魔法少女を集めてバトロワするスレ2

  • 1◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 16:55:03

    皆さんから魔法少女を集めてデスゲームに参加させるスレです。(本編は1が書きます)


    キャラクターの生死などはダイスで決めますが、安価はあまり取らない(アイデアをお願いすることはちょくちょくあります)ので、そこだけご了承いただけると幸いです。


    詳細はこちらから

    https://w.atwiki.jp/mahousyouzyobr/pages/1.html

  • 2二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 16:58:57

    たて乙

  • 3◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 16:59:44

    本編未登場の魔法少女①

    1.桐ヶ谷 裂華/ジャック・ザ・リッパー
    2.星月 夜/アルセーヌ
    3.ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイ
    6.薬師院 怜那/ミョルニル
    7.夜祖神 髑髏/ドレッドノート
    8.刈屋 伊織/ミストアイ
    10.松崎 新一郎/ハートプリンセス
    11.ナサリーブラウン
    12.冨島千秋
    13.ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス
    14.マク=ハク/ノーブル・サヴェージ
    16.汐沫 夏実/ジェイルフィッシュ
    17.犬上 沙美/ハスキーロア
    20.麦/ヒートハウンド

  • 4◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 17:00:54

    本編未登場の魔法少女②

    21.和妻 颯葵/トリックスター
    22.大川 羽蘇/オオカワウソ
    23.木羽 マミ/ビリーバー
    29.陣内 葉月/ブラックブレイド
    30.蜂矢 恋蜜/ハニーハント
    31. 逝凪 素鈴/ワンフロムアウター
    32. 栗田 柿子/ジャスティスファイア
    36.らいと/フライフィアー
    37.王城 姫子/クィーン
    38.再世 優/テンガイ
    39.七海 真美
    40.田中 空/スカイウィッチ
    41.抜刀 金

  • 5二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:02:06

    立て乙です

  • 6◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 17:03:33

    第七話


    【七海 真美】

    生存ダイスdice1d100=62 (62)

    絆ダイス 対象dice1d44=29 (29)→陣内 葉月/ブラックブレイド

    関係性dice1d100=73 (73)→まぁまぁ好き


    【汐沫 夏実/ジェイルフィッシュ】

    生存ダイスdice1d100=100 (100)

    絆ダイス 対象dice1d44=33 (33)→姚 莉鈴/ハイエンド

    関係性dice1d100=66 (66)→まぁまぁ好き


    【桐ヶ谷 裂華/ジャック・ザ・リッパー】

    生存ダイスdice1d100=62 (62)

    絆ダイス 対象dice1d44=4 (4)→妃咲 希/ティターニア

    関係性dice1d100=70 (70)→まぁまぁ好き


    【薬師院 怜那/ミョルニル】

    生存ダイスdice1d100=81 (81)

    絆ダイス 対象dice1d44=34 (34)→佐々利 こぼね/クリックベイト

    関係性dice1d100=100 (100)→大大大好き

  • 7二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:03:58

    次回は戦闘回になりそうやねえ
    生存ダイス的には誰も死ななそうだけど

  • 8二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:06:14

    >>7

    ジャックがいる時点で戦闘回なのは確定ですねぇ…

  • 9二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:06:45

    立て乙

  • 10二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:09:48

    >>8

    社交性はありそうだし上手く隠すかも

    …どうやらティターニアを狙ってる感じしたし

  • 11◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 17:40:45

    展開に悩んだのでダイス振ります……!


    桐ヶ谷裂華/ジャック・ザ・リッパーはどれくらい好戦的……?

    数字が高いほど好戦的

    dice1d100=15 (15)


    薬師院怜那/ミョルニルはどう動く?

    数字が高いほどクリックベイトの優勝狙い

    dice1d100=50 (50)

  • 12二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:41:55

    うわすっげえ消極的…悪辣では?

  • 13二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:43:00

    自分の食指が動く人じゃないと狙わないんだろうな

  • 14◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 17:44:31

    汐沫 夏実/ジェイルフィッシュの生存値100ボーナスということで、彼女に起こる幸運を安価で募集します
    3つアイデアが挙がった時点でダイス振って決めます……!

    ※【優勝が確定する】【ゲームから脱出する】【魔法王ならびに黒幕が突然心臓麻痺で死ぬ】などは無しでお願いします……!

  • 15二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:45:49

    ジャック・ザ・リッパーの殺人の対象から除外される

  • 16二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:48:23

    魔法が進化する

  • 17二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 17:49:56

    運営のパンデモニカから声がかかる

  • 18◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 18:39:07

    ありがとうございます……!


    dice1d3=2 (2)


    1 ジャック・ザ・リッパーの殺人の対象から除外される

    2 魔法が進化する

    3 運営のパンデモニカから声がかかる

  • 19◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 18:39:42

    汐沫 夏実/ジェイルフィッシュの魔法が進化します……!

  • 20◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 18:41:38

    せっかくなので、どう進化するかも安価で決めます……!
    先ほどと同じく出た案三つからダイスで
    その場でゲームが崩壊するような進化は無しで

    元々の魔法
    【得意な魔法】
    『シャボン玉に相手を閉じ込めるよ』
    シャボン玉に相手を閉じ込める能力
    シャボン玉と同じ大きさに縮小され、中に閉じ込められる内側から破ることは出来ず、その間外界に干渉する事が一切不可能となり魔法も使えなくなる
    逆に外側からの衝撃に弱く魔法少女なら簡単に割れる

  • 21二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 18:44:00

    外界からの干渉に一回だけ耐性ができる

  • 22二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 18:44:52

    逆に外からの干渉に強く内側からなら簡単に壊せるシャボン玉も出せるようになる

  • 23二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 18:46:01

    このレスは削除されています

  • 24二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 18:47:50

    自分を閉じ込めることで絶対防御を発動可能
    このシャボンは通常とはちがい時間経過でしか破れない

  • 25◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 18:52:00

    申し訳ない、「三つ」と明言したので、最初の三つから選びます……!


    dice1d3=1 (1)


    1 外界からの干渉に一回だけ耐性ができる

    2 逆に外からの干渉に強く内側からなら簡単に壊せるシャボン玉も出せるようになる

    3 シャボンの内側でならほとんど無敵になり、強敵とも渡り合える

    領域展開みたいな結界として使用可能

  • 26◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 18:53:34

    汐沫 夏実/ジェイルフィッシュの魔法が進化します……!

    【得意な魔法】
    『シャボン玉に相手を閉じ込めるよ』
    シャボン玉に相手を閉じ込める能力
    シャボン玉と同じ大きさに縮小され、中に閉じ込められる内側から破ることは出来ず、その間外界に干渉する事が一切不可能となり魔法も使えなくなる
    逆に外側からの衝撃に弱く魔法少女なら簡単に割れる
    →【外界からの干渉に一回だけ耐性ができるように魔法が進化した】

  • 27◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 18:54:52

    皆さんご協力ありがとうございました……!

    展開に悩んだらまた安価をお願いするかもしれませんので、その際はまたお願いします……!

  • 28二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 18:55:11

    攻撃一回分の時間稼ぎが戦局を左右することは果たしてあるのか

  • 29二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 19:16:14

    >>28

    むしろどんな攻撃でも一回は防げる、という防御性能に着目した方がよさそう

    極論を言えばティターニア級の威力でも物理攻撃なら防げるわけだからね

  • 30二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 19:49:48

    矢の雨を降らせる、みたいな数の暴力系だと気休めにもならんけどワンパンに全力系なら有用よね
    そしてミョルニルはケースバイケースと言うか状況に応じてフレキシブルに動きみたいな感じかな

  • 31二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 19:53:19

    vsメンダシウム以降かなりハイペースで話が進んでるな
    今回もジャックが問題行動を起こさなければ説明回でスムーズに終わるかもしれない

  • 32二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 21:38:12

    今思ったけどもしもキャラの完全上位互換いたらどうなるだろう
    …実際メンダシウムの魔法は大川 羽蘇の上位互換だし

  • 33二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 23:13:57

    >>32

    作中で出来るかはわからないけど、他の魔法少女を複製できるのはオオカワウソの強みじゃない?

  • 34二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 23:35:27

    >>32

    魔力以外にリスクを払わず完全な自我、肉体、精神、魔法を作れる事がオオカワウソのヤバいところだよ

    本体とか分身とか泥人間とか自己の連続性を無視して自分を作れるところがヤバい…テンガイが見たらどういう反応をするか楽しみだな

  • 35二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 23:38:46

    >>32

    探索者としての知識とマンションで見つけた厄ネタアイテムを駆使して戦うと予想…こうして考えるとTRPGの和マンチみたいな動きをしそうだな

  • 36二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 23:41:53

    ジャック・ザ・リッパー美しさ評価

    80以上で殺人対象確定

    60以上で暫定殺人対象

    20以下は不殺対象


    【七海 真美】dice1d100=94 (94)

    【汐沫 夏実/ジェイルフィッシュ】dice1d100=7 (7)

    【薬師院 怜那/ミョルニル】dice1d100=13 (13)

  • 37◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 23:48:35

    >>36

    は1です……!

  • 38二次元好きの匿名さん24/02/18(日) 23:48:55

    >>35

    オオカワウソ魔法少女になった理由も不明だから存在自体も厄ネタかもしれん

  • 39◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 23:56:38

    第七話冒頭書けたので投下します……!

  • 40◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 23:57:50

    「ねぇ『疫病神』」

    「何だい『殺人鬼』」

    「貴女は無作為に人を死なせる。意志もなく理由もなく、他者の命を奪う有害な存在であるわけじゃん」

    「そうだね、作為的に人を死なせて、身勝手な意志と理由をもって、他者の命を奪う有害な君とは違ってね」

    「もし、そのおぞましい魔法で作為的に人を死なせることを強要されたとき、貴女はどうするの?」

    「わかりきったこと訊くなよ。
     逆に、君がそのおぞましい趣味で、無作為に人を死なせることを強要されたとき、どうするんだい?」

    「わかりきったこと訊かないで」

    「私に殺人を強要するくらい関わった時点で、もうそいつの命は長くないよ」

    「私に殺人を強要するようなウザい奴は——絶対に殺してあげないわ」

  • 41◆xaazwm17IRZa24/02/18(日) 23:59:19

     と、二、三週間前にカラオケでした会話を思い出しながら、桐ヶ谷裂華(きりがや れつか)、魔法少女名、ジャック・ザ・リッパーは沼地を走っていた。
     周囲から漂う腐臭はジャックを大いに苛立たせたが、悪臭をどうにかする魔法を持っているわけではない。
     触れた物を自身の魔力で浸蝕し、自身の武器に変えることが出来るのが彼女の魔法だが、「沼」を「武器」とすることはさすがに出来ないし、もし出来たとしても腐臭を消すことは出来ないだろう。(成分や構成を自在に変化させる魔法ではないので)。
     なので出来ることいったら魔法少女の身体能力を生かしてさっさと通り過ぎるくらいだ。

    「止まってくださらないかしら」

    「は? こんな臭い場所で?」

     不満を漏らしつつも、ジャックは素直に立ち止まる。
     自分を呼び止めたのは、黄金の鎧騎士だった。

    「わたくしの名前はミョルニル。一つお尋ねしたいことがあるのですけれど」

    「何?」

    「クリックベイト……サンバイザーにレザーコートの魔法少女を観ませんでした?」

  • 42◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 00:00:00

    「観てないわ。もう行っていいかしら?」

    「ええ。引き留めて申し訳ありません」

     ジャックは溜息をつくとミョルニルの傍を駆け抜け

    「やめときなさい」

    「……え?」

    「貴女、私を殺そうと思ってるでしょ」

    「っ……!」

     ミョルニルの顔が動揺で歪む。

    「探している魔法少女のため? 他人の為の殺人なんて、私にはまったく理解できない感情だけど……。
     貴女が襲いかかってくるなら私も死にたくないし抵抗するわよ」

    (できれば戦いたくないけど……この人、好みじゃないし)

     殺人鬼ジャックは美しい女性しか殺さない。美しければそれでいいのかといえばそういうわけでもなく、明確な【好み】が存在する。
     ミョルニルは客観的には美人だが、ジャックの好みでは無かった。

  • 43◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 00:01:17

    「わたくしは……」

    「悩んでるなら人なんか殺さない方がいいんじゃないかしら。
     じゃ私はこれで」

    (ここ臭いし……)

     ミョルニルがゲームに乗ろうが乗るまいが、ジャックにはどうでも良かった。
     沼地を駆ける。
     ミョルニルが追ってくる様子は無い。
     無駄で無益な戦闘をせずに済んだことに内心安堵しながら、ジャックはさっさと沼地を脱出するべく足を速めた。

  • 44◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 00:01:52

    投下を終了します……!

    続きは明日投下します……!

  • 45◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 00:03:13

    本日もたくさんの感想や安価へのご協力ありがとうございます

    今後もちょくちょくお世話になるかもしれません

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 46二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 07:48:35

    乙です

  • 47二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 08:51:15

    殺意の出目が極端すぎる

  • 48二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 09:01:08

    まほロワのお嬢様枠ことミョルニルがどうなるのか地味に楽しみだったりする

  • 49二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 12:15:51

    お嬢様枠って他にはいないんだっけ?

  • 50二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 12:18:38

    このまま七海ちゃんに会って一目惚れしちゃうのか…

  • 51二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 12:21:00

    隠せるタイプだしずっと一緒に行動して機会を伺うのかもしれない

  • 52二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 13:05:23

    このままだとジャックちゃんがヒソカみたいになってしまう

  • 53二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 13:11:18

    >>49

    今の話に出る予定の七海真美ちゃんはお嬢様学校に通ってるって設定みたい?

  • 54二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 13:17:13

    七海 真美ちゃんは魔法少女なりたてらしいブラックブレイドの年下の先輩的な関係性だと個人的に好き
    どっちも正統派すぎて隙が多そうなのが心配だが

  • 55二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 13:43:16

    ジャックちゃん、学生なのにティターニアの目を盗んで犯罪を謳歌できてるってことはそれなりの実力者だろうから戦闘おひろめが楽しみ
    固有魔法も元ネタ的に強そうではあるんだよね

  • 56二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 13:50:23

    そういや学校に通っていない奴もいるのかなああああとかは中卒ぽいけどどうなんだろう?

  • 57二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 14:49:06

    >>56

    なんか先住民族とか戦闘機の子もいなかったっけ

  • 58二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 20:34:31

    やっと追いついた……クセ強ばっかの魔法少女や敵だらけでもう面白いけど、前回と変わらずそれぞれキャラクターを引き立てるのが上手い!ティターニアさんが現状大好き。更新楽しみにしてます。

  • 59◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 21:08:30

    短めですが一旦投下します……!

  • 60◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 21:08:58

    「殺し合い……」

     七海真美は明るくて元気な中学一年生だ。
     けれど、殺し合いを宣告されて、それでも明るく振る舞えるほど、強靭な性格はしていない。
     むしろ、悲劇や絶望に対しては酷く傷つきやすい性格をしていた。
     腐臭を気にもせず、膝を抱えて俯く。

    「どうして、そんな酷いことを……」

     真美には、魔法王の気持ちが分からない。
     きっと大人だし、王様だから、真美にはまったく及びもつかない、深い考えがあるのだろう。
     それでも殺し合いは駄目だ。

    (死んだ人とは、お友達になれないもん……)

     どれだけ嫌いあっても、どれだけ喧嘩しても、いつかは友達になれる。真美はそう信じていた。
     クラスの友達には笑われるが、真美は本気だ。

    (そうだよね……うん、そうだよ。今までと変わらない)

     全員と友達になる。

  • 61◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 21:09:22

    真美はそう決めた。
     参加者全てと友達になり、最後は魔法王とも。
     行動方針を固めると、自然と体が動いた。

    「よーし、頑張るぞ……って、あれ?」

     真美の前を、ふわふわと横切るものがある。
     シャボン玉だ。

    「わー綺麗……」

     ほんの、二、三年前までは真美も家の庭や公園でよく遊んだものだ。
     さすがに中学生に上がってからはやらなくなってしまったが。
     懐かしさも相まって、真美はシャボン玉を眺め、漂ってきた方向に目をやった。

    (……クラゲ?)

     というのが、第一印象だ。
     水色の髪に、透き通った帽子。鍔からは無数の触手が生えている。
     未発達の容姿をシースルーのワンピースで覆い、その下にはスク水を着ている。
     魔法少女だ、と真美は気づいた。
     それも、真美よりさらに幼い、小学生の。

    「私、七海真美! あなたのお名前は?」

    「むー、ジェイルフィッシュなのー」

     少女は眠たげな声でそう言った。

  • 62◆xaazwm17IRZa24/02/19(月) 21:09:47

    投下を終了します……!

    後ほど続きを投下します……!

  • 63二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 23:28:38

    殺到とした世界にダウナー魔法少女が!七海ちゃんの救いになるかな…

  • 64二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 23:31:34

    そういや七海ちゃんこれからジャックに殺人対象に
    されるのよね…不備だなぁ…

  • 65二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 01:26:52

    ジェイルフィッシュだけなら良かったけど、世の中には話の通じない奴も多いんだよな…

  • 66◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:29:14

    続きを投下します……!

  • 67◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:30:53

    「お友達? いいよー」

    「わーい、ありがとう」

     七海真美に新しい友人が出来た。
     彼女は名をジェイルフィッシュといい、シャボン玉に相手を閉じ込める魔法を使うらしい。
     試しにシャボン玉の中に入ってみたが、確かに魔法少女の力でパンチやキックを放ってもシャボン玉はビクともしなかった。

    「これで悪い奴を捕まえるのー」

    「すごい魔法だね!」

    「それほどでもあるのー。それに、私の魔法はこれだけじゃないのー」

  • 68◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:31:23

     そう言って、ジェイルフィッシュは真美に顔を近づけた。

    「……私は、最近新技を開発したの」

    「新技……!?」

    「凄い技なの。ティターニアにも通用するレベルなの」

    「す、凄い……!」

     ティターニアという名は真美も知っていた。
     市内最強ティターニア。
     剣からビームのティターニア。

    「ねぇねぇ、それってどんな魔法なの?」

    「ふふふ、秘密~」

    「えー、教えてよー」

     きゃっきゃと騒ぎ合う二人の魔法少女。

    「今ティターニアの話したかしら?」

     と、二人に話しかける者が居た。

  • 69◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:31:48

     また仲間が増えると真美は笑顔で声の方を向き、ジェイルフィッシュはシャボン玉を展開して警戒の視線を送る。
     現れたのは、コートとスカート、そして顔半分を漆黒に染めた異形の魔法少女。

    「私の名は桐ヶ谷裂華。貴女たち、ティターニアがどこに居るか知らな……」

     異形の少女が動きを止める。
     そして目を見開いて真美を凝視した。

    「……94点」

    「へ?」

    「何がー?」

     訝しむ二人を無視して、ジャックは顎に手を当て思案の様子を見せる。

    「…………あーして…………こーして…………よし、行けるわね。
     ねぇ二人とも。私と一緒に行動しないかしら」

    「桐ケ谷さんと?」

    「どうしてー?」

  • 70◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:32:13

    「二人より三人の方が安全よ? 一緒にティターニアを探して保護してもらいましょう」

     ジャックの提案に二人は顔を見合わせ、小声で作戦会議を始めた。

    「真美っち~ あのお姉さん、ちょっと信用できないよ~」

    「ど、どうして?」

    「顔半分無いじゃん~ 異形だよ異形~。絶対常識ないよ~」

     帽子から伸びる触手から視線を外しながら、真美は悩む。

    「……でも、私は人を信じたいよ」

    「真美っちは甘いね~ まぁその分私がフォローするか~」

     ジャックを受け入れる。二人の方針は固まった。
     こうして真美は殺人鬼と関係を結んだ。
     それが吉と出るか凶とでるかは、まだ誰にも分からない。

  • 71◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:32:58

    投下を終了します……!
    第七話はこれで終了です……!

  • 72◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:34:42

    第8話 登場キャラ数dice1d4=4 (4)

  • 73◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:35:54

    第8話の登場キャラ数は4人です……!


    登場する魔法少女はdice4d44=39 18 10 36 (103)

  • 74◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:37:19

    40.田中 空/スカイウィッチ
    20.麦/ヒートハウンド
    10.松崎 新一郎/ハートプリンセス
    36.らいと/フライフィアー

    が登場します……!

  • 75◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:39:12

    【田中 空/スカイウィッチ】

    生存ダイスdice1d100=18 (18)

    絆ダイスdice1d44=17 (17)

    関係性dice1d100=48 (48)


    【麦/ヒートハウンド】

    生存ダイスdice1d100=57 (57)

    絆ダイスdice1d44=7 (7)

    関係性dice1d100=15 (15)


    【松崎 新一郎/ハートプリンセス】

    生存ダイスdice1d100=81 (81)

    絆ダイスdice1d44=32 (32)

    関係性dice1d100=88 (88)


    【らいと/フライフィアー】

    生存ダイスdice1d100=18 (18)

    絆ダイスdice1d44=39 (39)

    関係性dice1d100=47 (47)

  • 76◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:42:12

    【田中 空/スカイウィッチ】

    生存ダイスdice1d100=18 (18)

    絆ダイスdice1d44=17 (17)→犬上 沙美/ハスキーロア

    関係性dice1d100=48 (48)→普通



    【麦/ヒートハウンド】

    生存ダイスdice1d100=57 (57)

    絆ダイスdice1d44=7 (7)→夜祖神 髑髏/ドレッドノート

    関係性dice1d100=15 (15)→嫌い



    【松崎 新一郎/ハートプリンセス】

    生存ダイスdice1d100=81 (81)

    絆ダイスdice1d44=32 (32)→栗田 柿子/ジャスティスファイア

    関係性dice1d100=88 (88)→好き



    【らいと/フライフィアー】

    生存ダイスdice1d100=18 (18)

    絆ダイスdice1d44=39 (39)→七海 真美

    関係性dice1d100=47 (47)→普通


    以上の情報を元に第8話を作成します……!

    舞台は【あにまん市地下街】です……!

  • 77◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 02:43:04

    それでは、本日はここまでとさせていただきます……!

    今日もたくさんの感想ありがとうございます……!

    2スレ目も、よろしくお願い致します……!

  • 78二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 02:57:53

    フライフィアー!?まだ初登場回だぞフライフィアー!
    上手くいけば文字通りの対運営最終兵器だったんだが20未満じゃ厳しいか

  • 79二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 03:02:45

    もしかして、能力的に天敵過ぎるから始末するためにバトロワに放り込まれたのか?
    パラサイトドール視点だとフライフィアーは勝ち目ほとんどないだろうし、一話で死んだパペッタンも厳しい相手だろうし

  • 80二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 03:25:30

    飛行ユニットの生存ダイスが低いのは地下街でまともに飛べないからかな
    みんな基本いい子そうだから生き残ってほしい

  • 81二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 06:59:48

    久々に激闘が始まりそうだけど…この面子で最初に仕掛けるとしたら誰だ?みんな平和主義者っぽいけど…
    やっぱり黒龍の影響だったりするのかな

  • 82二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 08:26:54

    こういう時のための非参加やエネミーよ
    丁度エネミーに運営からの命令受けて動きそうなのいくつかいるし

  • 83二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 09:07:53

    正直ジャックの魔法じゃティターニアに勝つのは厳しそうだし暗殺を狙うのかな…?
    最終目標が読めない

  • 84二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 10:16:37

    エネミー案とアイテム案です。
    エネミー案
    【名前】ブレーン・スイーパー
    【説明】蛸と海月を融合させたようなエネミー。闇の中を縄張り・狩り場として泳ぐ。獲物を見つけると触手で絡め取り、吸気口じみた管を張り付けてから記憶や知識をチュピチュピチャパチャパと吸い出す。力は成人男性位あれば引き剥がせるが抵抗を抑えるため強い多幸感を引き出す墨状の魔力を触手から注入していく。吸われた知識・記憶はブレーン・スイーパーが死んだときに持ち主に還元される。偶に何かを思い出すのはブレーン・スイーパーが死んだからというスラングが一部の魔法少女達の間で存在している。

    アイテム案
    【名前】スイーパー墨汁
    【説明】ブレーン・スイーパーから取れる墨。摂取すると身を包む多幸感を味わえる。肉体に異常を来す事が無い代わりに使いすぎると生存本能や生理的欲求すら凌駕するほどの中毒性を発揮するので薄めて使おう。

  • 85二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 10:50:09

    そうかエネミーもいるんだった

  • 86二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 14:40:25

    しかし飛んだり機動力が売りの子が多い中で地下市街引いちゃうのは普通にキツイな…

  • 87二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 15:28:05

    傷物お姫様のハートはHeartなのかhurtなのか

  • 88二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 15:33:55

    >>87

    ハートがhurtなんでしょ多分

  • 89二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 18:26:34

    本編未登場の魔法少女
    2.星月 夜/アルセーヌ

    3.ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイ

    7.夜祖神 髑髏/ドレッドノート

    8.刈屋 伊織/ミストアイ

    11.ナサリーブラウン

    12.冨島千秋

    13.ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス

    14.マク=ハク/ノーブル・サヴェージ

    17.犬上 沙美/ハスキーロア
    21.和妻 颯葵/トリックスター

    22.大川 羽蘇/オオカワウソ

    23.木羽 マミ/ビリーバー

    29.陣内 葉月/ブラックブレイド

    30.蜂矢 恋蜜/ハニーハント

    31. 逝凪 素鈴/ワンフロムアウター
    
32. 栗田 柿子/ジャスティスファイア

    37.王城 姫子/クィーン

    38.再世 優/テンガイ

    41.抜刀 金

    残り19名で、現時点での参加者の死亡者数は3名。第一巡もようやく終わりが見えてきたね

  • 90二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 19:03:44

    もうそんなに進んだのか…早いな

  • 91二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 21:09:28

    最短だとあと5話で一巡か

  • 92◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:54:30

    第8話 投下します……!

  • 93◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:54:58

     意外と、終電でも人が乗っているんだな、と空は思った。
     十六歳の高校生である空にとって、終電とは、言葉だけならドラマなどで聞いていても、実際に乗ったことはなかった。
     疲れ切った表情のOL、泥酔しているサラリーマン、ラフな格好の青年、ガラの悪そうな大男。
     様々な人間が、思い思いに時間を潰しながら、同じ空間を共有している。

    (もし、魔法少女にならなければ、私は人生で一度も終電に乗らずに死んでいたわけだ)

     空は高い所が好きだ。
     だからビルの屋上にこっそりと忍び込んで(鍵はかかっていなかった)、飛んだり跳ねたり、下界を覗き込んだりと存分に楽しんで。
     結果、落下した。
     その際に魔法少女に覚醒していなければ、空はそのまま不審死を遂げていたことになる。
     どうして落下する破目になったのか、空はよく覚えていない。
     いくら興奮していたにしても、屋上にはフェンスが掛かっていたはずだ。

  • 94◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:55:23

     それを乗り越えてしまったのだろうか。
     落下のショックか、あるいは魔法少女に覚醒したショックか、どちらにせよ、直前の行動を空は思い出すことが出来なかったし、思い出さなければならないとは思わなかった。
     これからも屋上に通い続けるなら、失敗に対する反省として思い出す必要もあるだろうが、もう空に『屋上』は必要ない。
     田中空、魔法少女名スカイウィッチ。
     得意魔法、『箒に乗って空を飛べるよ』。
     古典的にして正統派。空は、空を飛べる魔法少女だ。最大高度は13㎞。
     ここまで高く飛べる空にとって、もはやビルの屋上など地上とさして変わらない。

    (そう、私は空を飛べる)

     座席から伝わる振動を感じながら、空は思う。

    (そんな私が、今は地下に居る)

     空は、地下鉄に乗っている。

  • 95◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:55:48

     飛行という移動手段を有している空にとって、電車はお金が無いと乗れないし時間帯によっては混むし何より全然高くないしと、乗るメリットが何一つない乗り物だった。
     だからか、久しぶりに電車、それも地下鉄に乗って、少し新鮮な気持ちになっている。

    (まぁ、乗りたくて乗ったわけじゃないけど)

     魔法王による宣告の後、気づけば、空は車内に居た。
     まるでうたた寝から目覚めたかのように。ただ、どう考えても電車に乗り込んだ記憶が無かったことから、殺し合いの夢をみたのではなく、この場所にワープされたのだと解釈する。
     殺し合いは現実だ。

    (どうしようかな……)

     空は、戦いとは無縁の生活を送って来た。魔法少女としての日課は空中散歩で、エネミーを倒したり、他の魔法少女とトラブルを起こしたこともほとんどない。
     魔法少女の、対人戦におけるセオリーが分からない。

  • 96◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:56:13

    (とりあえず、ずっと空中に居れば安全だよね? 高度1万メートルまで上がっちゃえば誰も私を攻撃できないだろうし……。
     うん、地下鉄降りたらそうしようっと)

     というか切符持ってなくね? と空は気づいた。

    (魔法王の馬鹿……! それくらい用意しといてよ……もう、どうしよう……)

     空は頭を抱えた。
     田中空は空を飛べる魔法少女だ。
     ただ、魔法とは裏腹に、本人の性格は明るくあざとい、普通の女子高生である。地に足がついている。
     縁遠い殺し合いの心配より、どうやって無賃乗車を切り抜けるのかの方が心配になっている。

    「あの、向かい側、いいですか?」

    「あ、どうぞ」

     落ち着いた、されど可愛らしい少女の声に、空は慌てて返事をした。
     帽子を被った小学生くらいの女の子が、自分の向かい側に座る。

  • 97◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:56:38

    「……ハスキーロア?」

     と、空は少女に対して声をかけた。
     少女は首を傾げる。

    (あ、違う……)

     よくよく見れば顔立ちがまるで異なっている。
     雰囲気もハスキーロアよりややクールな印象だ。

    (というか、似てるの年齢くらいじゃん。どうして勘違いしたんだろ)

     ハスキーロアは、空の数少ない魔法少女の知り合いだ。
     コンビニで新商品を物色していたときに、帽子を被った少女に声をかけられたのだ。

    「あなた、魔法少女ですよね」

     と。……ん?
     空は、向かい側に座った少女に視線を送った。
     今の台詞は思い出の中の言葉ではなかった。確かに向かい側の少女がそう口にした。

  • 98◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:57:09

    あの時のハスキーロアと同じく、帽子を被った少女に。

    「……やっぱり、ハスキーロア?」

    「違います。私は……麦、といいます」

     おどおどとした様子のハスキーロアと違い、やっぱり麦と名乗った少女はクールに感じる。
     ただ、名を名乗るときに、僅かに言い澱んだのが気になった。

    「もしかして、あなた、犬?」

     麦が目を見開く。

    「……何故それを?」

    「前、変身してないのに、犬系の魔法少女に正体バレてさ。どうも嗅覚? 的なやつでわかるんだって。すごいよねぇ。あなたもそんな感じ?」

    「……そうですね」

     麦は感情を感じさせない目で空を見据える。

    「まぁ、ハスキーロアという名を出したので、確定したんですけど」

    「え、あなたもハスキーロアの知り合いなの?」

  • 99◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:57:48

    「いや、さっき魔法王が名前呼んでたじゃないですか」

     あっ、と空は合点がいった。
     確かにハスキーロアは魔法王に真っ向から異を唱え、名指しされていた。
     つまり、ハスキーロアという名を出した時点で、魔法少女でありかつロワ参加者であることは確定するのだ。

    (駄目だ私、どうも浮ついちゃってる)

     改めて指摘されれば実に初歩的なミスだった。

    「私が貴女に接触したのは情報交換がしたいからです。……変身していないってことは、ゲームに乗る気が無いことはわかりますし、変身してないあなたを襲ってない時点で、私も乗ってないことは証明できてますよね」

    「え、あ、うん。そうだよね」

     殺し合いが始まってもどこかぼんやりとしていた空だったが、麦の冷静な論理に徐々に現実に引き戻される。

    「私の魔法は、犬に変身することです。たったそれだけの魔法ですが、俊敏性に関しては他の魔法少女を圧倒できます。更に、他の犬を支配下に置くことも可能です」

    「おおー」

  • 100◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:58:16

     確かハスキーロアがシンプルな強化魔法(実際にはお姉ちゃん魔法だったか?)だったことに比べると、麦の犬魔法はなかなか面白い。
     暇なときは犬を集めてたくさん遊べそうだ。

    「私の魔法は……あ、その前に自己紹介がまだだったね。私の名前は田中空。魔法少女名はスカイウィッチ。名前の通り、空を飛ぶことが出来るの」

    「空……それは、便利な魔法ですね」

     麦は本気で関心しているようだった。

    「この電車を浮かせたりもできるんですか?」

    「銀河鉄道みたいに? 無理かな。飛べるのは私だけ」

     あるいは、スーパーマンのように下から持ち上げれば車両と一緒に飛ぶことも可能かもしれない。
     しかし、空は決して身体能力に特化した魔法少女ではない。常人の十倍とはいえ、さすがに車両は手に余る。

