- 1二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:27:01
予鈴前 トレーナー室
「ハッピーバレンタイン!」
朝から担当ウマ娘のキングヘイローが上機嫌で声をかけてきた。
こういうテンションの時は大抵面倒なことになる。
今日はバレンタインデー、大体意図はわかるが、まあ見守ることにしよう。
「おはようキング」
「おはよう!日々の感謝を込めて...キングにチョコを捧げる権利をあげるわ!」
さすがキング、心の中で呟いて、一芝居打つことにした。
「用意してないよ」
「へ...?」
あのキングが文字通り鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして突っ立ている。
…可愛い、これはもうちょっとからかおう。
「ほら、キング、朝からキングに会えて嬉しいけど、そろそろ教室に行かないと遅刻するぞ」
「ち、遅刻!?キングに会えて嬉しいという言葉に免じて許してあげるわ!」
「放課後までにキングに捧げるチョコを用意するのよ~~~~」
「は、速い...ワールドレコード出せるんじゃないか?」
本当にキングはいじりがいがある、落ち込んだりしない上、反応が面白い。
この楽しみを教えてくれたセイウンスカイには感謝を禁じ得ない。
やり過ぎるお仕置きが待っているが、そのギリギリを攻めるのもまた楽しい。
実はちゃんと手作りチョコを用意してあるんだが、いつ渡そうかな。 - 2二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:27:28
放課後 トレーナー室
授業も終わり、そろそろキングがやってくることだ。
ああ、あの足音、ノックの音間違いなくキングだ。
「どうぞ、空いてるよ」
「それで?チョコの用意はできたの?」
第一声がそれか、と口に出すと怒られそうなので心の中で呟く。
はたして、そろそろチョコを渡すべきか、もう少し粘るか、いかにすべきか…。
「…早くしないと私のチョコと交換できなくなっちゃうんだから」
可愛い、なんだこの可愛い生き物は...つくづくトレーナーは担当ウマ娘に勝てない生き物だ。
今日改めてそれを思い知った。
「キング、これ、ハッピーバレンタイン」
「......こ、このおばか、用意してるなら早く渡しなさいよ。はい、私からも」
百面相のようにころころ変わるキングの表情は本当に見てて飽きない。
そんなことを思いながらキングから渡されたチョコを開ける。
「へぇ、手作りか...メッセージカード?...うっ」
キングからのメッセージ、それはキングからの労いとともに歩む想いが綴られていた。
こんなまっすぐな気持ちをからかうようなことをしてしまったのか。
ほんの少しだけ罪悪感を感じていると、キングがぷるぷる震えている。
おかしいな暖房はちゃんと効いているぞ。
「あなた、手作りのチョコありがとう!これ私の授業中に作ったんじゃないわよね」
「あーあー、ばーれーたーかー」
「ばれたかじゃないわよ、今朝のは何よ、私をからかったのね...もらえないかって心配したじゃない...」
予想外の反応が返ってきた、久しぶりにぷんぷんキングが見られると思ったのに。
本格的に罪悪感を感じ、キングを慰めることにした。 - 3二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:28:12
「このおばか...悪いと思ってるなら、あなたのチョコ食べさせて」
「あ、ああ」
って、キングがちょっと悪い笑顔をしてる。
子供はあっという間に大人になる...こんな小悪魔ムーブを身に着けるとは、やるなキング。
なぜか、目をつぶり口を出すキング、それはもうキスをねだっている仕草だった。
「わかったよ、はい、あーん」
何故か、体をすっと引くキング、目をつぶっているのにこういうことは器用だな。
「もう一声!」
得意げに言うと、また目を閉じてこちらの動きを待つキング。
そっちがその気なら...チョコを咥えて、キングとの距離を詰める。
キングは目を閉じていてこちらの行動には気づいていない...大人をからかったキングが悪いんだからな。
キングの毛穴まで見えるくらいの距離まで近づく。
キングの期待と不安が混じった息遣いが手に取るようにわかる。
綺麗だ...キングを担当してから、ずっとそう思っていた。
ハッピーバレンタイン、そう心の中で呟き、キングにチョコを口移しする。
キングはチョコで口をふさがれ声を上げられない。
チョコを飲み込んだあと、キングは一言も発さず俯き、時々上目遣いでこちらを見ている。
しかしウマ娘の本能...耳と尻尾が今のキングの気持ちを伝える。
「...おばか」
同じ言葉でも、先ほどとはまるで意味が違う...そのおばかは「イエス」を意味した。
今度はキングをしっかり抱きしめ、唇を重ねる...。
二人のキスはチョコの味がした。 - 4二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:29:48
短いですが、以上になります。
キングのバレンタインホーム台詞に触発されました。
二つの台詞の間の出来事を妄想してみました。
読んでいただけると嬉しいです。 - 5二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:31:21
最近重い内容のSS投下してたので、ほのぼの内容にしました。
なお、この後いつも通りトレーニングする模様 - 6二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:59:00
大丈夫?このキントレ、記憶を失った父親だったりしない?
