- 1二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:01:58
- 2二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:02:28
「面白いチョコを用意してきたぜ」
2月14日の朝。
愛バからそう言って渡された手作りチョコは、二者択一のロシアンルーレットチョコだった。
面白い、ってそういう……!?
「『当たり』の味か『外れ』の味か……さァ、まさか逃げやしねえよな」
「ひぇっ……!?に、逃げないよ……!」
小さな箱を片手に、壁ドンで追いやられてしまった。彼女は私を逃がす気などハナからない。
観念してチョコを1つ選んだ。
「じゃあ……こっちで。いただきます」
「どうぞ」
「……辛っっ!!豆板醤!?」
「ククク……外れの方を引いたか。残念だったな。ほらよ、こっちが当たりだ」
当たりのミルクチョコを差し出してきた。私が食べている間も、水筒の蓋を開けて大人しく待っている。
なんだかんだ優しいところが妙に憎めなくて、思わず頬が緩んだ。 - 3二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:02:51
時は流れて昼休み。
チャイムが鳴って間もなく、ナカヤマフェスタはさっきとは違う箱と弁当を携えてトレーナー室を訪れた。
次に渡されたのはほろ苦いビターチョコ。甘ったるい菓子は好みじゃないから、とビターで用意したという。
しかし、ここで1つ引っかかる点があった。
「あの、食べるの私なんですけど……」
「それはまあ……そうだな」
個人的には甘いお菓子の方が好みだ。少し申し訳なく思いつつも尋ねてみると、やや歯切れの悪い返事が気になるものの、目の前の少女はきょとんとしている。
「だって、誰かにチョコをあげるなら相手の好みに合わせると思うんだよね」
「ッ……!」
私達は恋人同士だ。たくさんのデートを重ねて今に至る。当然彼女は私の好みを知っているはずなのだが……
「だから今回貴方が自分好みの味で作ってきたのって、好きなものを私にも同じように好きになってほしいとか、自分の好みを知ってほしいとか、そういう理由があるのかなって」
「……」
あ、目を逸らした。深掘りされると流石に恥ずかしいらしい。
惜しいところまでは行ってるけど核心を突いてはいない、といったところか。それなら残る答えは――
「それとも……一緒に食べたいから?」
「〜〜〜ッ、畜生……」
どうやら正解だったみたいだ。返す言葉もない様子で、愛用のニット帽を目深に被った。
第2ラウンドは、私の勝ち。 - 4二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:03:37
時計の針が右に傾いた頃、フェスタからデートのお誘いがあった。
今日のトレーニングは休みにしている。せっかくのオフだからということで、デートの後はそのまま私の家に帰れるように外泊届も出してきた。
懐かしいね、と話しながら歩くその場所は、数年前に私と彼女が出会った波止場。
「……ハッピーバレンタイン」
照れくさいのか、耳が半分折れて頬は微かに紅潮している。
包装も少し豪華になっているから、きっとこれが本当の本命チョコなのだろう。
「あ、ありがとう……!」
「開けていいぜ」
「いいの?じゃあ早速……」
お言葉に甘えて箱のリボンを解いた。
"トレーナー様
楽しいバレンタインを
ナカヤマフェスタ"
箱から溢れんばかりのコイン型のチョコに、短いながらも丁寧な言葉遣いの手紙が添えられている。
3度もチョコをくれた上に、最後の1つはこんなにも手間をかけていて、自分のためにここまでしてくれるなんて……という喜びで心が満たされた。
そんな私の様子を見て、悪戯っぽい笑みを浮かべたフェスタはジリジリとこちらに詰め寄る。 - 5二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:04:34
「オイオイ、チョコはもう渡しただろ?んな物欲しそうな顔をしてどうしたんだよ」
「え、」
「もしかして……"お遊び"をご希望かい?」
妖艶な息遣いを交えながら、耳元でそっと囁いた。
彼女の甘くて低い声に、心も身体も溶かされそうになる。
「フッ……続きは、今夜のお楽しみだな」
「……望むところだよ」
随分自信が滲み出た声色だけど、そう言う貴方こそ私との"お遊び"を誰よりも望んでいるくせに。
素直じゃない誘い方しかできない、そんなフェスタのことが私は好き。 - 6二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:04:48
「そうだ。お返しは何がいい?できれば貴方の希望に合わせたいと思ってまだ何も用意してないんだけど」
彼女は一見近寄り難いが、主に後輩達や女性ファンから密かに人気がある。同室のシリウス共々、チョコで部屋がいっぱいになっていることは想像に難くない。
もちろん男性ファンからも本命チョコに近いものを贈られたりもするし、尚更飽き飽きしていることだろう。
正直、ちょっと妬けてしまう。
「じゃあ……味噌汁。ちょっと塩っぱいのがいい」
「え、味噌汁?そっか……ふふ、いいよ」
「おかしいか?」
「ううん、違うよ。その……なんか、プロポーズされたみたいな気持ちになっちゃって」
「……あと数年待っとけ。それまで逃げんなよ?」
――ああ、心配いらないな。
彼女の愛は、私だけに向いている。
さあ、早く帰ろう。燃え上がった私達の熱で、チョコまで溶けてしまわないように。 - 7二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:06:47
おしまい!お粗末さまでした
タイトル変えて内容もちょっと手直ししています
落ちてしまった前スレで感想を1つ頂いていたのにお返事が間に合わず申し訳ないです、その節はありがとうございました - 8二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:07:23
- 9二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:11:13
👍
- 10二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 18:16:50
このレスは削除されています
- 11二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 20:38:21
- 12二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 21:11:02
バレンタインボイスと特別なチョコを活かしたお話好き
アツアツだねえ - 13二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 22:28:20
ぬあ〜〜〜すみません、、、うっかりしてました、、、
前作および落ちた前スレから引き続き読んで頂いてありがとうございます……!
何につけてもイチャコラしまくってるのでこれはもう早いこと結婚してもらうしかないですね
- 14二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 22:31:34
ありがとうございます!
特別チョコ貰った上でホームでボイス2種類聞いて「え?これ全部違うチョコでは?めっちゃくれるなあ…」と思ったんですよね
その結果トレーナーに何度もアプローチする強火ヤマフェスタが出来上がりました
ずっとお互いにドキドキするお熱いカップルであってほしいものです……
- 15二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 07:06:55
- 16二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 07:26:00
ふたりのかわいいバレンタイン絵も拝めるのありがたい
- 17二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 07:51:08
- 18二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 16:30:03