ドリトライ×はだしのゲン二次小説(3)

  • 1図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:18:08

    しゃあっ、クロスオーバー!
    3スレ目をタフカテに投下だあっ

  • 2図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:19:24
  • 3図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:20:27
  • 4図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:21:26

      第十話  最強の男と、凶相の敵と

     リングサイドで夕華が声を上げる。
    「黒岩……! 大丈夫なのかい!」

     身構えたまま、ちら、と目だけ向けて黒岩が答える。
    「ええ、どうってこたぁねえすよ。医者の薬が効いたんでね」
     そこで敵を見据え、ひどく顔を歪めた。
    「医者もよぉ、何の痺れ薬か分からねぇんで解毒剤も用意しようがねえ、なんて抜かすからよ……ありったけ下剤出させて、バケツ一杯も水飲んでよ。上から下から吐き出しひり出して、腹ン中全部洗い流してやったぜ……! で、よお」

     腹をさすり、その下のオムツのような布の固まりに目を落とす。
     顔を上げると、震えるほどに頬を歪めて敵をにらみつけた。
    「その代償がこれよ……伊達男の黒岩サンによ、むつきの取れねえ赤んぼみてえな格好させるとはよォ……た・か・く・つくぜえぇぇテメエら……!」

     夕華が言う。
    「黒岩。……有難う、よく来てくれた。他の二人はどうだい」

     黒岩は首を横に振る。
    「同じ処置を試しましたが……ダメです、脱水症状でとても動けやしません」

    「そうかい。……お前だけでも来てくれて良かった、これで――」

     黒岩は半身を切って腰を落とし、床を踏み締めるように足を開く。左手は腹の高さに下げつつ自然に前へ伸ばし、右手は腰に引き絞る。拳闘ではなく、空手を基調とした構え。
    「ええ。これで百人力すよ……青坊、元。邪魔だ、どいてろ」

     リングサイドで横たわる生野が身を起こし、つぶやく。
    「そこは『よく頑張ったな』とかだろ……」

  • 5図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:22:22

     黒岩は構わず、三人の敵に視線を走らせる。
    「デカブツ、根暗、素人小僧。誰から来る? 一緒にでもいいぜ、手間が省ける」

     竜吉が頬を引きつらせる。
    「誰が素人じゃと……!」

     だが、先に前に出たのは巨漢。力士と見まごうほどの体格を具えた男だった。
    「お主《んし》ゃあよう……さっきはようもやってくれたのう、ああ!?」

     観客たちからはやし立てるような声が上がった。
    「いよっ、待ってました横綱!」
    「見せてくれよお前の角力拳闘《スモウボクシング》!」
    「ひがぁぁしぃぃ~、東京モン~~、にぃぃしぃぃ~、宮呉《みやくれ》ぇぇ島《じま》ぁぁぁ~~!」

     ――決して横綱だったわけではない。だが、戦時中も続けられていた大相撲において、かつて十両の位にいた男。
     その巨体を分厚く覆う脂肪は、男にとっての枷でもなければ不摂生の結果でもない。それは鍛え上げた鎧にして武器。敵のあらゆる打撃を体の芯に通さず、自身の突進には計り知れない質量を乗せる。
     そして当然。その巨大な鎧を着て動くだけの、猛獣の如き筋力をその奥に秘めている。彼と戦った拳闘士は口を揃えて「山から下りてきた大熊に跳ね飛ばされたようだった」「山を、大地を殴っているように、拳が効いている手応えがなかった」と語る。

     『角力山脈《スモウアトラス》』。かつての四股名《しこな》から宮呉島《みやくれじま》と呼ばれる男の、もう一つの異名だった――。

     宮呉島は黒岩を見下ろし、自らの大きな腹を叩く。
    「ふんっ、貧相な奴め……鶏ガラ代わりに煮込んでちゃんこのダシにしてやろうか、あぁん?」

     黒岩はむしろ楽しげに頬を歪める。
    「てめえこそ煮込んで豚脂《ラード》落としてから来いよ、そうすりゃ美味しく料理してやるからよォ。えぇ? 焼き豚野郎」

     宮呉島の顔が歪む。
    「! なんっ――」
     ぐ、とその腰が沈み、相撲の立会いのような姿勢になる――その一瞬後には、ぶちかましの動きで全体重を乗せた剛腕【大山崩落《アトラスマッシュ》】が来るはず――。

  • 6図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:23:14

     が。黒岩の動きは早かった、速度ではなくその初動が。相手が姿勢を沈めるその一瞬、攻撃に移行する直前一瞬の隙を突いた、その“技”は。

     踏み込むと同時、広く幅を取った足で床を踏み締め、その力を腰へ。腰のひねり、左手の引き、重心の移動。全ての力を背から肩、上腕、肘、前腕、ひねりを加える手首から右拳へと連動させて伝える。
     正拳逆突きの理想的な形として放たれた【松刺爆撃《しゅうしばくげき》】は、上段突きの軌道を描いて相手の顔面へと突き刺さった。