幸せそうでなにより
キングはいじりがいあるよね - 7二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 22:59:53
甘くていいね!
- 8二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 23:18:23
- 9二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 23:30:34
- 10二次元好きの匿名さん24/02/14(水) 23:31:47
- 11二次元好きの匿名さん24/02/15(木) 07:27:47
何かおりてきたので後日キング視点も投下したいなって思ってます
- 12二次元好きの匿名さん24/02/15(木) 16:01:21
- 13二次元好きの匿名さん24/02/15(木) 21:42:56
- 14二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 07:14:29
作業時間確保のためセルフ保守
- 15二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 12:54:17
今晩キングパート投下できるように頑張ります
- 16二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 21:39:37
期待ほしゅ
- 17二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 23:53:58
すみません、キングのチョコ作り描写してたら完全に暴走してしまい
早めのホスト規制されてしまいました
今は外からですが、明日午前中にはキングパートあげます、ごめんなさい - 18二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:03:29
期待保守
- 19二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:51:52
都内・とある貸キッチン
「ふふふ、ついにこの日が来たわ!今日はトレーニングの休養日!バレンタインの準備を完了させるわよ!」
今年のバレンタインの準備はあえて人を遠ざけて一人で行うことにした。
カワカミさんやあの二人から後ろ髪を引かれるような懇願があったけど、今年は一人を選んだの。
だってこのキングからプレゼントを事前に知っているなんて、想像を絶する損失よ。
それに、あの人...私の一流のトレーナー...あの人へのプレゼントは一人で作り上げたい。
「さて、まずはあの子たちへのプレゼント、マカロンを作りましょう」
...いつもならあの子たちや皆の相槌があるけれど、今日はそれがない、少し...寂しいわね。
ま、まあ、いいわ、貸キッチンは一日借りているけれど時間はいくらあっても足りない。
ひたすら生地を作って、寝かせて、作って、寝かせて、また作って!そしてそれをどんどん焼いていく。
このキッチンは料理教室で使われることもありオーブンが複数あるのが魅力ね。
さすが一流の私が選んだ、一流の設備よ!
この設備と、大量に用意した食材で満足のいくプレゼントを完成させるわ!
「最初のマカロンの焼き上がりよ...ふふふ、この瞬間、料理が好きな子の気持ちがわかるわね」
「...結構な数が割れているわね...」
自分の料理の腕はわかっているわ、けれど誰もが最初は初心者。
何度も挑戦するためにここを借りたのよ、リトライよ、キング!
「そうそう味見を忘れてはいけないわ...うん、割れてても味は美味しいわ」
「色んな人にそれとなく相談したかいが合ったわね」
※もちろん、相談された相手にキングの意図はバレバレである。
「ありがとう、フラワーさん、フラッシュさん、アケボノさん」
分量は絶対にレシピ通り作ること、皆口を揃えてそう言ったわ。
最初砂糖の量に驚いたけれど、その分量に意味があるのだと教わったからしっかり守った。
きっと、味がいいのはそのおかげ、出来上がりにムラがあるのは経験不足。
なら、今日で経験不足を解消すれば、きっとうまくいくわ! - 20二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:52:15
数時間後、試行錯誤の後
「ねえ、あなた~腕が疲れたわ、マッサージ...あっ」
いけない...ついあの人を呼んでしまったわ...あの人のためプレゼントを作っているのに。
よし!こんな時は頬を叩いて気合をいれる!これに限るわ!
マッサージは自分でして、気合十分よ!
日暮れも近づいてき、ようやくオーブンや焼き上げた後の熱に慣れてきたころ...
