- 1二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:29:48
『こんばんは、こんな時間に珍しいわね?』
スマホから流れる、凛とした声色。
担当ウマ娘のヴィルシーナは物珍しそうな声で、そう問いかけてくる。
……いやまあ、電話をかけたのはこっちからなんだけども。
俺は椅子に腰かけながら、スマホをハンズフリーに切り替えて、机の上に置いた。
「ああ、夜中に電話しちゃってごめんね」
『夜中といってもまだ8時過ぎたくらいだし、構わないわよ』
「ちょっとトレーナー室の前で落とし物を拾ってね、君の物か確認しておきたくて」
そう伝えてつつ、ちらりとスマホの隣に置かれているボールペンを手に取る。
ヴィルシーナの美しい長髪を彷彿とされる深い青色で、それでいて高級感のある一品。
しかし、それが彼女の持ち物なのかどうかという確信を、俺は持つことが出来なかった。
他人のものであれば事務室やらに届ける必要があるし、彼女の物であればそれは二度手間になってしまう。
故に、彼女にまず確認を取ってから判断することにした。
「LANEでも良かったんだけど、事務の人の時間もあるからさ、早めに確認しておきたくて」
『…………』
俺の言葉に、ヴィルシーナは沈黙を貫く。
何故か、その静寂は妙に重く感じて、何とも居心地の悪い気分になってしまう。
やがて、彼女は小さくため息をついて、少しだけ声のトーンを落として言葉を口にする。
『はあ、まあ良いわ…………それで、どんな落とし物なのかしら』
「あっ、ああ、えっと、青色の、その、良い感じのボールペンなんだけど」
『……私、青色のボールペンっていくつか持ってるのだけれど』 - 2二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:30:03
少しだけ呆れたような声色で、ヴィルシーナはそう言った。
……もう少しちゃんと説明出来れば良かったのだが、どうにも語彙と表現力が足りていない。
目に見える特徴をいくつか挙げてみるも、どうも上手く伝わらない。
無為に時間を過ごしていく中、業を煮やしたのか、彼女は一つの提案をした。
『……トレーナーさん、一旦ビデオ電話に切り替えて良いかしら?』
────ああ、そんな機能あったな、と素で思ってしまった。
テレビ電話なんて一度も使ったことがなかったから、完全に存在を忘れていたのである。
確かに直接見てもらった方が早い……というか、一度写真を送ってから電話するべきだったか。
「うん、お願いするよ、えっと……」
『こっちで操作するわ』
ピロン、とスマホから音が鳴り響く。
直後、スマホの画面が切り替わり、ヴィルシーナの姿が映し出される。
────そこにいたのは、いつもと少し違う、彼女の姿だった。
普段さらりと下ろされた髪は、三つ編みで纏められている。
身に纏っているのは青色の、ワンピース型のルームウェア。
お風呂上りのせいか少しだけ火照った彼女の顔は、どことなく普段よりも幼く感じられた。
にもかかわらず、全体の雰囲気は、普段以上に大人びて見えて────正直に言って、少しドキリとしてしまう。
そんな俺の心境を知ってか知らずが、彼女はこちらを見つめて、眉を顰めた。
『……やっぱり、まだ学園にいたのね?』
「……」
『もう、あまり遅くまで仕事してはダメよって、この前に言ったばかりじゃない』
「…………」
『…………トレーナーさん? どうしたの、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして』 - 3二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:30:16
不思議そうに首を傾げるヴィルシーナの声を聞いて、俺は我に返った。
そして何だか自分が恥ずかしくなって、思わず苦笑を浮かべてしまう。
「ああ、ごめん、君の姿が新鮮で、とても綺麗で、見惚れちゃっただけだよ」
『……えっ?』
今度は、ヴィルシーナが、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする番だった。
数秒間、彼女は俺の言葉をじっくり読み込むように、動きを停止させる。
やがて────火が吹き出したかのように顔を真っ赤に染め上げて、両手で前に、身を隠すように丸くなる。
『なっ、何を言っているのよ!?』
「何をって、正直な感想なんだけどな……なんかこう、君の新しい一面を引き出しているとか」
『なっ……おっ、メイクだってしてないし、こんな気の抜けた姿を、あまりじっくり見られても、困るわ……!』
「十分可愛らしいと思うけど……いやでも、あまりジロジロ見るのは良くなかったね」
『……~~っ!』
ヴィルシーナはぷるぷると身体を震わせた後、ぷいっとその顔を背けてしまう。
……どうやら怒らせてしまったようだ、デリカシーが足りていなかったのかもしれない。
どう謝罪をしたものかと考えていると、スマホから小さな声が聞こえて来る。
『……ボールペン』
「えっ?」
『ボールペンを見せてちょうだい……本題はそれでしょう?』
「あっ、ああ、そうだったね」
そうだ、すっかり忘れていたけれど、それが本題だ。
俺は慌てて、持っていた青色のボールペンをスマホのカメラに向けてかざす。
ヴィルシーナは顔を背けたまま、ちらりと、横目でこちらを見た。 - 4二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:30:29
『……ええ、それは私のボールペンだわ』
「そっ、そっか、良かった、それじゃあトレーナー室に置いておくから、時間があるときに取りに来てよ」
『そうさせてもらうわ、拾ってくれてありがとう、トレーナーさん』
「そんな、大したことじゃないし、気にしな」
『────お礼を、しなくてはいけないわね?』
俺の言葉を遮って、ヴィルシーナは言葉を紡いだ。
照れたように微かな響きで、それでいて想いが籠っているような、そんな声色。
そして彼女は、まるで自身を見せびらかすように両手を開くと、はにかんだ笑顔を浮かべる。
頬染めて恥ずかしそうでありながら、どこか満更でもない、そんな様子で、彼女は小さく囁いた。
『新鮮で、綺麗で、可愛らしい私の姿を────存分に堪能して良いわよ?』 - 5二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:31:13
お わ り
画像が小さくて髪型が変わってるのはわからないけど可愛くて美しいのだけはわかったなんやこの色気は - 6二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 02:34:42
まあなんだ。こんな深夜にあっさり終わるな
- 7二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 03:00:09
女性慣れしてるなこのトレーナー
- 8二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 08:03:07
朝からいいもん見たわ
- 9124/01/18(木) 09:28:58
- 10二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 09:57:47
- 11二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 09:58:30
なんか端々が軽い男やな
- 12124/01/18(木) 10:26:14
- 13二次元好きの匿名さん24/01/18(木) 10:28:57
Nice SS、この二人なんかオトナなやりとりしてる……
- 14124/01/18(木) 11:20:09
中学生とかうせやろ……