- 1二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:02:55
おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、ミホノブルボンあてにきました。
みほのぶるぼんさま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝
こんなのです。字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらいでした。けれどもブルボンはうれしくてうれしくてたまりませんでした。はがきをそっとトレセン学園のかばんにしまって、へやじゅうとんだりはねたりしました。ニシノフラワーになにごとかと尋ねられたので、とくべつに見せてあげました。フラワーもよろこんで、おべんとうを作ってくれることになりました。
ね床にもぐってからも、山猫のにゃあとした顔や、そのめんどうだという裁判のけしきなどを、スタンバイモードのあいだずっと考えていました。やがてスリープモードに移行しましたが、定刻よりすう分のおくれがあったようです。
そして、ブルボンがいつもどおり眼をさまし、あさの自主トレーニングをおえたころにはもうすっかり明るくなっていました。ブルボンはトレーナーにトレーニングの日どりをあらためるようおねがいをしました。ブルボンがあやまると、トレーナーはわらって「トレーニング以外で自分から頼みごとだなんてめったにないからな、行ってくるといい」と言いました。おもてにでてみると、まわりの山は、みんなたったいまできたばかりのようにうるうるもりあがって、まっ青なそらのしたにならんでいました。ブルボンはinゼリーを飲んで、おべんとうを持ち、ひとり谷川に沿ったこみちを、かみの方へのぼって行きました。 - 2二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:03:16
すきとおった風がざあっと吹くと、栗の木はばらばらと実をおとしました。ブルボンは栗の木をみあげて、
「栗の木さん、やまねこさんがここを通りましたか。」とききました。栗の木はちょっとしずかになって、
「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」と答えました。
「東ですと私の進んでいる方角ですね。認識完了。栗の木さん、ありがとうございます。オペレーション「さらに進む」を実行します。それでは、ありがとうございました。」
栗の木はだまってまた実をばらばらとおとしました。
ブルボンがすこし行きますと、そこはもう笛ふきの滝でした。笛ふきの滝というのは、まっ白な岩の崖のなかほどに、小さな穴があいていて、そこから水が笛のように鳴って飛び出し、すぐ滝になって、ごうごう谷におちているのをいうのでした。
ブルボンは滝に向いて叫びました。
「すみません、笛ふきさん、やまねこさんがここを通りましたか。」
滝がぴーぴー答えました。
「やまねこは、さっき、馬車で西の方へ飛んで行きましたよ。」
「…想定外の事態を認識。西ですと私の寮の方角です。仕方ありません、オペレーション「さらに進む」を実行します。笛吹きさん、それでは、ありがとうございました。」
滝はまたもとのように笛を吹きつづけました。ブルボンは山猫が地図をかかなかったこと、だれもきょりを言ってくれないことをふしぎに思いましたが、だれもが正しいデータを知っているわけではないことをトレーナーから教わっていたので、かつてのようにフリーズすることはありませんでした。 - 3二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:03:45
ブルボンがまたすこし行きますと、一本のぶなの木のしたに、たくさんの白いきのこが、どってこどってこどってこと、変な楽隊をやっていました。
ブルボンはからだをかがめて、
「きのこさん、やまねこさんがここを通りましたか。」
とききました。するときのこは
「やまねこなら、けさはやく、馬車でみなみの方へ飛んで行きましたよ。」とこたえました。ブルボンは首をひねりました。
「南ですとあちらの山のなかですね。ステータス「困惑」を感知。オペレーション「さらに進む」を実行します。きのこさん、それでは、ありがとうございました。」
