- 1二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:08:12
3人がツルハシを振るい、2人が掘り出された土をリヤカーで運んでは捨てる。
細かな指示を与えたわけではなかったが、根が真面目な風紀委員たちは自分なりに考えて動いているようだ。ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナはせっせと働く部下をぼんやりと眺めた。
上着に砂埃が付くのも構わず地べたに座り込んで、応援するでも叱責するでもなく。ただ、眺める。
ちりん、と首元で鈴の音が鳴った。ヒナが生まれて初めて身に着けた赤い首輪、それに繋がれている紐が小さく引かれたようである。
すぐ横に視線を向ければ、紐の先端を震える手で握った風紀委員がおずおずと表情を窺っている所だった。
「ど……どうぞ、委員長。……えっと、あーん、としてくださると……」
紐を持つ手と反対の手には切り分けられた巻き寿司の一片がある。
ヒナは首を引っ張る優しい力に身を預け、自分の手は使わず、口に運ばれてくるそれをゆったりと咀嚼する。さながら鳥の雛のように、全て目前の部下に任せていた。
「あー……ん。……美味しい。……けど、もっと強く引いてくれてもいいわ」
「い、いえ、流石に畏れ多いです。口元をお拭きしますね」
手早く、そして甲斐甲斐しくハンカチで口を拭われる。
ペット扱いなのか幼児扱いなのか判別はつかない。しかしヒナはそれを怒りも嘆きも、恥じもしない。彼女自身が望んでそうしているからだ。
……こうする事でより近しい部下や、厄介なテロリストたちの何かを理解できる気がしたからか?
……最後に笑ったのがいつだったか思い出せない日々が、少しでも色めくような気がしたからか?
分からない。ヒナ自身でさえも。
ただ、存在しない温泉を探す響きも、個人的に注文した給食部謹製の美食も、首を締めつけ続けている拘束も。少しずつ心に馴染んでいきつつある。
「ところで、これはどこまで掘るつもりなんですか? こんなに荒らしてもいいのか少し心配で……」
「飽きるまで。この建物は温泉開発部の拠点の一つだから遠慮はいらないわ」
「……了解しました。朝までやりましょう。……もう1ついかがですか?」
こぼさないよう丁寧に運ばれてくる巻き寿司を、小さく口を開けて受け取る。
部下に首輪で繋がれて給餌されながら、部下を益体も無い行為に駆り出す。この倒錯した欲求にも何らかの意味がある筈だから。きっと。
「……存外悪くないものね」 - 2二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:12:40
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- 3二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:12:46
(黙って首を横に振るセナ)
- 4二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:15:23
ヒナちゃんが幸せそうで何よりです
- 5二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:16:10
たぶん本家の横乳温泉美食が見たら「えっ何それ知らん…怖…」ってなると思うんですけどぉ…
- 6二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:17:13
誰か先生呼んできて!!!
- 7二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:18:01
幼児退行とかじゃなくてバッチリ理性が残ってるあたりがもうなんか怖い
どうしてこんなになるまで放っておいたんだ! - 8二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:19:17
どうしてって…多忙で過労だから…
- 9二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:21:31
参加してる風紀委員の6人、絆ゲージと忠誠心が激増してそう
- 10二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:26:43
次は混浴か脚舐めか
- 11二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:29:12
この分だと混浴しつつ先生に足を舐めたり洗ったりしてもらう日も近いかもしれない
正気に戻って…… - 12二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:31:39
マコトでも(万魔殿の安全を考えて)休暇をくれるレベル
- 13二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:33:54
「何かがある筈だから」で推し進める姿…立派なゲヘナ生徒だよヒナちゃん…
- 14二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:37:20
状況を考えるとゲヘナテロリズムメンバーの表面をなぞることで相手の心理を確かめようとしてる状況からスタートっぽい
美食は給食部、温泉堀はそのまま……便利屋は少人数での行動……? - 15二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 11:46:16
- 16二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:00:18
なるほど シナシナの「私だって首輪でお散歩したかった!混浴したかった!」方向への進化をしないとこうなるのか…
- 17二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:01:59
まだ欲望吐き出してるそっちのほうがマシなの倒錯的すぎない????
