【SS】きっとありふれた結末になるシナリオ

  • 1二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:02:02

    注 思いついた流れを、資料とかあさりつつ、書き連ねていきます。
    書き溜めはないので、だらだら更新になります。
    エンドはありふれたモノになるかもしれません。
    けど多分、過程は違います。
    一応本日中に書き上げるつもりではあるけど、もしかしたら間に合わないかも。
    そんなモノでよければお付き合いお願いします。

  • 2二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:02:47

    高松宮記念。
    春の最強スプリンターを決める一戦。
    ここに轡をならべるは誰しも、己の最強を示すべく集まった猛者たち。
    そんな出走者の中に、俺のウマ娘はいた・・・。

     はげしい攻防、位置取り、なにせこのレースは一瞬の判断で決まる電撃の6ハロン・・・
    準備はしてきた、体調も万全だ・・・った・・・
    一秒も目を離せないような熾烈なレースの中、俺の担当ウマ娘は・・・
    一番先にゴール板を駆け抜けたのだ!

     「やった!やったぞ!!」
    俺は、恥ずかしげもなく拳を突き上げた。
    担当ウマ娘はそんな俺に気づくと、柔らかく微笑み、手を振った。
    それを見た俺の瞳からは涙がこぼれ・・・こぼ・・・れ・・・
    なにか眩暈のようなものを感じた。

     どれだけ朦朧としていたのか、恐らく数秒だろう・・・
    しかし、その数秒で・・・俺の目の前に広がる世界は・・・
    『変わって』しまっていた。

     違和感は、まず回りの観客が口々にする言葉だ。
    誰も・・・俺の担当ウマ娘の名前を口にしない。
    あの子はよくやった、すばらしいレースだった・・・
    口々に紡がれる、ウマ娘を称える言葉に、
    俺の担当ウマ娘の名前がないのだ・・・
    たしかにその子はすごかった、素晴らしい走りだった。
    だが、それでも勝ったのは俺の・・・俺の愛バのはず・・・

  • 3二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:08:59

     じゃあなんで、その名前が叫ばれないのか?
    トクンと、自身の心臓の音が跳ねるのを聞いた。
    それは俺の背中に響き、その体温を奪っていく。

     「す、すいません!通してください!」
    得体の知れない焦燥感を感じた俺は、観客をかきわけ、
    最前列の席へと体を進めていく。
    その先の視界にはウィナーズサークルがあって・・・
    そこに俺の担当ウマ娘がいるはずなのだから・・・

     そうだこれはなにかの間違いだ、たまたま俺の回りにいたのが
    惜しくも勝利を逃したほかのウマ娘のファンだっただけであって・・・
    称えられるべきなのはそこにいる俺の愛バだ!
    観客をかきわけて、視界の先がクリアになる・・・
    ドクンと、心臓が先ほどより大きな音を跳ねた。

    そこには・・・誰も立ってはいなかった・・・。

    『序章 消えた愛バ』

  • 4二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:12:13

     視界がさらに歪んでいく、空気に質量を感じるような気さえする。
    何が起きたのか理解がおいつかない。
    できることは、そこにいるはずの担当ウマ娘がいない空間を凝視する事だけだった。

     やがて、周りをにぎわせていた観客たちも一人二人と去っていった。
    最後まで、俺の担当ウマ娘の名前を口にしないまま・・・。
    立ち尽くすことしかできない自分は、それにおいていかれ・・・
    いや・・・違うだろう?!立ち尽くしてる場合か!
    動け!動け!動け!

     手は動いた、その手でもって自分の頬を叩く。
    バシーンという音と、痛みをもって、おぼろげになっていた視界は
    少し精細をとりもどした。
     視界の隅に見えたのは、出走したウマ娘を囲む取材陣だった。
    そう、そうだ!取材!G1を勝利したなら囲み取材されるのが基本だ。
    記者たちが囲う先に俺の愛バがいるはず!

     探した、探した、記者の囲まれるところを目に付く限り。
    しかし、目的はみあたらない・・・
    焦燥感に胸が塞がれる、呼吸もままならなく・・・
    それでも動く脚を進めた先、知己を見かけた俺は、
    溺れるものが藁にすらすがるように、声をかけていた。

  • 5二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:23:06

     「乙名史さん!」
    「あら、トレーナーさん、こんな所でお会いするなんて、
    ご熱心ですね。やはり、G1の舞台は見るだけでも・・・」
    勢いのまま、乙名史さんの肩をつかみ俺は言った。
    「乙名史さん!今の・・・高松宮記念に勝ったのは誰ですか!?」
    「え?・・・」

     乙名史さんが浮かべた表情は俺の想像以上に怪訝なものだった。
    当たり前だ、ウマ娘レースを専門とする記者に、たった今みた
    レースの勝者を問うことなど・・・判定が不可解であった以外にはありえない。
    だが・・・不可解なのだ、この上なく。