きのこはみんないそがしそうに、どってこどってこと、あのへんな楽隊をつづけました。
ブルボンはまたすこし行きました。すると一本のくるみの木の梢を、栗鼠がぴょんととんでいました。ブルボンはすぐ手まねきしてそれをとめて、
「りすさん、やまねこがここを通りましたか。」とたずねました。するとりすは、木の上から、額に手をかざして、ブルボンを見ながらこたえました。
「やまねこなら、けさまだくらいうちに馬車でみなみの方へ飛んで行きましたよ。」
「南へ行ったというデータが、2ヶ所で得られるとはおかしいですね。オペレーション「さらに進む」を実行します。きのこさん、それでは、ありがとうございました。」りすはもう居ませんでした。ただくるみのいちばん上の枝がゆれ、となりのぶなの葉がちらっとひかっただけでした。
ブルボンがすこし行きましたら、谷川にそったみちは、もう細くなって消えてしまいました。そして谷川の南の、まっ黒な榧の木の森の方へ、あたらしいちいさなみちがついていました。ブルボンはそのみちをのぼって行きました。榧の枝はまっくろに重なりあって、青ぞらは一きれも見えず、みちは大へん急な坂になりました。ブルボンは平然と、坂路トレーニングの要領で、その坂をのぼりますと、にわかにぱっと明るくなって、眼がちくっとしました。そこはうつくしい黄金いろの草地で、草は風にざわざわ鳴り、まわりは立派なオリーブいろのかやの木のもりでかこまれてありました。
- 4二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:04:30
その草地のまん中に、せいの低いおかしな形の男が、膝を曲げて手に革鞭をもって、だまってこっちをみていたのです。
ブルボンはだんだんそばへ行って、びっくりして立ちどまってしまいました。その男は、片眼で、見えない方の眼は、白くびくびくうごき、上着のような半纒のようなへんなものを着て、だいいち足が、ひどくまがって山羊のよう、ことにそのあしさきときたら、ごはんをもるへらのかたちだったのです。つまり、ブルボンのデータにないような風体の人物でした。ブルボンはおちついてその男の特徴を記録しながら、たずねました。
「あなたは山猫をしりませんか。」
するとその男は、横眼でブルボンの顔を見て、口をまげてにやっとわらって言いました。
「山ねこさまはいますぐに、ここに戻ってお出やるよ。おまえはみほのぶるぼんさんだな。」
ブルボンはぎょっとして、一あしうしろにさがって、
「はい、私はミホノブルボンです。しかしながら、なぜそれを知っているのですか。」と言いました。するとその奇体な男はいよいよにやにやしてしまいました。
「そんだら、はがき見だべ。」
「見ました。それで来たのです。」
「あのぶんしょうは、ずいぶん下手だべ。」と男は下をむいてかなしそうに言いました。ブルボンはきのどくになって、
「いえ、なかなか、ぶんしょうが上手でしたよ。」
と言いますと、男はよろこんで、息をはあはあして、耳のあたりまでまっ赤になり、きもののえりをひろげて、風をからだに入れながら、
「あの字もなかなかうまいか。」とききました。 - 5二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:04:58
「あの字もなかなかうまいか。」とききました。
ブルボンは、おおまじめに、へんじしました。
「はい。五年生であれどあのようには書けないでしょう。」
すると男は、急にまたいやな顔をしました。
「五年生っていうのは、尋常五年生だべ。」その声が、あんまり力なくあわれに聞えましたので、ブルボンはあわてて言いました。
「いいえ、大学校の五年生です。」
すると、男はまたよろこんで、まるで、顔じゅう口のようにして、にたにたにたにた笑って叫びました。
「あのはがきはわしが書いたのだよ。」
ブルボンは男が「高揚」していることを好ましく感じ、さらに
「ぜんたいあなたはなにですか。」とたずねますと、男は急にまじめになって、
「わしは山ねこさまの馬車別当だよ。」と言いました。
そのとき、風がどうと吹いてきて、草はいちめん波だち、別当は、急にていねいなおじぎをしました。
ブルボンはおかしいとおもって、ふりかえって見ますと、そこに山猫が、黄いろな陣羽織のようなものを着て、緑いろの眼をまん円にして立っていました。やっぱり山猫の耳は、立って尖っているなと、ブルボンがおもいましたら、山ねこはぴょこっとおじぎをしました。ブルボンもていねいに挨拶しました。