    「なん……あ……ぁ……?」
     果たして。宮呉島は拳を構えることもできず、棒立ちのまま。焦点の合わない目を見開くのみだった。
     そしてその巨体がバランスを崩し、大木が倒れるかのようにゆっくりと傾いていく。

     そこへさらに。黒岩は無言で足を踏み直し、続けて打撃を打ち込んだ。
    左足を前に出し、胸を打ち抜く左の中段順突き、腹へ打ち落とす右の下段逆突き。【松刺爆撃《しゅうしばくげき》・三連爆】が、全て決まった。

    「…………ぉ、ぉっ、ぉっ……」
    もはや言葉すら上げられず、開けた口から血の泡を垂れ流し。白目を剥いて、巨大な山脈が崩れ落ちた。

    【松刺爆撃《しゅうしばくげき》】、その技は衝撃を敵人体へと浸透させ、『内側』に打撃を与える。脂肪や筋肉の壁さえも越えて、内臓に。

     テンカウントが取られる中、元が背筋を震わせた。
    「な……なんじゃありゃあ、あの熊みたいな相撲取りを一瞬で……」

    息を整えつつ、青空は頬を半ば引きつらせて笑った。
    「すっげ……相変わらずヤベぇな」

    「な……な、ななな……」
     構えた手も足もわななかせながら、竜吉は後ずさっていた。いつのまにかその背がコーナーポストについていた。

  • 7図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:24:05

     観客たちが声を失い、うめくようなどよめきのみが漂う中。
     残る敵、凶相の男が低くつぶやく。
    「顔面への打撃を耐えるには首の筋力が不可欠、そして……宮呉島は大相撲のぶちかまし合いを経験した男、首の頑強さにおいては唯一無二」

     十人からの係員が集まり、倒れたままの宮呉島を引きずっていくのを横目に言葉を続ける。
    「無論、奴の体もまた筋肉と脂肪、二重の鎧に護られし金剛不壊《ふえ》……あれを破壊するとは、強靭《つよ》き者よ……」

     そこで黒岩の目に視線を向けた。刺し貫くような視線を。
    「憎い。……貴様が憎い、強靭《つよ》き者よ」

     黒岩は、は、と笑うように息をつく。
    「なんだあ? 仇討ちってかよ、案外仲がいい――」

     その言葉には取り合わず、凶相の男は青空を見る。そして元を、そして竜吉を。そして場外の生野を、倒れたままの宮呉島を、観客たちを。
    「憎い。憎いぞ、惰弱《よわ》き者らよ。……叩き潰してやる」

     目元を震わせ、まるで泣くように顔を歪ませた。
    「貴様の強靭《つよ》さが憎い。貴様らの惰弱《よわ》さが憎い。……憎い、憎い、憎い憎いぞ貴様らが! 何もかもが!」

  • 8図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:24:40

     黒岩が舌打ちする。
    「……イカレてんじゃねぇぞクソが。ワケわかんねえこと言ってねえで――」

     瞬間。黒岩の目の前にその男がいた。
    いつ踏み込まれたというのか? だが、そう思考するよりも早く黒岩の体は反応していた。相手の顔面へと、反射に近い早さでジャブを打つ。

     が。それが相手の片手にいなされた。
    と同時。敵が反対の手で打ち出す拳――親指を上にした縦拳――が、黒岩の顔面へと繰り出されていた。

    「!!?」
     黒岩もさらに反射で動いた、もう片方の手を掲げてガードした。それでも、そのガードごと突き込まれ、黒岩は自らの手首で顔面をしたたかに打つことになった。

     鼻血を垂らしながら黒岩は身構えた。笑う。
    「おもしれー野郎だぜ……」
     笑いながらも、歯をひどく噛み鳴らす。
    「おもしれーんだよクソ野郎、百倍にして返してやりてえぐらいになあ……!」

     西日本支部運営の代表、恰幅のよい男が声を上げる。
    「頼むぞ蒼臼《あおうす》、西日本支部最強の男……! 『大陸帰りの暴凶龍《チャイナドラゴン》』蒼臼《あおうす》 李一《りいち》よ……!」

     蒼臼は、ゆらり、と構えを取る。黒岩と似た、足幅をやや広く取り右手を腰へ引き絞る形。ただ、左手は顔の高さに緩く伸ばされていた。
     貫き殺すような目をして言う。
    「憎い、潰す。何もかも全て」

