【レズぴょい注意】とある新米女性トレーナーの一生

  • 1二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:42:32

    「がんばりなさい」

    そう新米トレーナーである私の肩を叩いてくれたのは、かのシンボリルドルフやマルゼンスキーを担当してきたベテラン女性トレーナーであった。
    くたびれた笑顔はどこか含み笑いにも見え、当時の私は彼女の声援の意図が理解らず、ただただ素直に、そしてミーハーなそぞろ心で舞い上がっていた…。
    なにせ『中央』だ。栄えある中央トレセン学園だ。
    この春から私は正規のウマ娘トレーナー、それも名門たる中央トレセン学園に『鳴り物入り』で編入することが出来た。
    まず正規トレーナーとなるには研修生としてウマ娘に関する座学を学び、そして実習。
    トレーナー付きとなっていないウマ娘を担当し、トゥインクルシリーズのレースに参加させてゆく。
    研修生が担当するウマ娘はいわゆる出走枠合わせの『モブ』。トレセンに在学するウマ娘に対して圧倒的に総数の少ない正規トレーナーの負担を軽減するために始まった制度だ。
    さりとてウマ娘が全員、研修生トレーナーを受け入れてくれるかと言えばそうでもない。
    彼女たちは愛らしい『娘』であると同時に、気高い『ウマ』でもあるからだ。
    正規トレーナーでなくては気を許さない、正規トレーナーであったとしてもウマが合わなければとことん嫌う。
    しかし選り好みできるのは本当に極々一部のウマ娘のみ。
    プライドを押し留めて、理想ではない未熟なパートナーと付き合っていくか。
    それはまるで結婚にも似た苦悩の選択…。
    誰もが幸せな結婚を望むように、彼女たちもそれを望んでいる。
    故に、私たちトレーナーは彼女たちの理想に成らなくてはいけない。
    その努力は積んだ。
    そして私の場合、担当バが良かったのだろう。複数人のウマ娘を教育する教官から彼女を譲り受けること1年半。幾度もの敗戦と入賞を重ね、掴んだ重賞勝利。
    言葉に表せば、短く終わる。
    だけど、その栄光を掴むまでに様々な事があった……が、今は割愛しよう。

  • 2二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:43:15

    中央だ、中央のウマ娘達だ。
    誰も彼も粒揃い。プロデュース欲に沸き立つが、それと同時に玉を傷付けてしまう不安もある。
    そんな際に、時の人であるベテラン女性トレーナーから声援を頂けたのだ。
    気分は有頂天。
    これで可愛い娘が私の担当バになってくれれば…。などと調子に乗ってスキップをしていた時のコトだった。
    「ガオーッ!!!」
    「痛っっっったぁあああああああああ!?」
    不意の出来事にしても突拍子もなく赤の他人に背後から抱きつかれ噛まれることなど、そう例はないに違いない。
    天罰にしても、おNewのヒールが折れて盛大にすっ転ぶとかそういうありふれたものにして欲しかった。
    「イタタタッ! 痛いっ! いたッ…!」
    と、その時ふと思い出した!
    噛み付いてきた犯人、ウマ娘の中には噛み癖がある娘がいる。
    下手に痛みで騒げば彼女の悪評は増し、輝かしい未来を潰してしまうのは目に見えている。
    よって、ここは……