     「それは・・・もちろんファ・・・あれ?」
    当然のことを口に出すように紡がれた乙名史さんの言葉は途中で塞がれた。

    「違います!勝ったのは俺の担当の・・・」

     ・・・言葉が出てこない、それが・・・自分の愛バの名前が・・・
    忘れるなんてありえないそれが出てこない。
    たまらず瞳から涙がこぼれた。
    そのまま、彼女の胸にすがりつくように嗚咽を漏らすことしか
    今はできなかった。

  • 6二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:31:22

     「ひとまず、飲み物でも飲んで落ち着きましょうか」
    こんな無様をさらす俺に、乙名史は優しく声をかけてくれた。
    それに甘えるように、彼女が促すように、ベンチにすわり、
    彼女が買ってきてくれたホットコーヒーを受け取った。
    一口、口をつけるとその甘さにほんの少しだけ心がほぐれていくのを感じた。

     「それで・・・一体どうしたんですか?」
    彼女に促されるままに、俺は荒唐無稽な俺の今の思いを吐き出した。
    俺の担当ウマ娘とこのレースに向けて真剣に取り組み、
    丹念に錬ったトレーニングをこなし、勝つためにこの場にきたのに・・・
    そしてそれは実を為したというのに・・・

     どれだけ正確に伝えられたかはわからない、きっと支離滅裂な
    言い分だったかもしれない、それでも俺はそれをそのまま喚き散らしてしまった。
    乙名史さんは話を聞き終えると、少しだけ目を伏せて・・・そう言った。

     「トレーナーさん、貴方とは短い付き合いではないつもりです。
    けど・・・貴方に担当ウマ娘がいたなんていう話は、聞いた事がありません。」

  • 7二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:42:48

     「そん・・・な・・・」
    そこからなのか?違和感どころじゃない、そんな認識障害のような
    レベルで俺が狂っていたのか?
    背中から血の気が失せていく、自分が信じていたもの、あったとおもっていたもの
    その存在が揺らいで己の魂そのものが欠けていくようにすら感じる。

     「けれど・・・貴方がそんな嘘をいって人をからかうような
    真似をするとは思えません・・・ましてや私にたいして・・・」

     そう言ってくれた乙名史さんの瞳に俺を拒絶するような意思はないように見えた。
    こんな荒唐無稽な話をしているのに・・・情けなくもまた涙がこぼれる。

     「今の話を聞いて私もその・・・思ったんです・・・今日の・・・2008年の高松宮記念の勝者は・・・
    違ったのかもしれない・・・」
    「乙名史さん・・・信じてくれるんですか?」
    「・・・わかりません・・・いいですか?一つ間違えばこれは冒涜に値します。
    このレースを全力で走った全てのウマ娘たちに対して」
    「・・・そうですよね・・・」
    「けれど、どうしても心に棘のような感覚が、これが正しいはずなのに・・・
    なぜか・・・今の貴方を見ているとそうとは思えなくて・・・」

     そうだ・・・そうなんだ、彼女は理解してくれているはずだ。
    たった一度の結末が全てを左右することなんかではないと・・・

  • 8二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 19:51:38

     ?なんでそんな事を俺は思ったんだろう。
    そもそも少しおかしい・・・乙名史さんは俺との付き合いは短いものではないと言った。
    だが、どうだろう?俺と乙名史さんは知己には違いないが、所詮は、少し前に
    トレーナーとしての心構えを取材されただけの関係、その時には俺はまだ駆け出しで・・・
    あれ?・・・あれ?

     疑問に意識を向けていくと、これまでなかった記憶のようなものが
    胸のうちに浮かんでくるのを感じた・・・
    そうだ・・・俺は彼女が示した最強を目指し、担当と一緒に駆け抜けたんだ。
    安定して強い、ただ一度の勝利に左右されず、勝ち続けるものこそが最強なのだと。
    その理念に基づき、担当と研鑽を重ね・・・
    時には世間から酷い評価をうけつつも、実績でそれを跳ね除け
    そして為した・・・俺と俺の愛バ自身の最強を・・・

     その道中で俺と乙名史さんは理解を深め・・・

    これは存在しない記憶・・・あるはずがなかった・・・
    ふと彼女と目が合う。
    その瞳は潤んでいるように見えた。

  • 9二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:01:22

     「あっ、すいません」
    彼女は自らの瞳を抑えて、顔を伏せた。
    「ごめんなさい、私なんでこんな・・・ちょ、ちょっとお手洗いに」
    そう言って慌てて立ち上がった彼女は、ヒールに脚をとられてよろけた

     「危ない、悦子!」

    倒れそうになる彼女の体を支える。
    胸の奥が少し疼きを覚えた。

     「え、ちょ・・・トレーナーさん、下の名前・・・」
    「あっ!えっすみっ、ごめんなさい、つい!?」

     彼女を抱きしめるような形になっていた体勢をあわてて離す。
    胸の疼きは少しづつ熱を帯びていく。
    彼女とまともに目をあわせられない。
    こんな感覚は初めて・・・だっただろうか?