    (持ち上げられたにしても、魔力の維持がね……。空中で魔力切れになったら終わりだし)

     落下死。きっと本来の田中空に待っていた結末。

  • 101◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:58:40

    「あなたは空が飛べる。私は犬に命令できる。どうやら私たち、周囲の探索においてかなりアドバンテージを得られそうですね」

    「あ、なるほど」

    (うう、年上の威厳が……)

     外見的に恐らく年下と思われる少女にリードされ、空はたじたじとなってしまう。
     ただ、そうやって賢そうな少女に場を任せて流されるのも悪くないとは感じていた。
     戦闘面では素人。魔法に関しても、口が裂けても玄人とはいえない。
     一方、麦は場慣れした空気がある。エネミー退治などを積極的にやってきたのかもしれない。

    「次に、人間関係ですね。空さんは、知っている人が参加者に居ますか?」

    「えっと、あの時、全員の顔を確認できたわけじゃないんだけど……」

     何しろ40人以上はいた。
     ただでさえいきなりファンタジーっぽい空間に瞬間移動して驚いていたのだ。知人が居ないか完璧に確認はできなかった。
     一ついえるのは

  • 102◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 22:59:07

    「ハスキーロア……魔法王に食ってかかった子。あの子とは、ちょっとした知り合いなんだよね」

    「友人、ですか?」

    「まぁそんな感じ」

    (なのかなぁ。道端で会ったら声を掛け合う程度の関係だったけれど)

     歳も離れているし、生活スタイルも違う。
     友人と言う表現も適切か分からず、知人という表現がぴったりくる。
     だからといって、わざわざ友達じゃないと否定する気もないが。

    (でも私、ハスキーロアが危ないときに、動けなかった)

     勇気を持って魔法王に抗議し、目をつけられていたハスキーロア。
     年上の知人として、あの時助けに入るべきだったのでは、と空の心に後悔が産まれる。

    (……会ったら謝ろうかな)

    「私の知人は姚莉鈴です。竜胆色の髪をミディアムボブにしている、歳は空さんと同じくらいです。……会っていたりしますか」

  • 103◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:01:23

    「ごめん、知らない」

     殺し合いが始まって、空は一度も電車から降りていない。停車すらしていないので、恐らく麦も初期位置は電車なのだろう。

    「その人は……麦ちゃんの大切な人なの? 魔法少女の先輩とか?」

    「……家族です」

     と、麦は顔を恥ずかしそうに俯かせて答えた。

    (お姉ちゃんなのかな……そう言えば麦ちゃんの名字聞いてなかったっけ)

     フルネームを聞こうとした瞬間、麦はすくっと立ち上がった。
     すると、麦が着ているドレスのポケットからスマホが滑り落ちる。

    「あ、麦ちゃん、スマホ落としたよ」

  • 104◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:01:38

     座席の下に転がったスマホを拾おうと、空は屈んだ。
     ——首筋に、熱が走った。
     それは、瞬時に消え去り、奇妙な酩酊が空を襲う。

    (あ、この感じ……)

     地に足がつかないような、奇妙な浮遊感。
     まるで。

    (空を飛んでいるみたい……)

    【田中 空/スカイウィッチ 死亡】

    【残り 40人】

  • 105◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:02:14

     首筋を噛み切られた田中空の死体を見下ろしながら、麦はこの後に起こる変化を待っていた。
     死亡した魔法少女は光の粒子となって消える。
     では、人間態のまま死亡した場合どうなるのか。

    (経験則上、消えずに残り続ける……。このゲームでは……)

     数秒待つ。
     明らかに絶命しているにも関わらず、消える気配はない。

    (やっぱり同じか。……人間態で死亡した場合、死体は残り続ける)

     口周りについた血をハンカチで拭う。
     座席の影に隠れる形で事を済ませた。

  • 106◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:02:48

     そのためにわざとスマホを落とし、空に拾わせることで屈ませ、彼女の姿が他の乗客に見えないようにしたところで首筋に噛みついたのだ。
     血が出過ぎないように瞬時に傷口を焼いている。
     即死するかは賭けだったが、幸運にも(きっと空もさほど苦しまずに逝けたはずだ)、追撃を加えるまでもなく、田中空は絶命した。

    (ご主人様……)

     自らの主人、ハイエンドは最初の場所で目撃している。
     生き残れるのはたった一人。
     ならば、忠犬としてご主人様を優勝させることは、麦/ヒートハウンドにとって当たり前のことだった。
     空殺しは慎重に行われた。
     偽造ではなく、本当に変身していないか確証が持てるまでは距離をとって様子を伺い(変身していなくても嗅覚で何となく魔法少女かは分かる)、接触してからも自分が犬系だとは即座に看破され焦ったが、同時に炎系であることは伏せておいた。
     ヒートハウンドと名乗らなかったのはそれが理由だし、犬系だけと誤認させるため、犬に変身できて俊敏に動ける、犬を操れるといった嘘をついた。

  • 107◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:03:33

     実際には犬に変身するのではなく犬に戻るのであり、魔法少女が人間態だと常人レベルなように、麦も変身を解除すればごく普通のゴールデンレトリバーである。
     犬を操ることも出来ない。
     精々他の犬とある程度意思疎通が出来る程度だ。

    (空がスマホを拾わない可能性、あるいは私と同じようにゲームに乗っている可能性、全てを看破され戦闘に突入する可能性……。色々な可能性があった。その時に身体を炎に変えられる魔法は伏せておいた方が戦闘を有利に展開できる。
     ……結局、戦闘にはならなかったけど)

     犬系の能力……というか魔法少女としての身体スペックだけで殺しに成功した。
     麦は、田中空の死体を、頭を窓側にする形で寝かせる。
     すぐに車掌が気づくだろうが、僅かな時間稼ぎにはなるだろう。
     その頃には、麦はとっくに駅を脱出している。

    (田中空……)

     目立ちたくなかったのか、あるいは別の理由なのか、とにかくにも変身すらしていなかった彼女。

  • 108◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:04:07

     麦が接近しても碌に警戒せず、ぺらぺら情報を話し、無防備にスマホを拾おうとした彼女。

    (あなたはご主人様の敵だから悪人……のはずがない。
     きっと底抜けの善人だった。ご主人様の殺しの対象にはならないような、そんな良い人……)

     それでも謝罪するつもりは無い。
     悪いのは、こんな残酷なルールを敷いた魔法王なのだから。
     今はただ、ご主人様の優勝の糧になった魔法少女へ。

    「謝謝(ありがとう)」

  • 109◆xaazwm17IRZa24/02/20(火) 23:04:22

    投下を終了します……!

  • 110二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:15:27

    空が死んじゃったか、私が書いた一人だったんだけど
    苦しまずにいけたのならまぁ……
    キャラもたってたと思うしね
    けど生存ダイス18の空が死んだのなら
    同じ18のらいとさんも厳しいか?

  • 111二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:18:27

    思ったよりシビアだなぁ…
    そうか、そうだよな、主人の方針がわかってないならそうなるよな……

  • 112二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:32:19

    途中「スレ主ヒートハウンドの魔法間違えてるのかな?」って素で思っちゃった
    自分もまんまと術中に嵌ったわけだ……

  • 113二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:36:30

    割と真面目にフライフィアーは生きててもらわないと終盤でかなり厳しそう、ソシャゲだったら黒龍パラサイトドール戦で人権レベルのキャラだもん
    そんでヒートハウンドの頭脳よ、多分思ったよりやばいよこの子
    殺し屋としても一人前くらいにはなってそうな雰囲気するよ

  • 114二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:53:16

    まぁとは言ってもパラサイトドールの命すら結局はダイス次第だし、仲間に裏切られたりテンガイやティターニアにボコボコにされて退場もあり得るんだよな

  • 115二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:53:35

    これで4人か…一巡目で一割以上減りそう

  • 116二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:55:16

    正直前バトロワに比べたらマイルドな減り方…というかスレ主の文章力が素人目に見ても分かるくらい上がってるから、その分文量も多くなってるな…

  • 117二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:55:25

    みんなはさあ今の所誰が一番推し?拙者はジャック・ザ・リッパー、スタンスが気に入った

  • 118二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:58:21

    今まで登場した中で好きなのはアリス(略)デッドさんとティターニア
    期待してるのはブレイズドラゴン

  • 119二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 23:58:25

    スピードランサーとハイエンド
    基本冷血で利己的で物騒だけどたった一人だけ矜持を曲げてまで大切にする相手がいる人

  • 120二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 00:05:45

    まだ登場すらしてないけどテンガイが推し

  • 121二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:00:22

    やはりどんな者でも例外なく適用される幸運値が真に恐ろしいなあ、しかし善性で犠牲になると心が痛い

    私はティターニア推しですね。剣でド級の魔力を受けたシーンで好きになりました。

  • 122◆xaazwm17IRZa24/02/21(水) 01:37:47

    続きは明日に回します……!

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……! とても励みになります……!

  • 123二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 02:18:46

    二重に故人だけどパペッタンの儚くも力強い活躍が未だに一番好き

  • 124二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 04:13:31

    ヒートハウンドが魔法少女になったきっかけと今回の感じからすると今までにも殺人はしてそうだけどクレアボヤンスはそこら辺知ってて推しなのかな?

  • 125二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 08:35:42

    ハイエンドが対主催側の魔法少女たちと合流した時、ヒートハウンドのことも受け入れて貰える状況なら良いけどな
    ハートプリンセスが生き残るならそうはならなそう

  • 126二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 08:50:46

    疑うだけじゃ協力関係を築けないけど不用心だとこうなる 難しいね

  • 127二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 12:40:40

    >>124

    クレアボヤンスが倫理観無しのヤバい奴か、千里眼を誤魔化すほど殺しが上手いかのどちらかなんだよな…

  • 128二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 14:00:07

    このレスは削除されています

  • 129二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 14:16:29

    全勢力に一人ずつ裏切り者か不安要素がいるのバランス良いな

  • 130二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 15:16:21

    偶然なんだけど悪を憎む麦ちゃんの嫌いな相手が
    悪役に憧れるドレッドノートなのも良いな

  • 131二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 16:26:33

    姚 莉鈴/ハイエンド
    柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド
    桐生 ヨシネ/バーストハート
    薬師院怜那/ミョルニル

    七話終了時点での単独行動勢はこの四人?

  • 132二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 16:57:12

    このレスは削除されています

  • 133二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 22:16:39

    >>128

    ①戦力バランス取れてるけどクリックベイトが不穏な雰囲気で今後に期待できるパーティ


    ②最高戦力で珍道中してる感じが好き。ギャグもシリアスもやれる


    ③それぞれ違った思惑で動いてるのが正にバトロワの一時的な同盟って感じ。自殺志願者と戦闘狂に挟まれる常識人の猫ちゃんの明日はどっちだ


    ④きけんがあぶない

  • 134二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 22:19:12

    >>133

    4よ…きけんがあぶないって…まあそうだけど

  • 135二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 01:20:54

    復帰したけど今日はないかな

  • 136二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 03:36:59

    流石になさそうだし俺らも寝て待とう

  • 137二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 07:50:23

    勢力が綺麗に別れているからどちらかが脱落したら状況が一変しそうよね

  • 138二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 11:14:15

    残りメンバーで新しい同盟が生まれるかな

  • 139二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 12:20:21

    >>124

    >>127


    私はクレアボヤンスがたまたまそういった場面を

    タイミングよく見れなかった説をおしますね

    いつも使っているわけではないわけで

    そしてついにクレアボヤンスは今回空を殺すシーンを

    見てしまう所だったが無意識に見るのを拒絶して

    見えなかったとか……どう?

  • 140二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 14:18:44

    >>138

    全員悪人で目的のために利用し合ってるだけのカス魔法少女同盟とか生まれて欲しい

  • 141二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 14:23:34

    逆にメリィは麦ちゃんに裏があるってことも把握してるかもねぇ
    殺し屋やってる以上ネット上の依頼や送金など必ず足はつくし

  • 142二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 15:46:43

    自分が投稿したミョルニル
    絵は描けないので生成したやつだけど

  • 143二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 17:12:52

    ジャックやブレイズドラゴンみたいに強いはずが戦ってない魔法少女がかなり増えてきたので2巡目にも期待
    千郷ちゃんのハンマーみたいに"ティターニアに匹敵する〇〇"が今後沢山出てきそう

  • 144二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 20:34:23

    ティターニアに匹敵するスパルタ!
    ティターニアに匹敵するポンコツ臭!

  • 145二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 20:40:11

    単位にされるティターニアさん…

  • 146二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 22:39:37

    ティターニアをも気絶させる10まんボルトの電撃を放つ魔法少女が出てきそう

  • 147◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:46:14

    昨日は顔を出せず申し訳ありません……!
    寝落ちしておりました……!

    第8話②を投下します……!

  • 148◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:47:02

     駅内にアナウンスの声が響いた。
     終電が到着したらしい。
     改札口を出た通路——既に閉店している売店コーナーの隣で、迷彩服の少女が膝を抱え、どんよりとした空気を漂わせていた。
     外見年齢は10代前半。
     深夜の駅には場違いだが、緑色の髪に迷彩服の軍服といった奇抜な格好は、道行く大人たちに警戒心を起こさせたのか、声をかける者はいなかった。
     少女もまた、周囲の大人たちには目もくれず、一人自分の世界に閉じ籠っている。

    (もしやこれは……)

     少女の脳裏に最悪の想像がよぎる。

    (解体処分でありますか~!?)

     少女は名を、らいと、という。
     魔法少女名、フライフィアー。
     その正体は、米軍のステルス戦闘機F-35の付喪神である。
     付喪神とは、長い年月が経た道具に霊魂が宿るもの。
     F-35の運用が始まって9年余り。
     伝承では、付喪神となるのは百年かかると言われているが

    (それだけ当機(フライフィアーの一人称)が優秀ということでありましょうなぁ)

     自画自賛をすることで沈んでいたメンタルを回復させる。

  • 149◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:47:31

     が、すぐにその心は降下を始めた。

    (しかし、この状況……当機は廃棄されたのでありますか……ぐすん、まだまだ現役なのに……。バリバリ飛べるのに……)

    「Jesus(しんど……)」

     がっくりと首を落とすフライウィアー。
     元々彼女は、妖精に半ば脅される形で魔法少女になった。
     付喪神として基地でのんびりしているところを発見され、魔法少女にならなければ上層部にこのことを報告し、解体処分するぞと脅迫されたのだ。
     震えあがったフライウィア―は慌てて魔法少女になった。
     まぁ、付喪神化してからはジャパニーズ・アニメーションを楽しんでいたから魔法少女に憧れはあったし、魔法少女になったからといって、何らかの責務が生じるわけでもない。

    「——む」

     フライウィア―は立ち上がった。
     F-35にはAN/APG-81と呼ばれる火器管制レーダーがある。

  • 150◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:48:00

     その付喪神であるフライウィア―もまた、他の魔法少女より圧倒的に優れた探知能力を有していた。

    (魔力が二つ……)

     周囲に視線を運ぶ。
     帰路に就く人々。
     立ち止まることなく、ひたすら自宅を目指し出口へと向かう人々。
     その、人の波の中で。
     ——真っすぐに此方を見据える、幼女が一人。
     お姫様といった外見の黒ドレスにハイヒール、ティアラ。
     お遊戯会から飛び出してきたような風貌。迷彩軍服のフライウィア―とはまた別のベクトルで、深夜の地下鉄駅には相応しくない人物だった。

    「当機は、フライウィア―であります。貴殿の作戦目標をお聞かせ願いたい……」

    「……黙れ」

     その声には怒りが込められていた。
     はて、知り合いだったかとフライウィア―はメモリーを探る。

  • 151◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:48:31

     しかし、該当者は居ない。

    (もしや、当機のように何らかの兵器の付喪神でありますか。……当機は戦闘行為に参加したことが無いですが、姉妹たちは……)

     ソマリア、リビア、ウガンダ、イラク……。心当たりは幾つもある。
     敵国の兵器もまた付喪神化し、自分に復讐に来た。
     その可能性は十分に考えられた。

    「俺は……ハートプリンセス」

    (俺っ子でありますか!)

     ハートプリンセス。風貌に合った名だとフライウィア―は思う。

    「俺は……俺はもう、これ以上苦痛を味わいたくない……」

     そう言って、ハートプリンセスは拳を握った。

    「だから……優勝して、全部無かったことにしてやる」

    「——それは宣戦布告と解釈してよろしいか?」

     フライウィア―の銃口のような眼光にハートプリンセスは怯んだ様子を見せたが

    「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」

  • 152◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:49:08

     と雄たけびを挙げ、フライウィア―へと殴りかかる。
     フライウィア―は

    「……ああ、なんだ、民間人でありますね」

     瞬時に空気を和らげると、魔力を行使した。
     『糸を出せるよ』。
     魔力によって構成された糸が、瞬時にハートプリンセスを拘束する。

    「ああっ!?」

     あっという間に無力化され絶望の声を上げるハートプリンセスに、フライウィアーは笑顔で近づいた。

    「当機はアメリカ生まれですが、今は自衛隊所属の身。民間人を傷つけるなどあってはならないであります」

     こちらに殴りかかって来るハートプリンセスの素人丸出しの動きを観て、フライウィア―は彼女が軍事訓練を受けていないと看破した。
     自分がそうであるように、恐らく兵器の付喪神は軍人が出来ることは一通りできるはずである。

  • 153◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:49:51

    「ハートプリンセス殿。貴殿がどんな苦しみを抱いているか、当機には理解できないでありますが……殺し合いに乗るのは無謀ですな。殺されるて終わりですよ」

     糸から逃れようとハートプリンセスはもがいているが、微塵も拘束が解ける気配はない。
     素人なのも考慮しても、魔法少女の身体能力は成人男性の10倍。
     だが、ハートプリンセスにはそんな力が備わっていないように見える。

    (……妙でありますな)

     兵器にはそれぞれ特色がある。万能兵器など存在せず、互いにカバーし合って、作戦を遂行する。
     ハートプリンセスは冷静さを欠いているようには見えるが、錯乱はしていない。
     ここまで非力で、何故自分に攻撃を仕掛けた?
     魔法少女の常識を知らないのか、ただ感情任せに動いたのか、それとも……。
     ハートプリンセスが唐突にもがくのをやめた。
     フライウィア―は彼女の動向を注視する。

    「……フライウィア―」

    「……何でありますか」

    「——旅行するなら、どこに行きたい?」

     カッ、とハートプリンセスの身体が光った。
     駅内に轟音が響いた。

  • 154◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:50:16

     ハートプリンセスの魔法、『どんな場所にも旅行に行けるよ』。
     その能力は、爆発転移魔法。
     爆発の衝撃で空間を歪ませて瞬間移動する。爆発は自分にも当たるが、転移場所は自由。
     そして爆発の規模もまた、ハートプリンセスの好きなように調整できる。
     フライウィア―の糸から逃れるためにハートプリンセスが行使した爆発は、フライウィア―を巻き込み、近くの売店コーナーを吹き飛ばし、地下鉄に残っていた人々を恐慌状態に陥れた。

  • 155◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:50:48

    「テロだっー!」

    「逃げろ、逃げろーっ!」

     疲れた体に鞭打ってパニック状態になりながら地上への階段を駆け上る。
     無人の通路で、フライウィア―は自身に生じたダメージを確認する。

    「油断、でありますな……」

     咄嗟に両腕を交差して爆風から身を守ったことで、軽度の火傷で済んでいる。
     最高速度を出せれば爆風から逃れることは容易いが、元が戦闘機である性質上、一瞬で零から加速することは苦手だ。

    (戦闘自体は十分に続行可能。できれば処置をしたいところですが……中々、そう上手くはいかないようでありますな)

     駅に現れた二つの魔力反応。
     一つは、ハートプリンセス。
     もう一つは。

    「大丈夫ですか」

     静かにこちらに近づく、犬耳を生やした魔法少女。

  • 156◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:51:17

    「私、麦っていいます。魔法少女名は、ワンワンドッグ……」

    「今しがた、人を殺したばかりでありますね?」

     フライウィア―の言葉に、麦は足を止めた。

    「…………臭い、ですか?」

     それは犬系魔法少女ならではの発想だった。
     いえいえ、とフライウィア―は首を振る。

    「簡単な話なのですよ。貴殿がただのお人よしならもっと焦ってこちらに駆け寄るはずであります」

     ふと、フライウィア―のメモリーに最近知り合った少女の顔が思い浮かぶ。
     神様と友達になったの初めて~と無邪気に笑っていた、七海真美のような少女なら、きっとそうしていた。

    「そして、現実主義者であるなら、爆発が発生すればその場を離れる。あるいは、息を顰めて様子を窺うはずであります。
     貴殿のようにゆっくりと近づくことはまずないかと」

    「……それだけで、私を殺人者だと?」

  • 157◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:52:03

    「カマかけでありますよ。間違いだったら謝罪するつもりでありました」

     フライウィア―は元が戦闘機とは思えない程お花畑な性格をしている。日課もアニメ鑑賞で、自衛隊基地でのんびりと暮らしている。
     が、彼女は馬鹿ではない。むしろ、賢い部類に入る。
     戦闘機に乗れるのは少尉からである。優秀な者にしかパイロットは務まらない。
     その概念が付与されているのか、フライウィア―もまた、優秀な頭脳を有していた。

    「当機を撃破するつもりでありますね?」

    「……はい、そのつもりです」

    (出会う魔法少女がいずれもゲームに乗った者ばかり。先が思いやられますな)

     麦は場慣れしている。民間人ではない。

    (最悪の場合——火器が必要でありますな)

     無人の通路で、元戦闘機と元ゴールデンレトリバー、異色の対決が始まろうとしていた。
     

  • 158◆xaazwm17IRZa24/02/22(木) 22:52:28

    投下を終了します……!

  • 159二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 23:06:37

    (フライフィアーの一人称)←好き
    そしてみんな思った以上にゲームに乗ってるなぁ

  • 160二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 23:07:58


    殺意の高い犬やら話が通じそうで通じないメンヘラやらこのグループは目まぐるしい

  • 161二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 23:16:35

    フライフィアーの長所
    ・かわいい
    ・ステルス機由来の優秀な基礎スペック
    ・場所を選ばず応用の利く魔法
    ・アホの子に見せかけた高い知能
    ・ゲームに乗らない良識あるスタンス
    フライフィアーの短所
    ・このあと死ぬ

  • 162二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 23:17:23

    短所が致命的で草

  • 163二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 23:20:27

    しかしこれは不味いのでは?
    たしか麦の能力ってメラメラの実を食べた状態…
    つまり糸も火器もほぼ効果ないはずだし
    出力がいいって事は金属の身体でも溶かされちゃうし
    ダメージまで入ってるやっぱり、らいともここで……

  • 164二次元好きの匿名さん24/02/22(木) 23:36:39

    魔法国側の場所案

    【名前】
    密やかなる夢幻館
    【説明】
    霊都エメラルドから遠く離れた魔法国の最果てに位置する古びた城。魔法王ですらその存在を知らない。
    底無しの虚空を臨む断崖の上に建てられ、通常の方法で立ち入ることは出来ない。
    遥か遠い昔に打ち捨てられたようだが、今なお燐光とそれに照らされる亡霊達の影が蠢き、デスゲーム開催に際して現れた新たな主人達を歓迎している。

  • 165◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 01:53:47

    本日もたくさんの感想、アイデアをありがとうございます……!

    そして、ここまで来てようやく気づいたのですが
    スマホで連絡を取り合えば知り合い同士すぐに合流できるのでは……?

    ただ1巡目が終了するまでは誰と誰が知り合いなのか確定しないので
    後付けですが「あにまん市は深夜0時~6時まで謎の電波障害が発生していた」ということにします。

    2巡目からは時刻を6時間区切りではなく2時間区切りにして、各々市内を移動しながら合流を目指す展開にしようかなと考えています

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 166二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 03:03:36

    すぐに合流されたら面白くない運営が妨害していたとかでもおかしくなさそう

  • 167二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 07:03:28

    記憶違いじゃなければ3話でメリィがヤフージャパンやSNSを開いてなかったっけ?

  • 168二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 07:48:57

    実質ドフラミンゴvsエースと見てるだけのくま

  • 169二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 09:06:12

    ここはあにまん市だぞ
    通信システムがダウンしたり少しの間だけ復活したり一部を除いて規制されたりしたんだろう

  • 170二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 09:35:20

    しかし多才だなフライフィアー
    マップと相手とタイミングのせいで強みが死んでるのが残念なところだが

  • 171二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 10:11:41

    改めて思うけど覇気のない世界の自然系って強いんだよな
    てか無生物の炎になれるなら麦ちゃんも黒竜に食い下がれるかも?

  • 172二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 11:38:37

    ヒートハウンド、少なくともカタログスペックは飼い主より強いだろ
    そもそも攻撃を当てられる子がどれだけいるかって話だし
    燃費が良いなら変身解除時を狙った暗殺も難しい

  • 173二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 11:46:34

    もしヒートハウンドのご主人を狙ったらどうなるだろうか…千里眼、ハッキング、人海戦術、etc.情報戦に強い奴がいるから出来そうだけど

  • 174二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 12:19:35

    ・魔力でできてる以上ティターニアの攻撃は弱点
    ・ブレイズドラゴンも必殺技で変身強制解除とかしてきそう
    ・ジャックが消火器を武器化してきたらまずそう

    など色々弱点はある

  • 175二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 12:22:21

    火力のティターニア、技のブレイズドラゴン、対応力よジャック・ザ・リッパーか…

  • 176二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 14:23:50

    ハートプリンセスは意外と倫理観とかないタイプ?
    年長者だしお労しい常識人かと思ったんだけど…

  • 177二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 14:49:59

    フライフィアーも強いんだけどねぇ…完全に相手と場所が悪い
    外に居るだけで飛行する恐怖の名の如く本当に凶悪だっただろうに

  • 178二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 16:01:09

    そうかブレイズドラゴンの必殺技なら物理耐性持ちにも問答無用でダメージ与えられるのかそうか…

    【気を配る】が範囲数kmの気配察知
    【気が小さくなる】が隠形の術
    なら絶招(必殺技)は【気を殺す】とかかな…

  • 179二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 16:17:59

    必殺技は”気を狂わせる”じゃなかったっけ?
    気を殺すのは戦闘中に目の前にいても見失うくらいの感じじゃなかろうか

  • 180二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 16:49:08

    >>176

    お姫様はハートブレイクされてて発狂起こしやすいから…

  • 181二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 16:51:28

    「気を込める」、「気を高める」、「気を砕く」で身体能力や技の破壊力増強
    「(空)気を読む」で相手の攻撃の先読み
    「気が重い」で防御力増強

    めちゃくちゃこじつけられるな気を使う魔法

  • 182二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 17:33:48

    >>181

    出会う相手…どいつもこいつも雑魚ばかりで"気が滅入る"…とか言って戦闘開始して欲しい

  • 183二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 17:37:30

    >>179

    >>178

    シンプルイズベストで『気が狂う』かねぇ

  • 184二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 18:14:53

    SS:規格外・運営
    S:マップ兵器
    A:タイマンなら最強
    B:雑魚エネミーなら一掃できる
    C:雑魚エネミーにも苦戦
    D:非戦闘員

    みたいな魔法少女強さランクがあった時
    麦ちゃんはAtierに入ってきそう

  • 185二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 18:31:08

    いやマップ兵器クラスはあるんじゃないか
    燃費良いロギアってだけじゃなく破壊規模もおそらくエースやサボくらいは出せそうだし
    一番の強みは割り切って殺せる精神とそれを活かせる頭脳と戦闘経験だろうけど

  • 186二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 19:31:47

    能力バトル物の例に漏れず相性ゲーなとこあるからランク付けは難しいのよな
    ⭐メリィがTier最下位だったとして千郷インパクトを無傷でやり過ごせる可能性も0じゃないし

  • 187二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 19:43:58

    このレスは削除されています

  • 188二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 20:44:50

    火犬のヒートハウンド…って思ったけどこれじゃ業火のフレイムだしな
    つか説明文のだけでも大概なのに飼い主が中国拳法を極めた殺し屋なせいでさらにスペック盛られて火拳出来そうなの笑う
    フライフィアーに天夜叉も似合う

  • 189二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 21:08:01

    皆んなのヒートハウンドのご主人のイメージって何?
    自分は李書文

  • 190二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 22:54:20

    そういえばフライフィアーの糸ってどれくらいの事ができるんだろうか
    取り敢えず糸を操り拘束は出来るみたいだけど
    リヴァイみたいな立体機動とかできたりするのかな

  • 191◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:24:58

    続きを投下します……!

  • 192◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:25:32

    (相手は犬系でありますな……)

     犬耳と尻尾からフライフィアーはそのように判断する。
     実のところ、フライフィアーは対魔法少女の経験が乏しい。しかし豊富なアニメの知識から犬系の魔法少女ということで幾つかの仮説は立てられる。

    (恐らく得意とするのは接近戦)

     遠距離戦を得意とするなら、わざわざフライフィアーに近づこうとする理由がない。
     姿を晒す前に不意打ち遠距離攻撃をかませばいいのだから。

    (犬……噛みつきに警戒でありますな)

     視線を逸らさずこちらにじりじりと近づく様は、正に猟犬。

    (まずは捕らえる)

     糸を出す魔法を、フライフィアーは重宝している。
     ——フライフィアーが本気で武装を展開すれば周囲が更地と化すからだ。
     人払いがされている状態とはいえ、インフラを破壊したくはない。
     フライフィアーと麦の視線が交錯する。

  • 193◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:25:59

     麦を囲うように魔力で編まれた糸が出現し——捕らえる前に、麦は獣じみた軽やかな身のこなしで糸をすり抜ける。

    (予想以上に速いっ……!)

     だが、まだ距離はある。それに、麦の速さは把握できた。
     次は、避けられることを前提として糸を二重に用意するなどの工夫ができる。
     フライフィアーは冷静に次の手を考え——未だ距離が離れている麦が、こちらに手を翳すのを見た。
     そして、熱源反応が急速に上昇するのを。

    (なっ、まさか彼女の魔法は……)

    「烟火(yānhuǒ)」

     1000℃を超える高温の炎がフライフィアーを呑み込んだ。

  • 194◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:26:28

    (上手くいった……)

     燃え上がる通路を注意深く見守りながら、麦は自身のブラフが上手く機能したことに安堵する。
     スカイウィッチにやったように、あくまで自信を犬系のみと誤認させ、炎系であることは秘匿する。
     そうなれば相手は近接戦を警戒し、遠距離攻撃への警戒を疎かにする。
     すかさずそこに必殺の一撃を叩き込み、勝利する。
     魔法少女の身体能力が常人の10倍であろうと1000℃以上の炎をまともに浴びれば即死する。
     麦は勝利を確信し

    「なるほど、これが魔法少女同士の戦いでありますか」

     炎の中から出現したフライフィアーに驚愕した。

    (そんな、彼女の魔法は糸だったはず……どうやって炎を凌いで……)

     否、よく見れば無傷ではない。
     身体中から煙が噴き出し、焦げている部位もある。
     しかし、フライフィアーは平然としているのだ。魔法少女にだって痛覚はあるはずなのに。

    「どうやら、魔法少女は人間兵器と解釈するのが正しいようでありますな」

  • 195◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:27:02

     で、あるならばこちらも相応に対処するであります。
      そうフライフィアーは宣言し、彼女の傍らに魔法陣が展開される。

    (くっ……)

     一旦退くべきかと麦は逡巡した。だが、自分が殺し合いに乗っていると喧伝されると今後やり辛い。
     どう対処すべきか。その焦りが、彼女の行動を遅らせ。

    (いや、ここは見極めるべきだ。フライフィアーの魔法を!)

     そう決めた時には、フライフィアーは武装を出現させていた。
     ミサイル全長 2,490mm、ミサイル重量 304kg、空対地ミサイルAGM-65 マーベリック。

    (……何て出鱈目!)

