（SS注意）パーマーのトレーナーが鬼を招き入れる話

1二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 01:58:55

週末、買い物で近所の商店街を通りがかったときのことだった。

「おにはーそとー！」
外は雪が降りそうなくらい寒いのに、子どもたちの元気な声が響いている。

その掛け声を聞いて、そういえば節分だったなと思い出す。豆まきも恵方巻にも小さいころ以来縁がないためか、どうにも影が薄い行事のような気がしてしまう。

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「みんなー！鬼さんを追い払えるかなー？」
通りに設えられた野外ステージで、鬼に扮したウマ娘が豆まきイベントを仕切っているらしい。
どうも聞き覚えのあるハスキーな声に足を止めた。少し癖のある豊かな栗毛がゆらゆらと揺れている。
「パーマー？」
小声で独り言をつぶやいたつもりだったが、栗毛のウマ耳がぴくりと動いて、くるりと振り返る。
「あ！トレーナー！」

意外というべきか、予想通りというべきか、担当のメジロパーマーだった。

2二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 02:00:15

「…それで、商店街の人たちにどうしてもって頼まれちゃってさ」
「君らしいね。でも、寒くないのかい？」
「ううん、意外と動き回ってると暑いくらい」
「その、鬼の衣装で…？」
「あ、これ？いいでしょ！ギャルならこのくらいいくっきゃない！みたいな？」
あっけらかんとしたパーマーとは裏腹に、俺は内心穏やかではなかった。

パーマーが身につけている鬼の服。商店街が用意したイベント用のコスチュームなのだろうが、なんというか、その、実に煽情的だ。

上半身は虎柄のチューブトップで、肩も背中も大胆に露出している。胸周りこそさすがに布で隠されてはいても、むしろハリのある膨らみがよく主張している。

引き締まったお腹と形のいいおへそが惜しげもなく晒され、同じく虎柄のショートパンツからはすらりと伸びた太ももがまぶしい。

勝負服などで見慣れているはずなのに、いけないものを見てしまっているような気がして、頬が熱くなるのを感じた。

3二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 02:02:15

「…トレーナー、なんか顔が赤いよ？」
はっと気がつくと、パーマーが近づいてきて、額にぴとりと手を当てた。しっとりとした手のひらの柔らかさと、その奥にある温かさを感じて、いっそう体温が上がった。
「熱い気がする…風邪かな？寒い？平気かな？」
「違うんだ、その…パーマーが…」
「え？私？」
「パーマーの、格好が、その…ね、大胆だから…」

心から気遣わしげなパーマーに、いたたまれなくなって、つい思ったことを口に出してしまう。
濁した言い回しだったが、機微に敏感な彼女ははっきりと察したらしい。

「あ、あ…。あー…っと……」
パーマーの白い肌がみるみる赤くなる。雪の中の南天の実みたいだなあと、場違いに呑気なことを考えた。

「あっ！！で、でっ、でんわ！電話きたから、その、ごめんね！またね！」
突然鳴ってもいない電話を言い訳に、パーマーはすごい勢いで走ってどこかに爆逃げしてしまった。

結局、彼女を追いかけるのもはばかられ、家に帰ってぼんやりとしていると、夕方にインターフォンが鳴った。
出てみると、コートに着替えたパーマーがビニール袋をぶら下げて立っていたのだった。

4二次元好きの匿名さん24/02/06(火) 02:08:00

「おにはーそとー！」
「ふくはーうちー！」
掛け声とともに、フローリングにパラパラと乾いた音がする。パーマーの持ってきたビニール袋には、節分用の大豆がぎっしり入っている。
外に撒くとお隣に迷惑がかかるので、部屋の中での久方ぶりの豆まきイベントだ。

「こんな豆まくのなんて初めてかもしれないな」
「あははっ、楽しいでしょ？今日子どもと豆まきしたらすっごい楽しかったからさ、トレーナーともしたいなって思って持ってきたんだ！」
そう話すパーマーに昼間の照れは全くないように見え、突然部屋を訪れたパーマーに動揺する自分が少し恥ずかしくなる。
このまま邪念も祓われてしまえと、豆を爆撒きしたのだった。
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「いやー、撒いた撒いた。なんか、悪いことしてるみたいだな」
「わかるわかる！散らかすの、ザ・背徳感って感じ？」

ひとしきり終わったあと、パーマーが話しかけてきた。
「ね、豆まきのときは『鬼は外、福は内』って言うでしょ？」
「うん」
「地域によっては『福は内、鬼も内』って言うんだって。鬼にも優しくしてあげようってことみたいだよ」
「へぇー…」
唐突に何の話を始めたのか。パーマーの真意を測りかねていると、ぱさり、と乾いた繊維の音がした。
床に目をやると、化繊のコートが脱ぎ捨てられている。
「パーマー…？」

「鬼はうちじゃ、ダメ…かな？」
視線を上げると、寒さのせいか羞恥のせいか顔どころか露出した肩まで真っ赤に染め上げて、昼間の鬼の格好をしたパーマーが上目遣いでこちらを見上げてくる。

ノーという選択肢は、なかった。