- 1124/01/01(月) 22:09:59三女神像の前に行ったらウマ娘になった partFINAL|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/2576612/?res=192前回までのあらすじ: ある日三女神像の前を通りがかった所、女神ゴドルフィンバルブの導きでウマ娘にされてしま…bbs.animanch.com
前回までのあらすじ:
ある日三女神像の前を通りがかった所、女神ゴドルフィンバルブの導きでウマ娘にされてしまった主人公ことトレーナー。しかし彼は家庭環境の歪みによって幼少期から「ウマ娘になりたい」と願い続けてきた狂人だった。
『サンライクガベージ』と名を変え、担当であるサンフォールと共にウマ娘とトレーナーの二重生活を送るトレーナー。しかし彼はウマ娘として過ごしていく内に、自分の身体に隠された秘密を知る事になる……。
とうとう全ての因縁に決着を付け、自分の生きる道を見つけたサンライクガベージことトレーナー。長かった3年間の物語も終わろうとしていた。
- 2二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:12:39
前スレです
10まで保守
三女神像の前に行ったらウマ娘になっちゃった…|あにまん掲示板……困惑と同時に昏い喜びが湧き上がってくる。俺はずっとウマ娘に憧れていた。頑強な身体、美しい容姿。俺に無い物ばかりを持つ彼女達の姿は、いつだって痛いほど眩しかった。けれど生まれという壁はどうしようもな…bbs.animanch.com三女神像の前に行ったらウマ娘になった part2|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/2486774/前回までのあらすじ某女神の力でウマ娘になったトレーナー。しかし彼は両親のしがらみから「ウマ娘になりたい」と願い続けてきた異…bbs.animanch.com三女神像の前に行ったらウマ娘になった part3|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/2501598/前回までのあらすじ 三女神像の前に行ったら突然ウマ娘になってしまったトレーナーことサンライクガベージ。しかし彼は幼少の頃か…bbs.animanch.com - 3二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:13:04
保守
- 4二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:13:16
ほ
- 5二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:13:26
し
- 6二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:20:50
ゅ
- 7二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:33:57
はい
- 8二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:34:11
あとすこし
- 9二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:34:25
がんばれ
- 10二次元好きの匿名さん24/01/01(月) 22:34:36
終わり
- 11二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 01:54:23
保守
- 12二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:15:56
乙
- 13二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 20:24:40
新スレ乙
- 14二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 02:00:40
保守
いよいよ大詰めかな - 15124/01/03(水) 11:35:31
- 16二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 11:51:28
いよいよ最後か…
ここ最近の朝の楽しみだったから少し寂しくなるな - 17二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 15:11:07
本当に長らくお疲れ様
- 18二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 00:39:08
- 19二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 02:43:53
「……やっぱり何も反応しませんね」
「……だな。帰るか」
俺とフォールは溜息を吐いて三女神像を後にする。うららかな春の陽気は日の傾きと共に鳴りを潜め、未だに寒さを感じさせる夜の風が俺達の頬を撫でた。
マイルCSから数ヶ月。何故かゴドルフィンバルブと会えなくなってしまった俺は、他に人間に戻る手立てが無いか一応確認するべく、全ての始まりである三女神像へと足を運んでみた。
だが、どれだけ待っても何をしても俺の身体が元に戻る事はなかった。こちらからゴドルフィンバルブに接触する方法も無いし、これで俺が人間に戻る手段はしばらく無くなったということになる。
自分で選んだ道だし今さら戻りたいという気も起きないが……これで本当に人間に戻れなくなってしまったと思うと、少し怖いような、寂しいような気分になる。
……まぁ、あんまり引きずっていても仕方ない。変なことを考えているとまた姉さんに怒られそうだし、とりあえず今のうちはウマ娘で居られる事を喜んでおこう。
「ところで、あれからご両親とはどうなったんですか? お姉さんに身体貸すって言ってましたけど」
「ああ、たまに連絡取ってるよ。今度2人に会いに行くから姉さんと話し合ってみようと思ってる」
姉さん──ガベージフラワーとは夢の中で話をしている。といっても、俺から姉さんに会いに行ける事はほとんどなく、大抵は姉さんが勝手に捲し立てて終わってしまうのだが。
父さんと母さんはまたレース関係の仕事に就いたらしい。今は真面目に働いて「もう仕送りはしなくていい」と俺に言えるくらいには稼げているようだ。
「そういえば……最近トッポギさんとジュエルの姿を見ないな。フォールは何か知らないか?」
「ああ、それなら──」
dice1d3=3 (3)
1.現役続行
2.トレーナーを目指して勉強中
3.海外のGⅠへ挑戦
- 20二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 04:29:20
つよい
そういや春ってことは先の一件からここまでの間にチャンピオンズカップにサウジやドバイとあったな - 21二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 10:58:27
結構好成績残してるかも
- 22二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 20:15:21
このレスは削除されています
- 23二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 20:15:36
そういやフォールの方はどうしてたんだろう
本来の戦場はダートだから冬は結構忙しかった気もするが - 24124/01/05(金) 01:29:49
フォールはdice1d3=3 (3)
1.東京大賞典
2.フェブラリーステークス
3.かしわ記念
に出てdice1d100=49 (49) だった
1〜30→着外 31〜70→掲示板 71〜100→1着
ジュエルはdice1d3=1 (1)
1.チャンピオンズカップ
2.サウジカップ
3.ドバイワールドカップ
に出てdice1d100=76 (76) だった
1〜40→着外 41〜80→掲示板 81〜100→1着
- 25二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 01:44:54
ダイステーブルが変わった分難易度上がってる印象を受けるから後輩たちあるいは地方勢が強そうだなあ
ジュエルは2着かなこりゃ、中東には行ったんかしら - 26二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 08:41:01
ダートは選手寿命も長いし、リベンジに燃えてそう
- 27二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 18:12:48
保守
- 28二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 02:15:12
保守
- 29124/01/06(土) 02:17:27
すみません、今日は体調悪いので寝かせていただいてもよろしいでしょうか…
明日には更新できると思うので… - 30二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 02:19:00
お疲れ様です
健康第一ですからお大事になさってください
