山田リョウ♂による結束バンド 🎲有

  • 1二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 08:33:33

    ざ・はむきたすは終わった。
    もう音楽なんてやめてしまおうか。

    そんなことを考えていたときに、

    「ねえ、暇ならベースやって」

    そう、虹夏が声をかけてくれた。

  • 2二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 08:34:46

    【初ライブの日】

    ギターと連絡がとれなくなった。

    虹夏は、その辺でギターを探してくる!と去ってしまったけど、心の中にはすでに諦観で満ちていた。

    どうせこんなもんでしょ。

    このバンドは暇つぶしだった。高望みはしない。

    元からあのギターは怪しかった。

    ざ・はむきたす時代から自分のファンだという女の子。

    ギターを弾けると自称していたけれど、その演奏を結局聞けることはなかった。

    こうなってくると本当に弾けたのか、正直怪しい。

    自分にバンドは向いていない。

    ざ・はむきたすだって自分のせいで崩壊した。

    STARRYの入口から物音。そこに目線を向けると・・・

  • 3二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 08:37:04

    dice1d2=1 (1)


    1 喜多

    2 虹夏とぼっち

  • 4二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 08:40:53

    ドアの隙間からひょっこと人影が頭を覗かせたかと思えば、すぐ引っ込んだ。

    赤髪。

    一瞬しか見えなかったけれど、あれはギター担当の喜多 郁代だった。

  • 5二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 08:50:00

    STARRYの中を覗いた郁代はすぐに引っ込んでいった。


    ライブ会場に来たものの、どうみてもやる気があるようには見えなかった。


    追いかけて引きずってきてもろくなことにならない気がする。


    さて、どうするか。


    1 見なかったことにする

    2 追いかける

    3 虹夏・ぼっち組に見つかり、連行されてくる。

    4 郁代がSTARRYにこっそり侵入してくる


    dice1d4=1 (1)

  • 6二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 08:59:28

    声をかけるのは止めた。

    音楽は楽しいから、本人がやりたいからやるもの。
    無理やり引っ張ってくるのは違う。

    そもそも自分は口下手だから、なんて声を掛ければいいのかわからないし。

    自分のファンだという女の子に、正直あまり話をしたくない。

    バンドメンバーを見つけて嬉しそうな虹夏の手前、言わなかったけどもネガティブな気持ちが沸き上がるのを止められなかった。

    だって、ざ・はむきたすは自分を中心としたバンド内恋愛問題で崩壊したんだから。

  • 7二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 09:15:44

    喜多の影からは視線を外し、見なかったことにする。

    暇をつぶそうと、スマホに目線を落とした。

    「こっち、バンドメンバーのリョウ!」
    「ひぃっ! 男の人・・・しかもイケメン・・・」

    そんなことしていたら、ピンクの暗そうな女の子を連れてきた。

    まさか本当に見つけてくるとは。

    虹夏、やるな。

  • 8二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 09:28:51

    ライブはひどいものだったけど悪くはなかった。
    段ボール被って演奏するぼっち、面白かったし。

    ライブ後の一息ついたタイミングで、楽屋にギグバックを担いだ人影が飛び込んできた。

    「すいませんでしたぁぁぁぁあああ」

    喜多 郁代が飛び込んできた。

  • 9二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 10:00:51

    予想通りというべきか、やっぱり喜多はギターを弾けなかった。
    姿を現した理由は、下心アリアリでバンドに加入して、当日ブッチするのはさすがに気が引けてしまったらしい。

    「ごめんなさぃいいい。私のことを気のすむまでぎったんぎったんにしてください」

    「まぁ、一応? 無事に終わったし、それはいいよ。ボーカルはやっぱり欲しいし。ギターはぼっちちゃんに先生してもらいながらギタボやってよ」

    「でも私、本当に上達しなくて。ボンボンって低い音しかでないし」

    「ベースなんじゃないのそれ」

    喜多は倒れた。
    ギターだと思われていたものは多弦ベースだった。

    まぁ、それはそれとして。
    多弦ベースいいな。
    ちょうど欲しいと思ってたモデルだコレ。

    一応バンドメンバーになるわけだし、どこまでやる気かわからないけど、協力するのもやぶさかではないか。

    「その多弦ベース買い取ろうか。安くしてくれるならギター貸してあげる」
    「え・・・リョウ先輩のギターを! いいんですか」
    「いいよ」

    観賞用になっている新品同然のヴィンテージギター。
    珍しいから手にしたけど、高く売れるわけでもないし。
    楽器として使われないよりは、使われた方が楽器も本望でしょ。

  • 10二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 10:07:36

    10まで来たので小休止。少し内容を補足すると・・・
    ・はむきたすは女子二人にリョウ♂のバンド(原作では3ピースのガールズバンド)
    ・痴情のもつれでバンド崩壊したので、リョウはバンド内恋愛の否定派へ

  • 11二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 12:14:21

    【幕間】

    「リョウのやつ、遅刻か〜。絶対その辺で道草くってるな」

    アーティスト写真撮影の待ち合わせに山田が来ず、虹夏は怒りの声を上げた。

    「時間に囚われないリョウ先輩・・・自分の世界があって素敵!」

    全肯定する郁代に、虹夏は冷たい目を向ける。

    「ちょっと喜多ちゃん〜? あんまりリョウのことを甘やかすの止めて欲しいんだけと。・・・気になってたんだけど、ちゃんとリョウが立てたバンドのルール守る気あるんだよね?」

    「それはもちろん! リョウ先輩に向けるのはあくまで憧れです。彼女になろうなんて気はありません! ・・・ただまあ・・・ルール立てたリョウ先輩に求められたら彼女になるのはやぶさかじゃないですけど」

    「おい! って、やっぱりそんなこと考えてたか〜」

    「虹夏先輩こそリョウ先輩とどうなんです?」

    「何かある訳ないでしょ。リョウとは腐れ縁だよ」

    「またまた〜。絶対、胸きゅんなやり取りありますよね?!」

    「あの・・・」

    盛り上がる虹夏と郁代のやりとりを、右往左往しながら眺めていたひとりが声を上げた。

    「なぁに、ぼっちちゃん」

    「バンドのルールってなんですか? 聞いてないんですけど」

  • 12二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 12:19:33

    「あー、言ってなかったかぁ。まあ、わざわざ言うもんじゃないしね」

    郁代がこれから重大事項を告げると、シリアスな表情を浮かべる。
    反射的にひとりはごくりと唾を飲み込んだ。

    「あのね、後藤さん。この結束バンドは・・・実は・・・『バンド内恋愛禁止』なのよ」

    「はぁ・・・」
    ひとりは気の抜けた声をもらした。

    「補足するとね。リョウが前にいたバンドが、バンド内恋愛で崩壊したらしいんだよ。そんでナイーブになってるところに、好き好きオーラ垂れ流す喜多ちゃんの加入で揉めて・・・『バンド内恋愛禁止』ってルールが出来たんだよ」

    「へぇ・・・」

    自分には関係ないな、と後藤ひとりは思った。

  • 13二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 15:17:25

    面白い!

  • 14二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 15:42:21

    ルールは守られるのか

  • 15二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 17:04:27

    【歌詞づくり】side 後藤ひとり

    アー写撮影終わった・・・なんか疲れた。

    それはそうと。

    応援ソングをイメージした歌詞もできた。
    出来栄えを確認したいけど・・・

    「リョウさん、まだ下北にいるのかな」

    ロインで歌詞の話をすると、店の住所が送られてきた。

    「ここに来いってこと・・・?」

    えぇ・・・
    外食なんて1人で行ったことないのに。

    困惑しながらマップの通りに行くと、なんかオシャレな店に着いた。

    新装開店の飾り。
    ただでさえ高いハードルがさらに高くなる。

    「どうやって入ろう・・・」

    できるだけ普通に――――

    1 「へいっ! 大将やってる?」
    2 「一人じゃないです。彼氏が先に来てます!」
    3 (無理無理無理! またの機会にしよう)

  • 16二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 17:06:37

    dice1d3=3 (3)

  • 17二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 17:07:11

    ファンブル! どうしよ

  • 18二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 17:57:22

    これ山田無銭飲食…

  • 19二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 18:33:50

    ロインにメッセージを打ち込む。

    『すいません、急用が入りましたので帰ります! 歌詞の件はまた後でお願いします』

    良く考えたら直接見せることないや。
    ノートを写真に撮影するなり、文字起こしするなりするなり。

    どうにかなる!

    それでは失礼しま・・・

    踵を返そうとしたところで、スマホが震えた。

    着信画面 『山田リョウ』

    スマホの振動に追い立てられるように、通話ボタンを押した。

    「なにしてんの?」
    リョウの特徴的な無感情な声が響いた。

    帰ろうとしてるのがバレた!

    責められてる!

    思わず気をつけの姿勢を取って俯いてた視線を上げると、窓際のカウンター席でスマホを耳に当てているリョウと目が合った。

    「あ・・・」

    店先でマゴマゴしているところから見られてた。
    どうしようもなくて、出頭する他にないや。

  • 20二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 18:54:22

    改めて新装開店のドアに対峙して、今度は立ち止まることなく突撃した。

    「へーい、大将やってる?」
    「えっ、えっと???」

    考えていたセリフを店員さんに言ったら困惑された。

    あっ、しにたい。

    リョウ先輩は興味深そうにこっち見てるし、ただひたすらに恥ずかしい。

    「あ、あの。あそこの席の人の知り合いなんで、あっち行っていいですか」
    「かしこまりました。ご案内します」

    店員さんに案内されて、リョウ先輩の隣の席へ。

    「ぼっち。なにしてんの」
    「聞かないでください・・・」
    「わかった。聞かない」

    リョウさんは食べかけのカレーに向き合って、食事を再開してしまった。

    店員さんがやってきて、お冷とメニューをくれる。

    「注文の品が決まりましたらお呼びください」

    ふと店員さんから見て、どんな風に見えてるのか気になった。

  • 21二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 18:55:39

    もしかして――――――


    1 カップル

    2 ストーカー

    3 ホストと客

    4 兄妹


    に見えてる?


    dice1d4=2 (2)

  • 22二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 19:03:12

    リョウさんは垢抜けたイケメンだ。
    それに対して私はジャージの陰キャ。

    男女だけど明らかに釣り合ってないからカップルに見られるはずもなく。

    兄妹というには似ていない。

    だからもしかしたら・・・店員さんから見たら、私はリョウさんに付きまとうストーカーに見られてるんじゃ。

    「お客様――――」

    気がつけば隣に店員さんが席に来ていた。

    冷や汗が浮き出る。
    このままじゃストーカーとして通報されてしまう!

