【閲覧注意】今まで、ごめん

  • 1二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 23:21:26

    今まで、ごめん

    お前と、長く付き合いがあったから
    それだけでお前の特別になれたって勘違いしてた
    気持ち悪いと思うけど、俺本当にお前のこと好きだったんだ
    だけど、違った
    お前は俺なんか全然見てなくて…当たり前の幸せを当たり前のように得たんだ
    お嫁さん、綺麗だな
    お前にピッタリだと思う、料理も得意らしいし
    お前も、そんな正装見る機会ないからいつもより眩しく見える
    目に染みるよ、ぼやけちまうくらい

    「ここで、新郎のご友人からお祝いのスピーチをお願いします」
    「えー、」
    先ほどまで拭っていた目元を隠すようにマイクの前に立つ
    声は震えていないだろうか

    「まずは結婚おめでとう、世一」

    さよなら、俺の青春

  • 2二次元好きの匿名さん24/01/26(金) 23:59:14

    お前のファン重いぞ世一〜

  • 3二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 00:19:32

    世一の結婚式で友人代表スピーチ任されたんだ切ねえ…

  • 4二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 00:22:07

    本日の多田ちゃんスレ?

  • 5二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 00:31:13

    世一〜お前のファンお前の友人代表にのし上がってるぞ世一〜

  • 6二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 01:48:04

    そう考えると割と図太くて草

  • 7二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 01:48:34

    潔世一のファンなんだからエゴイストじゃないとな

  • 8二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 04:03:11

    友人代表スピーチを任されただけ凄いことだろうがよぁ!
    ………わりぃ やっぱつれぇわ

  • 9二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 04:36:57

    世一の特別になりたいけど
    自分を特別にする世一は解釈違い…苦しい…苦しい

  • 10二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 04:37:12

    ここは潔のモブ友人になりきる夢スレであってる??

  • 11二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 06:26:29

    自分だとスピーチ任せてもらえる気がしないわ
    せいぜいお友達席の末席も末席な場所で泣きながら拍手とかしちゃって同級生に揶揄われてそれにふざけ返しながらも心が死んでいく同級生Aくらいまでが想像の限界
    なんかギリギリ部活かクラスメイト繋がりで一応潔から招待された程度でしかない関係なのにこっちは死ぬほど情緒ぐちゃぐちゃで人生終わったくらいの衝撃でもらった新婦の趣味丸出しな引き出物見て嫉妬から壊したくても今残ってる唯一の繋がりだから壊せない捨てれない
    そんな気持ちに自分はなりたい

  • 12二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 07:32:44

    お前のファンBSSも拗らせてるのか世一〜

  • 13二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 09:11:23

    自分は未だ未だ全然人間できてないので新婦どころか世一に信頼抱かれて友人代表挨拶任されたお友達にも嫉妬でメラメラしちまうぜ~マジで嫉妬で頭狂っちゃうぜ~頭の中で永遠と誰よその女!誰だその男!がリフレインするんだぜ~

  • 14二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 09:19:00

    バウムクーヘンエンドとは懐かしい

  • 15二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 09:46:55

    見ているだけでよかったんだ
    平凡で取り柄もない俺だったから、最初からお前は眩しすぎた
    だから、つまんねー授業中に見下ろしたグラウンドで輝くお前が嫌だってくらい目についたんだ
    今考えるとサッカー部のお前は、体育の授業なんてガキのお遊びにしか見えなかっただろうな
    それでも軽々ディフェンスを避けていく姿は、当時の俺にとっちゃマジでヒーローに見えた
    それからっていうもの、俺はお前のことが気になってしまったんだ
    届くはずもないのに、サッカー部の練習を遠目に見ながらドリブルで抜いていくお前を応援してた
    ある日ビビりな俺に、転機が訪れた
    いつも通り遠目でお前を眺めていた時
    練習中に飛んできたボールが、俺の足元にたまたま転がったんだ
    返した方がいいんだろうが、蹴るとか投げるとかではコントロールをミスしそうなほどに俺の運動神経は絶望的であった
    どうしようかなと考えた時、お前は俺の目の前にいた
    「拾ってくれてありがとな!」
    そう言って、俺が手に持ったボールを簡単に取り上げていった

  • 16二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 09:54:46

    純愛かぁ……………

  • 17二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 09:55:33

    世一の優しさは興味が無い故だもんな…

  • 18二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 17:00:04

    世一ィ、お前のファン…

  • 19二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 17:44:00

    世一、余興でお前にこの歌を贈るよ

    君から見た僕はきっと♪
    ただの友達の友達♪
    たかが知人Bに向けられた笑顔があれならもう恐ろしい人だ♪

    君を惚れさせる黒魔術は知らないし♪
    海に誘う勇気も車もない♪
    でも見たい♪隣で目覚めて♪
    おはようと笑う君を♪

  • 20二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 17:49:09

    生まれた星のもとが違くたって♪
    偶然と夏の魔法とやらの力で♪
    僕のものに♪なるわけないか………

    世一、ご清聴ありがとうございました

  • 21二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 18:44:59

    初めて間近で見た潔世一は、キラキラしていた
    汗が反射して、本当に後光が差してるみたいだった
    それは思わず瞬きしてしまうほどで、そんな俺を見てから潔世一は一瞬「きょと」としてから再び頭を下げて練習に戻っていった
    思えば、あの時から俺はお前を特別に思っていたんだと今ならわかる
    その後も俺は遠目にサッカー部の練習を見るだけの放課後を送っていた
    たまに飛んでくるボールを返すだけの関係、関係とも言えないほどの構築だけど
    それでずっと満足していた、俺の人生に足りなかった突出をお前が全て補ってくれていると思った
    だけどそのうちそれでは飽き足りなくなってしまったんだ
    お前に滅茶苦茶にされた情緒が苦しくて、愛おしいとか憎たらしいとかがないまぜになってしまったんだ
    だから、またボールが飛んできた時に、俺は初めてお前に対して言葉を発した
    「頑張ってね」
    と、それだけ

  • 22二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 18:50:59

    お前はまた、「きょと」としてから笑った
    「ありがとな!」
    それだけ言って走っていってしまった
    全身の高揚高揚高揚高揚興奮興奮興奮興奮発狂発狂発狂発狂血液が沸騰したように熱くて熱くて熱くて熱くて熱くて
    なので、夏の日差しのせいということにした
    ごめん、ずるいよな、この時から逃げないで気持ちをぶつけていればよかったのかな
    でもそれはそれでお前を困らせて、ヘタしたらトラウマになりかねない過去を植え付けていたかもしれないな
    それはそれでいいな

  • 23二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 19:08:23

    すまん、シンプルに一言いいか

    キモすぎる

  • 24二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 19:13:14

    招待もされてないのに煽りにきたカイザーも余りのキモさに無言になる
    カイザーが黙って世一くんはハッピーになる
    よかったね、潔世一の幸福に寄与できて…

  • 25二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 19:56:30

    こっからどうやって友人代表スピーチできるようになるの?洗脳?

  • 26二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 20:20:51

    ある日、俺はサッカー部の試合を見にいった
    隣に座った三人組の女にドギマギしながら、一人で見た
    いつもは練習しているお前の横顔しか見たことがなかったから、新鮮だった
    サッカーなんて何一つわからないけど、お前は気がついたらゴール前にいて、気がついたらボールを持って、気がついたらシュートしていた
    それくらい俺には何が起こっているのかわからなかった
    だけど、本当にかっこいいと思ったんだ
    あとはもう俺が狂うまで秒読みだったよ
    毎日欠かさず放課後の練習を見にいって、行ける範囲の練習試合は全部見た、体育祭や文化祭でお前が映ってる写真は全部保存した
    人を愛したことがなかったから、それが俺にできる愛情表現だったんだ
    とはいえ、それをお前に伝えたことは一度もないけど
    毎日お前のことばかり考えていた
    毎日お前の顔を思い出してはおかしくなるくらい胸が痛くて張り裂けそうで、だからお前の写真を見て落ち着いた
    何をしているのか自分でもさっぱりわからなくなるくらい、狂った
    でもその時の俺にはそれしかなかったんだよ

  • 27二次元好きの匿名さん24/01/27(土) 20:23:15

    >>24

    わざわざ煽りに来たカイザーも怖いぞ

  • 28二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 00:20:14

    お前のファン狂気を飼っているぞ世一~

  • 29二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 00:58:16

    それから、俺は卒業するまでお前のことを追いかけ続けた
    幸いサッカー以外にまるきり興味のないお前が、必要以上に大きな対人関係を築くことはなかった
    むしろ、日を追うごとにお前とサッカーは親密になっていくように見えた
    俺はある日サッカーという存在ごと大きな嫉妬心を抱いて、一限が始まるずっと前に学校に忍び込んでサッカー部室の鍵に粘土を詰めた
    うちのサッカー部は強いから、部室の中でボールを厳重に管理していることも知っていた
    その日は仕方なく外周や筋トレなどのトレーニングをするお前を見た
    サッカーボールがないお前の魅力は半減だった、残念だ
    そのあたりからだ、クラスのサッカー部員から陰口を言われるようになった
    なんか俺がストーカー?だの嫌がらせ?をしていることになっているらしい
    事実無根である、とてもじゃないが気分は良くなかった
    なんとなく試合や練習を見に行くのは憚られて、だけどお前の姿を見られないのはどうしようもなく苦しくて、ペン型の録音機を買った
    そこそこ値は張ったが、放課後見られないのを思えばこれくらいなんてことない
    移動教室の隙を狙ってお前のカバンにペンを入れておいた

  • 30二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 10:53:49

    自分で練習できなくさせておいてサッカーしない潔残念ってなんだコイツ怖

  • 31二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 13:33:59

    おいカイザー、うるせぇぞ。悲しい話だろうが。

  • 32二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 15:21:13

    ペンは次の日に回収した
    12時間分は録音をしてあるはずだ
    お前がいつも使わないポケットの奥に入れたから開けることもなくバレなかったようだ
    よし、帰ってからパソコンにデータを移してmp3ファイルに変換しよう
    と、思って振り返ったその時だった
    「…え」
    顔面蒼白の、お前がそこには立っていた

  • 33二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 15:24:03

    「なに、してるんですか?」
    血の気を失った顔で、何故か敬語のお前
    「?録音だけど…」
    聞かれたことに素直に答えると、どうやら早く授業が終わったらしく他のクラスメイトも続々とお前の横後ろから俺を覗き込んでいた
    それからの記憶は粗くて、画質が悪い

  • 34二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 15:31:48

    >>31

    悲しい話!?どこが!?

