【SS】数えきれない夢をあなたと共に

  • 1二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:56:06

    歩き慣れたお屋敷のこの道ですが…こうして一緒に歩くとやっぱり違いますわね…
    トレーナーさん、覚えていらっしゃいますか?
    私がお婆様にトレーナーさんと契約した報告の帰り道の事を…ええ、丁度この道を歩いていたときでしたわ。
    あの時の私はメジロの名に恥じぬように…そして楯の栄光を掴み取る…ただそれだけが私の夢だと思っておりましたわ。
    だからこそあの帰り道のトレーナーさんからの質問…

    『"メジロのウマ娘としての君"の夢ではない…"一人のウマ娘としての君"の夢はあるかい?』
    『ただ一人の私としての夢……?』

    その問いに対してあの時の私には答える事も思い浮かべる事も出来ませんでした…

    ですがその時トレーナーさんが仰った言葉、覚えていますか?

  • 2二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:56:30

    『夢は多ければ多いほど本当になるんだ。それが大きな夢、小さな夢関係なくね……悪い事はダメだけど』
    『叶えたい夢を沢山持っていても…良いのですか?』

    その一言が今までの私を変えたのです。
    人気のスイーツを食べたい、野球観戦をしたい、あの場所に行ってみたい…
    あのレースに出たい、あの人と走りたい、勝ちたい…
    どんな些細な事でも私の夢として叶えたい、夢見た光景を本当にしていきたい…
    トレーナーさんのその言葉を聞いた瞬間、私の頭に溢れるようにやってみたい事が思い浮かんできたのです。
    栄光をその手にするには他の事は望んではいけない…そう思っていた私を解き放ってくれたのですわ。
    あの時、多くの夢を心に思い描きながらお屋敷の扉を開いて外に出たその瞬間から、私…メジロマックイーンの物語が始まった…そうはっきりと断言できますの。
    ですがメジロの悲願…天皇賞を勝ち取る事は何よりも叶えたい夢。だからこそ私は必死に走りに打ち込みました。他の夢も叶えていきたいという想いを胸に秘めながら…
    そしてそんな私を見守ってくれたトレーナーさんに支えられながら私は悲願を達成できたのです。
    ですが二度目の天皇賞春を制してすぐ骨折を…その頃でしたわね。一心同体を誓い合ったのは…

  • 3二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:56:53

    その後は私が思いついた様々な夢を叶えていきました。ええ、どんなに小さくても夢は夢。私にとっては叶えたかった夢ですもの。覚えていますか?

    『あぁ…甘くて美味しくて幸せ…』
    いつか行きたかった有名なスイーツのお店に訪れたり…
    『もう一回、もう一回ですわ!』
    幼い頃遊ぶ事が出来なかった遊園地…
    『見てくださいまし!あれがジンベイザメ…!』
    同じく行きたかった水族館で楽しんだり…
    『やりました!優勝!優勝です!』
    お気に入りの野球チームの試合、しかも決勝戦を観戦したり…
    どれもこれもトレーナーさんにあの時言われなければ夢として思わずに淡々としていたのでしょう。
    勿論レースの夢も忘れてはいませんでしたのよ?

    『メジロのウマ娘として、当然ですわ!』
    トレーナーさんに支えられながらメジロとして恥じない走りを皆さんの目に焼き付けてきたのですから。

  • 4二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:58:13

    ですが…夢を阻まれた事も沢山ありましたね。
    『そんなぁ…楽しみにしていたのに…』
    あの店のスイーツが売り切れていたり…
    『お出かけは…延期ですわね…』
    悪天候でその日は外に出れなかったり…

    阻まれた…それはレースの事でも同じでした。
    『全力を尽くして負けた…なら次のレースへの糧にすれば良いのですわ……でも……後少しだったのに…勝ちたかったのに……!』
    万全の状態でも勝てなかった三度目の天皇賞春…



    『私…もう走れないの…ですか……?』
    そして……… 繋靭帯炎…
    今思えば私達が夢を叶える事への最大の試練でした…
    あの時自暴自棄になりかけていた…いえ、既になっていたのでしょう…そんな私をトレーナーさんは只々受け止めてくれました…覚えていますか?あの時私に言ってくれた言葉を………