    「FIRE!」

     一個人に向けるにはあまりにオーバーキルな一撃が、麦へと命中する。
     回避は不可能。マーベリックの速度は——超音速であるが故に。
     破壊の嵐が、駅内を蹂躙した。

  • 196◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:27:26

     オーバーキルだ、とフライフィアーは自覚していた。
     が、判断は間違えていないと、自己を評価する。
     麦と名乗った魔法少女は、犬系だけでなく、炎を放射してみせた。
     フライフィアーが戦闘機の付喪神であったために、戦闘不能に陥らずに済んだが、例えばあれを浴びたのが他の魔法少女なら、死亡していたであろう。
     麦は危険だ。
     戦争は、互いの性能を披露し合い、讃え合う場ではない。
     これ以上の攻撃を許す前に圧倒的火力で殲滅する。駅を破壊してしまうことは忍びないが、コラテラル・ダメージだと許してほしい。
     マーベリックは麦に命中し、閃光が光る。
     そして、人体を消失させる程の熱が麦を包み

    「……馬鹿な」

     爆発によって生じる熱が、麦の身体に吸い込まれていく。

  • 197◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:27:58

     否、麦そのものが炎と化しているのだ。
     マッチに灯った火に別の火を近づければ融合するように、マーヴェリックの熱と麦の炎は融合し

    「ロギア系でありましたか……」

     フライフィアーは自身の失敗を認めた。
     彼女は——自分の天敵だった。

    「星火(xīnghuǒ)」

     マーヴェリックによって生じた超高温の炎が自身に迫りくるのを目視しながら、フライフィアーは自身の敗北の理由を考え、明晰な頭脳は直ちに答えに辿り着いた。
     戦闘機は、ただそれだけで成立するものではない。管制官、整備員、そしてパイロット。

    (なるほど、一人で戦おうとしたのが当機の敗因ですな)

     仲間が居れば、戦闘を開始する前に撤退を促すことも出来た。
     仲間が居れば、麦が炎を放出するだけでなく、自身も炎に転じ、フライフィアーの火器が通用しない可能性を提示出来た。
     仲間が居れば、この状況からでも逆転の一手を繰り出せた。
     それらは今のフライフィアーに望むべくもなく。
     かくして、一人の魔法少女が業火の中でその命を散らせたのだった。

    【らいと/フライフィアー 死亡】
    【残り 39人】

  • 198◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:28:25

    「格上でしたね、完全に」

     と、麦は眼下を眺めながら言った。
     フライフィアーの放ったミサイルは地下鉄駅を完全に破壊し、結果として崩落を招いた。
     完全に崩落しきる前に麦は地上へと逃れたが、改めて惨状を目にし、背筋に冷たいモノが流れる。
     地上から、線路が見える。
     つまり、ぽっかりと大穴が空いているのだ。

    (糸とミサイルを操る魔法……? 二つも魔法を操る存在が居るなんて……)

     どちらも麦の脅威にはなりえない。
     しかしそれは、麦の相性がいいからであって、麦がフライフィアーより明確に強いということを意味しない。
     むしろ、麦の炎を一度は耐えて見せた耐久性も含めると、カタログスペックは完全に向こうが上だった。
     あの力がもしご主人様に向けられていたら。

  • 199◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:28:50

     想像するだけで恐ろしい。
     とにかくにも、麦は勝利した。
     短時間で二人。
     順調なペースだ。

    (けど、思ったより消費が激しいな)

     燃費が良いことも麦の長所の一つだ。にも関わらず、彼女は確かな疲労を覚えていた。
     連戦をする前にどこかで体力を回復させた方がいいかもしれない。
     麦は休息地を求めて、音も無く夜の闇に消えていった。

  • 200◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:29:18

    第8話終了です……!

  • 201◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:30:42

    第9話の登場キャラ数dice1d4=3 (3)

  • 202◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:31:27

    第9話は3人のキャラが登場します……!


    dice3d44=34 43 7 (84)

  • 203◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:32:22

    37.王城 姫子/クィーン
    2.星月 夜/アルセーヌ
    7.夜祖神 髑髏/ドレッドノート
    が登場します……!

  • 204◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:34:13

    【王城 姫子/クィーン】

    生存ダイスdice1d100=57 (57)

    絆ダイスdice1d44=35 (35)

    関係性dice1d100=77 (77)


    【星月 夜/アルセーヌ】

    生存ダイスdice1d100=33 (33)

    絆ダイスdice1d44=28 (28)

    関係性dice1d100=21 (21)


    【夜祖神 髑髏/ドレッドノート】

    生存ダイスdice1d100=55 (55)

    絆ダイスdice1d44=11 (11)

    関係性dice1d100=76 (76)

  • 205◆xaazwm17IRZa24/02/23(金) 23:36:50

    【王城 姫子/クィーン】

    生存ダイスdice1d100=57 (57)

    絆ダイスdice1d44=35 (35)→柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド

    関係性dice1d100=77 (77)→まぁまぁ好き


    【星月 夜/アルセーヌ】

    生存ダイスdice1d100=33 (33)

    絆ダイスdice1d44=28 (28)→裁原 編/パペッタン

    関係性dice1d100=21 (21)→まぁまぁ嫌い(嫌い寄り)


    【夜祖神 髑髏/ドレッドノート】

    生存ダイスdice1d100=55 (55)

    絆ダイスdice1d44=11 (11)→ナサリーブラウン

    関係性dice1d100=76 (76)→まぁまぁ好き


    以上の情報を元に第九話を作成します

    舞台は虹京(にじけい)共同墓地です……!

  • 206二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 23:39:04

    お疲れ様でした
    麦ちゃんがランサー姉貴と並んでキルスコアトップタイやね

  • 207二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 23:45:59

    乙おつ
    犬も戦闘機も両方思ったよりヤバかった
    あんなものを空から一方的に投下されるのはそりゃFly fearだわ

  • 208二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 00:18:55


    炎を操るだけなのか炎自体になるのかは見極め難しいよね
    そう考えると問答無用で消し飛ばすティターニアの強みがわかりやすい

  • 209二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 00:44:33

    乙でした
    アルセーヌに何かしらあるっぽいのは3話前編で示唆されてるがどうなる……?

  • 210二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 01:58:17

    麦ちゃん、能力が強い反面芸に乏しくもあるんだよね
    炎化を攻略されたら一気に何もできなくなるだろうし

  • 211二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 02:04:21

    ダイスはみんな高くもなく低くもなくって感じだな
    魔王と姫と怪盗でバランスも良いしこれは同盟が来てもおかしくないかも…

  • 212二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 09:22:42

    強いて言うならアルセーヌが若干低め?30以上あるし大丈夫だとは思うけど

  • 213二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 10:33:56

    そういや麦ちゃん人が居そうな所で人殺したけどバレないだろうかスカイの死体も残っているし戦闘機の戦闘でかなり周囲の被害がヤバそうだしニュースに乗るのかな?

  • 214◆xaazwm17IRZa24/02/24(土) 10:38:01

    ★スマホによる連絡について

    よくよく考えてみたのですが、いくら2時間刻みにしても、30人以上が一斉に通話やメールのやり取りを始めると収集つかなくなると思うので、6時以降も使えないことにします

    なので、
    【ゲーム開催中、参加している魔法少女同士の通話及びSNSでの直接的なやり取りは、魔法王の魔法によって封じられている】
    【非参加者は問題なく使用可能、また非参加者に対して参加者が通話あるいはSNSでやり取りすることは可能】
    【参加者は掲示板などへの書き込みや、ブログの投稿などは可能】
    【非参加者へのスマホを奪って使用、あるいは非参加者を協力させてのやり取りも無効】
    【大声、手紙、狼煙、伝書鳩、あるいは何らかの魔法による連絡は有効】
    と、後付けさせていただきます

    描写されていませんが、人を探している魔法少女は一通りスマホで連絡を試みたということで

  • 215◆xaazwm17IRZa24/02/24(土) 10:49:26

    例えばスピードランサーがクリックベイトに連絡を取るとして……

    ・クリックベイトに電話をかける→繋がらない

    ・一般人がクリックベイトに電話をかける→通話可能

    ・スピードランサーが一般人の電話を奪い、電話をかける→例えその一般人がクリックベイトと通話中だったとしても繋がらなくなる

    ・スピードランサーが一般人を槍で脅し、自分のメッセージをクリックベイトに伝えさせようとする→繋がらなくなる

    ・スピードランサーが自身のアカウントに「クリックベイトはAタワーに来い!」と書き込む→可能

    ・スピードランサークリックベイトのアカウントのコメント欄に「クリックベイトはAタワーに来い!」と書き込む→書き込めない

    ・何らかの連絡を取り合える魔法を使用→可能

    となります

  • 216二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 10:58:04

    ”連絡を取り合える魔法”の中にメリィの魔法が入るのか気になるな
    電脳空間を介して相手の画面に直接出向くことはできるんだろうか

  • 217二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 11:11:31

    魔法自体は使えると思ってる
    ただ通話をかけた相手のとこにワープするようなメリーさん式移動は使えないだろうけど

  • 218◆xaazwm17IRZa24/02/24(土) 11:15:18

    >>216

    離れた場所で通話しちゃうと相手方の描写までしなければならず、ダイス振るまで生きてるか死んでるかも分からない本ロワのシステムと致命的に相性が悪い、ということで連絡禁止としました


    なので、一人二人なら別の場所の魔法少女と連絡を取り合える存在が居ても大丈夫なので、メリィが電脳空間を介して相手のスマホに接触し会話などをすることは可能です



    >>217

    まだ描写はしていないのですが、本体はスマホの外に居て、意識だけを電脳空間に飛ばすイメージなので、スマホを介したワープは現状不可能ですね……

  • 219二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 11:21:34

    >>213


    大きいニュースになってそれを見た参加魔法少女が

    どんな魔法が使われたか?誰がやったか?等を

    考察するシーンとか見れたりするといいなって

    それに空の場合死体が残っているから

    それによる他のキャラやいるであろう家族や友達の

    反応なんかも私気になりますなんて

  • 220二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 11:24:38

    >>213

    殺し合いがバレてはいけないのルールがあるけどどうなんだろうね

    異質な状況で少女が特異な方法で殺されたら魔法少女のことを知っている一般人とか否参加の魔法少女も事件として調べそうだよね

  • 221二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 11:44:12

    >>219

    優勝狙いなら最初の段階で殺しすぎるのはあんまり良くないんだろうな

    手の内を晒したことで殺し合いに乗ってる魔法少女たちがこぞって潰しにくるだろうし、何よりまだティターニアが生きているし

  • 222二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 11:47:49

    >>220

    その時は流石に運営も動くんじゃないかな?

    パンデモニカの使い魔とか配下の魔法少女にやらせるんじゃない?

  • 223二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 12:31:26

    >>222

    パンデモニカ荼毘に付したけど使い魔はいるのだろうか仮に残っていてもエラーを吐いてまともに動けなそうだけど

  • 224二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 12:34:53

    >>223

    ヤバ、メンダシウムだわまだ死んでいないわまあそれはそれはとしてどうなるだろう?

  • 225二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 16:48:20

    エネミー案
    【名前】
    宣教師(ミショナリー)
    【説明】
    半人半蛸の魔法使い。素質のある魔法国の男達が魔法少女に匹敵する力を求めて外法に手を染めた成れの果て。
    数十体ほどが運営に手を貸しており、あにまん市各地で活動している。

  • 226二次元好きの匿名さん24/02/24(土) 22:39:32

    今日も待機

  • 227◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:24:07

    お待たせしました……!
    第九話 投下します……!

  • 228◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:24:43

    「お嬢様、紅茶でございます」

     そう言って、眉目秀麗な『若い男』は、お姫様風の衣装の10代中頃の少女にティーカップを差し出す。

    「ノンノン、私のことは女王とお呼びなさい……あ、この紅茶、良い風味ね」

     呼び方を訂正しながらも少女はカップを手に取り一口飲むと、顔を綻ばせた。

    「良く持っていたわね、アルセーヌ」

    「いつでもどこでも紅茶を飲む、それが怪盗の嗜みですので」

    「それ、どっちかというと、探偵(ホームズ)じゃないかしら?
     アルセーヌ・ルパンってフランス人でしょ?」

     妄想小説の書き手として設定には厳しいものがあるのか、女王を名乗る少女………本名、王城姫子、魔法少女名クィーンはアルセーヌにジト目を向けた。

    「良いものは国境を超えるのです、ミステリがそうであったように」

    「なるほどね、中々上手い切り返しだわ」

     それにしても、とクィーンは周囲を見渡す。

    「お墓で紅茶を飲むなんて、まるでゴシック小説ね」

  • 229◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:25:16

    「吸血鬼に見初められないか心配でございますね」

    「あら、その点は大丈夫。私には、私のことが大大大好きな、百人の騎士が付いているから」

    「それは心強い。私は盗むことと化けることしか取り柄が無い、しがない怪盗に過ぎません。……そんな私でも、ご同行させていただけますか」

    「ええ、許可するわ。目の保養になるし。他のパターンもあるのかしら」

    「女王様がそう望むのでしたら」

     瞬時に、眉目秀麗な若い男が掻き消え、その場に現れたのは筋骨隆々な体をジャケットを羽織り、野性味溢れる顔の益荒男が出現する。

    「どうだいお嬢、こんな俺様はタイプかい?」

    「いえ、私の好きなジャンルではないわ。次」

    「残念だぜぇ」

     益荒男が肩を竦める。次の瞬間、其処にはTシャツに半ズボン、顔立ちが整った活発そうな少年が現れる。

    「じゃあ姉ちゃん、これはどうだっ! へへっ、すっげぇだろ」

    「いい、すごくいい……! あっ、これでさっきの若い男寄りでお願い!」

  • 230◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:25:51

    「んー、よくわかんないけど、わかった!」

     にっ! と少年は快活そうに笑うと、そこには同じ年ごろ、されど影のあるダウナーな美少年が出現し、面倒くさそうな様子でクィーンを見上げていた。

    「ほら、これで満足、お姉さん?」

    「Excellent(すいません、写真一枚いいですか)」

     パシャパシャと撮影を始めたクィーンの前でダウナー美少年は呆れ顔をしつつポーズを決めていく。

    「うん、背景のお墓とマッチしてるわね。ねぇ、もしかして二次元のキャラに変身できたりする? 地縛少年花子く……」

    「随分と楽しそうだな、人間共」

     魔王の声が、墓場に響いた。

    (何……この声)

     野原でかけっこをしていたら底なし沼に足を取られたような。
     どれだけのどかに生きていた者でも一瞬で危機感を抱かせる、そんな剣呑な声色だった。

    「来たれ、我が騎士団!」

  • 231◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:26:19

     クィーンの叫びに応じるように、彼女を囲うように魔法陣が展開。
     10体の鎧騎士がクィーンとアルセーヌを守るように出現する。

    「私の名はクィーン、こっちの美少年はアルセーヌ。私たちはゲームに乗ってないわ」

    「クィーンに、アルセーヌ。ククク、女王と怪盗、か。
     奇妙な巡り合わせ……否、これも魔法王の采配か。
     まぁいい、こちらも名乗らせてもらおう」

     堂々と、まるでこの世に怖いものは何一つないといった態度で。
     闇の中から、一人の魔法少女が現れる。

    「余の名はドレッドノート」

     巨大な二本角、王冠、黒い装束を羽織り、手には髑髏の紋章が象られた大剣。
     その姿は正に。

    「魔王、ドレッドノートである」

  • 232◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:26:55

    「魔王、ね」

     威風堂々とした風貌のドレッドノートを正面から見据えながら、クィーンは思考を巡らせた。

    (確かに、女王と魔王だなんて、奇妙な巡り合わせだわ)

    「魔王ドレッドノート、貴女はゲームに乗っているのかしら」

    「ククク、愚問だな、女王よ」

     ドレッドノートは大剣を掲げた。
     振り下ろせばクィーンを豆腐のように両断してしまえそうな、物騒な武器。

    「魔王が殺しを躊躇う理由がどこにある?」

    「そう……残念だわ」

    (ごっこ遊びは、ここで終わりよ)

    「騎士団よ、その忠誠を示せ!」

     クィーンの掛け声に従い、剣を持った鎧騎士がドレッドノートに迫る。
     フルフェイスの全身鎧に関わらず、その動きは俊敏だ。

  • 233◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:27:19

     また、統制の取れた動きをしていた。
     逐次に突撃するのではなく、一定の距離を取りながら、10人でドレッドノートを取り囲む。

    (相手の『メインウェポンは大剣。近接タイプね。
     私はともかく、アルセーヌの外見を自由に変えられる魔法は、今の局面では戦力外。戦えるのは、私の騎士団だけ
    十分だわ。私の騎士団は『軍』なのだから)

    「さぁ、勝利を私に捧げなさい」

     クィーンの言葉に応じるように、輪の中から三人の騎士が同時に斬りかかる。
     白刃が夜を切り裂き、ドレッドノートに振り下ろされる。
     ドレッドノートは何もしなかった。
     斬りかかることも、受け止めることも、避けることすらせず、騎士団の剣が自らの肉体に迫るのを待っていた。
     ガキン、という音と共に、振り下ろされた三本の剣が、三本ともへし折れる。

    「……嘘でしょ」

  • 234◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:27:42

    「何を驚いている女王よ、余は魔王ぞ?
     ——雑兵の剣など、かすり傷もつかんよ」

    (そんな馬鹿な……!)

     確かに、戦闘系魔法少女と比較すれば、クィーンの騎士は格下だろう。
     だが、それは一対一の話。
     数の暴力を駆使すれば、かの有名なティターニアとも互角に戦えるとクィーンは自負していた。
     にも関わらず、まるで序盤の雑魚モンスターが終盤の主人公に攻撃を仕掛けたときのような、圧倒的な実力差。

    (どうしよう、剣が効かないのなら、きっと槍や弓も……私の騎士団に、こいつを倒せる武装は無い……!)

     剣と同時に、クィーンの矜持も折れた。
     彼女の動揺が伝わったのか、囲んでいた残りの騎士団の動きに乱れが生じる。
     そこを、ドレッドノートは見逃さない。

    「ククク」

  • 235◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:28:20

     轟ッと大剣を奮うと、進路を塞いでいた騎士を三人まとめて叩き切る。
     鎧ごと両断され、騎士は消滅。
     そして、勢いは落ちることなく、ドレッドノートはクィーンに肉薄する。

    「……ぁ」

    「さらばだ、か弱き女王よ」

     刀身に映るのは、絶望を瞳に宿したクィーンの顔。

    「——おっと、それはさせないよ」

     とん、とクィーンは横に突き飛ばされる。
     同時に、大剣は振り下ろされ、血飛沫が舞った。

    「アルセーヌ!」

     自らを庇った怪盗に、クィーンは悲鳴を挙げた。
     辛うじて両断されていないといえるほどの裂傷を上半身に負いながら、アルセーヌは不敵な笑みを浮かべ、助けたクィーンに微笑みかける。

    「どうやら、僕の心は君に盗まれちゃったみたいだね」

     クィーンは何も返せない。

  • 236◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:28:57

     先ほどまであれだけ軽妙に会話できていたのに、喉から声が出てこない。

    「クィーン、目を瞑って」

    「でも……」

    「いいから、僕を信じて」

     言われた通り、クィーンは目を瞑る。瞼が熱くなるが気にしない。ただアルセーヌの勝利を信じて。

    「ほう、何かするつもりか?」

    「ああ、怪盗一世一代の大変身だ」

     すっ、と美少年は顔を自らの手で覆った。
     そして、詠唱を開始する。

    「ふんぐるい むぐるうなふ」

    「……何?」

     どんな攻撃をしようと受けて立つ。
     自身の『魔法』の無敵性を信じるドレッドノートだったが、奇妙な違和感を覚えた。

  • 237◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:29:39

     大剣を握る両腕に視線を送る。

    (鳥肌が立っている……)

     馬鹿な、とドレッドノートは断じた。
     攻撃の前段階で恐怖を覚えるなどあるわけがない。
     ましてや、相手はたった一撃で戦闘不能に陥った雑魚なのだから……。

    (だが、こいつの呪文、どこかで聞き覚えがあるぞ)

     確か……かつての仲間の一人が話題に出したことが……ドレッドノートの愛好しているジャンル外であったが……。
     一瞬、かつての黄金の日々を思い出し、ドレッドノートの胸に郷愁が去来した。が、それを瞬時に振り払い、ドレッドノートは記憶を探りながら、アルセーヌの次の一手を注意深く、観察し。

    「くとぅるう るるいえ」

    (……不味い!)

     その言葉は、元サブカル系女子であるドレッドノートから瞬時に記憶を引き摺り出した。

    (こいつは、余の天敵だ……!)

    ドレッドノートは半死半生のアルセーヌに背を向けると、夜の闇の中に消えていった。

  • 238◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:30:07

    「アルセーヌ!」

     ドレッドノートが撤退したことを足音で察したクィーンは目を開くと、慌ててアルセーヌに駆け寄った。
     血溜まりの中に倒れた美少年は、クィーンに微笑みかける。

    「やぁ……どうやら、奥の手を切らずに済んだよ」

    「どうして……会ったばかりの私を庇って……」

    「なぁに、今まで怪盗として人に迷惑をかけてきたからね、偶には良いことをしようと思っただけだよ」

     その結果がこれだけどね、とアルセーヌは力なく笑った。

    「待ってて……すぐ病院へ電話を……」

  • 239◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:31:19

    「やめた方がいい、殺し合いのこととか、説明できないでしょ?」

    「それは……、いやでも、上手く説明すれば」

    「……いいんだ、この街でやりたいことは大体できたし。……呼ばれてるみたいだ。もう、行かないと」

     虚空を見つめ、アルセーヌはぽつりと言う。

    「……そんなに笑うなよ、相変わらず酷い奴だ」

     既に意識が朦朧とし、幻覚が見えていたのだろう。
     それが、アルセーヌの最期の言葉だった。
     目から光が消える。
     クィーンは涙を流しながら少年を抱きしめた。
     徐々に光の粒子となって消えていく身体を、最後の欠片まで抱き続けた。

  • 240◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:31:49

    (不愉快だ……)

     十分な距離まで逃げたドレッドノート、人間名、夜祖神髑髏は舌打ちをした。
     クトゥルフ神話。
     ラブクラフトが構想し、ダーレスが体系化した、架空の神話。
     つまるところフィクションであり、神話と呼ばれているが、ジャンルとしては指輪物語やハリーポッターに近いものだ。
     ドレッドノートの愛好ジャンルはヒーロー物であり、クトゥルフはそう詳しいわけではないが、かつてのサブカル仲間から色々話は聞いている。

    (そして、クトゥルフ神話には、いやそれを元にしたクトゥルフ神話TRPGには……SAN値という概念がある)

     SAN値とは、簡単に言えば正気度のパロメーターである。クトゥルフTRPGではこのSAN値が減少するイベントが度々発生し、0になると発狂状態から抜け出せなくなりゲームオーバーである。

    (あの魔法少女は明らかにクトゥルフ関連の魔法を使おうとしていた。ただの触手攻撃、あるいは邪神の姿を模すだけなら、何の問題も無い。今更、そんなモノで恐怖する余ではない)

     だが、ドレッドノートの魔法がそうであるように、魔法とは理不尽なものである。

  • 241◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:32:15

     もし、死にかけの魔法少女が使おうとした魔法が、【問答無用でSAN値を減少させる魔法】であったなら。
     現に、発動の手前でドレッドノートは鳥肌を立てていた。
     恐怖していたのだ。
     ——そして、恐怖しない限りあらゆる攻撃を無効化するドレッドノートにとって、正気を失わせる魔法は特効である。
     恐慌状態に陥れば、ドレッドノートの無敵性は意味を失うのだから。

    (くそっ、さすがにワンサイドゲームで勝ち抜ける程、このゲームは甘くないか)

     他にも、自身の無敵性を揺るがす敵が紛れているかもしれない。
     油断せず、警戒して事に当たらねば。
     ドレッドノートはゲームに乗っている。
     優勝すれば、何でも願いが叶うのだという。
     ならば、かつて闇の魔法少女のボスに殺された、仲間たちを生き返らせることも?

    「余は、魔王である」

  • 242◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:32:40

    (じゃあさ、髑髏ちゃんがリーダーやってよ。そうだ、魔王とか名乗るのはどう?我々は魔王軍だー!てさ。私は四天王最弱枠でいいからさ)

    (じゃあ俺は最強枠!)

    (あたしはマッドサイエンティスト……もう一人、誰か誘わないとねー)

    (わ、私、ヒーローの方が……。あ、でも、正義の味方を苦しめる悪のカリスマも、ちょっとカッコいいかも……)

    「余は、魔王軍の長、魔王ドレッドノートである」

     たった一人の魔王は、修羅の道を歩く。

  • 243◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:33:16

     そこは、神殿だった。
     篝火が焚かれ、集まった信徒たちの顔を不気味に照らし出す。
     いずれも、人の姿を取っていなかった。
     ローブを纏いしその姿は——蛸人間と呼称するのが適切だろうか。
     宣教師(ミショナリー)は、彼らの神を待っていた。

    「お待たせ―」

     と、祭壇に一つの影が現れた。
     影は、少女の姿を取っていた。

    「私がいない間、元気にしてた。修行サボったりしてない? 内ゲバとかしちゃった? 異端狩りは? 宗教戦争は? 目が覚めて里帰りは済ませた?」

     軽薄な調子の少女の言葉に、宣教師たちは反応を返さない。
     ただ、人外の顔でじっと少女を見上げる。
     そこにあるのは羨望か、畏怖か。

    「ま、二時間足らずじゃ殆ど何も出来ないよねー。正直仕組まれてた気がするんだよねー、怪盗アルセーヌの傍に女王を置いて、すぐ近くに魔王だなんて。
     女王盾にして生き残ったらキャラ崩壊だもん。なーんかその辺込みであの竜が配置したんじゃないのかにゃー」

     友人とのゲームの感想を話すかのような声色で、少女は朗々と語り続ける。

    「さてと、他のプレイヤーの状況は……えっ、メンダシウム死んだの? マジで? まさか、メリアをティターニアの近くに配置したとか? あ、マジでそうなの?」

  • 244◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:34:36

     宣教師たちは少女から距離を取っている。にも関わらずまるで何かを閲覧しているかのような調子で少女は語り続ける。

    「ふむふむ……ちょ、フライフィアーは地下街!? うわ、しかも支配済みの駒こんなに参戦させて……どんだけガチなのww」

     けたけたと嘲笑いながら、少女は眼下の宣教師たちを見渡す。

    「さて、君たちに神託を下そう」

    「魔法の国に産まれたくせに、魔法の歳に恵まれず、なおかつ魔法に恋焦がれた哀れな君たちを導いてあげよう」

     両腕を掲げ、少女は宣言した。

    「——魔法の国、滅ぼしちゃおうか」

    【星月 夜/アルセーヌ 死亡】
    【残り 38人】

    【■■少女・■イ■ー■トテップ 健在】

  • 245◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:34:55

    第九話を終了します……!

  • 246二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 01:38:35

    乙です
    …もしニャルの素顔を見ても発狂しない魔法少女がいったらファンサするかも知らないな

  • 247二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 01:42:00

    なんだろう…ジャックがニャルに一矢報いる的な展開が脳裏をよぎったんだ…

  • 248◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:43:21

    補足

    ちなみに生存ダイスが10以下だった場合は、メリアの時と同じく本体ごと退場だったので、この話の後、そのままパラサイトドール及び運営勢力と黒幕決定戦(そして生存ダイスの都合上邪神の敗北)が始まる予定でした

    (さすがにドレッドノートとクィーンだけで邪神討伐は荷が重いので……)

    今後邪神がいつどう動くかはまだ未定です(主催陣営のダイス次第かも……)

  • 249◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:44:46

    第10話の登場キャラ数dice1d4=1 (1)

  • 250◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:45:51

    第10話は魔法少女が一人登場します……!


    登場するのは……dice1d44=3 (3)

  • 251◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:47:01

    3.ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイ

    が登場します……!


    【ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイ】

    生存ダイスdice1d100=44 (44)

    絆ダイスdice1d44=9 (9)

    関係性dice1d100=30 (30)

  • 252◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:48:36

    【ジェシカ・ロドリゲス/バルバロイ】

    生存ダイスdice1d100=44 (44)

    絆ダイスdice1d44=9 (9)→轟 猫耳/ネコサンダー

    関係性dice1d100=30 (30)→まぁまぁ嫌い


    以上の情報を元に、第10話を作成します……!


    舞台は女鹿ヶ浦です!

  • 253◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 01:52:07

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……! 読むのが毎日とても楽しみです……!

    せっかく人が居る場所でバトロワしてるんで報道だったりで情報収集するパートも書きたいですね……!
    その際はまた皆さんにアイデア借りるかもです……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 254二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 02:01:59


    女王・怪盗・魔王・邪神が一堂に会したおかげで急にダークファンタジー始まったな

  • 255二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 02:03:33


    役者が揃ってきた感があるね

  • 256二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 02:42:41

    麦ちゃんもスピードランサーみたいに本来ならここまで好戦的じゃなかったのかな

  • 257二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 10:15:59

    バルバロイが内心ビビりなネコサンダーのこと嫌ってるのは道理というべきか

  • 258二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 10:26:28

    設定的にお互い相性悪そうだよねバルバロイと猫サンダー

  • 259二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 10:38:09

    せっかくなので死亡フラグマシマシでジャーナリスト系の一般人案でも

    【名前】
    敷島麗華(しきしま れいか)
    【説明】
    あにまん市のローカル新聞社『アニマンタイムズ』に所属する新聞記者。28歳未婚。
    タイトスーツにブーツを履いた如何にも軽薄そうな女性で、常にバックパックにカメラと超望遠レンズを携帯している。
    デリカシー観念が少々希薄で、インタビューはグイグイ行くタイプ。
    あにまん市で頻発する失踪事件や怪死事件が魔法少女や怪物の噂と繋がりがあると見て、バトルロワイアルの中を特ダネスクープを得るべく奔走する。
    フリーカメラマンの槍ヶ崎舞矢/スピードランサーとは知り合い(正体は知らない)で、しばしば居酒屋で奢る見返りに特ダネを融通してもらってる。

  • 260二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 12:34:44

    魔法少女専門の掲示板とかあるだろうかあるんだったら是非とも見たい

  • 261二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 13:33:29

    ドレッドノートの回想に出てきた闇の魔法少女のボスとやらがパラサイトドールなのか、テンガイなのか、他の誰かなのか気になるところ

  • 262二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 13:50:18

    黄金時代篇みたいな話に弱い、心が抉られる…

  • 263二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 15:35:36

    バルバロイはフィジカルゴリ押しか
    今回は他の登場人物いないから関係ないけど物理無効とか遠距離攻撃型以外だと怖い相手だな

  • 264二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 19:34:55

    アルセーヌの言い方的に運営側は魔法王が途中退場することもシナリオに入れてるんだろうな
    こうなってくると魔法の国や魔法少女がいつからあるのかも気になるところ

  • 265二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 21:22:13

    運営のフライフィアーへの殺意で笑っちまった
    でもまぁアレ見たらそうするよなぁ…
    あとあの子魔法がドフラの寄生糸的なの出来そうなのが、もしできるようになったら数で攻めるのも通じなくなって本当に手がつけられなくなってそう

  • 266二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 22:53:42

    あにまん市の地名案
    【名前】
    あにまん大橋
    【説明】
    姉鎮埠頭など、あにまん市に複数存在する港間の交通の円滑化や、市外へのアクセスを容易にするため建設された『アニマン・ハイウェイ』を結ぶ橋梁の中でも最大のもの。
    全長は380mにも及ぶ斜張橋型。
    橋の先は市外であり、【呪い】の発生分岐点ともなっている。
    ケーブルを結ぶ塔の頂上からはあにまん市全体を一望でき、偵察や狙撃にもってこいのポイントである。

  • 267◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:18:41

    第10話を投下します……!

  • 268◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:19:13

    「Se foder(誰も居ねぇじゃん)」

     あにまん市に幾つか存在する立ち入り禁止区域の一つ、女鹿ヶ浦。
     海岸をのしのしと歩きながら、ジェシカ・ロドリゲス、魔法少女名、バルバロイは悪態をついていた。

    「Alegre(王さまも中々楽しそうなゲームを開いたもんだぜ……! 喧嘩最強を決める大会ってことだな!)」

     バルバロイは三度の飯より喧嘩が好きだ。好きすぎて魔法少女になったくらいには喧嘩好きだ。
     此度のバトルロワイアルも、彼女は「喧嘩」だと認識していた。

    「Gato(そういや、あの臆病者のネコサンダーも会場に居やがったな。喧嘩売ったら逃げやがって。魔法少女の風上に置けないぜ)」

     まさか全員が全員、ネコサンダーのような臆病者ではないだろう、とバルバロイは自身を安心させる。
     バルバロイの心情としても、やる気のない奴とは戦いたくない。
     逃げ回る相手を追い回して殴り飛ばしても、それはただの暴力で、喧嘩とはいえないからだ。

  • 269◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:19:46

    「Procurar(さて、喧嘩相手第一号はどこかなっと……お)」

     ズン、ズンと音を立て、前方から近づいてくる影がある。
     大きさは5mほど。全身を強固な鎧で覆った巨人である。手にはバルバロイよりも大きな棍棒を携えている。

    「Vir(面白れぇ)」

     エネミーの名は、ゴリアテ。ボス級エネミーとしてはポピュラーな存在である。

    「グオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

     敵を認識したのか、ゴリアテは咆哮を挙げ、バルバロイに迫る。
     バルバロイもまた、砂浜を蹴り、ゴリアテに向かっていった。
     圧倒的体格差。セオリーならゴリアテの攻撃範囲外から遠距離攻撃で仕留めるか、スピードで撹乱して背面からの攻撃をするべきである。
     真正面から挑みかかるのは自殺行為だ。
     それを、バルバロイは実行する。
     少女を肉塊に変えるべく、棍棒が振り下ろされ。
     ぐるり、とゴリアテの巨体が宙を舞った。

  • 270◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:20:17

     魔法少女バルバロイ。カウガール風の衣装に「野蛮」を意味する魔法少女名とは裏腹に、特技は柔術である。
     勢いを利用してゴリアテを華麗に投げ飛ばしたバルバロイは、そのままゴリアテの首に両脚を絡めた。

    「Morra(さようなら)」

     ごきり、とゴリアテの首が捩じ切れる。
     絶命したゴリアテは粒子へと変換され、それはバルバロイの魔力ソースとして蓄えられる。
     筋力増強魔法を使うまでもなく、ボス級エネミーに圧勝。
     それは、バルバロイが紛れも無く実力者であることを示していた。

    「Seguinte(次行ってみよう)」

     新たな喧嘩相手を求め、野蛮な魔法少女は再びのしのしと歩き出したのだった。

  • 271◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:20:34

    投下を終了します……!

