- 1二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:36:50
年の瀬の大一番・有馬記念が終わったとしても、冷たい砂塵を巻き上げ白熱する東京大賞典、未来のスターが一同に回するホープフルステークスなど、まだまだレースの熱は冷めやらない。
私のようなシニア級の中・長距離路線で走るウマ娘にとっては、トゥインクル・シリーズの走り納めは殆ど有馬記念となる。なので、そちらの盛り上がりはダートやジュニアのスターにお任せし、速攻で忘年会の準備に取りかかるのでありました。
「じゃあ、6時半にもう一度食堂集合ね!」
スペちゃんの号令に、集まった私達は頷いて応え、宴会の準備を終えた食堂から一時解散した。
スペちゃんとグラスちゃんに食材の買い出しを任せ、私を含めそれ以外の面々は一先ず暇を持て余す運びとなった。
食の神みたいなスペちゃんと、それに影響されて大食いになりつつあるグラスちゃんに食材調達を任せて良いものかとキングが悩ましい顔をしていたけれど、私達の宴会は大体通りすがりが乱入してカオスな事になるので、食材は多いに超したことは無いのだ。まして、忘年会をやろうと言うのなら尚更。
さて、そういう訳で解散した私達はどうしようかと振ってみたが、ツルちゃんは会長さんの所へ挨拶に、キングはウララが出演してる(巻き込まれてる?)ゲリラオペラの様子を見に、エルはタイキ先輩にお願いしていたでっかい七面鳥を貰いに行くとの事。私は一人、手持ち無沙汰になってしまった。
さて、この中途半端な時間をどう潰そうかと考えながら、誰も居ない廊下を一人歩く。普段は賑やかな学園の廊下も、この時間になるとしんと静まりかえる。ふと窓の外を見上げてみると、ちらりと雪が舞い始めた。
どうりで、寒く感じる訳だ。
ため息一つ、静かな学園の中でどうにも人肌が恋しくなってしまった私は、普段よりちょっとだけ速く、大好きな場所へ向かってパタパタと音を立てながら廊下を走って行くのだった。 - 2二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:39:04
「……降ってきたな」
窓から空を見上げながら息を付くと、窓ガラスが白く曇った。天気予報通りであったし、深々と降りしきる雪を見るのはそれはそれで風情があるのだが、郷愁に似た感情が心の奥底にぽつりと零れるものだから、如何ともし難い。ふと、彼は机の上に広げた資料へと振り返った。
「まあ、残りは明日でも良いかな」
早めに片付けた方が良い仕事なのはその通りだが、だからと言ってどうしても今日大急ぎでやる事でもない。今の彼は、この曇天から雪を纏って落ちてきた感情に包まれそうな自身の心を、なんとか安心させてやりたいという想いに突き動かされつつあった。
何か暖かくて、美味しいものでも食べて帰ろう。そう心に決めて机の上の資料を片付けに掛かったその時、ノックが三回。
刹那、彼の表情に光が差した。こういう時、誰かとのんびりとりとめの無い話をするのは、何より心の薬になる。そのお相手が担当ウマ娘ならば、その効果は覿面。
手を取り合って一緒にシニア級まで乗り越えてきた担当ウマ娘のノックの音を見抜くなど、彼にとってはお手のものだ。
「スカイ?」
「やっほー、トレーナーさん。愛しのセイちゃんが来ましたよー」
いつもの調子でやって来た担当ウマ娘の姿に彼が安堵の微笑みで応えると、スカイもまた嬉しそうに笑みを浮かべた。
「おやおや、トレーナーさん。セイちゃんが来たおかげで随分と嬉しそうじゃないですか?」
「ああ、帰る前に顔を見れて良かったよ。今日はスペちゃん達と忘年会じゃなかったのか?」
「買い出し組が帰ってくるまで一旦解散という事になりまして。と言う訳で、スタートまでここでお時間潰させて下さ~い」
言うが早いか、スカイはトレーナー室に備え付けのソファーにぴょんと飛び乗ると、猫のように丸くなった。その姿に、やれやれとぼやくフリをしつつ、彼もスカイの隣に腰掛けた。
「そういう訳なら、俺も隣で休憩させて貰おうかな」
「おっ、トレーナーさんってば、お仕事よりセイちゃんを取ると。悪いお人ですねぇ♪」
「今はパソコンに向かい合うより、スカイと一緒にいたい気分だから、かな」
安堵の笑みを浮かべながら呟いた彼に、スカイは一瞬目を見開いたが、次の瞬間嬉しそうに笑みを浮かべ、耳をピコピコ揺らしながら彼の傍らへと移動した。 - 3二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:41:09
「そーいう事なら、セイちゃんお膝もお借りしちゃいましょうかね」
「おっと」
ソファに座った彼の元へのそりと身体を動かすと、彼の膝を枕にするように身体を横たえる。丸く身体を寄せ、尻尾はリラックスしながらゆらゆらと揺れている。まるで本当に猫になってしまったかのようだ。そんなスカイを見つめながら、彼は大きく息を付いた。
「どうです? 愛しのセイちゃんが側に来ましたよ~♪」
「……ああ、ありがとう。寒くはないか?」
「おかげさまで。やっぱりトレーナー室の方がエアコンの効き良くありません?」