  • 9図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:25:44

      第十一話  最強対最強と、その行方と

     観客のざわめきはいつの間にかやんでいた。
     しん、と静まり返った会場の中、黒岩と蒼臼《あおうす》がじりじりと、足をにじらせて間合いを詰める、わずかな足音だけが響く。
     もはや拳闘ではなく、刀を手にした剣士の果し合い。どちらが斬るか、斬られるか。そんな張り詰めた空気が辺りに満ちていた。
     その静寂を破り、相手が先にしかける。
    「しぃっ!」
     踏み込みと同時に素早く繰り出される左の縦拳。
     ジャブと同等の素早さを持ちながら、親指を上とした縦拳で繰り出すことにより、体重を乗せた重さを生み出す。後世に『リードブロウ』と呼ばれるものと酷似した技であった。

    「ふん……!」
     だが、黒岩もそう簡単には食らわない。
     体をかわしつつ、右腕を右に返すように掲げる。前腕の内側、親指のある側で相手の拳を打ち払う。拳闘ではなく空手の防御術【内受け】。
     同時に左足を踏み込み、左拳を相手の胴へと突き込む。流れるような攻防一体の動きだった。

     が。その拳がいなされる。相手の繰り出した右拳によって。
    「な……!?」

     黒岩の腕に添うように伸びてきた相手の腕は、その軌道を以て腕をいなし、黒岩の拳の軌道をずらす。
     結果、黒岩の拳は的を外れ。敵の縦拳だけが重く、カウンターとなって黒岩の腹へと突き刺さった。
    「か……!」
     うめく黒岩の体が揺らぎ、片膝をつく。ダウンと見なされ、カウントが取られ始めた。
     夕華と生野が声を上げた。
    「黒岩……!」
    「そんな……! あの人が、打ち負けるなんて……!」
     しかしカウントツーで立ち上がり、黒岩は歯を剥いて獰猛に笑う。
    「……ますますおもしれー野郎だ、余計ブッ殺したくなってきたぜ。……それにしても、青坊の【瀑受転巌《ばくじゅてんがん》】とも違う、珍しいカウンターだな。何て“技”だ」

     蒼臼《あおうす》は構えを崩さず、にこりともせず答える。
    「……【形意《シンイー》・崩拳《ポンチュエン》】」

  • 10図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:26:27

     黒岩はけげんそうに眉を寄せる。
    「中国語? そういや『大陸帰りの暴凶龍《チャイナドラゴン》』とか呼ばれてたな、その技は向こうの拳法、ってやつか」

     蒼臼の目つきが、一瞬さらなる凶相を帯びる。
    「お喋りはここまでだ……私から行くぞ」

     再び踏み込む蒼臼。
     だが、先に打撃を繰り出したのは黒岩だった。素早いワンツーで機先を制する。

     はずだった。放った左右の打撃は、どちらもさばかれていた。相手が内側から外へ振り上げた両腕によって。
     先ほど黒岩が見せた【内受け】、それを相手は両手で繰り出し、黒岩の両手を左右へさばいていた。まるで門を開くように。
     そして、がら空きとなった黒岩の胸板へ。両脇に引き絞った、相手の両拳が放たれ。左右同時に突き立った。

    「が……!?」
     黒岩の足がよろめき、体が傾く。

    「【形意《シンイー》・馬形《マーシン》】」
     “技”の名を低くつぶやく敵に。
     しかし黒岩は足を継いで踏みとどまり、反撃の拳を打ち込んだ。それがまともに当たり、鼻に、みち、と音を上げさせる。

    「ぶ……!?」

    「余裕ぶってよォ……聞かれてもねぇ技名宣伝してんじゃねぇぞオイ!」
     さらに連続して拳を打ち込む。空手のものとは違う、軽快なボクシング式の連打。

     相手はさばき切れず、防御を固めて後ずさる。だが、反撃に転じようとしたのか、その構えが解かれる。

    「そォらよォ!」
     その隙を見越していたかのように黒岩の拳が繰り出される、上下同時に。
     上体を横倒しにしつつ踏み込み、右拳は顔面、左拳は腹を狙う。空手式の双拳奇襲、【山突き】。

  • 11図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:27:19

    「懐かしいな」
     だが、そのどちらの拳も防がれていた。軌道を読んだように顔と腹の前に掲げられていた、相手の腕によって。

    「何!?」
     頬を引きつらせつつ、体勢を立て直すべく上体を起こす黒岩に。

    「こうだろう?」
     相手の拳が間髪入れず放たれた。上下同時、【山突き】の形で。

    「が!!?」
     黒岩は拳を掲げて防ぐも、またも自分の拳ごと、顔と腹へと突き込まれる。

     黒岩が下がって息を整えるうち、蒼臼は語った。
    「空手、沖縄をルーツとするそれは大日本帝国が誇る格闘技、か。懐かしい……そして、憎い」
     片手を頭に当て、その下で凶相をいっそう歪ませる。もう片方の拳は震えていた。
    「憎い、憎い憎いぞ貴様が! 空手が……いや、その強靭《つよ》さが! 貴様が憎い……!」