明日楽しみにしてます - 31二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 11:34:02
インフルエンザも流行ってますしご自愛ください
- 32二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 21:40:54
暖かくしてねなよ
- 33二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 01:57:03
「何か海外のレースに向けて色々と準備してるみたいですよ。この前のチャンピオンズカップでも良いところまで行ったし、これなら向こうでもやれるだろうって」
「へぇ〜……って、海外!? 俺なにも聞かされてないんだけど……」
「まぁ、トッポギトレーナーもあれで天然な所ありますし、報告し忘れたんじゃないですかね。……それにしても海外か。私も精進しないと」
フォールは引き締まった顔になると、何かを決意したように拳を握りしめる。フォールもかしわ記念で掲示板に入れたが、まだまだ満足していないらしい。しばらくは現役を続ける事になりそうだ。
……しかし、進路か。俺は前々から考えていた問題を予定外の所で掘り返され、少し暗い気持ちになった。
実のところ、俺の将来はもう決まっている。
区切りの良い所でレースを引退し、書類だけトレーナー科に編入。規定の年齢に達したら理事長肝入りのトレーナー試験を受け、サンライクガベージとして正式に中央のトレーナーに……といった流れだ。
だがこの計画は意外な所に穴があった。トレーナー試験は成人しないと受けられないのだが、どうやらウマ娘の俺は3年経っても成人には程遠い年齢らしく、成人まではあと数年掛かるとの事だった。
成人まで数年。何もしないには短すぎるし、現役を続けるには少し長すぎる。フォールだってそこまで走れるか分からない。だが他の担当を持つには俺の事情は特殊すぎるし、かといって今さら他の若い子に混じってトレーナー科の授業を受けるのも何だか辛い。
誰かに相談しようにもトッポギとは話す機会がないし、姉さんには『良い機会だし学び直してきなさいよ』と叱られるし、フォールには「じゃあずっと走ってればいいじゃないですか」と言われるし、すっかり将来の事を考えるのが嫌になってしまった。
とはいえ、このままズルズルと先送りにしていても良い結果にはならないだろう。どうしたものかと頭を悩ませていると……。 - 34二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 02:00:05
「な……何だこれーッ!!」
──不意に、後ろから少女の悲鳴が聞こえた。この方向は……三女神像の方だろうか。
フォールと一緒に声のした方向に走っていくと、そこには明らかにオーバーサイズの服を着たウマ娘がオロオロと慌てた様子で立っていた。
「な、何これ……!? どういう事!? なんでウマ娘に!?」
「……トレーナーさん、これは」
「まぁ……そういうことだろうな」
三年前のあの日を思い出す。苦難も、幸福も、全てが始まったあの日。そういえばあの日もこんな春の夕方だったっけ。
「あの……大丈夫ですか?」
俺はそのウマ娘に向けて手を伸ばす。かつて誰かにしてもらったように、誰かに何かを託せる選択を──。
dice1d1=1 (1)
1.助ける
- 35124/01/07(日) 02:02:31
これにて「三女神像の前に行ったらウマ娘になった」シリーズは終了となります
ここまで応援してくださり本当に感謝、そしてお疲れ様でした
後は書きながら思った事・考えてた事を適当に書いていきたいと思います - 36二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 02:15:42
このレスは削除されています
- 37二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 02:18:16
本当にお疲れ様でした
長い間楽しませていただきましてありがとうございました
よかったら作中で開示された以外の各キャラの外見情報(各種色とか髪型とか耳飾りとか)をあとがきついでに聞かせてもらえると嬉しいです
>トレーナー試験は成人しないと受けられないのだが
あー……それで以前公的に自分で自分を担当すると外聞が悪いって話があったのか
単純にそれやると脱法トレーナーになる世界線だったのね
- 38124/01/07(日) 02:32:25
外見については単純に展開に関わらない割に労力が掛かるのと、振る機会が無くてすっかり忘れてました
今さらでもいいならダイスで決めちゃいましょうかね - 39二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 02:36:47
すみませんありがとうございます
割と気長に追う話だったのである時ちょっと絵でも描いてみたいと思って読み返したら外見情報少なくて頓挫したのですよね……
でも実際言う通りだし、外見はっきりしなくても面白かったから今オマケ的に振ってもらうくらいでちょうど良かったと思います - 40124/01/07(日) 02:42:50
サンライクガベージ
髪型dice1d5=5 (5) 毛色dice1d6=3 (3)
髪飾りdice1d2=1 (1) 流星dice1d4=1 (1)
サンフォール
髪型dice1d5=4 (4) 毛色dice1d6=2 (2)
髪飾りdice1d2=2 (2) 流星dice1d4=4 (4)
ムーンライクジュエル
髪型dice1d5=4 (4) 毛色dice1d6=6 (6)
髪飾りdice1d2=2 (2) 流星dice1d4=2 (2)
モチモチトッポギ
髪型dice1d5=5 (5) 毛色dice1d6=5 (5)
髪飾りdice1d2=1 (1) 流星dice1d4=4 (4)
髪型
1.ショート 2.ボブ 3.ミディアム 4.セミロング 5.ロング
毛色
1.栗毛 2.栃栗毛 3.鹿毛 4.青鹿毛 5.芦毛 6.白毛
髪飾り
1.右 2.左
流星
1.なし 2.小 3.中 4.大
- 41124/01/07(日) 02:45:32
こんな感じで大丈夫でしょうか…?
他に必要な事項があればお伝えください - 42二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 02:51:22
ありがとうございます
見事にバラけましたね……
トレーナーさんがコモンオブコモンなのとトッポギコンビの流星が実質機能してないの芝
何気にトレーナー(ひいては姉や妹?)が右耳で担当が左耳で一致してるのも面白い偶然だ
あとは目の色でしょうかね、振れない案件なので無理に扱わなくても構わないけどどんな耳飾りかもよかったら - 43124/01/07(日) 03:19:28
瞳の色
サンライクガベージdice1d9=3 (3)
サンフォールdice1d9=6 (6)
ムーンライクジュエルdice1d9=2 (2)
モチモチトッポギdice1d9=6 (6)
1.茶 2.赤 3.青 4.金 5.銀 6.ピンク 7.水色 8.紫 9.緑
髪飾りのデザインについては私の勝手な解釈で申し訳ないんですが
サンライクガベージ→太陽っぽい花の紋章
サンフォール→リボンなどのファッションアイテム
ムーンライクジュエル→幾何学な形の宝石
モチモチトッポギ→金やレースをあしらった豪華な物
こんな感じでしょうかね
トレーナーはチケゾーやボリクリ、ジュエルはイクノやタキオン、トッポギはドーベルやダイヤみたいなのがイメージに近いです
- 44124/01/07(日) 03:22:01
とりあえず適当に書いた感想とか裏話でも書いていきたいと思います
ストーリーとキャラに分けて書いていくよ - 45124/01/07(日) 03:25:47
ストーリーについて
実はこのスレはほとんどネタスレ気味に建てた物で、ストーリーに関する構想は一切ありませんでした。クラシック後半に出てきた「走りすぎると身体が壊れる」という設定も最初のライバル登場時に考えたものです。
シニアからは「夢を捨てて人間に戻るか」「命を捨ててウマ娘で居るか」という二択を迫って、「ウマ娘で居るならこういう結末が待ってるよ」という説明の為にトッポギ編を挿れる予定だったんですが……シニアの序盤に全部ひっくり返されて内心「これマジ?」になってました。
なのでトッポギ編は「どうすれば人間かウマ娘かで悩ませられるかな……」という所に悩みつつ、全体の趣旨を崩さないよう気を遣いながら書きました(伝わったかは分からないけど)。
そして「トレーナーのバックボーンをもっと掘り下げたいな」「面倒だからこれ以上文章量増やしたくねえな」という心が二つある状態で見切り発車させたのがフラワー編です。
最初は「伏線も何もないのに書けるわけねーだろボケ!!」と自分にキレながら書いてましたが、振り返ってみると「やっぱこれ無いとダメだわ」と思わざるを得ないほど話の根幹に関わる部分でした。初期構想だと「フォールとトレーナーが一騎打ちをしたあとトレーナーの両親から電話が掛かってきて終わり」っていう何とも薄い終わり方だったらしいですよ。
ちなみにここはむしろ「人間に戻るべき」という意見を強くしすぎないよう気を付けてました。「必ずしも人間に戻る事が正解ではない」と思わせる為にあれこれ描写や設定を練りながら書いてたんですが、ちょっとそれが強すぎたかな?と思う部分もあったりします。
本作は(私が勝手に)フォール編、トッポギ編、フラワー編といった感じの区切り方をしていたのですが、個人的にはフォール編の感じが好きでした。完成度ではトッポギ編かフラワー編の方が良いんでしょうけどね。トレーナーとフォールの「担当以上恋愛未満」みたいな関係性を描きたかったんや……。 - 46二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 03:43:06
