝日を見つめて
そして2人で寄り添いながら
変わる事のないコーヒーを飲む
———温かい
———暖かい
———あたたかい
今も変わらぬ三つのアタタカサ
それは私達の身体を心を優しく包み込む - 11二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:38:20
ふと横を見ると2匹の猫と数匹の子猫
朝日を受けながら睦まじく寄り添っている
この景色は変わらないけれど
この朝日は変わらないけれど
このアタタカサは変わらないけれど
きっとあの猫達のように
アナタも私も
変わっていく事があるのでしょう
変わらぬアタタカサと言ったけれど
もっとアタタカクなりたいと
もっとそれを感じていきたいと
私の心が強く願う
それと同時にあの猫達を見て
私の心の対抗心がまた芽生えてくる - 12二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:38:40
そろそろ時間
昇りきった朝日を背にして
私達はもと来た道を歩み出す
次に向かうは初詣
私達の一年を祈っていきたい
祈る事は決まっている
でもそれはきっと難しいかもしれない
叶うのがいつかはわからない - 13二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:39:00
でも…アナタとなら…きっと…
あの時のように叶えてみせる
あの時のように掴み取ってみせる
そう思いながら私達は手を繋ぐ
今の私達にはありふれた仕草
でもそれがいいんです
アナタの想いが伝わってくるから
アナタのあたたかさが伝わってくるから - 14二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:39:16
アナタのそれが私に伝わるように
私のそれもアナタに伝わるのでしょう
鏡のように一寸の狂いもなく
同じタイミングで互いの足が止まる
同じタイミングで互いの目が合う
ならばする事は1つ、伝える事は1つ
もう私達には分かりきっている事だけど
それでも言わなければ伝わらない
伝えなければ始まらない - 15二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:39:37
———大好きです、あなた
———俺もだよ、カフェ
互いの想いを、言葉を交わし合って
この年の1歩目を踏み出していきたいから
———今年もよろしくね
———はい、こちらこそ
再び私達は歩き出す
朝焼けと夜空が交わる幻想的な空
星が輝く夜空を見つめながら
輝く朝日をその背に受けながら
そしてその輝きの一部を
私達の指に宿るあたたかさで返しながら - 16二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:39:55
今年もあたたかい一年になりますように———
- 17二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:40:10
そう思いながら私は思い描く
今年という名のキャンパスに
あたたかい未来を、道のりを
あなたと共に眺める
果てなきその景色を——— - 18二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:40:45
以上初日の出をトレーナーと一緒に眺めるカフェの怪文書でした
- 19二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 08:41:33
すまん、スレタイ見てケンシロウがスレ立てしとると思ってしまった
- 20124/01/01(月) 09:01:34
- 21二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 10:05:31
新年初カフェいいぞ…
- 22二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 13:28:45
感想ありがとうございます
- 23二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 13:43:30
文豪がおられる
- 24124/01/01(月) 16:39:34