- 18二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:06:04
この場を目撃してしまい止めようとするアコちゃんに「もう少し続けさせて。貴方の事が今までよりも深く分かってきた気がするの」って返していつになく柔らかい雰囲気で微笑するヒナいいんちょ……
- 19二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:11:47
参加してる風紀委員の性癖が複雑骨折してそう
- 20二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:25:12
セナじゃ駄目だ!団長レベル強烈な救護が必要だ!
- 21二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:43:42
(繰り出される強度の高い救護シールドバッシュ)
(持ち前の鋼の耐久力で耐えつつ「もっと強く」って要求するヒナちゃん) - 22二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:54:30
ヒナみたいな強くて真面目な子がその真面目さゆえに変な性癖の深みに片足突っ込んじゃうの良いよね
- 23二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 12:58:48
存外悪くないって別にあいつらの事が理解できた訳じゃなくて単にいつもより働いてないから楽だって事じゃないのそれは…
- 24二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:02:38
美食研究会の真似をしてフウカを拉致監禁してみるヒナ委員長!?
- 25二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:03:45
これを指示された風紀モブたちはどんな顔をしたのか どんな顔をすれば良かったのか
乱心だー!!!とはならなくてよかったね… - 26二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:06:24
文脈がもうアレなんよ
なんか上位存在とか知的生命体的なヤツが人間の真似事をしてみて共感を試みる奴なんよ - 27二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:11:27
騒いでもどうしようもないからなこの絶対強者相手だと
- 28二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:15:41
- 29二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:22:07
- 30二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:23:48
ヒナは拉致なんてしないからちょっと付き合ってくれないかしら?って普通にアポ取るよ
まあなんやかんやあって美食会に襲撃はされると思う - 31二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:24:00
ヒナ「そっちの5人はここに穴を掘りなさい。温泉は無いけれど温泉を掘るつもりでやって」
(((((????)))))
ヒナ「あなたはこれを持って。そう、私の首輪の紐よ」
(???)
ヒナ「それから私にこれを食べさせて。できれば手掴みで、犬に餌を与えるようにしてくれれば一番いいわ」
(????)
ヒナ「…………分かった?」
「「「「「「了解しました?????」」」」」」 - 32二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:29:37
マゾや美食や温泉に目覚めたわけじゃなく理解するために手を尽くしてるのがなんかこう…つらい…
ヒナ、君もうゲヘナ降りろ - 33二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:44:44
空崎ヒナが時折このような奇行にふけるのを誰にも言わず隠し通す情が風紀モブたちにも存在した…
- 34二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:46:35
流石に無理矢理にでも休ませなきゃ案件になりかねないのでは?
- 35二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 13:57:00
- 36二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 14:01:54
ゲヘナの食堂は異常成長し急速に体組織を肥大化させたパンちゃんに飲み込まれ、
事態を重く見た連邦生徒会によってジャイアント・パンケーキ・モンスターの討伐のための総力戦が開始されることとなる - 37二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 14:03:10
色んな人を理解しようと色々試してみてることで
逆に「私は小鳥遊ホシノにはなれない…」に妙な文脈が生じ始める不具合 - 38二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 14:06:33
まだ美食温泉の真似事してるだけだからいいけど(よくない)
ヒナな武力で一般ゲヘナ生の真似事をし始めたらゲヘナ終了しない? - 39二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 14:12:28
- 40二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 14:18:02
ゲヘナのはぐれ者、アルちゃんの感情を理解しようと思って数少ない休日に便利屋17(ひな)を始めるヒナ!
意図が本当に全く一切分からなくて例の表情になるアルちゃん!
偵察と"挨拶"に送り出されて決死の覚悟でやってくるハルカ!
流れ出すunwelcome school! - 41二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 14:20:04
そういう見方もあるか温泉美食にはやり返してるのかと思ってた
- 42二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 15:00:52
- 43二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 15:26:15
そうだな……影響度のやばさで言えば多分先生に手を出すことだしテロリストの上に置いとくわ
- 44二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 16:20:11
- 45二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 16:36:36
- 46二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 18:34:45
風紀委員長がおかしくなったぞ!今がチャンスだ!
