- 1二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:29:15
「帰ってくるのも久々だな……」
ヴィブロスの担当となって4年目、目標であったドバイへの挑戦も終えたところで、久しぶりに帰省することにした
ちょうどひと段落ついたとも言えるため、少しの休暇も兼ねていたのだが……
「ここがトレっちの実家?」
「そうだよ。何の変哲もない家だけどね」
……なぜか帰省にヴィブロスがついてきているのである
──仕事をしていると母さんから電話がかかってきた。電話に出て仕事の調子だとか健康の話だとかをしばらくしていると
「そういえば今年は帰ってこれそう?」
と、帰省について聞かれた。確かにヴィブロスの担当となってからは一度も帰省していなかったなと思っていると、ヴィブロスが静かにトレーナー室に入ってきた
電話していることに気が付いて配慮してくれたのだろう。ジェスチャーで『ちょっと待ってて』と伝え、母さんとの電話に戻る
「じゃあ今週末に帰ることにするよ。そろそろ仕事に戻るね」
「はいはーい。気を付けて帰ってくるのよー」
母親との電話を終え、ヴィブロスに向き直る
「待たせてごめんね。ちょっとプライベートの話をしてたから」
「そんなに待ってないよ~。さっきの電話の相手ってトレっちの家族?」
「うん、一回帰って顔を見せてほしいんだって。だから今週末はちょっと帰省してくるね」
「え!じゃあ今週はトレっち家に来ないの?」
「実家がちょっとだけ遠いからね。流石に日帰りはきついかな」
最近の週末はヴィブロスの実家にお邪魔することがほとんどだったため、ヴィブロスは少し驚いているようだったが、何か少し考えると衝撃的なことを言い出した - 2二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:29:52
「トレっち、私も行きたい!」
「え?いや流石に実家は……」
指導者が担当の家にお邪魔している時点で何をいまさらと思われるかもしれないが、流石に俺の家に教え子を上げるのは流石にダメだろう
だが、俺が何かを言う前にヴィブロスはスマホを取り出し家族に連絡を入れたようで、娘をお願いしますとの連絡が来てしまった
顔を上げてヴィブロスを見ると小悪魔のような笑みを浮かべ、俺の返事を待っていた。
「だめ~?」
「もう……今回だけだからね」
「やった~!」
こうして、俺の帰省にヴィブロスが付いてくることが決まったのである - 3二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:30:15
「ただいまー」
「お邪魔しまーす!」
ヴィブロスを連れて家に入ると母さんが出迎えてくれた
「お帰りー。その子がヴィブロスちゃん?」
「ヴィブロスでーす!お世話になりまーす!」
「可愛いわね~、ゆっくり過ごしてね」
早速母さんがヴィブロスの可愛さの虜になりつつある。その様子に苦笑しつつもこれはこれでヴィブロスのいい休暇になるかなと考えた。
それから夕食を食べゆったりと過ごしていると母さんがヴィブロスに唐突に質問を投げかけた
「ヴィブロスちゃん、うちの息子が迷惑かけてない?」
「え~なんで~?」
「うちの息子、一度集中すると周りのことが聞こえなくなったりしちゃうからね。気になるじゃない」
どうも俺の悪癖について気になるようだった。確かにスカウトしたときといい宝塚の時といい何か考え事してると周りをシャットダウンしてしまっているため何も言えない
「トレっちはね~私のこと第一にしてくれるしおねだりも聞いてくれるんだよ~?」
「おねだり?どういう感じの?」
「買い物だったり~パーティだったり、いーっぱい甘やかしてくれるの!」 - 4二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:31:08
こうやって自分のやっていることを聞いてると少し恥ずかしいな……と思っていると
「あとね~、最近の週末は家に来て一緒に過ごしてくれるんだよ~」
とんでもない爆弾発言をしてくれた。母さんもお茶を飲もうとしていたところのこの発言のせいで思いっきりむせている。
息が整ったところで母さんがすごい勢いで俺に詰めてくる
「あんた教え子の家にお邪魔してるの!?」
「まあ……うん」
「ちょっとヴィブロスちゃん!?迷惑かけてないんじゃなかったの!?」
「母さん、説明するから落ち着いて……」
「こんな話聞いて落ち着いていられないわよ!」
自覚はあったが第三者の目線から指摘されると、改めて指導者として危ない橋を渡っているな、と思わずにはいられない
「大丈夫だよ?パパとママもトレっちのこと気に入ってるし~」
「え?」
「パパとママとは大人の会って言ってご飯一緒に食べに行ってるし~」
「え??」
「客室はトレっちの部屋に改装中だし~」
「待ってヴィブロス、あの話本当にしちゃったの?」
「もうトレっちは家族だってみんなで言ってるしね~」
「???」 - 5二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:31:50
ダメだ、一度に大量の爆弾発言を受けて母さんの頭が混乱している
……いや、こうなってるのはこれらの話をしていなかった俺の落ち度か……後できっちり説明しておかないと
「……母さん、後で全部説明するよ」
「……お願い、母さん少し混乱しているから」
「とりあえずヴィブロス、今日はそろそろ休もうか。部屋に案内するよ」
「?はーいっ!」
とりあえず母さんに説明するにもヴィブロスがいるとまた混乱を招きそうなので、部屋に送り届ける
部屋に戻ると、家族会議という名の俺に対する取り調べが始まる
「色々聞きたいけどまずはこれだけ聞かせなさい……担当の子に手を出したの?」
「出してない。断言できる」
「そう……なら次に聞くけどヴィブロスちゃんの言ったことは本当なの?」
「……本当だよ。とりあえず色々説明させてくれ」
そう言って俺は担当になってからこれまで何があったかをできる限り説明した。時折母さんが眉間を抑えてながら何かぶつぶつ言っている
そして大体を説明し終えると母さんから
「あんた……気をつけなさいよ……」
「うん……」
今回は家族だったから誤解を解くことが出来たが、これが世間だった場合は……考えたくもないな
「家族と同じように甘えさせてくれる俺を兄とかのように思ってるだけだと思うから……でも俺は結局他人だから距離感には気を付けてるよ」
「……そう思ってるならそう思っておきなさい」
「……?」 - 6二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:32:22
なんか母さんと何かしらすれ違いを起こしていそうだが、母さんがいいというならいいのだろう
「ちょっと疲れたから今日はもう寝るね。おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
次の日、ヴィブロスと母さんがショッピングに出かけた。俺だけじゃなくてヴィブロスからも色々聞きたいのだろう
帰ってきた母さんの顔を見ると、色々聞けて納得したのかヴィブロスと楽しそうに過ごしている
そしてトレセンに戻る日、見送りに来てくれた母さんに帰省の話をしておく
「頻繁には無理でも、もう少し帰れるようにするよ」
「そう、無理はしたらダメよ。ヴィブロスちゃんもまたおいでね。あまりキラキラしたものはないけど」
「はーいっ!お母さんまたお邪魔しに来まーす」
母さんは完全にヴィブロスの虜になってしまったらしい。やっぱりこうなったかと思いながら車に乗り込む
だが、ヴィブロスが車に乗り込まない。母さんに何かを言われてとても上機嫌そうだが、そろそろ出発しないと
「ヴィブロスー?もう出ないと府中に着くの夜中になっちゃうよ?」
「はーいっ!じゃあお母さんまた来まーす!」
母さんと話を終えたヴィブロスが車に乗り込むのを確認して車を運転する
助手席に座るヴィブロスはやはり上機嫌だ。母さんに言われた何かがとてもうれしかったのだろう - 7二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:32:40
「最後母さんと何を話してたの?」
「んー?しばらくは秘密~」
「しばらく?そのうち教えてくれるってこと?」
「ふふふ~、それはトレっち次第かなぁ~?」
やけに気になるが別に悪いことを隠してるわけじゃなさそうだし、これ以上追求するのはやめておこう
「トレっち~また帰ってこようね?」
「いいよ、母さんもヴィブロスのことが気に入ったみたいだし」
「やった~♡」
最初はどうなるかと思ったが、ヴィブロスにとってもいい休暇になったようだ。これならまた連れてきてもいいかな……って思いながら府中に向かう高速に乗ったのだった - 8二次元好きの匿名さん24/02/07(水) 23:45:10
SSであったか
- 9二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 00:04:53
- 10二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 00:11:01
何も知らされていないヴィブロストレーナー
とはいえそんな彼でないとここまで外堀が埋まったりしないだろうなとも思える - 11二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 12:11:04
いいSS
- 12二次元好きの匿名さん24/02/08(木) 23:14:07
とてもいいSS!