  • 3二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:43:27

    「よしよし、痛くない痛くない」
    ナウシカ戦法で首筋に噛み付いてきたウマ娘をあやしていく。
    ヒトとウマ娘では身体能力に大きな差があるためウマ娘からの一方的な暴力は固く禁じられているとはいえ、ともすれば私が知らぬ間に彼女の不評を買っていた或いは彼女なりに何かを伝えようとしての行動かもしれない。
    「ウガァー…おかしいのだ。お前、痛くないのか?」
    「すみません、見栄張りました。めっっっっっちゃ痛かったです」
    下ろしたてのジャケットがなかったら、お嫁に行けない身体にされていたに違いない。
    正直に白状したことがお気に召したのか、私に噛み付いてきたウマ娘は得意げに鼻を鳴らし、とんでもない提案をしてきた。
    「お前、噛みごたえがイイのだ。次は直で噛んでみたいのだ」
    「それはご勘弁を」
    「うー!ケチンボなのだー!」
    またしてもガジガジとジャケット越しに首筋と肩を噛まれ、私は為す術なくそれを受け入れる。先程の瞬間的な痛みとは打って変わり、今度は継続的な攻めだ。
    ちなみにシンコウウインディが私に噛み付いてきたのは特に理由はないらしい。完全なる偶然にしてとばっちり。訴えるところに訴えていたら更生院行き待ったなしだ。
    「…? ところでどうしてお前、ウインディちゃんのことをおんぶしているのだ?」
    「そりゃだって、もし転んでウインディが怪我でもしたら大変でしょ?」
    「ヘンなヤツなのだ。……ところでなんでウインディちゃんの名前を知っているのだ!?」
    「さぁ、どうしてでしょ?」
    これが私の最初のパートナーとなったシンコウウインディとの馴れ初めにして、決して癒えることのない傷跡だ…。

  • 4二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:43:46

    噛まれた時から理解ってはいたが、シンコウウインディは新米トレーナーの私には荷が重い問題児だった。
    だからこそ、心の奥底でじゃじゃウマを乗りこなしてみたいというエゴが働いたのだろう。噛まれたところで赦すという自分の寛容さに酔っていたのだろう。
    それ故に私は彼女の変化に気付けないでいた。あんな風になるとは思ってもいなかった。
    三年目の春、私は彼女に噛まれていた。
    これまでなら日常的なやり取りだが、今日以降は違う…。
    牙に甘い蜜を纏わせ、獣欲をギラつかせた瞳で私の肢体を喰んでゆく。
    ……どうしてこうなった……。
    後々知ったことだが、彼女たちウマ娘には個体差こそあれどにはフケという発情期が存在する。
    コンナコト、研修時代に教わっていない…。
    仮に教育として教えにくいウマ娘の事情を知ったところで、どう対処できていたか…。
    (……シンボリルドルフやマルゼンスキーを担当したあの人も、コンナコトをシていたのかな…)
    長い長い嵐が過ぎ去るのを待った…。
    人には見せられない傷をたくさん付けられた…。
    ウマ娘というものが怖くなった…。

  • 5二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:44:48

    最初の3年間が終わった翌年、私は1年間海外留学に赴いた。
    打ち砕かれた自尊心、隠されていたウマ娘の顔。
    あのベテラン女性トレーナーはこうなることを予期して、私に声援を送ったのだろう。
    「…がんばる。がんばる…」
    恐怖は植え付けられたが、嫌悪はない。
    何故ならば私は半分ウマ娘。正確には母親がウマ娘で、ウマ娘として生まれることのなかったただの人間だ。
    ウマ娘として生まれてこなかったことに悩まされたことはある。
    嫉妬はした。羨望はした。
    それでも私は走る彼女たちが好きだ。だから彼女たちを支えるトレーナーになると決めたのだ。
    こうして私は決意を新たに中央へと戻り、二人目となるパートナーと出逢った。
    キタサンブラック。
    シンコウウインディとは真逆で素直で手の掛からない、それでいて親しく付き合いやすい女の子だった。
    ウマ娘としての才覚も優れ、海外留学で学んだスパルタ教育もなんのその。叩けば叩くほど、彼女はそれに応えてくれ、私に多大なる栄誉をもたらしてくれた。
    そして3年目。
    1年目でも中等部離れした恵体をしていたキタサンだったが、2年目では完全に私を上回り、問題の3年目ではさらに色々と大きくなっていた。
    日に日に年々と募る不安と恐怖。野性的であったシンコウウインディとはまた違う、質量の暴力に私は警戒を続けていた。
    いつ襲われてもいいように常に上下の柄はセットで、ダサいものは付けていない。
    春が過ぎた…。夏が過ぎた…。秋が過ぎた…。冬を迎えた。