  • 5二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:58:34

    『放っといて下さいまし!私はもう…!』
    『……放っておかない』
    『なぜですの!?』
    『君だから放っておけない』
    『私だから…?…もう良いのです……翼が折れた鳥のように…走れない私に意味など………』
    『君に翼があるのなら…俺にだって翼はある! なら二人の翼を合わせて飛ぼう、二人で一緒に走ろう、君一人に苦しみと重責を背負わせはしない!』
    『なんでぇ…? どうしてあなたは…こんなわたくしにそこまでしてくれるのぉ……?』
    『走りだけじゃない…君の全てに惚れたから…そんな君の支えになりたいから……それに…』

    ———俺たち、"一心同体" だろ?

    『……ッ!』
    『だけど無理強いはしない。君に"他人の夢"を押し付けはしない…君はどうしたい? メジロマックイーン』

    『誰が…"他人の夢"なものですか…!』
    『誰が…"押し付けられた"などと思うものですか…!』
    『私は!走りたい!勝ちたい!』
    『貴方と一緒に!目指したい……っ!』

  • 6二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:58:54

    思い出しましたか? 私、嬉しかったのですよ?
    あの時の言葉にどれ程救われたか…
    あの時の言葉がどれ程支えになったか…
    そう私が言葉にした丁度その時、降っていた雨も止みましたわね。
    とんだお調子者な空模様がいたものだと二人で笑い合って……あの時あの瞬間、本当の意味で私達が一心同体になれた…そう私は思っていますわ。

    今なら分かるのです。トレーナーさんが仰ったようにきっと誰もが見えない翼を持っているのだと。
    あの時の私は確かに翼が折れて羽ばたけなくなっていた…でもその時、トレーナーさんが自分の翼を半分私に与えてくださったのです。
    だからこそ私達は"一心同体"…片方だけでは飛べなくても二人一緒なら飛んでいけると…

    周囲から見ればそれを依存と呼ぶ人もいるでしょう、共に半端者と見なす人もいるでしょう…
    だけどそう仰っている人は気付いていないのです。多かれ少なかれ誰もが他人を支え、そして支えられているのだと。そして、その事を知っている私達だからこそ、翼を…心を合わせて飛び立つ事が出来るのです。

  • 7二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:59:13

    そしてあの時のトレーナーさんの言葉が、私の全てを変えたのでしょう。
    与えられた翼を只々与えられただけで終わらせないように…それを自分自身の翼として、トレーナーさんを支える事が出来るようにと…
    その年の秋から春までの間に私は病を克服して…また走りたいという夢を叶える事が出来たのですから。

    そして"私の夢を叶えたい"はいつしか"貴方と夢を叶えたい"へと変わっていったのです。もう独りじゃないと、一緒に夢を叶えていきたいと。
    その後は色々とありましたわね。復帰しても勝つのは難しいだろうと仰っていた方々もいましたけれど…

    『あの時の雪辱…これで晴らしました…もう遅れはとりませんわ』
    再びの天皇賞春…あの時私を破ったライスさんにもキッチリリベンジを果たして、ただ復帰しただけではない事を示して…
    『やっと皆の信頼に応えられた…この勝利はきっとその証…今はそう思えるのです』
    春だけではなく天皇賞秋…二つの楯をメジロに飾る事ができ…
    『一度は地に落ちた…しかし今、二人で天まで駆け昇り…有馬の頂点を勝ち取りました!』
    そして有馬記念…有終の美を飾り、トレーナーさんと勝利を掴んでいきたいという私の夢を叶える事ができたのですわ。

  • 8二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:59:38

    でもそれは"メジロのウマ娘"としてのメジロマックイーンの夢…トレーナーさんと共に過ごして行くうちに"ただ一人のウマ娘"としてのメジロマックイーンの夢を見つけたのです…
    しかしその夢は私がレースに復帰する事と同じくらい難しくて…叶えられない夢だと…そう思っていましたの。

    『どうして…ねぇどうして!…叶えられない夢とは分かっていても…どうしてこんなに心が張り裂けそうなの……!』

    『でも…でも……ッ、私はトレーナーさんが…トレーナーさんのことが……!』

    それに"一心同体"という言葉を都合よく解釈して…そしてレースに勝つという事を建前にその夢から目を背けていた…今だからこそそう言えるのです。
    全てのレースを走り終えて…自分の夢を見つめて自覚して…だからこそケジメを付けようと、自分が一歩前へ進むためにもと…あの時決心したのですわ。
    でもトレーナーさんはそんな私を受け止めてくれた…私のその夢を…"一人のウマ娘"としてのメジロマックイーンの夢を叶えてくれた……!

