- 1二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:31:09
新年の0時。
両親にも「Frohes neues Jahr」と挨拶を交わしたところ。
外からは、花火の打ち上がる音が響き始めます。
同じ街の旧友たちからは、新年のパーティーを誘われていましたが、丁重に遠慮しました。
トレーナーさんがいないと、寂しさが勝ってしまうでしょうから。
所用があって、ドイツの私の実家に帰ったのは、昨年のクリスマス後。
クリスマスをトレーナーさんと過ごせたのは幸運でしたが、今は隣にトレーナーさんはいません。
トレーナーさんも日本で用事があるので、「今年は来れない」とのことでしたが。
――トレーナーさん、あなたのエイシンフラッシュは寂しいです。
自分の部屋に戻ると、机に向かってノートを開きます。
日課の、日記。
今日の出来事を反芻して認め、明日の予定を確認する大事な時間なのですが。
油断すると、「好き」でノート一面が溢れてしまいます。
「トレーナーさんに会いたい」という心が抑えきれなくて。
ドイツでは、新年は恋人との時間なので、余計に。
デスクチェアに座って、ぐるり、と部屋を見渡します。
机こそ、子供の頃に父が作ってくれたままですが。
ベッドも、ソファも、棚も。
先年、トレーナーさんが一緒にドイツに来てくれた時に、父が新調した2人用のものばかり。 - 2二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:31:51
その時でした。
「電話だよ、フラッシュ」と。
今、想っていた愛しいトレーナーさんの待ち受け音声が、スマホから流れてきます。
「はい、エイシンフラッシュです!」
慌てて、傍らに置いていたスマホを手に取ると。
恋焦がれていた、トレーナーさんの声。
応答のボタンをタップすれば、テレビ電話に映るトレーナーさんの素敵な顔。
<Frohes neues Jahr! フラッシュ!>
「Frohes neues Jahr.トレーナーさん」
努めて平静に、応答します。
本当は、思いがけない時間の着信で、胸が高鳴っているのですが。
彼は、いつもの調子。
<明けましておめでとう、フラッシュ。元気?>
「ええ、何事もなく。トレーナーさんは大丈夫ですか?」
私のトレーナーさんは、少し抜けたところがあります。
それに、いつも私のことを優先して、自分のことは二の次にしてばかり。
だから、風邪などをひいていないか、少し心配。
<あはは。元気だけが取り柄だからね>
- 3二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:32:27
――そんなことは、ないでしょう。
私のクラスメイトは、何人もあなたに恋心を抱いているのですから。
アドベントカレンダーや、いつものデート。
お揃いのアクセサリーに、お互いがお互いに見立てた服。
練習時のあなたと私の距離感。
実益も兼ねていますが、それらには、あなたに懸想する女の娘への牽制の意味もあるのです。
トレーナーさんは、呑気に嬉しがっているだけですけど。
だからこそ、現在時刻に、あなたの側に居られないのが、女として心配でたまらないのです。
「そんなことは、ないと思いますが。でも、どうして急に?」
<ドイツでは、正月は恋人と過ごすのが普通って聞いたから。だから、フラッシュの声を聞きたくなった>
「……っ!」
――全く、この人は。
いつも、私の心を揺さぶるような発言をします。
私が、どれだけあなたを愛しているか知らないのを良いことに。
そこからは、近況や四方山話。
- 4二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:33:22
<――へー。じゃあ今年は、テレビ局で間違って一昨年の首相の演説流さなかったんだ>
「流石に、毎年は間違えないと思います」
<――と、こんな時間か。随分長話しちゃったな。そろそろ終わるね。そっちは深夜だろうし>
「へ!? もうですか!? もう少しでしたら……」
<ダーメ。睡眠も身体作りの重要なファクターなんだから、もう寝ること。良いね?>
「はい……」
<お休み、フラッシュ>
その言葉と同時に、通話が切れます。
時計を見れば、確かに長時間の会話をしていたことはわかります。
予定外の電話で、就寝スケジュールが狂ってしまったことも認めます。
でも、それでも。
――もう少しだけ、あなたと話していたかった。
通話の終わったスマホを、そっと胸に抱き締めます。
残り香も、体温もなくても、少しでもトレーナーさんの余韻を感じていたくて。
あの人と話していると、どうしてこんなに満たされるのでしょう。
――今夜はきっと、よく眠れそう。
- 5二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:34:06
部屋にある小さな窓から、月を見上げます。
もう、日本は朝になっているでしょうけど。
トレーナーさんも見たであろう月を眺めると、日本とドイツ、遠く離れていても、繋がっている気がして。
確かな絆を感じられて、幸せな気分になります。
温かい気持ちに浸っていたところに。
突如として、スマホの着信音が鳴り響きました。
突然のことに驚いて、手に持っていたスマホをお手玉。
なんとか、スマホの応答をタップすると。
そこに出たのは、先ほどまで話していたトレーナーさん。
恥ずかし気な、その表情。
<ごめん、フラッシュ。言い忘れてた。Ich liebe dich>
そして、そのまま切れてしまいます。
思わず、呟きました。
「トレーナーさん。Ich bin in dich verliebt」
――本当に、罪な人。
私に答える暇も与えないで、一方的に通話を切ってしまうなんて。
いきなりの愛の言葉に、まだ胸の動悸が収まりません。
あなたの「Ich liebe dich」のせいで。
――今夜はきっと、眠れない。
- 6二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:35:00
これで終わりです。
ありがとうございました。
至らない点もあると思いますが、よろしくお願いいたします。
昨年は大変お世話になりました。
本年もよろしくお願いいたします。 - 7二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 11:44:32
時差は8時間 距離は約9000キロ
遠いな - 8二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 12:42:04
- 9二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 14:34:12
ほしゅ
- 10二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 15:38:19
ほしゅ
- 11二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 15:47:27
- 12二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 17:42:08
ありがとうございます
- 13二次元好きの匿名さん24/01/02(火) 21:39:05
自分じゃ書けないからマジで助かる
- 14二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 00:14:06
ほしゅ
- 15二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 00:45:55
- 16二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 11:01:21
ええやん
- 17二次元好きの匿名さん24/01/03(水) 20:41:49