まさに連載はワンダーランド
フォール編や彼女とのイベントの空気感は自分も好きだったなあ
トッポギ編のひっくり返ったと思しい部分の安価は
AかBと問えば何とかCを見出そうとする人の性が出ちゃった感ある - 47二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 13:58:04
保守
- 48二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 14:20:20
キャラについて
・トレーナー(サンライクガベージ)
最初は「TSしてビックリしてるトレーナーのスレばっかだけど、もしトレーナーの方が頭おかしくてウマ娘化に抵抗がなかったらどうする?」みたいな思い付きで考えたキャラ。ルートによっては邪神を祀る因習村の出身だったかもしれない人でした。
最初の才能ダイスでバカみたいな数値を出してしまったので、出来るだけ嫌味のないキャラにしようと努力しました。実は「走ると身体が崩壊する」という設定もその煽りを受けて出来た物です。
それが行き過ぎたせいか「お人好しの常識人」になってしまったのはちょっと勿体無かったかもしれません。ラストでは少しでも彼の歪みを表現しようと頑張りましたが、そのせいでキャラの一貫性が崩れちゃったかもと思う部分もあります。キャラを作る時に大切なのは思い切りと度胸だと本気で思いました。
でも俺は割と好きだよ……他人の為に一生懸命頑張ってるから……。好きになるのに躊躇いのないキャラには出来たと思う……多分……。 - 49124/01/07(日) 14:21:14
・担当(サンフォール)
「せっかく担当としてトレーナーの横に置くんだから、トレーナーに負けないくらいキャラを立たせるか!」
「トレーナーとは強い絆で結ばれてるけどベタベタしすぎないタイプの子、描きてェ〜」
「ダイス結果が天才型になっちゃった……。えっこれでファッションセンスもあるんですか? 待てよ、そこから整合性を取ると……」
詰め込みすぎた。
良い意味で全てのコンセプトが中途半端な感じになった子という印象。色々な描写が間に合わなかったおかげ(?)で角が取れて丸くなった、と表現すべきでしょうか。
結果としてトレーナーの隣に居るのが一番輝くキャラになったと思います。特にフォール編でじっくり2人のイベントを描写したのは本当に良かった。古着屋のシーンなんかは「ウマ娘世界でのTS」を上手く表現できたなと自分でも思うくらいです。
それにしても、序盤のフォールのダイスはとんでもなく荒れてましたね。
あれのお陰でフォールのキャラは面白くなりましたが、書く側としては頭が痛かった……。 - 50124/01/07(日) 14:21:54
・担当のライバル(ムーンライクジュエル)
もっとキャラを立たせたかった……。
進行の関係でどうしてもキャラを掘り下げる機会がなく、ちょっと印象薄めになっちゃったな……と思っている子。
没設定では「幼少期から何をやらせても卒なくこなすタイプだったが、逆にどれだけ頑張っても本当の天才には敵わない子供だった」という、本当に何でも出来るフォールの対となる設定を考えてました(それを描くと才能関連の話が続いてくどくなるためボツにしましたが)。
ジュエルとトッポギの馴れ初めもそこで描くつもりだったんですが、上の設定が没になった影響で一緒に消えてしまいましたね。ジュエルの為にもちゃんと尺を割くべきだったと反省してます。
作者の贔屓目もありますが、個人的には結構好きなキャラです。
「燃え盛る闘志を剥き出しにしつつ、心の中でちゃんと一線は引いている」という感じのキャラ造形が伝わってると嬉しいです。 - 51124/01/07(日) 14:22:30
・トレーナーのライバル(モチモチトッポギ)
このシリーズの中でもすごく良い感じにキャラを立たせられた人。トレーナーの師匠兼ライバルとしてかなり上手く機能してくれました。
口調が古めかしい男性風なのは登場時にまだ元の性別や年齢が決まっておらずどうとでも出来るようにしたかったから。とはいえ、結果的にはトッポギのキャラ造形に大きく貢献してくれたように思えます。
トッポギ編は単体で綺麗にまとまった物語になってくれました。作品全体の世界観を掘り下げつつ、トッポギ自身の解像度も高められた良いシナリオだったと思います。というか作者的には「こんな可愛い名前でこんなシリアスな話していいのか……?」と思う事すらありました。
ただ、ジュエルとの絡みが少なくなったこと、ラストで力尽きておざなりになってしまったことは少し心残りです。妹との問答はこの作品でも一番好きなシーンなんですけどね。
とはいえ、細かいキャラ付けといい、トッポギ編の完成度といい、個人的には概ね満足な出来になりました。その点を踏まえるとやっぱり一番好きなキャラはトッポギですね。 - 52二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 22:04:35
こうしてみると取捨選択やまとめ方がやっぱりお上手
そうして都度考えてきたこととか何より書き切ったことが絶対今後に活きていくと思う - 53二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 22:27:04
4人ともホントに大好きです。
それぞれがそれぞれのキャラを引き立ててかつサンライクガベージの物語を彩っていてすごくすごい良かった。
個人的にはサンフォールが好きでした。クールな感じだけどトレーナー大好きな所とか推せる。 - 54124/01/08(月) 00:03:11
・???(ガベージフラワー)
「もう少しトレーナーと両親の深掘りしたいよな〜。でももう2ヶ月書いてるしこれ以上書くのもキツいわ……。とりあえずダイスに紛れ込ませて外れたら諦めるか〜」
ダイス神はバカ。
いや、見返してみるとめちゃくちゃ必要な部分だったけども……。これのせいで完結が1ヶ月伸びたのは流石にヤバすぎでしょ。
ガベージフラワーのキャラ造形はだいぶ苦心しました。お淑やかにするとトッポギの妹とキャラ被りするし、あまり殺意剥き出しだと取っ付きづらいし、ポッと出だけど好かれそうな性格で、シナリオとの整合性も取れて……と本当に課題の多いキャラだったので。
とはいえ、終わってみると中々愛着の沸く子だったのも事実。この子のおかげでトレーナーと両親が和解できたような物ですし、色んな意味で無くてはならない存在でした。
前々から言っている通り、フラワー編は全く構想も伏線もない状態からほぼアドリブで書いてました。なので、ところどころ駆け足になってしまったり独りよがりな展開になってしまったかなと不安だったりします。
とはいえ物語的には許されるラインの物が出来たと思いますし、個人的には納得しているレベルの完成度です。二者択一ではなく三択目を選んで大団円、という展開が出来たのはベタですが良かったと思います。 - 55124/01/08(月) 00:24:58
以上、シリーズの感想などでした
後は皆様からの質問への答えと没になったジュエルとトッポギの馴れ初めを描いたSSでも投下して終わりにしようかなと思います
最後に、ここまで見てくださり本当にありがとうございました。
皆様の応援のおかげで3ヶ月という長い期間を乗り越える事が出来ましたし、皆様のコメントが次の展開を考える手助けになった事もありました。
というか本当に長かったです。これ全部で何文字くらい書いた? どう考えても執筆中に書いた卒論(一万字くらい)より文量多いよねこれ? 教授に見つかったら普通にキレられそうで怖いよ。
こんなに長編の話を書いたのは初めてだったので自分でも驚きです。最初の1レス目が投稿された日時を見る度に「本当に3ヶ月も経ったんだなあ」と思うと同時に、3ヶ月ものあいだ着いてきて下さった皆様に感謝の念が込み上げて来ます。
また別の場所でお会いする事があれば(他にもスレを立ててるのでその気になれば明日にでも会えるでしょうが)、また応援して下さると有り難いです。最後になりますが本当にありがとうございました。 - 56二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 00:38:35
改めてお疲れ様でした
個人的に振り返って面白いのが大団円はトッポギもまたそうであること
選手生命に関しては元々安田をラストランのつもりだったから
よく考えると生還かつ歩行能力を死守できた時点でマイナス感がそんなにないし
全てを賭けたレースに勝った上で妹やトレーナーさん達に救われて戻ってきているのよね
しかも生還後もウマ娘のまま≒妹と一緒だ
二者択一が抗う道にひっくり返ってこれにたどり着いたところや
ライブ感が最も高いフラワー編で彼女やトッポギ編で出た要素が
話でもおそらくはメタ的にもこの結末へ導く鍵になったところなんかは
両トレーナーや担当達の関わり合いが運命を変えた本家シナリオめいた空気感があったかも - 57二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 00:40:21
即興でこれだけ上手くまとめるのがすごい
本当にお疲れ様でした - 58二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 07:17:38
保守
- 59二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 10:37:13
完走お疲れさまでした!
