(SS注意)時折男の子みたいな口調が飛び出てしまうシュヴァル概念

  • 1二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 23:57:09

    「シュヴァルってさ、ヴィブロスちゃんと話す時って、口調が変わる時あるよね?」

     担当ウマ娘とのお出かけの途中、私は彼女に、ふと思ったことを聞いてみた。
     明るい茶色のショートヘア、そこに混ざる一房の白いメッシュ、特徴的な白い帽子。
     シュヴァルグランはその綺麗な青い瞳を丸くして、驚いた表情で私を見つめた。

    「そっ、そうなん、ですか?」
    「うん、本当にたまにだけど、ちょっと口調が男の子っぽく、ぶっきらぼうな感じになるというか」
    「えっ、えっ?」
    「べったりだっただろ────みたいな?」

     私は少しだけ低い声で、精一杯格好つけながら、シュヴァルの言葉を再現してみせる。
     すると彼女は、頬を染めて、わたわたとしながら帽子で視線を遮った。

    「うっ、うそ、嘘ですよね……?」
    「いやホントだけど、というかもしかして無自覚だったの?」
    「あうぅ……僕が……そんな喋り方を……?」
    「うん、いつもよりもクールな感じで、シュヴァルというよりは、シュヴァくん♪ って感じ」
    「トッ、トレーナーさん……その呼び方やめてくださいよぉ……!」

     褒めたつもりだったのだけど、シュヴァルは益々帽子を深くかぶり、小さくなってしまう。
     うーん、レースの時とかはとても格好良いのに、プライベートだと、こんなにも可愛らしい。
     ……ちょっとだけ、心が騒めく。
     もっとこの子の可愛い顔が見たい、ちゃんと思ってしまって、大人げない悪戯心が湧き上がってしまった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 23:57:28

    「どうしたのーシュヴァくーん?」
    「……うぅ、今日はトレーナーさんが意地悪だぁ」
    「アハハ、ごめんごめん、でもちょっとだけ顔を見せて────」

     俯いたシュヴァルの顔を見るために、回り込もうとした、その瞬間であった。
     ガツンと、足に何かが引っかかり、ぐらりと身体のバランスが大きく傾いてしまう。
     視界の端に、道路の縁石がちらりと見える、ああ、あれに足を引っかけたんだ。
     そして、私の身体は、車道に投げ出されるように倒れていき、目の前には、車が迫って来ていた。
     けたたましく響き、クラクションの音。
     何故か、全ての動きがゆっくりと感じられて、これはやばいなと、実感してしまう。
     私は、ぎゅっと目を瞑る。
     ああ、シュヴァルに嫌なものを見せちゃうな、シュヴァルに心配をかけちゃうな。
     ────ごめんね、シュヴァル。

    「トレーナーさんっ!!」

     刹那、腕を痛いくらいの力で掴まれて、思いきり引っ張られる。
     倒れかけていた私の身体は、いともあっさりと引き戻されて、クラクションを鳴らした車がすぐそばを通り過ぎて行った。
     そして、ぎゅっと、全身をシュヴァルに包まれた。
     ボーイッシュな外見に見合わない、女性らしい胸の膨らみを顔に押し付けられて。
     少し怖いくらいに力のこもった両手で、しっかりと身体を抱きしめられて。
     彼女の早鐘を鳴らす心臓の音が聞こえて来て、甘くて爽やかな匂いで頭がいっぱいになって。
     やがて、シュヴァルは私の両肩を、痛いくらいの強さで押さえながら、少しだけ身体を離す。
     彼女は今にも泣きそうな表情で────きっと、私を睨みつけていた。

  • 3二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 23:57:42

    「何を考えてるんだ!? 危ないだろ!?」
    「えっ、あっ、うん……ごめん……」
    「本当に心配したんだぞ! 僕がいなかったら……どう……なって…………」

     珍しく語気を荒げるシュヴァルの声が、徐々に小さくなっていく。
     自分の行動と、言動に気づいたのか、顔全体が真っ赤に染め上がり、視線がぐるぐると彷徨っている。
     私の両肩を押さえていた彼女の量手の力が、みるみるうちに抜けて行って、だらんと下がってしまった。
     
    「ごっ、ごごごっ、ごめんなさい……っ!」
    「あっ、シュヴァル!?」

     そして、私に背を向けて、そのまま何処へと走り去って行ってしまった。
     あっという間に見えなくなってしまうシュヴァルの姿。
     私は彼女のおかげで九死に一生を得たというのに、謝罪も、感謝も、ちゃんと伝えられていない。
     早く追いかけなきゃ、と思うのだけれど。

    「……はあ」

     へなへなと全身の力が抜けて、一目も気にせず、その場にへたり込んでしまう。
     大事故一歩手前に直面した恐怖、というのも、少しはあった。
     けれど、それ以上に思い浮かぶのは、私のことを叱りつけるシュヴァルの言葉と、顔。
     それが脳裏に映るだけで、心臓がドキドキして、顔がかぁと熱くなってしまって。

    「ヤバ……抜けた腰も……にやけた顔を戻んない……」

     私は、心配で引き返してくれたシュヴァルに助けられるまで、悶々とその場で過ごしたのであった。
     ……なんか、上手いこと合法的にあの子から怒られる方法、ないかなあ。

  • 4二次元好きの匿名さん24/01/23(火) 23:58:10

    お わ り
    ヴィブロスと話す時に口調が変わるシュヴァち良いよね……

  • 5二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 00:02:31
  • 6124/01/24(水) 00:59:44

    >>5

    このスレ見て書いたんですよねえ……

    ありがとうございます

  • 7二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 07:26:35
  • 8二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 07:47:32

    ア゛ッ(良SSやあぁぁぁぁ!)

  • 9二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 08:06:16

    このレスは削除されています

  • 10124/01/24(水) 08:07:04

    >>7

    そう言っていただけると幸いです

    >>8

    死なないで……

  • 11二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 08:33:03

    最高のssをありがとうございます(尊死)
    家族相手だったり咄嗟の時につい口調が変わってしまうシュヴァル、いいですね…

  • 12124/01/24(水) 19:31:41

    >>11

    ヴィブロス相手のシュヴァルいいよね……

  • 13二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 21:06:02

    可愛いとかっこいいのギャップがいい

  • 14124/01/25(木) 07:02:20

    >>13

    イケメンなところも魅力ですね

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