  • 272◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:22:09

    補足

    ネコサンダーとの因縁は、
    ・バルバロイ、ネコサンダーに偶々遭遇し、カタコトの日本語で喧嘩を売る
    ・ネコサンダー、いきなり外国人に話しかけられテンパってソーリーを連発しながら逃走する
    が真相です

  • 273◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:23:15

    第11話 登場キャラ数dice1d4=4 (4)

  • 274◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:24:08

    第11話の登場キャラは4人です……!


    登場するのはdice4d44=20 36 35 36 (127)

  • 275◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:25:47

    21.和妻 颯葵/トリックスター
    38.再世 優/テンガイ
    41.抜刀 金
    8.刈屋 伊織/ミストアイ
    が登場します……!

  • 276◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:27:21

    【和妻 颯葵/トリックスター】

    生存ダイスdice1d100=36 (36)

    絆ダイスdice1d44=35 (35)

    関係性dice1d100=42 (42)


    【再世 優/テンガイ】

    生存ダイスdice1d100=75 (75)

    絆ダイスdice1d44=24 (24)

    関係性dice1d100=92 (92)


    【抜刀 金】

    生存ダイスdice1d100=45 (45)

    絆ダイスdice1d44=34 (34)

    関係性dice1d100=4 (4)


    【刈屋 伊織/ミストアイ】

    生存ダイスdice1d100=54 (54)

    絆ダイスdice1d44=43 (43)

    関係性dice1d100=19 (19)

  • 277二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:28:11

    これ皆56しコースじゃない?大丈夫か?

  • 278二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:29:19

    テンガイさんはタフ読んでそう

  • 279◆xaazwm17IRZa24/02/25(日) 23:32:47

    【和妻 颯葵/トリックスター】

    生存ダイスdice1d100=36 (36)

    絆ダイスdice1d44=35 (35)→柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッド

    関係性dice1d100=42 (42)→普通


    【再世 優/テンガイ】

    生存ダイスdice1d100=75 (75)

    絆ダイスdice1d44=24 (24)→桐生 ヨシネ/バーストハート

    関係性dice1d100=92 (92)→大好き


    【抜刀 金】

    生存ダイスdice1d100=45 (45)

    絆ダイスdice1d44=34 (34)→佐々利 こぼね/クリックベイト

    関係性dice1d100=4 (4)→大嫌い


    【刈屋 伊織/ミストアイ】

    生存ダイスdice1d100=54 (54)

    絆ダイスdice1d44=43 (43)→山田 浅悧/慈斬

    関係性dice1d100=19 (19)→嫌い


    以上の情報を元に第12話を作成します……!

    舞台は【第二あにまん市営団地】です……!

  • 280二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:35:06

    このレスは削除されています

  • 281二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:36:41

    案外顔とかだったり

  • 282二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:36:47

    絆ダイスの出目がはっきり分かれたな
    テンガイはヨシネちゃんの何がそんなに気に入ったんだ…

  • 283二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:41:32

    桐生!のわりと寂しい境遇に対して人外のステージに上ってる自分を重ねてるのかな…

  • 284二次元好きの匿名さん24/02/25(日) 23:48:47

    クリックベイトがまた女の子釣り上げてる……

  • 285二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 00:04:27

    金ちゃんとクリックベイトは何があったの…

  • 286二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 00:14:58

    テンガイさん受けた魔法をまた恋したと勘違いしちゃった?

  • 287二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 00:55:47

    ヨシネちゃんの方は意外と生真面目サムライウーマンのブラックブレイドに好意持ってるのよね
    どういう交友関係なのだよ

  • 288二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 01:04:32

    テンガイさん、絶対に魔法のサンプルとか実験対象としての好きな気がするけど
    ちょっとだけ人情があってもギャップ萌えで推せる

  • 289◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 01:18:40

    12話冒頭だけ投下して、今日は終わりにします……!

  • 290◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 01:19:41

    【僕様は全知全能・テンガイ
    このメッセージを見てる君は選ばれし者
    優勝のチャンスを与えられた強き者
    単刀直入に言おう 会場内にいるある少女を探し出して、第二あにまん市営団地に連れて来て欲しい
    名は桐生ヨシネ 魔法少女名はバーストハートだ
    もちろんめちゃくちゃ強い
    しかもこのミッションには絶対守らなければならない条件がある
    桐生ヨシネを倒すには徒手空拳でなければならない
    銃や刃物などの武器は使用禁止
    なぜなら万が一にも"心臓"を傷つけてはならないからだ
    何よりも"心臓"が大事なんだ
    ぶっちゃけこのガキの命なんてどうでもいいんだ
    "心臓"さえ生きていればなぁ
    さぁ腕に自信のある者は今すぐ桐生ヨシネを探し出せ
    バーストハートを失神KOさせろ
    急げっ 乗り遅れるな 優勝を掴むんだ
    "テンガイ・ラッシュ"だ】

  • 291◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 01:20:26

    「さぁ、行って来い」

     テンガイの言葉に応じて、無数の梟が団地から飛び立っていく。
     超越者からのメッセージを情報として刻まれた梟は、上手くいけば各参加者の元に辿り着くだろう。

    (僕様にとって殺し合いは遊びに過ぎない。バーストハートの心臓さえ手に入ったら、持ってきた奴を優勝させてやるよ)

     このゲームを自由に離脱できると自負しているテンガイにとって、全知全能たるテンガイにとって、優勝など興味はなく、お使いを果たした魔法少女にくれてやってよいものだった。
     超越者は団地の屋上に陣取り、他の魔法少女が来るのを待つことにした。

  • 292◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 01:20:49

    投下を終了します……!

    続きは明日投下します……!

  • 293◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 01:22:27

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……!

    今月中に1巡目が終わるかはちょっと未定ですが、今後ともよろしくお願いいたします……!

  • 294二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 08:49:50

    バルバロイ思ったより強キャラ?
    そしてキャプマス構文は笑う

  • 295二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 13:20:34

    あにまん市の地名案
    【名前】 糧鮴
    【説明】 あにまん市北西部の一区画。あにまん市で最も治安が悪い地帯であり半ばスラム化している
         昔から罪人や脛に傷を持つ流れ者、不法入国した外国人などが自然と流れ着く場所であり
         最近はエネミーや悪事を働く魔法少女が入り込んでいる。なお市からは立ち入り禁止区域に指定されている
         糧鮴内部でも派閥や組織が乱立しており常日頃から抗争が絶えない
         糧鮴には「抗争中」か「抗争の合間の自然休戦」しかないとはここを拠点とするある魔法少女の弁

  • 296二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 14:48:47

    "ゲームを自由に離脱できる"っていうのは呪いを無効化できるって意味なのか、主催側を一人で始末する自信があるって意味か

  • 297二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 16:07:24

    人だけでなく建物や土地が深堀りされるたびに楽しい厄ネタがいっぱい出てきそうでワクワクしますね!

  • 298二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:06:55

    建物案
    【名前】老いた魔法少女工房
    【説明】 魔法に近しい特異な技術を持ちいて強い感情、想い、記憶を抽出してたった一つのステッキを作り出す工房、どんな者でも魔法少女であればステッキを作ってくれる、【位置】あにまん市南部のあるマンションの近くの工房
    外部の魔法少女案
    【名前】老いた魔法少女
    【説明】ある遠い昔ある魔法少女が嘆いた「なぜ魔法少女なのにステッキが無いんだ」っと魔法も変身衣装もあるのにステッキが無い事を嘆いたそして魔法少女は考え…
    「無いなら作ってしまえばいいんだ!」そう思い他人の強い感情、想い、記憶を抽出してたった一つのステッキを作り出す魔法を作り出し魔法少女の為にステッキを出す工房を立て悪人にも善人にも人にも人外にもどんな魔法少女のステッキを作り出しました…そしてあにまん市南部のあるマンションの近くの工房で今日もステッキを創り出す

  • 299二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:12:20

    テンガイの言う優勝って他の魔法少女を皆殺しにして自分は離脱するから生き残りで優勝なのかな
    それとも魔法王達に言う事をきかせてコイツが優勝、ゲームは終わりってしてくれるのかな

  • 300二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:15:14

    …大丈夫かなぁテンガイダイス次第けど何か井の中のカエルみたいになりそうなんだよね

  • 301二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:33:30

    >>300

    ティターニアの魔法少女特攻があって尚物量戦でしか勝ち筋がないみたいだし、実際メンダシウムよりは強いんじゃないの?


    パラサイトドールとかアルセーヌには流石に勝てないかも知れないけど

  • 302二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:36:53

    >>301

    まあ殆ど敵無しだろうね“魔法少女”だけだったらね…

  • 303二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:39:56

    そういえばニャルセーヌの肩書きが◾️◾️少女ってぼかされてたけど魔法少女の上位種みたいなのがあるのか

  • 304二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:45:37

    >>302

    良くも悪くも全知全能だけど最強ではないんだろう


    実際戦ったら運営どころかティターニアにも負けるかも知れないけど、その場合は戦い自体を回避して別の方法で始末するんじゃないかな

  • 305二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 17:52:55

    這いよれる混沌もいて
    くぅとるふもいて
    やばい魔法少女がいて
    元ネタ考えたら激やばマンションもあって
    しかもそこでデスゲーム開催!
    おわりだねこのまち

  • 306二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 18:06:08

    >>305

     あ に ま ん こ わ れ る

  • 307二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 18:39:53

    今回はトリックスターが生存ちょい怪しめ?

  • 308二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 18:48:11

    実はワンフロムアウターが少し気になっている
    彼女もしかしたら里香や漏瑚クラスの呪いを取り込みまくった夏油みたいな物量と質を両立したやべーやつになったりしない?

  • 309◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:49:36

    12話続きを投下します……!

  • 310◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:50:03

    (……これは嫌がらせかな、魔法王)

     第二あにまん市営団地、通称あにまん団地。
     その一号棟の屋上に、和妻颯葵、魔法少女名、トリックスターは立っていた。
     既にその身を魔法、『触ったものが見えなくなるよ』で透明化させている彼女は、屋上に居るもう一人の魔法少女に視線を送る。
     今しがた魔法で無数の梟を生み出し、飛び去っていくのを見送っていた緑髪に碧眼、スレンダーな十代前半の美少女。
     【全知全能】、魔法少女名、テンガイ。

    (紛れもなく参加者でもトップクラスの実力者。その才は魔法の国でも響き渡ってるよ)

     曰く、二度の転生を果たしている。
     曰く、死後の世界を旅したことがある。
     曰く、世界の時間を数年単位で巻き戻したことがある。
     果たしてどこまでが真実で、どこからが誇張なのか。
     殺し合い開催前から密かに参加者候補をピックアップし、情報を集めていたトリックスターであっても、その真相は分からない。

  • 311◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:50:30

     ただ、一つ理解しているのは

    (テンガイは天才、いや、天災だ。私なんかが勝てる相手じゃない)

     トリックスターもまた、優秀な魔法少女である。魔法の国から直々にスカウトされ、若くして魔法省の役人を務めている。
     彼女が説明係として赴いた相手も、山田浅悧/慈斬や、柩枢/アリス・イン・ワンダー・オブ・ザ・デッドなど、激ヤバ魔法少女ばかりである。
     それはつまり、彼女たちが逆上して襲いかかっても撃退ないし撤退が出来る能力を、トリックスターが持っているからに他ならない。
     現に、彼女は今、全知全能のテンガイに気づかれることなく、屋上に存在していた。
     会場の魔法少女に向けて放たれたテンガイの梟も、トリックスターを察知することなくいずこへと飛び去ってしまった。

    (……何故気づかれない? 全知全能じゃ無いのか?)

     自身の魔法が通用していることに安堵しつつも、トリックスターは理由を探る。

    (……あくまで全知全能はふかし? しかし、複数の強力な魔法を使うことは調査済みだ。……制限か? いや、これはむしろ……)

  • 312◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:50:56

    (透明化している存在が近くにいる、という発想が無いのか)

     恐らく、透視魔法や感知魔法の類いは備えているのだろう。
     だが、使っていない。
     例え殺虫剤を保持していたとしても、家に虫の気配が無ければ噴射はしない。

    (と、なると厄介だな。テンガイが『なんか近くに透明化してる奴いるかも』と思った瞬間、詰みか……)

     勿論、透視魔法や感知魔法を持っていない可能性もある。
     だが、相手は全知全能。過大評価をしてし過ぎることはない。

    (……動き出せば、認識阻害のランクは大幅に低下する。並の魔法少女が相手なら唇が触れ合える距離まで接近できる自信があるが、相手はテンガイ。下手に動くとバレるか……)

     疑惑を持たれただけでアウトなのだ。

    (……かといって、ずっとここに留まるのも生きた心地がしないな。さて、どうするか……)

     その時、屋上へ続く階段を昇ってくる音が聞こえた。

    「お、いきなり一人目か」

  • 313◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:51:35

     期待に満ちた顔でテンガイは屋内へと続くドアへ視線を送る。
     トリックスターもまた、息を呑んで来訪者を待った。
     扉が勢いよく開かれる。
     現れたのは、侍風の袴姿の魔法少女。

    「お主がテンガイだな」

    「そうだ、僕様がテンガイだぜ」

    「桐生ヨシネなる少女を探せば優勝を掴めるとはどういうことだ? お主は魔法王の配下なのか?」

    「は? ちげーよばーか。僕様があんな凡愚の配下なわけないだろ。
     桐生ヨシネを見つけて連れてきてくれれば、僕様はさっさとここかた出てくから、報酬に優勝させてやるって言ってるんだよ」

    「……まさかお主、優勝させてやるというのは」

    「その通りの意味。連れてきてくれた子以外は皆殺し。本来ならこんなゲーム、僕様のブッチギリ優勝確定なのに、生き残るチャンス与えてあげてるんだから、僕様ちょー優しいだろ?」

    「……外道が」

  • 314◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:52:02

     サムライ少女は居合の構えをとる。

    (……へぇ)

     トリックスターはサムライ少女の刀が名刀だと瞬時に理解した。
     古き名刀には魔力が宿ることがある。サムライ少女の刀も、その類いだ。
     そして、サムライ少女も、外見に違わず、堂に入った構えをしている。
     外見は十代後半だが、剣術の熟練度は達人レベルだろう。
     恐らく変身しなくても雑魚エネミー一体なら倒してしまえるレベルの。
     少なくとも、正面からの戦闘はトリックスターでは相手にならない。

    「拙者の名は、抜刀金。未だ魔法少女名は決めておらぬが、お主を斬ることは今決めた」

    「僕様はテンガイ。全知全能のテンガイだ」

    (……どう動くべきか)

     二人の魔法少女が団地屋上で激突しようとする中、未だ存在に気づかれていないトリックスターは身の振り方を案じるのだった。

  • 315◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 20:52:18

    投下を終了します……!

  • 316二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:19:22

    トリックスター、プロローグの時といい作中の狂言回しとしてはこれ以上ない適役だなと思った

  • 317二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:27:10

    飛び出したら認識されて危険、このままだと巻き込まれそうで危険…板挟みの形になるな

  • 318二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:39:28

    金ちゃんと葉月ちゃん(ブラックブレイド)は似たような和風剣士タイプだなと思ってたけど実戦経験とかで差別化できそう
    葉月ちゃんは金ちゃんと違って覚悟が全く足りてなさそう

  • 319◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 21:43:19

    12話続きを投下します……!

  • 320◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 21:43:43

     時は僅かに遡る。
     魔法少女、抜刀金はあにまん団地第二号棟二階の通路に立っていた。

    「殺し合い……」

     金の家は、居合術道場を経営している。
     といっても、経営は火の車だ。今のご時世、わざわざ居合術を金を払って習おうとする奇特な人種は少ない。
     それでも、ひと昔前なら武術マニアなどからの需要はあったかもしれないが、昨今はYouTubeの動画などで簡単に武術を学ぶことが出来る。
     一度、道場は潰れかけた。お金さえあれば祖先から受け継いだ道場を潰さずに済む、両親の嘆きを聞き、金はお金が欲しいと願った。
     欲しいと願ったところで金は生まれない。現実は非情である。だがここに現実を塗り潰す幻想があった。
     金は、魔法少女になった。
     魔法は、『金の延べ棒を創り出せるよ』。

  • 321◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 21:44:05

     道場は潰れずに済み、しかし金の心には蟠りが残った。

    (ズル、だったのでは御座らんか……)

     お金に困っているのは皆同じだ。
     確かに江戸時代から続く道場が潰れてしまうのは、悲しい。けれど、家族が路頭に迷うわけではない。
     もっと困窮している人がいる。
     もっと努力している人がいる。
     なのに、どうして抜刀家だけが、魔法の力で救われるのか。

    (だが、誰もかれもを救えばいいという話でもないので御座ろうな)

     自由に資産を生み出せる金は、資本主義社会において最強の存在だ。
     彼女が考えなしに魔法を奮えば、世界は大混乱に陥るだろう。
     故に、金は、自らの魔法を使うことを禁じた。
     ただ、今まで以上に居合術に没頭した。
     魔法少女の身体能力に居合術が組み合わされば、天下無双の存在になれる。
     そうなって、その鍛え抜かれた力で、大勢の人を救おう。

  • 322◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 21:44:31

     そうすれば、ズルをして道場を立て直したことに、きっと意味が産まれる。
     九歳で覚醒してより九年。鍛錬の果てに、金は達人クラスの腕前となった。
     既にその技量は師範である父をも超え。数少ない門下生からも「若先生」と慕われている。
     そして、金はバトルロワイアルへと召還されたのだ。

    「……実戦は初めてで御座るな」

     ずっと鍛錬の日々だった。
     魔法少女の責務として雑魚エネミーを退治したことはあるが、命がけの戦いをしたり、あるいは他の魔法少女と死闘を繰り広げたことはない。
     いくら達人だ天才だと持て囃されそうと、天下無双には程遠い。

    「それでも、拙者は正義を為さねば」

     そうでなければ、ズルをした大義が無い。
     ほう、と音がした。

    「梟……」

     手すりに、梟が留まっている。

  • 323◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 21:44:50

    「近くでみるのは初めてで御座るが……」

     梟はばさばさと翼を広げ、手すりから金の肩まで移動する。特に敵意を感じなかったため、金はされるがままになっていた。
     梟はぐるぐると周囲を窺うが

    「伝言、伝言、テンガイ様より伝言」

    「何……?」

     金は僅かに驚く。魔法少女であっても、喋る梟を見たのは初めてだった。
     梟はテンガイと名乗る魔法少女からのメッセージを語り出す。
     それを聞くうちに、金は眉を顰め、梟に案内されるままに第一号棟の屋上を目指すのだった。

  • 324◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 21:45:07

    投下を終了します……!

  • 325二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:51:02

    キャプマス構文で喋る梟…改めて見てもシュールだな

  • 326二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:54:09

    スパムメールより胡散臭い内容を喋る梟

  • 327二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:56:17

    志に根ざすクソ深い影が不穏要素ですね…特に長く生きたやつほど人の嫌がることをつくのが上手そうだし(まあやってみないとわからないけどなブヘヘヘなんだけど)

  • 328二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:57:34

    >>318

    葉月ちゃんの実家の道場は金ちゃんの道場と違って大盛況で何不自由なく暮らしてそう

    なんとなくだけど

  • 329二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 21:58:00

    しかしあのテンガイがこんなことしてまで求める桐生ヨシネの心臓、一体どんな厄ネタが詰まってるのか…
    心臓病を患ってるらしいけど絶対ただの心臓病じゃないよね

  • 330◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:32:42

    投下します……!

  • 331◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:33:19

    「διάστημα」

     テンガイが何かを唱えたことを、トリックスターは確認した。

    (日本語じゃない……何らかの呪文か?)

     本来、魔法少女が魔法を行使するのに詠唱は必要ない。が、ごく一部の魔法少女は詠唱したり、必殺技を大声で叫ぶ。その方が気合が入って魔法が強化されるから、というケースもあれば、詠唱というハンデを背負うことで魔法を強化するという意図がある。
     魔法の本家本元、魔法の国でも未だに魔法は体系化されていない。
     一人一人世界観が違う、【法則】が違う、としか言い表せない。
     故に、テンガイが何を、何のために唱えたのか、魔法省の役人であるトリックスタ―でも把握できない。
     居合の構えをとったまま、金はじりじりと距離を詰める。

    (それは、悪手じゃないか?)

     と、トリックスターは思った。
     武術に精通しているわけではないが、居合とはつまることろ不意打ちの技術なのではないだろうか。
     金の堂に入った構えは、素人のトリックスターが見ても、「あ、この子居合の達人だな」と理解できてしまう。

  • 332◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:33:55

     ならば、居合の利点は半減するのではないだろうか。

    「君もゴリラタイプか。魔法少女なら魔法を駆使して戦うべきじゃないかな」

     金とは対照的に、無造作に突っ立ちながら、テンガイは金に言葉を投げかける。

    「魔法少女を魔法少女たらしめてるのは、魔法を持っているからだよ。剣で戦うとか頭蛮族かよ」

    「魔法、で御座るか」

     金が、口を開いた。

    「……生憎、拙者の魔法は戦闘向けでは御座らんのよ」

    「ふぅん、生活を豊かにするタイプの魔法か、素敵じゃん」

     僅かに、金の顔に動揺が走った。
     だが、それはすぐに掻き消える。
     恐らく彼女も何かしら抱えつつ、戦闘時は抑え込めるタイプなのだろう。

    「拙者はただ、刀を振るしか能の無い、未熟な魔法少女だが、正義、為させてもらう」

    「好きに為せば?」

  • 333◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:34:22

     瞬、と金の姿が掻き消えた。

    「「え」」

     テンガイとトリックスターの声が重なる。
     鍔鳴りの音が響く。
     金は——既に、納刀を終えていた。

    「はっや……」

    (嘘だろ、全然見えなかった……)

     いつ抜いたのか、いつ斬ったのか、いつ鞘に納めたのか。
     傍から見ているトリックスターでも、白刃を拝むことが出来なかった。
     そして、居合を受けたテンガイも、口をあんぐりと開けていた。
     その姿は、傷一つない。

    「…………お主、何をした」

     驚愕していたのは、テンガイとトリックスターだけではない。
     神業を披露した金もまた、焦燥に駆られた表情でテンガイを睨んでいる。

    「確かに、胴を刻もうとしたはずだが——届かなかった」

  • 334◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:35:34

     刀のリーチを測りかねた、否、そんなミスをこの少女がするはずがない。

    「え、あ、うん、はははははははははは、無駄だよ、抜刀金! 君の剣術では、僕様に傷をつけることは不可能さ!」

     抜刀術の速さに呆然としていたテンガイだったが、すぐに余裕を取り戻す。

    「どんな魔法だ……」

    「それを探るのが魔法少女の戦いの醍醐味だよ。でもまぁ、僕様は寛大だから教えてあげる」

    ——空間を操る魔法(ディアスティマ)と、テンガイは言った。

    「僕様は空間を自在に操作できる。前世の僕様が身に着けた魔法さ。今、僕の周囲は無限の空間がガードしている。
     君がどれだけ刀を振るっても、絶対に僕様に攻撃が当たることは無い」

    (何て理不尽な……そうか、あのとき唱えていたのはこれか……)

    「さぁ、どう攻略する? 言っとくけど、まだ一つ目だぜ? 僕様の本領はこの程度じゃまったくない……」

    「くっ……」

     金は悔し気に呻く。

  • 335◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:36:13

     恐らく、彼女に空間を操る魔法を突破する術が無いのだろう。
     トリックスターも同様だ。どれだけ自分や武器を透明化したところで、攻撃が届かなければ意味が無い。

    (テンガイ……つくづく規格外……。だからこそ、ここが潮時か……)

     来訪者である抜刀金は、強い。
     あのテンガイを一度は驚かせたのだから、十分上澄みに入る部類だろう。
     もし、テンガイが空間を操る魔法などという理不尽を備えていなければ、首を落とせていたかもしれないと思わせる程に。

    (だから、陽動としてはちょうどいい)

     少なくともテンガイの注意は、金だけに注がれているだろう。
     その隙に、ここから逃亡する。

    (テンガイの魔法が一つ……梟を使った魔法と合わせて二つ把握できた。この情報は大きい……)

     脱出を狙うのか、優勝を狙うのか。トリックスターは決めかねている。
     大切なのは、どちらが生き残れるのか。

  • 336◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:36:40

    (そしてどちらの道でも、テンガイは大きな障害になる。徒党を組んで潰さなければ……)

     殺し合いに呼ばれている以上、絶対に殺せない存在ではないはずだ。何らかの制限がかかっているだろうし、ティターニアを始めとする強豪魔法少女で対テンガイ同盟を結成できれば、始末できる可能性がある。

    (よし、そうと決まればこの場を……)

     ——瞬間、屋上が爆散した。
      光と、爆風。
     一瞬で足場にしていたコンクリートが崩壊し、トリックスターは浮遊感を味わう。

    (誰の攻撃だ!? まさか、テンガイか!?)

     自身の存在に気づき、逃げる前に先手を打ったのか。
     絶望的な気分に浸りながら、恐怖を振り払ってトリックスターはテンガイを睨み。

    「——は?」

     首から上が吹き飛んだテンガイの死体が、下界へと落下するのを目撃するのだった。

  • 337◆xaazwm17IRZa24/02/26(月) 23:37:00

    投下を終了します……!

  • 338二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 02:28:10

    ミストアイの魔弾?それか運営の放った刺客かも知れないけど…
    しかしダイス値的にテンガイさんは死んでないだろうから、首を吹っ飛ばされても大丈夫な魔法も使えるのか…

  • 339二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 08:12:13

    やったか!?

  • 340二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 12:17:49

    何の光!?

  • 341二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 12:42:24

    そういえば魔法少女名のテンガイってどういう意味なんだろうな?
    「天涯」か「天蓋」あるいは「纏骸」とか色々思いつくが…

  • 342二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 13:12:22

    「天外」かも
    一般魔法少女とはそれこそ天と地ほど隔絶した実力だし発想も行動も奇想天外なものばかりだし

  • 343二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 13:13:29

    テンガイ関連のエネミー案です

    【名前】梟
    【説明】テンガイが使役する梟
    偵察や伝達、話し相手や魔法の遠隔発動など大概なんでもできる高性能
    テンガイが前前世で契約した魔法少女たちの成れの果てであるが、強いだけで"呪い"に対抗し得る者たちではなかったため特になんとも思われていない

  • 344二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 13:13:46

    スナイパーだから当たり前なんだけど姿見せてないキャラはちょっと不穏

  • 345二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 13:14:24

    (でも「纏骸」説も悍ましくていいな…あの人なら転生の時に本来死産となるはずだった子供乗っ取っててもおかしくなさそう)

  • 346二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 13:19:10

    やはり意識外からの攻撃か
    ドレッドノートの逆で来ると予測してなかったものは防げないのかな…まぁそれで死ぬとは言ってないんだけど

  • 347二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 16:04:47

    エネミー案
    【名前】
    ゴリアテ・ネオ
    【説明】
    巨人型エネミー〝ゴリアテ〟を人為的に調整、強化手術を施したエリートタイプ。デスゲーム運営が保有する施設の警備や要人の護衛に用いられる。
    鋼鉄の仮面に5mの体格に見合った黒のフォーマルスーツという異様な風体が特徴。
    人語を解し、仲間との戦術的な連携が可能なほど飛躍的な知能や能力の向上を見せている。
    手持ち式に改造された榴弾砲やガトリングガン、徒手空拳が武器。

  • 348二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 16:51:33

    テンガイは変身しなくても魔法少女並みに強い、かつ変身しても外見が変わらないって記述、地味に厄介

    というかこいつが一子相伝の武術の開祖だったりしない?

  • 349二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 16:57:57

    皆に聞きたいだけど強い魔法少女の弱体化って魔法少女の「魔力」が減るか魔法の「魔力消費量」が跳ね上がるのどっちなの?

  • 350二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 17:02:58

    >>349

    「時と場合による」としか

    例えば千郷ハンマーは魔力を溜め込むという魔法の性質上威力そのものが制限されていたし、ティターニアやアリスの場合は消費量が大きくなっていたはず


    その魔法少女の強みを潰す形で制限がつくと思われるが、逆に言えばゲームが成立しなくなる=あにまん市を滅ぼすような魔法でなければいくら強くても制限は付かないのかも知れない

  • 351二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 22:17:38

    今夜も激闘を期待ですね。あと外部の魔法少女(解説者)案
    【名前】早瀬 光(はやせ れい)/クイックローラー
    【変身前・変身後の外見】低身長で瓶底眼鏡をかけた二つ結びの女子高生。口はω。/ボリュームが多く長い金髪にトップハットと紳士服。口は普通。
    【年齢】17
    【趣味/魔法少女としての日課】発声練習&雑学を調べる&旅行(県を跨ぐまでが限界)/戦いの観察&情報交換
    【好きなもの】知識の収集&アウトドア&スポーツの試合観戦
    【嫌いなもの】暇な時間
    【性格】楽しそうな事に目が無く単純で一途。たまに割と冷静で思慮深い面も見せる。普段は溌溂と喋る。
    【得意な魔法】見たものを正確に把握するよ
    そのままの通り、見た人や物の外見的な情報、その場の状況を瞬時に正確に把握する魔法、5〜10分くらい見続けてると物や相手の渾名、関係性、魔法等の見えない情報も把握できる。主に解説に用いられる。
    【魔法少女になったきっかけ】某MMAの試合観賞後に妖精からスカウトされた
    【詳細】学校では放送部の部長を担当。声の通りと知識の広さに定評がある。知識自体は広く浅くであり、知識量よりは行動力が彼女の武器。将来の夢は実況・解説者。
    【備考】魔法少女界の解説王を目指している。あにまん市には旅行で来ており、開催されるデスゲームはただ過激な大会と思っている。

  • 352◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:48:42

    投下します……!

  • 353◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:49:12

     あにまん団地第三号棟、六階601号室。
     空き部屋であることを確認した後、刈屋伊織、魔法少女名ミストアイは窓を蹴破り中へ潜入した。
     狙撃ポイントとして潜伏するためである。

    (テンガイは、規律を乱している)

     一つ目の仮面に、灰色のローブ、長杖を装備したその姿は、RPGゲームの悪い魔法使いに近い。しかし、ローブの下は黒で統一したミリタリールックであり、それは彼女の本質が「魔法使い」ではなく「狙撃手」であることを意味していた。
     ルールは、守られなければならない。
     殺人は、明確なルール違反であり、それを強制する魔法王も、優勝を仄めかす天テンガイも、ルール違反者=人々に害を為す存在だ。
     間違っているものは、正されなければならない。
     そして、その力が、ミストアイにはある。

  • 354◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:49:37

     通常の魔法少女以上に強化された視力で、ミストアイは一号棟屋上に陣取ったテンガイと侍風魔法少女の一戦を観察していた。
     侍風魔法少女の居合は、門外漢のミストアイでも戦慄するほど高レベルなものであり、それでもテンガイには通用していないことが分かった。

    (全知全能を名乗るだけはあるか……)

     情報を得た後さっさと撃ち殺した梟の言葉を思い出し、ミストアイはテンガイの攻略法を思案する。
     正面からの居合が効かないのなら、不意打ちの狙撃は効くのではないか、とも考えたが、わざわざ屋上に陣取っていることを考えると、ただ不意打ちしただけでは効果が無い可能性もある。

    (あの、居合を無効化した魔法……あれはどれくらい集中力を要するんだ?)