「そんな事はないよ。むしろ教室の方が暖かい」
「そうですかねぇ」
何て事の無い会話をぽつりぽつりと交しながら、ただ深々と降りしきる雪をぼうっと見つめる。冬は夜の帳が降りるのも速く、いつしか窓ガラスは部屋の中で寛ぐ二人の姿を映しだした。触れあう体温を感じながら、またぽつり、ぽつりと言葉を交す。
「……やっぱり、ここが一番暖かいと思います」
「そんなにかい?」
「ええ、だって……トレーナーさんも、居ますし」
「……そう、か」
「そうですよ」
担当ウマ娘と、そのトレーナー。契約を結んでからもうすぐ三年。長く現役を続けていると、トレーナーとウマ娘の仲が深まるのは当然だが、二人にとっては、こうして時折何もせず側に居ることがいつしかお互いの心を癒す為の大切な時間になりつつあった。言葉の数以上の想いが、二人の間に灯っている。
静々と言葉を交していると、徐ろにスカイが横になったまま彼の方へと身体を動かした。
「スカイ?」
「……トレーナーさん。セイちゃんちょっと、頭の方が寂しいなー……って、思ったり、してるんですけど」 - 4二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:46:11
そう言うと、スカイは身体を彼の方に向けたまま、ゆらゆらと頭を揺らした。曰く、撫で心地抜群だと言うスカイの頭に、彼もまた慣れた動きでそっと右手を乗せる。
「んっ……ふふ……♪」
ふわ、と柔らかな感触が伝わると同時に、スカイは嬉しそうな声を上げた。彼の左手を自身の両手でしっかり握りながら、スカイは頭の上で動く彼の掌の感触に心を躍らせる。
「んふふ……トレーナーさーん……♪」
「今日は随分甘えん坊なんだな」
「セイちゃんにも、たっぷり癒やしが必要な日があるんですよぉ」
「いつもサボろうとするくせにか?」
「……もー、トレーナーさんってば。私の事、分かってるくせに」
上目遣いで見上げてくるスカイに、彼は微笑みながら頷くと、撫で心地抜群のふわふわを掌全体で優しく包んだ。
「んにゃ……♪」
「なら、トレーナーとして、しっかり癒してやらないとな」
彼がそう言って掌の動きを再開すると、スカイもまた嬉しそうな声を上げる。しばらくそうしていたが、徐ろにスカイは身体の向きを変え、彼のお腹の辺りに自身の顔を思い切り突っ込んだ。突然の行動に、流石の彼も慌ててスカイを動かそうとする。
「お、おい、スカイ。流石にそれは……」
「んふふ、イヤでーす。セイちゃん、このまま頭を撫でて貰いたい気分になっちゃいましたので……ほらほら、右手が止まってますよー♪」
「……やれやれ」
完全に膝の上で寛ぐ猫である。しかし、嬉しそうに耳と尻尾を揺らすスカイの様子に、彼の心はすぐ凪いだ。右の掌を再度スカイの頭にそっと置くと、スカイはまた嬉しそうな声を上げるのだった。 - 5二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:49:00
「……んん」
「……イ……カイ、スカイ、そろそろ起きてくれ」
「んにゃぁ……?」
気付けば、スカイは彼の膝の中ですっかり眠ってしまっていた。寝ぼけ眼に、どこか慌てた様子の彼の表情が映り込む。不思議そうに首を傾げるスカイの頭を、彼は優しくポンポンと叩く。
「スカイ、忘年会の時間」
「……あっ!?」
「みんな待ってるから、急いで」
「しまった、キングとグラスちゃんに怒ら、れ……?」
急かす彼に、スカイは彼の膝の上から飛び起きる。と同時に、彼女の瞳に驚愕の光景が映り込んだ。
スカイの目線の先で、今自身が言及したキングとグラスの二人がびっくりするくらい嬉しそうな顔でスマホのカメラを向け、その後ろには扉の影から覗き込むようにスペとエルとツヨシの三人が、顔を赤らめ、瞳を輝かせながらスカイに情熱的な視線を送っていたのだった。
「え……あ……へっ……?」
想定外にも程がある事態に際し、スカイの顔はトレーナーと集まった同期達の間を何度も往復してたが、時既に遅し。約束の時間に寝過ごしてしまったスカイは、探しに来たキング達全員に彼の膝の上で、しかも彼に顔を埋めながら眠る姿を見られていたのであった。
最後にスカイはトレーナーと顔を合わせたが、トレーナーも最早顔を真っ赤にしながらスカイに対し首を振る事しか出来なかった。刹那、スカイの羞恥心が凄まじいエネルギーを伴って胸の奥底から湧き上がる。
衝撃の事態に身体を震わせる事しか出来ないスカイに対し、愛すべきライバル兼同期達は容赦なく暖かい言葉を浴びせ出した。 - 6二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:50:52
「スカイさん、貴方トレーナーさんとそんなに進んだ関係だったのね」
「水くさいですよ、セイちゃん。結婚式は神前式ですか?」
「グラスちゃん、ウェディングドレス! 私、セイちゃんのウェディングドレス見たい!!」
「エルは余興担当デース! リングの持ち込みはオッケーデスか?」
「エル? そんな事しなくても、思い出写真のスライドショーで良いでしょう」
「わ、私ルドルフ会長に、祝辞お願いするよ!!」