「これでマカロンも人数分完成よ、やったわ」
お世辞にも手際よくできたとは言えない、でも徐々に失敗も減った気がする。
クッキーもマカロンも何とか人数分確保できた。
あとは、あの人に贈るチョコレートブラウニーの焼き上げりを待つのみ。
その間にキレイに焼きあがったマカロンにプレゼントする相手のイニシャルをチョコソースで描く。
LG、M、KP、HU、SW、SS...皆私の大切な友人にしてライバル。
一人一人顔を思い浮かべながら作業を行う...ふふ、皆喜んでくれるかしら。
一流のチョコブラウニーの焼き上がりを告げるオーブンの音がなる。
「どう!この焼き上がり、この匂い、最高じゃない!」
つい嬉しくて一人だというのに喜びの声を上げてしまった...、きっとあの人も喜ぶわ。
でも...でも、何か地味ね...。
味見の結果、味はいいわ、さすがフラッシュさん秘伝のレシピね。
でも、一流のキングがここで妥協していいの?
正直私のチョコブラウニーはやっと及第点...でも新しいものを作るにはもう時間が...。
そうだわ、マックイーンさんと一緒にいったデザートビュッフェのあの品よ! - 21二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:52:32
メジロ家御用達のホテルのデザートビュッフェ、色とりどりのデザートが並ぶ中、
一際私の目を引いたのは、そう、トライフル!
「これよ、これだわ、トライフルなら今ある材料で作れて、見た目もキングに相応しい華やかなものになるわ」
早速私は容器にまずマカロンに挟むためのカスタードクリームを入れる。
次にちょっと形が悪くて分けておいたクッキー、休憩用のバナナにキュウイ、それと先ほど焼き上げたチョコブラウニーを一口サイズに切って乗せる。
これを三段重ねにすれば!一流チョコレートトライフルの完成よ!
あえて最上段に欠けたハート型のクッキーを配置するセンス!
トライフル―つまらないもの―の枠を超えた一品の完成だわ...いえ、ここに割れてしまったマカロンを乗せて、割れ目はチョコソースで隠してしまいましょう。
「ついに完成したわ、これでバレンタインデーの準備はパーフェクト!」
「あ...もうこんな時間、そろそろ帰らないと門限に間に合わないわ」
今日は楽しかったわ、雰囲気もいいキッチンだし、今度は二人で...なんて、うふふ。
最高の準備を整えた、私は意気揚々とトレセン学園に帰る。
帰り道もお風呂で疲れを癒す間もベッドに入ってからも...何度も何度もバレンタイン当日のシュミレーションをする。
「でも、あの人ならきっと私の期待を裏切ってくれるわ、もちろんいい方向にね!」 - 22二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:53:43
バレンタイン当日・トレーナー室
今日は待ちに待ったバレンタインデー。
この日ばかりはトレセン学園も普段とは違う浮ついた雰囲気になる。
もちろん私もその一人、これから待っている幸せな時間を思うと足取りも軽くなる。
いつの間にかトレーナー室の前にいた、高鳴る胸の鼓動を抑えノックをする。
「ハッピーバレンタイン!」
「おはようキング」
あら、バレンタインデーにノリの悪いトレーナーね。
まあいいわ、でも、その後の言葉はわかっているわよね!
「おはよう!日々の感謝を込めて...キングにチョコを捧げる権利をあげるわ!」
私がこんなに丹精込めて、あなたのためにチョコを作ったのだから、
あなたも当然私のためのチョコを用意してしてくれているわよね。
だって、常に私の期待を超えてくれるあなたなんだもの!
