- 1二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:53:03
「ヴィブロス?まだ寝てるの?」
休日の朝。
ヴィルシーナ、シュヴァルグラン、そしてヴィブロスの三姉妹は休日を合わせて揃って実家へ帰っていた。
久しぶりに皆で買い物でも行こう、という趣旨だったのだが。
部屋から出てこない末妹を気にして起こしに来たのは長女ヴィルシーナ。
姉のモーニングコールを聞いても、ヴィブロスは砂中に潜り込んだ様に布団の中でもぞもぞと起き上がれないでいた。
出かけるのが嫌な訳ではない。昨日の朝までは楽しみで仕方なかった。
朝に特別弱い訳でもない。柔らかな砂色のパジャマの下、細くとも靭くしなやかな腹筋の奥で胃袋が咆哮を上げている。
ただ、起き上がる為のエネルギー、あともうひと押しが湧き上がらない。
『ごめん、ヴィブロス!』
欠けてしまった1人、ヴィブロスのトレーナーに急な出張が入ってしまったのだ。
……一家揃ってのお出かけになぜトレーナーが?という疑問はトレーナー自身が最も首を捻るところだった。押し切られた。
トレーナーの出張そのものに不平を言うほどヴィブロスは子どもではない。
その出張がドバイへの海外遠征──彼女の夢を叶える為のものだと知っているのだから。
ドバイへ挑戦したウマ娘を担当していたトレーナーへの取材とヒアリング。その同行の許可を獲得したと聞いた時は2人で小躍りする程だった。
ただ、タイミングが悪い時というものはある。
それだけのこと。それだけのことなのだが。
みんなでお出かけ。
その想像図にいるはずの1人が欠けてしまった小さな喪失感が、うつぶせになった彼女の背を重殻が乗ったように固めていた。 - 2二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:53:39
既に朝食の準備が始まっているらしく、部屋の外から彼女らの父親が「上手に焼けましたァ!」と機嫌のいい声をあげている。
「仕方ないわね……」
ヴィブロスの朝支度は長い。あまり遅いと皆を待たせてしまう。
強硬策ね、とばっちりメイクを済ませたヴィルシーナがやや躊躇いがちに電話を手にとった。
「……おはようございます。朝早くに──はい、ヴィルシーナです──いつも妹がお世話に──お忙しいところ──はい、それではスピーカー──
ヴィブロス。これでそろそろ目を覚ましなさい」
ひとしきり会話を済ませると、電話をそのままヴィブロスが潜った布団の中に滑り入れた。
「もしもし、ヴィブロス?」
「……え? この、声……!?」
「おはよう。今日は寝ぼすけさん?」
「トレっち──!!?」
スピーカー機能ですぐ耳元に届いた声は、今日聞くことはなかったはずの声。
寝ぼけたヴィブロスにその音は爆弾も同然、普段聞くものより3倍の威力があった。
動揺、喜び、驚き。
布団を跳ね除け、飛び上がる様にベッドの上に立ち上がり──
「みぎゃっ!?」
「ヴィブロスっ!?」
「大丈夫……?」
東窓から降り注ぐ太陽からの閃光が直撃。眩しさに驚いたヴィブロスが布団の上にお尻から墜落した。 - 3二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:54:01
しばらく混乱でもそもそと動いていたヴィブロスが佇まいを直して座り、通話をテレビ電話に切り替える。
心配が半分、特に不健康ではなさそうな様子に安心半分のトレーナーと改めて朝の挨拶を交わす。
「び、びっくりした……おはよトレっち。
今大丈夫なの?朝早いって言ってなかった?」
「今駅だよ、電車はもうすぐ。そっちは──今からが忙しそう、というか」
画面の向こうで朗らかだったトレーナーの表情がにわかに気まずそうに強張った。
「……トレっち?なんで目逸らしてるの?」
「あー……ほら、あんまり寝起きを見ない方がいいかなって」
「……はわ」
まだ寝ぼけ眼だったヴィブロスが目を見開いて硬直した。
テレビ通話の画面端には、自身の姿。
普段長いツインテールにしている髪は後ろで一纏めにしているが、前髪は無防備なまま。
そんな状態で布団の中で直前まで力なく枕に頭を擦り付けていたのだ。
前髪は眉の上で跳ね上がり、2本のねじれた角のようになっている。
いつも綺麗に細くまとめられた尻尾は先端近くでバラけて絡まり、左右に突き出したハンマーめいた悲惨な形になっていた。
「わ、わあー!!?なんでこんな寝癖っ!み、見ないでー!」
「ヴィブロス、声大きいわよ……!あっちは駅の中なんだから」 - 4二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:54:25
乙女として見せられない姿を晒したヴィブロスが悲鳴をあげる。
高級な耳栓でもなければその場で動けなくなる程の大音量。ヴィルシーナも顔を顰め、トレーナーは周りの視線を受けて壁際へ撤退。