    「人のことブン殴ってくれたあげく、まだ憎い憎い言ってりゃ世話ねえなオイ」
     黒岩はリングに唾を吐いた。
    「ま、気は合いそうだ……俺もよォ、てめえをブッ殺したくてしょうがねえからよォ」

     蒼臼は構えもせず言った。
    「強がりはやめることだ、強靭《つよ》き者……いや、惰弱《よわ》き者よ。私の“技”は『浸透勁《けい》』、つまりはお前の“技”と酷似した理《ことわり》を持つ……お前はすでに戦える状態ではない」

     そのとき、黒岩が咳き込んだ。グローブで押さえたその口からは血がこぼれている。見れば、先ほど唾を吐き出した床も、真っ赤に染まっていた。
     相手の内側に衝撃を伝え破壊する【松刺爆撃《しゅうしばくげき》】、いわばそれと同じものを受けたということか。

  • 12図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:28:44

    「大丈夫かよ……!」
     青空が駆け寄ろうとするが、黒岩がにらみ殺すような目で制する。
    「わざわざ俺様の心配とは、出世したもんだな青坊よお。……そんなヒマがあったら、せいぜい息でも整えてろ。だいたいだな、心配はいらねえ――」

     言う間に黒岩は間合いを詰めた。放つ、右の上段【松刺爆撃《しゅうしばくげき》】。決まれば一撃必殺ともなり得るその“技”を。

     だが、それを読んでいたかのように蒼臼は防御の手を掲げる。

     だが。黒岩もまたそれを読んでいた。
     繰り出しかけていた右手を引き、相手の防御の的を外させる。同時、その引く動きを連動させた勢いを乗せ、繰り出すのは。
     左の中段、順突きによる【松刺爆撃《しゅうしばくげき》】。

    「ご……ぁ!?」
     上段のフェイントに気を取られた相手の防御は間に合わず、胸板へとまともに突き立つ。

     そして黒岩が足を踏み締め、さらに繰り出すのは。右の下段【松刺爆撃《しゅうしばくげき》】。逆突きの形で放たれるそれは腰のひねりを十全に乗せるため、順突き以上の威力を持つ。まさに必殺となり得る奥義だった。

  • 13図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:29:09

     が。
    「な……ぁっ!?」
     震えた。黒岩の手が。踏み締めていた足が。
    力の抜けた膝が崩れる。

     夕華が顔をこわばらせた。
    「そんな……薬が、抜け切っていなかったかい……!」

     黒岩の拳は敵に到達する遥か手前で止まり。
     相手の拳が、黒岩の顔面を打ち抜いた。

    「……!!」
     黒岩はまるで泳ぐようにもがき、前のめりに崩れ落ちかかる。それでも|抱きつき《クリンチ》をかけるように、相手の腰の後ろに手を回す。

    「!」
     相手は身を引き、支えを失った黒岩は倒れた。
     伏した黒岩はリングをつかむように手を伸ばし、床を踏み締めようとするように足を震わせたが。起き上がることはできず、震えるままカウントテンを迎えた。

    「……っ……!!」
     黒岩は何も言わず、片手のグローブで顔を覆った。隙間から見えたその唇は震え、噛み締められて血を流していた。

     青空は係員に運び出される黒岩ではなく、青臼を見据えながら言った。
    「ありがとうよ……黒岩さんよ。だいぶ休ませてもらった、俺も元も」
     両拳を突き合わせた後、構えを取る。
    「ここからは……俺たちの番だ」

    (次話へ続く)

  • 14図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:41:58

      第十二話  心の弱さと、立ち上がる麦と

     蒼臼《あおうす》は構えもせずに青空を見る。
    「お前が大神青空……聞いているぞ。心の強靭《つよ》き者、か」

    「ああ、心の強さが違ぇ――」

     その言葉をさえぎるように言った。
    「私はな。心が、惰弱《よわ》い」

    「え?」

     目を瞬かせる青空に構わず、相手は天を仰いだ。
    「私は違う。心が惰弱《よわ》い。お前とは違う、心の惰弱《よわ》さが……違うんだよ」
     その顔を隠すように、片手で顔を覆った。
    「だから。……憎い、お前が。憎い、先ほどの敵が。憎い、何もかもが……!」
     その肩が、泣くように震えていた。