  • 23二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 21:52:17

    「あの!」
    「はい、ただいま参りま・・・」
    店員さんが来てくれた。

    通報される前に弁明しなければならない。

    「私はこちらのリョウさんのストーカーじゃありません。あくまで同じバンドのメンバーでして・・・だから通報しないでください」

    「え〜と、お客様・・・?」

    「ぼっち、何言ってんの。早く注文しなよ。カフェオレでいい?」

    リョウさんの視線を冷たく感じた。

    「はい、それでお願いします」

    やってしまった・・・

  • 24二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 07:42:29

  • 25二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 10:07:45

    気を取り直して、作詞ノートをリョウさんに渡した。

    「へぇ。子供っぽすぎる気がしないでもないけど・・・悪くないんじゃない?」

    パラパラとページをめくって、そんな感想をリョウさんはくれた。
    アー写撮影でもいつのまにか帰ってたし、わたしなんかに気なんて使うはずもなく。

    これは忌憚のない意見で、その上で褒めてくれてる!!!

    「え、そ、そんなベタ褒めされるぐらいですか。えへへ・・・」
    「ロックバンドにしてはちょっとかわいすぎるかなと思わないでも。ま、カッコよさに関しては黒一点の僕が担えばいいしね」

    そう言って、机の上に置かれるノート。
    そこにはがんばって練った私のサイン案が描かれた。

    「こ、これは違うんです!! あ、あの、作詞はこっちのページで!」
    「ふむ、拝読いたす」

  • 26二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 11:26:48

    「ふむ・・・」
    リョウさんがペラペラとページをめくる。

    「これがぼっちが伝えたいことなの?」
    リョウさんが指先で示すのは、
    なんとか絞り出してかいた『現状を無責任に肯定する応援歌』

    「あっ、はい。だってライブ盛り上げないといけないし」

    バンドは聞いている人の心を動かさないといけない。
    ギターヒーローとしてうけるリクエストを聞いていればわかる。
    多くの人はテンションの上がる曲を、耳障りの良い言葉を求めている。

    「盛り上がらなくてもいいじゃん。バンドなんてさ、やりたいからやるものでしょ。個性殺したら死んでるのと一緒だよ?」

    「それでも・・・わたしはこのバンドでがんばりたいんです」

    虹夏ちゃんが誘ってくれた結束バンド。
    人見知りで自分からは声をかけられない自分のことはよくわかっている。
    私に『次』なんてないんだ。

  • 27二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 11:29:44

    「ふーん。そっか。・・・結束バンドが大事なのは一緒だよ。バンドは壊れるときは一瞬だからさ。結束バンドは最初のライブを超えて乗り切ったんだ。このまま続いて欲しい気持ちはある」


    「リョウさん・・・」

    言葉とは裏腹に冷たい感情が覗いている。

    結束バンドには半分ぐらいしか期待してなくて、半分ぐらいはもう諦めているようにも見える。


    「ねぇ、ぼっち。確認するんだけど、この歌詞で本当にいいの? 続けられる?」


    そう問われて私は――――


    1 歌詞を引っ込めた

    2 これでいきたいと肯定した


    dice1d2=

  • 28二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 11:30:24

    dice1d2=1 (1)

  • 29二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 11:31:06

    なんでうまくダイス転がらなかったんだろ・・・
    それはそれとしてセーフ!!!!!

  • 30二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 12:56:44

    イコールが全角になってたからでは

  • 31二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:01:35

    リョウさんの目に冷や水を浴びせられた気分だった。


    「すいません! やっぱり書き直させてください! ただ、私が書いたら暗い曲になると思いますけど・・・。い、いいんでしょうか」


    「良いんじゃない? 歌うのは喜多でしょ。陽キャが明るく、暗い曲を歌うのは面白いんじゃないかな」


    リョウさんって喜多さんに当たりが強い気がするな。


    「わかりました。がんばってみます」


    「・・・言ったかな。僕が前に他のバンド組んでたこと」


    ざ・はむきたすの末路


    1 歌詞担当がリョウの元カノで激突

    2 歌詞担当とリョウの元カノが激突


    dice1d2=2 (2)

  • 32二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:15:56

    「青臭い歌詞が僕は好きだった。なのにバンドが売れるように大衆に媚びるような歌詞になってきてさ。
     口論になってたら、もう一人のメンバー・・・当時彼女だった娘が僕の味方をしだして、2対1になっちゃってさ。歌詞担当がこんな環境でやってられないってなって、バンドが解散しちゃったんだよね」

    「・・・怖い話ですね。えっと、その彼女という方とは?」

    「別れた。その後に話をしてさ。バンドのために真剣に考えて僕の意見に同意したわけじゃなくて、『彼氏』だから僕に味方したみたいだったから、許せなかったんだ。そうして、あのバンドは終わっちゃった」

    歌詞担当・・・結束バンドの場合で想像すると、歌詞担当であるわたしが、リョウさんと喜多さんや虹夏ちゃんに袋叩きにされるわけか。

    そんなの絶対無理。耐えられない。
    恋愛禁止になっているわけだし、今はそんなことにはならないよね・・・?

  • 33二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:24:46

    「ぼっちは自由に、ぼっちらしい歌詞を書いてきて。そしたらいい感じの曲を作るから任せてよ」

    「あっ、はい。わかりました」

    言われるように、リョウさんの言う通りに好きな曲を書こう。
    元々あの応援ソングには思い入れないし。

    「がんばってね。楽しみにしてる。じゃ、そろそろ出よっか」




    カフェの会計を済ませようとして――――

    「ごめん。今、お金ないからおごって」

    「えっ? リョウさんがこの店はいってましたよね。私が来なかったらどうするつもりだったんですか?」

    「奢ってくれそうな娘に連絡しようかなって思ってた。ぼっちが連絡してきてくれたから、ちょうどいいなって。・・・ごちになります」

    うわーー!!
    絵にかいたような女にだらしがないバンドマン♂!!

    「あ、あの。いつでもいいですけど・・・お金があるときに返してくださいね」

    「うん、ある時に返す」

    きっと返ってこないんだろうなあ・・・

    たかられないようにこれから気をつけなきゃ・・・

  • 34二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:31:29

    ごめん、ここまで書いといてなんだけど、
    面白い展開が思いつかない
    思いつくまで止めます

  • 35二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:32:55

    喜多⇒リョウ
    虹夏⇒リョウ
       リョウ⇒ぼっち

    っていう人間関係ができたら面白そうだなっていう邪悪な癖から
    書きだしてみたんだけど、そこに至るルートが思いつかない!!!!

  • 36二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:33:51

    ここのリョウってチケットノルマを適当な娘に捌いてそう

  • 37二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 16:35:23

    リョウ⇒ぼっちは「おもしれー女」「自分になびかない女」ってことで
    リョウが追いかけだしてそのうち気持ちも出てくるっていうのが少女漫画でよくある気がする

  • 38二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 17:02:30

    【餃子からの逃避行】side ひとり

    「ぼっち。バックレようよ」
    「あっ、はい」

    意外とバンド崩壊に起きるような事件はなく。
    結束バンド結成から1年が経とうとしていた。

  • 39二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 17:04:55

    >>35

    逆転の発想!

    『そこ』に至るルートが思いつかないので、過程をすっとばし『そうなった』ことにします!


    この一年色んなことがありましたね!

  • 40二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 17:39:41

    後輩の大山さんのギターを見るために御茶ノ水に行くはずだったのに、目的地が渋谷に変更された。

    陽キャの御殿に連れていかれたら消滅してしまう!

    そんなときにリョウさんに脱出を提案されたら、当然頷く他ない。
    渋谷の人混みでもって、大山さんたちから逃げ切った。

    「ぼっち。せっかく時間取れたんだし、新曲の話をしよう。曲に合わせて歌詞変えたいとこがあんだけど。ぼっちの意見が聞きたい」

    「あっはい」

    「その辺の喫茶店に行こう」

    「奢りませんよ?」

    「今日は軍資金たっぷりだから安心して。奢ったげる」

    「・・・だったら貸してる分を返して欲しいんですが」

    「それを今返すと困るんで、それはまた今度」

    「はぁ。わかりました」

    なんだかんだで作詞作曲担当だけあって、リョウさんとやり取りする多いし慣れてきたなぁ。

  • 41二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 18:34:22

    >>39

    ナイスキングクリムゾン

  • 42二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 19:30:41

    スタバでブレンドコーヒーを頼む。


    喜多ちゃんに最初に連れられて行ったときは緊張したけど、リョウさんに付き合ってて慣れたもの。


    とりあえずコーヒー頼んでたらいいんだ。


    コーヒーを頼んで曲の打ち合わせをする。


    へへっ・・・一端のバンドマンしてる!


    スマホのクラウドなんかも利用してリョウさんと歌詞や音源のやりとりもしてるし、社会人としてのスキルも身についてるんじゃ。


    バンドマンじゃなくて音楽業界で働かないかってスカウトすれちゃったりして!


    「ぼっち。なんか気分がのらない。適当なところで切り上げて遊びにいかない?」


    「え〜〜・・・。リョウさんから言い出したのに・・・」


    行先

    1 中目黒 寄生虫館

    2 東京タワー

    3 ハードオフ

    4 御茶ノ水 楽器屋

    5 古着屋


    dice1d5=2 (2)

  • 43二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 21:10:48

    東京タワーなら告白ぐらいまで欲しいな

  • 44二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 21:29:49

    「最近、古い邦画を見てたら東京タワーが舞台だった。ぼっち、東京タワー行ったことある?」

    「東京タワーですか? 無いですね」

    古くて赤い電波塔。

    まさか。

    「ここから近いし行ってみたい。行こうよ」

    「あんまり興味ないです・・・」

    スカイツリーならまだ大きいし新しいしで興味あるなあ。高いから落雷がよく落ちるって映像見たけど、雷が落ちるとこカッコ良かったし。

    でもここからだと遠いんだっけ。

    「東京タワー行こうよ。展望台のお金なら出す! 今やってる作業終わらせるモチベーションにもなるから」

    うーん。

    まあ、今日やることないし。
    古い電波塔なら人も少ないだろうしいっか。

    「わかりました。これ終わったら行きましょう」

  • 45二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 01:55:29

    ふむ

  • 46二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 07:54:15

    曲の調整を終えて。

    さっき話した通りに東京タワーへと向かった。

    「おおっ、この高さでも人がゴミのようだ!」
    展望台に登ってからも、リョウさんはご機嫌だ。

    展望と言いつつも、周りのビルとそこまで変わらない高さ。
    新しい高い電波塔が立てられてしまうのも頷ける。
    古くなって劣って、本来の用途では使われなくなった赤いタワーに哀愁を感じてしまう。

    「見て、ぼっち。謎解きプログラムやってるよ。参加してみる?」

    「うぇぇええ。どうせ謎解けないだろうし、私はいいです。ひ、人のプロポーズに責任もてませぇん」

    イベントとして、東京タワー内を散策するイベントが開催されていた。

    男性がプロポーズの演出として、用意した暗号を元に結婚指輪を探すというもの。

    なんで人のプロポーズの責任を負わなきゃいけないんだ。

    見つからなかったら後味が悪すぎる。

    もし見つかったら見つかったで、プロポーズの熱でメルトダウンしてしまうに違いない。

  • 47二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 08:01:46

    「東京タワーの神社の御利益に恋愛成就があるし、ここは色んな恋愛ドラマの舞台になってるからかな」

    ひっ、リョウさんの口車に乗せられてキルゾーンに来てしまっていた。

    こんなところにこれ以上いられるか! 私は帰らせてもらう!