    ・・・
    ・・・・・・

    お互いが少し落ち着きを取り戻したのを確認して、
    俺から口を開いた。

    「自分でもおかしい事をいってるのはわかってるんだ。
    けど、それを『君が』少しでも理解してくれたなら、
    なんだろうな、とっても嬉しいよ。」
    「トレーナーさん・・・」

  • 10二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:12:32

     これから先の言葉を紡ぐのは自分の役目だ。
    そう思った。
    だから、自分がどれだけおかしい事を口走っているのかを
    隅において、言葉を続けた。

     「俺の担当は最強だったんだ。」
    「そう・・・ですか」
    「それだけははっきり言える、たとえそれを見る観客が俺一人だったとしても」
    「え?でも・・・最強を名乗るような舞台で結果を出したなら大勢の観客がみているんじゃ・・・」
    「それはただの結果さ・・・俺は、俺の中の最強を信じただけなんだ。」

    『君だってそうなんだろう?』

    「・・・あ・・・」
    「君だってそうだったはずだ。君の中には君の最強があった。」
    「・・・・・・」
    「それを示したくて、全てをまきこむような真似をして・・・
    本当に無茶するよな・・・」
    「す、すいません。」
    「けど、そんな君が眩しかった。だから、俺もムキになっちゃたんだ。」
    「え・・・?」
    「なんだろう・・・こんな事いったら俺が俺ではなくなるのかもな・・・
    けど、あの時の俺の中の一番は、きっと『君』だった。」
    「・・・それは・・・それは違い・・・」
    「違わない。」

    「お互いの最強をぶつけ合うためのレースだった。
    そして結果俺は勝った。それだけさ。
    君自身の最強はその場にいなかったとしても。」

  • 11二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:16:56

    儚い…

  • 12二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:20:14

     「それは・・・話してないはず・・・ですよ?なん・・・で?」
    「なんでだろうな?けどわかるんだ。俺たちは協力して、
    お互いの全力をぶつけあって、そして互いの結果を称えあった。
    そういう事がね、あったんだよ。信じて・・・くれるかい?」

     「・・・うっ、ううっ」
    それまでせき止めていたものを崩すように彼女は泣き出した。
    「うわぁあああああああああああああ・・・・」

     嗚咽をもらす彼女の肩をだきながら彼女が静まるの待った。

    しくしくと少しづつ彼女が落ち着くのをただ、待った。
    左肩のぬくもりを感じながら。

     「・・・理解はまだ、仕切れていないです、けど・・・」
    少しの時間の後彼女は、瞳を俺にむけた。
    「これじゃあいけませんよね?」
    「・・・すまない・・・」
    「謝らないでください、きっと今は、うん・・・」

     少しだけ間をあけて、何かを飲み込むようにして
    乙名史さんは改めて俺に目をあわせていった。

     「貴方の最強を・・・なかったことになんてしません。」

  • 13二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:25:01

     それからの彼女の行動は素早かった。
    カメラのデータを調べ、自らの記した文章を漁り
    このレベルは記者の生命線だ、それを他人にさらすことなんて
    よほどの覚悟がなければできないことだった。

     「いいんですか?こんなのまで見せてもらって」
    「良くはないですよ?埋め合わせはしてもらいますからね」
    「あっー、ハイ」

     そうして彼女が探る情報の中で・・・
    俺たちはついに『それ』をみつける。

     「あった・・・ありました!」
    乙名史さんの撮った画像データにはところどころ不自然に空白がめだっていた。
    彼女ほどの敏腕記者がこんな写真を撮るとは思えないほど・・・
    フォーカスをあてているところほど抜けていた。

    ・・・だが、それがずれた時。
    別のウマ娘をフォーカスに当てていた一つの写真・・・
    そこには、俺の愛バが映っていた。

  • 14二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:35:39

     「みつ・・・けた」
    「そうだいたんだ!確かに!」

     完全な存在証明。
    それがついに見つかった。
    そうだ、俺が、乙名史さんの作ったレースで、最強を示した
    あの娘は、たしかにいた!