「あなたが差出人の「山ねこ」であると判断。はじめまして、ミホノブルボンです。きのうははがきをありがとうございました」
山猫はひげをぴんとひっぱって、腹をつき出して言いました。
「こんにちは、よくいらっしゃいました。じつはおとといから、めんどうなあらそいがおこって、ちょっと裁判にこまりましたので、あなたのお考えを、うかがいたいとおもいましたのです。まあ、ゆっくり、おやすみください。じき、どんぐりどもがまいりましょう。どうもまい年、この裁判でくるしみます。」山ねこは、ふところから、巻煙草の箱を出して、じぶんが一本くわえ、
「いかがですか。」とブルボンに出しました。 - 6二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:05:23
ブルボンはびっくりして、
「未成年の喫煙は禁じられています。また、アスリート的見地からも推奨されません。つまり、結構です。」と言いましたら、山ねこはおおようにわらって、
「ふふん、まだお若いから、」と言いながら、マッチをしゅっと擦って、わざと顔をしかめて、青いけむりをふうと吐きました。山ねこの馬車別当は、気を付けの姿勢で、しゃんと立っていましたが、いかにも、たばこのほしいのをむりにこらえているらしく、なみだをぼろぼろこぼしました。
ブルボンはせっかくおべんとうを持ってきていたので、食べることにしました。やまねこはちらと見て、火をけしました。別当はなおさらなみだをぼろぼろこぼしました。
そのとき、ブルボンは、足もとでパチパチ塩のはぜるような、音をききました。びっくりして屈んで見ますと、草のなかに、あっちにもこっちにも、黄金いろの円いものが、ぴかぴかひかっているのでした。よくみると、みんなそれは赤いずぼんをはいたどんぐりで、もうその数ときたら、三百でも利かないようでした。わあわあわあわあ、みんななにか云っているのです。
「あ、来たな。蟻のようにやってくる。おい、さあ、早くベルを鳴らせ。今日はそこが日当りがいいから、そこのとこの草を刈れ。」やまねこは巻たばこを投げすてて、大いそぎで馬車別当にいいつけました。馬車別当もたいへんあわてて、腰から大きな鎌をとりだして、ざっくざっくと、やまねこの前のとこの草を刈りました。そこへ四方の草のなかから、どんぐりどもが、ぎらぎらひかって、飛び出して、わあわあわあわあ言いました。
馬車別当が、こんどは鈴をがらんがらんがらんがらんと振りました。音はかやの森に、がらんがらんがらんがらんとひびき、黄金のどんぐりどもは、すこししずかになりました。見ると山ねこは、もういつか、黒い長い繻子の服を着て、勿体らしく、どんぐりどもの前にすわっていました。まるでウイニングライブをかんしょうするみんなのようだとブルボンはおもいました。別当がこんどは、革鞭を二三べん、ひゅうぱちっ、ひゅう、ぱちっと鳴らしました。
空が青くすみわたり、どんぐりはぴかぴかしてじつにきれいでした。 - 7二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:05:47
「裁判ももう今日で三日目だぞ、いい加減になかなおりをしたらどうだ。」山ねこが、すこし心配そうに、それでもむりに威張て言いますと、どんぐりどもは口々に叫びました。
「いえいえ、だめです、なんといったって頭のとがってるのがいちばんえらいんです。そしてわたしがいちばんとがっています。」
「いいえ、ちがいます。まるいのがえらいのです。いちばんまるいのはわたしです。」
「大きなことだよ。大きなのがいちばんえらいんだよ。わたしがいちばん大きいからわたしがえらいんだよ。」
「そうでないよ。わたしのほうがよほど大きいと、きのうも判事さんがおっしゃったじゃないか。」
「だめだい、そんなこと。せいの高いのだよ。せいの高いことなんだよ。」
「押しっこのえらいひとだよ。押しっこをしてきめるんだよ。」
もうみんな、がやがやがやがや言って、なにがなんだか、まるで蜂の巣をつっついたようで、わけがわからなくなりました。そこでやまねこが叫びました。
「やかましい。ここをなんとこころえる。しずまれ、しずまれ。」
別当がむちをひゅうぱちっとならしましたのでどんぐりどもは、やっとしずまりました。
ブルボンは予想外のできごとにふわふわもぐもぐしながら聞いていました。
やまねこは、ぴんとひげをひねって言いました。