    『私は…好きです……トレーナーさんの事が好き…』
    『俺もだよマックイーン、これからもずっと』
    『…! いいんですか…?あなたを好きになっても良いんですか…? ずっとそばにいても…いいの?』
    『約束する。ずっとそばにいるって。だから君も…そばにいて欲しいんだ』
    『嬉しい…うれしいですわ…ありがとうトレーナーさん…トレーナーさん……ッ』

    どんな小さな夢でも笑わず向き合ってくれた…
    叶えたかった私の夢を、みんな叶えてくれた…
    あなたに…出会えて良かった…

  • 9二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 19:59:58

    ですがこれで終わりではありませんわ!
    これからです!
    これからも夢を見つけて叶えていきましょう!
    それに…まだ、トレーナーさん自身の夢を聞いていませんのよ?
    …だからこそお聞きしますわ。
    "ウマ娘のトレーナーとして"ではなく…"ただ一人の…自分自身としての"あなたの夢を…教えてくれませんか?

    ……え?もう叶っている…?
    ふふっ…なら二人で夢を見つけていきましょう
    どんなに些細な事でも…夢にしていきましょう
    そして二人で夢を叶えていきましょう
    一心同体を共に誓った私達ならきっと…

    そう話しているうちにもうここまで来ましたわね…
    ええ、この扉を開けば…
    大丈夫、そのままで問題ありませんわ。
    この扉は私達で開きますので。
    トレーナーさん、準備はいいですか?
    では、いきますわよ…!
    せーのっ、それっ!

  • 10二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:00:20

    「おめでとうマックイーン!」
    「トレーナーさんもおめでとう!」
    「末長くお幸せに!」

    見てくださいませトレーナーさん…皆さんの声を、この祝福の暖かさを。
    レースの時のように私だけではなく…やっと…やっとあなたと一緒に皆さんの声援や祝福に包まれる事が出来ましたわ…これも私の夢だったですのよ?

    皆さんは私達の事をゴールインしたと言うのでしょう。
    ですがこれは新しい私達の新たなスタートなのです。
    そのゲートが開けば…そこから先はゴールが見えない果てしない道…果てしない空とも言うのでしょう…
    でもきっとあなたとなら…
    一緒に翼を広げて…この果てしない空に舞い上がる事が出来るから…
    私達が紡いでいく物語を誰よりも素敵なものにできるから…

    それではトレーナーさん… コホン………
    いえ、○○さん。
    一緒に行きましょう!
    この先あなたと同じ道を歩む事が出来る…
    それだけで私…とっても幸せですわ!

  • 11二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:00:41

    だから———

    私の"夢"…叶えてくれてありがとう———

  • 12二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:01:55

    以上になります

    この歌を聞いていたら浮かんできたものを一つ


    「さあ今きみと」-より子


  • 13二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:02:57
  • 14二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:18:56

    トレーナーと一心同体を誓って頑張るマックちゃんは可愛いし、二人には幸せになってほしい

  • 15二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 20:40:40

    苦楽を共にした末に、お互いが唯一無二の相手へと…王道展開は良いなぁ

  • 16二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 21:38:56

    やっぱりマックイーンはヒロイン…

  • 17二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 22:53:20

    >>14

    >>15

    読んでいただきありがとうございます

  • 18二次元好きの匿名さん24/02/11(日) 22:53:54

    >>16

    抜けてましたすみません

    読んでいただきありがとうございます

  • 19二次元好きの匿名さん24/02/12(月) 07:33:36

    一心同体いいよね…

  • 20ちょっとだけ後日談24/02/12(月) 13:50:07

    とある河原に一人の幼いウマ娘が走っていた。
    ただ我武者羅に、ただひたすらにそしてただ真っ直ぐに走り続けていた。
    大きく呼吸をして休憩していると近くにいた一人のウマ娘が近寄ってきた。