     「この写真・・・データいただけますか?」
    「はい・・・」

     自分の周りを纏っている思い空気が質量を減らしたのを感じる。
    今、確実な一歩を踏み出した。
    俺の愛バにとどくための・・・

     「もっと調べれば、何か、いえ、多分これから先は・・・」
    そういって言葉を濁す乙名史さんに俺は声をかけた。

     「ありがとうございます。絶対に見つけてみます!」
    「・・・必ずそうしてくださいね。でないと私、報われないんですから。」

     胸を指す痛みを感じた。
    けど、俺はここから先を進まなくてはいけない。
    言うべきことはみつからない・・・いや、ある・・・けれどもそれは
    言ってしまえば一つの世界が終わる、そんな言葉。

     「いってくるよ。」
    「はい、いってらっしゃい。」

    『第一章 乙名史悦子は最強を夢みた』

  • 15二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:37:07

    閑話

    想像以上にカロリーつかったので今日中完結無理そうです。
    完結はさせますが・・・

    あ、なんかツッコミとか感想は途中あいまいれていただいたら
    作者は喜びます。
    少しカロリー補給してきます。

  • 16二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:42:06

    画像わすれたやん。

    『第一章 乙名史悦子は最強を夢みた』

  • 17二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 20:54:03

    想像以上に眠い落ちるまでには保守しま。

  • 18二次元好きの匿名さん24/01/15(月) 21:03:43
  • 19二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 00:11:04

    壮大だ…

  • 20二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 00:27:02

    いいね…

  • 21二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 00:28:55

     休めたので続けます。
    風邪の日に見た悪夢のごとき展開になるかとおもいますが、
    反応くれた方々ありがとうございます。

  • 22二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 00:44:07

     確かなモノを得た。
    絶対に間違いない。
    俺は担当とここで、今日の高松宮記念のために思案をめぐらせていたはず。

     そう思い、訪れたのはトレセン学園の自分のトレーナー室。
    PCをあさる、机には資料が、だけどども・・・
    それをいくらひっくり返した所で俺の担当の名前すらでてこなかった。

     再び当たった壁、希望があると思っていたが、その道がまた塞がれている。
    悔しくて涙がこぼれる、乙名史さんにあんな思いまでさせてたどり着いた道だというのに。
    すでに日は西の空に沈みかけ、一日が終わることを告げようとしていた。

     途方にくれるというのはこういうことなのだろうか。
    意味なんてなかったのか・・・気づけば俺は学園内を彷徨っていた。
    まただ、視界が歪んでくる、あるはずのない壁が俺の歩む先に立ち塞がっていて
    それにたいして自らの無力だけが感ぜられる。

     それでも、信じるのはやめない、だって・・・
    あの娘はいたんだ・・・絶対に・・・
    再び自らの頬を叩き気合を入れなおす。
    ほんの少し視界がクリアになる。
    その時、俺の目にうつったのは、中庭のすみにたつ、掘っ立て小屋だった。
    雰囲気重視で紫の布で覆われたようなチープなつくり、そして・・・
    胡散臭いとしかいいようのないような「占い」の文字。

     普段ならスルーしてるだろう、こんな所に求めるモノはないと
    しかし、それを見たときに俺の心臓が脈打つのを感じた。
    導かれるように、その怪しい天幕をくぐり、そこにいた少女と俺は出会った。

  • 23二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 00:49:54

     「おや?すいません。もう店じまいしようとしていた所で。」
    そう応対する少女と目があった。
    きっと今の俺は酷い顔をしていたのだろう。
    俺に対する心配の表情を彼女は浮かべた。

     「・・・こんな時分にそのような顔をした方を
    追い返しては占い師の名折れ、お話をお聞きしましょう。」
    促されるままに俺は、とってつけのような背もたれのない椅子に座った。
    水晶玉が厳かに鎮座する台をはさみ、彼女がその向かいに座る。

    「さて、何をお悩みでしょう?シラオキ様がきっと貴方を
    照らしてくれる事でしょう。何が・・・ありました?」

  • 24二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 01:02:51

     俺は話した。
    俺の担当ウマ娘の事を、今はもう名前すらでてこないが、
    確かにいて・・・そして今日、高松宮記念の栄光を掴むまで
    傍らにいたはずの存在の事を・・・
    乙名史さんの協力を経て、絶対にそれが間違いじゃないと気づいた事を。

     神妙な面持ちで彼女・・・マチカネフクキタルはそれを聞いてくれた。
    彼女は趣味でこの店をやっており、学園の生徒には一定の評価があった。
    まさかそこに時分が訪れる事になるとは思ってもみなかったが。

     「・・・そうですか。奇妙な話ですね。」
    「あぁ、本当に奇妙な話なんだ。」
    「ふふっ・・・」
    彼女が顔を綻ばせる、その意味にこの時の俺はまだ気づけていなかった。

     「これこそ占い師の本懐でしょう。必ずや貴方の求める道を示してごらんに入れましょう!」
    力強くそう宣言してくれた占い師に対して、安堵の息が漏れる。
    こんな大切な時に、正直胡散臭い占い師の言葉に従おうとしている。
    普段なら考えられない事だ。
    だが、彼女の不思議な瞳を見つめるうちに、時分が今相対している
    問題の解決こそ、こういったモノが示してくれるのではないかと期待した。

     「ふんにゃか~、はんにゃか~・・・
    ぬんぬん、ふぬふぬ、ふみゃみゃみゃり~!
    来ましたよ!!!
    ほんじゃらけ!」
     あまりに怪しい彼女の所作に、期待はその意識は挫けようとしていた。
    だが彼女の瞳は真剣そのものだった。
    まるで星の輝きを写すようなその瞳から目が離せなかった。
    ここで立ち去るような事は、俺にはできない。