ってしてたら普通に立ち上がって首輪着けたまま普通にボコボコにしてきそうな怖さがちょっとある - 47二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 18:48:41
逆にイオリの足を舐めたり卒アルを眺めたりしそう
イオリは混乱する - 48二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 19:28:12
自分の上司が自分の足を先生のように舐めだしたとか、イオリがガチで困惑してそう
- 49二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 19:32:35
中途半端だなぁ
真にテロリストを理解したいなら一度は治安維持組織と戦わなきゃ - 50二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 19:42:49
風紀委員長を恐れる生徒の気持ちを理解するため空風紀委員長と戦うことにした空埼ヒナ
そして私は風紀委員長とは戦えない...ってちょっと萎びる - 51二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 19:50:14
そんな時こそ便利屋68へ依頼しよう
- 52二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 20:54:05
- 53二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 20:55:44
- 54二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:29:01
そして始まるヒナちゃんによる便利屋ブートキャンプ
終わったころには巡航ミサイルを頭部に喰らっても無傷なアル社長が
(このあと風紀委員を蹂躙します) - 55二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:45:50
取りあえずシャーレに放り込んで先生と1週間生活してもろて…
- 56二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 00:15:23
- 57二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 00:24:20
- 58二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 00:36:17
- 59二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:08:04
困惑の眼差し。何か言おうとしては止める微妙な反応。ゲヘナ風紀委員、銀鏡イオリは極めて複雑な表情で足元を見下ろしていた。
そんな顔をさせてしまっている張本人、空崎ヒナはそれを心から申し訳なく思っている。彼女はせめて害意が無いと伝えるように、イオリの右脚を抱きしめる手にぎゅっと力を込めた。
『脚を抱きしめる』というのは比喩ではない。
ヒナはイオリの前の床に座り、靴も靴下も脱がせた素足を抱きかかえているのである。頬を擦りよせ、手のひらでなぞり、時折踏みつけさせるように足裏を自身へ押しつけながら。思うがまま触れ合っている。
ある種の奉仕のようなこの行為はかれこれ5分以上も続いていた。その間、互いに一言も喋ってはいない。声を出しているのはヒナのすぐ傍に膝をついている1人の風紀委員だけだ。
「……こちら、イオリさんの入学直後の写真です。今とは髪型が違いますね。その横が風紀委員に加入した時の記念写真。その下が今年の夏の……」
固い声で解説しながら、その風紀委員はヒナに向かって広げたアルバムを1枚ずつめくる。収納されている写真には例外なくイオリの姿があった。彼女を中心に据えたものから、小さく写っているだけの集合写真まで。
アルバムの本人の前で、かつ委員長相手に話し続けるのはやはり重圧を伴うのだろう。忠実に命令を遂行しながら、その風紀委員は何度も2人の顔色を窺っている。
「…………」
膝元に寄り掛かりながらヒナは考えていた。過去のイオリに思いを馳せながら、同時に現在のイオリと触れ合う事の意味について。
……脳裏に、銀鏡イオリに対しておかしな執心を見せる人の姿が浮かぶ。
その人はまさにこのような行いを欲しているのだろうか。いまヒナの内側を満たしている感情がその人の琴線を揺さぶるのだろうか。それとも、もっと激しい熱情なのか。もっと冷静な探求なのか。
まだ理解には至っていない。自分には難しすぎる、とヒナは嘆息する。……が、しかし。
「悪くない……いえ。存外に良いものね」
素朴な感想がこぼれた。誰に対して発した言葉なのかはハッキリしない。
「えっ? それは……どうも……?」
ひとまず返答したのはイオリだった。困惑よりも照れの方が勝ったのか、微かに頬を染めている。
……それも良い。素敵だと思える。再確認しつつ、ヒナはもう1度右脚を抱き寄せ直した。 - 60二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:10:33
- 61二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:14:07
ヒナは性癖開発してるだけだよ
- 62二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:16:48
良かった、流石に舐めるまではしなかったんだね
と思ったけど更に倒錯的になってない? - 63二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:21:58
- 64二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:26:38
………まあ人肌に触れ合いながら思い出話するのっていいよね
- 65二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:30:01
相対的に先生のヤバさが浮き彫りになるの笑う
いや元々ヤバいのはわかってたけど、より鮮明になったというか… - 66二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:45:05
- 67二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:46:46
解放っていうか、ヤケクソっていうか…
ここまで来たら正気じゃないんだろうな、SAN値大丈夫? - 68二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:49:32
なんで誰も先生を呼んでないんだ!!!1!!!1!