  • 35二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 16:06:54

    うわあ

  • 36二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 16:13:47

    なんでストーカーが友人代表スピーチやってるんだよ洗脳でもしたのか?

  • 37二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 17:36:43

    確か、サッカー部連中に殴る蹴るされて、女の悲鳴が劈くように聞こえ続けていて
    教師が来るまでそれは続いた
    お前は、ずっと怯えた顔で床に腰をへたらせていた
    あ、可愛いなー
    と思ったら、一層強く頭を叩きつけられて視界が白んだ
    ぼんやり熱くなった側頭部が、お前の顔を見た瞬間に少し痛んだ
    こんな暴力を目前にしたら怖いよな、お前は臆病で美しいから
    そのうち二、三人の大人が来てサッカー部連中は俺から引き剥がされた
    すぐに俺は教室に帰されたが、授業内容は何も入ってこなかった
    後でトイレの鏡で顔を見たら頬が切れて血が流れていたので洗った
    時間が経ってなかなか落ちない、何度も何度も何度も何度も何度も何度も擦ってようやく落ちた
    もう日暮れだから家に帰らないと
    早くmp3データにしたお前の声を聞きたいからね

  • 38二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 18:01:14

    教室帰してる場合じゃねぇ!!!!!!!!

  • 39二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 18:32:35

    どれだけ人たらしになった結果だ世一…

  • 40二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 18:32:50

    頼むから反省する素振りくらいは見せてくれ

  • 41二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 18:53:48

    帰ってからペンの中に入っていたメモリを取り外してパソコンに繋げる
    カバンの中だったので音質やノイズはひどかったが、調整すれば幾分か聞きやすくなる
    授業中や部活中の放置されている部分はカットして、ファイルに保存
    できた、「潔世一 1 mp3」
    我ながらいい出来だ、小さいながらにきちんと録音できるあのペンはやはり買ってよかった
    俺は早くもスマホにファイルを移して、イヤホンから潔世一の声を聞きながら眠りに落ちた

  • 42二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:15:26

    世一に狂わされる人多すぎだろ

  • 43二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:23:22

    「ッッッ!!!!!!!!」
    飛び起きた
    体はめちゃくちゃにびちゃびちゃだ
    悪い夢を見た
    首筋に汗が伝う
    まだ暗い部屋の中で、荒い呼吸をだんだん治める
    あー、苦しい
    適当に額を拭って隣を見遣れば、愛するお前がいた
    よかった、ただの夢だ
    再び布団に潜って寝返りを打つと、お前が小さく声を漏らした
    起こしてしまっただろうか
    「…ん、ぅ…」
    心配無用だ、またしても安らかに寝息を立てていた
    もう一眠りしよう

  • 44二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:27:38

    小鳥の囀りに起こされた
    昨晩は嫌な夢を見たが、愛するお前さえいれば俺は大丈夫、だから
    「?、」
    いない
    潔世一が、いないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいないいない
    ???????????????????
    なぜ??????いつから??????どうして??????
    俺は家の中を探し回った、ベッドの下戸棚の裏冷蔵庫の中車の上
    それでも見つからない
    見つからない
    もしかして置いて行かれたのだろうか
    うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
    遠くで叫び声が聞こえる?誰の声だ?
    俺の声だ、あぁ、なんだ俺の声か
    「…っはは」
    思わず笑い声がこぼれた
    何に対して?なの、かな?

  • 45二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:28:52

    世一〜お前のファン怖いぞ〜

  • 46二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:30:54

    えぇ…怖

  • 47二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:39:44

    出オチ友人代表エミュスレかと思ったら狂気のSSが始まってた……何処からが現実で何処からが夢なのか曖昧で読んでるこっちも不安になってくる

  • 48二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:51:07

    意図しない状況で一難高校サッカー部の好感度が上がってしまった
    いや初手暴力はいけないけども...可愛くて気が利く部員がストーカー被害に遭ってたらそりゃもう...

  • 49二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 19:57:19

    夢だったんかい!こいつ本性出し始めたぞって思ったじゃねえか!

  • 50二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 20:02:16

    世一はブルーロックの選手になった
    今じゃ画面の向こうで会った回数の方が多いんじゃないか
    ビール片手にテレビを見て、キラキラしたお前を眺めていた
    切れかけの円形蛍光灯がジジと鳴って、薄暗い部屋に点滅が走る
    お前は、あの時と何にも変わらない眩さで、俺を苦しめて、離してくれない
    お前は、サッカーボールを追いかけてあんなに遠いところまで行ってしまった
    なんでだ?なんでお前は夢を叶えて、俺はこんなところでひとりくたばりかけてるんだ?
    途端に頭の中で何かがバツンと切れて、気がついたらテレビをなぎ倒していた
    「なんで!!なんでお前だけ!!!クソォ!!!!!!!!」
    別にお前の夢がどうなってもよかった
    だけど、あそこまでやったのに、なんで俺だけが報われない?
    「クソ、クソ、クソ………」
    愛していたよ、世一

  • 51二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 20:21:58

    潔と同世代なのにビール飲んでるの草

  • 52二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 20:26:45

    >ビール片手に


    未成年飲酒なのか、そもそも「潔世一と同級生」というの自体妄想だったのか…

  • 53二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:04:14

    「なぁに?いまママのこと呼んだ?」
    ハッとして振り返ると、大好きなお前がソファに座っていた
    「わぁーん、怖かったよー」
    先ほどまで見ていたのは幻覚か何かだったのか、やはり幼い体は不便だ
    日光に照らされて、柔らかく光ったママがあんまり美しいから、俺はママの膝の上に座って、絵本を読んでもらう
    車がいっぱい出てくるやつ
    「これはなにー?」
    ママが僕に優しい声で語りかける
    指差された赤い車の名前を頑張って思い出しながら、精一杯に答えた
    「しょうぼーしゃ!!!」
    するとママはぼくの頭を撫でて褒めてくれた
    「すごいねー!消防車わかるね!」
    ぼくはままがだいすきです
    やさしくて
    さっかーがだいすきな
    ままは
    ぼくのだいじなひとです

  • 54二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:06:40

    今日のホラースレはここですか?

  • 55二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:08:52

    唐突なママスレ…

  • 56二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:15:57

    こあい…

  • 57二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:21:30

    「おーい、おーい、」
    お前の、優しい声がする
    世界が眩しくて、思わずつぶっていた目を開けた
    寝てたのか?こんなクソあちぃってのに…
    「もう予鈴なったぞ!古典の先生怖いから早く戻ろーぜ」
    中庭の木陰で弁当を食べていたはずが、いつのまにか眠ってしまっていたみたいだ
    「…おー」
    なんで寝てたんだっけな?
    さっきまで見てたのは夢だったんだっけ?
    とにかく、世一に追いつかないと
    置いて行かれたら大変だ
    …置いて行かれたら
    「おい!早く来いよー!」
    自分でも気づかないうちに足が止まっていた
    「え?」
    視界の隅から白く淡く解けていくのが見えた
    「おーい!」
    世一が呼んでるから、早く行かないと
    それなのに足が動かない
    世界が泡みたいになくなると、お前もそれに飲み込まれて消えてしまった

  • 58二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:45:13

    気が狂いそうだよ全く
    なんで俺がお前の結婚スピーチなんてしなきゃいけねーんだよ
    あ?友人代表だぁ?
    …ったくしゃーねーな
    俺、やるからにはちゃんとやるから、お前もちゃんとかっこよくしろよ!
    泣いたりしてダセェところ見せたらただじゃおかねーからな!
    気が狂いそうだよ
    なんで俺がお前の結婚スピーチなんてしきゃいけねーんだよ
    友人?友人だなんて思ってんのか?
    ただ画面越しに会ってるだけだろ
    なんでそう謝るんだよ
    ふざけんな!お前は悪くないのに…
    お前は悪くないんだから謝るな!泣くな!
    これからも輝いてればそれでいいんだから!
    頼むから…俺の中でお前を理想でいさせてくれよ…
    泣きてえのは俺だよ
    なぁ、優しくなくていいよ
    輝いていてくれ、お願いだ

