(SS注意)晴れ着ネイチャに耳掃除してもらう話

  • 1二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:21:04

     ふと、意識が暗闇から浮き上がる。
     後頭部には柔らかい感触と、じんわりと優しい温もり。
     鼻先には甘くて、それでしてどこか素朴な、とても良い匂いを感じた。
     ぽやぽやとした思考の中、俺はゆっくりと目を開ける。

    「……あらら、もう起きちゃったか? まだ寝てても良かったのに」

     そこには、子どもを見守る母親のような表情で上から覗き込む、ウマ娘の顔。
     優し気に細められた黄色い瞳、お正月らしい耳飾りに、左右それぞれ赤と緑の耳カバー。
     普段のふわふわなツインテールは下ろされて、ゆるやかなウェーブを描いている。
     担当ウマ娘のナイスネイチャは、ふわりと、優しく俺の頭を撫でつけた。

    「ほらほら、もうちょっとゆっくりしときー、一番忙しい時間はもう終わったからさ」

     さらり、さらりと触れるネイチャの手つきを、とても心地良く感じてしまう。
     けれど裏では、俺の中の冷静な部分が、現状把握に思考を回転させていた。
     今のネイチャの姿は、緑と白のストライプ模様の、所々にフリルが施された、晴れ着姿。
     そうだ、確か彼女はこの格好で、商店街の初売りを手伝いに行くと言っていたはず。
     俺も商店街にはお世話になっているから手伝おうとして。
     ────思い出した。
     さあっと血の気が引いて、俺は慌てて身体を起こそうとする。

    「……大丈夫だよ、トレーナーさん」

     しかし、それは、上から俺の身体を押さえつけるネイチャの手によって阻止された。
     全てを把握した俺は、ようやく後頭部に感じていた柔らかくて、温かい感触の正体に気づく。
     俺は今、仰向けの状態で、彼女に膝枕をされているのだ。

  • 2二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:21:21

    「商店街の皆、アンタに感謝してたよ……とゆーか、皆トレーナーさんを遠慮なく働かせすぎ」

     アタシらと違って慣れてないんだからさ、と言いながらネイチャは苦笑を浮かべる。
     そう、俺は今日、彼女と一緒に、商店街の初売りを手伝っていた。
     しかし、この手のことに手慣れた彼女とは違い、俺には圧倒的に経験が不足していた。
     だから俺は、単純な運搬作業などをメインに、ひたすら商店街中を駆け巡ることにしたのである。
     運動不足の身体に、それはなかなかに響き、遅めの休憩をとることにはふらふらとなっていた。
     ご飯を食べる気にもならず、少しゆっくりしようと、休憩用に用意された部屋に入り込んで────。

    「びっくりしたんだから、入ったらトレーナーさんが倒れていてさー、近づいたら寝息を立ててるし」

     ネイチャは笑い話のように、呆れた表情で語る。
     ……どうやら部屋に入った瞬間、そのまま力尽きて、眠りこけてしまったようだ。
     ありがとう、もう大丈夫だよ、早く手伝いに戻ろう。
     俺はそう伝えて、再び起き上がろうとする。
     しかし、ネイチャは放してはくれない。
     むしろ押さえつける力をより強くして、俺のことじっと睨むように見つめた────微かに瞳を潤ませて。

    「……本当に、心配したんだから」

     不安に揺らめくその目を見て、俺は自分の浅はかさに気づく。
     部屋を入って、倒れている人間なんて見つけたら、誰だって慌てるし、心配になるだろう。
     心配かけてごめん、そう言葉にすると、ネイチャはふいっと顔を逸らして、口を尖らせる。

  • 3二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:21:39

    「……もう二度と、無理はしない?」

     勿論、と俺は言葉を返す。

    「……今日はアタシの言うことを、聞いてくれる?」

     勿論、と口にしてから、あれ? と思ってしまう。
     気が付けば、にやにやとした笑みを浮かべるネイチャが、俺のことを楽しそうに見つめている。
     彼女は俺の身体を押さえていた手を肩に動かすと、そのままモミモミと揉み込んできた。
     絶妙な力加減で解されて、身体から力が抜けて行ってしまう。