     青空は眉を寄せる。
    「何言ってんだよ……だいたい、心が弱ぇならお前みたいに強いわけが――」
     言いかけて気づいた。そうだ、一人だけいた。心が弱く、なのに人智を越えた力を振るった人間が。
     大神夕日。青空の父親。

     ――青空の父親にして、かつての日本拳闘界におけるミドル級王者。
     戦時中に下士官として大陸へ出征した彼は小さな部隊を率い、『心の強さ』で部下たちを導いていた。

     いや、導いていたつもりだった。
     あるとき、一人の部下が暴走し、軍刀を抜いて仲間へと斬りかかった。先の見えない泥沼のような戦況においても『痛みに耐えろ』『辛い時こそ笑え』『前に進め』――そう強いる夕日の在り方と、あまりに過酷な状況に耐えかねて。
     そして、それを止めようとした夕日自身も。自覚してこそいなかったが、とうに限界を迎えていた。その状況と、それでも強く在ろうとすることに。
     そうして夕日自身もまた暴走し。軍刀を振るった部下、他の部下、全てを。気づけば、殴り殺していた――。

  • 15図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:42:58

     顔を覆うグローブの下から、蒼臼の片目だけがのぞく。まるで穴のように黒く、どこまでも落ちていくように黒く。
    「私はなあ……底を見たよ。人間の底、自分の底……弱さの底を。あの大陸においてなあ」
    「…………」
     青空も元も、リングの隅にいた竜吉も。会場の誰もが黙り、観客席からはわずかに、困惑したようなざわめきが上がる。

     西日本支部代表の男すら、眉根を寄せてうめくように言う。
    「さ、さっきから何を言うとんじゃ蒼臼! とっととそいつらも殺ったらんかい!」

     生野がことさら音を立てて舌打ちする。
    「チッ……何なんだかよ。思わせ振りなこと言ってビビらせようってのか」
    「来いよ」
     そんな中、青空だけが。真っ直ぐに蒼臼を見据えた。
    「来いよ、蒼臼、来い。打ち込んでこいよ、全部乗せてよ。お前の強さ、弱さ……全部をよぉ」

     ぴたり、と蒼臼が動きを止める。穴のような目が青空を見ている。

     元がつぶやくように言う。
    「……わしゃ、あんな目をした奴をようけ見てきたよ。原爆《ピカ》で何もかも焼き尽くされた日も、その後も。家族を殺されたもんにも、体中に火傷や後遺症を負うて苦しむ人にも。いや、わしもあんな目をしとったかもしれん。ほうじゃが――」

     青空はうなずいた。
    「ああ。それでも、生きてる。それでも、立ち上がった――もう立ち上がったんだ、踏まれても踏まれても芽を出す麦のように。……だったな」

     元もうなずく。
    「ほうよ、心の強さでのう。……ほいじゃ、行ってくるよ」
     元のグローブを軽く叩き、青空も言う。
    「頼むぜ。こっちは、任せとけ」

     青空は吼えた。
    「行くぜ! 心の強さが、違ぇん――」
     その声が終わらぬ間に。蒼臼が踏み込み、拳を叩きつける。

  • 16図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:43:33

     一方、元は竜吉の方へと駆け、跳び込みざまに拳を振るう。
    「おおりゃああ!」

    「ひ……!」
     その大振りなパンチから、竜吉は必要以上に大きく身をかわし、距離を取る。

     リング外から鮫島が声を上げた。
    「何をやっとる竜吉! そんとなもんを怖がりおって!」

     元の食いしばった歯が竜吉の目にとまる。自らの指先を食いちぎった歯が。
    「うう……!」
     右手が、痛む。

    「うう、う……くそったれが……! なんでわしが怖がらないかんのじゃ、怯えるんはおどれのほうじゃ! 恐怖しろ中岡ァ!」
     震えながら叫ぶと同時、跳び込んだ。やや大振りになったワンツー、それでも身に染みついた動きのまま、定石どおりに繰り出す左フック。右のボディアッパー。左のレバーブロウ。

    「う、う……ギギギギ……」
     防御を固めて耐えるも、さらに打たれ続ける元。当然体の全てをカバーし切れるはずもなく、多くのパンチはまともに入れられている。
     反撃の拳を繰り出すも、それもかわされ。その隙に、逆に打ち込まれる。

     その一撃を、まともに顔面に受けた元の。目がぐるり、と天を向く。意識を手放したように、その腕から、膝から力が抜ける。
    「ぉ……ぁ……」
     そして、倒れた。