     一口に「出来る」といっても、それにかかる集中力はまちまちである。
     眠っていても出来る事、意識さえあれば出来る事、多少集中すれば出来る事、前週中で出来る事。
     ミストアイの狙撃はある程度の集中~全集中で飛距離や威力、精度が上昇する。

  • 355◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:50:01

     ただテンガイの頭を撃ち抜くだけなら、多少の集中で済むが、+αを要求されれば全集中が必要だろう。

    (……テンガイの、居合を無効化する魔法。あれが、ある程度の集中を要するものであるなら)

     策を、思いつく。

    (集中を、乱してみるか)

     ミストアイが取った行動はシンプルだった。
     まず、テンガイと侍風魔法少女が立っている一号棟屋上、彼女たちが足場にしているコンクリート目掛けて狙撃。
     的は大きいので精度は度外視、その代わり屋上を破壊する必要があるので、威力は高めに設定した。
     計算通り、足場は崩れ、テンガイはよろめいた。
     すかさず、第二射。
     ミストアイは狙撃手だが、撃つのは魔法である。
     装填の必要はなく、頭を撃ち抜くだけならチャージの必要もない。
     果たして、ミストアイの狙い通り、テンガイの頭は弾けた。

  • 356◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:50:26

    「——よし、仕留めた」

     殺人への感慨は、想像以上に無かった。
     レディースの総長をしていた、姉のことを思う。
     規律を乱し、暴力的な姉のことは大嫌いだった。
     だが、血は争えないのか、他者の命を奪ったにも関わらず、ミストアイの心は揺れなかった。むしろ、全知全能を名乗る強者を一方的に屠ったことへの高揚感が胸を閉める。

    (姉よりよっぽど外道だな、私は)

     抗争に乱入した夢遊病患者に鉄パイプで殴打され、未だ意識を取り戻さない姉に対して、僅かに共感を覚えながらも、ミストアイは長杖をテンガイと侍風魔法少女が対峙する一号棟屋上へ向けた。

    (…………何?)

     おかしい。
     確かに今、ミストアイは屋上を破壊し、テンガイを仕留めた。
     なのに、一号棟屋上は壊す前と同じようにそこに在り、殺したはずのテンガイと落下したはずの侍風魔法少女は対峙している。

  • 357◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:51:00

     何より、奇妙なのは

    (魔力が、消費されていない……?)

     威力を高めた一撃、速射性を高めた一撃。
     撃った瞬間、いつも以上に魔力が消費されるのを感じた。
     それが、リセットされている。

    (これは一体……)

     気が逸り、撃った妄想を展開してしまったのか。
     それとも殺し合いのストレスから幻覚でも見たのか。

    (違う、私は確かに撃ったはずだ……!)

     一号棟の屋上を視る。
     ——誰も居ない。

    「僕様が教えてあげようか?」

     背後で声が聞こえた。
     初めて聞く、少女の声。

    「っ!?」

  • 358◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:51:27

     ミストアイは急いで振り向き、杖を向けようとして。

    「βαρύτητα」

    「ガッ……!」

     床に叩きつけられた。
     投げられたわけでも、殴られたわけでもない。
     突如、全身が異様に重くなり、立っていられなくなったのだ。
     それでも、全身の力を総動員して、顔を上げる。

    「テンガイ……」

     緑髪に碧目の少女が、傷一つない少女が、ミストアイを見下ろしている。

    「た、確かに私はお前を撃ったはずだ……」

    「ああ、狙いは悪くなかったよ。『空間を操る魔法』はある程度の集中力を要するからね。盾を構えていれば、その方向にどれだけ速い攻撃が来ても耐えられるだろう?
    だが予期せぬことがあると思わず盾を落としてしまう。僕様はあの時、一瞬『空間を操る魔法』を解除してしまった。そこをすかさず」

     バーン! とテンガイは指でピストルの形を作り、自身の側頭部を突いた。

  • 359◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:52:01

    「頭を撃ったのも高評価。覚悟を感じるし、何より凡俗の魔法少女は脳を破壊されれば死ぬからね」

    「どうして……」

     と、ミストアイの喉から呻き声が漏れる。

    「どうしてお前は、死んでいない」

    「僕様は全知全能だからだよ」

     Χρόνοςと、テンガイは言った。

    「『時間を操る魔法(クロノス)』。僕様が死ぬと自動的に発動する魔法さ。効果は、時を6秒戻す」

    「なっ……」

     確かにミストアイは撃っていたのだ。全知全能を射殺するという偉業を成し遂げていた。
     だが、殺した程度では、全知全能は倒せない。

    「違和感覚えなかった? 時間は巻き戻っても、意識は戻らないからさ」

    「くっ……」

  • 360◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:52:23

     あった。違和感はあったのだ。
     テンガイが現れる前に、時間が巻き戻ったことに気づき、逃げ出していれば。

    (いや、駄目だ)

     一号棟の屋上から此処まで、一瞬だった。
     超スピードというレベルではない。もし超スピードだとしても、部屋の窓やドア、壁が破壊された様子は無い。
     速度ではなく、ワープ。
     ならば、逃げられるはずがない。

    (こいつに、挑んだのが間違いだった……)

     ミストアイは狙撃手である。彼女にとって戦いとは、常に一方的なものであった。
     エネミーも、チンピラも。
     ポイントを確保して、狙って、撃つ。
     撃ち合いになったこともなければ、近接で戦ったことも無い。
     故に、狙撃を失敗し、まな板の鯉となったミストアイの心は、折れる。
     意識が戻らない姉のことを思う。

  • 361◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:52:45

     自分もああなるのか。
     否、違う。もっと酷いことになる。
     ミストアイはテンガイを殺そうとした。一度は殺したのだ。
     だったらその報復もまた。

    (うそ……)

     怖い、と思った。冷めていると思った自分の心に、こんなにも幼稚で動物的な感情が眠っていたなんて。
     怖い、怖い、怖い……。
     死にたくない……!

    「君の処遇は後回しだよ」

     だから、テンガイの、助命でも許しでもない、ただ、今この瞬間は殺さない、という言葉だけで、涙が出るほど安堵してしまう。
     テンガイは、先ほどまで自分が居た一号棟屋上を眺めている。

    「さすがに時間を与えれば逃げるか。サムライちゃんはどうしようかな。技術は凄いけど、ゴリラタイプだしなぁ……せっかく一度は断れたデスゲームに参加してるんだから、キルスコアも稼ぎたいし……」

  • 362◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:53:15

     んー、とテンガイが悩んでいる。ミストアイはそれを震えながら聞くしかない。

    「決めた。君かサムライちゃん、どっちかは生かしてあげる。どっちが死ぬか、後で二人でじゃんけんして」

    「ひっ……」

     絶望的な宣告に、ミストアイの心が震えあがる。

    「さて、サムライちゃんはどこに逃げたかな……」

    「Βλέπω」

     と、テンガイは唱えた。
     ミストアイは知る由もないが、その効果は千里眼である。
     もっとも参加者のクレアボヤンスと比較すれば、範囲は比べるくもなく、精々団地一帯程度。それで十分なのだ。
     テンガイが屋上からミストアイが陣取った部屋にワープしてから一分も経っていない。そんな短時間で、団地の外に出るなど不可能。

    「どこに逃げたかな~」

     楽し気にテンガイは目玉をぎょろつかせ……。

    「あれ?」

     と、首を傾げた。

    「……居ないんだけど」

  • 363◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:53:37

    投下を終了します……!
    続きは明日投下します……!

  • 364◆xaazwm17IRZa24/02/27(火) 23:59:11

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……!

    魔法少女の弱体化については、皆さまお察しの通り2パターンあって

    ・全魔法少女共通で「魔力消費増大」

    ・一部の魔法少女は「魔法の出力・効果が制限」となっております(一番分かりやすいのは千郷インパクトの威力制限)

    弱体化の理由としては
    ・ゲームが成り立たなくなることを防ぐため(会場が消し飛ぶなど)
    ・全ての参加者に優勝のチャンスを与えるため
    です。

    今後他の理由が出てくるかもしれませんし、出てこないかもしれません

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 365二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 00:07:47

    乙です、テンガイさんの空間操作は手数がエぐいな。安全圏だったのに生殺与奪を握られたらそりゃ心が折れそうなのも仕方ない。本当に仕方ない。

  • 366二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 02:12:06

    全知全能なんてまさにゲームを壊しかねない筆頭だからな
    というか現状の空間湾曲+時間溯行+その他諸々とかいうインチキがセーフ判定なことに驚きだよ

  • 367二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 02:38:35

    >>366

    裏を返せば、黒竜はテンガイがゲームの障害にはなり得ないと判断したんだよな

    前回は参加を拒否したのに今回は自ら誘ったんだ

  • 368二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 02:56:12

    乙でした〜
    化け物が大暴れする回は見てて楽しいけど、ダイス値的に誰が死んでもおかしくないから気が気じゃないな…

  • 369二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 07:37:25

    自動蘇生か…まあ何かスレ主が言っていた変身解除の件がテンガイにあるのかな

  • 370二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 08:15:30

    これは金ちゃん逃げ切れたかな?
    けどもしかしてあのまま戦闘を続けていたら
    金ちゃん勝ってたんじゃ………
    だってテンガイの魔法は強い分おそらく
    ルールで消費も大きくなるはず……なら
    攻撃を当て続ければ…いつかは届くはずだし
    金ちゃんは魔力は消費してないからデメリットなし
    いけてた?いや無理かな……テンガイマジ強そうだし

  • 371二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 09:25:02

    >>370

    テンガイにどれだけ攻撃手段があるかわからないから何とも言えん

    ただ素のフィジカルでは金が圧倒してる気はする

  • 372二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 11:00:23

    未登場はあと10人?

  • 373二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 11:11:22

    たぶんこれが残りの未登場魔法少女

    11.ナサリーブラウン

    12.冨島千秋

    13.ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス

    14.マク=ハク/ノーブル・サヴェージ

    17.犬上 沙美/ハスキーロア

    22.大川 羽蘇/オオカワウソ

    23.木羽 マミ/ビリーバー

    29.陣内 葉月/ブラックブレイド

    30.蜂矢 恋蜜/ハニーハント
    
31. 逝凪 素鈴/ワンフロムアウター

    32. 栗田 柿子/ジャスティスファイア

    できればバルバロイみたいに雑魚エネミーと戦ってるところも見たいね

  • 374二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 12:08:16

    >>371

    「人間の時点で魔法少女並み」らしいテンガイのフィジカルが変身によってどこまで上がるのか、そもそも今変身していたのかにもよるんだよね

  • 375二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 14:53:06

    テンガイさん逃げに徹されたらもう手の打ちようがなくなるから、舐めプしてる内にマジカルストラッシュと千郷インパクトで消し飛ばすのが最善手なんだろうな

    それかあにまん市外に無理矢理押し出してゲームのルールで倒すとか

  • 376二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 14:54:14

    確かに全員で対巨大エネミー戦のパターンとかも見てみたいな

  • 377二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 14:55:10

    >>375

    うーむ自滅覚悟で一般人に戦いを見せて両者退場させるとかか?

  • 378二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 15:01:48

    今の所ルール違反した奴がいないからイマイチ分からんだよな…オオカワウソ頼む、気になるから一匹二匹死んでくれ

  • 379二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 16:43:42

    エネミー案
    【名前】
    モルテ=ファルファッラ
    【説明】
    六枚の翅を持つ身長2m前後の人型をした昆虫系エネミー。甲虫のように硬い身体が特徴
    魔力を糧としており魔法少女を狙って捕獲し口吻を首筋に突き立てて魔力を吸いつくす
    吸われた魔法少女はモルテ=ファルファッラのシルエットのような痣が敗北の証として刻まれる
    エネミーとしては中の上程度の実力だが自分より強い、あるいは複数人相手だと姿を見せることなくすぐ逃げ出す
    その反面執念深く逃げはするものの自分を狙った相手を密かに観察し隙を見て襲い掛かる

  • 380二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 17:25:34

    >>377

    戦いを見せるのは大丈夫じゃなかったけ?

    自分の口からバトルロワイヤルについて話すのが

    駄目なんじゃなかったけ?

    ティターニアは戦闘を見られてたけど

    ペナルティを負ってないし、あれないよね?

  • 381二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 17:42:41

    >>380

    殺し合いしてることを非参加者に伝えることがルール違反で戦闘に関してはノンペナルティのはず

  • 382二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 18:07:07

    >>381

    んーじゃあ仮に戦いを一般人に見られてもノンペナルティーなのかじゃあわざと一般人の多い所で戦うとかしても余り効果が薄いのか残念

  • 383二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 18:10:07

    お馬鹿なふりして衆人環視の中でバトロワについて大声で解説してもらうとか…?

  • 384二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 18:16:03

    自分の頭がアレなのもあるけどテンガイとか、抜刀 金とかの魔法の制限かけても素で強い魔法少女を倒すとしたらルール違反以外思いつかんだよね

  • 385二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 18:17:05

    下手にマトモな倫理観持ってたばかりにヤベーのに絡まれてしまって可哀想

    あの戦法も本来なら確殺だろうに

  • 386二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 21:45:37

    一巡するまでにあと何人退場するかな

  • 387二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 23:15:30

    エネミー・モンスター案
    【名前】CENSORED(修正済み)
    【説明】(修正済み)は魔法によって大規模的な魔法行使によって何らかの異常が出来た時に出没する存在ですが異常な空間にも出没する事例があります。
    外見は(修正済み)の(修正済み)を持ち(修正済み)の様な(修正済み)し(修正済み)です
    特徴は(修正済み)に対する魔法、物理的な攻撃を(修正済み)して無効化する。(修正済み)を見た、聞いた、記述した人を(修正済み)して深刻な精神的汚染を引き起こします。(修正済み)は異常を(修正済み)を持ちいて【修正】し正常化させるの。以上の三つの能力です。
    …もしこの(修正済み)を見てしてまったら理解する前に舌を噛みちぎる事をお勧めします

  • 388◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:30:49

    続きを投下します……!

  • 389◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:31:54

     トリックスターは地上に向かって階段を駆け下りていた。
     修羅場は何度も潜ってきたがこうも必死に走ったのは数年ぶりだ。

    (あれは、駄目だ)

     あの時。
     足場が崩壊し、首無しテンガイの落下を視認したとき。
     死亡しているはずのテンガイを中心に、時計盤に似た奇妙な形状の魔法陣が展開された。
     そして、気づけばトリックスターは屋上に居たのだ。
     破壊されたはずの屋上へ。

  • 390◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:32:22

     落下したはずの抜刀金が居て、死んだはずのテンガイが居た。
     金もトリックスターと同じく、混乱の様相を見せていた。
     そして、魔法の下手人らしきトリックスターは、三号棟の方へ笑いかけ、唐突に姿を消した。
     何が起こったのか。トリックスタ―は一つ仮説を立てている。

    (噂によると、テンガイは世界の時間を六年戻したことがあるという。だったら、今起きたことも……)

     ——時間の巻き戻し。宇宙の法則さえも凌駕する、神域の魔法。
     これにより、テンガイは黄泉の国から帰還したのだ。
     トリックスターの胸中は複雑だった。空間操作だけではない、テンガイは時を巻き戻せるという新たな情報を入手できたのは大きい。だが、そんなことまで出来る奴を、どうやって倒す?
     テンガイを倒すのは不可能。
     諦めてしまいそうになる自分が居る。

    「トリックスターとやら……」

     と、側方で微かな声がした。

  • 391◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:32:52

     姿は見えない。当然だ、トリックスターが透明化の魔法をかけたのだから。

    「何だい、金」

    「どうして拙者を助けた?」

     一人なら、もっと確実に逃げられるだろう、と金は言った。
     トリックスターは答えない。
     金の言っていることは事実だ。
     自分だけ透明化するのと同行者を透明化するのとでは、魔力消費量がまったく違う。
     事実、始め、トリックスターは一人で逃げようと考えていたのだ。
     今、金と一緒に逃げているのも、明確な理由があるわけではない。
     テンガイが姿を消した後、何となく声をかけ、何となく一緒に逃げている。

    (いや、違う)

     具体的に形になったわけではないが、抜刀金には可能性がある、とトリックスターは踏んだのだ。
     抜刀速度は、テンガイさえも驚愕させるものだった。

  • 392◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:33:20

     例えば、トリックスターが金を透明化させ、金が不意打ちで居合を決めれば、テンガイを一殺できるかもしれない。
     けれど、それだけでは足りない。
     テンガイが、ただ空間を操作するだけの魔法少女なら、金を透明化させてテンガイが帰ってくるのを待っていれば良かった。
     違う。テンガイは複数の魔法を使える。テンガイは——時間を巻き戻せる。

    (パーツが足りない。テンガイを詰ませるためのパーツが)

     自身の透明化をテンガイが察知できなかったように。金の抜刀速度がテンガイを驚かせたように。参加者の多くは、一芸でテンガイに勝っているはずだ。複数の魔法少女でシナジーを発生させテンガイを追い詰めれば、きっと倒せる。
     はずだ。
     そうでなければ、おかしい。

    「……これは……」

    「なるほど、ようやく私たちが居ないことに気づいたか」

     眼。
     妖怪・目目連のように、壁中に無数の目玉が浮かび上がっている。

  • 393◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:33:52

    (探しているんだ)

     居なくなった金を、テンガイは探している。
     そして。

    (見つけられてない)

    「何故、気づかないので御座ろうか……」

     不思議そうな金の声が聞こえた。

    「小声とはいえ、拙者たちは喋っている。足音も聞こえるはずでは御座らんか?」

    「私の魔法は、『触ったものが見えなくなるよ』。触れた物体を透明にして認識させなくする能力。どこまで認識できなくなるかは、消費魔力で変化する。
     はっきり言って、ちょっと無理した。
     でも、そのおかげで私と君は、姿だけじゃなく、声も、魔力も、認識されなくなっている。目の前で紅熱唱しても気づかれないよ」

    「な、何と……。凄い魔法で御座る……」

    (そう、普通なら気づかれない。けど、テンガイは普通じゃない)

     全知全能。優勝候補。——天の理から外れた者。

  • 394◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:34:15

     階段を駆け下りた二人は、駐車場に出る。

    「っ……!」

     走りながら周囲を見渡し、トリックスターは呻いた。
     一号棟だけではない。
     視界に入る全ての団地の壁に、無数の目が浮かび上がっている。

    (……本当に、何でもありにも程がある……!)

     けれど、まだ見つかってない。
     トリックスターの渾身の魔法は、今もなおテンガイを欺いている。
     駐車場を魔法少女の脚力にものをいわせて駆け抜ける。
     そして遂に、トリックスターの足は、団地の境界線を踏み越えた。
     勿論、それで足を止めるトリックスターではない。
     ただ、死地は脱したと安堵する。
     離れれば離れる程、透明化はバレにくい。
     いくらテンガイでもここまで離れてしまえば、二人を補足することは無理だろう。

    (生き延びた……違う、ここからが始まりね)

  • 395◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:34:41

     未だデスゲームは始まったばかり。
     テンガイ以外にも激ヤバな魔法少女は幾つも存在する。
     考えるだけで気が遠くなるが、テンガイはあくまで優勝候補であり、ぶっちぎりの参加者最強魔法少女……では、ないからだ。
     同格は、居る。

    (まずは、それらの同格を味方につけるところから始めないと。大丈夫、私は魔法省役人、情報のイニシアティブはこちらが持っている)

     死地を脱しても、トリックスターは油断せず、次なる戦略を思案する。
     パリン、とガラスが割れたような音が響いた。

    「何が……なっ!?」

     トリックスターの視界に映るのは——驚愕の表情でこちらを見る、抜刀金。
     そして、抜刀金の瞳に映る、トリックスター。

    (透明化が解除されてる……!? 馬鹿な、魔力にはまだ余裕があったはずなのに……!)

     消費魔力が増大していることは察していた。それを見越しても、後一、二時間は透明になっていられるはずだった。

  • 396◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:35:09

     トリックスターの心をパニックが支配する。

    (だ、大丈夫……ここまで距離を稼いでいればすぐには追いつかれないはず……!
     それに、もし追いつかれても、抜刀金と二人で連携して戦えば、逃げるチャンスはきっとまたやって来る……)

    「抜刀金、今は少しでも距離を——」

     ——右半身を灼熱が襲った。
     トリックスターの足が縺れる。
     条件反射で、トリックスターは患部を抑えようとした。少しでも生存の確率を上げるために。
     抑えようとして、気づく。
     無い。
     抑えるための右腕も、抑えなければならない腹部も、焼失している。

    (そげき、された……?)

     意識が、鈍麻する。
     右腕を含む、胴体の右半分が、消し飛ばされた。

  • 397◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:35:51

     ——致命傷だ。
     抜刀金がこちらに駆け寄ってくる。

    (死にたくない……)

     トリックスターは縋りつくように袴の裾を掴んだ。

    (こんな所で、死にたくない……)

     トリックスターは、凄まじい程生に執着する。噂レベルでしか語られていなかった殺し合いに関しても独自に調査し、万全の対策を施していた。
     弱冠二十二歳で魔法省の役人を務める才媛に至れたのも、この強い生への執着があったからに他ならない。

    (どうせ死ぬなら……)

     袴を強く握る。念を、込める。
     トリックスターはもうすぐ死ぬ。そして、抜刀金は致命傷を負っていない。
     妬ましい。悔しい。どうして自分だけと泣き叫びたい。
     だから。

    「——わたしのぶんまで、いきて」

     抜刀金の姿が消失する。
     それを確認すると、トリックスターはアスファルトの上に倒れ込んだ。
     最後の魔力を振り絞った代償か、アスファルトに投げ出されたトリックスターの瞳は、微動だにすることは無かった。

    【和妻 颯葵/トリックスター 死亡】
    【残り 37人】

  • 398◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:37:20

     荒い息遣いが、部屋の中で響いた。
     開け放たれた窓からは、長杖の先端が覗いている。
     それを構えた少女は、呼吸を乱し、仮面の下で大量の汗を流していた。

    「………………」

    「一人、逃がしちゃったね」

     背後のテンガイの言葉に、ミストアイの身体がびくんと跳ね上がる。

    「せっかく僕様が『魔法を解除する魔法(アペレフセロスィ)』を唱えてあげたのに」

     ミストアイは黙している。彼女にとって、それは決死の抵抗だった。
     既に、テンガイの命令で魔法少女を射殺した後だったとしても。
     自身の信条を生存のために曲げ、規律を乱していない、むしろサムライ風魔法少女を逃がそうとしていた善の魔法少女を殺した。

    「抜刀金は再び透明化して……恐らく逃走中か。もう一度『魔法を解除する魔法』を使ってもいいけど……いいや、透明化の魔法少女の頑張りに免じて、見逃してあげよう」

    「…………私は、私が規律を……」

  • 399◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:37:50

    「規律、ねぇ」

     ミストアイの嘆きを聞き、テンガイはつまらなさそうに言う。

    「今、僕様たちの規律は『殺し合う』、これだけだよ。状況が変わったのならそれに対応しないと。保守的な奴から死んでいくぜ。まぁ革新的な奴も結局死んだけど。やっぱ怖いよね、ギロチンって」

     わけのわからないことを言いながらおかしそうに笑うテンガイに、ミストアイは無言で返すしかなかった。

    (規律……このゲームの規律……)

     妙に、その言葉が心に引っかかったまま。

  • 400◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:38:14

    (さて、初戦はこんなものか)

     殺人を強要したミストアイは、呆然自失のまあ動こうとしない。
     人のことは簡単に撃ち殺したくせに、いっちょ前に傷心しないで欲しいとテンガイは思った。

    (こいつ、気づいていないのか? 容赦なく僕様の頭を撃ち抜けた時点で、とっくにイカレてることに。産まれる時代が違えば、英雄の素質があるぜ。それも人を助けた数じゃなくて、人を殺した数で語られるような、血生臭い英雄にな。
     あ、嫌な奴色々思い出してきた……カルタゴのあいつとか、モンゴルのあいつとか、ナチスのあいつとか……)

     ぶんぶんと首を縦に振る。既にくたばった奴らのことはどうでもいい。
     問題は、今生きている者たちと、このゲームについてである。

  • 401◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:38:41

    (前世では断られたのに、何で今回はOKなの? と思ったけど、なるほど、道理で……)

     まず、参加者の質。
     前回よりも遥かに高い。(偶々)痛み分けに終わったティターニアに、テンガイを驚かせた居合術を見せた抜刀金、一度は殺してみせたミストアイ、途中までは完全に欺いた死んだ魔法少女。
     いずれも一線級だ。似たような現象はテンガイでも起こせるが、ここまでの完成度ではない。

    (一芸だけなら、僕様に勝る……か。なるほど、もしかしてこの殺し合い、僕様基準に参加者を選んだのかな。
     どれか一分野で僕様を凌いでいることが参加の最低条件とか)

     それなら、テンガイが参戦してもある程度殺し合いとして体裁は立つ。
     もう一つは。

    (消費魔力が増大しているな……これ、けっこう面倒だな)

     テンガイ。ありとあらゆる魔法を納め、三千年近くの時を生き、二度の転生を果たした、規格外。

  • 402◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:39:10

     そんな彼女に、唯一残された、規格外でない部分は——魔力量である。
     普通の魔法少女とは隔絶し、魔法少女の上澄みの更に上澄みに入る魔力量を誇っているが——決して、常軌を逸しているわけではない。
     『空間を操る魔法』も、『時間を操る魔法』も、『千里眼の魔法』も、『魔法を解除する魔法』も、あるいはミストアイを取り押さえる時に使った『重力を操る魔法』も。
     使えば、魔力は消費される。
     調子に乗って連発すれば、いずれは枯渇する。
     抜刀金を逃がしたのも気紛れではなく、『魔法を解除する魔法』をもう一度使用することを躊躇ったのだ。
     もう一度使ったからといって、直ちに枯渇するわけではない。
     ただ、テンガイは意識している。
     今この瞬間ティターニア、あるいは彼女に匹敵する実力者が乱入してきた時に、問題なく圧勝するためには、魔力消費を一定のラインで抑えておきたかった。
     そのための、ミストアイ。
     しばらくは彼女を固定砲台として利用させてもらおう。

    (あー、早く桐生ヨシネの心臓欲しいなぁ)

     全知全能である自分が戦略を立てなければならないことを嘆きつつ、テンガイは会場に居る一人の魔法少女を想う。
     彼女の心臓さえ手に入れば。

    (やっと僕様も、■■少女に成れるんだから)

  • 403◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:39:40

    投下を終了します……!

    これで11話は終わりです……!

  • 404◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:41:16

    12話の登場キャラ数dice1d4=3 (3)

  • 405◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:42:15

    12話は3人の魔法少女が登場します……!


    登場するのはdice3d44=35 26 17 (78)

  • 406◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:43:29

    11.ナサリーブラウン
    29.陣内 葉月/ブラックブレイド
    17.犬上 沙美/ハスキーロア
    が登場します……!

  • 407◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:45:03

    【ナサリーブラウン】

    生存ダイスdice1d100=18 (18)

    絆ダイスdice1d44=23 (23)

    関係性dice1d100=71 (71)


    【陣内 葉月/ブラックブレイド】

    生存ダイスdice1d100=7 (7)

    絆ダイスdice1d44=33 (33)

    関係性dice1d100=90 (90)


    【犬上 沙美/ハスキーロア】

    生存ダイスdice1d100=53 (53)

    絆ダイスdice1d44=41 (41)

    関係性dice1d100=49 (49)

  • 408二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 23:45:52

    ブ、ブラックブレイド…!

  • 409二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 23:46:56

    ナサリーブラウンも危険域だねこれは

  • 410◆xaazwm17IRZa24/02/28(水) 23:48:14

    【ナサリーブラウン】

    生存ダイスdice1d100=18 (18)

    絆ダイスdice1d44=23 (23)→木羽 マミ/ビリーバー

    関係性dice1d100=71 (71)→まぁまぁ好き


    【陣内 葉月/ブラックブレイド】

    生存ダイスdice1d100=7 (7)

    絆ダイスdice1d44=33 (33)→姚 莉鈴/ハイエンド

    関係性dice1d100=90 (90)→好き(大好き寄り)


    【犬上 沙美/ハスキーロア】

    生存ダイスdice1d100=53 (53)

    絆ダイスdice1d44=41 (41)→抜刀 金

    関係性dice1d100=49 (49)→普通


    ……以上の情報を元に第12話を作成します!

    舞台はあにまん市立高等学校です……!

  • 411二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 23:55:22


    生存30以下は厳しいぞ…

  • 412二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 23:59:26

    殺し合うようなメンツでもないしエネミーか運営側の魔法少女か、あるいは誰かが黒竜の支配を受けているのか

  • 413二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 00:02:00

    怪物に心臓は狙われるわ仲良さげな魔法少女は死ぬわでヨシネちゃん曇っちゃう?

  • 414二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 00:50:56

    設定的に見るとティターニア、ブレイズドラゴン、スピードランサーあたりの成人組で魔法も技量も経験も強い連中が人外組を除けばトップクラスになりそう

  • 415二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 01:10:44

    そういえば描写されなかったけどティターニアとブレイズドラゴンの関係性ってどんな感じなんだろ
    アレヰ・スタア→ティターニアは元弟子、ティターニア→スピードランサーは腐れ縁(数値自体は良好気味)だったけど
    数値的に中華料理屋の常連とかじゃなくて仕事上で殺し合ってたりしないかな

  • 416◆xaazwm17IRZa24/02/29(木) 01:48:58

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……! 毎日楽しく読まさせていただいております……!

    キャラクターが一巡したら、第一回連絡を行い、第二幕に進もうと考えております

    そこで、第二幕で展開する内容を皆様から募集します……!

    魔法王からのミッション……、超大型エネミーの出現……、第三勢力の介入……など、皆さまから頂いたアイデアの中からダイスで一つ決めたいと思います(何もなく殺し合いが進行する……も候補に入れるつもりです)

    〆きりはキャラクターが1巡するまで(本編の投下終了時)でお願いします

    それでは、今夜もありがとうございました……!

  • 417二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 02:36:48

    乙でした〜
    寝る前に最初のミッション案を投げておきます


    【名前】キャンディポイントゲーム

    【概要】
    拮抗する殺し合い、痺れをきらすパラサイトドールと変なスイッチが入ったパンデモニカ。
    予定は変更され、魔法王を賞品としたキャンディの奪い合いが始まる。

    【ルール】
    ゲームにポイントの概念が追加、ミッション開始時点までの行動にも適用される。
    魔法少女を殺 害した者には100点、各地に出現するボスエネミーを破壊した者には50点、一般人を殺した者には1点が与えられることとなる。
    ポイントを得ることで各地の"ショップ"にて有用なマジックアイテムを購入できるようになるが、点を集めすぎるとプレイヤー間でのみ確認可能な"掲示板"のランキングに載るため狙われ易くなるだろう。
    ポイントは相手を殺して奪う/自死により譲渡することも可能。

    【ショップ概要】
    ・マジックアイテム→100ポイント
    ・固有魔法の強化→100ポイント
    ・魔法王への挑戦権→1000ポイント

  • 418二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 02:44:25

    乙 次が前作で言うところの廃校編かな?

    【展開案】魔法王が第一のミッション『スコアアタック』を発令。
    期間中、討伐したエネミーが強さに応じて『スコア(得点)』と呼ばれる宝石を落とすようになり
    それらの獲得数を参加者同士で競い合う。
    参加は各々の自由意志に委ねられるが、1位は魔法少女を一人指名し
    相手を『その場で即死させる』か『一時間の間、確実に生存させる』かを選ぶことができる。

  • 419二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 03:04:45

    エネミー案
    【名前】
    ダークワン
    【説明】
    遥か古来より黒龍に絶対の忠誠を誓う、骸骨を模した兜と甲冑を纏う騎士達。
    理由は不明ながらも全員が黒龍に魂を捧げ、自らの意思で支配を受け入れた。
    魔力による防御や効果を貫通する(破魔の赤薔薇的な)黒曜石のロングソードと並外れた剣技を操る。

  • 420二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 04:58:11

    【ミッション名】テンガイ・ハント
    【概要】全魔法少女強制参加で一定期間行われるもの。どのような手段であれ『テンガイ』を殺す、それだけのミッション。シンプルではあるが、テンガイ自身の知識・経験・数多くの魔法などによって超高難易度と化す。…後述の報酬により、テンガイにとってはボーナスチャンス、その他にとってはレイドバトルといった形になっている。
    【報酬】報酬はミッション終了時(期間終了時、及びテンガイ死亡後6秒経過)に与えられる。内容は以下の通り。
    ◇参加して生存した者全員:携帯魔力(使い捨てで一度のみ使用でき、即座に魔力を全回復する。ただし使用後しばらくして魔力中毒という酩酊状態に陥る)
    ◇テンガイにとどめを刺した者:魔法のアップデート(燃費の改善、制限の緩和、威力の強化、効果の追加など)
    ◇テンガイ(ミッション中に殺せなかったら):ミッション中に殺した者の魔法が使用可能になる

  • 421二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 07:54:31

    【ミッション名】お宝クエスト
    【概要】任意で参加可能、あにまん市にある魔法少女しか見えない『お宝』を多く持った者が勝利、勝者には一回だけ一部だけルールを改変出来る権利書がなんやかんやあってポケットに入ります(実は『お宝』と権利書は奪えます)
    追記 魔法による複製は出来ませんホントにマジでやるなよ!ゲームが崩壊するから本当に頼む大川 羽蘇!!!