    「そっかそっかー、それじゃあ、トレーナーさんにはじっくりと癒されてもらいましょうかねー?」

     そう、悪戯っぽく言うネイチャ。
     俺は彼女の手つきに翻弄されながらも、商店街の方は大丈夫なのか、と彼女に問いかける。
     素人目に見ても彼女は大活躍していた、そんな戦力が抜けたら大変なのではないだろうか。
     それを聞いて、彼女は困ったような笑みを浮かべる。

    「アタシ一人抜けたくらいでダメになるようなヤワな人達じゃないデスヨ」

     ……まあ、それもそうか、かなりパワフルだからな、あの人達。
     やがてネイチャは肩もみを止めて、手をすーっと首元に這わせていく。
     ぞわぞわと背筋が走る中、彼女のやわい指先は頬を通り抜けて、耳にそっと触れた。

    「だからトレーナーさんは、存分にリラックスしてくださいな……ほれほれ~、こしょこしょ~」

     そしてそのまま、俺の耳の中に指を浅く入れて、くすぐるように小刻みに動かしてきた。
     ネイチャの柔らかくて、温かい指先の感触と、耳の中が擦れる音色が、じんわりと神経を刺激する。
     程良いくすぐったさは逆に快感に繋がり、なんだかとても心地が良かった。
     ずっと享受していたくなるような感触は、彼女の指がピタリと止まることによって終わりを告げる。

  • 4二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:21:51

    「ほほう、これはこれは……トレーナーさん、耳の手入れ、あんまりしてないでしょ?」

     ネイチャの指が俺の耳から離れて、指同士が擦れるような音が、小さく聞こえて来る。
     彼女の指摘に、俺は顔を熱くしてしまう。
     恐らくは触れた耳の中がきれいじゃなかったのだろう、彼女の言う通り、耳掃除は最近していなかったから。
     汚いものを触れさせてしまったと後悔しつつも、どこか先ほどの彼女の声に、違和感を覚える。
     不快感よりも、どこか嬉しそうに、声が弾んでいるような気がしたから。
     彼女はゆっくり顔を近づけて、俺の耳元に、そっと囁くように言葉を紡いだ。

    「…………アタシが、耳掃除、してあげよっか?」

  • 5二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:22:04

     足取り軽く、別室から竹製の耳かきを持ってきたネイチャは正座をすると、ちょいちょいと俺を呼び寄せる

    「ささっ、さっきと同じようにネイチャさんの膝枕にどーぞ……ちょっと恥ずかしいから、なるはやで」

     ネイチャは恥ずかしそうに頬を染めてはいるが、尻尾はパタパタと忙しなく動いていた。
     どうやら、彼女は耳掃除をすることを、楽しみにしているらしい。
     躊躇はしたものの、先ほど俺は彼女の言うことを何でも聞く、といった手前、拒否権は最初からない。
     ……それに俺自身、彼女の膝枕と耳掃除を望んでしまっていることを、否定できない。
     俺はゆっくりと────彼女の太腿の上に、頭を預けた。
     見た目以上に柔らかい袴の肌触り、そしてむっちりとハリのある肉感、じんわりと感じる彼女の体温。
     そして、甘く、素朴で、どこか懐かしい彼女の香りと微かな汗の匂いが、鼻腔をくすぐる。

    「ふふっ、良く弟にしてあげててね、やってあげるのが結構、楽しみだったんだ」

     ネイチャは軽く俺の耳を、指で揉み解しながら、そう口にする。
     なるほど、学園に入ってからじゃ耳掃除なんて出来ないし、耳掃除欲が溜まっていたのかもしれない。
     ……耳掃除欲ってなんだろう。
     そんな疑問を感じながらも、俺は彼女のマッサージに、緊張を解されていく。
     肩揉みもそうだったけれど、彼女の力加減は絶妙だ、ぎゅっぎゅっと指が押される都度、程良い痛気持ち良さが走る。
     やがて、耳のマッサージを終えると、彼女は近くに置いておいた耳かきを手に取った。