    「相変わらず恋愛ネタ苦手そうだね。なんでそんなにダメなの?」

    「えっ・・・」

    そんなこと聞いちゃう?

    「今さ、喜多に歌詞を頼んでるじゃん。高確率でラブソングが来るんじゃないかと思ってるんだけど、演奏するのにぼっち耐えられる?」

    「あ゛~~」

  • 48二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 09:40:10

    恋愛。

    恋愛かあ。

    砂糖にスパイス、それに素敵なもの全部。

    「私の人生に含まれない概念なんで。光が強くなると闇が深くなるというか・・・。私の暗さが浮き彫りになって無理です・・・」

    「ふーん。でも全く興味がないわけじゃないんだよね? 『バスケ部彼氏』のこともあるし」

    ぐはぁっ! ギターヒーローの概要欄!
    過去が追いかけてくる!!!

    「あれはぁっ・・・虚言のことは忘れてください」

    「あれ見て、ぼっちも彼氏欲しいんだな、意外って思った」

    「ひぃいいいいい! 彼氏なんてできるはずもないのにホラ吹いてすみませぇえん!」

    「・・・恋愛ネタ駄目なのってさ。やっぱり自己肯定感が低いせいか・・・あのさ、ぼっち」

    なんか神妙な雰囲気。

    「なんでしょうか」

    「結束バンドが続いているうちは伝える気はなかったんだけど。・・・僕はぼっちに惚れてるよ」

    はい?

  • 49二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 12:24:06

    「えっと、わたしをからかってます?冗談にしては笑えないし。 ほ、本気にしちゃうんで勘弁して欲しいんですけど。もしかしてドッキリですか?」

    「そんな不思議なこと?ぼっちは美人だし、スタイルいいじゃん。音楽の趣味もあうし、気があって一緒にいて楽だしね」

    わたしが美人・・・なのかはよくわかんない。
    おっぱいは目立っちゃうくらい大きいのは自覚してる。

    そして。

    音楽の趣味があって一緒にいて楽なのは共感するところ。

    ほ、本当にリョウさん、わたしのこと好きなの?!
    今、人生で初めて異性に告白されてる?!

    「そ、それだけですか?」

    「それだけで十分じゃん。あと加えて言えばレスポンスが面白いからかな。仲間としてギターの腕も歌詞のセンスもすごいしね」

    う、嬉しい。
    リョウさんのこと、好きになっちゃいそう。

    くっ、心をしっかり持て! 後藤ひとり。
    相手はリョウさん!
    あのリョウさんだぞ?! 油断すれば身の破滅が待っている!

    だいたい、このやりとりが発生してる時点でおかしい。だって・・・

    「あの・・・リョウさん、彼女いますよね?」

    「いるね」リョウさんは平然と返してきた。

  • 50二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 12:28:24

    リョウの彼女


    1 モブ

    2 えれ

    3 はむきたすメンバー


    dice1d3=1 (1)

  • 51二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 13:29:52

    リョウがぼっちに惚れる前に付き合った感じかな?

  • 52二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 15:25:33

    喜多ちゃんや虹夏ちゃんが、リョウさんの彼女の話を険しい顔でしていた。

    関わりたくないから詳しく聞いてなかったけど。

    なんか前のバンドの頃からリョウさんのファンだったとかなんとか。

    リョウさんがわたしを口説く・・・褒めてくれてるのが本心だとして。

    「その・・・彼女と付き合いだしてから・・・惚れてくれたってことでしょうか」

    「いやぁ? もっと前からぼっちのこと、好きになってたなぁ」

    「え〜〜〜」

    どういうこと? 辻褄が合わない。

  • 53二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 15:31:28

    「別に他に好きな人がいても付き合っていいでしょ。人肌恋しい気分だったし、よくご飯奢ってくれるし」

    うわー、リョウさん擦れてるなぁ・・・

    「最初に言ったけどさ。ぼっちに気持ちを打ち明けるつもりはなかったんだって。・・・どう? こんなイケメンに好かれて自尊心は満たされた?恋愛が地雷なの克服できそう?」

    平然としたドヤ顔をリョウさんはキメてくる。
    同じ人間とは思えない図太さ。

    「どうって・・・。正直、困惑しかないんですけど。本当に本当なんですか??」

    「ひどい。告白したのに信じてくれないなんて」

    「彼女いるのに別の子にす・・・好きなんて言っちゃうリョウさんの方がひどいと思いますけど」

    「なんか女たらしに感じるね」

    「そのまんまだと思いますよ」

    リョウさんのことは真面目に考えるだけ損だな、うん。

  • 54二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 16:18:05

    ぼリョウ♂成立なるか

  • 55二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 17:15:57

    【餃子の唄】


    喜多ちゃんから歌詞が送られてきた。


    「こ、これって・・・」

    予想した通りにラブソングだったけど、内容は予想を超えてた。


    地の果てへと向かう逃避行。

    逃げた先でのエロティックな退廃に耽る仕草。


    絶対リョウさんとのことだコレ。


    喜多ちゃんの願望?

    それとも実際の出来事を元にしてるの?


    「えらいこっちゃ・・・!」


    取り扱いを間違ったらバンド崩壊に繋がりそう。


    こんな問題、わたしの手に負えない!

    だ、誰かに相談しなきゃ!


    相談相手

    1 星歌とPA

    2 虹夏

    3 リョウ

    4 きくり


    dice1d4=2 (2)

  • 56二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 21:07:57

    誰かに相談しなきゃ・・・って思ってたら、STARRYに早く着いちゃった。

    「およ。ぼっちちゃん、今日は早いね。バイトやる気満々だね!」

    「あの、そういうわけじゃないです。ちょっと相談したいことがあって・・・。あの、グループチャットの方に上がってた喜多ちゃんの歌詞なんですけど・・・」

    「あー、あの危ない感じがするやつね〜」

    「虹夏ちゃん、何か知ってます?」

    「うーん、ちょっと前に日常のありふれた歌詞も良いよねって話はしたけど。あの歌詞とは合ってないよねえ。わかんないや」

  • 57二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 21:59:39

    逃避行を示す歌詞。
    リョウさん彼女いるのに、喜多ちゃんが浮気相手になってるとか。

    「やっぱりリョウさんとのことなんでしょうか」

    「うーん、何かあったとは考え難いんだけどな。リョウって音楽にだけは真面目だから、バンドのこと考えて喜多ちゃんに手を出す気は無いみたいだし。これ見よがしに適当な『彼女』、維持してるしね」

    「え、リョウさんに彼女がいるのってそういうことなんですか」

    リョウさん以外女子のバンドのために、あえて外に彼女作ってるってこと?

    「推測だけどね。そこは信用してる。
    女の子にだらしがないのは、リョウの好きにすればいいんだけどさ。それはそれとして、お金にだらしがないのは、本当にマズいと思うんだけどね・・・ぼっちちゃんにもたかってない?」

    「あっ、この前全部返してもらいましたよ」
    返してはくれるんだけど、金欠のときは借りてくるんだよなぁ。
    お金を貸すのに抵抗なくなって来ちゃった。まずいかも・・・

  • 58二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 22:01:41

    「貸してたのは事実かい。アイツめ」
    虹夏ちゃんがプリプリ怒ってる。
    きっと近いうちにリョウさんお説教されるんだろうな。

    「一応返してはもらってるんで・・・お手柔らかにしてあげてください」

    「リョウの浪費癖どうにかならないかなぁ。昼食代まで使い込んでるから、いつもお腹空かせてるんだよね」

    「リョウさんがよく虹夏ちゃんにご飯分けてもらうって言ってましたね」

    「最近はリョウにあげる分までお弁当用意してるからさ。運動部みたいなお弁当箱を学校に持ちこむ羽目になってるんだよ。勘弁して欲しいね」

    迷惑かけられて困ってるって話のはずだけど・・・なんか虹夏ちゃん、イキイキとしてるなぁ。

  • 59二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 03:45:12

    虹夏→山田→ぼっち
    喜多→餃子

  • 60二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 10:26:06

    【喜多ちゃん家出事変】

    STARRYのステージ。

    店長さんへのバースデーブレゼントなんて用意していない。

    あるのはポケットにレシートぐらい。

    それに、わたしとギターただそれだけ。

    だからできることはひとつだけ。

    「ぼっちちゃん・・・」

    観客席からはたくさんの視線に、その全てをまとめて凌駕するような熱量を店長さんは向けてくる。

    「わっわたしからは去年送れなかった歌を送ります!」

    期待には応えたい。

    マイクを手に取り、高さを口元に合わせる。

    声を出すために背筋を伸ばして、ちょっとだけ広くなる視界。

    ギタボの喜多ちゃんがいつも見ている世界。

    今日がシンガーソングライター 後藤ひとりのデビューだ!

  • 61二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 12:58:33

    補足
    この世界線は、ぼっちが文化祭でダイブしなかった世界線です

    ダイブがバズることはなく、ポイズンさんが突撃してくることなく、未確認ライオットにも不参加です

    山田の希望通りに個性を大事に、結束バンドはマイペースに活動してきています

  • 62二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 14:52:34

    店長さんを祝ったライブを終えて。

    「ぼっちちゃん、片付けお疲れ様ー!」

    「あっはい」
    STARRYの閉店作業に一区切りがついて、虹夏ちゃんと合流する。

    「そうそう。ぼっちちゃん、歌上手いねえ。バンドでも歌えばいいのに」

    「そんな・・・私の歌声なんて聞かせたらクレームで結束バンド解散になっちゃいますよ」

    「いやあ今日披露した曲を下回ることはないって! お姉ちゃんは喜んでたけどさぁ」

    うっ!
    会場に流れたお通夜の空気が胸に刺さるぅ!