2人が改めてヴィブロスに視線を戻すと、未だ彼女は自身の剛角に悪戦苦闘していた。
慌ててワシャワシャと整えようとする手櫛に反逆し、片方は更に毛先で三叉に分かれた凄惨な角と化している。
「あー!!!わー!!!」
「落ち着いてヴィブロス、画面切ったから……」
トレーナーが慌ててテレビ通話状態を切っても、ヴィブロスはパニックのまま。
焦りと羞恥で頬は蒸気を吹いて、そのまま爆発すらしそうだ。
「お姉ちゃんお願いっ!手伝って〜!」
「もう、仕方ないわね」
Dear vlos──目に入れても痛くない可愛い妹のおねだりに姉があっさり屈している間に、電話の向こうから駅のアナウンスが聞こえる。そろそろ、通話を切らなければならないようだ。
「トレーナーさん、お忙しい中ありがとうございました。それとご迷惑をおかけしまして……いえ、こちらこそ。また次の機会にですね。
ほらヴィブロス、早く顔洗ってきなさい──あ、ちょっと!」
ねじれた角を向けて部屋の外へ一直線に突進するヴィブロスが、反転して再び姉の電話をひったくる。
テレビ電話に切り替え、双角の小悪魔がすっかり元気を取り戻した顔を出した。
「トレっち!」
「うん?」
太陽の光をいっぱいに受けた覇王樹の花のように、彼女が笑った。
「いってらっしゃいっ!」 - 5二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:57:25
- 6二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:57:45
イージャンb
- 7二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:58:00
俺は何を読まされたんだろう
とりあえず大剣持って砂漠に行けばいいのか? - 8二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 22:59:05
脳内再生余裕でした
- 9二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 23:07:02
ヴィブロスに一番効くモーニングコールがトレっちで家族にも把握されてる可愛いSS
なのにちょいちょいディアブロスがサブリミナルしてくる - 10二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 23:29:19
関連ワードの散りばめ方がG級のソレなんよ
- 11二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 23:39:34
お父さんは大魔神にしてハンターだったのか…
- 12二次元好きの匿名さん24/01/24(水) 23:57:12
ディアブロスの注意勧告するSSスレ初めて見た
- 13二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 00:15:59
そんな注意喚起スレが幾つもあっても困るわ!
- 14二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 00:18:35
頑丈さならそこらのウマ娘よりも遥か格上だろこれ
- 15二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 00:18:42
タイトル強すぎる
さておきよいSSでした - 16二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 08:09:07
とれとれ市場といいヴィブロスは変なスレからSSが生えるジンクスでもあるのか
- 17二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 08:15:13
素敵なSSだったけどディアブロスファンとしてはもう少しディアブロス要素が欲しかったかな…サボテン食べるとか
- 18二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 08:15:57
良いサボテンでした
- 19二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 09:03:38
モンハン要素上手く使いつつヴィブロスの乙女で可愛いところもたくさん堪能できた素晴らしいSSだった
- 20二次元好きの匿名さん24/01/25(木) 09:14:05
タイトルが完全にディアブロスなのにSSはしっかりウマ娘だった それなのにタイトル要素は全部回収するしモンハンはサブリミナルするしでめっちゃハイレベル