    「元……!」
    「元――っ!」
     夕華が、生野が声を上げる。

  • 17図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:44:03

     その声をもかき消すような叫びが響いた。
    「元――っっ!! おどりゃ、立て、立たんか元ーっ!!」

     青空ではない、虎威組の誰でもない。
     その男の声は観客席から、広島ヤクザがひしめくその席の、片隅から上がっていた。

    「わりゃドアホウが、こんとなとこで倒れてどうするんならっっ! わしより上手い絵描きになってみせるんと違うんか、ああ!?」
     市松模様の帽子をかぶった天然パーマの男、黒崎。昨日チンピラを雇って元を襲わせた、看板会社の先輩だった。

     黒崎が雇っていたチンピラと、その兄貴分らしいヤクザが横で騒ぐ。
    「お前っ、黒崎……!」
    「わりゃ何言い出してけつかるんじゃ、オイ!?」

     そちらに構う様子もなく、口の横に両手を当て。黒崎は声を絞り出す。
    「わしと勝負するんじゃろうがーっ! そんとなとこで倒れてみい、知らんぞーっ! わしゃお前がくたばっとるうちに、最高の絵を描いてしまうぞ! 誰もが暖かい気持ちになる、人工の虹を……!」

     息を吸い込み、再び叫ぶ。
    「立てや、元――っっ!! わしより凄い絵を、おどれの絵を! 描いてみせんかいっっ!!」

    「人工の、虹……黒、崎か……」
     元は目を瞬かせ、震え。立ち上がった、カウントナインで。

     まだ焦点の合わない目で観客席を探し、やがて黒崎を見つけ。ほほ笑む。

     黒崎はうなずき、帽子を目深にかぶり直し。目元を拭った。

  • 18図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:45:07

     竜吉は頬をわななかせる。
    「な……何でじゃ、何じゃこいつ……! 何で立ち上がれる、何で打っても打っても怯まんのじゃ……! 砂鉄入りのグローブで殴っとんじゃぞ……!?」

     拳を大きく振りかぶり――訓練を重ねた拳闘の動きではもはやなかったが――跳び込む。
    「くたばれ、中岡ぁっ!」

     それに対する元はいったん構えを取ったものの。足下が揺らぎ、上体が崩れる。地に膝をつきかける。

     生野の顔が引きつる。
    「ヤバい……!」

     夕華は目を見開いた。
    「いや、あれは。あの動きは――」

     ――かつて生野が夕華の部屋から持ち出した書、大神夕日の記した『拳闘の心得』。
     “技”習得の極意が書かれたその書は『複数存在した』。盗まれることのないよう、夕華が何ヶ所かに分散して保管していた。生野が持ち出したのはその中の一冊に過ぎなかった。
     そして、その中の一書に記された奥義。その動きと元の動きは今、奇しくも一致していた。

     ――技の極意、その一。
     その身を沈み込ませるべし。まるで全て打ち砕かれ、何もかも手放したかのように脱力し。深く深く沈ませるべし。

     元は沈み込む、意識すら半ば手放したかのように。

     ――技の極意、その二。
     地に崩れ落ちるその寸前、立ち上がるべし。手放していた全ての力を両脚に込め、さらには地からの反動を得て、強く。

     元は立ち上がる。全ての力を両脚に込め。何度踏まれようと踏まれようと芽を出す、麦のように。

  • 19図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 21:46:02

     ――技の極意、その三。
     両脚よりの力、大地踏み締めしその力を腕へ、拳へ伝え。真っ直ぐに天を突くべし。
     踏まれてなおも伸びゆく麦のように。やがてその穂を実らせ、天へと向けるように。

    「おお……ぅおおりゃああぁーっっ!!」
     今。元の拳が放たれた、天へと。
    真っ直ぐ跳び上がりながら繰り出すアッパーが。襲い来ていた竜吉の顔面を、宙高くへと打ち上げた。

     夕華が声を漏らす。
    「あれは……奥義、【麦穂天立《ばくすいてんりゅう》】……!」

     声もなくリングに倒れ込む竜吉。

    「竜吉、竜吉……! 大丈夫か、しっかりせい!」

     鮫島の声に身を起こし、どうにかカウントエイトで立ち上がる。
    「ひ……っ!」
     だが、竜吉は大きく身を引いていた。
     じりじりとにじり寄る元から。

     元は大きく肩を上下させながら言う。
    「そう……そうじゃ……。わしゃ、描くぞ、描いてみせるぞ……わしの絵を、国境なんぞ吹っ飛ばすような、芸術を……!」

     元は未だ焦点の合わない目のまま、それでも前へと歩を進める。

    竜吉は歯を食いしばり、踏みとどまった。
    「ぐ、ぐぐぐ……! くそおぉぉ!」
     踏み込み、拳を振るう。訓練で培《つちか》ったものとは違う、子供のケンカのような大振りな動きで。
     二人は言葉もなく、ぶつかり合った。
    (次話へ続く)