  • 59二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:57:12

    ピピピピピピピピ…
    けたたましい目覚まし時計に起こされた
    毎朝これで覚醒しているが、いつまで経っても最悪の目覚めだなと思う
    今日も今日とて二度寝をぶちかまそうとしたら、一階から母親が呼ぶ声が聞こえた
    「今日も学校行かないのー?」
    「…うん行かねー」
    「あらそう、お弁当作っておいたからね、行きたくなったら行きなさいね」
    母親は優しくて、厳しい
    一片の翳りもなく、自分の気持ちを伝えることを全く躊躇わない
    まぁ、それで衝突して父親は俺が中学に入る頃どっかいった
    学校には行かないんじゃなくて、行けない
    あの日、サッカー部員にボコボコにされた俺は保健室の先生にそのままを語った
    そのままスクールカウンセラーを勧められて、過去を洗いざらい話した
    それで終わりならよかったが、周囲が俺を見る目は変わらない
    毎日クラスメイトから「ストーカーだ」とコソコソ言われて、言われてなくても言われているような気がして気がついたら玄関の前で足が竦むようになった
    全て自分が招いたことだ
    潔世一は今ブルーロックで活躍しているらしい
    直接謝りたかったが、顔も見たくないと断られた、当然だ

  • 60二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 21:58:11

    冷たくなった母親の弁当をレンジでチンする
    「いただきまーす」
    ひとりの食事は味気なくて、何気なくリビングのテレビをつけると偶然にもテレビはサッカー中継だった
    「…!!!」
    画面いっぱいに映し出された11番
    潔世一だ
    ゴールシーンのリプレイは何度もお前をアップで映し出す
    居た堪れなくて消そうとした瞬間
    「ストーカーだ」
    テレビの向こうの、お前が言ったのだ
    「ストーカーだ」
    は?ありえない
    「ストーカーだ」
    やめろ…やめろ…
    ストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカー
    途端に頭の中で何かがバツンと切れて、気がついたらテレビをなぎ倒していた
    「なんで!!なんでお前だけ!!!クソォ!!!!!!!!」
    別にお前の夢がどうなってもよかった
    だけど、あそこまでやったのに、なんで俺だけが報われない?
    「クソ、クソ、クソ………」
    愛していたよ、世一

  • 61二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 22:02:16

    >>31

    この時は…この時は悲しい世一ストのスレだと思ってたんだ。

  • 62二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 22:02:23

    ヒェッッッッ……

  • 63二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 22:21:47

    怪文書スレかと思ったらホラースレだった

  • 64二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 22:52:01

    やべえホラースレ見ちゃったな
    潔世一の一生を画面越しに永遠に見続けたいだけの自分にはわからない境地だわ

  • 65二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 23:01:37

    まさかスレタイの「今まで、ごめん」がこんなに重々しい響きになろうとは思わなかったぜ…この狂気が一体どこに辿り着くのか此処まで来ると気になってしまう…

  • 66二次元好きの匿名さん24/01/28(日) 23:26:47

    世一ストの一人として最後まで見届けなければな。

  • 67二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 01:13:16

    とんでもないスレを読んで寝られなくなっちゃった

  • 68二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 03:17:16

    「ママー、ほっぺいたい」
    洗濯物を畳むママのところまで動きにくい体で何とか歩く
    「あら!切れてるじゃない!転んだの?」
    なんで怪我しているのかはなぜだかわからなかった
    だけどここで頷がなかったらもっとまずいことになりそうだったので神妙に頷いた
    ママは薬箱から大きな絆創膏を出してきた
    それからそっとぼくのほっぺたに貼る
    「これでよし、」
    そう言って笑うママはやっぱり世界一美しくて、眩しくて頭が痛くなった
    「ママ、大好きだよ」
    そう言ってできるだけ強く抱きしめる
    ママがどこにも行かないように
    ぼくのことだけを愛するように

  • 69二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 03:22:57

    あの日、俺の父親はいなくなった
    正確にこの日から消えた、というわけではないけど
    元々浮浪癖があって、あんまり家には帰ってきていなかった
    生真面目な母親とはよく喧嘩していた
    俺はそれを聞きたくなくてずっと自分の部屋で閉じこもっていた
    勉強もする気にならないし、かと言って暇つぶしできるような何かを与えられていたわけでもなかった
    最初のうちは怒鳴り声に怯えて布団にくるまっていたが、今となってはもう慣れっこだ
    というわけでとんでもなく暇だがやることはない
    仕方なくどっかから入ってきた蟻の隊列をじっと眺めていた
    気が狂いそうだった
    ので、
    いくつか具体的に妄想することにした
    突拍子もないやつばかり
    だけど、自分で考え始めたのにいつもその妄想の最後は不幸になる
    だから、きっと俺の人生はそうやって終わるしかないんだろうなと思った
    「なんか人生変わんねーかな…」
    変わんねーよ、そう思った時、一際でかい音が聞こえた
    流石に驚いてそっとリビングを覗く
    あ、よかった血が流れてる感じじゃない
    いつも通り父親が母親を平手打ちして出て行っただけのようだ
    嗚咽を上げる母親に、何か言葉をかけたかったが、下手にしてもヒステリックをやられるので心配だったが部屋に帰った

  • 70二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 03:24:57

    サッカー部連中に殴る蹴るされて、女の悲鳴が劈くように聞こえ続けていて
    教師が来るまでそれは続いた
    お前は、ずっと怯えた顔で床に腰をへたらせていた
    あ、これやばいことしたな
    と思ったら、一層強く頭を叩きつけられて視界が白んだ
    ぼんやり熱くなった側頭部が、お前の顔を見た瞬間に少し痛んだ
    罪悪感なのだろうけど、それを抱くだけの権利もない
    そのうち二、三人の大人が来てサッカー部連中は俺から引き剥がされた
    すぐに俺は保健室に連れて行かれた
    病院に行くことを勧められた
    切れた頬に流れた血を拭って大きな絆創膏を貼られる
    申し訳なかった
    自分がこんなにおかしいだなんて知らなかった
    ボコボコにされないと気づかないほどおかしかったなんて
    とんでもない羞恥後悔絶望自己否定屈折憂鬱悲壮感暗澹愚鈍嫌気惨烈不安侮蔑汚辱希死念慮希死念慮希死念慮希死念慮etc...
    に見舞われて脳がパンクした結果少し吐いた

  • 71二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 03:34:13

    俺は後悔の念に毎晩毎晩苛まれて眠れないか嘔吐しているかのどちらかで日々を埋めていた
    でも最近ようやく布団に入ってから、少し落ち着く方法を見つけた
    あれだ、親が喧嘩していた時によくやっていた暇つぶし
    高校生にもなるとやたらとストーリー性のある妄想が増え、妄想だというのに起承転結のディテールにこだわるようになった
    そんなことばかりしていたある日
    お前が結婚したという話を知人伝てに知った
    頭の奥で何かが爆ぜたが、極めて平静を装った
    そしたらお前が俺に友人代表スピーチをやってくれと頼んできた
    今まで友達も少なかった俺はそんな経験初めてで、困ってしまったが大切な友人の結婚式なのできちんと受けることにした
    ということで、お前が帰ってすぐに俺はスピーチの原稿を書き始める
    書きたいことが多すぎてまとまらなかった
    スピーチってあんまり気が狂うとか言わない方がいいだろ、書き直し
    何度も書き直しているうちに、何をしていたのかわからなくなったのでその日は寝た

  • 72二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 04:05:04

    なんか怖いしヤバいんだけど読んじゃう…
    一種の才能では?

  • 73二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 04:05:51

    このssからはある種の怪奇幻想小説的な何かを感じる
    話が転調する感じとか

  • 74二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 04:33:28

    何度も書き直す
    お前への手紙
    謝罪文なのか?
    いや、これは友人代表スピーチだろ
    でもスピーチの原稿には書かないことも書いてるな
    どっかで間違ったな、書き直そう
    右手で紙を掴んでぐちゃっとやる
    すると紙がぼろぼろに溶けて水のようにどこかへ流れていくのだ
    なので片付ける必要がなくて楽だった
    便箋はまだまだあるから、何回でも書き直して大丈夫
    お前の大事な結婚式なんだから、納得できるものが書けるまでは筆を執り続ける
    あぁ、お前はどんなに美しくて眩しい姿で愛する人と結婚するのかな
    お前に愛する人がいるのは嫌だな
    いかんいかん、集中しないと
    それにしても難しいな、謝罪文っていうのは

  • 75二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 04:36:53

    そのうち目が疲れてきたので今日はここまでにすることにした
    もう途中から何を書いているのかよくわからなくなったのだ
    文字のようにも思うし、絵を描いた気もするし
    何となく気になったのでテレビをつけてみた
    あ、今日もサッカー中継だ
    ストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカー

    ブチン
    電源を引っこ抜いた

  • 76二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 05:48:54

    どうしたらお前を傷つけないでいられる?
    どうしたらお前の気持ちを救ってあげられる?
    どうしたらお前の本心を聞き出せる?
    どうしたら痛くないところのギリギリで踏みとどまれる?
    お前が踏み込まれたくないところを避けることはできないのか?
    たとえば踏んでいいところと悪いところがあるとか
    踏み外したら下にいる鰐に食べられる
    ハハ、小学生の横断歩道かよ
    パッポー、パパポー、半音下がって間抜けな音を思い出した
    目の前が白黒してくる
    昔見た漫画やテレビや映画のシーンがまるで走馬灯のように過ぎって、莫大な情報量に気持ちが悪くなった
    俺は人の気持ちが考えられない
    その人に最も一番最適な言葉がわからない
    あぁ頭痛が痛いああああああああああああああああああああああああ
    今のままではへたくそな言葉でお前の心臓を内側から食い破ってしまう!
    虫のように這いずって取れないようなトラウマを植え付けてしまうかもしれない!
    ぞわぞわした感覚
    俺はテーブルの下で組んだ見えない自分の足に百足や蟋蟀がいっぱい這っているような錯覚をした
    あまりにも具体的に画が想像できたせいでそれが現実ではないかと一瞬間違った、めちゃくちゃ怖くなった
    焦ってちゃんと目視すればそこには当然なにも這ってなどいない
    頭の中ではさっきから調律の狂ったクラシック音楽が何曲も重なって流れ続けている
    あっ、今交響曲第五番と月光と革命のエチュードが目立って聴こえます
    そうしているうちに次はしまじろうのわおが
    俺は完全に錯乱していた
    頭の中のうるささが200デシベルを裕に超えていた
    自分が言葉を間違ったら、お前は人と関わるのを怖がって、そうしたら

    そこまで考えてやめる、頭がぼーっとした
    気が付けば息が上がって脂汗が滲んで目じりに涙が溜まっていた
    人間関係って難しいな、と思いながら疲れた俺はその日の夜を終えた

  • 77二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 12:47:57

    こわい
    保守

  • 78二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 17:41:25

    途中からサイコホラーになってて草生えない

  • 79二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 17:52:04

    「将来何かやりたいことはあるの?」
    保健室の先生は唐突に尋ねた
    ずっと家にいるわけにもいかなくて、たまにこうして保健室で与えられた課題に取り組んでいる
    「小さいときは、車に乗る人になりたかったです」
    俺は課題から目を逸らさずに答えた
    「車ね!素敵じゃない!」
    背後から希望に満ちた瞳を感じた
    「どんな車?」
    俺はずっとxの値がわからなくて同じところをやり直している
    「消防車です、消防士にはなりたくなかったから途中から言うのやめましたけど」
    あぁ、ここ変形の途中でマイナスになるじゃん
    「大丈夫よ」
    「は?」
    柔らかな声色で、突然人が変わったのかと思い振り向く
    そんなはずもなかった
    「なれるわ」
    ふわふわの、先生が
    「きっと、できる」
    甘いにおいで、近づいてきて
    「…ぁ、」
    それからどうなったかは覚えてない

  • 80二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:01:01

    起きたら、夢の中にいた
    ふわふわと手足が無重力感をまとい、薄い桃紫のわたあめみたいな雲が浮いている
    金平糖が空から降っては流れて消えていく
    せっかくだから願い事を何か考えたけど、特に何もなかった
    きらきらした音のオルゴールで子守唄が流れていて、夢の中だというのに眠りそうになった
    心地いい場所だ、ママはいないのかな
    あ、ママがいる
    重みを感じない足取りで、なんとか進んでいくとママは笑っていた
    「おいで」
    あー、俺のマリア
    俺を懐妊した時、天使のラッパが鳴ったのだ
    包み込むようにママが俺を抱きしめてくれる
    あの時みたいな甘い甘いにおいで、鼻腔の奥が痛くなった
    「…めぇえ」
    ママの瞳孔が、よく見ると真横になっているのに気づいた
    「あは、ひつじだ」
    もしかして眠らせてくれるのかもしれない
    もう、寝たかった

  • 81二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:12:15

    今日はやたらと冷える
    こんな時はイヤホンでガンガンお前の声を聴く
    暖房と同じくらい暖まるし、心の底が踊りたくなるのでとりあえず服を脱いだ
    目の前がチカチカしてきて最高に楽しい
    24分のお前が友達と放課後に会話するシーンが大好きだ
    何気ない場所でも、やっぱりお前は美しいから適当に切り取るだけで様になる
    手足が痺れるほどに痛んで、あー効いてきたなと思った
    最高だ…この瞬間の為に生きているんだ…
    視界が狭まってきて、もくもくの雲がいくつも目の前に吐き出された
    この35分の家に帰ってから独り言呟いてるお前は滅茶苦茶興奮する
    気持ちが昂って、心臓がバクバクなって壁を力いっぱい殴った
    あんまりにも気持ちいいから怖くて逃がそうとしたのだ
    ついでにこの興奮も早く抑えたい、窓も全開に開けた
    涼しい風が吹いて、幾分か気持ちが落ち着いた
    49分、お前が晩御飯だと母親に呼ばれて返事するシーン
    一言一句会話の内容はたどれる、何万回と聴いたからね
    それでも全く飽きない、お前の声は美しくて聴くたびに違う色を持っている
    あぁ、虹色、虹色、れいんぼー

  • 82二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:21:24

    世一ぃお前のファン……世一~

  • 83二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:26:52

    このレスは削除されています

  • 84二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:37:27

    このレスは削除されています

  • 85二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:40:11

    「?あれ」
    起きると病院のような、場所にいた
    と、いうか、病院か?
    真っ白な空間に四方を仕切られていて、その内装はどう見ても病室だ
    周りを見渡すが、特に変わった様子はなかった
    とりあえずナースコール押そう、もしかしたら俺が起きるのを誰かが待っているかもしれないし
    「…ッ!」
    指の皮がぼこぼこで、おかしな色をしていた
    おまけに痛んでなかなかボタンを押すだけの力が入らない
    なんだこれ、気持ち悪…
    どうにかこうにか押し込んで、誰かが来るのを待った

  • 86二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:40:28

    すぐにぱたぱたと足音が近づいてきて、断りと共にパーテーションが開けられる
    背の低い看護師が来た
    あとは、なんか長たらしい説明やら、なんやら受けた
    びっくりしたのが、凍傷で救急搬送されたのにここが精神病棟だと言うのだ
    「え?なんでですか?」
    思わず驚いて聞いてしまうと、看護師は「きょと」としてから気まずそうに説明した
    端的に言うと俺がおかしいと伝えたいみたいだった
    聞いてるうちに吐きそうになってきたので、皆まで言わさず「もういいです」と遮った
    このやたらと閉鎖的な感じは、精神病棟と言われるとなかなか納得した
    背の低い看護師は部屋の説明をしてくれた
    ここにはこれがあって、あの時間にはこれが使えて、それはああいう役目で
    入院なんてしたことなかったから、その情報自体は新鮮で面白かった
    「もし何か困ったことがあったらいつでもナースコール押してくださいねー」
    にこっと笑んで、一礼してからパーテーションの外へ行ってしまった
    そういえば、誰が救急車を呼んでくれたのかな
    「俺だよ」
    左側、に突然現れたお前に驚く
    「びっくりしたよ、あんなに寒いのに窓なんて開けるんだから」
    ごめんごめん、と俺は体を起こして謝る
    「俺が来なかったらどうなってたことか…」
    お前はリンゴの皮を丁寧に包丁で剥いていく
    「もうこんなことしないでね」
    お前はふと、手を止めて俺の目を見た
    その眦には、こぼれそうに涙をしたためている
    それを見て俺は、もうお前を泣かせたくないなと思った

  • 87二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:40:46

    「どなたと話してたんですか?」
    「えっ」
    気がつくと先ほどの看護師が右側にいた
    「すみません声かけたけど返事がなかったので入りました」
    何か伝え忘れか、薬の時間とかで来てくれたんだろう
    「あぁ、すみません」
    今俺誰かと話してたんだっけ?
    そんなような気もするので、とりあえず周りを見渡すが、看護師以外そこにはいない
    「これご家族の方が持ってきてくださってるものです、ここに置いておきますねー」
    ベッドサイドの棚に、タオルやら着替えやらが置いていかれる
    「あの…救急車呼んだのって…」
    作業する手を止めずに、看護師は言った
    「お母様ですよ、ちょうど帰ってきたタイミングが良かったみたいです」
    「そうですか」
    とてつもなく無機質な返事が出た
    しかしまぁ、母親がここにはいないということは面会拒絶か何かなのだろうか
    「また何か困ったら呼んでください、あと一時間後には食事になります」
    あぁ、やっぱりいい声色だな
    「ありがとう」
    甘いにおいに、後光をまとったお前がパーテーションの外に行くのを止められなかった
    患者って無力だな
    いや、お前の仕事を邪魔しちゃ悪いからいいや
    それでも、後で配膳に来るのがお前だったら良いなと思うことくらいは許してくれ

