- 1二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:15:16
「それでトレーナー、今日の予定は何かしら?」
日中も寒い日が続く、そんな三が日も過ぎた1月のある日のトレーナー室。
前々からトレーナーから念入りに、この日の昼頃は予定を開けといて、と言われていた日だった。
約束した時にも、何する予定なのかと聞いたけど、彼に関しては珍しくはぐらかされ、教えてくれなかった。
そうね……。身近にあった予定としては、初詣もサトノグループの新年パーティーももう終わっているわ。
改めて、三が日も過ぎて、この日は私が記憶する限り、何かこう特別な日でもないわね。
まぁ、トレーナーのことだから、悪いことはないはずよ。
そう思って、私としてはその日を楽しみに待ちつつ、今に至る。
「あぁ、クラウン。実は……、今日はこれを一緒に食べようと思ってね」
そう言って、彼は机に置いてあった紙袋から綺麗に包装された箱から、紙の王冠が乗った月桂樹の模様が刻まれたパイを取り出した。
「好。美味しそうね。で、これは、何のお菓子かしら?」
取り出されたお菓子とその紙の王冠に興味を示しながら、トレーナーに質問をする。
「このお菓子はガレット・デ・ロワと言って、フランスのお菓子なんだ」 - 2二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:17:08
「明喇。フランスね…。あっ、もしかして、ダイヤに手伝ってもらったの」
「うん。これの美味しく作っている所を教えてもらってね。まぁ、立ち話も何だから、座ってから簡単に説明しようか」
彼はそう言って、向かい合う形で椅子に座るよう促す。
私はそれに従い、椅子に座りながら、話を聞く。
「このガレット・デ・ロワというお菓子、直訳するとさ、王様のケーキ、王様のお菓子って呼ばれている」
「真係? 王様の?」
「そう。フランスでは1月の公現祭っていう行事で食べるお菓子なんだ。この祭りとお菓子の関係とかは、気になったら、後で調べてみるといいよ」
トレーナーはそう言って、ガレット・デ・ロワについて話し始めた。
「で、このお菓子一つだけフェーヴと呼ばれる焼き物が入っていて、切り分けたお菓子の中にフェーブが入っていた人が王冠をかぶり、王様や王妃様となり祝福される。まぁ、一緒の運試しさ」
「要は縁起物ね。このお菓子の中の当たりを引き当てることで祝福される、楽しそうじゃない」
- 3二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:18:09
私は彼の話を聞き、ガレット・デ・ロワについて理解したわ。でも、どうしても気になることがある。
「何でトレーナーはガレット・デ・ロワを一緒に食べることを私に隠したの」
そう、トレーナーはこのガレット・デ・ロワを食べることを、当日まで私に隠していたの。
別に隠すことではないのに、本当にそれだけが気になるわ。
「前にさ、ダイヤのG1初勝利記念のコラボで食べに行った、ダイヤハンバーグの時。クラウンはちょっと寂しそうにしてたから。…私の王冠は料理の形に向いてないからって。」
「っ!!」
トレーナーの指摘に私は息が詰まった。
ああ、確かに、あの食事の時にそんな風なことを口にしていた。
じゃあ、トレーナーはあの事を覚えてくれて、サプライズとして用意してくれていたのね。
その優しさが私の心に浸透し、嬉しくなる。
「多謝。そう、覚えてくれていたのね」
私は頬が少し熱くなるのを感じながら、トレーナーに微笑みかける。
「君の事で忘れている事なんてないよ」
彼は私の目をしっかりと見ながら、優しい表情でそう言った。 - 4二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:18:51
そのトレーナーの一言に私の熱がより高まり、顔がさらに熱くなる。
あぁ、本当にトレーナーはずるいわ……。
「I'm honored。ふふっ、それは光栄ね」
私は少し赤くなった頬を気にしながら、話をお菓子の話題に戻す。
「……それでこのガレット・デ・ロワはどんな味がするのかしら?」
「あぁ、パイ生地の中身はアーモンドクリームが入ったものになっているよ」
「excellent。そう、美味しそうね」
「俺も今日のものは初めて食べるから、楽しみなんだ。じゃあ、紅茶とか食べる準備してくるよ」
彼はそう言うと、席を立ち、飲み物や食器を用意してくれた。
その時に、私はお菓子に付いている紙の王冠を手に取り、眺めていたら、ある事を閃いた。 - 5二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:19:26
「それじゃあ、食べようか」
「ねぇ、トレーナー。少しいいかしら?」
準備が出来て、いざ、食べようかと直前で待ったをかけた。
「ん?クラウン、どうした」
「いい、トレーナー、少しの間だけ目を瞑ってくれるかしら」
「…分かった。」
私の言うことに素直に聞いてくれて、目を瞑った彼の上にあの王冠を頭に載せる。
「もう、いいわよ、トレーナー」
「ん? ……って、クラウンこれって」
頭に王冠を載せられて、違和感を感じたのか、直ぐに反応を返すトレーナー。
「好。お似合いよ、トレーナー。私はこの王冠はいらないわ。だって、言ってくれたじゃない。『王冠はいつだって君のものだから』って」
「…!! あぁ、その言葉に偽りはないよ。この王冠、大切にするよ」
「それじゃあ、今度こそ、食べましょうか」
それで二人で一緒にガレット・デ・ロワを食べたわ。
多謝。嬉しくなる思い出をありがとうね、トレーナー。 - 6二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 20:23:08
季節的にも題材があっていたので、クラウンと王冠を絡めたお話を書いてみました。
- 7二次元好きの匿名さん24/01/11(木) 21:54:06
乙
クラトレのイケメンっぷりが素晴らしい…