こういう作品を見ると自分もやってみたくなるけど、時間に余裕があるときじゃないと大変そうだなあ… - 60二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 13:57:42
完走お疲れ様
- 61二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 21:39:14
夢の中でサンライクガベージにやんややんやお節介言ってるフラワーお姉ちゃん見てぇなーチラッ
- 62二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 22:09:35
確かにジュエルとトッポギの出会いとかもそのうち見れるならそちらも見たさあるね
某育成ゲームのアルバム的な - 63二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 07:28:31
いいな、こぼれ話的なやつ
見られるなら見たいぜ - 64二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 14:06:54
保守
- 65二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 22:38:21
とりあえずジュエルとトッポギの話は待ちたいし保守しとこ
- 66二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 03:39:04
ほ
- 67二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 12:50:07
しゅ
- 68二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 00:12:14
保守る
- 69124/01/11(木) 02:20:53
- 70二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 08:48:56
お疲れ様です…
負担がかかるとわかりながらも読みたくなってしまうジレンマ - 71二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 11:11:23
保守
- 72二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 22:13:53
保守
- 73二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 03:21:22
待ってる
- 74124/01/12(金) 13:24:34
お疲れ様です
今日の夜には更新したいと思います - 75二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 00:25:49
待機
- 76124/01/13(土) 04:42:22
自慢じゃないけど、あたしは昔から何でもできた。
ピアノ、そろばん、勉強、レース、空手。小さい頃から色んな習い事をやってたし、どれもこれも人並み以上に飲み込みが良かった。
『ジュエルちゃんって何でも出来るんだね!』
親からも、友達からも、先生からも、そんな事を言われてちやほやされた。
いつでもどこでも宝石の様に扱われたし、実際あたしはどこでもずっと一番だった。
きっとあたしはずっとこんな風に生きていくんだ。いつでもどこでも一番を取って、ずっと幸せに生きてくんだ。ガキの頃のあたしは無意識にそう信じてた。
『きょ、今日からこのレース教室に入りました! ──です! よろしくお願いします!』
……小学5年の時、その子に会うまでは。 - 77124/01/13(土) 04:47:55
その子は特に頭が良い訳じゃなかった。ドジで、逆上がりが出来なくて、ピアノも弾けなければ新しいゲームも持ってない。どこを切り取ってもあたしの圧勝だった。
『──ちゃんすごーい! ジュエルちゃんに勝っちゃうなんて!』
……足の速さという、ただ一点を除いては。
その子はあまり練習には顔を出さなかったが、ひとたびターフに立てばどんな子だろうと前を許さず、見る者全てを虜にした。
家の都合でトレセンには行けなかったみたいだけど、大人の間では「支援してでも行かせるべきじゃないか」という話さえ持ち上がっていたらしい。
もちろんあたしにとっては気分の良い話じゃない。たまにしか練習に来ないくせに、来たら来たでチヤホヤされる。本当ならあたしがそこに居るはずなのに、何でアンタみたいなのに奪られなきゃいけないんだ。
あたしは親に頼んで他の習い事を全て辞め、レース教室一本に絞った。それからは必死に努力して、子供なりにあの子に勝てるよう色々頑張った。
夏休みに入って、新学期が始まって、6年生になって、また夏休みになって、雪が降り始めるようになっても、あたしは走り続けた。
けど、それでもあたしはあの子がレース教室を辞めるまで一度も勝てなかった。
あの子や他の子が泣きながらお別れをしている中、あたしだけが「もう2度とあの子に勝つ機会は無いんだ」と思いながら泣いた。
そしてその時、あたしは気付いた。あたしには"本物"になるほどの才能は無いんだと。
あたしはどんな事でもそれなりに上手くはなれる。けど"本物"の輝きには敵わない。あたしの才能は……イミテーションでしかないんだと。 - 78124/01/13(土) 04:53:51
それから何年かして、あたしは親の勧めで中央のトレセンに入った。
正直言ってあたしは乗り気じゃなかったけど、周りの人間が揃って「もったいない」だの「何事も挑戦だ」だの無責任に言うもんだから、行かざるを得なかった。
結果は言うまでもない。選抜レースではボロ負け、トレーナーには見向きもされず、あたしは宝石どころかその辺の石ころくらいにしか扱われなくなった。
惨めで、苦しくて、悔しくて。それでも親や友達に「何も出来ずに帰ってきた」なんて言いたくなかったから、先の見えない努力を毎日続けた。
早朝の誰も居ない時間から走り込んで、教官と何度も走り方を話し合って、自分なりに筋トレや戦術について調べて実践して。屈辱と焦燥に精神を擦り減らしながら、思い付く事をひたすら試していった。
そしてある日、あたしは選抜レースで掲示板に入る事ができた。
正直、凄く嬉しかった。思わずガッツポーズしてしまうほど喜んだ。結果を残せた事にホッとして、苦労が報われたような気になって──。
……1着じゃなくてもこんなに喜べる様になった自分が、酷く悲しくなった。
レースが終わった後、校舎の裏で膝を抱えてボロボロ泣いた。
こんな場違いな所でみじめな思いをするくらいなら、いっそ井の中の蛙で居た方が幸せだったのに。小学生の頃から……あの子に勝てなかった時から分かってたはずなのに。なんであたしはこんな所で──。
「どうしたんだ? 気分でも悪いのかね?」
そんな時だった。
あいつと──トレーナーと出会ったのは。 - 79二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 11:57:57
そういえば固定値一塊だから才能値があまり高くなくてもおかしくなかったんだよな
家の都合でトレセンに行けなかったヤバいやつかあ
こういう気にしてもしょうがないけど気になるやつがしれっと現れるの世界の奥行きが感じられて好き - 80二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 23:10:09
保守
- 81二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 09:25:46
保守
- 82二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 14:30:06
入学できなかった子ともあとで再会できて、心の始末がつけられたんだろうか
- 83二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 00:01:36
保守
- 84二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 01:48:26
「……何でもない。ほっといて」
「何でもない事は無いだろう。さっきはガッツポーズして喜んでたじゃないか」
「〜〜〜ッ!!」
脳が一気に沸騰する。
見られてた。あんな恥ずかしい所を他の奴に見られてた。
「うっさいな!! いいから放っとけって言ってんの!! アンタ耳聞こえないの!?」
あたしは自分を叱るように大声を出す。泣いちゃダメだと思っているのに目からは熱い物が流れ出て、声は自分でも分かるくらい湿っている。
もう嫌だ。寮に帰ったら今すぐこんな学園出てやる。こんな所に来たこと自体間違いだったんだ。
「……そうか、残念だな。君をスカウトしようと思っていたのだが」
「え?」
その言葉を聞いてあたしは顔を上げる。そこにはトレセンの生徒ではなく成人した人間の女性が立っていた。
若い女の声だからてっきり生徒かと思っていたけど、あたしの勘違いだったらしい。あたしはすっくと立ち上がる。
「スカウトって、あたしに? なんで?」
「1着と2着の子以外では一番魅力を感じたのでね。1着や2着は分かりやすいから他のトレーナーもすぐ食い付く。掘り出し物を探すなら3着から5着辺りが丁度良いのだよ。……不満かね?」
「いや……いや! 全然オッケー! むしろありがと!」
心の暗雲が切れて光が差し込んでくる。あんなに悔しかった気持ちもどこかへ消え、あたしにもようやく運が巡ってきたんだと気分が明るくなった。
「では、スカウトを受けてくれるという事で宜しいかな?」
「あったり前じゃん! はぁ〜もうマジで……ほんと良かったぁ……」
そうか、とその人──トレーナーは笑って頷く。あたしも涙を拭って笑顔を見せる。あたしは天にも昇るような気分で契約書に名前を書き、その日の内に専属契約を結んだ。
そして翌日、あたしはとんでもない悪魔と契約を結んだ事に気付いた。 - 85二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 02:00:37
そいつは別にハラスメントをしてくる訳でもなければ、変なトレーニングをさせてくる訳でもない。もちろんドーピングや反則行為にも手を出させる事は無い。
トレーナーの指導の中でヤバかったのはたった一つだけ。
「今日は筋トレからだね。とりあえず全メニューを一周してくれ。2周目以降は私が指示するから」
「今日はコースの練習だ。丁度良い併走相手を見繕ってきたから3本走って来なさい。もちろん3本とも全力で」
「相手の仕草から仕掛け時を読む練習をしよう。よくある癖を資料に纏めたから全て暗記してくれ」
量が多い。ただただ量が多い。