  • 20図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 22:22:16

      第十三話  弱さの底と、心の強さと

     ――かつて、蒼臼《あおうす》 李一《りいち》は信じていた。
     『八紘一宇《はっこういちう》』そして『大東亜共栄圏の樹立』というスローガンを。
     すなわち『日本が武力で諸国を統一し』『アジア圏を手中に収めた上で繁栄させる』――劣ったアジア諸国を日本が征服した上で導く、それによる繁栄こそが日本にとってもアジア諸国にとっても、幸福なのだと。

     それが間違っていると理解したのは皮肉にも、まさにその『八紘一宇《はっこういちう》』『大東亜共栄圏の樹立』のための戦いに出征していた最中のことだった。

     その頃、蒼臼が兵士として所属する部隊は中国内陸部に進軍していた。だが彼は戦闘の中で部隊とはぐれ、一人さ迷うこととなってしまった。
     幸い怪我はなかったものの、心身共に限界を迎えようとしていたが。ある夜、現地民の集落の灯りを見つけた。住民が寝静まったら食料を盗みに入ろう、そう思って間近で様子をうかがっていた蒼臼だったが。ある光景に目を奪われた。

     それは、集落の男たちが集まり、指導者の下で拳を振るう――『拳法』の稽古をする光景だった。

     元々、蒼臼は空手の修行者であり、柔道の有段者でもあった。そのため素手の武術には並々ならぬ興味があった。そして、そんな蒼臼だからこそ、目の前で稽古されている形《かた》の持つ高度な戦闘理念を理解できた。
     そのごく短い形《かた》の内には攻撃だけでなく、相手の隙を作る崩し、そして防御と、いくつもの意味が同時に内包されていた。さらには攻撃に関しても、蒼臼が知っている武道に勝るとも劣らない、あるいはそれ以上のものだと感じられた。

    気づけば、彼らが行なう形《かた》稽古を真似て拳を振るっていた。
     そして、その足音を男たちに聞きとがめられ、引きずり出されたが。
     蒼臼はその場で地に額をこすりつけ、片言の中国語で言った。
    「拳法が……したいです」

  • 21図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 22:22:36

     無論、兵士の格好をした蒼臼を敵視する者、辺りの様子を探りにきた偵察兵だと考えて拘束、あるいは処刑すべきと唱えるものが多かったが。
     拳法を指導していた古老が、蒼臼と村の者の試合を提案した。
     試合となり、蒼臼は空手の技を繰り出すも、村人の振るう拳法の前に倒され。
    それでも、笑っていた。幸福だった、今までに出会ったことのない高度な武術、それを実際に味わえたのだから。

    「奥深いぜ……拳法……」
     そうつぶやき、満面の笑みを浮かべて大の字に横たわる蒼臼。
     それを見て、村の者たちは顔を見合わせ。声を上げて笑い出し。蒼臼の手を取って、立たせた。
     それからまた稽古を始めた。蒼臼と共に。


     そうして、徐々にではあるが村の一員に迎え入れられた。
     昼は農作業をし、夕方になれば男たちで集まり、拳法を修練する。それが彼らの伝統であり、一種の娯楽でもあった。
     彼らの拳法――|形意拳《シンイーチュエン》という拳法の一派だった――を学び、また、ときには彼らに頼まれ、蒼臼の知る空手や柔道の技を教えた。それらもまた彼らに評価され、互いに未知の技術を学び合った。

     蒼臼は悟った。これこそが本当の『大東亜共栄』だと。
    決して他の国、他の民族が劣っているわけではなく、学ぶべきことも多いと。一方で日本から教えるべきことも多い。互いに互いを認め合い高め合う、一方的な支配ではなく、そうして共存共栄する。それこそが真に日本が歩むべき道だと。

     そんなあるとき。蒼臼がはぐれていた部隊の偵察兵が、偶然蒼臼を発見した。
     蒼臼は内心嬉しくは思わなかった。村の存在が軍に知られてしまった以上、支配や略奪の対象となる可能性が高かった。
     それでも彼はできるだけのことをしようと、部隊と村との交渉役を買って出た。村に伝わる拳法の高度な術理を見せ、また村が部隊に協力し、拳法を彼らに教えるよう承諾させることで、村の安全を確保しようと。
     そうして、村の若者や拳法の指導者を集め。部隊の中で格闘技に秀でた者らとの、武術交流会を開くこととなった。

  • 22二次元好きの匿名さん24/02/16(金) 22:22:52

    見事やな…

  • 23図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 22:23:02

     ――そのはずだった。そうはならなかった。
     村の若者や、指導者の古老が集まったところへ部隊は銃を突きつけ、拘束。反抗する戦力のいなくなった村を部隊はたやすく襲撃。略奪の限りを尽くした。