  • 25二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 01:15:35

     「海が・・・見えます・・・これは・・・果ての・・・」

     彼女の瞳が曇りを帯びたのを感じた。
    その言葉はきっと良い意味のものではないのだろう。
    覚悟をきめて、その先の言葉を待つ。
    少しの沈黙の後、彼女は言葉を開いた。

     「もはや猶予はありません、しかしこれ以上は私にも・・・
    思いだしてください。海に・・・その先はこの世にない海・・・
    この世とあの世の間にまたがる境界の端・・・
    そこに貴方の求める方はいらっしゃいます。
    どこなのか覚えはありませんか?」

     言われて必死に思い出す。乙名史さんからもらった写真のデータを
    スマホで見つつ、手繰り寄せられるものがないかと考える。
    喉元までに俺も知らない俺自身の答えが出てきそうになる。
    しかし、あと一歩が足りない・・・思い出せない。
    もうここまで出かけているというのに・・・

     「後、一歩足りないようですね。」
    見透かしたように、星の瞳を持つ彼女は俺に語る。
    目を伏せることしかできない自分が不甲斐ない。
    そんな俺を慈しむような微笑をうかべ見つめる彼女・・・
    「これは言うべきことではないのかもしれません。
    ですがもし必要なら・・・」
    そういって彼女は一度深呼吸をし、俺に向き直る。
    「・・・貴方に担当ウマ娘が”いない”事知ってるんです私。」

  • 26二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 01:25:13

     「覚えてはいらっしゃらないですよね。
    それを知ってたからこそ、私、貴方に言った事があるんですよ?
    私の・・・う・・・の・・・だって」
    その言葉は掠れていて俺には最後まで聞こえなかった。

    「なんて・・・言ったんだ?今?」
    後から思い出せばこんな言葉で返した自分を殴りたい。
    彼女は、マチカネフクキタルは一呼吸おいて、こう答えた。
    「以前、神社でお会いした事があるんです。貴方と。
    ほら、学園の近くのあの・・・」

     学園近くの神社といえば、あそこだろう。
    特にウマ娘の成功を祈願する場所でもない、辺鄙な、
    せいぜいが縁結び程度の信仰のあるあの神社・・・
    あの・・・神社?

     フラッシュバックする記憶、まただ・・・これは・・・覚えのない記憶。
    あの日、特に信心もない俺はあの神社に行って、
    そこで・・・彼女と出会っていたんだ。

  • 27二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 01:38:40

     ほんの願掛け程度の気持ちで、100円くらい賽銭箱に投げ入れたら
    気分も上向きになるだろう、これからのトレーナーとして生きるために。
    良いウマ娘との出会いを祈願して。

     さぁいざやお参りと思ったその時、変なヤツがきた。

    ・・・その変なヤツは俺を運命の人と呼んで契約を迫ってきた。
    多少の後ろ髪引かれる思いもあったが、俺はその場をそそくさと・・・
    後に・・・できなかった?

     それでも、即座に契約なんて”身勝手な事は”しなかった。
    まずは君の実力を見せてほしい、そういうありきたりなつまらない返事で濁した。
    そして彼女は、紆余曲折を経た上で結果を出し、俺と共に歩んだのだ。
    それは、俺が担当ウマ娘と歩んできた道とはまったく別の・・・
    中長距離路線を中心に、それこそクラシックレースを目指せるような栄光の道を。

     最初はまるでダメだった。
    そもそもクラシックに出るかどうかを占いで決める娘だ。
    内心少しあきれながらも、誰もがそうじゃない、
    こういう形もあるのだと、できる限り支えた。
    その果てに彼女は・・・最も強いウマ娘が勝つというあのレースに勝利した。
    当然俺は歓喜に震えたし、彼女も最高の笑顔を見せてくれた。
    その後、余計に占いに傾倒してしまい、自らの強さにすぐに気づかせてやれなかったのは
    俺の落ち度だが・・・

  • 28二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 01:47:45

     彼女は気づいていなかっただろうか?
    いや、気づいていたとしてもこの道は変えれなかったのかもしれない。
    それでも・・・俺は彼女のために尽くした。
    彼女もそれに答えてくれた。
    俺たちの本当の果て、そこに向かって。
    あの時君はいった。
    ”本当の星を手に入れましょう”
    それで俺は言ったね。
    『有馬記念』の勝ち星を飾ろうって。

    ほんの少しだけ不安はあった、だって走るのは彼女なのだから。
    これは、俺の身勝手な思い・・・だけれども

    「・・・・・・約束してくれる?」

    彼女は少しうつむきながらも少しおどけて”約束”をしてくれた。
    そして叶った。
    俺と君の・・・

  • 29二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 02:02:13

     「そう・・・だった。俺は・・・君と星を掴みたかった。
    これまで応援してくれた皆に・・・死んじゃったお姉さんに報いれるように」
    そう呟いてしまったと共に口を押さえる。
    なんて馬鹿な事を口にしてしまったのだ。
    これじゃあ・・・無駄に君を傷つけるだけで・・・

     謝罪の意思をこめて彼女に向き直る。
    きっとこうなのだろう思う、怒りやあきれに満ちた感情を、
    君は浮かべていなかった。

     「その話・・・どこで・・・」
    しまった、かなりセンシティブな領域に踏み込んでしまったのかもしれない。
    いくらなんでも身内の死を、死を・・・あれ?俺はどこでそれを知ったんだ?