- 69二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:56:11
わからんぞ 先生を呼んで来たら先生がイオリの左足、ヒナがイオリの右足をさすさすナデナデしながらイオリの良い所を1つずつ言い合うバトルを始めるかもしれない
- 70二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 11:58:05
イオリの性癖が歪んでしまうだろこれ
- 71二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 12:00:14
先生がイオリにした所業が詳細にヒナにバレてるってことでは?
- 72二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 12:50:06
まぁ、足舐めてるのはしっかり見られてたから...(卒アルはしらん)
- 73二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 12:51:59
- 74二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 13:15:23
- 75二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 13:20:57
添い寝
- 76二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 13:22:33
まず服を脱ぎます
- 77二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 14:08:08
- 78二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 14:54:00
ヒ、ヒナ委員長がご乱心だー!?みたいな反応を>>1読んだ後に思い浮かべたけど多分そんなタイミングないわ
説明されて困惑して、実行中も理解が追いつかずたまに正気に戻って出た情報に圧殺されるやつだ
- 79二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 16:21:01
正直風紀モブがしてるみたいな手伝いをしてみたい欲はある
超強くて冷静でいつも過重労働をこなしてる人が稀に行うおかしな戯れに何も言わず付き添ってあげたいよね - 80二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 16:27:50
- 81二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 22:13:06
なんでヒナといい、ホシノといい寝ないんだろう…
寝れない?それはまぁ…… - 82二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 22:17:51
見直しても誰も従わないのであった…
- 83二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 22:31:04
- 84二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 00:21:18
ヒナが抜けた風紀委員と万魔殿がヒナの代わりをしてくれって便利屋に依頼すれば治安はなんとか...なんとか...無理だなうん
- 85二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 00:22:40
- 86二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 09:51:25
便利屋に治安維持の支援を依頼するの割とありな気がするの草
- 87二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 11:49:48
空崎ヒナの手元にあるコピー用紙には『ゲヘナ学園のココが凄い!』と題した文章が記されていた。要点には赤線が引かれ、丁寧にまとめられている。
それを提出した風紀委員の生徒は手のやり場が無いのか、ヒナが内容に目を通している間そわそわと胸元の紐を弄り回している。首輪をつけるのに慣れていない……いや、慣れている方がおかしいというものか。手綱の先端を持つのは当然ながらヒナ委員長その人だ。
「よく書けているわ」
端的な感想を述べつつも視線は部下に向いていない。さらりと用紙を返しつつ、その手は机の端に置かれていたクッキー缶へと伸びた。
「けど、そうね……漢字の割合が多いわ。年少者に配慮していると言い難い。書き直しね」
「……はい。了解です」
「これはご褒美」
四角いチョコクッキーが1枚、目の前にぶら下げるようにして差し出される。同時に、ヒナは首輪の紐を軽く手繰り寄せた。
「あっ……ありがとう、ございます」
顔を近づけさせられた風紀委員は唇で挟むようにしてクッキーを受け取った。高級な甘味を静かに味わうと、彼女は粛々と自分の席に戻っていく。
……その風紀委員と同じ立場の生徒は他にも数人いたが、誰もその光景に疑問を抱かない。不満も口にしない。どころか、それぞれ何かを書き連ねる様子は楽しげである。
何故なら、このような扱いを受ける事はあらかじめ予告されていた為だ。
以前の行為とは逆に彼女たちが給餌じみた褒美を受ける事も。無意味な課題にどこぞの議長を思わせる難癖がつけられ、やり直しさせられる事も。全て織り込み済みだ。
「……誤字が多すぎる。書き直し。それと、これを見なさい」
数分ほど経ち、ヒナは別の生徒が提出した文章に冷徹な評価を下すと引き出しから何かを取り出した。……細い糸とそれで結ばれた5円玉だ。
「貴方は段々ゲヘナへの忠誠が強くなる……。ミスを避けるようになる……貴方は……」
「…………」
どうにもならない。お互いにそう思っていたが、ヒナの内心は少しだけ違っていた。
もしかしたら何かが起きるかもしれない。もしかしたらこれ自体が楽しいのかもしれない。もしかしたらやり甲斐を見いだせるかもしれない。もしかしたら……。
ヒナ自身も揺れる5円玉を見つめ、最善を尽くしていた。理性の隙間から滲み出るこの欲求を、どうか悪くないものとして味わえないだろうかと。 - 88二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 12:02:01
それがやりたいってよりはそれを楽しめる人間になりたいって感じ…?