    「それじゃあ始めて行くからね? 痛かったりしたら、すぐに言うように」

     少しだけぼーっとし始めた意識の中、了解と、小さく言葉を返した。
     そして、耳の外側の溝に沿って、固く、それでいてしなやかな耳かき棒の匙が、撫でるように走る。
     すりすり擦れる音と共に、僅かなくすぐったさと、垢が剥がれるような感触、それとぞわぞわする心地良さ。

  • 6二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:22:17

    「……ちょっと擦っただけでこんなに取れちゃった……ふふっ……これはやり応えがありそうですなあ」

     ネイチャは、嬉しそうに呟いた。
     俺にとっては身嗜みが行き届いていない、恥ずべき結果なのだけれど。
     その声を聞いてしまうと、まあ良いかな、と思ってしまう。
     彼女は耳の外側だけでなく裏側まで、丁寧に、それでいて手際良く耳かきを這わせていく。
     そうしていると、なんだか耳の中の方が、むずむずと疼いてきてしまう。

    「ふう、外はこんなもんかな、それじゃあ中をやっていくよー?」

     俺の胸の内を見通しているかのように、ネイチャはタイミング良く、そう宣言した。
     そしてそのまま、耳かきの匙が、耳の中に入り込む。
     痛みはないけれど慣れない刺激を感じて、俺の身体は思わず、びくりと反応してしまう。

    「うにゃっ!?」

     驚いたネイチャは声を上げて、慌てた様子で耳かきを、俺の耳から離した。
     ……なんだか小さな子どもみたいな反応をしてしまって、恥ずかしい。
     耳の外側だけでも十分だし、迷惑をかけたくないから中断してもらおうか、そう考えた瞬間。

     ふわりと、柔らかくて暖かい手が、優しく俺の頭を撫でた。

     先ほど感じた、ネイチャの手つき。
     そっと触れてもらっているだけなのに、一瞬感じた不安も、恥ずかしさも、全て抜けてしってしまう。

  • 7二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:22:31

    「……大丈夫、ネイチャさんに任せて、ね?」

     母性すら感じてしまうようなネイチャの言葉の響きに、俺はこくりと、頷く。
     それを見て彼女はくすりと笑みを零して、耳掃除を再開した。
     まずは入口の浅いところから、かりかりと、耳かきで掻いていく。
     それなりに溜まっているのか、先ほどとは違い、ノイズ混じりの音が鼓膜を揺らした。

    「これはなかなか……辛かったら、袴掴んでもいいから、動いちゃダメデスヨ?」

     ネイチャは注意を促しながら、耳の奥へ、奥へと、掘り進めて行った。
     カリカリと軽く響いていた音が、ガリガリ、ザリザリと、次第に削るような音に変わっていく。
     けれど痛みは不思議を感じず、ただただ、脳に直接響く、痺れるような快感が流れていた。
     
    「……痒いところはありませんかー?」

     冗談めかして、ネイチャはそう問いかけて来る。
     しかし、あまりの心地よさに頭を支配された俺は、まともに言葉を返す余裕がない。
     無意識で口を動かしていたようだが、何て言ったのか、自分でも把握出来なかった。

    「そっかそっか、えへへ」

     けれど、ネイチャは照れたように、笑みを返した。
     ……とりあえず、下手なことは言わなかったようで、何より。
     そしてしばらくの間、彼女は無言で、耳かきに集中する。
     部屋が静寂に支配されるものの、そこに気まずさは存在せず、居心地の良い沈黙が流れていた。

    「ふぃー……よし、きれいになった……ふふっ、我慢出来て、えらいえらい……」

     やがて、汚れを取り切ったのか、ネイチャは長い息を吐いて、俺の頭を撫で始めた。
     ……もしかして、弟を相手にしているような気分になっているのだろうか。

  • 8二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:22:45

    「……じゃっ、じゃあ、今度は梵天を入れていきますよー!」

     どうやら自分の行動を省みたようで、ネイチャは声を震わせつつ、羞恥心を誤魔化すように大声を出す。
     そんな彼女に微笑ましさを感じながら、梵天ってなんだっけ、と考えてしまった。
     その答えは、実感持って、理解することとなる、
     ────ふわふわと、柔らかい感触が、耳に入り込む。
     細かい毛先が耳の中を優しく撫でて、ぞわぞわとした感触が、背筋に走っていく。
     くるりくるりと回転するごとに、意識が持って行かれるような、蕩かされていくような感覚。