「裁判ももうきょうで三日目だぞ。いい加減に仲なおりしたらどうだ。」
すると、もうどんぐりどもが、くちぐちに云いました。
「いえいえ、だめです。なんといったって、頭のとがっているのがいちばんえらいのです。」
「いいえ、ちがいます。まるいのがえらいのです。」
「そうでないよ。大きなことだよ。」がやがやがやがや、もうなにがなんだかわからなくなりました。山猫が叫びました。
「だまれ、やかましい。ここをなんと心得る。しずまれしずまれ。」
別当が、むちをひゅうぱちっと鳴らしました。山猫がひげをぴんとひねって言いました。
「裁判ももうきょうで三日目だぞ。いい加減になかなおりをしたらどうだ。」
「いえ、いえ、だめです。あたまのとがったものが……。」がやがやがやがや。 - 8二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:06:03
山ねこが叫びました。
「やかましい。ここをなんとこころえる。しずまれ、しずまれ。」
別当が、むちをひゅうぱちっと鳴らし、どんぐりはみんなしずまりました。山猫がブルボンにそっと申しました。
「このとおりです。どうしたらいいでしょう。」
やっとたべおえたブルボンはこたえました。
「問題の分析完了。簡潔策を提示します。「えらい」の定義を、だれも認めたがらないようなものにするというのはどうでしょうか。マスターに教わりました。」
山猫はなるほどというふうにうなずいて、それからいかにも気取って、繻子のきものの胸を開いて、黄いろの陣羽織をちょっと出してどんぐりどもに申しわたしました。
「よろしい。しずかにしろ。申しわたしだ。このなかで、いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ。」
どんぐりは、しいんとしてしまいました。それはそれはしいんとして、堅まってしまいました。
そこで山猫は、黒い繻子の服をぬいで、額の汗をぬぐいながら、ブルボンの手をとりました。別当も大よろこびで、五六ぺん、鞭をひゅうぱちっ、ひゅうぱちっ、ひゅうひゅうぱちっと鳴らしました。 - 9二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:06:19
やまねこが言いました。
「どうもありがとうございました。これほどのひどい裁判を、まるで一分半でかたづけてくださいました。どうかこれからわたしの裁判所の、名誉判事になってください。これからも、葉書が行ったら、どうか来てくださいませんか。そのたびにお礼はいたします。」
「要求を受諾。謝礼は不要です。」
「いいえ、お礼はどうかとってください。わたしのじんかくにかかわりますから。そしてこれからは、葉書にみほのぶるぼんどのと書いて、こちらを裁判所としますが、ようございますか。」
ブルボンが「ええ、かまいません。」と申しますと、やまねこはまだなにか言いたそうに、しばらくひげをひねって、眼をぱちぱちさせていましたが、とうとう決心したらしく言い出しました。
「それから、はがきの文句ですが、これからは、用事これありに付き、明日出頭すべしと書いてどうでしょう。」
ブルボンはしばらく検証して言いました。
「判事へのはがきの文言としては不適当かと。再考をおすすめします。」
山猫は、どうも言いようがまずかった、いかにも残念だというふうに、しばらくひげをひねったまま、下を向いていましたが、やっとあきらめて言いました。
「それでは、文句はいままでのとおりにしましょう。そこで今日のお礼ですが、あなたは黄金のどんぐり一升と、塩鮭のあたまと、どっちをおすきですか。」
「黄金のどんぐりがすきです。」
山猫は、鮭の頭でなくて、まあよかったというように、口早に馬車別当に云いました。
「どんぐりを一升早くもってこい。一升にたりなかったら、めっきのどんぐりもまぜてこい。はやく。」
別当は、さっきのどんぐりをますに入れて、はかって叫びました。
「ちょうど一升あります。」 - 10二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:06:33
山ねこの陣羽織が風にばたばた鳴りました。そこで山ねこは、大きく延びあがって、めをつぶって、半分あくびをしながら言いました。
「よし、はやく牛車のしたくをしろ。」白い大きなきのこでこしらえた牛車が、ひっぱりだされました。そしてなんだかねずみいろの、おかしな形の牛がついています。