  • 422二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 12:39:40

    【ミッション案】

    【ミッション名】チームを作るよ!
    制限時間内に3人以上5人未満でチームを組んでもらう
    方法は全員同時に転送された
    アイテム【チームスカーフ】にチームメンバーの
    魔力を注ぎ込んで身体の何処かに巻くこと
    また入れるのは一人人チームのみ仮に強奪等しても
    使うことはできない一人一つ

    【チームを組んだら、ルール】
    1.チーム間の死は共有されない
    2.チームメンバーの魔法の詳細がチームメンバーで
     共有されるつまり魔法がバレる
    3.使用できる魔力がチーム全員を合わせたものになる
     つまりは共有資産になる
    4.離れられる距離は30メートルまでただし
     チーム外例えば的にとばされた転移させられた等は
     対象外、その場合でも速やかに近くに戻る事が
     求められる、戦闘や負傷等により動けない場合は
     人数が多い方にペナルティが課される場合がある
     ペナルティは死2回の警告を無視して合流しなかった
     場合死の呪いが発動する
    5.チームメンバーはお互いを傷つけることができない
    6.チームができたらすみやかにチーム名を決める事
    7.仲間であるのはいっときの事あくまでも敵同士で
     あることをお忘れなきように

  • 423二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 13:14:09

    【名前】カラオケバトル
    【概要】
    カラオケ機が市内のいくつかの場所に設置される
    点数に応じて有用なアイテムゲットできるかも⁉︎デメリットは特にないのでじゃんじゃん参加しよう!
    【ルール】
    登場キャラが決定した後にカラオケ機が設置されているかと誰がチャレンジしたかダイス
    歌の点数は100面ダイスで測る
    10点から30点くらいでも点数に応じた量の魔力草くらいならもらえる
    それ以降は今まで出たアイテムからランダム
    31から50点で1つ
    51点から70点で2つ
    71点からから80点で3つ獲得
    90点以上なら味方としてエネミーを獲得
    100点が出れば任意の魔法少女1人を隷属させられる

  • 424二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 13:30:46

    【展開案】古の存在が眠りから覚めて暴れ出す
    【概要】魔法国に居るクソデカ古代生物がバトロワのの余波で無理矢理目覚めさせられた腹いせに魔法国・人間界で暴れ出す。

    展開決定時のクソデカエネミー案
    【名前】ビャッコウ
    【説明】魔法国西側にあるクソでかい山に眠る太古の存在。紀元前からそれらしき存在が記録されおり名前の由来は不明。常に淡い光に包まれてるため全貌は把握できないが全長はAタワーに匹敵し動きは四足獣を想起させる。各地を転々とし暴れてたのを千年前の魔法国にて捕獲され以後深く眠りに就いてたが、目覚めた今は眼の前の建物や動くものを破壊し尽くすまで止まらない。
    2km周囲の魔力を光子化して操る能力を持つ。攻撃手段はビームや大量の光の鞭や刃、光子機雷など。

  • 425二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 15:28:05

    【展開案】運営側のエネミー及び魔法少女投入
         殺し合いをさらに加速させるため運営側についている魔法少女やエネミーをあにまん市に投入
         彼女達は「魔力回復」「強力な攻撃」「短時間の魔法無効化装置」など特別な効果を持つアイテムを持っており
         参加者はこれを討伐することで手に入れることが出来る
         また参加者達には知らされないが運営側魔法少女の行動は自由であり運営側と同盟を組んで他の参加者を狙うことも許される

  • 426二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 16:20:01

    このレスは削除されています

  • 427二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 16:24:18

    今後の展開案です

    【ミッション】あにまん魔女狩りゲーム

    【ルール】
    ミッション開始時までに死亡した魔法少女たちが巨大ボスエネミー『魔女』としてフィールド上に復活。彼女たちを倒すことでマジックアイテム魔女の心臓を入手することができる。
    『心臓』を所有する者は死亡時必ず魔女化することができ、実質的な残機を獲得する。
    また、参加者の中に『既に心臓を所持している』者がいないとは限らない。

    【魔女】
    死亡した魔法少女がごく稀に変異する魔法生物。その体は魔力の流体で構成されており、魔力総量は魔法少女の数十倍とも言われる。
    基本的に生前とは似ても似つかない異形の姿を取るが、死亡時に肉体・精神の損傷が激しいほど凶悪に、その逆なら元の人格を保った人型に近い形態となる。
    魔力の殻を破り、魔女の『心臓』を奪取することで死亡する。

  • 428二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 16:30:16

    展開案
    【イベント名】
    運営と協力して優勝しちゃおうキャンペーン

    【説明】
    運営側の魔法少女やエネミーと協力し、運営に楯突く連中(運営に敵対的な参加魔法少女、一般人や一般魔法少女、邪神陣営)を始末すれば、その後も運営が(デスゲームに参加する限り)肩入れしてくれるようになる。
    協力したフリをして運営に探りを入れる事も可能。
    パラサイトドールの支配下にある(と思われる)魔法少女には優先して声がかかる。

  • 429二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 18:59:02

    展開案

    【イベント名】ミナコロスナッフ

    【説明】任意参加可能、あにまん市の一般人、魔法少女、エネミーを殺した時ポイント付与、右から一般人>魔法少女>エネミーの順でポイント獲得量が高いそして何よりの特徴は残酷に残虐に殺すこと特に魔法を使わず、相手を苦しめ返り血に塗れながら殺すことで大幅に追加ポイントが貰える。貰ったポイントは道具、魔力、情報、その他なども何でも交換出来る

  • 430二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 23:46:40

    さて、始まるぞ

  • 431二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 01:53:03

    このレスは削除されています

  • 432◆xaazwm17IRZa24/03/01(金) 03:22:36

    申し訳ありません、寝落ちしてしまい、今日は投下できません……!

  • 433二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 07:48:46

    あらあら
    了解しました
    ここで超大型エネミーの出現案
    エネミー案
    【名前】
    大君蟹王
    【説明】
    甲殻類最大級の蟹。知恵が発達しており、言語化出来ないが思考する能力を持つ。
    自らの領土拡大に陸へ上陸しようとしている。
    能力は持たず、巨躯を活かした圧倒的な範囲攻撃を得意とする。

  • 434二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 10:40:32

    戦闘が発生しそうにない面子かつ一番安全そうな場所でもこの出目なら死ぬ、死ぬ可能性が高いのは恐ろしいな
    本当に安全地帯ってないんだなって

  • 435二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 12:03:34

    もし1人だけの登場でド低めを引いたら可哀想すぎる

  • 436二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 13:48:52

    次の話で恐らく(片方は未確定だけど出目的にほぼ)二人死亡とすると残り35人
    あと二人で四分の一退場かぁ。前作に比べると緩やかだね

  • 437二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 13:53:25

    エネミー案
    【名前】
    ダークハンター
    【説明】
    地下や建物などの闇の中に棲息する四足の爬虫類が如き怪物。常に数匹の群れで行動し、狩りを行う。
    暗闇に溶け込む能力を持ち、探知系の魔法が無いと奇襲を受ける可能性が高い。

  • 438二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 16:58:37

    前作のペースがおかしかっただけでは…

  • 439二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 18:29:54

    正直前作の無情さも好きだったよ自分は
    今作でいうティターニアやテンガイみたいな枠の強者でもサクサク序盤退場していくからね…

  • 440二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 19:14:57

    >>439

    とはいうけど、前作でも強キャラ4人のうち、一人は第一放送前、二人は第一放送の後だから、言うほどペースが落ちてるわけではないんよな

  • 441二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 20:21:18

    結構魔法少女って体力、防御力って人間よりだよね銃撃たれたら死にそう

  • 442二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 20:26:48

    万全では躱すけど弱ってるところの直撃は当たりどころによっては危ないくらいの塩梅だと思ってた…どうなんだろうね

  • 443二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 20:28:54

    >>441

    元々魔力消費がキツいタイプや攻撃的ではない魔法とかをカバーする為に銃を持っている子とかナイフ持っている子居るのかな?

  • 444二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 21:17:30

    今登場してるキャラの中だとハイエンドやフライフィアーが固有魔法以外の武器使ってるかな
    まぁ見た感じ装備品を魔法で出してるって感じっぽいけど

  • 445二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 21:47:36

    三話後編より

    >プアは化学物質生成、クリックベイトは釣り竿と共に遠距離攻撃は備えている。


    "釣り竿と共に"=釣り竿ではない飛び道具を別に持っているともとれる

    汎用攻撃魔法があるのか、それとも銃のようなものを携帯していたのかは全然わからん!

  • 446二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 21:52:59

    そう考えると素の耐久が相当高いTS姫ってだいぶ異端なのかね

  • 447二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 22:18:06

    >>445

    プアもクリックベイトも、「共に」遠距離攻撃手段があるとも読めるから、次の登場次第やね

  • 448二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 22:40:28

    >>443

    運営側のああああと熾店長オシウリエルは拳銃使ってそうけどあくまで交渉での脅し用の熾店長オシウリエルと殺し用のああああと違いがありそう

  • 44944524/03/01(金) 23:13:57

    >>447

    ああなるほど

    "両者共に遠距離攻撃持ち"って意味か……読解力不足晒してしまって申し訳ない

  • 450◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:27:15

    先日は投下できず申し訳ありません……!
    本日分を投下します……!

  • 451◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:27:42

     夜になると、こうも違うのか。
     と、陣内葉月、魔法少女名ブラックブレイドは思った。
     彼女が籍を置くあにまん市立高等学校。殺し合いが始まり、気づいた時には、ブラックブレイドは、母校の廊下に立っていた。
     もし、殺し合いの開演が日中であったなら、ブラックブレイドは魔法王からの命令を白昼夢だと考えたかもしれない。
     それくらい、荒唐無稽なものだった。
     だが、変身した状態で無人の廊下に立っていたとき、これは夢ではなく現実だと理解せざるを得ない。
     それにしても、夜の学校は暗かった。
     蛍光灯は着かず、灯りは月光のみ。
     魔法少女の視力なら懐中電灯が無くても困らないが、「夜の学校」というシチュエーションの、恐怖が無くなるわけではない。

    「あまり、遅い時間まで残ったことはありませんので……」

     と、わざと声に出す。

  • 452◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:28:00

     ブラックブレイドは剣術を習得している。しかし、剣道部ではない。あくまで実家の道場で「実戦流の剣術」を習っている。
     剣道をやると、雑味が混ざる。
     というのが、彼女の父親であり師範の考えだった。
     教育的側面が強く、厳格なルールの元で行われる競技、剣道。
     一方、ブラックブレイドが習ったのは剣術。
     人殺しの技術だ。
     もっとも、ブラックブレイドは人を殺したことなどないが。

    (……つーか、現代日本で殺人とかありえないし)

     と、内心で愚痴る。
     父親の教育方針で、古風で上品な口調を強要されているが、ブラックブレイドの内面は甘味が好きなごく普通の女子高生だ。
     もっとも、普通の女子高生よりはやや生真面目なきらいはあるが。
     人々を脅かす怪異の噂を聞き、私の剣術で退治してやる! と挑みに行く程度には正義感が強く、無鉄砲な一面もある。

  • 453◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:28:50

    (真美ちゃん先輩は……中学生だからここには居ないかなぁ……。うち新人だし、あんま魔法少女の知り合い多くないんだよねー)

     頼りになる年下の先輩、七海真美とは連絡が取れず。
     ブラックブレイドは行動方針を決めかねていた。
     剣術も極めたとは口が裂けても言えないが。魔法少女に至っては、成って半年である。
     たった、半年では、何も分からない。
     半年で、何かがわかるはずがない。
     わかると思ったら、それは錯覚だ。
     と、剣術修行を物心ついたときからやっているブラックブレイドは思う。
     ひとまず、ベテランの魔法少女と合流したい。
     人助けを行いたいという欲求はあるが、今の自分は助けられる側だという自覚もある。
     剣術の試合では無敗だ。だが、実戦の経験は無い。ならば、強者であるはずがない。

  • 454◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:29:10

    (真美ちゃん先輩は優しいから『葉月さんの才能は凄まじいですよ! きっと将来は何でも斬れるようになれますよ!』とか言ってくれたけど、何でも斬れるイメージ全然湧かないしなぁ)

     むしろ、斬れない物が世界には溢れている。
     鉄とか、空気とか、人の気持ちとか、呪いとか、幸福とか。
     斬れるのは、ごく一部だけだ。
     だから、剣術なるものは発展したのだろう。
     ごく一部のものしか斬れないからこそ、身体を鍛え、心を磨き、技を磨く。
     それを生涯やり通して、ようやくやらなかった場合より斬れるものが少しだけ増える。
     そう考える時、ブラックブレイドは空しさと同時に、どこか安心感を覚える。
     何でも斬れるのなら、きっとブラックブレイドは不安に駆られていただろうから。
     何でも斬れてしまうのなら。きっと誰とも対等な関係は築けない。
     そんな予感があった。

    (でも、それはそれとして、不安は斬りたいなー)

  • 455◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:29:34

     夜の学校の散策は、正直言ってかなり怖い。
     自分から怪異をぶった斬りに行ったときは、義侠心とちょっとした冒険心があったが、今回はどちらもない。
     魔法少女の世界を知って、自分が井の中の蛙だと知った。試合では無敗、師範である父親より強い、それが何だというのか。
     自分と互角に戦える女子など、幼馴染の桐生ヨシネと姚莉鈴くらいしか居ない、という慢心は既に斬られている。
     大抵の魔法少女は、きっと自分より強い。
     桐生ヨシネも姚莉鈴も、魔法少女には勝てない。二人が魔法少女にでもなっていない限りは。

    (なんて、幼馴染三人が三人とも魔法少女とかありえないし)

     今、二人は何をしているのだろう。どこかで元気にやっているといいんだが。
      ——取り留めのない、雑多な思考がブラックブレイドを支配していた。
     思考が一定しない。
     初めての実戦は、ブラックブレイドを浮足立たせていた。
     故に、先手を取られる。

  • 456◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:30:05

    「止まりなさい」

     と、本校舎の三階に昇り、階段から教室へ向かおうとしたところで、掃除用具入れのロッカーの影に隠れていた魔法少女に、拳銃を突きつけられる。
     自身のこめかみに当てられた銃口に、ブラックブレイドはぎょっとした。

    (嘘……全然気配とか無かったじゃん……)

     隠れていても気配で分かる。と、ブラックブレイドは密かに自負していた。その自信が、あっけなく崩れ去る。

    (なんか、うち、自分でも思っていた以上に弱いのかな……)

    「どなたですか?」

     と、外面だけは古風で生真面目な女学生のような口調で、ブラックブレイドは問う。
     銃口を突き付けているのは、金髪の白人美女だ。

    (うわ……この人、めちゃくちゃ強い……)

     姿勢や体つきを見て、ブラックブレイドは舌を巻く。纏う雰囲気も、幼少の頃に亡くなった祖父に似ている。

  • 457◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:30:37

     現師範である父は、実戦の経験は無い。が、祖父はあったという。幼いながらに、祖父と父では、纏う雰囲気が違うと感じていた。
     祖父と同じ、「実戦経験者」の空気を纏った屈強な女性。
     魔力反応は微かだが、これが何を意味しているのか、ブラックブレイドには分からない。

    「貴女に、一つ質問したいことがある」

    「何で御座いますか」

    (魔法少女って銃弾は効くんだっけ……たぶん大丈夫だよね?)

     内心ドキドキしながら、ブラックブレイドは銃など怖くも無いといった表情で、女性に微笑む。

    「貴女は、このゲームが開催されることを知っていた? 自分から参加したのかしら」

    (んなわけないじゃん)

    「いいえ、私は気づいたら魔法王の前に立っていたのです。殺し合いなど、考えたことも御座いません」

     その言葉を聞くと、女性はゆっくりと銃口を下げた。

  • 458◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:31:05

    「……ッチ」

    (え、舌打ちされた……。怖い……)

    「どうやら、私はすっかり騙されたようね……・特別な力を持った者が志願して戦い、願望を叶える、そういう儀式だと聞いたから参加したのに」

    (いや、普通はそんな儀式でも参加しないでしょ……)

    「子供を無理やり拉致して殺し合わせるなんて……そんなファッキン・ゲームにエキサイトするつもりはないわ」

     そう言って、女性は右手を差し出した。

    「私はナサリー・ブラウン。さっきはいきなり銃を突き付けてごめんなさい。
     貴女みたいな子供を守るのは——大人の務めよ」

  • 459◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 00:31:23

    投下を終了します……!

  • 460◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 02:37:58

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……!

    また、第二幕のアイデアもありがとうございます……!

    始まって一か月経ちましたが、今後ともよろしくお願い致します……!

  • 461二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 08:54:38

    乙でした〜
    ハイエンドやバーストハートみたいに、武術と魔法少女のフィジカルを合わせてある程度戦えたりしないのかな

  • 462二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 09:05:14

    今のところ安全そうな組み合わせだけどここから何かが起きるのか

  • 463二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 09:12:09

    誰かが操られてるかエネミーかのどちらかだろうけどなぁ
    それかパラサイトドールが直々に降りてくるとか

  • 464二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 10:51:55

    ペットが殺し合いに巻き込まれ、あまつさえ一般人の幼馴染は死ぬとかハイエンドちゃんの情緒と怒りゲージがとんでもないことになりそう

  • 465二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 10:58:03

    魔法王はともかく元凶の洗脳にはなす術がないのが悲しいところだね
    33-4っぽいのは愛しい飼い犬が焼いちゃったし
    その飼い犬がワンチャンあるかもしれんけど

  • 466二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 16:13:43

    実際のところ魔法王ってどれくらい強いんだろうな?
    外見は男だけど変身できて魔法少女になるのかね

  • 467二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 17:02:10

    【ミッション名】強制デュエル
    【概要】ランダムに選出された参加者が他の参加者を二名指名する。指名された二名は魔法の国へ転送され一対一を強制される
        解放条件はどちらか片方、あるいは双方の死亡のみ。ただし誰が戦うかを指名する役割を与えられた参加者が
        自分を犠牲にすることを選んだ場合その生命と引き換えにこのミッションは終了となる

  • 468二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 21:09:01

    本編ログ見直してたんだけど、スピードランサーの魔法ってゲート・オブ・バビロンとカズィクル・ベイとクリフォト・バチカルを足して3で割ったみたいな性能してんだな
    そりゃつえーわ

  • 469二次元好きの匿名さん24/03/02(土) 23:46:17

    >>468

    そして技量、性格は槍ニキ近いからかなり強い

  • 470◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 23:57:37

    投下します……!

  • 471◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 23:59:10

     あにまん市立高等学校。本校舎三階三年A組教室。
     車座で顔を突き合わせるのは年齢層を違える三人の女。
     成人女性、ナサリーブラウン。
     ティーンエイジャー、ブラックブレイド。
     年端も行かない幼女、ハスキーロア。
     光源は月光のみという暗所であるにも関わらず、三人の女たちは問題なく情報交換を進めていた。
     魔法少女であるならば、多少の暗所でも問題なく活動できる。それらの恩恵を一切受けない特異体質のナサリーブラウンにしても、彼女の随一の異能である『透視』によって、やはり問題は起こらない。
     むしろ問題なのは、情報交換の難易度ではなく、内容物にあった。

    「魔法少女……?」

     と、ナサリーブラウンは渋面を浮かべた。

    「本気で言っているの、それ……?」

     この地に囚われた魔法少女たちはその殆どが、自身が魔法少女であることを自覚している。妖精からの接触であったり、他の魔法少女との交流を通し、自分が超常の存在になったことを自覚し、同時に世界唯一の特異点では無いことを知る。
     ナサリーには、それが無い。
     生来の魔法少女でありながら、使える魔法は『透視』だけであり、デフォルトで備わっているはずの身体強化は付与されていない。

  • 472◆xaazwm17IRZa24/03/02(土) 23:59:35

     あくまで、『透視』という異能が使える人間……それが、ナサリーの自己認識。

    「日本の子どもの間で流行っている遊び……では無いのよね?」

     確かに、思うところはある。
     魔法王の開催宣言を聞いていたとき、その場に居た少女たちは随分奇抜な格好をしていると訝しんだ。もっとも、それ以上に十代、あるいはそれ以下の少女ばかりであることや、殺し合いに怯えている者が大勢居たことへの戸惑いと怒りが勝ってしまい、恰好については深く考えなかったが。
     今、驚愕しながらこちらを凝視している二人の少女も、コスプレとしか思えない恰好をしているし、ふざけているとしか思えない名前を名乗っている。
     ブラックブレイドは着物を模したかなり際どいレオタード姿だし、ハスキーロアは犬耳に犬尻尾を生やしている。
     戦場で動きやすいように体にフィットしたシャツとズボン、上から軍用コートを羽織った今のナサリーの恰好と比較して、二人の恰好は異質さは顕著だ。そして、参加者の中ではナサリーの方が少数派だということは、彼女も薄々理解している。

    「遊び、じゃないです」

     と、犬耳を垂らしながらハスキーロアは言う。

  • 473◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:00:00

    「とても、信じられないのだけど」

    「…………分かりました、証拠をお見せします」

     決意を込めた表情で、ハスキーロアが立ち上がる。
     瞬間、彼女の身体は光に包まれた。
     スタングレネードのような痛みを伴うものではない、スタンドライトのような温和な光が消えたとき、ハスキーロアが立っていた場所には、黒髪で長身の撓やかな体躯の女性が、恥ずかしそうに立っている。
     手品・奇術の類いではないと、ナサリーの「眼」は判断していた。
     犬耳幼女が一瞬で黒髪女性へ。
     正しく、魔法。

    「ハスキーロア……さん?」

     ブラックブレイドは胡乱な顔つきで、年上だったのかを確認している。

    「は、ハスキーロアでいいです……!」

    「えっと、中身は大人だってことかしら?」

    「まだ九歳です!」

  • 474◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:00:26

     またもやハスキーロア(正確には犬上沙美)は発光し、犬耳幼女に戻る。
     どうせ私はデカ女です……と涙目で膝を抱える犬耳幼女に同情の言葉をかけながら、ナサリーは魔法少女が与太話ではなく事実だと受け入れた。
     そして、このゲームは魔法少女ばかりが参加していることも。
     ただ、姿形が変わるだけ(それだけでも十分に脅威だが)ではなく、魔法少女は身体能力が常人のおおよそ十倍、更にはそれぞれが固有の魔法を備えているらしい。
     教室にあった机を素手で破壊してしまったハスキーロアを見て、ナサリーも息をのんだ。鍛え抜かれた体躯のナサリーと違い、子役でも通用する愛らしい外見のハスキーロアでさえ、その筋力はナサリーが昔付き合っていた海兵隊一の筋力自慢を軽く凌駕している。これが、魔法少女のデフォルト。

    (……アンチマテリアルライフルを持ち込んだのは正解だったわね。いや、足りなかったかしら)

     身体能力だけでも大人と子供以上の格差があるのに、更に物理法則を捻じ曲げる固有魔法まで備わっている。

  • 475◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:01:08

     異能者だらけ、殺し合いバッチコイの益荒男たちと殺し合う前提だったのが、まさかの少女ばかりを集めた悪趣味なショーだった……というのが当初のナサリーの怒りだったが、認識を改める。

    (魔法使いたちの殺し合いに飛び込んでしまったマグルってところね)

     子どもの頃好きだった(今でも好きだが)ハリー・ポッターシリーズに喩えながら、ナサリーは現状をそう分析する。
     未成年のブラックブレイドとハスキーロアを守る……なんて恰好良いことは言ってられない。
     身体能力は二人の方が格上だし、固有魔法に関してもブラックブレイドは「万物切断」、ハスキーロアは「多機能強化」と頼もしい。ナサリーも透視という異能は持っているが、それ単独で敵を倒せる異能ではない。

    「異能じゃなくて、魔法なのではないでしょうか」

     と、日本人らしい奥ゆかしく丁寧な口調が印象的なブラックブレイドが、ナサリー言う。

    「一人だけ一般人……という言い方も失礼かもしれませんが、魔法少女ではない人物が紛れているというのも違和感があります。
     私も詳しくは知らないのですが、魔法少女の中には生まれつきもいらっしゃるようですし」

  • 476◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:01:42

    「私が、魔法少女……?」

     傭兵仲間が聞いたら三日三晩は爆笑の渦に包まれるだろう。
     ヘイナサリー、今度キュートな変身ポーズを見せてくれよ。
     とりあえず笑い転げる脳内の同僚をトカレフで撃ち殺し、違うんじゃないかしら、とナサリーは曖昧に笑った。
     魔法少女であるなら欠陥が多すぎる。身体能力は向上しないし、姿形も変わらない。どちらかがあるだけでも、取れる戦術は無限に拡大する。
     それらが無い、ということは、自分は魔法少女ではないのだろう。
     ——事実は、ナサリーブラウンは魔法少女である。この場にティターニア、トリックスター、テンガイといった魔法少女に詳しい者がいれば、珍しいタイプの魔法少女だと看破できただろう。
     しかし、ブラックブレイドもハスキーロアも魔法少女になって一年も経っておらず、魔法少女の知り合いも少ない。

  • 477◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:02:04

     ナサリーは魔法少女ではなく、異能を持った人間である、という誤った認識を肯定するしかなかった。
     魔法少女についてのレクチャーが終わった後は、今後の行動について話し合う。
     まず、三人ともが穏健派。ナサリーは非道な魔法王の制圧を目標に掲げ、
    ブラックブレイドとハスキーロアも持ち前の正義感からそれに同調。
     ただ、二人とも実戦経験は殆ど無く、相手は雑魚エネミー(それでも一般人からすれば猛獣に匹敵する脅威だが)ばかりだったという。頼れるが、兵士として扱うべきではない、とナサリーは肝に銘じる。
     それぞれの知り合い……といっても突然の拉致で知り合いが居たかの確認も定かではない。
     とりあえず、見つけられた魔法少女を列挙してもらう。
     ブラックブレイドの知り合い、七海真美。固有魔法は守護。守る対象が多い程基礎スペックが向上する。
     ハスキーロアの知り合い。スカイウィッチ。固有魔法は飛行。言葉通り空を自由に飛行できる(飛行能力が魔法少女のデフォルトではないことに、ナサリーは安堵した)

  • 478◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:02:33

     ハスキーロアの知り合いその2,抜刀金。固有魔法は黄金。金の延べ棒を創り出せるという。更に付け足せば、居合の達人だとか。
     なお、抜刀の名を出したとき、ブラックブレイドは大きく反応した。

    「あの、抜刀道場の金ちゃん?」

     古風な大和撫子風の口調が崩れる程の衝撃だったようだ。

    「知り合いなの?」

    「……私の家も剣術道場を経営しておりますから。幼少時は多少の交流が」

     ただ、ちょっと親同士の仲が悪くて……。とブラックブレイドは気まずそうに言う。
     その口ぶりからして大人の遺恨を娘が受け継いでいるわけではないようだ。
     念のため、魔法王打倒のために協力できるかとナサリーは確認したが、まったく問題ないとブラックブレイドは即答した。
     ただ、向こうがどう思ってるかわからないから怖いですけど……。
     抜刀さんは良い人なので大丈夫ですよ、とハスキーロアはフォローに入る。
     そして、ナサリーには当然だが、魔法少女の知り合いは居ない。

  • 479◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:02:58

     自分が親しくしていた友人が、実は魔法少女だった……という線も無いではないが、それを考え出すとキリがない。

    『嘘、ママも魔法少女だったの!?』

    『今まで秘密にしていてごめんなさいねナサリー。……実はね、パパも魔法少女なの』

    (いやいや、絶対ありえないわ)

     ……余談だが、ナサリーの周辺には二人の魔法少女が存在している。
     一人はドレッドノート。彼女がサブカル系だった時代に投稿していたネット小説『魔王物語』。ナサリーはこれの大ファンであり、熱心な応援コメントを書き込んでいた。今では更新は停止され、ナサリーはかなり残念がっている。
     一人は、ビリーバー。未だ物語には姿を見せていない、オカルト探求を趣味とする魔法少女である。彼女がYouTubeに投稿している解説動画はかなりの再生回数を誇っており、ナサリーも視聴者の一人として、オフの時は楽しんでいる。
     当然、彼女たちが魔法少女であることをナサリーは知らず、また彼女たちもナサリーという一個人は認知していない。

  • 480◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:03:22

     とにかくにも、三人の知り合いの情報も交換し合い、最後に行動方針を決める段階となった。

    「ここに留まり続けるのは、駄目ね」

     と、ナサリーは断じる。
     朝になれば生徒・教師が登校してくる。
     在校生のブラックブレイドはいくらでも紛れられるだろう。
     だがハスキーロアは変身していれば犬耳幼女だし、変身を解除すれば女子高生と言っても問題ない外見だが、見知らぬ女生徒が居ると話題になっては困る。
     逆に、ナサリーはプロの傭兵として学校程度好きなように潜伏できるが、子どもたちの学び舎を戦場とすることは矜持が許さない。

    「日が昇る前に別の場所に移動しましょう。できれば、他のグループとも合流したいし」

     戦いは数だ。
     特に、魔法少女同士の戦いならば、味方が一人増えれば、魔法が一つ増えるということであり、取れる戦略は何倍にも広がる。

    (だから、たぶんこのゲームは……陣営戦になる)

  • 481◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:03:45

     奇しくも、テンガイという魔法少女暦三千年近くの大ベテランがミストアイという魔法少女を奴隷として使役し、ブレイズドラゴンという同じ傭兵稼業でありながら魔法少女でもある危険人物が、ウェンディゴという魔法少女を誘蛾灯として使用することを、ナサリーは彼女たちを知らずして推測していた。
     自分たちは戦力として弱小である。
     戦闘経験は本ゲームトップクラスに位置するナサリーは、冷静に分析し、結論を出していた。
     凶悪な魔法少女と遭遇する前に、穏健派な魔法少女と合流し、同盟を結ぶ。
     それが、ゲーム序盤の最善策。

    (……優勝は、しなくていい)

     元々、ナサリーは優勝するために参加していた。
     相手が自分と同じ大人であり、かつ志願して参加した者たちならば、ナサリーは容赦なく殺戮を遂行していた。
     だが、駄目だ。
     子どもは殺さない。
     難病の娘の治療のために、傭兵稼業に戻ったときに、そう誓いを立てたのだ。

  • 482◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:04:08

     それは、ただの欺瞞で、偽善的な自己満足に過ぎなかったが。
     それでもその矜持があったからこそ、今まで生きて来れたのだと、ナサリーは信じている。
     それは、この場所でも変わらない。
     だから。

     ぞわり。
     
     と、肌が逆立った。
     第六感が危機を告げている。何が来る、分からない、とにかく動かなければ。
     ナサリーは二人の同行者に飛び掛かった。
     ナサリーを遥かに超える身体能力の二人は、ナサリーの行動に呆けるしかなく。
     そのまま二人は、教室の外へと押し出される。
     訪れたのは、轟音と灼熱。
     五体が瞬時に砕け散るのを実感しながら、ナサリーは心中で娘に謝罪し——意識を闇に沈めた。

    【ナサリーブラウン 死亡】
    【残り 36人】

  • 483◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 00:04:27

    投下を終了します……!

  • 484二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 00:24:01

    乙でした 身を挺して有言実行する大人の鑑……
    というか三人とも性格がバトロワに不向きすぎてだいぶお辛い回になってない?

  • 485二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 00:35:45

    爆発!?
    何が来たんだこれ…エネミーにそういうのいたっけ

  • 486二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 01:03:34

    参加者以外が原因での死亡は彼女が初になるのかな?何があったか分からないけど…何かがあったに、違いない…!

  • 487二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 08:34:31

    ダイスで出た三人以外の魔法少女が話に大きく関わってくることはまず無いはずなんだよね
    つまり下手人は新エネミーとみた

  • 488二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 09:29:36

    >>485

    メンシュ・パンツァーっぽい

    砲弾で狙撃してくるエネミー

  • 489二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 16:21:24

    変身しても身体能力が変わらないってのは、変身前から強いタイプの魔法少女とも取れるんだよな
    加えてテンガイも変身後の外見が変わらなかったし、ナサリーさんは意外と高等なことをしてたのかも知れない

  • 490二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 16:23:39

    アンチマテリアルライフルの性能って結局どうだったんだろうな
    魔法少女に現代兵器がどこまで通るのかは正直興味ある

  • 491◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:14:23

    投下します……!

  • 492◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:14:49

     爆炎が終息した時、ブラックブレイドは未だ現状を把握できていなかった。
     突然ナサリーに突き飛ばされた。虚を突かれて碌に抵抗も出来ず教室の外に投げ出され、瞬く間に炎が塗り潰した。
     熱風で顔を炙られながらも、ブラックブレイドは呆然とするしかなく。

    「……ナサリー、さん?」

     問えるまで精神を取り戻した時には——教室は存在していなかった。
     広がるのは、夜のグラウンドと、その向こうに拡がる夜景。外の冷気が髪を撫でる。
     かつてここに教室があったことを示すのは、教室のドアだけだ。ブラックブレイド側は外観を保っているが、教室側は焼け焦げ、半ば炭化している。

  • 493◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:15:24

    「…………爆弾?」

     ブラックブレイドの脳裏に浮かんだのは、魔法ではなく兵器。
     あるいは、ナサリーの傭兵という属性にイメージを引っ張られたか。

    「え、ナサリーさんは……」

     居ない。
     廊下を振り返るが、虚脱しているハスキーロアしか見当たらない。
     逃げ遅れたのか。

    (違う、助けられたんだ……!)