  • 63二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 14:54:25

    「ぼっちちゃん、唐突に弾き語りしてくれることあるよね。元々結構好きだよ? ぼっちちゃんらしい曲でバッチリ感情乗ってるし。やっぱりギター上手いしさ」

    「えへへ・・・それほどでもぉ・・・」

    「考えてみたら今日LIVEのステージで、一人で一曲歌い切ったわけじゃん。いい経験なったんじゃない? 私の受験で活動が落ち着いちゃってるけどさ、再始動するときには『ギターボーカル』のぼっちちゃん見たいな〜」

    ギターボーカル。
    バンドのフロントマン。

    わたしが一人で歌うのならともかく。
    私なんかがたった一曲でもバンドの顔として歌うのは責任重大過ぎて怖い。

    それに結束バンドのギターボーカルは喜多ちゃんだ。

    みるみるギターの腕をあげてきた喜多ちゃん。

    普段は可愛くて、
    友達はたくさんいて、
    女の子としての元気に溢れていて、
    歌う姿はかっこよくて。

    わたしが欲しいものを全部持ってる遠い星。

    喜多ちゃんを押しのけて、わたしがギターボーカルをやる意味なんて一つもない。

  • 64二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 16:35:14

    虹夏ちゃんは推してくれるけど、わたしにボーカルは無理だな。

    結束バンドのフロントマン、喜多ちゃんの顔に泥塗っちゃうし。

    「あれ、喜多ちゃん。どうしたの? もう閉めちゃうよ」

    ガランとしたSTARRYのテーブル席に、喜多ちゃんがうつむいて座っていた。

    「虹夏先輩・・・。今日は泊めてください! 家出してきました!」

    「えぇぇぇ!」

  • 65二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 16:50:55

    喜多ちゃんの話を聞いてみると、大学進学をせずバンドマンになるという進路希望に喜多ちゃんの両親が反対しているらしい。


    そりゃ反対されるよね。


    バンドマン一本でいくなんてのは、それしか道がない崖っぷちの人(わたし)か、実家が太くてやりたいことしかしたくない人(リョウさん)くらいだし。


    一通り話を聞いて、喜多ちゃんが虹夏ちゃんの家に泊まるっていう話がまとまったところで、リョウさんが席から立った。


    「そろそろ終電だから泊まるわけにもいかないし、僕は帰るよ。ぼっちはどうする?」


    私は・・・


    1 リョウさんと一緒に帰る

    2 虹夏ちゃんの家に泊まる


    dice1d2=2 (2)

  • 66二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 17:14:05

    「ぼっちちゃんも遅いから泊まってったら?」
    「あっはい。じゃあお世話になります・・・」
    喜多ちゃんのことが心配だったし、虹夏ちゃんの言葉に甘えることにした。

    「えへへ。リョウさんには悪いですけどお泊り女子会って感じで楽しみですね♪」
    「ちょっと元凶~~~~? まぁ、せっかくのクリスマスだしね。今日は楽しく過ごそっか」




    家出騒動の結末として―――――――――――――




    喜多ちゃんは結束バンドを脱退することになった。



    ご両親を説得する材料が足りなかった。

    例えば、未確認ライオットなんかのグランプリに出て、人気になるための活動を進めていたら違ったのかもしれない。
    例えば、インディーズでも曲をリリースするとか、具体的な実績や知名度が絶対的に足りなかった。

    マイペースに個性を大事にやってきた結束バンドには足りなかった。

  • 67二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 17:15:46

    考えてみればあのダイブがないだけでそれだけ未来が変わるのか……人生って何が成功や失敗の切っ掛けになるかわからんな……

  • 68二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 17:36:13

    >>61

    真ぼっちが本物の真ぼっちになってる世界か…

  • 69二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 18:46:34

    実績がないのに卒業後は進学せずバンドマンになる!はヤバすぎるよな
    普通の親は止める……

  • 70二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 18:47:54

    喜多ちゃん脱退に関するエピソード


    1 喜多ちゃんとぼっち

    2 喜多ちゃんとリョウ

    3 リョウと虹夏


    dice1d3=3 (3)

  • 71二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 21:00:16

    【影になれる?】

    虹夏はスマホの電源をONにした。
    電源を切っていた間の通知が流れる。

    リョウ『受験お疲れ様。早速だけど話がしたい。校門のところいるから』

    今日は虹夏の第一志望の受験最終日だった。

    連絡のとおり校門の前に行くと、帰宅する受験生に紛れてリョウが壁に背を持たれていた。

    「遅い。寒いからそこの喫茶店行こう」

    「私、試験受けて疲れてるんですけど!」

    オシャレ重視の薄いコート。確かに寒そうに見えた。
    相変わらずだな、と虹夏は苦笑した。

  • 72二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 21:04:48

    リョウはヤレヤレと肩を竦めた。

    「受験終わったらバンドに注力するって話だったでしょ。虹夏はわりとせっかちだから、受験終わっての打ち上げなんかより、こっちの方がいいかと思ったんだけど違ったかな?」

    「・・・そうだね。正直なところ、これからのバンドについてはずっと気にしてたからさ。話が早いのは有難いや。さすが女たらしは違うね」

    「最悪ヒモで生きていこうと思ってる」

    「おい! いつか刺されるからやめときなよ」

    最寄りの喫茶店に入って二人は一息つく。

    「さて、今更だけど。郁代は辞めた。もうバンドメンバーじゃない。それまで積み重ねてきた4ピースバンドの結束バンドは死んだ。・・・まずはその事実を受け止めよう」

    改めて言われるとヘビーな事実だなと、虹夏はため息を吐いた。

    「フロントマンだったからね。結束バンドといえば喜多ちゃんってファン多かっただろうなぁ」

    「そう。結束バンドは郁代の成長物語だった。バリバリの素人から始まって、少しづつ技術を上げて、知名度を上げてここまで来たんだ。積み重ねてきたものがなくなったってこと」

  • 73二次元好きの匿名さん24/01/07(日) 22:04:22

    「めずらしいね。リョウが音楽性じゃなくてプロデュースの話するの」

    「・・・正直、責任を感じてる。僕としては音楽が楽しめれば良かったから、焦らずじっくりやってきた。まさかこんなことになるなんてね」

    リョウは悔恨を滲ませていた。
    大衆に迎合して良さを潰してしまったバンドのトラウマを引きずりすぎたと反省していた。

    「結束バンドの音楽が好きだった。努力して成長していく喜多のギタボも、バンドの一員としての演奏技術を身につけて、センスを感じる歌詞を書いてくるぼっちも、皆の歩く道を舗装しようとする虹夏のドラムも好きで、本当にこれからだったのに・・・」

    (喜多ちゃんが辞めたの、リョウもかなり引きずってんなぁ・・・)

    虹夏も近い気持ちを抱いているので、よく理解できる。
    その上で必要なのはその先の話だ。

  • 74二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 07:20:17

    山田の喜多ちゃんへの呼称がブレてるのは仕様です
    『2 喜多ちゃんとリョウ』にて、ギターの返却と「これまでありがとう、郁代」ってイベントがありました

  • 75二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 08:18:58

    「リョウ・・・今日の話ってのは『喜多ちゃんの代わり』だよね」

    喜多の脱退がショックで、落ち着くまではと後回しにしていた『代わりのボーカル』を誰にするかという問題。

    虹夏は遂に切り出した。

    「・・・僕はぼっちが適任だと思う」

    虹夏は悪くないように思えた。
    クリスマスライブの弾き語りも悪くなかった。

    背ギターや歯ギターまで可能な彼女であれば、ボーカルでギターのパフォーマンスが落ちることも無さそうだ。

    それはそれとして、もっと適任がいるようにも思える。

    「リョウがボーカルってのは駄目なの?」

    「ベースボーカルはしんどいし。僕がワンマンになって結束バンド潰しちゃうから止めとく」

    「・・・はいはい。このヘタレめ」

    虹夏は、リョウが昔所属していたバンドでボーカルをしていたことを知っていた。当然、その結末も。

    二の舞になることを、まだ恐れてるようにも見えた。

  • 76二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 12:50:17

    「ぼっちちゃんがボーカルねえ。私は賛成だけどさ、受けてくれるかなぁ」

    「やる気はあるし歌えるんだから大丈夫でしょ」
    「簡単に言うね」

    「僕や虹夏はどうにでもなるけどさ。ぼっちは本気でバンドに将来をかける気でいるよ。だったらさ、成功にしろ失敗にしろ、やりたいこと、やれること全部やった方がいいでしょ」

    「そりゃ・・・そっか。人生かけてるんだもんね。バンドリーダーとしては責任感じるや」

    「リズム隊としてもだよ? ぼっちがフロントマンをする意味って本当にわかってる? 下手をしたら、お荷物になるのは僕たちだ」

    うっと虹夏は言葉に詰まる。

    後藤ひとりは虹夏自身もファンであるギターヒーローその人である。

    ソロであるならばプロレベルの技術を身につけており、三人の中では圧倒的に上手い。

    のびのびとバンド活動してきただけあって、最初に出会ったころに欠けていた、バンド内で合わせる技術も飛躍的に伸びてきている。

    ギターヒーローに準ずるひとりが、ギターボーカルとしてフロントマンになる。

    ギターヒーローファンとしての虹夏としては歓迎できるが、その演奏にドラマーとしての自分が相応しいのかは―――

  • 77二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 17:04:08

    つかぬことを伺いますが…ぼっちリョウのツインボーカルではダメなの?

  • 78二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 17:48:53

    >>77

    それもまたいいですね!

    後の展開でダイスします

  • 79二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 22:27:11

    喜多郁代の成長譚は道半ばにして途絶えた。
    幕を開けるのは後藤ひとりの英雄譚。

    「新生する結束バンドは、ぼっちの歌詞を、世界観を、その声とギターで届けるからね。意外とあっさりぼっちは世界に見つかるんじゃないかな。・・・ギターヒーローであることも含めてさ」

    ライブ当日にギターに逃げられたとき。

    台風の日でお通夜のようなライブのとき。

    ひとりは雷鳴のようなギターの音色を轟かせてバンドのピンチをヒーローのように救ってきた。

    虹夏にとって『その日』はすぐ来るように思えた。

    そのときに中途半端な実力だったら、自分たちはどう思われるのか。

    「うん、確かに。いっぱい練習しないとだね」
    虹夏は不敵に微笑んで、拳をリョウに突き出した。

    虹夏の夢。
    STARRYを盛り上げる。
    実現のためには、まずは自分たちが有名にならなければ始まらない。

    ハイリスクハイリターンは望むところだと虹夏は息巻いた。

    「虹夏って青臭いよね」
    「なんだとー! ケンカ売ってんのかー!」

    「いや褒めてる。カッコイイし眩しいよ」

    リョウも拳を突き出してコツンと合わせた。

  • 80二次元好きの匿名さん24/01/08(月) 22:37:15

    【その名は0号】 side ひとり

    学校の授業を終えて放課後。

    校門のところにいた不審者・・・ではなくリョウさんに、わたしは壁ドンをされていた。

    「そういうわけで、ぼっち。ボーカルやってよ」

    ひぃいい! 帰宅中の生徒にすっごくチラチラ見られてる!