  • 6二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:45:06

    これが個人差というものか。
    キタサンブラックは一切私に色気を見せず、それとなしにカマをかけた質問にも引っ掛かることはなかった。
    ――安心した。
    最初がアレなだけで、ベテラン女性トレーナーの声援は純粋に私に対するエールで、不純な含みなどなかった。
    妄想の中とはいえ長い間、申し訳ないレッテルを張ってしまったことを深く反省し、出走予定の有馬記念について話をすべく、彼女の部屋に赴く。
    電話で済ませられるような内容ではあったが、どうやらこの期に及んでも心の奥底で、彼女に襲われることを期待している自分がいるらしい。
    そうして彼女の部屋の扉を叩く、時であった。
    「ダイヤちゃ…あっ!」
    ……聞き間違えるはずもない。
    その瞬間、全てを理解した。
    何も行為の対象がヒトだけとは限らない。どおりで私のことなど眼中に無いはずだ。
    私のキタサンブラックとサトノダイヤモンドの仲が良いことは、嫌というほど知っている。
    私より付き合いが長いことも散々聞かされてきた。
    ――だとしたら二人はいつから?
    「キタちゃん…! キタちゃん!」
    硬く握り締めることしか出来ないこの拳で、彼女たちの睦言を邪魔してやりたかった…。

  • 7二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:45:20

    三人目のパートナーはこれまた黒い。だけど中等部にして巨大だったキタサンブラックとは真逆に、高等部にしては小柄なライスシャワーだった。
    目に入れても痛くない可愛い可愛いウマ娘だった。
    私を姉として慕ってくれ、キタサンブラックで培ったスパルタ教育にも健気に付いてきてくれている。
    食事の量に関しては驚かされたが、日々の穏やかさにシンコウウインディに付けられた傷は癒え始めていた。
    ――忘れていた。
    否、忘れようとしていたのだ。
    「お、お姉様…! これは、そのっ…!」
    それは二年目春天以降、練習に身が入らず成績不振が続き、どこか様子がおかしいライスシャワーの部屋に押し入った時のことであった。
    …ライスが何をシていたのか。みなまで言うまい。
    「お姉さ…ンっ!」
    今度は私からウマ娘と唇を重ね、打てば響く敏感な肌を弄び続けた。

  • 8二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:45:32

    四人目はお硬い風貌を漂わせているイクノディクタスであった。
    苦い経験ではあるがキタサンブラックで培ったスパルタ教育はライスシャワーを傷つけてしまった。
    それ故に今度はイクノディクタスの意見もよく聞き、教育方針を改めた。
    方針転換の弊害と私の短距離マイルの経験不足で彼女の経歴に連敗を刻んでしまったが、それでも彼女はよく応えてくれた。
    無事之名バ。
    ケガに対するトラウマを払拭してくれた鉄の女であった。
    そんな彼女も二年目からはフケが始まり、なんと向こうから処理を願い出てきた。
    そう、処理。
    コミュニケーション性を重視したものではなく、事務的なやりとり。
    たまに声を押し殺したイクノに劣情を抱き肌を重ねることはあったが、基本的に私がイクノディクタスの情欲を払ってあげた。
    彼女との経験も唯一無二にして今度に活用できる貴重なものであった。

  • 9二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:45:44

    そして五人目。
    海外留学を含め、トレーナーとして13年が経った。
    右も左も知らずシンコウウインディに噛まれていたあの頃の私とは違う。
    身も心も成熟した私が担当することに選んだのは、カレンチャン。
    ハッキリ言って一目惚れであった。
    再三アプローチし、みっともなく経歴アピール。知らず識らずのうちに老害化が進んでしまっていたことに自己嫌悪し、彼女にふさわしくないと諦めていた時であった。
    「お姉ちゃんにならカレンのこと、任せてあげてもいいよ。だから最後まで、カレンのこと諦めないでね」
    シンコウウインディのことを忘れようと、海外留学先で男性経験は積んだ。それでも恋というものには至らず、今日まで未婚のまま取り残されていた。
    30過ぎのババアがなに愛想振りまいている小娘に恋しているんだと思うが、恋してしまったものは仕方ない。
    好きだ好きだと言い続け、カレンチャンと事に至るまではそう月日は掛からなかった。
    「どう…カワイイ?」
    緊張した面持ちではにかむカレン。
    均等の取れた西洋の裸婦像にも美しさだが、同時に花のように手折たくなる愛らしさを兼ね揃えていた。
    これぞ、まさしくニンフェット。
    答えなど決まっている。
    私はカレンの唇を押し倒し、耳元で何度も何度も彼女の名を、彼女の可愛らしさを囁き続けた…。