「学園のトレーナーなら、理事長にも祝辞を依頼しないと。そうだ、一応言っておくけど私達だけじゃなくてフラワーさんやローレルさんとか、お世話になってる人達にも招待状を出すのよ。後、お色直しのドレスはキングに任せておきなさい。適任が居るから紹介してあげるわ」
「分かってるとは思いますが、お二人とも、両家のご実家には失礼の無いようしっかりご挨拶しないとダメですよ?」
「えーと、じゃあ私、二次会の幹事やります! 大人数で入れるお店一杯知ってるから、任せて!」
「エル、会計やりマース!!」
「ツヨシ、その他雑務担当しまーす!!」
勿論、殆どは冗談のつもりであるが、それが今のスカイに伝わるハズも無い。自身とトレーナー、二人だけの癒やしの一時を見られ、剰えその光景をカメラに抑えられてしまったスカイに、残された行動は、ただ一つ。
「……にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
学園中に響き渡る声で、叫ぶ事だけであった。
この後、紆余曲折を経て無事忘年会は開催されたのだが、恥ずかしいシーンを盛大に見られたスカイと、そのまま強制的に連れて来られたスカイのトレーナーにとって、この会が二人の仲を根掘り葉掘り聞かれ続け散々に弄り倒される時間と成り果てたのは、言うまでも無い。 - 7二次元好きの匿名さん24/01/04(木) 23:53:45
以上です。ありがとうございました。
こちらのスレの74にて、どこぞの何某ンドルパサーが注文していたセイちゃんSSを投げようと思っていたらその前にスレが落ちてしまった為、改めてSSスレを立てさせて頂きました。
起きて目が覚めてからセイちゃんを見たが|あにまん掲示板今日も可愛いな!ヨシ!bbs.animanch.comイチャイチャを同期に見られて絶叫するセイちゃんは可愛い。古事記にも書かれている。
- 8二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 00:11:43
膝枕イチャバレセイちゃんの供給助かる
セイちゃんの可愛さは色んな角度から追求していけ - 9二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 00:16:50
良い…
- 10二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 00:57:45
甘えん坊セイちゃんは身体にいい
同期バレ!そういうのもあるのか…
普段イジる側がよってたかってイジられるのすき - 11二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 01:09:18
可愛いセイちゃんの供給助かる
そこのスレ見てたんだけど保守し損ねちゃったんだよなぁ - 12二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 02:09:11
セイちゃんの可愛さはその内病気にも効くようになる
落ちたスレからステキ概念引っ張り上げてくれるの助かるわ - 13二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 08:23:54
朝一から摂取するネコセイちゃんは活力になるなぁ
- 14二次元好きの匿名さん24/01/05(金) 14:05:05
温泉旅行後のセイちゃんは甘え魔になる概念とても好き
- 15124/01/05(金) 23:29:26
皆様、読んで頂きありがとうございます。
セイちゃんの可愛いポイントはどんな角度からいくつ見つけても困らないとされる。
良いよね……。
甘えん坊セイちゃんはその内病気にも効くようになる。
イチャイチャがバレた瞬間盛大にイジられる光景が一瞬で目に浮かぶのもセイちゃんクオリティ。
セイちゃん可愛いスレには色んな可愛いポイントが集まるので助かりますね。
私もうっかりしていました……。
今はまだ効かないがその内万病に効くようになる。
最近のだけでなくたまに昔のスレ見てるとズキューンと来るステキ概念一杯あるんですよね。
良いなと思ったのはこういう形で引っ張りたいと思う次第。
一日の活力は朝セイちゃんから!
セイちゃんの温泉旅行は甘え魔全力で良いですよね。
何度見ても可愛さがDNAに素早く届く。
- 16二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 08:52:41
このレスは削除されています
- 17二次元好きの匿名さん24/01/06(土) 08:53:42
あちこち探し回ったであろう黄金世代がトレーナー室へ乗り込んだ時の衝撃たるや
キングちゃんとグラスちゃんのびっくりするくらい嬉しそうな顔めっちゃ見てみたい - 18124/01/06(土) 17:58:05
キングちゃんとグラスちゃんが他3人を引き連れて一切の迷い無くトレーナー室へ向かった体でいましたが、探し回った果てにネコを発見したので振り回したお礼としてスマホ向けたという流れもアリですね。
恐らくはセイちゃんも初めて見るような顔してたんでしょうね……。