    「おねえさんどうしたの?」
    「ええ、ちょっと散歩をしていたら走っている貴女が見えたのですわ」
    「うん!わたしね!おおきくなったらレースではしるんだ!」
    無邪気な笑顔で将来の夢を語るその子に彼女は微笑みながら語りかける。
    「ふふっ、それは楽しみですわ…でもね、走る事以外にも色々夢とか持ってるでしょう?」
    「うん!おおきくなったらいろんなところへいってみたい!」

    その言葉で何かを思い出したのか彼女はその幼い顔の曇りなき瞳をじっと見つめる。
    「夢は多いほど本当になる…貴女ならきっと沢山夢を見つけて叶える事ができる…そう思いますわ」
    暫くすると彼女を呼ぶ声と幼き彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。
    「あっ、おかあさんがよんでる!またね!」
    「ええ、またね」
    彼女を見て驚く母親の方を眺めながら手を振り、声の主の方へと歩き出す。
    「どうだった?」
    「ええ、昔の私を見ていたようでしたわ」
    「君に似ているのなら、あの子の将来はきっと素敵なものになるんだろうな」
    「もうっ…でも困難に立ち向かう事もあるでしょう…ですがきっとあの子なら乗り越えられると信じていますわ。 それに………」
    「それに…?」
    「この子もきっと同じように…いえ、それ以上に素敵な夢を見つけられる、叶えられると…自信を持って言えるのです」
    彼女はお腹をさすりながらそう語る。
    「そうだな、この子ならきっと…」
    そう呟きながら彼女の手を握り、道を歩んでいく。

    「二人の夢…一緒に叶えていこうな、マックイーン」
    「ええ、トレーナーさん、あなたとならきっと……」
    いつか訪れる未来に想いを馳せながら、夢を見つけ思い描く二人なのであった……

  • 21ちょっとだけ後日談24/02/12(月) 16:05:33

    というわけでこれで最後になります
    失礼致しました

  • 22二次元好きの匿名さん24/02/12(月) 16:42:38

    こいつら一心同体(意味深)したんだ!

  • 23二次元好きの匿名さん24/02/12(月) 19:47:08

    >>22

    結ばれた後だからセーフ!セーフですわ!

  • 24二次元好きの匿名さん24/02/12(月) 20:10:25

    あああああああより子だっ!より子だっ!!

  • 25二次元好きの匿名さん24/02/12(月) 20:14:45

    まさしく比翼連理ってやつだ

  • 26二次元好きの匿名さん24/02/12(月) 22:41:03

    もしマックイーンの復帰がかなって天皇賞春秋制覇できたらスパッと引退するんだろうなとこのSS読んでて思った
    メジロの悲願たる天皇賞を春秋ともに制して特に春の方では3度の勝利で最強のステイヤーの証明をして次の夢をかなえに進むんだろうなって
    そしてそこからの第2の人生を歩むパートナーがこのSSのトレーナーというのはもう納得感しかない
    そりゃ周囲の人間は皆祝福する

  • 27二次元好きの匿名さん24/02/13(火) 01:09:22

    >>24

    良いよねこの曲…

  • 28二次元好きの匿名さん24/02/13(火) 02:13:03

    保守

  • 29二次元好きの匿名さん24/02/13(火) 07:03:56

    皆さん様々な感想ありがとうございます
    感無量です…!

  • 30二次元好きの匿名さん24/02/13(火) 08:46:11

    このレスは削除されています

  • 31二次元好きの匿名さん24/02/13(火) 12:29:46

    >>25

    白マックでも翼の演出あったもんね

  • 32二次元好きの匿名さん24/02/13(火) 22:41:46

    >>26

    解釈一致ですわ…

  • 33二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 00:05:36

    やばい・・・読んでて涙が出てきたよ・・・

  • 34二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 07:57:19

    ありがとう…

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