何がしんどいって、やる事全部が理に適ってるからケチを付けられない。ヤバいくらい努力『させられる』。
ある日の練習中、こんな事があった。
「フォームが少し崩れていたね。コーナー前の直線からもう一度」
あたしは「あ、これ出来るようになるまで走らされるパターンだな」と思い、今度は言われた事をしっかり守って走った。
そしてトレーナーは走り終わったあたしに近付いてきてこう言った。
「今の走りは良かった。それじゃあ忘れない内にもう一度」
何だそりゃ。
まぁ、そんな感じであたしはタイムをガンガン縮めつつ、しばらくトレーナーの下で修行(トレーニングじゃなくて修行)を積んだ。
そして契約を結んでから1ヶ月後、トレーナーはあたしに「模擬レースに出ろ」と言ってきたんだ。 - 86二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 11:29:31
この時点ではまだ人間なんだな
変わっちゃったときには近くにいたんだろうか - 87二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:21:42
怪我しないギリギリを攻めたメニューを組んでるんだろうか
- 88二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:28:51
まあ、良いことあるさ
- 89二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 23:45:13
ゆっくり行こう、次がある
- 90124/01/16(火) 03:31:53
お疲れ様です
更新が遅れて本当に申し訳ない…
できるだけ早めに投稿しますのでもう少しだけお待ちください - 91二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 08:51:47
忙しいでしょうからご無理なさらず
- 92二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 11:33:02
保守
- 93二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 17:22:49
ho
- 94二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 02:25:48
保守
- 95二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 11:21:13
捕手
- 96二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 21:46:06
やっぱりシンプルな反復練習が一番強くなるんだろうが
- 97二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 04:25:09
「身体に問題はないかね?」
「……うん、大丈夫。問題なし」
あたしは証拠代わりに少し軽く動いてみせる。トレーナー直伝の休息法で練習の疲れは完璧に抜けていて、身体を鈍らせるような要素は全く残っていなかった。
「それは良かった。では今からトレーニングを始めようか」
「は? 今から? もうすぐレースなのに?」
「何、ただ走ったり鍛えたりするだけがトレーニングではないさ」
トレーナーは扉を開け、外へと出て行く。不思議に思いながら後を着いていくと、トレーナーはパドックの手前で足を止めた。
「さて、君には2週間ほど前に出走者の詳細なデータを渡したね。今日の難敵となるであろうウマ娘は誰だったかな?」
「ブリットルハートとフガクアステリオスでしょ。覚えてるっつーの」
あたしは2週間必死で頭に叩き込んだ出走者のデータから、2人のウマ娘の情報をピックアップする。
ブリットルハートは度胸のある逃げとそれに相応しい力強い走りを見せる猛者。フガクアステリオスは磨き上げた肉体と冷静な観察眼で的確に差しを決めてくる策士。どちらも既にOPを突破し、「いずれ重賞にも手が届く」と噂される実力者だ。
「良し、きちんと覚えているね。それでは今回のトレーニングに入っていこう」
そう言うとトレーナーはパドックの奥の方を指差した。その向こうには……フガクアステリオスが佇んでいる。
「彼女は不調だろうか? それとも好調だろうか? 彼女のデータを渡すから、自分なりに推理してみなさい」
そう言うとトレーナーは彼女のデータと写真、そして双眼鏡を渡してきた。 - 98二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 04:26:11
突然そんな事言われても……と言いたい所だが、こういう時の対処法は既に聞かされている。確か、「髪の毛は調子のバロメータになりやすい」と言ってたか。
あたしはフガクアステリオスの髪の毛を注意深く観察する。生え際に力はあるか、毛先は整っているか、毛艶はどうか。一つ一つしっかり確認して……結果、なんら異常は無い事が分かった。
「……どこにも悪いとこ無さそうだけど。好調って事でいいの? てかこんなんで調子分かる訳なくない?」
「さて、どうかな。少なくとも私は彼女の調子はあまり良くないのではないかと推察している。もちろんその証拠も見つけているよ」
ホントかよ……と思いながら双眼鏡を構え直す。
多分、今の会話はあたしへの遠回しなヒントだ。トレーナーの口振りからすると、こいつはほぼ確実に彼女が不調だと確信している。しかもそれはここから見て分かるほど簡単な物らしい。
では、それはどこか? あたしは虱潰しに間違い探しをしていく。地肌、顔、所作、尻尾……。
「……ん?」
よく見ると尻尾の毛並みが少し荒れている……ように見える。そういえば尻尾も体毛という意味では髪と同じか。
「ふむ、しかしそれだけでは確信は得られないな。それをベースに仮説を組み立てて、もう一度全体を見てみたまえ」
あたしはもう一度注意深くフガクアステリオスを観察する。今度は「彼女が不調である」という推理を念頭に置いて。
……化粧で分かりづらいが頬がこけているように見える。以前の写真と見比べてみると身体全体の線も細くなっている。さらにデータを確認すると前回の測定より体重が落ちている事が分かった。つまりこれは──。
「調整が、上手くいってない……?」
「そうだ。今日は模擬レースだからそこまで調整しなかったという可能性もあるが、彼女の様子を見るに調子はあまり芳しくないと考えた方が良いだろう」 - 99二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 04:27:06
では、と今度はブリットルハートを指差した。
「彼女の方はどうかね? 調子が良いように見えるか、それとも悪いように見えるか」
あたしは双眼鏡でブリットルハートの方を覗き込む。
……あれが調子悪いように見える? 冗談でしょ。
「フガクアステリオスとは比べ物になんないね。肌の血色も良いし、筋肉のハリも段違い。後はその……オーラが全然違うって感じ」
「よろしい。言語化できていない部分までしっかり捉えられているね。それでは──絶好調の彼女をどう倒す?」
「はぁ? そりゃまぁ、自分が頑張るしかないでしょ。まさか相手が手加減してくれって言う訳にもいかないし」
そう言うとトレーナーは腕を組んで私を見た。
「そうだな。しかし勝つ確率は1%でも上げておきたいのも事実だ。この状況、私ならこうする──」 - 100二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 09:00:34
またちょっと別の子が出てきた
この後どんな絡み方をするんだ - 101二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 17:43:24
保守
- 102二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 01:42:36
トレーニングで走りを鍛えて、パドックで観察眼磨く、か
- 103二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 08:22:40
全ての時間を有効活用する感じかな
- 104二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 08:57:39
専念するのは良いけど怪我が怖いな
- 105二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 10:05:46
最後まで頑張れば良いってわけではないしな…落ち着いて冷静にいこう
- 106二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 19:30:41
- 107二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 19:39:15
精神が鍛えられそう
- 108二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 03:01:56
保守
- 109二次元好きの匿名さん24/01/20(土) 14:07:51
ホ
- 110二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 00:47:49
シューイ
- 111二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 09:59:55
。
- 112124/01/21(日) 11:30:37
お疲れ様です
書いてる内容がすごく面倒な所に来ました
あともうちょっとなんで…今日には更新できるんで… - 113二次元好きの匿名さん24/01/21(日) 15:43:49
このレスは削除されています
- 114二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 00:55:28
了解です
- 115二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 04:04:42
「う……」
一瞬、陽の光で視界がホワイトアウトする。暗い地下バ道から日の当たるパドックへ移動したあたしは、まるで穴ぐらから引きずり出されたモグラのように頼りない足取りで歩いていく。
……鼓動が大きく聞こえる。こんなのバレたらヤバいんじゃないの、と心の中で迷いながら、それでも足を止める事なく歩き続けていく。
目標はブリットルハート。あたしは周りに気取られないよう、ヨタヨタとした歩きでブリットルハートに近付くと──。
「うわっ……!」
「──あ?」
どん、とぶつかった。