     少しの間沈黙が二人の間を流れる、たまらず言い訳をしたくなり
    口が走りそうになるのを必死に抑えた。違う、本当に違うんだ・・・
    だって俺は・・・君の・・・

     「あったんですね・・・。」
    そう呟いて彼女が涙を流した。
    「あったんですね、私が・・・トレーナーさんと一緒に過ごせる世界が・・・」

     胸がえぐられる、だけど・・・それはそういう事だったんだ。
    時分でも信じられない、けれどこの胸の慟哭が伝える。
    本当に為したいことをするには・・・それが必要なんだと。

     「あの日の君は間違いなく最強だった。世界中の誰よりも。
    あの天の星に手が届くまで・・・」

  • 30二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 02:06:34

    そうしておれたちはだきあいすこしだけないた

    すこしだけそれはどれだけのじかんだったのかはわからない
    けどやがてかのじょはおれをつきはなしていったのだ

    あなたがいまめざすべきほしはここじゃないと

    そのときわかった
    うみのばしょが

  • 31二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 02:12:21

     「・・・いってください。
    ここにもう用はないでしょう。」
    「フクちゃん・・・」
    「・・・ツ!はやく!」

     促されるままに俺は占い屋を後にする。
    もうはっきりわかる、”今の”俺が目指す場所は・・・
    謝ることすら侮辱だろう、だからこう言おう。

     「行ってきます」
    「・・・はい、行ってらっしゃい」

     その言葉を最後に俺は駆け出した。
    きっとそういう世界があったんだろう。
    そこできっと俺は君を救えたのかもしれない。
    だけど、今は、だったら今は、俺の為す事は!!

    ・・・
    ・・・・・・

    第二章『星を掴んだ二人の物語』

  • 32二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 02:14:10

    閑話

    ひとまず一端おいておいて、また続けます。
    続きはまた。思った以上に色々削られるわこれ。
    なんでこんなことになったのか私もわからない。
    それであきれられたかもしれませんが、
    よろしければ最後までお付き合いを。

  • 33二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 08:26:20

    保守ーイ

  • 34二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 11:43:26

     保守あり。つづけます。
    突拍子もない流れはさらに加速する?

  • 35二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 11:58:45

     走った。
    自らの足で。
    それが最速の手段なはずはない。
    だがそれでも・・・
    そうすることが正解だと信じられた。

     走り続けるうちに、目の前をおおう思い空気に皹が入り
    やがて音を立てて割れるのを感じた。
    額の汗をぬぐいながら、一度脚を止め、呼吸を整える。
    そこへクラクションと共に声をかけられた。

     「はぁい、そこの彼氏、そんなに急いでどうしたの?」

     これは導きか、いや・・・きっとこれも・・・
    左ハンドルの運転席から手を振る彼女の乗る車に俺は躊躇わず近づき・・・

     「マルゼンスキー、俺を海に連れて行ってくれ。」
    「・・・あら、情熱的なお誘いね。」

     何も聞かずに彼女は助手席のドアを上げてくれる。
    きっとそういう事なんだろう。
    少しだけ覚悟を決めるようにゆっくりと、俺は助手席へと座り込んだ。

  • 36二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 12:27:32

     互いに少しの間無言のまま、車は海へと走っていく。
    初めて乗るはずの彼女の車で流れるミュージック。
    そのセットリストの次の曲のフレーズを”思い出した”頃合に、
    俺は話すことにした。

     中京レース場からここまでの事を。
    彼女は時折こちらに視線を向けるだけで、黙って話を聞いてくれた。
    覚えていたとおりの、セットリストが終わり、最初の曲に戻った頃に、
    ようやく彼女は口を開くのだった。

     「そう、貴方、担当がいるのね・・・最近見ににきてくれないのは
    そういうことだったのね。ちょっとジェラシー☆」
    会話に違和感は感じない。
    独白の間に俺は思い出していたから。
    あの日、それこそ正真正銘、担当も決まらずに学園内をふらふらとしていた時に
    楽しそうに心地よさそうに駆ける君の姿に目を奪われた時の事を。
    この事自体は、確かにあったこと、今の時間に通じている過去・・・。
    違うのはその後だ。