  • 81二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 07:56:43

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 08:33:22

    とりあえず壁ドンはすぐにやめて欲しい。


    リョウさんの顔がすぐそばにあるのは落ち着かない。微かに漂う香水にクラクラしてしまう。


    リョウさんのファンに刺されそう!


    「まだ生きていたいので止めてくださいいぃ・・・。逃げないです!」


    「そっか、こりゃ失礼」


    あっさりリョウさんは離れてくれた。

    今の壁ドンも面白半分の気まぐれ。大した意味はないに違いない。


    「それにしてもボーカル・・・喜多ちゃんの代わりにってことですか」


    「そうそう。クリスマスライブの弾き語り感動した。もっと聞きたいからボーカルやってよ」


    くっ、そんな安い言葉(挑発)なんかに――――






    1「わ、わかりました。世界がわたしを待ってるんですね・・・へへっ・・・」


    2「む、む、む、無理です! リョウさんもやってください!」(ツインボーカル ルート)


    dice1d2=1 (1)

  • 83二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 12:52:45

    「その返事が聞きたかつた! ぼっちが応えてくれるのを見越して、先生をここに呼んでるんだ。出てよ、0号先生」

    そう言って、リョウさんはどこへやら手招きしてる。

    「先生? あの、知らない人はちょっと。それにわたし忙しいですし」

    「ぼっちは今日暇でしょ」

    ひ、ひどい! 断言するなんて。

    ううっ、帰ってギターヒーローの動画編集しようと思ってたのに!

    「待たせたわね! ひとりちゃん!」

    いつか見た白髭の博士風のメガネを装備した、赤毛の女の子。

    「紹介しよう。陽キャ型決戦ボーカロイド、もとい結束バンドファンクラブ 0号。以後は彼女に師事するように・・・」

    「喜多ちゃんじゃないですか・・・」

  • 84二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 20:29:37

    喜多ちゃんがぼっちちゃんの先生になるのはいいね

  • 85二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 20:45:21

    喜多ちゃんは何やら可愛いポーズをとっている。

    「私は喜多喜多ではないわ! 結束バンドの旧ギタボは死んでしまったのよ。もういない・・・というか、合わす顔がないの。ここにいるのはぜろ号ちゃん。ひとりちゃんのボーカルの先生よ!」

    「郁代には公式ファンクラブの運用もお願いした。SNS担当大臣も続投してもらうつもり」

    「二重の意味で名前を呼ばないでください!、リョウ先輩! その名前は捨てました!」

    「ここぞとばかりに親にもらった名前をなかったことにするね」

    「い、良いんですか。お母さんに怒られちゃうんじゃあ・・・」

  • 86二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 20:47:00

    年末の喜多ちゃんの家出。
    最終的には、喜多ちゃんのお母さんの信用を勝ち得ることが出来なかった。

    だから喜多ちゃんがわたしたちと一緒にいることはよく思われないに違いない。

    あれ以来、わたしは喜多ちゃんとの距離が上手く取れなくなっていた。

    「バンドは辞めたし大学進学も決めた。譲歩したんだからこれ以上、お母さんには文句は言わせないわ。

    ・・・ひとりちゃん。私は嬉しいの。ひとりちゃんが結束バンドのボーカルを引き継いでくれること。そして私がひとりちゃんの先生をできることが!

    今までのギターの先生の恩返しをするわね!!(キターン)」

  • 87二次元好きの匿名さん24/01/09(火) 22:28:49

    >>82

    うーん、このちょろさ

  • 88二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 07:14:58

    喜多ちゃん…!

  • 89二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 08:26:16

    最近の喜多ちゃんは元気がなかった。

    それが今は元気いっぱい。

    ・・・わたしなんかがボーカル。

    リョウさんに流されて請け負っちゃったけど、わたしがボーカルをやることで、喜多ちゃんが元気になるならやる価値はある。

    そう思えた。

    「はい、先生! よろしくお願いします!」

    「! フォッフォッフォ、良い心がけじゃ! 早速ボイトレがてらカラオケ行きましょう!」

    「郁代。そのキャラ付け何?」

    喜多ちゃんに引きづられるようにして、カラオケへと連れていかれた。

  • 90二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 09:21:36

    【本番前に】side ひとり


    あっという間に、わたしがライブをする当日になってしまった。


    身体の震えが止まらない。


    胸の鼓動は高まる一方だ。


    何かしてないとこのまま死んでしまいそうなので、かなり早いけどSTARRYに行くことにした。



    エンカウント


    1 喜多 久留代

    2 後藤 直樹

    3 星歌

    4 虹夏


    dice1d4=1 (1)

  • 91二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 09:22:50

    喜多 母が来た?!

  • 92二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 15:32:39

    見覚えのある人がSTARRYへの道を歩いているのに気づいた。

    喜多ちゃんのお母さん。

    喜多ちゃんの家ってここから10分ぐらいだから買い物か何かかな?

    「あら・・・後藤さん」

    見ていたら目がバッチリあって認識されてしまった。
    最後に会ったときは喜多ちゃんとバチバチにケンカしてたし、今も意向に反して喜多ちゃんにボーカルの先生してもらってるから、めちゃくちゃ気まずい。

    「へへへっ、後藤です。ご無沙汰しています・・・」

    もしかして喜多ちゃんのことで問い詰められるんじゃあ。

    ひぃいいいいい!
    喜多ちゃんの貴重な時間をいただいちゃってすみません!

    「顔色が真っ青よ? 大丈夫? ちょうどそこの喫茶店で時間潰そうと思ってたし、付き合ってあげるから少し休んでいった方がいいんじゃない?」

    「あの、お構いなく――――」

    断りかけたものの、調子の悪さを自覚したから、くらりと目眩がした。

    「ほら、倒れそうじゃない?! まだライブの時間までだいぶ時間あるでしょ」

    なんでライブの時間なんて知ってるんだろ?
    疑問になりながらも、脇の喫茶店に連れていかれた。

  • 93二次元好きの匿名さん24/01/10(水) 20:27:48

    めちゃ面白い 保守

  • 94二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 00:03:05

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 07:07:09

  • 96二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 09:51:41

    なんかよくわかんないけど、喜多ちゃんのお母さんが「落ち着くわよ」ってオススメしてくれたハーブティーを飲む。

    煎じた草の匂いがする。
    これがマダム界の香り・・・。

    「・・・バンドを辞めさせた郁代の代わりに後藤さんが歌うのよね。弱ってるのはそのせいなの?」

    「アッハイ。緊張してて、へへ。喜多ちゃんから聞いたんですか?」

    仲直りできてるのかな?

    「郁代からは聞いてないわ。・・・結束バンドのことを教えてくれたときにSNSやMV教えてたじゃない? 気になって見てたのよ」

    硬い声。

    喜多ちゃんがおうちのことを口にしないと思ってたけど、ケンカ続いてたんだ。

    「告知で見たのだけど、後藤さんって歌うの初めてだそうね? どうして伊地知さんや山田さんじゃないのかしら」

    どうしてわたしがボーカルなのか。
    それはわたし自身がそう思ってる。

    だいたいあの告知には言いたいことがある。

    そりゃバンドとして歌ったことはないけど、クリスマスライブで弾き語りしたのに。

    なかったことになって『歌声を初披露』って内容になってた。解せない。

    え、あの弾き語りが良かったから、わたしに話を持ってきたんですよね? リョウさん?

  • 97二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 19:16:23

    なんというおまいう

  • 98二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:22:56

    最初は本当にリョウさんの口車に乗せられただけだった。

    「なんでわたしがボーカルなのか、わたしだってわからないです。けどわたしがボーカルを引き継ぐって話になったとき、喜多ちゃんが喜んでくれました」

    「そう・・・郁代が・・・」

    「そんな喜多ちゃんを見たら、わたしなんかがボーカルをやってもいいって許された気がして・・・わたしがボーカルを任された理由はわからないですけど、わたしがボーカルをやれる理由はそれです・・・」

    わたしが描いた理想の自分は、ギターボーカルだった。

    けど自分なんかがってどうしても思えて、一曲すら自分のボーカル曲なんて用意すらしなかった。

    やりたい気持ちは確かにあったのに自縄自縛で踏み出せず。

    だから、わたしが歌える理由は『喜多ちゃん』だ。

    「お母さんは不愉快かもしれないですけど・・・わたし、喜多ちゃんにボーカルの先生してもらってて、どんな風に歌った方がいいのか、どこで息をつくかとか喜多ちゃんからたくさん教わってて・・・」

    わたしなんかが喜多ちゃんの曲を歌うことを恐れ多いと感じると同時に、憧れた喜多ちゃんに近づけたみたいで嬉しくなった。

    「後藤さんは・・・娘のことが好きなのねえ」

  • 99二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 06:38:35

    喜多ちゃんのお母さんのしみじみと呟かれた言葉に虚をつかれた。

    「郁代もね。後藤さんにギター習ってたでしょ。後藤さんギターすごいのってはしゃいでいたわ。・・・仲のいい友達同士だったのね」

    喜多ちゃんにギターを教えていて、今は逆に喜多ちゃんに歌のことを教わっている。

    喜多ちゃんとの関係は不思議だ。

    わたしの大事な友達。

    ――――でもそのせいで道を踏み外しかけてしまった。

  • 100二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 16:37:37

    バンドマンが不安定な職業なのは分かっている。

    リョウさんみたいに生まれつき地に足つけていない気質だとか。

    わたしみたいにギターくらいしか取り柄がない、それ以外に道がない人じゃなければバンドマンに決め打ちなんてやるべきじゃない。

    喜多ちゃんは大学進学しない理由を、目標とするわたしが大学進学せずに音楽活動に注力するからと言っていた。

    「うっ、わたしのせいで喜多ちゃんが道を外しかけてすみませんっ」

    「いいのよ。貴方は悪くないんだし。・・・後藤さんは話し合いの時も、私の味方をしてくれたわねぇ・・・」

    「だって喜多ちゃんはなんだってできるから」

    音楽にしか道がないわたしと違って、喜多ちゃんには色んな可能性がある。

    何にだって成れる。

    好きを見つける天才だ。

    わたしなんかを目標にして、それ以外を捨てるなんてもったいない。

    喜多ちゃんは手が届かなくても、いつまでもどこまでもキラキラしていて欲しい。

  • 101二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 16:41:17

    喜多ちゃんのお母さんの表情は暗い。

    「元凶の私が言うのもなんだけど・・・引き裂いて申し訳ないわね・・・」

    「いえ・・・喜多ちゃんのお母さんが悪いわけじゃないです」

    議論の末に、喜多ちゃんのお母さんはバンドは認めても、大学進学の放棄は認めなかった。

    そこが焦点だった。

    ・・・結束バンドは、もっとかけ足でいるべきだった。

    今さら言ってももう遅い。

    毎月STARRYでライブをやってきてお客さんも増えてきた。

    でも、またまだその辺によくいる趣味レベのバンドのひとつでしかない。

    結束バンドが飛躍するにはこれからが大事で。

    ――――喜多ちゃんは、大学進学前提ならば自分は足手まといと断じた。

  • 102二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 16:49:24

    《補足》
    ダイスの結果として、本作では喜多ちゃんは『逃げたギター』ではありません。
    ギターができないことを言い出せず、しかしSTARRYにはやって来ていました。