    「おやおや、トレーナーさんは梵天がお好みですかー? お顔がトロトロですぞー?」

     揶揄うようなネイチャの囁き。
     しかし、あまりに暴力的な快感、口元を引き締めている余裕はなかった。
     完全に骨抜きにされて、瞼が落ちてしまいそうになる中、気づけば梵天は引き抜かれて、彼女の気配がそっと近づく。

    「……ふぅー、ふぅー」

     そしてネイチャは、細く、長く、優しく、耳の中に何度か息を吹きかけた。
     熱さすら感じる吐息が耳の中のすり抜けて、身体は大きく跳ね上がり、落ちかけていた意識が強制的に呼び戻される。
     そんな俺の様子を見て、楽しそうに彼女は笑った。

    「あはは、トレーナーさん反応が可愛い……! ひー、ダッ、ダメ、ツボっちゃった……!」

     ちらりと見上げれば、肩を振るさせて、目尻に涙を溜めながら笑っているネイチャの姿。
     ……まあ、彼女の笑顔が見れるなら、一時の恥くらい安いもんだけどさ。
     何とも言えない想いが顔に出てたのか、俺の顔を見た彼女は目元の雫を拭いながら、言葉を紡ぐ。

  • 9二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:23:01

    「ごっ、ごめんってば、寝かしてあげたいんだけど、まだ反対側が残ってるから……ほら、ごろーんとして」

     別に怒っているわけじゃないだけど、と思いながらも、言われるがままに身体を回転させる。
     ────そして、目の前には紫色の花のついた、緑色のリボン。
     袴の紐に締められている、ネイチャのお腹が、そこには広がっていた。
     先ほどよりも強く、ネイチャの匂いと温もりを、感じてしまう。
     ……この体勢はさすがに不味いか、そう思って身体を起こそうとするが、身体はぴくりとも動かせない。
     見れば、彼女が顔を真っ赤に染め上げながら、ぎゅっと俺のことを押さえ込んでいた。

    「……いいよ、このままで、全然、恥ずかしく、ないし」

     どう見ても大嘘だけれど、それを言うのも、悪い気がして。
     わかった、任せる。
     短い言葉に、彼女への信頼と感謝を込めて、俺は彼女に向けて耳を差し出した。
     
    「……うん、任せて」

     ネイチャもまた、小さく、言葉を返してくれる。
     その言葉の中に、彼女の想いが籠っているような気がして、俺はついつい、顔を緩ませてしまった。
     耳の揉み解しの後、再び、彼女の耳かきが耳に触れる。
     お互い言葉を発さない中、かりかりと、小さな音が部屋に流れていく。
     心地良い音色、伝わってくる温かな体温、顔を包んでくれる柔らかさ、そして感じるネイチャの優しさ。

     それは────とても、幸せな時間だと、そう思った。

  • 10二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:23:30

    お わ り
    オノマトペに頼らない耳掃除SSも模索していきたいですね

  • 11二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:32:52

    優しい雰囲気だ……

  • 12二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:35:59
  • 13二次元好きの匿名さん24/01/16(火) 23:57:57

    Nice SS、ネイチャに耳掃除してもらえるとか羨ましい……

  • 14二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 00:49:13

    耳掃除といいつつ肩もみも膝枕も堪能しやがって……!

  • 15二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 00:58:53

    スレ主の耳かきssからしか得られない栄養素が確かにある
    ありがとうございます

  • 16二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 01:27:46

    良作をいつもありがとうございます

  • 17124/01/17(水) 07:59:12

    >>11

    ネイチャにはそういう雰囲気が似合いますね

    >>12

    ありがとうございます

    >>13

    してもらいたいよね……

    >>14

    フルコースいいよね……

    >>15

    そう言っていただけると幸いです

    >>16

    こちらこそ読んでいただきありがとうございます

  • 18二次元好きの匿名さん24/01/17(水) 11:17:29

    感謝……やっぱり耳掃除ってエッチなのでは?

  • 19124/01/17(水) 19:30:53

    >>18

    健全極まりない行為だからセーフ

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています