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所謂『ウマ娘の謎』は数多いが、その中でも特に分かりやすい物に勝負服問題がある。
勝負服とはG1レースにてウマ娘が着用するレース用の衣装の事だが、あなたはテレビなどに映るそれを見てこう思ったことは無いだろうか。
『その衣装走りづらくないか?』と。
実際、彼女らの衣装でロングスカートなどはまだおとなしい方だ。彼女らは手が全く出ない程長い袖やマントといった、身体の動きを阻害し多大な空気抵抗を受ける衣装を当然のように身に纏う。動きやすい服を追及してきた人類の歴史を嘲笑うかのように、フリルで膨れた信じられないほど動きづらそうな衣装をレースの場に持ち込むウマ娘も存在する。
中には肩掛けのポーチやハンドバッグなどの走るときの邪魔さがありありと想像できるような小物を装着しているウマ娘まで見受けられ、走ってタイムを競う場でわざわざ招き猫を背中に背負いこみ水晶玉まで持ち込み自身の体重を増やすなど、物理学者が泡を吹いて倒れそうな事をするウマ娘までいる。
靴もサンダルやブーツはまだマトモな方で、中にはハイヒールという普通に歩いていてもケガをするような危険物を選択する子も一定数存在する。
この勝負服問題の特筆すべきことは、これらの走りにくそうな服は何故かウマ娘の走る速度に全く影響を及ぼさない事にある。
だからどれだけ走りづらそうな勝負服でも高速で走る彼女らを見て、大抵の場合現地の観客やお茶の間の視聴者は皆一斉に首を傾げる羽目になる。そして毎度のように彼らは『あの衣装で良く走れるね』と話に花を咲かせるのだ。
このように、勝負服問題は物理現象どころか直勘にすらも完全に反した既存の科学では全く説明つかない挙動である。
勝負服を着るウマ娘は何故か口をそろえて『この服から力をもらいました』と述べるが、まさか本気で彼女らの衣装は何らかの加速度を生み出しているとでもいうのだろうか。 - 3124/02/11(日) 17:03:05
他にも有名な問題としてウマ娘のタイヤ引き問題がある。
タイヤ引きはトレセン学園などで行われるウマ娘が自分の何倍もの大きさのタイヤを縄で引きずって動かすという内容のトレーニングだが、これを科学で説明しようとするとおかしなことが起こる。
この問題においてウマ娘が出せる力やタイヤを動かすのに必要な力は簡単な計算式で求められる。
まず、ウマ娘がタイヤと繋がる縄に伝えられる力の限界はウマ娘の体重の垂直抗力×靴裏と地面の間の摩擦係数で決定される。
そしてタイヤが動くために必要な最低限度の力は、タイヤの重さの垂直抗力×タイヤと地面の間の摩擦係数で決定される。
この2つを比べるとどうしても後者が前者よりも圧倒的に大きな力になる。そのため理論上、ウマ娘はタイヤを動かすことが出来ない。これはウマ娘の体重に比べてタイヤの方が圧倒的に重いことから自然に計算で導かれる絶対的な結論だ。
しかし、事実として彼女らは易々とタイヤを動かす。この矛盾がタイヤ引き問題だ。
この問題の重要な点としてこの物理学的な矛盾にウマ娘自身の身体能力はあまり関係のないことが挙げられる。
あくまでタイヤを動かす力は体重の垂直抗力×靴裏と地面の摩擦係数で、ここにウマ娘の膂力は関係ないのだ。
故にこの実験の示唆することは、ウマ娘と科学のより深刻な対立を意味している。
力が強いだけでは動かせないはずのタイヤが動くという事はウマ娘が膂力とはまた別の、物理法則を捻じ曲げる『何かしらの力』を有する証明になってしまっているのだ。
そしてこの力の正体を解き明かそうと様々な研究機関が条件を変えながら何度も実験が行ってきたが、今でも世界のいかなる機関もこの問題を解明することはできていない。 - 4124/02/11(日) 17:03:41
ここまで読んだあなたはもしかしたら、『なるほど、科学はウマ娘を説明できないのだな』と思ったかもしれない。しかし、その考えは半分正しいが半分は間違っている。
何故ならアイザック・ニュートンは自身の力学がウマ娘に通用しないことを知っていたからだ。彼は自身の著作にウマ娘は関与せずと明記し、自分の理論がウマ娘を説明するものではない事を示している。彼はウマ娘を考慮しなければ世界は簡単な数式で表せると気が付いたのだ。
これは極めて画期的な考え方で、ニュートンの『ウマ娘除外法』は後の科学の発展に重大な影響を及ぼした。後の科学者たちはウマ娘を絡めないことで次々と有用な発見をし、人類の科学はその後400年で凄まじい発展をすることになる。
その結果としてニュートン力学から始まった現代の科学は、その殆どがウマ娘を考慮しない数式で成り立っている。
つまり『科学がウマ娘を説明できない』というのは確かに事実だが、やはりニュアンスは異なる。
『科学はウマ娘を説明しない』が正しい。
科学は最初からウマ娘を全く想定しないことを選択し、発達した学問なのだ。 - 5124/02/11(日) 17:04:10
一方で、人類は決してウマ娘について説明することを諦めた訳では無かった。
ウマ娘にも何かの統一された『ウマ娘のルール』があるとして、それを探る学問を『ウマ娘学』という。問題解決のため学者たちは様々なアプローチを行った。
彼らの目標はウマ娘を科学で納得のいく説明をすることだ。
しかしそういう意味では科学の発展の裏側で『ウマ娘学』は遅々として発達しなかった。学者がいくら実験を繰り返し考察を進めようと彼女らからはまともな法則性は見つからず、学者たちは不毛な時代を過ごすことになる。
この研究の過程で得られたデータや経験則を生かして『レース学』という実践的な派閥なども誕生したが、本家の『ウマ娘学』は時間がたつにつれて何も結果を残せないままジリジリと下火になっていった。
そんな中『ウマ娘学』にとどめを刺すような大事件が発生する。 - 6124/02/11(日) 17:04:41
1989年、イギリスの物理学者であるウマ娘のフランシュリーがとある論文を発表した。
『常温常圧熱融合』を成功させたという論文だ。これは非常に画期的な内容で、仮に実用化できれば世界のエネルギー問題はすべて解決してしまうような重大な発見だった。
当然発表者である彼女は世界中から注目された。そして彼女はマスコミや学者に見守られる中で公開実験を行い、見事成功させて見せたのである。
この瞬間、世界中のだれもがエネルギー問題が解決したと確信した。世界のどの新聞もこれを一面で報じ、フランシュリーは一躍世界の英雄になった。
しかし、この栄光は長く続かなかった。
しばらくたち、世界中の研究機関から次々と再現実験に失敗したという報告が出るようになる。まず第一に論文のエラーが疑われたがフランシュリーが再度論文通りの手順で実験を成功させたため、論文には間違いのないことが確認される。
しかしその後もフランシュリー以外が再現に成功した例は1つも確認されず、次第にフランシュリーは稀代の詐欺師であると世界中からバッシングを受けるようになってしまう。
彼女はそんなはずないと何度も実験を繰り返したがそれらは全て成功してしまい、彼女とその周りの人々は困惑するばかりだった。
その内彼女と親しいウマ娘学の学者はとある可能性に辿り着く。
『フランシュリーだから、成功するのではないか』と。 - 7124/02/11(日) 17:05:18
結論からいうとその可能性は正しかった。
実験の結果、彼女がいる現場でのみ常温常圧熱融合という物理現象が発生することを確認されたのだ。
例えば彼女がアメリカの大学の一室にいる場合、そのアメリカの大学の隣の教室では常温常圧熱融合が発生する。
つまりこの現象はフランシュリーとの距離に依存する物理現象だったのだ。
これまでにもウマ娘が周囲の物理法則を無視したり改変したような挙動を取ることは報告されていたが、走る事に全く関連しないここまで高度な物理現象を発生させるウマ娘は前例がなく、ウマ娘学には衝撃が走った。
しかし科学業界においての衝撃はそれ以上だったといえる。ニュートンの従来の『ウマ娘除外法』は実験対象に対して用いられる考え方で実験者に対する考え方ではなかったからだ。
そしてこの話は悲劇的な結末をたどることになる。その後何年かの調査で『ウマ娘除外法』が実験者にも適用されると正式に判明したため、世界中のウマ娘の研究者たちは職を失うことになったのだ。彼女らが関わった数々の論文はその意味を失い、それを頼りにした論文も同様に紙屑になったため科学は20年ほど後戻りしたとまで言われている。それどころか調査の結果ウマ娘の物理法則改変が基本的に距離に依存することも判明したため、ウマ娘は多くの研究施設で研究棟に入ることすらも禁止されてしまったのだ。
更にウマ娘学に与えた影響も甚大だった。
何故なら、フランシュリーの実験は他のウマ娘も再現に失敗したからである。これはつまり『フランシュリーのルール』と『ほかのウマ娘のルール』は別物だという事だ。そしてこれは研究者が追い求めた『統一されたウマ娘のルール』が存在しないことも意味する。
ウマ娘の謎はあくまでそのウマ娘の『個人が持つ神秘』に依存すると判明し、この学問もまた大きく後退した。 - 8124/02/11(日) 17:06:09
このように、人類はウマ娘と科学と共に発展したにもかかわらずウマ娘は科学で説明できない。
それどころか科学とウマ娘は極めて相性が悪いということが伝わっただろうか。
特に『個人の神秘』理論はレース学にも影を落としている。
何故なら、ウマ娘同士で同じ法則を共有していない以上『速く走れる神秘』を持つウマ娘が絶対的に有利で、それ以外のウマ娘はどれだけ訓練しても選ばれしウマ娘に追いつけないという説が出てきてしまったからだ。
レースという分野において極端な才能主義が蔓延してしまう悪影響は大きく、今の所レース学は『神秘』は練習によって成長させることが出来るという立場を取っている。
因みに、現代のウマ娘学の主流の考え方は『参加者仮説』というものだ。
これは完全に調和のとれた宇宙空間と地球に、1万年ほど前に神が後からウマ娘を世界に追加したという考え方である。
あまりにもオカルト臭いため反対者は多いがこの理論は現代概ね大多数の研究者に受け入れられている。少なくとも1万年以上前のウマ娘の化石が1つも見つかっていない事は事実でもある。
ただ、これもあまり本気で研究されてるとは言い難く、あくまで仮説だということは明記しておく。 - 9124/02/11(日) 17:06:48
暗い話ばかりのため、最後にいいニュースを伝えておく。