万魔殿のおかしな奴らに対して恨みじゃなくて羨望を抱いてるのヒナちゃん…? - 89二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 12:07:12
無意味なこと、あるいは端から見て無意味に見えることを楽しむっていうのができないのかも知れないね
- 90二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 12:08:28
なんか、度重なる激務で人間性を喪失しつつあるヒナちゃんが
逆にゲヘナのやべーやつらがやってる事を模倣することで人間性を取り戻そうとしてるように見える - 91二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 12:20:08
想像される絵面と内情の差で頭がバグる
マコトの振る舞いやNKウルトラ計画はちょっとレベルが高すぎるからやめておこうね… - 92二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 20:32:24
お労しい
- 93二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 20:54:21
マコト、お前のせいだぞどうにかしろ(横暴)
- 94二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 08:49:06
でも風紀モブに首に繋いだ紐を持たせてぺたん座りしてるヒナは可愛いな…
顔を覗き込んだら死んだ表情筋とドブのような眼をしてそうだけど - 95ゲヘナバカマコト24/01/27(土) 09:23:39
キキキ…休め
- 96二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 20:59:38
ちょっと慣れてきて戯れに付き合ってる風紀委員たちが物悲しい
結局ヒナは心安らぐ何かを見つけられたんですかね...? - 97二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 21:13:43
このレスは削除されています
- 98二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 21:21:02
- 99二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 21:21:10
- 100二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 21:36:21
ついでに駄犬も呼んでこい
- 101二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 01:44:23
もうミレニアムでトレーニングしたほうがいいんじゃないかなぁ…
- 102二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 07:43:52
- 103二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 07:49:50
ハチの巣を安全圏からつついていたと思ったら女王蜂が爆弾になってたとか流石にマコトもちょっと危険を感じてしばらく嫌がらせやめそう
- 104二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 11:23:54
"えっと。これは一体なに……?"
ここ最近、誰もが口に出来なかった禁断の問い。それをシャーレの先生はいとも容易く言葉にしてみせた。
「どれの事を言っているの?」
対し、先生と肩を並べて座っているヒナは不思議そうな声色で問い返す。
……先生が疑問に思うのも無理からぬことだった。
2人が座っているその場所は路地の片隅に築かれた石造りの建物。あちこちに膝下ほどまでの湯を溜めた足湯なのである。立ち昇る独特な香りは健康的な泉質を思わせる。
そしてどういうわけかゲヘナ風紀委員であろう生徒が1人、先生らの周りを歩き回っていた。時々手に持った一眼カメラのシャッターが切られ、2人の姿を写真に収めている。
止めに、2人の湯船の隣では首輪に繋がれたパンケーキがのんびりと湯に浸かっていた。紫色が徐々に湯の中へ広がって行きつつあるが、咎める者はいない。
"…………やっぱり気にしない事にしたよ。ところでここ、もしかして温泉開発部が?"
「ええ、そうよ。実行犯は全員捕まえたから心配は要らない。明日には解体させるし……」
なるほど、と先生は頷いた。……深く掘り下げないことにする判断は早かった。
重たい事情は感じられず、何より普段は険しいヒナの表情が幾分か和らいで見えたからである。訳を探るより、まずはこの時間そのものを尊重すべきだと考えたのだ。
背後からのシャッター音を聞きながら、先生は最後に一つだけ重要な問いを投げかける。
"……ヒナ。最近はどう? 落ち着いて過ごせてる?"
今この時のような休息は取れているのか。先生はいつもそれを心配していた。彼女が何か限界を迎えようとしているのではないかと案じていたし、この瞬間もその不安は消えていない。
ちゃぷん、と水面が揺れる。濁った湯が波立つ。元々近かった先生とヒナとの距離が、肩が触れ合うほどにまで縮む。
「悪くない、と思う。今も……すごく、その。……落ち着いてる」
目を閉じ、ゆったりと息を吐く姿は誰がどう見ても確信できるほどに安らいでいる。
それ以上の会話は必要なかった。静かに、穏やかに、少し奇妙に。湯気に意識を溶かすように、何も考えず。
正面に陣取った風紀委員が嬉しそうにシャッターを切り、隣の湯船から鮮やかな緑色の泡が噴き上がるのを眺めつつ。先生はやんわりと寄りかかってくる重みを受け止め、一時だけ目を閉じた。 - 105二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 11:34:48
パンちゃんをお湯に浸けるな
- 106二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 11:37:50
先生、気持ちは分かりますが理解を放棄しないでください
確かにヒナ委員長が大分精神的に楽になってるならいい事だけど… - 107二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 11:50:17
とりあえずそのやれる奴全部まとめてやるのやめなさい!1日1個ずつにしなさい!