  • 10二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:46:06

    カレンチャンとの逢瀬は今までで一番であった。
    自尊心を高め合い、シンコウウインディによって付けられた傷を噛まれ、私がして欲しいことを、カレンチャンがして欲しいことをし続けた。
    カレンチャンは他のウマ娘も可愛くするべく、時には三人以上で交わることもあった。
    これまでで最も充実した相手だった。
    だからこそ、別れた。
    カワイイ彼女はカワイイ母にもなって欲しい。
    大人となったかつてのパートナー達のその後の行く末を見てきたからこそ出た苦渋の決断だ。
    ぶっちゃけ未練はたらたら。別れた今でも交流は続け、肌を重ねてはいる。会う度にプロポーズはしているし、カレンチャンの旦那には彼女を奪い取ることを宣言している。
    それぐらい本気だったのだ。

  • 11二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:46:19

    カレンチャンロスを癒やす六人目はエイシンフラッシュだった。
    最初は鋼鉄のイクノディクタスや我儘なシンコウウインディよりも融通がきかず、経験に基づいた柔軟な対応も否定され、険悪な関係となったが、次第にお互いのことを理解し、三年目にはこちらの意見も理解・納得できるものであれば聞き入れてくれるようになってくれた。
    だが、フケの方は頑固一徹のままだった。
    攻め×攻め。
    受けに回ると、若さ故か普段は時間にキッチリとしているにも関わらず、延々と攻められ続けられてしまう。
    なので私はこれまでエイシンフラッシュによって溜め込まされていた鬱憤を吐き出し、お互い攻めの姿勢を貫いた。

  • 12二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:46:34

    アレから19年。
    長いようであっという間…なようでやっぱり長かった。
    流石に疲れと老いを感じざる負えない。
    ウマ娘の因子のおかげか実年齢より若く見られるが、それでも人並みに老いている。
    エイシンフラッシュもよくこんなオバちゃんを相手にシてくれたものだ。
    フケが終わった後のウマ娘は自己嫌悪に駆られることも少なくはないが、エイシンフラッシュは自己嫌悪に陥ることなどなくガチだった。危うくドイツに連れて行かれるところだったが丁重にお断りした。
    とはいえ私も流石にそろそろ腰を落ち着かせたい。
    なお同僚の男性トレーナーは殆どウマ娘に持っていかれてしまっているため、出逢いは少ない。
    ヘンな肩肘張らず、カレンチャンかエイシンフラッシュと付き合っていればよかった…。
    後悔後先絶たず。
    今年も初々しい期待と不安に胸を躍らせた新米トレーナーがトレセン学園へとやってくる。

    「がんばりなさい」

    そう私は新米女性トレーナーの肩を叩くのであった。

  • 13二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:47:19

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 21:47:56

    このレスは削除されています

  • 1521/09/02(木) 21:52:27

    以上

  • 16二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:13:33

    ちなみに教官はこれどす

  • 17二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:15:52

    おお.....!いい作品だぁ....

  • 18二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:29:07

    シンコウウインディ:初心な新人を傷つけるのにちょうどよかった
    キタサンブラック:簡単にはうまぴょいさせねーよ、おあずけな
    ライスシャワー:新米パクパクですわ
    イクノディクタス:ここらへんで慣れて吹っ切れましたわ
    カレンチャン:しゅきぃ…
    エイシンフラッシュ:人間がウマ娘に敵うはずがありません♡←その生意気な口塞いでやる!

  • 19二次元好きの匿名さん21/09/02(木) 22:49:35

    あー脳びそぶっこわれりゅ

オススメ

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