     突き飛ばされたのは、ブラックブレイドとハスキーロアを助けるため。
     その代償に、ナサリーブラウンは、もう……。

    「は、早く探しましょう!」

     と、ハスキーロアはブラックブレイドの肩に縋りついた。

    「きっと火傷してます! 意識を失ってるかも! すぐに見つけて、病院へ……」

     ハスキーロアの言葉は真っ当だ。模範的で、理に適っている。だが、ブラックブレイドの足は動かなかった。

  • 494◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:15:50

     ナサリーは、「生身」だった。
     戦闘経験、知識、技術、どれをとっても、きっとブラックブレイドを遥かに凌駕する熟練者にして強者だった。
     それでも、生身である以上、身体能力は、人体強度は、人間の限界を超えるものではない。
     教室一つ消し飛ばす火力を浴びて、生存している確率は……。

    「どこかに吹き飛ばされてるかも! 今探します!」

     ハスキーロアは屈みこみ、くんくんと鼻を鳴らした。平時なら可愛らしい動作に、ブラックブレイドは痛ましさしか感じなかった。ハスキーロアは歳の割に聡明だ。きっと、ブラックブレイドが出した結論に、とっくに辿り着いている。
     それでも彼女は現実を否定するように蒼白な顔で臭いを探ろうとし

    「あ……」

     屈みこんだのが、良くなかった。
     三階の教室一つ分が消し飛んだ。
     となれば、三階にあった物質は外に焼失するか、外に吹き飛ばされるか……下層に落下する。

  • 495◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:16:14

     二階の教室は天井が吹き飛んだだけで無事であり、三階にあったであろう机や椅子の残骸が散乱している。

     その中に、黒焦げの人体らしきパーツが幾つも混じっていることに、ハスキーロアは気づいたのだろう。

    「あ、ああ…………」

    「ハスキーロア」

     がくがくと身体を震わせ嗚咽するハスキーロアの肩に手を置く。
     幼い彼女が自らの感情を代弁してくれたからか、ブラックブレイドの心は徐々に平静を取り戻していた。
     あるいは、単に麻痺しただけかもしれないが。

    「ここから移動しよう……移動致しましょう」

     外行きの仮面を取り繕えるくらいには、冷静になれる。
     何故ナサリーは死んだのか。

  • 496◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:16:39

     地雷?
     それなら突き飛ばすという彼女の行動に疑問が残る。
     爆弾を投げ込まれた?
     ならば下手人は近くにいるはずだが、姿が見えない。それに、仮にナサリーがそれに気づいていたのだとしたら、投げ返すなり蹴り飛ばすなり出来たはずだ。
     もっと、どうしようもないもの。

    「…………狙撃?」

     遠方から一方的に攻撃されている。
     頭を撃ち抜く正確無比な弾丸ではなく、教室一つを消し飛ばす、人間なら原形を遺さない、魔法少女でも即死する威力の一撃を、撃ち込まれている。

    「でも、どこから……?」

     違う。そんなことはどうでもいい。
     これが狙撃なら——まだ終わっていない。

    「ハスキーロア、逃げますよ!」

     手を引き、無理やり立たせる。

  • 497◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:16:59

     そのまま彼女の小さな手を引き、走る。
     どこに逃げればいいかは分からない。
     それでも、一か所に留まり続けると、死ぬ。それだけは理解できる。

    (見えない場所からの狙撃……)

     対処法は、無い。
     ブラックブレイドは斬撃を飛ばせる。しかしそれは数m範囲の話であって、視認できない程遠方の敵には対応できない。
     ハスキーロアの嗅覚なら敵の位置を探り出せるかもしれないが、そこに辿り着くまでに砲撃されれば終わりだ。
     最強の姫騎士なら、ごり押しで攻撃を通すだろう。
     隻眼の狙撃兵なら、初撃を凌いだ時点で、反撃の遠距離狙撃で確殺できただろう。
     天の理を外れた規格外なら、空間を跳躍し無力化しただろう。
     ——ナサリーブラウンが二人を切り捨て自分の身を第一に行動していれば、持ち込んだ兵器で迎撃に成功していただろう。
     ブラックブレイドとハスキーロアには、無い。

  • 498◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:17:20

     ナサリーが持ち込んだ兵器一式は、学校のとある場所に隠していたが、訓練を受けていない二人にそれを扱える技能は無く、のんびり習得している時間も無い。
     今はただ、少しでも遠くに、少しでも安全な場所に逃げるしかない。

    (そうだ、校舎の裏側なら……!)

     愛する母校を盾にするのは心苦しいが、砲弾の威力は教室一つ分の消失……つまり、校舎を全壊させるものではなかった。
     ならば、校舎の裏側にさえ移動すれば、安全だ。
     そのまま遠くに逃げる。
     決断したブラックブレイドはハスキーロアを抱えると、窓へと走った。
     ハスキーロアの震えが、ブラックブレイドにも伝わる。
     不甲斐ない、と思う。
     こんなにも幼い子が怯えているのに、自分は恐怖を取り除いてあげられない。

    (うちに、もっと力があれば……)

    『ブラックブレイドさんは、きっと何でも斬れるようになるよ』

  • 499◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:17:40

    (なるよ、じゃ駄目だった。どうしてうちは、いつかが必ず来ると思っていたのかな)

     後悔と共に、跳躍する。
     窓ガラスを破ること程度、魔法少女の肉体では造作もない。
     壁を蹴りながら速度を落とし、下界に着地する。
     これで、校舎を壁にして逃走距離を稼げる。
     相手は魔法少女なのか、エネミーなのかも定かではないが。
     それを推測している時間も、怒りを滾らせる時間も無い。
     ……ナサリーが繋いだ命を、無駄にするわけにはいかない。

    (誰かと合流して、狙撃者の情報を……でも、二撃目は来ない。一発しか撃てないの? それなら好都合だけど)

     ハスキーロアが顔を上げる。その眼に奔るの怯え。

    「来ます……! 近くに居る……!」

    「嘘……!?」

     犬系の魔法少女は探知能力に優れている。

  • 500◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:18:10

     その定説を、ブラックブレイドは知らなかった。
     が、それがハスキーロアの疑う理由にはならない。

    「どっち……!? どっちの方向……!?」

     外行きの仮面を被る余裕などない。焦燥に駆られながら、ハスキーロアを問い詰める。
     ハスキーロアは憔悴しきった表情で、それでも嗅覚を必死に働かせているのか眉根を寄せ、そしてある方向を指差した。

    「こっち、こっちに居ます!」

    「っ!?」

     指差したのは三時の方向。遮蔽物は、無い。

    (まさか、あれか……?)

     五階建て程度の赤茶色のマンション。屋上には給水塔。
     其処に、居るのか。
      ——それは、一瞬の攻防だった。
     ブラックブレイドが凝視した給水塔が、確かに光を放った。

  • 501◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:18:25

     ブラックブレイドの行動は迅速だった。
     人体を超越した速度で『抜刀』し、光に向け、斬撃を飛ばす。
     ブラックブレイドの能力では、給水塔までは攻撃は通らない。
     そんなことは百も承知だ。だからこれは破れ被れの悪足掻き。
     物理法則を捻じ曲げ、ブラックブレイドの斬撃は刀身を離れ、伸びる。
     伸びた斬撃と放たれた砲弾は接触し
     切断。そして、爆発。
     全てを焼き尽くす爆風の中で、ブラックブレイドは意識を手放した。

  • 502◆xaazwm17IRZa24/03/03(日) 21:18:43

    投下を終了します……!

  • 503二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 21:35:08

    https://fearandhunger.wiki.gg/images/1/12/Weeping_scope.png


    メンシュ・パンツァーのイメージ

    モデルはとあるゲームの敵キャラ

  • 504二次元好きの匿名さん24/03/03(日) 21:36:24


    アウトレンジからの攻撃は大正義だよなあ

  • 505二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 00:21:20

    >>490

    まだアンチマテリアルライフルが残っていたら誰かが使うかもしれんかもね…テンガイを殺すことが出来るかも兵器かも知れんし

  • 506二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 07:46:06

    ハスキーロアの嗅覚が今回刺さったけど対策しようとするといくらでも欺けれるからなぁ…
    ブラックブレイドはバランス型故の悲劇な気がする

  • 507二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 09:25:23

    経験値のなさもマイナスに働いた気がする
    魔法少女及びエネミーとの戦闘経験が豊富なベテランを陣営に入れれると安定しそう

  • 508二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 11:25:07

    上位層なら一撃で吹き飛ばしそうなエネミーでも一般魔法少女にとっては十分脅威になるんだって分かる回

  • 509二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 14:03:57

    エネミー案
    【名前】
    ドミナートル
    【説明】
    あにまん市にもともと存在した怪異が人間体で死亡した魔法少女の死体を乗っ取った存在
    もはや魔法少女どころか生物ですらないがまるで人間のように振る舞い他者を欺く
    彼女の声には暗示効果があり聞き続けると徐々に彼女の言葉を無条件で信じ命令には喜んで従うようになっていく

  • 510二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 15:44:28

    エネミー案
    【名前】
    冒涜の竜
    【説明】
    神話の時代、魔法王の先祖にあたる魔法少女とその仲間達によって討たれた堕ちたる神竜。
    邪悪な魔法によって人心を操り、「氷のように冷たい業火」を吐いたと記録されている。
    魔法国の最果てに広がる虚空に封じられているという噂である。

  • 511二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 18:25:58

    フライフィアーで思ったが空中戦に対応できそうな魔法少女ってどれくらい居るんだろうか
    テンガイは飛行魔法も使えるだろうけど

  • 512二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 19:17:03

    >>511

    移動技持ちのスピードランサーはやれそう

    空中に槍生やして変態みたいな機動で三角飛びしたり、空飛ながら槍の絨毯爆撃してきそう

  • 513二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 19:32:27

    >>511

    飛行そのものへの追従ならスカイウィッチやハート・プリンセス、避けることを考慮しないならミストアイの狙撃ですかな。クリックベイトの釣り上げも対応できそう。

  • 514二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 19:43:58

    未消化のエネミー案が増え続けるのはこの際いいとして、魔法少女が主役のスレだってことは最低限覚えておこうね

  • 515二次元好きの匿名さん24/03/04(月) 20:38:56

    まあ多分ゲームが壊れない様に運営側が程よく狩っているんだろ…がメンダシウムが死んだことで人手が足りなくなってあを筆頭に社畜魔法少女共の胃が壊れる図が見える見える

  • 516二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 00:42:56

    今ざっくりいる運営側
    ザ・支配者のパラサイトドール
    刹那的快楽主義者のパンデモニカ
    狂人、仕事、オオカワウソWhat F***!のああああ
    全ての参加者の衣装の修繕をワンオペで担当!のオートクチュール
    正直仕事もうやめたい詐欺師の熾店長オシウリエル
    絶賛監禁中!の魔法少女メッセンジャー・ブルー
    最高の痛みを!マゾヒストのヴェンデッタ
    魔法少女にならない方が圧倒的に強い!自称武器商人のアロンダイト
    自分の"作品"として我が子のように愛す!お抱えの宮廷画家のゲルニカ
    (U^ω^)わんわんお!フロストハウンド
    “死”が怖いよ!無知無知ナイナイホテプ
    自称勇者の異常者、勇者
    好きなこてゃ弱者をいたぶる!擁護不可能なクズなグレンデル

  • 517二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 00:49:14

    >>516

    存在が確定しているのはオシウリエルまでだけどね

  • 518二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 00:53:48

    >>516

    真面目に戦闘以外で動きそうなの

    ああああ、オートクチュール、熾店長オシウリエル、フロストハウンド、ナイナイホテプかな

    大丈夫か?人手が足りるかぁ?

  • 519◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:11:11

    今夜で十二話終わらせたかったんですけど、完成する前に日付が変わってしまい、明日も早いので、キリの良い所まで投下します……!

  • 520◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:12:14

    「ヨシネの弁当いつもおにぎりネ」

     と、傍で声がした。

    (あれ……?)

     葉月は、周囲を見渡す。道場の片隅。
     下は道着、上は無地のTシャツを着ている桐生ヨシネと、黒いインナー姿の姚莉鈴。

    「私のは春卷。師匠が作ってくれたヨ」

    「ふん、美味しいじゃない。他には無いのかしら?」

    「誰が食べていい言ったネ!? 食べ物の恨み恐ろしいヨ!」

     ぎゃあぎゃあと子犬のように取っ組み合う二人を横目に見ながら、葉月は不可思議な感覚に囚われていた。
     これは、現在(いま)ではない。
     もうずっと前、まだ葉月が八歳かそこらの頃の記憶。
     この頃は、葉月の父親の人脈で、何度も武術交流会が開かれていた。
     葉月の父、陣内葉介は武術家としては祖父の才能を受け継がなかったが、経営者の才はあった。
     剣術家として名を売り、伝統を脚色した著作を出し、芸能人に見栄えだけの技を教え、様々な人脈を形成した。
     葉月は、父のことが好きだった。
     お前は天才だ、と褒めてくれる。
     古風な口調を強要されることは辟易していたが、門下生のアイドルとしてちやほやされたり、父親に連れられて武術家たちにその才能を絶賛されることは楽しかった。

  • 521◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:13:04

     幾度となく開かれた武術交流会には、葉月と年代が近い子どもたちも多くおり、その中でも突出した才を見せていた葉月、ヨシネ、莉鈴が仲を深めるのにそう時間はかからなかった。
     今にして思えば、きっと武術が被っていなかったことが、三人の仲を良好にしたのだろう。
     剣術、謎武術、中国拳法。
     三人はそれぞれの分野の若き才媛であり、いずれは頂点に立つ存在である。大人たちは皆そう思っていたし、きっと葉月たちも口には出さないが、それを自覚していた。
     自分たちは強すぎる。

    (けど、誰が一番強いのかって話は、一度もしなかったな)

     遠慮があったわけでもなく、臆していたわけでもない。
     きっと興味が無かったのだ。ヨシネは、あまり親の流派を継ぐことは乗り気ではなかった。才に溢れる故に周囲の大人たちは気づいていないが、当時の葉月は何となく、ヨシネはそのうち辞めるのではないかと感じていた。莉鈴もまた、拳法を技術の一つに過ぎないと考えているようだった。

  • 522◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:13:34

     ご飯食べられれば何でもいいネ。
     そう話す莉鈴の目には、何不自由なく生きてきた葉月には推し量れぬ闇があった。
     そして葉月もまた、最強という言葉にさほど興味は無かった。
     剣の練習をする。皆が偉いと褒めてくれる。
     それだけでいい。
     ヨシネや莉鈴といった友達もできた。
     それだけで十分だ。

    (この二人とは、ずっと一緒だと思ってたっけ)

     これは、過去だ。
     夢、なのだろうか。
     幼馴染二人の姿が幼い。今のヨシネと莉鈴を、葉月は知らない。
     これから一年後、ある武術交流会で陣内葉介と陣内葉月は、新顔の零細道場から来た親子と模擬戦を行い、完敗する。
     それ以来、武術交流会にヨシネや莉鈴が来ることはなかった。きっと、見放されたのだろう。

  • 523◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:14:01

     あの時集まっていた三人で、葉月だけが場違いだった。
     自分を天才と思いあがった、凡人。
     きっと、まだ子どもである二人にそこまで能動的な意識はなかったはずだ。
     ただ、彼女たちの師匠、ヨシネの父親(巌のような体格の壮年の男)や、莉鈴の師匠(十代にすら見える、美しい中国人女性)は、葉月の父よりストイックに見えた。
     自分の父親が幼馴染の師匠にあまり尊敬されていないことは重々承知していたし、きっと師匠の方針で、会えなくなったのだろう。
     その後、門下生たちの噂によれば、莉鈴は消息不明、ヨシネもまた両親が怪死してからは消息を絶ったという。
     二人とはもう二度と会えない。
     その事実を胸に、葉月はノスタルジーに浸る。
     この頃は、そんな風には思っていなかった。
     死闘の果てにヨシネのおにぎりに齧りつく莉鈴を見て、葉月は微笑む。
     二人とも、今はどうしているのだろう。

  • 524◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:14:40

     場面が、切り替わっている。
     葉月は、息を顰めていた。
     気配を殺し、そっと客間の様子を窺う小学生の葉月……といっても先ほどより二年ほど経っている。

    (ああ、挫折した頃か……)

     自身が同年代の剣術女子に、完敗した後の時代。
     やはり、奇妙な感覚だった。同じ肉体に二つの意識が宿っているかのようだ。
     十歳の葉月に、十五歳の葉月の精神が入り込んでいる。
     それでいて、行動そのものは過去をなぞったものだ。
     ガラス戸を僅かに開けて、葉月はそっと、客間の様子を覗いている。
     豪壮なソファに腰かけ、背中を向けているのは自身の父、葉介。
     対面しているのは抜刀道場師範、抜刀銀蔵と、その娘、金。
     一年前、葉月と葉介を完敗させた親子。

  • 525◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:14:56

     居合術と剣術という異色の対決であった。互いに防具を付け、武器は竹刀で向き合い、先に三本取った方の勝ち。居合術という奇襲を得意とする武術を試合という正面対決に持ち込む父の政治力と姑息さに十五歳になった葉月は感心すら覚えるが、当時はただ新顔の同年代の女の子に自分が凄いんだということを見せつけようとして——負けた。
     竹刀という居合にはおよそ不向きな武器をあてがわれたにも関わらず、金の居合は閃光めいていて、瞬く間に葉月は三本取られた。
     なまじ才能が多少はあった故に一本目を取られた段階で気づいてしまった。
     勝てない。
     齢十歳で、既にこの子は、葉月の父より強い。
     残りの二本は、勝ち負けを通り越し、もはや好奇心の世界だった。
     びっくり人間ショーを見ている気分だった。
     だから、三本取られた後、今まで見たことも無いほど激怒した父親に叱責され、ようやく葉月は、自身がとんでもない大罪を犯したことに気づいたのだ。
     父親の築いた名声に泥を塗った。
     獣のように吠えたてる父親は怖くて、それ以上に醜かった。

  • 526◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:15:22

     試合に負けたことより、父親のそんな姿を見てしまったことが辛くて、葉月は涙を零しながらトイレへ逃げ出した。
     途中すれ違ったヨシネと莉鈴は小声で言葉を交しており、きっとそれは葉月の弱さに呆れていたのだろう。
     トイレで散々泣き、涙を洗い流して道場に戻ると、父親が介抱されていた。
     抜刀銀蔵に三本取られ、三本目では無理な体勢で攻めようとし、こめかみに竹刀が直撃したらしい。
     騒然とした空気の中で、その日の武術交流会は終わった。
     父はそれから二度と抜刀家の話題は出さなかった。
     ——その抜刀家が、客間に居る。
     やつれた顔の抜刀銀蔵と、浮かない表情の金。
     以前あった時はずっと涼しい顔をしていた少女。

    「おたくらの道場が苦しいのは、俺も知ってるよ」

     と、父は言った。
     その声には愉悦が隠しきれていないことを、葉月は幼心に察していた。

  • 527◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:15:49

     銀蔵が頷き、隣の金は視線を机に這わせていた。

    「同じ武術家なんだ、俺としてもあんたがたを助けてやりたい思いがある」

    「で、では……」

     銀蔵の顔に喜色が拡がるが、葉介はまぁ待て、と手で静止した。

    「条件が一つある」

    「条件、ですか……」

     嫌だな、と葉月は思った。
     困っているなら助けてあげればいいのに。
     当時十歳の葉月はそう思った。
     十五歳の葉月なら、物事はそう簡単ではないと知っている。零細道場を立て直すには、かなりの資産が必要だ。それこそ金の延べ棒でも無いと。

    「どういった条件でしょうか……」

    「一年前に、おたくらと模擬戦をしたね。あれを——騙し討ちだったと公表してほしい」

    「なっ……!?」

  • 528◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:16:22

     銀蔵の顔が驚愕に変わる。
     葉月も、息を呑んだ。
     あれが、騙し討ち……?
     違う。
     銀蔵と葉介の試合がどうであったのかは知らないが、葉月と金の戦いは真っ当なものだった。真っ当に戦い、単純な実力差で金は負けたのだ。

    「そう、あれは騙し討ちだったんだ。お互いの長所を上手く披露し合えるようある程度約束があったにも関わらず、おたくらは一時の名声に目が眩んで、約束を無視して奇襲をしかけた。それが、あの事件の真相だ」

    「ま、待ってください……そんな約束、無かったじゃないですか!?」

     銀蔵は困惑と共に立ち上がる。
     黒檀のテーブルが揺れ、葉月は身体を震わせた。

    「だいたい、それを認めてしまったら、私の道場の信頼は地に堕ちます……! どうにか、他の条件というのは……」

    「おたくら、自分が何をしたのか分かっているのか?」

     葉介は怒気を発した。あの時のような、獣じみた怒り。

  • 529◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:16:45

     きっと一年間、父はこの怒りを内に秘め、育ててきたのだ。

    「うちの娘はぁ、葉月はなぁ、天才剣士としてプロモーションしてたんだよッ!
     無敗の美少女剣士としていずれうちの道場の広告塔になる存在だった。
     それをおたくらはぶち壊したんだッ!」

     ああ、何て身勝手な怒り。
     葉月は納得した。ヨシネや莉鈴が自分を見限った理由がようやく分かった。
     陣内道場は——あまりにも、武術からかけ離れた場所に居る。

    「陣内葉月は、試合では無敗なんだ。そういうことにならなきゃ、駄目なんだよ……!
     あんたも娘を持っているなら、俺の気持ちが分かるだろ!」

     その時、十歳の葉月は強烈な嘔吐感に包まれた。
     試合に負けた時より、父に怒られた時より、その何倍も、何十倍も、悔しさが襲ってきた。
     あの時のように逃げ出したい。誰にも見えない場所で泣き喚きたい。
     なのに、その場を動けない。

  • 530◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:17:05

     抜刀銀蔵は顔を白黒させながら惑っている。
     金はずっと視線を机に這わせていて。
     その視線が上に上がり、葉月の視線と交わった。

    (あ…………)

     見られた。
     刺すような羞恥心が葉月を襲った。
     違う、とガラス戸を開け客間に躍り出し、大声で喚きたかった。
     私はそんなこと思っていない。私は負けを消したいとは思っていない。勝者を貶めたくない。
     なのに、身体が動かない。ショックで金縛りになったかのようだった。
     金の瞳は、透き通るように綺麗だった。彼女の居合のようにどこまでも真っすぐで。
     すぅ、とその瞳が細められた。
     ああ。
     葉月は悟った。

  • 531◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:17:24

     きっと抜刀金の中で自分は剣士として雑魚であり、かつ父親に泣きついて負けを消そうとする我儘で卑怯な子供として見られたのだろう。
     軽蔑の視線。
     金は、もはや視界にも入れたくないとでもいった様子で葉月から視線を外した。
     そして

    「騙し討ちをして、申し訳ありません」

     感情を一切載せない声で、ソファから立ち上がり、その場に跪いた。
     そして、深々と頭を——。
     葉月は目を閉じた。
     彼女の姿をこれ以上見てしまうと、心が死んでしまうと思った。
     そしてぐちゃぐちゃになった十歳の葉月の中で、十五歳の葉月は、自身に起こっていることに、ようやく気づいた。
     ——これは、走馬灯だ。

  • 532◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:17:52

    投下を終了します……!

  • 533◆xaazwm17IRZa24/03/05(火) 01:29:46

    補足(蛇足)

    当時その場に居た三人の内心

    ヨシネ(な…なんだあっ)
    莉鈴(居合の相手は慣れてないと難しいヨ 葉月は経験足りなかったネ)

    金(年下の女の子にここまで居合を対応されるとは……世界は広いで御座るな)

  • 534二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 07:44:37

    うむ…経験値が足りないとスペックは活かされないんだなぁ

  • 535二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 08:41:34

    今回全方面に救いがないから読んでて辛くなってくる

  • 536二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 08:43:28

    育て方を間違えてると言ったんですよ陣内葉介先生 無敗の最強実戦派剣術謳いながら金や名声目当て優先で才能ある娘にトラウマを負わせてる描写はさすがにビックリしましたよ

  • 537二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 09:54:38

    そういえばハスキーロアは鼻がいいから
    ナサリーが隠した武器を発見できる?
    てか発見してくれないと学校に危険な武器が
    置いてあることに………事故がおきませんように

    ハスキーロアはお姉さんに魔法を押し付けられた…
    なら最後のあがきで葉月ちゃんがハスキーロアに
    魔法を譲渡する展開するか?いやもしかすると…
    ハスキーロアの魔法が魔法少女の模範
    つまりは魔法のコピーだった展開もあるか?
    武器にせよ魔法にせよ受け継ぐ展開がくれば
    少しは救いがある…ような気がするなんて

  • 538二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 14:05:29

    見返すとこの三人でチーム組んでたら初の危険人物無しチームが誕生してたのか…

  • 539二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 21:21:33

    超勝手なイメージだけど莉鈴ちゃん/ハイエンドはマギレコの純美雨を想像してる。親しい人とかペットには情が厚い感じが特に


    龍明さん/ブレイズドラゴンはあれだ。女体化した李書文(Fate)

  • 540二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 22:12:48

    >>538

    この3人がバトロワを機に再結集してればたいていの危険人物はもちろんテンガイにすらある程度食い下がれただろうに…

  • 541◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:52:20

    投下します……!

  • 542◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:53:00

     三度、場面は切り替わる。
     深夜の公園、キャッチボールしか出来ない程度の広さのそこに、十メートルを超える竜の死骸が横たわっている。
     竜は、額に二本の角が生えている。
     頭部には鬣じみた形状の器官があり、四足歩行の足は大樹のように太かった。
     竜は竜でも、恐竜。
     夜間にのみ出現する恐竜型エネミー。それが、十五歳になった陣内葉月の前で粒子化しているエネミーだった。

    「す、凄いです……」

     隣で感嘆しているのは、陣内葉月、魔法少女名ブラックブレイドの、年下の先輩、七海真美。

    「物理攻撃が一切通らないと分かったときはどうしようと思いましたけど、まさかブラックブレイドさんの魔法が——固体じゃなくても、切断できるなんて」

    「…………」

     はしゃぐ真美とは対照的に十五歳の葉月の顔は暗かった。
     同じ十五歳、正確にはこの時の半年後の葉月は思う。

  • 543◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:53:29

    (まぁ、ショックだよね……まさか発現した魔法が『なんでもぶった斬れるよ』……剣士である意味を無くしちゃう魔法なんだもん)

     魔法少女になれば、非才の身、紛い物の無敗でも使い物になるかと期待したのもつかの間。
     発現したのは剣術遣いである自分を否定するかのような魔法だった。
     何でも切断できる。そんな魔法があれば、ブラックブレイドの剣術スキルは意味を為さない。
     それこそずぶの素人でも、どんな剣士よりも威力の高い斬撃を放てる。何しろ、何でもぶった斬れるのだから。
     何て、無様。

    (これが、私の本性)

     ああ、きっと今なら抜刀金に勝てるのだろう。
     彼女の居合はあくまで技術であり、ブラックブレイドのようなインチキでは無いのだから。
     今しがた斬ったエネミーもそうだ。
     実態を持たない、幽霊のような恐竜。

  • 544◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:53:52

     剣士なら攻略不可能な敵だが、ブラックブレイドにかかれば、一方的に切断できる。
     刀の届く距離なら、無敵。
     相手が硬かろうが、実体が無かろうが、斬れる。
     当時の葉月は知る由もないが、半年後には斬撃も飛ばせるようになる。
     いよいよ外道も極まれりだ。
     真の武術家が連日死ぬような鍛錬をしても会得できない技術を、たった半年で。

    「あれ、ブラックブレイドさん、なんだか浮かない顔してますけど……」

     心配そうに真美が覗き込んでくる。
     優しい子だと、ブラックブレイドは知っている。
     助けたいという気持ちの大きさだけ強くなる。そんな主人公みたいな魔法を発現した子。
     自分のような敗北を後から覆す外道とは大違いだ。

    「どうかしたんですか……?」

    「いえ、少し、迷いがあって……」

  • 545◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:54:17

     抜刀金との経緯は話せない。
     だから、真美を嫌な気持ちにさせないように……それは欺瞞だ、失望されないように、当たり障りのない返答をする。

    「私は、今まで剣術をやって参りました。けれど、私の剣術はこのエネミーにはまるで通用しなかった。結局付け焼刃の魔法で事は納められましたが……今までの剣術修行は何だったのかと、すこし憂鬱になりまして」

    「うーん……」

     と、他人事にも関わらず、真美は深刻そうに悩む様子を見せる。

    「……でも、結果として、エネミーは倒せたわけですよね」

    「ええ、まあ」

    「確かに、ブラックブレイドさんの剣術だけじゃ、このエネミーは倒せなかったかもしれないです。けど、事実として、ブラックブレイドさんの魔法で、エネミーは倒せたわけで、それで、ええっと」

     真美は拙くも真剣に言葉を選び、ブラックブレイドに伝えようとしている。だからブラックブレイドも、この年下で優しくて頼りになる先輩の言葉に耳を傾けた。

  • 546◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:54:41

    「ブラックブレイドさんが剣術頑張ってたのって……将来恐竜の幽霊を倒すため、ってわけじゃないですよね」

    「……ええ、まあ」

     褒められたかったから。たったそれだけの理由だった。

    「じゃあ、いいんじゃないですか。陣内葉月さんと、ブラックブレイドさんは別で」

    「別……?」

    「たぶん、剣術始めたのって、陣内葉月さんにとって、何か大切な理由があったと思うんです」

    「買い被りすぎです……。私はただ……」

    「けど、ブラックブレイドさんがこの街に居るのは……」

     真美はにっこりと笑みを作った。

    「きっと、誰かを助けるためですよ」

     誰かを助けるため。
     真美の言葉は、ブラックブレイドの心を揺らした。

  • 547◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:55:03

    「私は思うんです。どうして私たちは魔法少女に覚醒したんだろうって。人によって理由は様々ですけど、けど魔法少女は、そうじゃない人には出来ないことが出来るのは確かなんです。じゃあきっと、私たちは、誰かを助けるために魔法少女になったのかなって」

    「誰かを、助けるため……」

    「エネミーは、人を襲うこともあります。だから、発見したら早急に退治しないといけない。そして、今この場にブラックブレイドさんが居なかったら、退治は出来なかった。私は死んでたかもしれないし、街の人々にも犠牲者が出てたかも」

     だから、と真美は続ける。

    「気兼ねなく魔法を使っていいと思うんです。どんどん強くなって、どんどんチート魔法になっていいと思うんです。それで、助けられる人が増えるなら。
     何でも斬れるようになれば、きっと何でも助けられるようになるから」

    「……いいのでしょうか。私みたいな者が強くなっても」

    「いいんですよ! ……実生活とか、その、試合とかで使っちゃ駄目だと思いますけど……。けど、私たちにしか出来ないことがあるなら、私たちが強くなることにひけめを感じる理由は無いと思います……!」

  • 548◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:55:21

    「……陣内葉月と、ブラックブレイドは、別か……」

     なるほど、そう思えば、この外道な魔法も、受け入れられるかもしれない。
     褒められるためでも、父を喜ばせるためのものでも、幼馴染を繋ぎとめるためのものでも、試合に勝つためのものでもなく。
     魔法は、誰かを助けるために。

    (ああ、そうだ。だったら私は——)

     まだ、死ぬわけにはいかない。
     何でも、斬ってやる。

  • 549◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:55:47

    (…………帰って来た)

     目を開く。
     全身が悲鳴を挙げている。
     腕を見る。
     装束は破れ、二の腕は焼け爛れている。
     ゆっくりと起き上がる。痛い。重い。熱い。
     きっと全身、酷いことになっている。そういえばここは夜の学校だったっけ。お化けだと、思われるかも。

    (いや、もうお化けみたいなものかな)

     実感する。致命傷だ。
     飛んできた砲弾を斬撃で迎撃できたまでは良かった。けど、抜刀金のようにはいかない。所詮未熟な陣内葉月の剣。
     無力化するには反応が遅すぎた。結果、砲弾は爆発し、自分とハスキーロアは吹き飛ばされた。

    「そうだ……ハスキーロアは……」

     周囲を探る。
     居た。
     一度視た、黒髪の長身女性が、火傷を負って倒れている。

  • 550◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:56:10

     ——気を失っているが、命に別状は無いはずだ。

    (守れた……のかな)

     いや、まだだ。
     まだ敵は残っている。
     給水機を見上げる。
     彼我の距離はどれ程か。
     500m以上はある。
     剣士が意味を為さない距離。
     きっと抜刀金でも、手も足も出ない距離。
     けど、ブラックブレイドなら。

    (誰かを助けるためなら、いくらでもズルしていい……)

     認めよう。自分の本性を。
     きっと、何でも斬れる魔法は、私のトラウマが元に発現している。
     何をいっちょ前に傷ついているのだろう。勝利を覆され、騙し討ちのレッテルを貼られ、俗物に頭を下げた抜刀金の方がよっぽど傷ついただろうに。

  • 551◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:56:31

     それなのに被害者ぶって、こんな魔法まで発現して。
     本当に無様で滑稽で、生恥だ。
     けど。

    (あの敵を生かして置いたら、もっと犠牲が出る)

     真美ちゃん先輩や、大勢の魔法少女が。あるいは街で暮らす人々に。被害が出るかもしれない。
     だから。

    「——斬る」

  • 552◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:56:47

     メンシュ・パンツァー。上半身から口部にかけてが骨を材料とした砲弾を撃ち出す長大な砲身に、両目にあたる部分がスコープと化した、迷彩柄の鱗で覆われた人型の異形。魔法王によって放たれた、ボスエネミーの一体である。
     異形の狙撃手に、感情は無い。
     ただ、与えられた命令に従い、魔法少女を攻撃する機構。
     それでも、知恵はある。狙撃手の下半身は人型であり、その脚力は常人を遥かに凌駕する。故に、人間の狙撃手と違い、撃った後、即座に場所を移動し、すかさず二撃目を放てる。
     一撃目でナサリーブラウンを殺し、その後得物の動きを予想し場所を移動。工場の屋上からマンションの給水塔まで人間離れした跳躍と疾走で移動し、予想通り後者の裏側に逃げ込んだ獲物に二撃目を放った。
     直撃する前に魔法で防がれたが、誤差の範囲である。
     異形の狙撃手の砲弾は、魔法少女を絶命させる威力がある。
     全知全能を一殺したミストアイの下位互換であるとはいえ、メンシュ・パンツァーもまた、多くの魔法少女にとって脅威に数えられる。
     何よりその感情を排した冷酷さは、こと殺戮という面においては、ミストアイより優位であるとも言えるだろう。
     緩慢に立ち上がったレオタードの少女に対して、メンシュ・パンツァーは無感情に照準を合わせる。
     そして、砲弾を発射しようとし。

  • 553◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:57:06

     少女の姿が、スコープから消失する。

    「遅いよ」

     声は、頭上から聞こえた。
     メンシュ・パンツァーが上を向こうとする。
     が、それは永久に為されなかった。
     狙撃手の砲身も、スコープも、人間を模した下半身も。
     刹那の間に、無数の肉片に分解されている。
     まるでシュレッターにかけたかのように。徹底的な破壊。徹底的な切断。
     ——徹底的な斬撃。
     キン、とブラックブレイドは納刀を終えた。
     同時に、賽子ステーキ状に斬られたメンシュ・パンツァーの身体がマンションの屋上に散らばる。
     ブラックブレイドは月を見上げた。
     瀕死である。
     もうすぐ死ぬ。

  • 554◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:57:27

     けれど、死の狭間で掴んだ。
     きっと、本来ならもうしばらくの修練の果てに会得した領域。
     自身の魔法の真髄。
     『なんでもぶった斬れるよ』。
      鉄でも、刀でも、恐竜の幽霊でも、砲弾でも。
     ——空間さえも。
     給水塔まで遠かった。だから、ブラックブレイドは、給水塔までの距離を『斬って』、瞬時に移動した。
     空間だけではない、とブラックブレイドは直感する。きっと魔法も斬れる。
     もっと色々斬れると、理解できる。「不死」、「転生」、「呪い」、「因果」といった概念的なものまで、断ち切れる気がする。否、事実として断ち切れる。
     ブラックブレイドは笑みを浮かべた。
     自分のような半端者に、こんな神に等しい魔法が与えられていいのだろうか。
     ——いいのだ。
     きっと、今、ブラックブレイドが覚醒したのは、意味がある。

  • 555◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:57:49

     もうすぐ死ぬとしても、無駄ではないはずだ。
     何故なら。

    「今のうちは、何でも斬れる……」

     だから。

    「このゲームを、斬る」

     そう念じるだけで、ブラックブレイドはぼんやりと、ゲームの輪郭を掴むことが出来た。
     魔法少女たちは呪われている。この呪いのせいで行動を制限され、ゲームから脱出できない。
     ならば、呪いを断ち切ろう。
     自身の呪いではない。後数分の命の者を解放しても、意味が無い。
     斬るのは、個々人の呪いではなく——その大元。
     根本を、斬る。

    「——斬」

     ブラックブレイドは抜刀する。

  • 556◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:58:26

     そして、全参加者を束縛する楔を断ち切ろうとし——。
     ——刀が、振り下ろせない。

    (身体が、動かない……!)