     今の俺は、あの日、屋上にいかなかった。
    眩さでいえば彼女には及ばないかもしれないが、
    それでもこの瞳のレンズにくっきりと焼きつく
    鮮烈な、別の走りをみてしまったから。

     「次にもう一度話せたらねって思ってたの・・・
    思って・・・?」
    彼女は自らの言葉に驚くような表情を浮かべると、
    車のスピードをゆるめ、路肩に止まらせた。

  • 37二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 12:51:56

     「ちょっと、ごめんね。」
    そう言って彼女は車を降りた。
    それに続いて俺も、助手席のドアを上げる。

     日はすでに西に沈もうとしていた。
    夕暮れの光に照らされた彼女の後姿をただ見つめる。
    彼女が口を開くのを待って。

     「トレーナー君、ちょっとおかしい事を言ってもいいかしら?」
    「うん・・・」
    「ありがとう・・・」

     ぽつぽつと彼女は語り始めた。
    ここではない、今と繋がっていない別の時間の話を。
    もうすでにきっかけすら必要ないくらい、そこは今の俺にとって
    身近なモノになっていたのだろう。
    それは彼女にも及んでいたのだろう。
    彼女は俺が”知っている”記憶の通りの日々を語る。

    俺も彼女と過ごした日々に想いを馳せながら、会話をつづける。
    時折、相槌をうちながら俺の挟む言葉に、彼女は目を輝かせる。

     ありもしなかった過去の日々を楽しみ慈しむように語らう男女。
    事実だけならべたら荒唐無稽な話だ。
    それでも・・・。

  • 38二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 13:02:43

     「それでね、合宿の後は、疲れちゃってる貴方を
    リラックスさせようとして、夏祭りに誘うの。」
    「盆踊りでフィーバーして・・・
    ふふっ、あそこをお立ち台というのは違うんじゃないかな?」
    「・・・もう、意地悪ね!」
    「それからにんじんDXタワーパフェの出店を探して・・・」
    「ナウでヤングなスイーツね。」

     もう二人の間に疑念はなかった。
    これはかつてあった時間。
    二人がかけがいのない時を過ごした物語。

     「また今度、つきあってもらっちゃおうかしら?」

    ・・・

     『もちろん付き合うよ』
    躊躇いもなくそう言えたあの日。
    少し目を丸くさせながら、いたずらに不安を煽るような言葉を
    つなげる君に俺は言ったんだ。
    『なんだってドンとこいだ!』

     だけど、今はいえない。
    だから、その大切な思い出の部分に触れずにその先だけを答える。

     「君は最高のパートナーだったよ」
    「・・・ずるいわね。」
    そうして少しの間、沈む夕日を二人で見つめた。

  • 39二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 13:13:40

     んーっと伸びをして、マルゼンスキーは俺に向き直る。
    「さ、もう行かなきゃ・・・でしょ?」
    「・・・あぁ」

     再び二人で彼女の愛車に乗り込む。
    「ここからはフルスロットルよ!」

     そこから先は、知っていたにも関わらず大変なものだった。
    法定速度ギリギリで責める彼女のドライブテクニックに
    あらゆる意味で酔いしれた俺は、次に彼女が車を止めるまでの間に
    二度ほど川のむこうのおばあちゃんに追い返された。

     ほうていそくどってなんだっけ?

     慌てて魂をひっこめた時、海はもう目の前だった。
    助手席のドアだけがすーっと上がっていく。

     「帰りはがんばってね。二人は送れないんだから。」
    「あぁ、ありがとう・・・」
    少しふらつきながらも俺は助手席の扉から外へ出る。
    そのまま脚をすすめようと・・・いや
    顔だけ振り返って、やはり俺はこう言うのだ。

     「いってきます。」
    「いってらっしゃい・・・。」

  • 40二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 13:15:20

    第三章 『あの日あの時あの場所で君にであわなかったら』

  • 41二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 13:17:44

     絶対タイトルに引かれて決めただろな人選。
    次で最終章です。
    ここまでは予想外かもしれませんが、ラストはきっと
    散々擦られたありふれた結末になるでしょう。
    このままいくと、即、沈みそうなので夜に投稿します。

  • 42二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 13:27:36

     いわゆるギャルゲーのループモノで、
    真エンドむかえるためには、他のヒロイン(言い方が酷い)を
    攻略しないといけないようなイメージですね。
    ヒロイン人選どんなだ。

  • 43二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 18:12:14

    ほす

  • 44二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 18:20:07

    よし、まずい
    続けよう。
    保守あり。

  • 45二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 18:34:31

     そうして俺は”海”にたどりついた。
    たどりついたと思った。
    目の前にはただ広がる砂浜・・・
    潮騒の音・・・
    日はもう落ちた。
    暗い・・・暗い・・・

     けど、もうわかっている。
    そこだな?何もない空間に手を伸ばす。

     何も手には感触はない、けれど
    わかるんだ!君がそこにいると!