「用意してないよ」
「へ...?」
う、嘘よ、このキングのためのチョコを用意してないなんて。
何度も何度も聞き返しても同じ答えが返ってくる。
「ほら、キング、朝からキングに会えて嬉しいけど、そろそろ教室に行かないと遅刻するぞ」
「ち、遅刻!?キングに会えて嬉しいという言葉に免じて許してあげるわ!」
「放課後までにキングに捧げるチョコを用意するのよ~~~~」
押し問答を繰り返すうちにずいぶん時間が経っていたらしい、遅刻は一流のすることじゃないわ。
私は思わず、アニメの悪役のような捨て台詞を吐き、教室に向かった。 - 23二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:55:21
- 24二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:55:48
放課後・トレーナー室
友人たちとのプレゼント交換が無事終わった私はトレーニングの準備を整え、トレーナー室に向かう。
サプライズのかいあってか皆驚いたり、喜びの感想をくれた。
特にスカイさんとのプレゼント交換は痛快だった。
お生憎様、キングはお菓子作りも一流なのよ、そういった時のスカイさんの顔ったら、ふふ。
それだけでも貸キッチンを用意したかいがあったと言いたいけど、まだ半分。
まだ肝心のあの人、あのへっぽこに渡せてないじゃない。
きっとあのおばかは私のための仕事に夢中になりすぎてチョコを用意し忘れたのよ。
だから私の授業中に大急ぎでチョコを準備したに違いないわ。
そんなことを考えているともうトレーナー室の前...。
今朝とは違う、期待と不安の入り混じった気持ちでドアをノックする。
「それで?チョコの用意はできたの?」
どんな言葉を選べばいいのかわからず、こんなことを言ってしまった、可愛くないって思われたかな。
あなたのチョコがほしいのって素直にお願いできればいいのに、どうしてできないのか。
ねぇ、あなたのキングがこんな気持ちでいるのよ、早く...。
「…早くしないと私のチョコと交換できなくなっちゃうんだから」
これでチョコレート出さなかったらもう知らない、口利いてあげないんだから。
ちょっと涙目になっていたかもしれない、それを隠すように顔を背ける。
すると、トレーナーが包みが差し出された。 - 25二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:56:31
「キング、これ、ハッピーバレンタイン」
「......こ、このおばか、用意してるなら早く渡しなさいよ。はい、私からも、ハッピーバレンタイン!」
嬉しい...本当に嬉しい。
どうしてだろ、私、この人の一つ一つの行動にこんなにも心を揺さぶられる。
私は宝物のように差し出された包みを抱きしめる。
せっかくだから中身も見ようとラッピングを解く...そういえば見たことのないメーカーの包み紙ね。
...これ、手作り...よね?一見して既製品ではないとわかる不揃いな形状...自分も手作りしたからわかる。
ん?今朝はチョコは用意してないって言ってたわね。
キッチンを使おうにも学生寮はトレーナーは立ち入り禁止、食堂は夕食が終わるまでは大忙し...わざわざ自宅に帰った...?
なんとなく、何をされたのかわかってしまった。
さっきまであんなに嬉しかったのに、今度は腹立たしくて仕方がない。
「あなた、手作りのチョコありがとう!これ私の授業中に作ったんじゃないわよね」
「あーあー、ばーれーたーかー」
「ばれたかじゃないわよ、今朝のは何よ、私をからかったのね...もらえないかって心配したじゃない...」
チョコを用意していてくれてとっても嬉しい。
そして私をからかって遊んだことは許せない。
どっちの気持ちも本当、だから怒ったり、嬉しくって自分でも訳がわからない。
私の様子を見て、トレーナーが狼狽えいる...普段はあんなに頼りになる人なのに。
これはチャンスね...今朝のお返しさせてもらうわ。 - 26二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:57:31
「このおばか...悪いと思ってるなら、あなたの、チョコ食べさせて」
「あ、ああ、わかったよ、はい、あーん」
悪くない、悪くないけど、この程度じゃ私は半日も弄んだ埋め合わせにはならないわ。
ウマ娘の感覚は人間より数倍鋭敏、目をつぶっていても大雑把な動きはわかる。
私はトレーナーがチョコを摘み差し出す手を体を引いて避ける。
「もう一声!」
さあ、あなたはどうするの?一流の回答を見せてもらうわ。
まあ、あーんが限界よね、たーっぷり狼狽えただろうし、それで許してあげる。
そんな風に思っていると、あの人が近づいてくるのを感じた。
あーんしようとしてくれた時と違って、体ごと近づいているそんな感じ。
何をされるんだろう、ううん何をしてくれるんだろう...期待で胸がバクバクする。
レースの前かそれと同じくらい胸が苦しい。
思わず目を閉じる力が強くなり、呼吸が荒くなる。
あの人がふれあいそうな距離にいるのがわかる。
「......」
チョコが口の中に入ってきた、そのままあの人の唇がそっと私の唇に触れた。
あの人との初めてのキス、嬉しくて、驚いてて、何を言っていいかわからない。
「...おばか」
やっとのことで口にできたその言葉は、気持ちと裏腹なものだった。
それでもあの人は私の真意を理解してくれる。
私はあの人に抱かれ、唇を重ねる。
初めてのキスはチョコレートの味がした。 - 27二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:58:15
キングパート投下させていただきました。
読んでいただけると嬉しいです。
キングは本当にカワイイですね。 - 28二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 10:58:56
- 29二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 11:20:15
うおっ…スゴい威力 紛れもない一流
- 30二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 12:20:39
- 31二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 12:22:39