つい先月、トレセン学園所属教員のアグネスタキオン氏が『2日で治る骨折薬』を開発したと発表した。
連続使用が出来ないという前提はあるもののヒトにもウマ娘にも効くことが確認されており、もし安全性が確認されれば実用化される可能性は大いにある。
『個人の神秘』の原則通りアグネスタキオン氏から離れた位置では生成出来ないとの事だが、それでも骨折に悩む生徒を一度だけでも救えるというのは大きな意味があると言える。
科学に目を曇らされた我々は研究職からウマ娘を追放して理系のウマ娘たちをとことん冷遇してきたが、それは決してウマ娘が科学を修められないという事ではない。
むしろ、彼女らの『神秘』は適切に扱えば極めて有用な結果をもたらす。
彼女らは確かに研究と論文というフォーマットとの相性は悪かったが、我々がその気になればウマ娘と科学は共存させられるのだ。
タキオン氏はそんな新しい形を示しているように感じる。
もしかしたら人類のさらなる発展は、タキオン氏と理系のウマ娘への予算を増やすところから始まっているのかもしれない。 - 10124/02/11(日) 17:08:49
終わり
- 11二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:09:25
これを書いたのはモルモットくんかな?
- 12二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:11:00
電子機器すべて壊す奴もいるしな……
- 13二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:11:45
フランシュリーでググった俺の時間返せ(競走馬だと思った)
- 14二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:12:33
まあウマ娘の存在以外はこっちの世界と全く変わらないのに
ウマ娘という明らかに物理法則を無視した部分(勝負服とか)がある存在を受け入れてる世界なのでこういう研究はあるよね - 15二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:12:46
逆にウマ娘世界だと神秘学なんかが正当な学問として発達しているかもね
ウマ娘の中にはこのタキオンみたいに神秘を自覚して利用出来る子もいるし - 16二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:13:18
この感じだと衰退傾向っぽいな……
- 17二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:13:47
常温常圧熱融合ってこれ元ネタ常温核融合か
- 18二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:15:25
- 19二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:17:13
- 20二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:18:21
- 21二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:18:30
※ただしアイルランドは除く
- 22二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:19:25
タイヤ引きに関してはもう全くもってその通りでダメだった
- 23二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:21:46
アイルランドもそうだけどアニメ版だと高麗航空が日本に乗り入れていたり
歴史は結構違うんじゃね?みたいな感じはしなくともない - 24二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:21:55
馬がいなかったらけっこう世界史的に変わりそうなイベントはありそうだけどな
ロバート・スコットの南極探検隊だって犬ぞりをメインで使ったかもしれない - 25二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:31:22
タイヤ引きは垂直系のタイヤを直交する系のロープで引くから
ウマ娘側は力を地面に斜めに伝えて変換した推進力がタイヤの静止摩擦力を超えれば引きずれるので物理的に引けないって前提は崩壊してると思う
まぁふつう後ろ向きでかかとを地面にめり込ませてArm Over Arm Pullみたいな引き方じゃないとできないってのはそうだけど - 26二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 17:32:13
少なくとも画像では引けなさそう
- 27二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:31:40
面白かった