  • 88二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:49:30

    それから打って変わって、お前との生活はこの狭い病室で完結するようになった
    少し前までは学校はじめ、マイホームや夢の中でも会っていたが、今はもう真っ白なこの部屋しかない
    それもそのはず、俺がここから出るのを禁じられていてまともに行動ができないのだ
    しかし、そんな俺にも優しくしてくれるお前が俺はこの世で1番美しいと思う
    その後俺はサッカー部連中に殴る蹴るされて、女の悲鳴が劈くように聞こえ続けていて
    教師が来るまでそれは続いた
    お前は、ずっと怯えた顔で床に腰をへたらせていた
    あ、これやばいことしたな
    と思ったら、一層強く頭を叩きつけられて視界が白んだ
    ぼんやり熱くなった側頭部が、お前の顔を見た瞬間に少し痛んだ
    罪悪感なのだろうけど、それを抱くだけの権利もない
    そのうち二、三人の大人が来てサッカー部連中は俺から引き剥がされた
    何となく気になったのでテレビをつけてみた
    あ、今日もサッカー中継だ
    ストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカーだストーカー

    ブチン
    電源を引っこ抜いた

  • 89二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 18:55:55

    あ、そうだ、お前に手紙を書かなければいけないのだった
    お前はもうすぐ結婚するから、俺が代表でスピーチをしなければいけない
    「なぁ、何を書いたら良いと思う?」
    いつも通りの時間に掃除に来てくれたお前に聞いてみる
    「何がですか?」
    「結婚式のスピーチだよ、お前の」
    ピキッと時間が一瞬硬直した
    「書けば書くほどわからなくなってさー、俺文章書くの苦手なんだよな」
    お前は「大変ですね」と苦笑いした
    いくら敬語じゃなくていいと言っても、患者さんは大切にしてますからとか言われて未だに敬語を使われているのだった
    スピーチに呼ぶくらいの友達なんだから、えらい人とかの前じゃなければいいじゃないかと思うんだけど
    まぁお前は真面目だから、そういうところも俺は好きだし
    今日もペンを握って紙と向き合う
    どれくらいここにいるのかはわからないが、手足の痛みはもうずいぶん良くなった
    「失礼しまーす」
    掃除が済んだらお前はまた違う病室に行く
    この短い時間が、俺にとってのオアシスなのだった

  • 90二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 19:16:34

    遂にカイザーが言葉も無くしてて草

  • 91二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 19:37:00

    おっふ…

  • 92二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 19:39:32

    その文才を別の場所で生かそう…な?
    今ならまだ戻れ…ないわ

  • 93二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 19:49:56

    この怪文書というか物語のジャンルはなんだ?ホラーミステリ?

  • 94二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 20:27:05

    潔成分が足りない

  • 95二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 20:30:47

    生々しい感情の渦と夢十夜のような酩酊感が同時に漂ってて本来の視点が何処なのか読んでる側の脳も揺さぶられる
    メインの人格は潔のクラスメイトなのか、それともそれすらも幻覚なのか…

  • 96二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 20:39:26

    どこから妄想でどこまでが本当なのか…

  • 97二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:16:23

    だけど、気づいてしまったんだ
    お前が別の病室に行くということは、別の人間と話しているということではないか?と
    別に今までの単なる友人関係であればその点に文句はないが、お前はもう俺のママである
    しかも代表のスピーチまで任せるほどの友人だ
    それなのになぜ、お前はそうやって他の患者の相手もするんだ?
    怒りというよりも疑問だった
    だから単純に気になって、聞いてみようと思った
    最近は調子がいいので院内の散歩などは許可されている
    元気になったところも見せたいし、ナースステーションまで歩いて行ってみることにした

  • 98二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:17:01

    しかしお前はそこにいなかった
    なので、あの時の背の低い看護師に尋ねてみた
    「あの、潔世一はどこいますか?」
    「え…?わからないです」
    「あ、そうですか、すみません」
    何度か話したことある看護師には手当たり次第声をかけてみたが、誰も知らないと言うのだから驚いた
    同僚の居場所くらいは把握していろよ
    それにしてもでかい病院だ、都会の真ん中に建てられている割には院内に緑も多くて落ち着く
    もしかしたら普段は別の棟で働いているのではないかと思って内科や整形外科まで歩き回った
    久しぶりの運動で疲れたので、中庭のベンチに座って休憩していた
    すると、いたのだ
    潔世一が!!!!!
    しかしどうやら数日前の様子とは違う
    足を引きずって歩いているのだ
    俺は心配になって疲れていたことなど一瞬にして忘れて駆け出した
    「おい!どうしたんだ!」
    お前は驚いて振り返る
    突然大きな声を出したから当然だ
    それから目を大きく見開いて何歩か後ずさった
    しかし、脚を痛めているようでその動きはぎこちない
    「脚怪我したのか?」
    今度は優しく尋ねる
    それでもお前は固まって何も言わなかった

  • 99二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:17:24

    お前はサッカーをしているから、大方それで負った怪我なのだろうとは予想できたが、やはりコミュニケーションは大事なので聞いてみる
    「…ぅ、あ、……」
    なぜか恐ろしいものでも見るように俺を見つめるから、顔に何か付いているのかと思って拭ってみる、何もない
    では後ろにクマでもいる?当然いない
    「見かけないから心配したんだぞ、でも無事ならよかった」
    俺がその頬に触れるか否か、の時だった
    「うわああああああ!!!!!」
    お前は突然絶叫した
    周囲の人がなんだなんだと集まってくる
    俺は驚いて反射的に身を引いた
    しかし、お前の目に映るものには見覚えがあったのだ

  • 100二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:17:43

    あ、可愛いなー
    と思ったら、二、三人の大人が来て俺は潔世一から引き剥がされた
    すぐに俺は教室に帰されたが、授業内容は何も入ってこなかった
    後でトイレの鏡で顔を見たら頬が切れて血が流れていたので洗った
    時間が経ってなかなか落ちない、何度も何度も何度も何度も何度も何度も擦ってようやく落ちた
    もう日暮れだから家に帰らないと
    早くmp3データにしたお前の声を聞きたいからね

  • 101二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:20:02

    とんでもないとこ…入っちゃたぞ…世一ぃ(泣)…

  • 102二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:31:14

    俺はいつから結婚代表スピーチの原稿を読んでいると勘違いしていた…?

  • 103二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 21:34:17

    カイザー泣いちゃった

  • 104二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:03:40

    文字と文章がゲシュタルト崩壊する…

  • 105二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:04:53

    病院の潔は本物…?それとも幻覚…?
    こあいよお…

  • 106二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:26:23

    次の日、あの背の低い看護師が来て怒られた
    別の患者さんにあまり手を出さないで欲しいとのことだ
    手を出した…って友達だからよくないか?と思ったけど飲み込んだ
    「相手が嫌だと思ったら、そのつもりがなくても加害者になっちゃうんですよ」
    と言われて納得したからだ、だから、その代わりに素直な気持ちを伝えた
    「俺、ちゃんと謝りたいです」
    嫌な気持ちにさせたこと、怖がらせたこと
    今思えば…そうだ、高校生の時から結局謝れていないのだ
    そうだ、そうだ、顔も見たくないって言われたんだった
    「会って話すと、また怖がられちゃうから、手紙を書きたいです」
    当時のことを思い出すと、まばたきもしていないのにぽた、と涙が机に落ちた
    看護師さんは俺の背中をさすってくれた
    今まで自分がしてきたことと現状が初めて結びついて、空白の期間が途端に戻ってきた

  • 107二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:26:46

    後日、定期検診で俺は回復傾向にあることを伝えられた
    現実との境目が以前よりわかるようになり、妄想で補っていた過去が少しずつ戻ってきているということだ
    それと、少しずつ文章の練習も始めた
    今見返すと自分が手紙だと思って書いていたものはどれも文字として成り立たない何かを書き殴っていて、自分ですら恐ろしく感じたのだった
    長らく人として生きてこなかった自分の字はとてもではないが読みにくく、どうしてもぐにゃっと潰れた感じになるのが気に食わなかった
    それを伝えたら看護師さんが子供用のひらがなドリルをくれた
    とにかく、潔世一にきちんと謝りたかった
    とりあえず健康になろうと思い、毎日ナースステーションまで歩いて挨拶するようにした
    それから中庭に座ってたまにお前を探す
    遠目で見られた日はラッキー、だけど決して話しかけはしない
    それが俺にできる、お前との適切な距離の取り方だった
    そうして、段々過去と妄想の癒着がなくなってきた頃、俺は本腰を入れて手紙を書き始めることにしたのだ

  • 108二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:27:05

    そして、今日進展があった
    いつも通り散歩した後に中庭で光合成していたら、運がいいことにお前を割と近くに見れたのだ
    だがしかし見つめると怖がらせてしまうから、あくまに気に留めず雲の数を数えていた
    それでもふと視線を戻した時にたまたま目が合ってしまったのだ
    しまった、と思ったが、なんとお前は俺に小さく会釈をしてくれたのだ
    その後は早足に去っていったが、俺にとっては大きな成果だった
    この頃ようやくマシな文章が書けるようになってきて、手紙が完成したら渡してもらおうと思っていたのだ
    久しく感じていなかった温かみのある喜びに、人間としての自分が帰ってきたような気がした

  • 109二次元好きの匿名さん24/01/29(月) 22:44:37

    お、まともになってきてるやん

  • 110二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 00:30:07

    怖い人がいるんだなー
    なぁ!潔もそう思うよな!
    お前のことは俺が守ってやるからな!