見てる側の脳がバグるから! - 108二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 12:37:02
風紀モブも楽しそうにしてるあたり風紀委員会は上から下まで全員限界なんじゃ
- 109二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 13:10:56
笑えばいいのかほっこりすればいいのか泣けばいいのか分からねえ
怪文書って奴か… - 110二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 13:53:12
パンちゃん溶けてそうなのにのんびりしてて草
いやコレ大丈夫か?
喜んでそうだからいいのか? - 111二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 17:57:08
>首輪に繋がれたパンケーキがのんびりと湯に浸かっていた
なんか字面がカオスの極み
- 112二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 04:49:37
その湯、毒に侵されてるけど大丈夫?
- 113二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 06:07:04
毒じゃねえ!パンケーキだ!
- 114二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 10:54:40
その時、新たに食堂を訪れた者がいたならばまず自分の正気を疑わなければならなかっただろう。
食堂の中心に風紀委員長たる空崎ヒナが5人いる。内2人が机に突っ伏し、残りの3人が目前の器と真剣に睨み合っていた。
「あの、委員長……じゃなくて、私たち? やっぱりやめた方が良いんじゃ……」
「いいえ。先に食べた2人に申し訳がつきませ……つかないわ。全員で共有する。そうよね?」
「……そのつもりよ」
……少し見ていれば、ぎこちなく会話をするヒナ達の中に本物は中心の1人しかいない事が分かる。周りに座っているのはあの大きな上着を羽織り、長い銀髪のウィッグを着けたごく一般的な風紀委員であろう。
彼女たちが戦慄しながら向き合っているのは汁気を帯びた黒い物質だ。製作者は給食部の牛牧ジュリ、助手として美食研究会の獅子堂イズミが参加している。
元々はどんな料理だったのかさえ判別できないソレに彼女たちは挑んでいるのだ。そして、先陣を切った2人が一口目でダウンしてしまった。
「迷い続けるくらいなら……お先に! ォ"ッ!?」
スプーンを器の中心に差し入れ、迷わずに口へと運んだ勇敢なヒナ……ではなく風紀委員。その背筋が大きく跳ね上がると、椅子の背もたれに上半身を預けて数回痙攣したのち動かなくなった。
「…………」
それでも付き合ってくれた風紀委員に深い感謝を込めた黙礼をすると、本物のヒナは一つ嘆息した。
自分は食事に対して何ら情緒を抱かない人間だと思っていた。美味しい、不味いといった感覚はあるが、根底的にはただの栄養補給としか受け取れない。このまま育って行けば、いつかは味も分からない人間になるかもしれないと。
故に、いま彼女は安心感さえ覚えていた。情緒が激しく揺れ動いている自分に。味覚と嗅覚を中心とした全感覚が目の前のモノを拒んでいる。
「じゃあ、私も行きま……行くから。……けれど、貴方は無理に行かなくてもいい。私達で十分に……」
「いいえ、食べるわ。4人の私がそうしたから、私も同じ」
「……ふふ。じゃあ、ご一緒に」
微笑み合う2人の間には今際の際のような温かくも残酷な空気が漂っていた。
ヒナと、一時的にヒナであろうとした生徒はそれぞれ違う色に変化しつつある物体を口に入れる。
そうして弾け飛ぶ味蕾、遠ざかっていく意識、流れ落ちる走馬灯を共に堪能するのであった。 - 115124/01/29(月) 11:00:23
(正気度と文字に起こせそうなネタが尽きた音)
(誰か代わりにおかしいけどおかしくないちょっとおかしいヒナちゃん書いて……) - 116二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 11:04:37
おかしくておかしい完全に狂ったヒナちゃんの間違いではなくて?
- 117二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:02:44
どれも素晴らしい出来だった。👏
- 118二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:05:22
おつおつ 今までに見たことが無いタイプの奇妙な話たちだった…
ヒナ委員長に休日と幸の多からんことを あとドン引きされてない事を祈る