「あ、いや、ごめん。その、前見えてなくて……あはは……」 - 116二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 04:07:44
『ブリットルハートはレース前、異様に神経質になるらしい。以前パドックで他の出走者に掴みかかった事もあったそうだ』
『……だから何?』
トレーナーは手元の資料をペラペラとめくり、とても冷静に話した。
『私ならこれを利用する。ブリットルハートに刺激を加えて集中を乱す事ができれば、ぐっと勝利に近付けるはずだ』
『却下! アンタさ、スポーツマンシップってもん知らないの? あたしはそこまでして勝ちたいなんて思わないから!』
悪い予想が当たった。今までは厳しいトレーニング止まりだったから許してたけど、今回はいくら何でもヤバすぎる。
だが、トレーナーはあっけらかんと喋る。
『勘違いしないでほしいが、別に煽りや囁き戦術はどこのスポーツでも行われている事だよ。レース中もウマ娘達が悪態を突いて他のウマ娘の集中を乱す行為は禁止されていない。もちろん紳士的な振る舞いではないがね』
『そういう事言ってんじゃないっての! アンタのやってる事は単なる嫌がらせじゃん! あたしは……そこまで落ちぶれてないって!』
ふむ、とトレーナーは手を顎に当てて考え込む。そして少し間を置いて静かに口を開いた。
『ではこうしよう。今回のレースで負けた場合、私達の契約は取り消しということで』
『はぁっ!? 何言ってんのアンタ!? そんなの許される訳な……』
『ジュエル君』
瞬間、あたしの身体が硬直する。それほどまでにトレーナーの声は冷たく、恐ろしい声だった。
『君は今、負けてはならない戦いに臨んでいるのだよ。今回の模擬レースは単なる腕試しではない。君のこれからの可能性を占う重要な一戦なんだ。もしここで君があの2人に勝てないというのなら──それは私が欲するウマ娘に値しないという事になる』
それは私も同様だ、とトレーナーは目を閉じる。
『私には死んでも勝たなければならないレースがある。その為には卑怯者と誹りを受ける事も、この身が砕け散る事も厭わない。だが、それを成し遂げられないのなら……私に生きている価値などない。私も潔くトレセンを去るとしよう』 - 117二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 04:14:08
……トレーナーは、虚ろな目でそう言った。
『……信じらんない。何でそこまでしなきゃなんないの? アンタがそこまで拘る理由は何?』
『それは答えられない。長くなるし、それに……私にとっても話したくない事なのでね』
何だそりゃ。意味が分からん。
……でも、それならそれでいい。あたしはどうしても聞かなきゃいけない事がある。
『ねぇ、最後に一つだけ聞いていい? アンタはどうなの? あたしと契約解除したいの? アンタから見たあたしは、どれだけの可能性を持ってると思うワケ?』
トレーナーは顎に手を当て考える。考えて、考えて、考えて。やがて静かに言葉を紡ぎ始めた。
『ハッキリ言って君自身の才能はそこまででもない。だが君の根性と頭の回転は他の者には見られない長所だ。それは私にとって単なる才能よりも輝いて見える部分でもある』
『つまり?』
トレーナーはふっと苦笑いして答えた。
『……君にはとても可能性を感じている。他の誰よりも輝く原石だと、私は信じているよ』
……そう。
そこまで言われたんじゃ──やるしかないわな。 - 118二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 11:54:04
○○焦りとか○○駆け引き系のスキルってこんな感じなんだなあ
- 119二次元好きの匿名さん24/01/22(月) 22:37:51
トッポギさんこの頃から危ういオーラ出てんな
- 120二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 02:16:07
保守
- 121二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 08:57:33
- 122二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 19:50:00
ウマ娘化する前からこうだったことが一番の驚きではあった
いや驚いてみるとむしろそうだったからこそゴドルフィンや妹を引き寄せることになったんだなとなったけども
サンライクトレーナーも渇望の力で姉をひきずりこんでいたわけだし - 123二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 03:28:23
保守
- 124二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 09:45:52
めったにウマ娘化が起きないのも、このぐらい精神状態がおかしくなってないと起こらないってことになるのか
- 125二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 17:51:56
そういう意味では救済なのかもしれない
- 126二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 20:47:20
救済…そうかな
- 127二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 21:10:32
このレスは削除されています
- 128二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 21:11:19
サンライク君たちがいなかったらくたばっていたからなあ
前例たちは一人を除いて消息不明になってたし
トッポギは彼に人間に戻れば引き返せるようなことを言っていたが、
人間の時点でおかしかったのが二人ともだった以上ちょっと疑わしくなっちゃったのよね
そういう意味では渇える狂人がせめて何かを成して少なくとも犯罪とかはせずに滅びれるようにする救済なのかもしれない - 129二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 02:07:23
保守
- 130二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 10:26:56
せめて散るなら前のめりであってほしいという慈悲か
- 131二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 13:30:27
「何笑ってんだ? オイ」
「えっ? ああいや……」
「目障りだ。さっさと行け」
ブリットルハートが恐ろしい形相であたしを睨む。だが手は出してこない所を見るに、彼女も出来るだけ穏便に済ませようとしている様だった。
けど、ここで引き下がる訳には行かない。あたしは意を決して言葉を絞り出した。
「い……いやいや! レース前なのに怪我でもしてたら大変でしょ? 大丈夫? どっか痛む所とかない? とりあえずちょっと動いてみて──」
「──おい」
ビクリ、と反射的にあたしの肩が跳ねる。その一声は獅子の威嚇のように鋭く、恐ろしい物だった。
さらにブリットルハートの手があたしの肩を掴む。次の瞬間、あたしの肩が万力で潰されるような痛みに襲われる。
「ぐぁっ……!!」
「どうした? さっきみてぇに笑ってみろよ」
嘲りも侮りもない、ただ憎しみの籠った目であたしを睨め付けるブリットルハート。その手はあたしを壊そうとさらに力を強めていく。
痛い。怖い。いやだ。でも──。
『いいかね? 何があっても君は笑い続けなさい。恐怖や弱みを見せてはブリットルハートの思う壺だ。とにかく笑って、虚勢を張りなさい』 - 132二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 13:30:58
「……ひ、ひひひ……!!」
「──ッ! テメェッ!!」
痛みを感じながらそれでも笑い続けるあたしを見て、ブリットルハートは拳を振りかぶる。あたしは思わず目をつぶって──。
「止めなさい」
……凛とした声と共に、肩からブリットルハートの手が引き剥がされる。目を開けると、そこにはフガクアステリオスが立っていた。
「ハート、あなた何をしようとしたの? せっかくここまで上手く行きかけてるのに、こんな事で終わらせるつもり?」
「………」
フガクアステリオスの言葉を聞いて項垂れるブリットルハート。それを見たフガクアステリオスはあたしの方へと振り返ると、非難の眼差しを向けた。
「あなたもあなたよ。レース前でイライラしてるって分かるでしょう? 問題を起こしたくないなら妙な真似は慎みなさい」
「す、すみません……」
あたしも流石にこれ以上大事にしたくはない。2人に向けて素直に謝ると、あたしはそそくさとその場を後にする。
……そして、少し離れた所でブリットルハートの方を振り返る。
「………」
ブリットルハートは拳を握り締めたまま、あたしを睨み続けていた。
……これで準備は整った。 - 133二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 00:33:45
下準備はこれで成功ですね
- 134二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 08:55:33
これで過剰に意識しちゃうってことか
- 135二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 14:02:08
おつおつ
- 136二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 00:56:57
これフガクとブリットルのやりとりが指導者と教え子みたいに見えるけど、まさかな…
- 137二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 12:35:36
保守
- 138二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 23:50:46
保守
- 139二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 03:08:51
保守
- 140二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 13:18:55
中道
- 141二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 00:40:20
hosyu