  • 111二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 02:29:18

    >>110

    虚空を眺めて喋っとる…

  • 112二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 11:35:44

    怖すぎ 尊敬する

  • 113二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 12:05:49

    そして、ついに俺は記念すべき一通目となる手紙を出すことにした
    まだ自分の気持ちを伝えるには文章力が足りなかったので、とりあえず簡潔に
    まるで小学生みたいに震えた文字、まぁ読めないことはないだろう
    「とつぜんはなしかけて ごめんなさい」
    これだけ書かれた手紙、手紙とも呼べるか定かではないが
    いつも来てくれる看護師さんに、渡しておいてくださいと頼んで預けた
    直接会いに行くのは気が引けるし、受け取ってもらえなかったら結構悲しいから
    だからせめて、読まなくてもいいからお前の手元にあって欲しいと思った
    今日はものすごくいい天気だ、雲ひとつない青空で、鳥が二羽飛んでいった
    思わず笑みがこぼれた
    どうにか、お前との距離がただの人間同士になりますように
    そう思って目を閉じて祈るのだった

  • 114二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 12:15:23

    それからも俺は手紙を出し続けた
    読んでくれているのか定かではないが、遠目にすれ違うと会釈してくれるようになった
    二通、三通、と増えていくにつれて、使える言葉も増えていく
    自分が言いたかったことを表せる適切が語彙を見つけると嬉しくなった
    裏の花壇のパンジーが咲いたこと、窓を開けたら心地よい風が入ってきたこと、晩御飯が美味しかったこと
    なんでもよかった、とにかく素敵だと思ったものは全てお前にあげたかった
    この世で何より美しいから、この世の美しいものをかき集めてお前に飾りたかった
    それでも足りないくらいに眩しいから、俺はお前のことが好きなんだ

  • 115二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 12:50:40

    これはハピエンの予感?

  • 116二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 13:16:37

    このレスは削除されています

  • 117二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 16:37:25

    世一のファンってアンチより厄介な人多いな?

  • 118二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 18:18:52

    もう何通目か数えるのをやめた頃、俺は退院できることになった
    通院を続け、薬を飲みながらではあるが少しずつ元の社会に戻れるようにと病院もサポートしてくれるらしい
    俺は手紙を書くのをやめなかった、通院のたびにあの看護師さんに声をかけては「渡しておいてください」といつも変わらず伝えた
    毎日、よからぬ妄想とか頭痛とかで苦しいのは変わらない
    未だにサッカー中継は観られないし、薬がないと眠れない
    だいぶ良くなったが、とても健康的な生活とは言い難かった
    それでも、やっぱりお前に書く手紙は喜ばしいことだけをしたためた
    お前がいつかほんの少し気が向いて、俺の手紙を読んでくれるときがきたら、悲しくなって欲しくないから
    お前は優しいから、俺みたいな人間でも辛いと言えば同情してくれるかもしれない
    だからこそ、書かない
    お前にはずっとずっとこの先も、幸せで笑っていて欲しいんだ
    そんな日常を過ごし、俺が支援者施設に入ったあたりでのことだった
    「お返事、ありましたよ」
    「…ぇ?」
    差し出されたのは、白い封筒だった
    飾り気のない見た目で、ただ確かに、そこにはあの日から忘れもしないお前の筆跡で「潔世一」と書いてあったのだ
    「良かったですね!」
    看護師さんは、笑ってから頭を下げてどこかへ行ってしまった
    俺はまだ心がここに帰って来ず、だけど帰らなければいけないのでどうにか歩く
    完全に魂が抜けてしまった
    「はぇ…?」
    帰り道もずっと、宇宙について考えるネコとおんなじ顔で今を考察していた

  • 119二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 18:19:13

    家に帰る
    手を洗って、顔を洗って、部屋着に着替えて、ベッドサイドに座る
    母親は仕事からまだ帰ってきていない
    カバンからお前の手紙を取り出して、読むことにした
    ゴク、と喉が鳴って、手が震える
    シンプルで、罫線が引かれているだけの便箋にはこう書いてあった
    「いつも手紙ありがとう なかなか返事できなくてすみません」
    これだけ
    これだけ?こんなに
    お前がこの文章を書くために、俺のために割かれた時間が、最高に嬉しかった
    心臓がバクバク高鳴って、涙がぼたぼた落ちてくる
    お前からもらった手紙を汚したくなくて急いでしまった
    それから毛布の中で暴れた
    うわー、やばい、なにこれ、しあわせ
    妄想ではなく世界が発光しているように見えたのは初めてだった
    もしかして、俺また見えないものが見えているのか?だけど昨日も今朝もきちんと薬を飲んだぞ
    少し怖かったが、テレビをつけてみる
    やっていたのは午後のバラエティニュース番組だった
    時刻は「21:15」
    どうやら現実みたいだ!!!!!
    ウッ、ウワーーーーー…
    頬がめちゃくちゃに赤くなるのを自覚できた
    俺は早く返事したくて、暴れるのをやめて机に向かった

  • 120二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 18:52:47

    それからは毎日が楽しかった
    色んな場所で活躍しているお前だから、返事がくることは滅多になかったが、確かに届いている事実が何より嬉しかった
    俺は相変わらず、ささやかな喜びでお前への気持ちを閉じ込めた手紙を通院のたびに送る
    高校生の時に感じていた好意をようやく順当に、歪曲せずに、受け入れられるようになった
    薬もだいぶ減った、支援施設でもやれることが増えてきた
    何より、テレビをまともに観られるようになった
    サッカー中継は流石に避けているが、何を見てもトラウマもんだった液晶媒体は今や凶器になり得ない
    お前は国内リーグでルーキーとして名前を馳せ、アジア大会ではハットトリックを決めた
    なにひとつ変わらない輝きに俺はものすごく安心したのだ
    ちなみにお前からもらった手紙はきちんと鍵付きの戸棚にしまっている
    つらくて眠れない時はたまに読み返して、お前を感じて、きゅっと抱きしめた
    野良猫の集会に立ち会い、これを今度は書こうと思った日の病院で、運命は変わる
    「これ渡しておいてください」
    最近は便箋も色々変えたり、ガラスペンやシーリングワックスを使ってみたりと趣向を凝らすようになっていた
    「お返事いただいてますよー!」
    いつもお世話になっている看護師さんにそう言われ、胸が高鳴った
    いつまで経っても、お前が返事を書いてくれるのは慣れなくてドキドキする
    長くはなくても、決してテキトーな加減ではないとわかるから、大好きだった
    封筒を受け取り、帰って読むのを楽しみにした

  • 121二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 18:53:17

    「あなたの言葉が好きです よかったら友人代表スピーチをしていただけませんか?」
    という手紙と、添えられた招待状
    「けっこん…」
    デザイン自体はシンプルだが、金のフチで飾られたそれにはお前らしさが詰まっていると思った
    正直複雑と言って差し支えない感情だった
    お前のことが大好きだから、お前が結婚を選んだ人を目前にして自分がどうなるのかあまり想像ができない
    だけど、それを補って余りあるくらい、「言葉が好き」と言ってもらえたことが嬉しかったのだ
    一番お気に入りのペン、深い青色のインクで「出席」に丸をつけた
    あぁ、お前もついに結婚するのか
    年齢的には何もおかしくないし、アスリートともなれば出会いも人並み以上にあるだろうから、それは至って自然なことなんだと思う
    それでもお前の顔を思い出すと、あんまりそんな俗っぽい言葉と結びつかないのだ
    どこまで行っても、お前は俺にとって太陽みたいで、月みたいで、代わりない存在だから
    そんなお前が、誰かと誓いを交わすのがどうしても胸に閊える
    だけど、そんな気持ちはもらった手紙を読み返せばすぐに飛んでいってしまうのだ
    「あなたの言葉が好きです」
    確かにお前の筆跡で書かれたそれが、自分に宛てられていることにどうにもときめいて仕方なかった
    素敵なスピーチにしよう、絶対に

  • 122二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 19:12:20

    後々報道で知ったことだが、お相手は一般女性とのことだ
    詳細が出ているわけではないが、若手アスリートの結婚はマスコミ的にも大々的に取り上げている
    交際期間に、馴れ初めなんかは俺もテレビで見たくらいだ
    毎日スピーチ原稿を考えている
    よくよく考えたら、スピーチなんだから大勢の前で話さなければならないのだ
    お前のことだからものすごく大規模な式にはならないだろうが、人前に立つという経験をしたことがないので何人だってもはや変わらない
    なんなら、お前と顔を合わせるのもまだなのに
    やれんのかな、と弱気になりそうだったが、お前が俺を選んでくれたんだから、頑張ろうと思った
    しかし数分後には自分が大勢の前で話している場面を想像して胃が痛くなる…のを繰り返す
    その合間に机に向かっては、お前のことを考えながら汗ダラダラでスピーチ原稿に向かうのだった
    それにまだ、閊えた気持ちが解消されたわけではない
    お前が愛した人、きっと優しくて丸くて小さくてふわふわで素敵な人なんだろう
    「あー…」
    本音を言っていいなら、ほんの少し悔しがっても許されるかな
    別に可能性があると思っていたわけではないけど、お前と恋愛ってなんとなく結びつかない気がしていた
    そしたら突然、「結婚します」と言われて、端的に言えばまだ心が追いついていないのだ
    想像の中で笑うお前の隣に、あれから知らない女の人がずっといる
    それがなんだか悲しくあった
    そんな自分のことは、これからもずっと許せないだろうな
    原稿、書かないと

  • 123二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 20:31:54

    切ねえ…

  • 124二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 20:43:01

    良かったね!って気持ちと切ない気持ちがぶつかり合ってる

  • 125二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 22:01:10

    >>117

    誰よりも強い君以外は認めない!?