     思い出せ・・・
    乙名史さんがその存在を証明してくれた。
    マチカネフクキタルがその場所を教えてくれた。
    マルゼンスキーがそれが間違いじゃないと教えてくれた。
    だから・・・

     後は俺の問題だ。思い出せ、俺の担当した、あの娘の名前を。
    ウマ娘たちの大儀、最強をしめすために動いた事も
    運命の人との出会いも、最高のパートナーとの出会いも
    矛盾してるだろ?それら全てを置き去りにして・・・
    俺は君を迎えにいくんだ・・・

     だから・・・手を伸ばす・・・

    「アストンマーチャン!」

  • 46二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:11:23

     のばした右手は確かに君の肩を掴んで・・・

     「トレーナー・・・さん?」

     久しぶりに、いやもっと短い時間だったのだろう。
    大切な時間がたくさんあった。
    その果てにようやく俺は君を捕まえられた。

     「どうして・・・ここに。」

     彼女は悲しげに目を伏せる。
    彼女はもうわかっている。
    ここまでなのだと。

     「・・・いえ、でも関係ないのです。
    マーチャンはここまでなのです。」

     本来言うべきはずの言葉を飲み込んで
    彼女の瞳を見据える。
    また少し、世界の境界がはがれて行くのを感じる。

     「・・・誰もが。上流から、下流へ、
    これは、当たり前のことなんですから。」

     それに続く言葉をもう俺は知っていた。
    それを言わせないために・・・ここに来たんだ!

     「だから、さような・・・」

  • 47二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:12:10

    「違う!」
    「え?」
    「君の考えている事はわかってるさ・・・俺がいれば・・・
    君の事を覚えている俺がいれば・・・
    アストンマーチャンは消えないって・・・」
    「・・・ええ」
    「違うんだ、それじゃあ・・・」
    「…あっ」

     『君”が”いなきゃ嫌だ』

    「・・・・・・!」

    「アストンマーチャンは、ここからなんだ。
    他の誰でもない・・・ウオッカでも、ダイワスカーレットでも・・・」

    世界の壁が今完全に崩れたのを感じる。
    きらめいて落ちる欠片の向こうの君を見据えて言葉を続ける。

    「乙名史さんが与えてくれた最強を夢みて・・・」

    彼女との思い出がフラッシュバックする、しかしそれを越えて

    「マチカネフクキタルが確かに示してくれた最強を・・・」

    菊花賞の栄光を共に喜んだ事をかみしめて

    「それが間違いじゃないとマルゼンスキーが証明してくれた」

  • 48二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:27:23

    「アストンマーチャンがターフを駆ける。
    観客席は期待にざわめき胸躍らせる。
    何度も土を蹴り上げ。
    瞬きする間にターフを駆け抜けて──
    何度でも、何度でも、夢を見せてくれる。
    ずっとずっと、輝き続けてくれる。」

     俺の担当ウマ娘が、アストンマーチャンが、
    その瞳に煌きをもどした。

     「そのはずなんだよ」

    言うべきことはすべて言えた。
    後はこの掌の先にある軌跡が続くかそうではないか・・・

  • 49二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:27:56

     わかってる わかってたおれだった。 
    けれどもあきらめられなかったから
    それがふかのうなことだとしりながら

     俺は彼女に手を伸ばす。

     少しの間をあけて彼女は口を紡ぎ・・・
    いざなわれるべき海に背を向けた。

     「しょうがないです。
    トレーナーさんが変なヒトですので。」

     今完全に、世界を超えた。
    俺と彼女を隔てる忌まわしい壁を。

     「マーチャンの伝説は、まだ終わらない・・・。
    わたしたちで、そういうことに
    してしまいましょうか。」

     「・・・あぁ!」

    ・・・
    ……

     その後、トレセン学園に戻るのは少し苦労した。
    けれどそれはなんら問題なく。
    それが当たり前のようにすんだ。

  • 50二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:29:22

     数日後、2008年の高松宮記念の勝者を飾る記事が発行された。
    その勝者は・・・

     一面に飾られる彼女の写真。満面の笑顔で・・・
    コメントはみるまでもない、こうだろ?

     『アストンマーチャンをよろしくお願いしますね?』


    最終章『ウルトラスーパーマスコット』

  • 51二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:29:46

  • 52二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:30:46

    なんかつなぎが自分でもあれと思う感じでしたが。
    風邪をひいた日の夢みたいなものが元なのでお許しを。

  • 53二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:33:24

    乙!世界線を跨ぐ壮大な叙事詩!読み応えあったよ

  • 54二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 19:33:36

    ありふれた結末ですね。
    過程?それはまぁうん・・・

  • 55二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 02:04:19

    よかったぜ

  • 56二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 02:04:22

    ありふれてたまるかこんなのw乙でした。

  • 57二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 12:19:58

    あげてみる。

  • 58二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 20:20:00

    再掲

オススメ

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