    ゆえに立脚点が『言うべきことを言い出せず大惨事を招きかけた。だからバンドに対して真摯で在りたい』に変化。
    そして『一度は逃げてしまった。だから二度は逃げない』という矜恃を持ちません。

  • 103二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 17:37:13

    喜多ちゃんの先まで、わたしはがんばる。

    喜多ちゃんのお母さんと話していてその気持ちを思い出した。

    「そろそろ行きます。リハもあるので・・・っ。あの、お金・・・」
    「娘の友達にお金取るわけないでしょ。応援してるわ」
    「あ、ありがとうごさいました。お茶、ご馳走さまでした」

    STARRYまでの道を急いだ。

    歌い出したい気分だった。





    「遅かったね、ぼっち。なんか機嫌良さそうじゃん。迎えが必要かと思ったよ」

    STARRYの楽屋にはリョウさんがもう来ていた。

  • 104二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 18:54:33

    なんとなく辺りを見回す。

    喜多ちゃんはいない。

    いつもだったらとっくに現れている時間なのに、赤髪の彼女はいなかった。

    「郁代なりのケジメなんだろうね。もう自分は演者じゃないってことなんだろうさ、つまんないね・・・良し、ぼっちにコイツをあげよう」

    リョウさんは傍らのギグバッグをゴソゴソしだした。

    あれ? リョウさんがいつも使ってるやつと違うな。

    いや、いつものも横にある。

    ギグバッグがふたつ?

    「はい、これ」

    水色のレスポールジュニア。

    喜多ちゃんの、ギター・・・!

  • 105二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 20:55:44

    リョウさんがレスポールのボディを撫でる。

    「郁代から返してもらったんだけどさ。持ってて落ち着かなくてさ。部屋で飾るには『重すぎる』。だから、ぼっちにあげるよ」

    結束バンドの喜多ちゃんと共にあったレスポールジュニア。

    放課後の一室で教えて、スタジオで練習して、ライブを駆け抜けた相棒。

    ギターを持つリョウさんが喜多ちゃんにすら見えてきた。

    欲しい!

    「く、ください! お金なら払います!」

    「そう? じゃあお値段84万円になります」

    「た、高い! ぼったくりすぎる!」

    お父さんのジュニアじゃないレスポールだって50万くらいなのに!

  • 106二次元好きの匿名さん24/01/12(金) 20:57:09

    喜多ちゃんのギター情報はこちらから

    https://www.mizumarublog.jp/2023-01-06-4111#index_id3

  • 107二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 07:46:06

    リョウさんは首を振った。

    「お金に困ったときに、郁代に貸してたギターいくらで売れるんだろって相場確認したときは海外で84万円だった」

    「マジですか・・・?本当に・・・?」

    「ま、日本で取り扱いが見つからなかったぐらいのレアモノだからね。『相場』じゃなくてコレクターの言い値って感じだけど」

    いくら何でも高すぎる。

    でも喜多ちゃんのギター欲しい。

    このままリョウさんが持ってたら、喜多ちゃんのベースみたいにいつのまにか売られてそうだし、確保しておきたい!

    これはもうやっぱり臓器とか売るしか・・・!

    「なんだったら身体でもいいよ」

    やっぱり肝臓・・・!

  • 108二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 08:09:16

    リョウさんはゲベゲヘとわざとらしく笑った。

    「ぼっちが一晩その身体を好きにさせてくれたら、朝にはレスポールジュニアはぼっちのもの・・・」

    「そんなんでいいんですか?」

    84万円がそれだけで?!

    「えっ? 意外と僕の好感度高かったりした?」

    思った反応と違うな・・・って顔してるリョウさん。
    言ったからにはもう取り下げられませんよ! リョウさん!

    「いえ、なんとも思ってないですけど。リョウさん、そうゆうこと慣れてそうだから安心だし。ギターが手に入るなら別にいいかな――って」


    「天誅!」「あがっ!」

    あ、横にやって来て話を聞いてた虹夏ちゃんにリョウさんがぶっ飛ばされた。

  • 109二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 10:22:49

    84万の女ぼっち

  • 110二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 16:31:26

    虹夏ちゃんは楽屋で他のバンドに挨拶してたけど、ギターの話の間に戻ってきて話は聞いていた。

    そして、ぷりぷり怒ってる。

    「ぼっちちゃん、もっと自分を大事にしなきゃダメだよ! 初めては一生に一度だよ?!」

    「あっはい。すいません。でもわたしは一生経験することなく終わりそうだから別にいいかなって」

    うっ、とんでもない金額をチャラにできるとこだったのに・・・

    「もう!リョウもリョウだよ! セクハラだめ、絶対! 普通に縁切るレベルだからね!」

    「そもそもワンナイトはさすがに冗談だって。さっきも言ったけど、ギターはぼっちにあげるよ。お金は・・・そのうち普通のレスポールジュニアぐらいの金額くれると助かる」

    「あ・・・そうですか。はい、わかりました」

    まぁそれなら広告収入でなんとかなるかな?

    いくらかリョウさんにお金貸してるから、それとキャンセルしとこう。

  • 111二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 16:33:57

    虹夏ちゃんは晴れやかに笑っていた。

    「良し、喜多ちゃんのギターについて話はまとまったね。そのギターさあ、リョウのやつ、私に押しつけてたんだよ」

    「虹夏ちゃんの部屋に?」

    虹夏ちゃんがジロリと見やって、リョウさんはバツが悪そうにする。

    「これは喜多ちゃんのだから預かっといてって渡されてたんだよ。

    ・・・かと思えば、今日もしかしたら飛び入りで喜多ちゃんが復帰するかもしれないから、持ってきてって言われて持ってこさせるし。

    オマケにぼっちちゃんにこれをネタにセクハラしてるし!」

    リョウさん・・・メンヘラってるなぁ。
    アレな人ではあるけど、それでも喜多ちゃん脱退はショックだったんだな。

    「郁代は来なかった。だからこの話は終わりだよ」

    カッコつけてるところ悪いけど、虹夏ちゃんに色々バラされたせいで、リョウさんは顔を赤らめてそっぽを向いているから締まらない。

    ・・・リョウさんが期待してたみたいに、ライブ直前に『やっぱり私辞めません!』って喜多ちゃんが現れるのを想像したことがある。

    喜多ちゃんはそんな中途半端なことはしないとは思ってるけど、期待するのは止められない。

    リョウさんはすっぱり諦めるために、喜多ちゃんから返ってきたギターを私に譲る気になったのかな。

  • 112二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 18:58:59

    なんだかんだでわたしのものになった『喜多ちゃんのギター』。


    これから始まる、わたしがギターボーカルを務める初めてのライブ。


    わたしはライブに持っていくギターとして、


    1 喜多ちゃんのギター

    2 自分のギター


    dice1d2=1 (1)


    を手にした。

  • 113二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 20:40:13

    ダイス神がぼ喜多を望まれておられる

  • 114二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 20:56:25

    手にしたのは、『喜多ちゃんのギター』。

    「今日のライブはこれで行きます」

    「ちょっと、ぼっちちゃん?! 喜多ちゃんの気持ちを継ぎたいのはわかるけどさぁ。慣れないギターじゃなくて大丈夫なの?」

    「大丈夫です」

    虹夏ちゃんの心配にはっきりとこたえた。

    喜多ちゃんに教えるために直接触ったこともある。

    このギターと超えてきた、いくつもの放課後の教室を覚えている。

    絶対に、忘れてやらない。

    「ぼっち、行けるんだね?」

    「はい!」

    リョウさんの質問に返した声は、わたしにしては大きくて自分自身びっくりした。

  • 115二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 21:00:06

    ラストエピソード【ライブ】


    語り部 dice1d4=1 (1)


    1 ひとり

    2 リョウ

    3 喜多郁代

    4 喜多久留代

  • 116二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 21:04:32

    4連続で1?!

  • 117二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 21:05:49

    ちょっと確認

    dice1d4=3 (3)

  • 118二次元好きの匿名さん24/01/13(土) 21:06:14

    偶然か・・・

  • 119二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 07:38:01

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 16:48:19

    ライブ冒頭。

    虹夏ちゃんのMC。

    「こんにちは、結束バンドです。告知していたようにギタボの喜多は脱退しちゃいました。3ピースとなった結束バンドですが、腕を磨き、これまで以上のパフォーマンスを発揮していきたいと思います! 」

    虹夏ちゃんの少し固めの挨拶の間、観客席を見下ろす。

    1号さんと2号さんと(ついでにわたしのお父さんと)一緒に、喜多ちゃんは来ていた。

    わたしが持つギターを見て驚いているようだった。

    「・・・新生結束バンドの曲をお聞きください! ボーカルはぼっちちゃん! 初めてだからお手柔らかに!『忘れてやらない』」

  • 121二次元好きの匿名さん24/01/14(日) 21:38:04

    喜多ちゃんみたいになりたかった。

    虹夏ちゃんのカウントに合わせてギターを爪弾いた。

    引き継いだ喜多ちゃんのギターは、イメージ通りの音を奏でる。

    喜多ちゃんのギターを教えながらした空想。

    もし喜多ちゃんがもっと上手くなったら『こういう風に弾くんじゃないか』。

    例えハリボテでも嘘でも、今だけは喜多ちゃんみたいに成りたかった。

    そして大事なことを忘れそうになっていた。

    イントロに乗って歌い出す前にすべきこと。

    猫背では声が出ない。

    だから。

    いつもの姿勢から背筋を伸ばす。

    視界にはステージから見下ろす光景が広がって、その中心には喜多ちゃん。

    喜多ちゃんに歌声を届けたくて。


    ――――――吠えた。

  • 122二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 08:02:38

    保守

  • 123二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 08:42:58

    ”ブツン”

    『忘れてやらない』最後の1小節。

    弦が跳ねて、銀糸が宙を舞う。

    咄嗟に別のコードでカバーした。

    曲を演奏しきってから、嫌な予感のままに確認するとペグが折れている。
    文化祭のときと同じ壊れ方。

    どうしよう。

    ステージにはバッキングでフォローしてくれる喜多ちゃんはいない。

    この場には、わたししかいない。

    喜多ちゃんが適当な扱いをしていたとは思わない。けどモノは壊れるときは壊れる。

    物は誰かに譲ると、途端に壊れるという話を思い出した。

    使用者が違ってこれまでとクセが違う使い方をするから、そのせいで壊れるって解釈もできるけど・・・

    わたしにはこのギターがわたしを拒絶しているように感じた。

  • 124二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 18:23:22

    このギターを使って演奏すれば、喜多ちゃんみたいになれた気がした。

    けれど魔法は解けてしまった。

    ここには壊れたギターと後藤ひとりだけ。

    ここはステージの上、お客さんは待ってはくれない。

    わたしはギターボーカルを任されたんだ。

    動き出さなきゃ。

    控え室には予備のギター・・・本来使うはずだったギターだってある。

    それを取りに行かなきゃ。

    頭はそう考えるのに身体は動かない。

    喜多ちゃんのギターのペグが壊れたことに、喜多ちゃんに拒絶された気がして。

    糸まで切れてしまった。

    縋るように、ステージの下、現実の喜多ちゃんがいた辺りに目をやる。

    ――――喜多ちゃんがいない?