  • 126二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 22:05:48

    原稿は、なんとか書き上げることができた
    段取りは頭に入っている、病院できちんと許可ももらった
    伸び切っていた久しぶりに髪も切ったし、綺麗な服もおろした
    あとは、あとは、何回も確認したが改めて持ち物を見返す
    大丈夫、めちゃくちゃ練習したし
    結局、あの気持ちが解決したわけではなかった
    だけど時間は平等に過ぎるから、当日は来たし、原稿も書き終わった
    結婚式場すら初めて来たんだけど、思ったよりデカいしピカピカして目が痛い
    指定された席に座っていれば、式は進んでいった
    思った通り、いや思った以上にお嫁さんは可愛い人だった
    綺麗な栗毛が白い肌に揺れている、可憐な女性という感じ
    だけど、やっぱりお前が世界一美しかった
    艶のあるグレーのタキシードが、暖色のライトに照らされて光っていた
    笑ったり、涙ぐんだり、驚いたり、お前のコロコロ変わる表情だけをずっと見つめていた
    お前が俺の顔を見たのはあの病院が最後だったから、人相が変わっていて気づかないかもしれない
    あ、今新婦側のスピーチが終わった
    もう俺の番になる

  • 127二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 22:06:13

    今まで、ごめん

    お前と、長く付き合いがあったから
    それだけでお前の特別になれたって勘違いしてた
    気持ち悪いと思うけど、俺本当にお前のこと好きだったんだ
    だけど、違った
    お前は俺なんか全然見てなくて…当たり前の幸せを当たり前のように得たんだ
    お嫁さん、綺麗だな
    お前にピッタリだと思う、料理も得意らしいし
    お前も、そんな正装見る機会ないからいつもより眩しく見える
    目に染みるよ、ぼやけちまうくらい

    「ここで、新郎のご友人からお祝いのスピーチをお願いします」
    「えー、」
    先ほどまで拭っていた目元を隠すようにマイクの前に立つ
    声は震えていないだろうか

    「まずは結婚おめでとう、世一」

    さよなら、俺の青春

  • 128二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 22:08:00

    お前と出会ったのは高校生の頃でした
    俺はそのとき、全然毎日が楽しくなくて、つまらない人生を送っていました
    だけどそれを変えてくれたのが、潔世一でした
    お前がサッカーをする姿を見て、俺は心を奪われました
    それから、まぁなんやかんやあって、お前とは顔を合わせられない時期も長かったけど、今こうしてここに立てていることがとても幸せです
    なんとなく、お前と結婚は結びつかないと思っていました
    いざ当日を迎えるとやっぱりものすごくカッコよくて、あぁ本当に結婚するんだなぁと改めて実感しました
    これからはお前のあたたかさで、幸せな家庭を築いていってください




    まばらな拍手
    お前は、柔らかく控えめな笑顔で俺と目を合わせてくれていた
    堪えていた涙が、ちょっと垂れてきそうで、早々と頭を下げた
    号泣しているところなんて見せてたまるか、とぐっと目を瞑った

  • 129二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:00:01

    「140号室の患者さん、最近前より妄想がひどいじゃない」
    「ハイ、最近自分がすでに退院していると思っているみたいです」
    「…はぁ、どうにかならないものかしらね」
    「いやー、ハハ…」

  • 130二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:00:37

    「?あれ」
    起きると病院のような、場所にいた
    と、いうか、病院か?
    真っ白な空間に四方を仕切られていて、その内装はどう見ても病室だ
    周りを見渡すが、特に変わった様子はなかった
    とりあえずナースコール押そう、もしかしたら俺が起きるのを誰かが待っているかもしれないし
    「あ、あのー…」
    誰かいないかと声を出してみるも、虚しく反響しただけだ

    「困ったな…早くスピーチ原稿の続き書きたいんだけど」

    お前の結婚式も迫っているし

  • 131二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:01:05

    「でも最近趣味を見つけたみたいで、前よりも元気に過ごしてますよ」
    「あらいいじゃない、あんなところにずっといたら滅入っちゃうわよね」
    「そうですよねー!昨日もお手紙くれましたよ」
    「あら、あんまり肩入れしちゃダメよ お返事とかしちゃうと向こうもエスカレートしちゃうから…」
    「大丈夫ですよ、

    怖くて読めてないので」

  • 132124/01/30(火) 23:01:45

    終わりです ありがとうございました

  • 133二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:06:24

    ありがとうスレ主
    久々にとんでもねえSSスレを見れて楽しかった

  • 134二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:23:44

    めっちゃ大作で草

    グイグイ読ませる文章だしいろいろと翻弄されたわ

    なんどもいえない読後感

    >>1にキレイに着地するのもいいね

  • 135二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:29:36

    スレ主お疲れ様
    最初ホラーみを感じて怖かったけど良い着地点だったよ
    時間を置いて再読したい

  • 136二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:32:05

    世一ストって文豪多くない……?

  • 137124/01/30(火) 23:34:04

    翌朝くらいから、文章で伝えきれなかったことを書くなどしたいです
    あと誤解を招いてしまっているようなのですが、主は世一ストじゃないです
    みんな大好きマンなので、いつかまたSS書く時は違う人が怖い目に遭ってると思います…

  • 138二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:39:24

    世一ストじゃない!?箱推しでこんな超大作書けるの凄いな!?
    解説的なことしてくれるのかなワクワクする
    次回作では一体誰がホラー体験するんだろう楽しみにしてるね

  • 139二次元好きの匿名さん24/01/30(火) 23:56:10

    よっちゃんにこのスレ見せてあげたい

  • 140124/01/31(水) 06:10:39

    最初からSS書くつもりは全くありませんでした

    結婚について思うところがあり、怪文書でも書いて発散させよう!バームクーヘンエンドなら似合うのは潔だな! くらいの気持ちで>>1を書き込みました

    朝起きたらスレ落ちてるかなと思ったんですが、案外見てくださってる方も多かったのでついでに続き書いちゃお〜という感じです

    こんな重いSSになるとは

    ちなみにホラー初書きでしたので、拙いところもたくさんあったかな…と思います

    みなさんの言葉で最後まで書き切ることができましたありがとうございます

  • 141124/01/31(水) 06:15:02

    お気づきの方も多いかもしれませんが、一番好きなゲームはさよならを教えてです
    主観で進むので、明らかな違和感があってもそれを指摘されない違和感が気持ち悪くて好きです
    その手法をたくさん使いたいなと思ったので割とそういう場面多いです
    書いてくれてる方もいましたが、普通暴力沙汰起こって速攻教室には帰さないですからね…
    あと本人の中で手紙、謝罪文、スピーチの原稿がぐちゃぐちゃになってるところも気持ち悪くて好きです

  • 142二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 06:16:50

    スレ一の恐怖
    世一ストではない

  • 143124/01/31(水) 06:20:00

    発狂パートがやたらと長いのは、オチ自体は早めに決まっていたのに対してそこに辿り着くまでのプロセスを全く考えていなかったからです
    最初は「全部夢だった」くらいの健全な夢オチで終わろうと思っていたのですが、発狂パートが長引いたせいで「全部夢だった」がとんでもなく絶望的なエンドになりました

    このお話で、本物の潔が出てきたのは何回くらいなんでしょう…
    病院で遭遇した潔、主は本人だと思っていますが、主人公主観で書いているのでわかりません
    その後、手紙を出し続けますが「誰に」と言わないので看護師さんが全部受け取ってくれています
    しかも読んでいません

  • 144二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 06:25:24

    発狂してるパートより淡々と過ごす日常の中で確実に気がおかしくなってる様子が気味が悪くて好きでした
    潔ファンじゃ無くても楽しめる文章ありがとうございます

  • 145124/01/31(水) 07:04:12

    ママ世一ゾーンは、保健室の先生と潔を重ねた結果です
    母親から母親らしい愛情をもらっていなかったので、保健室の先生に母性を見出しましたが、それも割と世間から逸脱していました
    しかし、それしか知らなかったので思考がどっかいくと幻覚のママ世一にオギャっています

  • 146124/01/31(水) 07:08:47

    妄想癖は幼い頃からでしたが、そのうち区別がつかなくなっていくのはよくある話というか、リアルですね
    母親は不器用なだけで愛していなかったわけではないと思うんですが、届いていないとなるとどちらが悪いとも言い切れないのが気持ち悪い
    母性も友情も恋愛も、「愛」と形容されるもの全てを憧れの潔世一に押し付けてしまった結果がこれです
    どこで間違えたんだろうか

  • 147二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 07:20:34

    すごい大作、面白かった。

  • 148二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 12:37:05

    結婚式にクソお邪魔してきたカイザーがドン引きしたり最終的に恐怖で泣いてたスレでもあった

  • 149二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 13:07:30

    >>142

    真理

  • 150二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 16:24:44

    このレスは削除されています

  • 151124/01/31(水) 16:38:30

    何度もおんなじ文章が出てきているところは印象的なシーンを妄想で切り貼りしている感じです
    どれとどれが正しく繋がっていたのかもうわからなくなっているので、明らかに生合成の取れていない場面同士がくっついていたりします
    基本的に潔を愛でるとすぐ苦しいシーンが出てきます、劣情を抱いていることに罪悪感でもあったのかな

  • 152124/01/31(水) 16:43:44

    そして最終的には看護師さんに潔世一を重ねてしまい、ジエンドになりました
    もうどこまでが本当なのかはわかりません

  • 153124/01/31(水) 16:51:04

    普通に考えてあんだけ怖かった相手が得体の知れない手紙を送ってきたところで見ないですね
    そんなに都合のいい話はありませんでした

  • 154124/01/31(水) 16:52:59

    最後になりますが、ここまで読んでくださってありがとうございました

    まとめたものを貼っておきます

    以後、答えるので是非質問感想などお書きください


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  • 155二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 18:12:31

    >>154

    リンク間違ってない?