- 142二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 10:15:42
補修
- 143二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 20:15:25
砲手
- 144二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:02:53
カオス
- 145二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 04:36:11
保守
- 146二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 12:21:59
HO
- 147二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:23:29
SH
- 148二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 09:47:59
↑
- 149二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 18:56:54
保守
- 150二次元好きの匿名さん24/02/01(木) 01:33:48
出走者が続々とゲートへ入っていく。他の子達は緊張で青くなっていたり、どこか気の緩んだ様な顔をしている。あたしは確認がてら、もう一度さっきの2人の様子を覗き込んだ。
……人を殺しかねないほどの眼光で空を睨むブリットルハートと、目に闘志を湛えながらも静かに呼吸を整えるフガクアステリオス。
どちらも自分なりのやり方で集中を深めているようで、静かながら触れづらい雰囲気を醸し出していた。
あたしはというと……少し手が震えている。
やっぱりレース前の緊張は慣れるもんじゃない。ましてやトレーナーから『あんな事』を言われれば余計に呼吸が浅くなる。
だけど……それでもやらなきゃならない。せっかく掴んだチャンスをふいにしたくなんかないし、それに──。
『緊張した時は腹式呼吸をするといい。身体の力を抜いて、緊張が呼吸に乗って吐き出されるイメージで、静かに数を数えながら……』
……ひとつ。
……ふたつ。
……みっつ。
「……っし!」
あたしはふっと鋭く息を吐いて手を握り締める。もうその手に震えはなく、みなぎるような覚悟が血液のように手を巡っていた。
……レースが、始まる。 - 151124/02/01(木) 01:34:21
お待たせしました
また明日から更新していきたいと思います - 152二次元好きの匿名さん24/02/01(木) 10:23:41
ありがとうございます
楽しみにしてます - 153二次元好きの匿名さん24/02/01(木) 20:57:18
わーい
- 154二次元好きの匿名さん24/02/02(金) 04:09:20
──ガコン。
ゲートが開き、ウマ娘達が一斉に飛び出す。全員綺麗にスタートを切れたようで、もつれることなく各人のポジションが決まっていく。もちろんあたしも良い位置に付ける事ができた。
……上手くいって良かった。トレーナーの指示で練習はしてたけど正直不安だったんだよね。
さて、まずは位置関係を把握しておこう。ブリットルハートが先頭、少し離れてあたし含めた二、三人が固まっていて、フガクアステリオスは中団をキープしているようだ。
現状の分析を終えたあたしはレース前にトレーナーから伝えられた戦術を思い出す。
『コーナーに入る前まではとにかくブリットルハートに近付きなさい。今回のようなレースならそれだけで主導権を握れるはずだ。もちろん、相手からの妨害には気を付けること』
意味はサッパリ分からなかったが、あのトレーナーの言う事なら聞いておく価値はあるだろう。あたしは言われた通り、先団から少し抜け出してブリットルハートに近付いていく。
……ジリジリと近付き、彼女の雰囲気が少し変わったと思った瞬間──。
ザンッ、とブリットルハートが砂を後ろ脚で蹴り上げた。
「──ッ!」
寸での所で目を瞑り、視界をガードする。近くに居た子は砂を避け切れなかったのか、目を抑えてそのままズルズルと後退してしまった。
砂まみれになった顔を拭い、もう一度ブリットルハートに近付いていく。このぐらいの砂なら普段の併走で何度も被った。その程度じゃあたしは止められないよ、と圧を掛ける。
「……チッ」
小細工は通用しないと悟ったのか、ブリットルハートはあたしに聞こえるほどの舌打ちをしてさらに前へと踏み込む。あたしも置いていかれまいとピッタリくっついていく。
……もうすぐコーナー。そこを抜ければ後はすぐゴールだ。勝負は──このコーナーで決まる。 - 155二次元好きの匿名さん24/02/02(金) 08:18:17
こういう接近マークを「つつく」って表現するんだろうか
- 156二次元好きの匿名さん24/02/02(金) 20:12:19
保守
- 157二次元好きの匿名さん24/02/02(金) 20:45:27
- 158二次元好きの匿名さん24/02/03(土) 05:06:23
『コーナーへ入ったらいつでも前に出られるよう内ラチの良い位置をキープし続けること。常にブリットルハートを観察し続けて──彼女と同じタイミングで仕掛けなさい』
コーナーを曲がりながらトレーナーの言葉を反芻する。
ブリットルハートの最大の特徴は、セオリー外の強引な早仕掛けだ。普通ならガス欠になってしまいそうな距離から一気に加速し、周りが対応しきれない内に逃げ切ってしまう。彼女は生来のフィジカルとレース勘でそれを2度成功させ、自らの代名詞として周囲に認めさせた。
だが、彼女の一番厄介な部分はそこじゃない。
見た目や早仕掛けの印象から誤解されがちだが、彼女はセオリー通りの走りをする事の方が多い。彼女にとって早仕掛けはあくまでも選択肢の一つであり、他人を幻惑させる為のブラフに過ぎないのだ。
もし彼女より先に仕掛けようものならガス欠からの失速は確実、後に仕掛ければ逃げ切られてしまう。しかし彼女の仕掛け時を見極めるのは歴戦のウマ娘でも至難の技であり、他のウマ娘は後手に回らざるを得ない。
「(──ここ!!)」
「なっ……!?」
……そう、あたし以外は。 - 159二次元好きの匿名さん24/02/03(土) 13:51:21
これぞ徹底マーク◎ですね
- 160二次元好きの匿名さん24/02/04(日) 01:53:00
ほ
- 161124/02/04(日) 12:01:29
- 162二次元好きの匿名さん24/02/04(日) 20:55:38
体に気を付けてね
- 163二次元好きの匿名さん24/02/05(月) 04:31:45
保守
- 164二次元好きの匿名さん24/02/05(月) 13:07:42
待機
- 165二次元好きの匿名さん24/02/05(月) 23:22:35
保守
- 166二次元好きの匿名さん24/02/05(月) 23:38:07
お疲れ様
- 167二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 05:30:16
『コーナーでスパートを掛ける時に重要なのはコース取りだ。コーナーで加速しようとすれば遠心力で外へ膨らんでしまう。自分が仕掛ける時は内を突かれないよう注意したまえ』
ロングスパートへ移行しようとしていたブリットルハートの内側へ身体をねじ込む。
ブリットルハートは慌てて内を閉じようとするが、一瞬対応が遅れた彼女にあたしを止める術は無かった。
「テメェ……ッ!!」
ブリットルハートは横目で一瞬あたしを睨むと、すぐにスパート体勢へと切り替える。あたしも追撃の手を休める事なく一気に加速していく。
トレーナーの策はもうない。
後は──あたしが身体を張るしかない。
「──ッ!!」
「ぐぅ……っ!!」
もはやお互い言葉はない。奥歯が割れそうなほど噛み締め、全力で足を回す。
……肺が灼ける。脚が軋み、全身を疲労が襲う。脳は酸欠でくらくらして、痛みと不快感が全身を駆け巡っていく。
だというのに。
「(こいつ……っ!!)」
まだ振り切れない。
もうコーナーの終わりだというのに。あれだけ追い立てて消耗させたというのに。不意打ちで計画を狂わせたというのに。
「ぐっ……うぅッ……!!」
ブリットルハートは、死に物狂いで食らい付いてきた。 - 168二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 16:05:59
保守
- 169二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 16:06:20
まっとばす系というか怒りを力に変えるタイプだったか……
- 170二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 02:23:21
デバフをパワーでねじ伏せてきてる感じか
- 171二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 11:17:27
相手にごり押し出来る地力があると結構つらいよね
- 172二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 14:11:08
保守
- 173二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 01:11:34
ほ
- 174二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 10:18:03
Ho
- 175二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 10:47:43
無理しないように
- 176二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 11:16:54
- 177二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 12:36:15
このレスは削除されています
- 178二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 12:57:23
改めて聞くと怖いな
- 179二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 23:35:26
残り20ほどだけど大丈夫か?
- 180二次元好きの匿名さん24/02/09(金) 00:55:02
「(くそっ! くそっ! くそっ!)」
どうする。どうすればいい。コーナーは終わってゴールはすぐそこ。もうトレーナーの策はない。あたしの体力だって残ってない。
なら、このままブリットルハートと競り合う? 彼女に真正面から戦いを挑んで、勝つ自信があるか?