  • 125二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 21:53:13

    見る価値もないって見放されちゃったかな。

    そんな、生来のネガティブ思考が顔を出し・・・

    「お待たせ、ひとりちゃん! ギター持ってきたわ!」

    わたしのギター・・・パシフィカ を抱えて喜多ちゃんが舞台袖から飛び出してきた。

    太陽みたいな笑顔。

    喜多ちゃんはよっぽど全力で急いできたのか、息を荒げていて、額には汗すら浮かばせていた。

    わたしのギターの弦が切れてから、数分しか経っていない。

    いくら喜多ちゃんでも、こんなに早く来るのは難しいはずで。

    たぶん弦が切れた瞬間には、ギターを取りに控え室に走り出していたに違いない。

    喜多ちゃんはいつもわたしを支えてくれる。

    「ありがとう、喜多ちゃん」

    万感の想いを込めて、お礼を伝えた。

  • 126二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 06:42:14

    胸熱

  • 127二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 12:39:01

    パシフィカ。

    喜多ちゃんのではない。

    お父さんのでもない。

    自分の身体の一部のように感じる”わたし”のギターを持って立ち上がる。

    MCで場を持たせていた虹夏ちゃんに、もう大丈夫とアイコンタクトを送った。

    「おっ、ぼっちちゃんの機材トラブル解決したみたい。喜多ちゃん、フォローありがとう! そうそう、次の曲は新曲です。しかも脱退する前に喜多ちゃんが歌詞を書きました。つまり遺作です!」

    「虹夏先輩、私はまだ死んでませーん!」

    舞台袖に引っこもうとしていた喜多ちゃんに、虹夏ちゃんが絡んで会場に笑いが起きる。

  • 128二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 12:56:18

    ギターを確認しつつも、脳裏に喜多ちゃんとの歌詞作りが思い出される。

    まだ喜多ちゃんが家出をする前、喜多ちゃんは愛の逃避行めいた歌詞を書きあげたものの、逃避行相手と思われるリョウさんからボツをくらっていた。

    浅い。陳腐。喜多らしさが無さすぎと酷評されて、喜多ちゃんは落ち込んでいた。

    『どうしたものかしら・・・。歌詞担当大臣からズバッとした解決策はない?』

    『ないですね・・・本当はいつも苦労してるので・・・わたしが知りたいくらいです。わたしもリョウさんにボツされることありますし』

    『うーん、でもひとりちゃん、最初からすごかったのよね。はじめてかいたのって”あのバンド”よね。あれって確か”ひとりちゃんから見たリョウ先輩”のイメージが元になってるんですっけ』

    『知り合ったばかりの印象ですけどね。・・・今だった、全然違う曲になるだろうなぁ・・・』

    『・・・よし、決めたわ』

    『? なにをです?』

    『”私から見たひとりちゃん”で歌詞を書く!』

  • 129二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 20:01:05

    最高

  • 130二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:14:44

    虹夏ちゃんがスティックを叩き演奏が始まる。
    ギターをかき鳴らし、自然に練習の通りに歌い出せた。

    ―――それでも浮かぶのは喜多ちゃんとの会話の欠片ばかりだ。


    『私、ひとりちゃんが書いた歌詞の意味がよく理解できないで壁にぶつかってるじゃない?

    ひとりちゃんになりきって、ひとりちゃんのことを歌詞にしたら理解度高まるんじゃないかと思ったの。

    バンドで青春を一緒に過ごしてるわけだし、分かり合える、言わば共通言語はあると思うのよ。あっ、これひとりちゃんっぽい歌詞にいいわね!』

    わたしのことなんかわかっても楽しくないよ。
    そもそも誰とでも絶対に分かり合える、共通言語がある!なんてわたしの対極の考えだよ。
    でも、喜多ちゃんらしい考えだ。




    『ひとりちゃんと言えば揚げ物が好きよね。揚げ物といえば・・・ファーストフードに寄ったときにポテトが揚げたてだったらラッキーってなるわよね!』

    それ学校帰りにクラスメイトでぞろぞろマックに寄ってテンションぶち上げてるイメージだよね?
    陰キャはそんな経験ないんですけど・・・

  • 131二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:23:10

    『ひとりちゃんと言えば揚げ物が好きよね。揚げ物といえば・・・ファーストフードに寄ったときにポテトが揚げたてだったらラッキーってなるわよね!』

    それ学校帰りにクラスメイトでぞろぞろマックに寄ってテンションぶち上げてるイメージだよね?
    陰キャはそんな経験ないんですけど・・・




    『あとひとりちゃんと言えば・・・長い前髪から覗く青い瞳がキレイで・・・ライブのときなんかは燃えてるように見えることがあるわ。カッコイイわよ』
    えへへ。
    カッコイイって言われて嬉しかったけど、流れるように前髪かき上げられて蒸発しちゃったっけ。




    『曲名は________よ。うん、いいタイトルね』
    名前まんまで恥ずかしい!

    『えー、素敵じゃない。変えたくないんだけど。んー、でもひとりちゃんがそこまで言うなら・・・わたしの恥ずかしい名前を歌詞にいれるわ! それでお相子ということでどうかしら』
    あ・・・曲名は変えてないんですね・・・じゃあいいです、というやり取り。
    でも・・・歌詞の中にお互いの名前があるのは嬉しかった。

  • 132二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:33:50

    わたしのイメージソングというには前向きすぎる。

    歌詞を書いた、喜多ちゃんの吐息が滲む曲。

    わたしが描く”後藤ひとり”じゃなくて。

    喜多ちゃんが描いた”後藤ひとり”の物語。

    こんなわたしになりたいな。

    なれたらいいな。

    そう、なっていこう。



    ――――――”ひとりぼっち東京”」

    願いを”歌”と”ギター”にこめて、最後の1小節まで駆け抜けた。

  • 133二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:45:54

    歓声が聞こえる。

    息を整えながら、改めてステージを見回す。

    それなりに盛り上がったみたいだ。

    良かった。総スカン食らったらどうしようかと思った。

    喜多ちゃんも歌ってる間に観客席に戻ったみたいで、ニコニコと見てくれている。

    「はい、『ひとりぼっち東京』でした。聞いてくれてありがとー!」

    虹夏ちゃんがMCに繋げてる。

    良かった、これで一息つける。ふぅ。

    「うーん・・・トラブルのせいで1曲減らさないといけないかも。せっかく聞きに来てくれた人、ごめんなさい! まあ・・・それはそれで時間があまりそうなんだけど。

    せっかくだから、今回ボーカルに初チャレンジしたぼっちちゃんの感想、聞いてみよっかな? どうだった? ボーカル」

    え?

  • 134二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 22:54:15

    言うべき言葉なんて一言も浮かばない。

    歌い終わったとき以上に喉がカラカラだ。

    どうしよう、どうしよう。

    つい最近、リョウさんと見に行ったSICK HACKのライブで、お姉さんがダイブしていた光景が浮かんだ。

    あれなら何も言わなくていい!

    名案だ!

    観客席にいる喜多ちゃんと目が合う。

    キョトンとしただけな気もするけど、喜多ちゃんとアイコンタクトが通じた気がした。

    壊さないようにギターをスタンドに立てかける。

    助走のために駆け出した。

    「ぼっちちゃん? ちょ、一体なに・・・」
    虹夏ちゃんの声。

    わたしは喜多ちゃんに向かって飛んだ。


    《END》

  • 1351 ◆1RUJFRv.8KY024/01/16(火) 22:56:41

    以上になります。
    ここまで読んでいただきありがとうございました!
    以下、せっかくなので作品語り。

  • 1361 ◆1RUJFRv.8KY024/01/16(火) 23:00:54

    山田リョウ♂による人間関係がややこしい結束バンドが見たい
    けどないから自分で書こうかなと思ったんですが、展開が浮かばなかったのでダイスでいこうと決めました

    まさか、ぼ喜多に行き着くとは・・・
    これはこれで良しですが!!!!

  • 1371 ◆1RUJFRv.8KY024/01/16(火) 23:09:28

    ぼリョウといえば、餃子回での二人の逃避行!

    と、そこまで話をスキップしたものの、そこまでいったら喜多ちゃん家出回が目前だったので、スキップした期間は原作の出来事の多くが発生していないものとし、思い切ってこのような形に舵を切りました

  • 1381 ◆1RUJFRv.8KY024/01/16(火) 23:11:11

    思ったより綺麗に話がまとまったんで加筆修正してハーメルンあたりに投稿しようかなぁと思ってます

  • 139二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 07:53:13

    オマケ

    ちょっとえっちな後日談


    1 リョウさんと!