  • 156二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 18:15:12

    このレスは削除されています

  • 157124/01/31(水) 18:50:07

    分割してみました

    これで読めるかな


    1


    今まで、ごめん 1今まで、ごめん

    お前と、長く付き合いがあったから

    それだけでお前の特別になれたって勘違いしてた

    気持ち悪いと思うけど、俺本当にお前のこと好きだったんだ

    だけど、違った

    お前は俺なんか全然見てなくて…当たり前の幸せを当たり前のように得たんだ

    お嫁さん、綺麗だな

    お前にピッタリだと思う、料理も得意らしいし

    お前も、そんな正装見る機会ないからいつもより眩しく見える

    目に染みるよ、ぼやけちまうくらい


    「ここで、新郎のご友人からお祝いのスピーチをお願いします」

    「えー、」

    先ほどまで拭っていた目元を隠すようにマイクの前に立つ

    声は震えていないだろうか


    「まずは結婚おめでとう、世一」


    さよなら、俺の青春




    見ているだけでよかったんだ

    平凡で取り柄もない俺だったから、最初からお前は眩しすぎた

    だから、つまんねー授業中に見下ろしたグラウンドで輝くお前が嫌だってくらい目についたんだ

    今考えるとサッカー部のお前は、体育の授業なんてガキのお遊びにしか見えなかっただろうな

    それでも軽々ディフェンスを避けていく姿は、当時の俺にとっちゃマジでヒーローに見えた

    それからっていうもの、俺はお前のことが気になってしまったんだ

    届…
    telegra.ph


    2


    今まで、ごめん 2世一はブルーロックの選手になった

    今じゃ画面の向こうで会った回数の方が多いんじゃないか

    ビール片手にテレビを見て、キラキラしたお前を眺めていた

    切れかけの円形蛍光灯がジジと鳴って、薄暗い部屋に点滅が走る

    お前は、あの時と何にも変わらない眩さで、俺を苦しめて、離してくれない

    お前は、サッカーボールを追いかけてあんなに遠いところまで行ってしまった

    なんでだ?なんでお前は夢を叶えて、俺はこんなところでひとりくたばりかけてるんだ?

    途端に頭の中で何かがバツンと切れて、気がついたらテレビをなぎ倒していた

    「なんで!!なんでお前だけ!!!クソォ!!!!!!!!」

    別にお前の夢がどうなってもよかった

    だけど、あそこまでやったのに、なんで俺だけが報われない?

    「クソ、クソ、クソ………」

    愛していたよ、世一







    「なぁに?いまママのこと呼んだ?」

    ハッとして振り返ると、大好きなお前がソファに座っていた

    「わぁーん、怖かったよー」

    先ほどまで見ていたのは幻覚か何かだったのか、やはり幼い体は不便だ

    日光に照らされて、柔らかく光ったママがあんまり美しいから、俺はママの膝の上に座って、絵本を読んでもらう

    車がいっぱい出てくるやつ…
    telegra.ph


    3


    今まで、ごめん 3どうしたらお前を傷つけないでいられる?

    どうしたらお前の気持ちを救ってあげられる?

    どうしたらお前の本心を聞き出せる?

    どうしたら痛くないところのギリギリで踏みとどまれる?

    お前が踏み込まれたくないところを避けることはできないのか?

    たとえば踏んでいいところと悪いところがあるとか

    踏み外したら下にいる鰐に食べられる

    ハハ、小学生の横断歩道かよ

    パッポー、パパポー、半音下がって間抜けな音を思い出した

    目の前が白黒してくる

    昔見た漫画やテレビや映画のシーンがまるで走馬灯のように過ぎって、莫大な情報量に気持ちが悪くなった

    俺は人の気持ちが考えられない

    その人に最も一番最適な言葉がわからない

    あぁ頭痛が痛いああああああああああああああああああああああああ

    今のままではへたくそな言葉でお前の心臓を内側から食い破ってしまう!

    虫のように這いずって取れないようなトラウマを植え付けてしまうかもしれない!

    ぞわぞわした感覚

    俺はテーブルの下で組んだ見えない自分の足に百足や蟋蟀がいっぱい這っているような錯覚をした

    あまりにも具体的に画が想像できたせいでそれが現実ではないかと一瞬間違った

    めちゃくちゃ怖くなった

    焦ってちゃんと目…
    telegra.ph


    4


    今まで、ごめん 4次の日、あの背の低い看護師が来て怒られた

    別の患者さんにあまり手を出さないで欲しいとのことだ

    手を出した…って友達だからよくないか?と思ったけど飲み込んだ

    「相手が嫌だと思ったら、そのつもりがなくても加害者になっちゃうんですよ」

    と言われて納得したからだ、だから、その代わりに素直な気持ちを伝えた

    「俺、ちゃんと謝りたいです」

    嫌な気持ちにさせたこと、怖がらせたこと

    今思えば…そうだ、高校生の時から結局謝れていないのだ

    そうだ、そうだ、顔も見たくないって言われたんだった

    「会って話すと、また怖がられちゃうから、手紙を書きたいです」

    当時のことを思い出すと、まばたきもしていないのにぽた、と涙が机に落ちた

    看護師さんは俺の背中をさすってくれた

    今まで自分がしてきたことと現状が初めて結びついて、空白の期間が途端に戻ってきた


    後日、定期検診で俺は回復傾向にあることを伝えられた

    現実との境目が以前よりわかるようになり、妄想で補っていた過去が少しずつ戻ってきているということだ

    それと、少しずつ文章の練習も始めた

    今見返すと自分が手紙だと思って書いていたものはどれも文字として成り立たない何かを書き殴っていて、自分ですら恐ろしく感じたのだった…
    telegra.ph

    5


    今まで、ごめん 5原稿は、なんとか書き上げることができた

    段取りは頭に入っている、病院できちんと許可ももらった

    伸び切っていた久しぶりに髪も切ったし、綺麗な服もおろした

    あとは、あとは、何回も確認したが改めて持ち物を見返す

    大丈夫、めちゃくちゃ練習したし

    結局、あの気持ちが解決したわけではなかった

    だけど時間は平等に過ぎるから、当日は来たし、原稿も書き終わった

    結婚式場すら初めて来たんだけど、思ったよりデカいしピカピカして目が痛い

    指定された席に座っていれば、式は進んでいった

    思った通り、いや思った以上にお嫁さんは可愛い人だった

    綺麗な栗毛が白い肌に揺れている、可憐な女性という感じ

    だけど、やっぱりお前が世界一美しかった

    艶のあるグレーのタキシードが、暖色のライトに照らされて光っていた

    笑ったり、涙ぐんだり、驚いたり、お前のコロコロ変わる表情だけをずっと見つめていた

    お前が俺の顔を見たのはあの病院が最後だったから、人相が変わっていて気づかないかもしれない

    あ、今新婦側のスピーチが終わった

    もう俺の番になる





    今まで、ごめん


    お前と、長く付き合いがあったから

    それだけでお前の特別になれたって勘違いしてた

    気持ち悪いと思…
    telegra.ph
  • 158二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 21:04:23

    >>157

    ありがとう!読める!

    >>154は何も文字がない状態だった

  • 159二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 21:08:36

    興味本位で開いたらスクロールめっちゃ必要でびっくりしたぞ、世一〜

  • 160二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 21:19:56

    >>159

    あっ、カイザー泣き止んでる。

  • 161124/01/31(水) 21:29:43

    >>158

    テレグラフに字数制限あるの知りませんでした

    ちなみに18300文字くらいです

  • 162二次元好きの匿名さん24/01/31(水) 22:57:19

    >>161

    字数制限あるんだね 初めて知った

  • 163二次元好きの匿名さん24/02/01(木) 02:25:29

    >>161

    文字数ヤバすぎて草

    ゆっくり読み直させていただくわ

  • 164二次元好きの匿名さん24/02/01(木) 09:16:41

    このレスは削除されています

  • 165124/02/01(木) 20:16:01

    次回も気持ち悪い作品書きたいなと思ってます
    その時は多分潔ではないと思うんですが、どうか見つけてください

    ありがとうございました
    またどこかでお会いしましょう

  • 166二次元好きの匿名さん24/02/02(金) 07:45:34

    ありがとう楽しかったよ!

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