     部隊長は上機嫌で蒼臼の肩を叩き、誉めた。お前が奴らの内に潜り込み、油断させたおかげだと。村の男たちを、武器を持たせないまま集めてたやすく拘束できたと。おかげで我々はほとんど無傷だったと。

     もしも、心が強かったなら。
     蒼臼は部隊長の目的を知った時点で、略奪が始められた時点で、土下座して中止を懇願しただろう。このようなことは真の大東亜共栄ではない、栄光ある大日本帝国陸軍のやるべきことではないと。
     あるいは立ち向かっただろう、素手のまま抵抗しようとした村の男たちと共に、拳法を振るって。

     どちらも、できなかった。
     抵抗する一部の男たちが、なす|術《すべ》なく撃たれて死ぬのを見ていた。
     部隊長の誉める言葉に、身に余る光栄です、と答えて頭を下げていた。

     裏切者。村の男たちの誰かがそう言うのが聞こえた。
     いいや、奴は最初からこれが目的だったのだ、奴は敵だ。我々の村に来た悪鬼だ。そう言うのが聞こえた。

     否定はしなかった。できなかった。
     自分のいる場所が、底なのだと思った。人間の底、弱さの底。自分自身の、底なのだと。

     その後、蒼臼はその功績を評価され、特殊工作員として推薦される。そして特別な任務に就くため、所属部隊の本隊がある後方へと移された。だが、そうこうするうち戦況は悪化、終戦を迎える。
     混乱の最中、蒼臼は逃亡。港街から密貿易船に忍び込むことに成功し、日本へと還りついた。

     故郷・広島へと帰るも、家族を失っていた彼は自暴自棄となり、拳法の技を振るって追いはぎまがいの罪を重ねながら生活していた。そうしていたところを炎涛拳技會・西日本支部に目をつけられ、雇われたのだった――。

  • 24図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 22:23:39

     そして今。蒼臼の打つ拳を受け止め、そして打ち返しながら青空は言った。
    「伝わってくる……お前の拳から、お前の想い。父ちゃんと闘ったときほど、はっきりとじゃあないが」

    「……」
     蒼臼は凶相を緩めることなく、無言で拳を打ち続ける。

     グローブを打たれる音も高く、両手でそれを受け止め――殺し切れなかった勢いに押され、両足がリングの床を擦った――、青空はいったん間合いを取る。
    「それでも、分かるぜ。お前が何を憎んでるか。そんなに憎んで、いったい何を殴ろうとしてるのか」

     蒼臼は耳を傾ける様子もなく、ゆらり、と再び拳を上げる。肩幅ほどに足を開いて左手を顔の高さへ差し伸ばし、右手を腰に引き絞る。その構えのまま、じりじりと間合いを詰める。

     構えを緩め、青空は言った。
    「お前は。お前が憎いんだ」

     ぴたり、と蒼臼の動きが止まった。

     青空は続けて言った。
    「だから、お前は。ぶん殴ろうとしてるんだ、お前自身を。……それができないから、代わりに周りを憎んでる。誰もかれもを殴ろうとしてる」

  • 25図書委員◆3807WhQ6Ak24/02/16(金) 22:24:42

     蒼臼の動きは止まっている。まるで時が止まったかのように。
     それでも、やがて。凶相を帯びたその目が、ぶるぶると震え出す。
    「……うるさい」

     引きつった頬が、構えたその手が、ぶるぶるぶると震え出す。内から破裂しようとしているのを耐えるかのように。
    「うるさい……うるさいっ、うるさいぞ! 知った風なことを……、知った風なことを……っ!」
     口を開け、飛沫のように唾を飛ばして叫んだ。
    「お前に!! 私の!! 何が分かる!! 聞いた風な口を叩くな、分かったようなことを言うな……っ!!」

    「ああ、分からねぇな。だからよ――」
     青空は、す、と拳を上げる。

    「闘《や》ろうぜ。拳闘。……来いよ、お前の全部をぶつけてこい。俺も全部ぶつけてやる。もう喋らなくていい、俺の話だって聞かなくていい……来い」

     天を衝くように拳を掲げた。それをリングへと叩きつける。
     何もかも張り飛ばすような音が会場を打ち、静寂が訪れる。

    その中で言った。
    「来いよ蒼臼、お前がお前を殴りたいなら。代わりだ、俺を殴ってこいよ。代わりに、俺が殴ってやるよ。……行くぜ」

     再び構えを取り、踏み込む。
    「俺は、心が強ぇからよ」

    (次話へ続く)

  • 26二次元好きの匿名さん24/02/17(土) 01:12:27

    おもしれーよ

    >>1楽しみにしてるよ…

オススメ

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