    2 喜多さんと!


    dice1d2=2 (2)

  • 140二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 07:53:14

    保守

  • 141二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 07:53:51

    世界がぼ喜多であれと囁いてる

  • 142二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 08:51:30

    あ、喜多『さん』になってる
    ただの誤字だけども……notぼ喜多で書きます

  • 143二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 12:41:32

    《喜多さん、つまり喜多久留代さんと!》

    マンションの自宅までのエレベーターの中。

    スマホの通知を見ると、結束バンドの公式アカウントから次のライブがアナウンスされていた。

    反射的に、自分のスケジュールを確認し、空いていることに年甲斐もなく、テンションが上がってしまう。

    あの日。

    郁代がボーカルを辞めて、ひとりさんがボーカルとしてスタンドに立った日、私はライブに参加していた。

  • 144二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 12:52:56

    娘のバンドをよく知らず、ライブにも一度も参加することなく――――つまりよく知らないまま娘の音楽活動に反対した。

    そして決着は着いたものの郁代との関係はギクシャクしていた。

    バンドのことをよく知ってから行動すべきだったという若干の後悔。

    郁代がバンドを抜けて迷惑をかけたバンドがどうなったのか、知るべきだという義務感。

    郁代との関係改善に役立つんじゃないかというちょっとした打算。

    そんな思いからこっそりバンドを覗きにいき、慣れない場所だからと早い時間に下見をしているときに、顔色の悪いひとりさんと出会ったのだ。

  • 145二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 13:38:39

    >《喜多さん、つまり喜多久留代さんと!》

    え!?

  • 146二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 15:46:10

    ひとりちゃんと久留代さんでえっちな展開!?

  • 147二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 20:09:04

    >>145 >>146

    ちょっとだけ、さきっちょだけどからセーフのはず

  • 148二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 20:10:44

    ひとりさんとの会話は新鮮だった。

    女子高生とのやり取りなんて郁代とばかりだし、年頃の女の子は世間一般的に娘のテンションかと思ってた。

    けれどひとりさんは違った。

    声は小さくて、
    控えめで、
    たどたどしくて、

    ――――それでも一生懸命に気持ちを伝えようとしていた。

    この子は郁代の代わりに歌うらしい。

    どんな風に歌うんだろうと、純粋な興味が沸いた。


    そして迎えたライブ。

    ひとりさんは、いえ、結束バンドのぼっちさんはひたすらにカッコよかった。

  • 149二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 20:13:10

    ちょっとえっちなぼ喜多が見れない悲しみよりも久留代×ぼっちへの好奇心が勝ってしまった…wktk

  • 150二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:16:32

    まず顔が良い。
    長い前髪から時折覗く表情は整っていて、歌詞と共に移ろう表情からは目が離せなかった。

    気にしていた歌は、会話していたときと同じように、声質は弱く控えめだったけれど。
    それでも感情はしっかり声に乗り歌となっていた。

    そして何よりもギター。

    『後藤さんってはギター上手いの。カッコイイのよ!』

    いつか郁代が語った言葉がリフレインした。

    表情よりも声よりも鋭く、雷鳴のように。

    まるで独立した器官のように。

    あるいはそれこそが彼女の本体であるかのように。

    全くブレず、自由にギターは歌っていた。

    多数の視線が集まるステージの中央で、小動物のようだった彼女は、まるで物語の主人公のようだった。

  • 151二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 22:38:48

    一言で言えば、うん、ギャップにやられてしまったのだ。

    娘の友人に対してどうかと自分でも思う。

    今では、公式ファンクラブの会長やってる郁代に隠れながら、コソコソと情報を追っかけたり、変装してライブに参加したりしていた。

    エレベーターが自宅のフロアに到着した。
    結束バンドの公式アカウントのページを閉じて、スマホをバックにしまう。

    鍵を開けてドアをくぐると、郁代の靴と一緒に見慣れない女性物の靴が玄関にあった。

    「郁代の友達が来てるのかしら?」

    とりあえずは手を洗って、軽く化粧を整えて挨拶でもと考えて、脱衣場を兼ねた洗面所のドアを開くと。


    ――――風呂から上がり、まさにバスタオルを手に取ろうとしていた、全裸の後藤ひとりがいた。

  • 152二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:08:37

  • 153二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 06:47:33

    ほかほかとまるで雪のように白い肌から上がる湯気。

    長い髪はバンドタオルで巻かれて、か細いうなじの曲線美があらわになっている。

    「あわわわわ・・・」

    前髪も押さえられ、普段は隠されている幼げなやわらかい顔立ちが露出し、演奏時には時折鋭さを見せる零れそうな大きい瞳は驚きに見開かれていた。

    乳房も目を引く。ハリのあるお椀型が重量に逆らい形を保ち、先端にはサクランボで可愛らしい。

    胸を代表に脂肪が乗り、やわらかそうでダイエットで痩せすぎの郁代とはまるで違う。

    まだ十分に水気を拭えてないようで、水玉がきめ細かい肌を転がっていく。

    若く健康かつ肉感的な少女の肢体を思わず見入ってしまった。

  • 154二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 07:14:05

    流し見してたから山田♂が人妻に手出すおまけだと思ってたら相手ぼっちなのか…

  • 155二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 08:16:32

    >>154

    山田♂‪✕‬久留代はさすがにね…

  • 156二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 10:12:40

    は・・・いけない!
    当たり前だけど他人の裸をマジマジと見るのは良くないわ!

    「ご、ごめんなさいね! 失礼しました」

    洗面所を飛び出したら、ひょっこりと奥から郁代が現れた。

    「あれ? お母さん、今日は早かったのね」

    「たまたまね。・・・ひとりさんが来てるのね。人を呼んでるなら連絡してよ」

    「ちょっと切羽詰まってたのよ。ひとりちゃんち、電気止められちゃって、しなびてたのを何とか連れて帰ってきたの」

    「え・・・大丈夫なの、それ」

    結束バンドもインディーズとはいえ事務所に所属してCD出してるし、何度か曲もバズってそれなりの人気バンドのはず・・・

    ギターヒーロー名義の広告収入だってあるはずだし・・・

    何か金銭トラブルかかえてるのかしら・・・悪い男に騙されたりとか・・・

    あの胸とか男に狙われそうだし・・・

    「単純に払い忘れちゃったみたい。オール電化のおうちだから、お風呂にも入れなくなっちゃらしくて・・・今とりあえずお風呂に入ってもらってたとこ」

    「そう・・・」

  • 157二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 16:32:35

    洗面所のドアが開かれた。

    「すいません・・・お風呂お借りしました・・・あと、見苦しいものをお見せして大変申し訳ありませんでした・・・」

    慌てて乾かしたのか、髪がまだ湿らせたままのひとりさんが出てきた。

    ひとりさんの物言いに、さきほど目撃してしまった光景がフラッシュバックする。

    湖から女神が出てきたかの光景。

    あれをお見苦しいなんて言い出したら、この世に価値あるものなんて―――

    「あー、ひとりちゃん。髪びちゃびちゃじゃない。もうっ、乾かしてあげるから」

    「す、すいません。えへへ・・・」

    郁代に連れられて、洗面所に帰っていくひとりさん。
    なんかこのままに泊まっていきそうな流れね。

    ちょうど鶏モモを買ってきたところだったわ。でかした、私。

    「ひとりさんの晩御飯も用意するわ。せっかくだから好物のから揚げにするわね」

    「・・・なんでお母さん、ひとりちゃんの好きなもの、知ってるの?」

    公式情報だからね。

  • 158二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 16:35:28

    <喜多さんと!>はおしまい



    オマケ2

    ちょっとえっちな後日談


    1 リョウさんと!

    2 喜多ちゃんと!


    dice1d2=2 (2)

  • 159二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 17:04:19

    《喜多ちゃんと!》 side:後藤ひとり

    冬は寒い。

    布団の中から出たくない。
    でも今日はいつもよりぬくぬくとしていて――――


    薄ら目を開くと喜多ちゃんの顔があった。



    すぅすぅと上品な寝息を立てている。

    いつも元気いっぱいだから、静かに寝ているところは新鮮に感じる。

    いつもニコニコしてるから分かりにくいけど、本来は吊り目気味なんだよなと、改めて寝顔に気付かされる。

    「喜多ちゃん・・・」

    「んぅ・・・」

    名前を呼ぶと、呼び水になったのか、長いまつ毛が開いていく。

  • 160二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 17:09:57

    ダイス神はやっぱりぼ喜多を望んでおられる・・・

  • 161二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 21:14:06

    喜多ちゃんが身じろぎする。

    「ひとりちゃん・・・」
    ベリドットの瞳が寝ぼけ眼に、わたしを認識する。

    寝起きで掠れた、いつもより低くやわらかい声でわたしを呼ぶ。

    なんだかいいな。

    ここはわたしの家で、わたしの部屋。

    実家の押入れを思いださせる秘密基地みたいなロフトに、布団を敷いたわたしの巣。

    そこに喜多ちゃんを引き込んで夜を跨いで、とろとろと朝の微睡みを揺蕩う。

    喜多ちゃんもまだ起きる気はないようで、わずかに身を寄せてきた。

    なんとなく嬉しくなって、喜多ちゃんの体に腕を回す。

    まるでわたしが喜多ちゃんをつつみこむみたいな姿勢。
    自然と距離が近くなる。

    気づかれないようにゆっくり静かに深呼吸すると、喜多ちゃんからいい匂いがした。

    シャンプーやリンス、ヘアオイルなんかと、喜多ちゃん自身の香り。
    幸せに包まれて、生まれてきて良かったと素直に思えた。

    君と僕の完璧な世界。
    パーフェクトワールド・・・

  • 162二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 21:19:37

    喜多ちゃんと仲良く過ごしているところに、ピンポーンとドアチャイム。

    ガチャリと鍵が開けられ玄関のドアが開く音がした。

    この家の合鍵を渡している相手。

    というか、そういえば虹夏ちゃんが今日来るって話だったのを思い出す。

    「こんにちはー、ぼっちちゃん。もう昼前だけど起きてる? っていうかちゃんと生きてる? ・・・ってリョウ! なにまたぼっちちゃんの家泊まってんの?! 男女なんだよ。間違いが起きたらどうすんの?!」

    昨日の記憶を思い出してきた。

    昨日は喜多ちゃんだけじゃなくてリョウさんも来ていて、適当にソファーに寝かせてたっけ・・・

    「うーん、うるさいってば虹夏ぁ。もうちょい寝かせてよ・・・」

    「寝かせてられるかー! 起きろー!」

    虹夏ちゃんとリョウさんがドッタンバッタンしている。

    気づけば、はっきりと目覚めていた喜多ちゃんと目が合っていた。

    なんだか可笑しくて、くすりと笑いあう。

    もう起きなきゃいけないみたいだ。


    《喜多ちゃんと!》 おしまい

  • 163二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 21:58:06

    オマケ3 (ダイス神への反逆と限界への挑戦)


    限界までえっちな後日談


    1 リョウさん♂と!

    2 リョウさん♂と!

    3 リョウさん♂と!


    dice1d1=1 (1)


    【警告】苦手な人は退避してください!

  • 164二次元好きの匿名さん24/01/19(金) 05:13:17

    保守

オススメ

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