……無理だ。出来る訳ない。
あたしはずっと偽物だった。上っ面だけ取り繕えても本物の輝きには到底及ばない。今だってそうだ。あれだけ努力を重ねて策を弄しても、ブリットルハートを上回る事は出来なかった。結局あたしは──本物には勝てなかった。
……もう、無理だ。やっぱり偽物なんかじゃ、本物に敵うわけが──。
「ジュエル君!!」
──観客の騒めきを掻き分けて、聞き慣れた声があたしの耳へと突き刺さる。あたしは視線だけを動かして、そちらの方を見た。
「勝てる!! 信じろッ!!」
……そこには、トレーナーが居た。
初めて会った時と変わらない、揺るぎない想いを秘めた顔で。
レース前にあたしを信じてると言った時の、昏く光る眼のまま。
あたしをまっすぐ──見つめていた。 - 181二次元好きの匿名さん24/02/09(金) 00:55:56
「……ッ、あああああああああああっ!!」
尽きかけていた気力が一気に吹き出す。
走る速度は変わらない。スタミナだって回復しない。何も起きやしないし、何も変わったりしない。
……だけど、だけど──!!
「まだッ……終わってないッ!!」
それでも、あたしの中で何かが目覚めた。
あいつはあたし自身でさえ諦めていた『あたし』を信じてくれた。才能のないあたしでも本物と渡り合える戦い方を教えてくれた。あたしを──誰より輝く原石だと言ってくれた。
……そんなあいつの前で、今さら「自分は偽物だ」なんて言い訳したくない……!!
「はあああああああああああッ!!」
「くっ……そがあああああああッ!!」
あたしは叫んだ。
ブリットルハートも叫んだ。
全てを出し尽くして、あたし達はただ前へ、前へ──。 - 182二次元好きの匿名さん24/02/09(金) 00:59:33
──彼女は合理的な女だった。
目的達成に必要な物を分析し、積み上げ、届かせる。その為に必要のない物は担当に与えず、また行わせなかった。
加えて、彼女は常に冷静だった。彼女が叫んだのは気持ちが昂ったからでも、ましてや担当に感情などという不確定要素を喚起させたかったからでもない。
ただ──勿体ない、と思ったのだ。
担当……ムーンライクジュエルは完璧なレース運びをした。序盤から有望バにプレッシャーを掛け、中盤以降もマークを徹底して相手を出し抜き、ラストスパートでも根性で格上相手にひたすら食らい付いた。
健闘した。素晴らしい戦いぶりだった。例え負けても申し分ない内容だった。しかしだからこそ、『最後で諦めるのは勿体ない』と思ったのだ。
ジュエルがスパートを掛けた時、ブリットルハートは迷わずジュエルに着いて行った。
もし彼女が冷静であれば、先に仕掛けたジュエルと競り合うなんて判断はしなかっただろう。先ほどまで自分と同じペースで走っていたのだから、ギリギリまで粘って後から仕掛ければ良かったのだ。
けれど、彼女はそうしなかった。
序盤からハイペースで飛ばした後だというのに。体力を温存する為の一息すら吐けない状況だったというのに。一瞬の隙を突かれて外側へ追いやられてしまったというのに。
そのせいでレースは2人の独壇場になってしまった。先頭から突き放された上に早仕掛けまでされたフガクアステリオスはもう追い付けず、他の出走者の中に2人の一騎打ちを邪魔できるほどの実力者もいない。つまり、このレースはもう動きようがなくなってしまった。
もはやこの削り合いは誰にも、走っている本人でさえも止められない。レースは万事滞りなく思惑通りに進行した。後はジュエル本人の気力さえ続けば確実に勝てる勝負なのだ。
そう、彼女の……トレーナーの読みが正しければ、最後に半バ身ほど抜け出して──。 - 183二次元好きの匿名さん24/02/09(金) 08:49:14
レースペースがぶっ壊れた展開ってこんな風になるんだなあ
気力は最後まで保てるのか - 184二次元好きの匿名さん24/02/09(金) 19:09:54
後は本人の根性次第……
- 185二次元好きの匿名さん24/02/10(土) 03:52:59
「……ハァッ、ハァッ……!!」
流れ落ちる汗を拭う事すら億劫なほどの疲労があたしを襲う。全てを出し切ったあたしは、膝に手を付いてどうにか身体を支えていた。
……勝敗は、勝敗はどうなった? 横を確認する暇も無かったし、模擬レースだから掲示板も動いてなくて全然状況が分からない。もしかして負け──。
「──ジュエル君」
そんな事を思っていると、横からあたしを呼ぶ声が聞こえた。酸欠に陥っている頭を持ち上げ何とか声の方へと向き直ると、トレーナーが優しい顔でこちらへ歩いてきていた。
「おめでとう。クビ差で君の勝ちだ」
「──はあぁぁぁ〜〜……!!」
その言葉を聞いた瞬間、あたしはダートへとへたり込む。何とか、何とか勝てた……。
「……あの、すみません」
フガクアステリオスがそこに立っていた。何を探しているのか、息も荒いまま不安そうな顔で辺りを見回している。
「ハート……ブリットルハートを見かけませんでしたか? 先ほどから探しているのですが、見つからないんです」
そんなバカなとあたしはブリットルハートが居た方を振り向くが、そこに彼女の姿は無かった。あれだけのレースをした後だというのに、一体どこへ……?
「……流石に少し心配だな。私も手伝おう。ジュエル君はここで待っていてくれ」
そう言うとトレーナーはフガクアステリオスと共にどこかへ行ってしまった。
……あたしも少し心配になってきた。レース前にあんな事しちゃった負い目もあるし、ちょっと近くを探してみようか。あたしは疲労に苛まれる身体に鞭打ちながら、辺りをフラフラと探してみる。彼女の性格を鑑みて、あまり人目に付かない静かな所を──。
「……あ」
……見つけた。奇しくも一ヶ月前あたしが座り込んでいたあの校舎裏で、ブリットルハートは泣いていた。 - 186二次元好きの匿名さん24/02/10(土) 04:19:35
「ね、ねぇ……」
あたしが声を掛けるとブリットルハートはビクリと肩を震わせ、耳をこれ以上ないくらい絞る。
「……テメェ、何しに来た……!!」
「いやその、あたしは──」
「ッせぇよ!! 負けた相手を嗤いに来るのがテメェの趣味か!? ふざけんなよ!! どいつもこいつもオレを馬鹿にしやがって……!!」
あたしの言葉さえ遮って、ひとり孤独に怒り狂うブリットルハート。あたしはそれに困惑しながらも、どこかデジャヴを感じていた。
「オレはお前なんかよりずっと努力してんだよ!! 周りに付いて行けなくて、馬鹿にされて!! だからもう誰にもオレを嗤わせねぇって、ずっと死ぬ気でやってきたんだ!! なのに、なのに……!!」
……ああ、そうか。こいつはあたしだ。
自分の無力さに絶望して、どれだけ頑張っても報われなくて。暗闇の中で捻じ曲がりながら、それでも諦めきれなくて。転がってきたチャンスを怖がりながら、離さないよう死ぬ気で握り締めて。
そっか、だからこいつは──。
「……お前、泣いてんのか?」
「……そうだよ!! 見て分かんない!?」
……気が付くと、あたしは泣いていた。
こいつが今までしてきた努力に思いを馳せたりとか、あたしがこいつにやってしまった事の後悔とか、こいつが今感じてる苦しみへの共感とか。そういうのをごちゃ混ぜにした涙が頬を伝っていた。
「……あたし、嗤わない。アンタのこと、絶対馬鹿になんかしないから」
あたしはブリットルハートの眼をまっすぐ見据える。彼女はハッとしたような顔でこちらの眼を覗き返すと、顔を歪めてまた泣き始めた。
「……んだよそれ、意味分かんねえ……」
ブリットルハートは顔を伏せて、嗚咽を漏らしながら泣き続ける。あたしは物陰から見え隠れするフガクアステリオスの尻尾に見ないフリをしながら、静かにブリットルハートの肩に手を置いた。 - 187二次元好きの匿名さん24/02/10(土) 09:02:19
なんかこう…悲しいな
- 188二次元好きの匿名さん24/02/10(土) 10:08:40
このレスは削除されています
- 189二次元好きの匿名さん24/02/10(土) 18:36:50
戦いのあとに芽生える友情好き