「さあ、おうちへお送りいたしましょう。」山猫が言いました。二人は牛車にのり別当は、どんぐりのますを牛車のなかに入れました。
ひゅう、ぱちっ。
馬車は草地をはなれました。木や藪がけむりのようにぐらぐらゆれました。ブルボンは黄金のどんぐりを見、やまねこはとぼけたかおつきで、遠くをみていました。ブルボンもときおり、やまねこが何をみているのかが気になって遠くをみてみました。ブルボンは気づいていませんでしたが、やまねこに負けず劣らずとぼけたかおつきになっていたようです。
牛車が進むにしたがって、どんぐりはだんだん光がうすくなって、まもなく牛車がとまったときは、あたりまえの茶いろのどんぐりに変っていました。そして、山ねこの黄いろな陣羽織も、別当も、きのこの牛車も、一度に見えなくなって、ブルボンはトレセン学園の前に、どんぐりを入れたますを持って立っていました。
それからあと、山ねこ拝というはがきは、もうきませんでした。やっぱり、出頭すべしと書いてもいいと言えばよかったと、ブルボンはときどき思うのです。 - 11二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:12:44
- 12二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:15:12
これライスが書いたのかな
- 13二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:17:40
宮沢賢治がブルボンの無垢な部分にスーッと効いて…良いものを見た
- 14二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:42:23
けれどもブルボンはうれしくてうれしくてたまりませんでした。はがきをそっとトレセン学園のかばんにしまって、へやじゅうとんだりはねたりしました。ニシノフラワーになにごとかと尋ねられたので、とくべつに見せてあげました。フラワーもよろこんで、おべんとうを作ってくれることになりました。
ブルボンはinゼリーを飲んで、おべんとうを持ち、ひとり谷川に沿ったこみちを、かみの方へのぼって行きました。
ブルボンは山猫が地図をかかなかったこと、だれもきょりを言ってくれないことをふしぎに思いましたが、だれもが正しいデータを知っているわけではないことをトレーナーから教わっていたので、かつてのようにフリーズすることはありませんでした。
ブルボンは平然と、坂路トレーニングの要領で、その坂をのぼりますと、にわかにぱっと明るくなって、眼がちくっとしました。
「いえ、なかなか、ぶんしょうが上手でしたよ。」
「五年生っていうのは、尋常五年生だべ。」その声が、あんまり力なくあわれに聞えましたので、ブルボンはあわてて言いました。
「いいえ、大学校の五年生です。」
すると、男はまたよろこんで、まるで、顔じゅう口のようにして、にたにたにたにた笑って叫びました。
「あのはがきはわしが書いたのだよ。」
ブルボンは男が「高揚」していることを好ましく感じ、さらに
「ぜんたいあなたはなにですか。」とたずねますと
ブルボンはびっくりして、
「未成年の喫煙は禁じられています。また、アスリート的見地からも推奨されません。つまり、結構です。」
ブルボンは予想外のできごとにふわふわもぐもぐしながら聞いていました。
「問題の分析完了。簡潔策を提示します。「えらい」の定義を、だれも認めたがらないようなものにするというのはどうでしょうか。マスターに教わりました。」
「それから、はがきの文句ですが、これからは、用事これありに付き、明日出頭すべしと書いてどうでしょう。」
ブルボンはしばらく検証して言いました。
「判事へのはがきの文言としては不適当かと。再考をおすすめします。」
それからあと、山ねこ拝というはがきは、もうきませんでした。やっぱり、出頭すべしと書いてもいいと言えばよかったと、ブルボンはときどき思うのです。
可愛い 可愛い - 15二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 21:49:05
ライスがナレーションしてる所にブルボンの無機質なセリフが差し込まれてこれは…
- 16二次元好きの匿名さん21/09/03(金) 22:29:35
可愛い
それしか言葉がない