     遂に限界が来た、わけではない。
     まだ生命は残っている。余力を、出し尽くしたわけではない。
     けれど、身体が動かない。

    (これは、一体……!?)

    「あーしはさぁ……」

     と、背後で声が響いた。
     ブラックブレイドは振り向こうとしたが、金縛りにかかったかのように動けない。

    「あんまり出張りたくないんだよね……」

    (誰だ……?)

     声色からして、ギャルである。
     だが、ギャルのイメージである明るい、軽い、前向きといったポジティブな印象はまるで無い。

  • 557◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:58:51

     どこまでも沈痛で、奈落のように重い声で、背後の女は憂鬱げに言葉を響かせる。

    「出来るだけ自主性に任せたいっていうか……そうしないと儀式の完成度が下がっちゃうし……あいつの対処もしなきゃだし……面倒なんだよね」

    (どうして……どうして動けない!?)

     今のブラックブレイドは何でも斬れるはずだ。
     今、拘束されているのは、きっと背後に居る女の魔法だ。ならば、切断できるはずだ。
     それが出来るだけの魔力は残っている。
     なのに、斬れない。
     概念だろうと、斬れるはずなのに……!

    「あー……君の魔法じゃ、あーしは斬れないよ……今、君はあーしの『支配下』だし
    ……」

    「っ……!?」

     支配下。やはり、魔法によるもの。

    「魔法だったら、今の私は斬れるはず、なのに……」

  • 558◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 01:59:18

     支配する魔法ごと斬って、どう考えても危険人物である背後の女を斬る。それが出来るだけの力が、ブラックブレイドにはある。

    「無理だよ……」

     と、背後の女は吐き出すように言った。

    「相性バトルは……同次元の存在でしか、発生しない……。君があーしと同じ場所に立てば、相性で君が絶対に勝つだろうけど……まだ君は、天蓋に触れた程度……天上には辿り着けていないし……」

    「な、何を言っている……!?」

    「こっちの話……序盤でもう天蓋まで迫られてるの、マジ怖いけど……まぁ、始めた以上はさ、あーしも頑張るよ……」

     頑張る、という言葉とは無縁そうな雰囲気を漂わせながら、背後の女は身勝手に言葉を紡いでいく。
     ブラックブレイドに、女の言葉を考察する余裕はない。
     今この瞬間にも、絶命してもおかしくないのだ。
     たくさんの人を助けるはずだった時間が、無為に消費されていく。

    「くそっ、くそっ、畜生……っ!」

  • 559◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:01:05

     脳裏に、様々な顔が浮かぶ。ヨシネ、莉鈴、父親、金、真美、ナサリー、ハスキーロア。

    (諦めて、たまるかっ!)

    「————斬ッッッ!」

     残りの生命力全てを費やし、ブラックブレイドは刀を振り下ろした。
     果たして身体は動いた。
     それは、女の言う天上に、ブラックブレイドが辿り着いたからか。あるいは、女の支配に、何らかの欠陥があるのか。
     理由は分からない。
     ただ無我夢中で、呪いの根本を断ち切るべく、ブラックブレイドは刀を振り。
     さくり、とその首が胴体より離れた。
     力なく胴体は崩れ落ちる。呆然とした表情のまま首は屋上を転がり、月を見上げ静止した。
     その様を、女は怠そうに見守り。
     興味を失ったかのようにその場を後にした。
     やがて全ては粒子へと還り、屋上には何の痕跡も残らなかった。

    【陣内葉月/ブラックブレイド 死亡】
    【残り 35人】

  • 560◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:01:26

     二度の砲撃音は、学校周辺に住む者たちの眠りを妨げ、喧騒させるのに十分だった。
     何があったのかと不安に駆られた住民たちは高校へと集まる。
     破壊された校舎。
     そして、火傷をして倒れている女性が一人。
     救急車に載せられながら、犬上沙美は涙を流していた。
     意識は無い。ブラックブレイドが亡くなったことを、彼女はまだ知らない。
     きっとそれは、無意識によるものだ。
     あるいは、犬系魔法少女に変身する彼女は、人間態でも微かに魔力を感知できるのか。
     それとも。

    「……………………ぶった、きる…………」

     かつて姉の魔法少女を引き継いだように、何かを引き継いだのか。
     病院へと走る救急車の中で、沙美の意識はただ、深く沈んでいた。

  • 561◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:01:49

    12話投下終了です……!

  • 562◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:02:30

    13話登場キャラ数生存ダイスdice1d4=3 (3)

  • 563◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:03:16

    13話は3人の魔法少女が登場します……!


    登場するのはdice3d44=27 19 19 (65)

  • 564◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:04:11

    30.蜂矢 恋蜜/ハニーハント
    22.大川 羽蘇/オオカワウソ
    23.木羽 マミ/ビリーバー
    が登場します……!

  • 565◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:06:03

    【蜂矢 恋蜜/ハニーハント】

    生存ダイスdice1d100=93 (93)

    絆ダイスdice1d44=37 (37)

    関係性dice1d100=77 (77)


    【大川 羽蘇/オオカワウソ】

    生存ダイスdice1d100=30 (30)

    絆ダイスdice1d44=11 (11)

    関係性dice1d100=37 (37)


    【木羽 マミ/ビリーバー】

    生存ダイスdice1d100=28 (28)

    絆ダイスdice1d44=36 (36)

    関係性dice1d100=92 (92)

  • 566◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:09:12

    【蜂矢 恋蜜/ハニーハント】

    生存ダイスdice1d100=93 (93)

    絆ダイスdice1d44=37 (37)→王城 姫子/クィーン

    関係性dice1d100=77 (77)→まぁまぁ好き



    【大川 羽蘇/オオカワウソ】

    生存ダイスdice1d100=30 (30)

    絆ダイスdice1d44=11 (11)→ナサリーブラウン

    関係性dice1d100=37 (37)→まぁまぁ嫌い



    【木羽 マミ/ビリーバー】

    生存ダイスdice1d100=28 (28)

    絆ダイスdice1d44=36 (36)→らいと/フライフィアー

    関係性dice1d100=92 (92)→大好き


    以上の情報を元に第13話を作成します

    舞台は、あにまんマンションです……!

  • 567◆xaazwm17IRZa24/03/06(水) 02:12:34

    〇申し訳ありません、明日は投下できないです……!

    〇あにまんマンションのギミックや怪異を募集します……!

    〇毎回10時頃に書き始めて投下が1時~2時になっているので、もう少し分割して投下しようと思います……! ご了承いただけると幸いです……!

    それでは、本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……! 皆さんの感想から次の展開を思いつくことが多いので、とても助かっています……!

  • 568二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 04:19:12

    【名前】エレベーター
    【概要】見た目は窓の無いごく普通の少し汚いエレベーターだか内部のボタン配列がおかしく、4のボタンが取られた1〜19のボタンと9段階のダイヤルがあるこれを操作して指定の階を自由に移動できる
    基本的に怪異が湧かず安全地帯だか何故か壁一面血と臓器が捨てられた、意味の分からない無数の落書きが書かれた、まるで500年以上“後”の様に劣化した、ボロボロに壊された、おかしなエレベーターたまに来るらしい
    画像はイメージ画像

  • 569二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 05:56:46

    このレスは削除されています

  • 570二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 05:58:17

    名前付いたままだったので

    【名前】ひとりの部屋
    【概要】ようこそ
    ・1人だけで部屋に入ると、背後から『だれか』がゆっくり近づいてくるよ。
    ・部屋には入った人の欲しいものや探してたものがたくさんあるみたい。でも1人で行かないと無いらしいね。
    ・『だれか』が近づくとその周りがどんどんおかしくなっちゃうよ。でも振り向くと元通りになるんだって。
    ・部屋から出るまで『だれか』は近づいてくるよ。
    ・『だれか』が誰なのかは分からないよ。魔法でも分からない。でも犬系魔法少女の直感とかなら異変がわかるかも?
    ・『だれか』に捕まったら消えちゃうよ。どこに消えるのかは知らないけど、噂だとこのマンションにいる怪異として『リサイクル』されてるらしいよ。

    ・人取の部屋。おそらくミミック亜種。意図的に組み込まれたのか、偶発的に現れたのかは不明。1人で入るな。すぐに出ろ。どうしても欲しいものがあるなら別だが…

  • 571二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 06:45:50

    乙でした~ パラサイトドール鬼つええ!

    ・以下考察
    テンガイ =『天蓋』が現参加者内における実力トップを表す名前なのは間違いなさそう(パラサイトドールが名付け親?)
    で、わざわざそのテンガイを引き合いに出してまで『天上』の話を始める辺り、実力でテンガイを超える魔法少女=天上に至る存在がパラサイトドールの行動原理、ひいてはバトロワの開催理由と結び付いてるのかなーと

  • 572二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 07:43:18

    【名前】茶室
    【概要】お茶を淹れて飲むだけの部屋
    淹れるのはお茶ならなんでもよく、緑茶ても紅茶でも麦茶だろうが構わない
    ただし、それぞれのお茶に対応した作法で淹れ、飲まなければならない
    間違った作法だと何かしらのデメリットを付与される
    例として一定期間体の一部や魔力が封印されたり、直接ダメージだったり条件を満たせば死亡する呪いにかかったり
    なぜか抹茶だけは異様に厳しく、少し間違っただけで即死させられる
    マナー違反が酷くなるほど刑も重くなる傾向がある

  • 573二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 07:43:36

    【名前】411号室・赤松さん宅
    【概要】赤松華さんの住まうお部屋
    実に普通のマンションの部屋っぽいが、水道やガスをはじめありとあらゆる場所からエネミーが出没する上、ポルターガイストや重力異常などの超常現象も発生する
    赤松さんは基本的に味方でいてくれるが、悪意を持って接すると敵対する
    【名前】赤松華
    【概要】銀髪で背が高い褐色の女性、ツノがあり巨大な白い翼を持つ
    耐久力が非常に高く、触れたものを強制的に破壊する能力がある
    部屋からは出ようとしないし出られない

  • 574二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 07:48:23

    この出目だとハニーハントは安泰か

  • 575二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 09:20:29

    【名前】透明なレ◯ブロック
    【概要】そのままの通りでマンションの部屋内と廊下とかにばら撒かれてる。近くに「足下注意」の看板を見つけたら高確率で存在する。光源があれば影ができるのでそれも参考に。
    生命の範疇にあるもの又はエネミーが踏むと堪え難い痛みと共に少々のダメージを与える。

  • 576二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 09:26:08

    この出目と魔法の感じだとビリーバーちゃん死にそう…

    マンション内の怪異&エネミー案
    【名前】
    ウォールマン
    【説明】
    かつて内部で死亡した者達の想念が、マンションの特異性ゆえにあの世へ逝くことなく壁の中に取り込まれた哀れな犠牲者達。マンション内部の至る所に存在する。
    既にまともな思考力は失われており、生きている探索者達へ恨み言をぶちまけながら壁の中へ取り込もうとしてくる。

  • 577二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 09:30:03

    ハニーハントは確定生存
    残り二人は出目的に厳しいかもしれない

  • 578二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 11:05:17

    概念も含めた絶対切断は割とぶっちぎりなんだけどあと1段階が足らなかった、過去の描写からこの最期は無念すぎる。ハスキーロアの描写的に魔法の掘り下げによっては継承も絡めた立ち回りも出てきそうか。
    そして次回は怪異展開かマンション内でのドンパチか。先が読めないですね、楽しみにしてます!

  • 579二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 13:46:33

    葉月ちゃんの想いや記憶も受け継いでくれてたらいいな
    金ちゃんと沙美ちゃん知り合いだし、機会があれば沙美ちゃんを通じて和解してくれたら嬉しい

  • 580二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 14:27:34

    【名前】
    心臓部
    【説明】
    あにまんマンション最奥部に位置する巨大な心臓。
    これを破壊するとマンションは〝死亡〟し、全ての機能が停止するが、マンション側もあらゆる手段を用いてこの場所への到達を妨害する。
    運営側の魔法少女によってあにまん市の霊脈(龍脈、気脈)と接続するよう改造が施されており、運営の本拠地とこの部屋はワープゲートで通じている。

  • 581二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 15:06:35

    マンション内の怪異&エネミー案
    【名前】
    大きくて醜い恐ろしい化物“だった”もの
    【説明】
    星を渦巻くほど大きく貪婪で山の鉄石や動植物はもちろん、金銀財宝といったあらゆるものを喰らい、神、闇、無をも喰らう獣として恐れられたとされ、挙句の果てには自分自身すらも喰らう怪物であったが…が今では小さな部屋に閉じこもってテレビに縋り付き過去に縋り付く哀れなでちぽっけな化け物だ…
    『奇跡も、魔法も、あるんだよ』

  • 582二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 15:29:22

    マンション内の怪異&エネミー案

    【名前】

    貴方の良き友人☺

    【説明】

    白い人型のエネミーで親切にこの“マンション”の事を教えてくれるます☺

    私達の使命はこの“世界”のマンションを破壊する事です☺

    私達に手伝ってください、心臓部を破壊したら全てが終わります☺

    どうかお願いします☺

    そんな訳ないだろこのイカレ野郎ども、いいかこんなゴミ野郎共の言う事は信じるないいか?絶対にこの世界のマンションは壊すな!もし壊したら世界が“埋まる”良いかこれはお前らの為に言っているんだ!アイツらに餌をやるな!信じるな!

  • 583二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 16:04:05

    【名前】危(アブ)
    【概要】「危」の字を踏むと、突然現れた恐ろしい表情の少年が乗る自転車に撥ねられる。一見魔法少女なら軽くいなせるように見えるが、衝突の衝撃は大型トラックの数倍だ。



  • 584二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 16:22:00

    怪異?魔法少女?案
    【名前】
    A
    【説明】
    血と肉と臓器が詰まったタンクを背負い血で汚れた青色の作業服とズタボロの目元まで隠れるキャップと片耳だけのケモ耳と引き裂かれた尻尾全身ズタボロの古傷だらけの女性
    主にマンションを壊そうとする奴を“拒絶”することでマンションから追い出している
    魔法を使う事が出来、拒絶と複製が得意だと言っている
    自称未来人だと言っているが良く分かっていないそしてオオカワウソに複雑な想い抱いているが関わらない

  • 585二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 16:45:09

    ぶっちゃけ>>514で言われてるけど魔法少女同士のバトロワがメインのスレで凝りすぎた舞台に凝りすぎた怪異とか出しても絶対に扱いきれないのでは

    他の魔法少女視点の描写の比重がメチャクチャになりそうだし

  • 586二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 17:03:52

    >>585

    無貌、最強、天外、魔法の国etc.…そうだね!

  • 587二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 17:31:58

    まぁあんま杞憂ばっかするよりはアイデア書き込む方がいいと思うけどな
    あんまり数あっても持て余すだろうが、全部使わなきゃいけない訳じゃないし
    スレ主はちゃんと主役が誰かはわかってるからダメそうなのは弾いてくれるよ

  • 588二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 18:11:27

    >>585

    一回使ったエリアは再利用されないっぽいし今回だけじゃないか

    あと出目的に確定生存のハニーハント以外はまぁ死にそうだし、死亡者出る回は必然的に尺取れるからね

  • 589二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 18:20:29

    【名前】0.5階
    【説明】マンションの階段を上っていくと、階と階の間に時折現れる異常な階層。
    特に直接的な害はないが、当該階では『自分がいま何階にいるのか』を自覚することができない。

    案出しはこのくらいシンプルでいいと思っている

  • 590二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 18:27:58

    >>588

    仮に再利用されるにしても街中で出せないエネミー出すとか何だろうか…正直言ってバカでかい奴とか無差別に暴れる奴が町にいても一般人は何も知りませんって思わないだよな

  • 591二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 19:35:37

    12話ラストを見た感じ、ハスキーロアに魔法少女の力を押し付けた姉ってブラックブレイドみたく死んでたりして
    9歳の沙美には自分に魔法少女の力を押し付けて留学していったように見えてただけで実は…みたいな

  • 592二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 19:58:06

    だとするとハスキーロアってか沙美ちゃん自身の魔法は死者から魔法を受け継ぐってやつの可能性が出てくるな
    こんな現象そう起きないくらい珍しいだろうし、そんな珍しいのが一人に二度も起こってるならその一人がおかしいと考えた方が自然

  • 593二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 22:24:03

    そもそもこいつら殺し合うのか?ハニーハントは恋人の為で殺しそうだけと、探索好きのオオカワウソとオカルト好きのビリーバーは寧ろ協力しそうな感じだと思うだけど?

  • 594二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 23:40:25

    【名前】
    サロンスペース
    【説明】
    テレビ、椅子、テーブル、雑誌類を一通り揃えた部屋でそれ以外は質素な作り。変わった所はどんな無茶なリクエストでもドリンクにしてその場で提供するサーバーが設置されている、こと。それ以外は特に変哲もない。

  • 595二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 07:12:12

    ハニーハントのスタンスがどっち寄りかは気になるよね
    優勝を狙ってる以上は敵対ルートなんだろうか

  • 596二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 10:05:37

    スピードランサーみたいなケースかもしれん

  • 597二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 10:58:46

    案外ハニーハントはマンションに入らずオオカワウソとビリーバーがマンションに入って死ぬとかありそうだよね

  • 598二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 11:06:06

    >>597

    確かにそもそもあのマンション、入らなきゃ害が無いタイプだからハニーハントはマンションを無視して初恋の人探しに専念するとかありそうだよね

  • 599二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 13:51:16

    このマンションの危険性ってどのぐらい知られてるんだろうね

  • 600二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 15:53:47

    【名前】
    ただのプール
    【説明】
    間取りを無視して唐突に出現する地下プール。
    見た目はただの25mプールだが、奥行きも水深も無限に広がっている。
    反面、特に危険性はなく、水温も快適な温水に保たれており保養にピッタリ。
    運営の魔法少女もよく訪れるらしい。

  • 601二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 17:16:12

    【名前】
    ライブラリー・フォー・イディアツ
    【説明】
    入った人によって構造がかわる意思を持った図書館
    ありとあらゆる物を知ることが出来るが…凄く馬鹿にされる滅茶苦茶コケにされてマウントを取られ続ける
    具体的には図書館に入った頭に強制的に『アイアムアフール』書かれた三角コーンを被され、本を読む度に小言を言われ続けるかアナウンスで自分の過去を音読されて酷評される
    本を外に持ち込もうとするとアイアムアフール』書かれた三角コーンが脱げなくなり常に耳元でクソほど役に立たない知識を囁かれ本を戻すことで解除されるが滅茶苦茶煽られる

  • 602二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 20:36:19

    マンションエネミー案
    【名前】
    魔擬き
    【説明】
    魔法の国に生まれた人であるもの、魔法と魔力が一切ない人間
    魔法使いにもなれず魔法少女にもなれない為魔法の国の住民から迫害され逃げるが通常世界ではまともな衣食住もないため家賃が少なくある程度は自給自足が出来るあにまんマンションに集まって住んでいる
    そして大なり小なり魔擬き達は魔を全てを憎んでいる

  • 603二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:04:01

    【名前】∞階(はちかい)
    【説明】一見すると何の変哲もない階だが、廊下と部屋が不規則に連なった構造をしていて行き止まりが存在せず、扉さえ開ければどこまでも進んでいける
    号室を表すプレートが横に90°傾いてついているのが特徴。たまに重力が90°傾くイベントが起こる

  • 604二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:09:08

    【名前】水没フロア
    【説明】通常のフロアと構造は同じだが、廊下がごく微妙な下り坂になっており奥に進むほど少しずつ水位が上がってゆく。水は心地よい温かさである
    完全に水没したドアを開けると「ただのプール」に移動する

  • 605二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:09:26

    面白そうな事やってるなと思ったらとっくの昔に募集終わってた悲しみ
    意外と研究者キャラ居ないなと思って、便利そうな敵(運営)キャラの魔法少女案だけ置いときます

    【名前/魔法少女名】トート・アリア
    【変身前・変身後の外見】親衛隊(SS)の将校服の上に白衣を羽織った金髪シニヨンに碧眼の少女(常に変身しているので変化無し)
    【年齢】105歳(見かけの年齢は15歳)
    【趣味/魔法少女としての日課】手術、研究、コーヒーを淹れること
    【好きなもの】魔法少女への理解
    【嫌いなもの】無知、無学な輩
    【性格】理知的で穏やか且つ非常に仲間想いだが、それ以外には冷酷そのもの。
    【得意な魔法】
    『神経に触るよ』
    自己の神経組織を硬質化させ、鋼鉄をも切り裂くワイヤーカッターとして(主に手足の指先から)放出して操る魔法。
    魔力を巡らせて結界を張ることができ、あにまん市の全域に張り巡らせる事で情報収集を行っている。
    人間やエネミーの脳から神経へと送られる信号を魔力で書き換えることで、操り人形に作り替えたり、痛みの信号を増幅させて拷問を行ったりする。
    【魔法少女になったきっかけ】
    元はナチスドイツの軍人で、魔法少女の研究を行う過程で人工的な覚醒を果たした。
    【詳細】
    運営側の魔法少女。
    『魔法少女を超えた存在』へと至ることが夢。
    主な仕事は情報収集と魔法少女にまつわる研究だが、元は軍人なので前線へ打って出ることも吝かでない。

  • 606二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:19:17

    【名前】サーバールーム
    【説明】特殊な手順を踏まねば行けない部屋。
    この部屋にあるコンピューターの一つ一つが参加者の肉体情報や記憶、魂と繋がっている。今もほら、また一つランプが消えた…

    【名前】「管理人」
    【説明】サーバールームを徘徊する存在。サーバーの破壊や改竄を見咎められた場合厳しく罰せられるが、見回りはわりと節穴。

    【名前】「を探している」
    【説明】マンション内に現れる手配書のようなもの。対象は毎回ランダム。条件に合う者が目の前を通るとなにか起こるらしいが、手配書についた目の視界に入らなければ問題はない

  • 607二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:46:13

    マンション住みの人間?案
    【名前】
    黒贄 山羊
    【説明】
    グルグルお目目の茶髪の何故か頭から羊の様な角と耳が生えた少女とあるカルト宗教を信仰していて日夜住民に勧誘をしている
    信仰したらカニバリズム、人身御供、肉体の増生、魔術、次元操作、そして他世界存在との契約等が出来ると言っているが真偽は不明、そして彼女曰くこの世界いる【はくちのおう】の成り損ないを食う事で自身の神格化させることらしい
    嫌い物は魔法と機械と魔擬きと言われること
    「貴方も“ナラカ”に入りましょう、■■■様の力を使えば私たちは魔法を超越した存在になれます…どうですか?」

  • 608二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:50:42

    マンション内だから心理戦とか閉鎖空間を活かした戦いになると予想してみる

  • 609二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:51:05

    【名前】
    404号室
    【説明】
    部屋に踏み入った時ごく低確率で繋がる、ただひたすらになにもない虚無の広がる空間。間違って落ちないよう気をつけよう

    【名前】
    502号室
    【説明】
    扉を開けても壁しかなく、部屋に入れなくなる現象。数分待つと入れるようになっていることが多い
    重篤な時空間異常が発生した場合、エレベーターを含むすべてのドアがこの番号となりどこにも移動できなくなる

  • 610二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:53:56

    >>608

    そうなるとマンション探索のベテランであるオオカワウソに一日の長があるよな…

    初見殺しギミックとかうまく使って攻撃してきそう

  • 611二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 22:57:00

    マンション内のエネミー案。迷宮って話なので
    【名前】
    ミノタウロス
    【説明】
    大量の人間を乱雑に貼り合わせて組み上げられた巨躯の怪物。素材になった人間達は常に苦悶の叫び声を上げながら助けを求めている。
    巨大な両刃斧を振るい、マンションの地形を完全に無視して壁を透過しながら探索者を追撃する。
    いわゆる世界樹のF.O.E的存在。

  • 612二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 23:03:37

    マンションの案
    【名前】
    【はくちのおう】の成り損ない
    【説明】
    マンションの深く深い9223372036854775807階に封印されている
    もともとは「マンションという場を通じて現世への顕現を試みた外神」であったが肉の器が魔法少女化して拒絶反応を起こし残された器は唯虚空の偶像、知性を持たぬ肉塊となったが今でも強い力を持っているようだ
    『きせきもまほうもあるんだよ!』

  • 613二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 23:04:30

    【名前】
    101号室
    【説明】
    様々な拷問器具が置かれた拷問部屋
    踏み入れた者は己の持つ最悪の悪夢・恐れ・恐怖症にさらされることになる

    元ネタはイギリスの作家ジョージ・オーウェルの小説1984年に登場する拷問部屋

  • 614二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 23:14:44

    【名前】i階
    【概要】点滅する蛍光灯が広がるフロア。
    この階に通常の方法でアクセスすることはできない。
    唯一の入り口はエレベーターだが、降りた瞬間扉が消失する。バトロワから逃れて引き籠もりたい人におすすめ。出口はない。

  • 615二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 23:18:00

    【名前】無限エレベーター
    【説明】下行きのエレベーターに乗ったとき、操作を間違えると低確率でどこまで行っても止まらなくなる

    【名前】地階
    【説明】くらくてさむいところ
    無限エレベーターの終着階

  • 616二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 23:36:06

    >>571

    目的が何なのかはわからないけど「儀式の完成度」って言ってるしやろうとしてることは完全に蠱毒だよね…

    テンガイが桐生ヨシネの心臓を求める理由とも関係してくるのかな

  • 617二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 00:06:29

    クトゥルフ神話関係の子結構多いね

  • 618二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 08:05:01

    そろそろ保守

  • 619二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 11:55:06

    あにまん市の地名案
    【名前】豈満神社
    【説明】茶羽落谷の奥地に入ってすぐの場所にある100年以上前から放棄されている神社
        祭られているのは紫色の身体と三本の角を持つ怪生物で嘔吐する時の音にも似た声を発するとの言い伝え
        理由もなくリニンカ・ネッカーピンによって一度破壊されたはずだが翌朝には元通りになっていたという伝説がある

  • 620二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 12:03:51

    >>617

    何かオオカワウソとあにまんマンション、TRPG味があるんだよね

  • 621二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 12:27:14

    >>620

    たのしいーのために動くけど攻略ガチ勢のオオカワウソと自分以外信用せず踏んだり蹴ったりだけど他人を全力で媚びて騙して勝ち抜くああああ、そう考えるとTRPGの方針に似ているね

  • 622二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 13:11:21

    もうこのマンションだけでも物語ができそうなボリュームしてる…

  • 623二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 13:30:08

    元ネタが強めなのもあって物語に設定からめちゃくちゃ干渉してくるオオカワウソ
    前作のマネモフルといいこの手のキャラがしっかり浮かないのがすごい

  • 624二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 13:52:26

    確定生存を除く死者2人出る影響で今回のシナリオ長めになる前提でも大半は影も形もないだろうけどね
    1巡目まだ5人残ってるし

  • 625◆xaazwm17IRZa24/03/08(金) 18:17:13

    先日はWi-Fiルーターの不調で顔を出せず申し訳ありません……!

    オオカワウソのマンション踏破率をダイスで決めようと思います

  • 626◆xaazwm17IRZa24/03/08(金) 18:45:47

    エレベーターdice1d100=37 (37)

    ひとりの部屋dice1d100=26 (26)

    茶室dice1d100=64 (64)

    411号室・赤松さん宅dice1d100=24 (24)

    透明なレ◯ブロックdice1d100=95 (95)

    ウォールマンdice1d100=47 (47)

    心臓部dice1d100=67 (67)

    大きくて醜い恐ろしい化物“だった”ものdice1d100=40 (40)

    貴方の良き友人☺dice1d100=33 (33)

    危(アブ)dice1d100=79 (79)

    Adice1d100=10 (10)

    0.5階dice1d100=27 (27)

    サロンスペースdice1d100=4 (4)

    ただのプールdice1d100=77 (77)

    ライブラリー・フォー・イディアツdice1d100=40 (40)


    81~100 踏破済、調査完了

    61~80 踏破済、調査途中

    41~60 踏破済、未調査

    21~40 未踏破

    1~20 未発見

  • 627◆xaazwm17IRZa24/03/08(金) 18:47:26

    魔擬きdice1d100=24 (24)

    ∞階(はちかい)dice1d100=62 (62)

    水没フロアdice1d100=21 (21)

    サーバールーム/「管理人」dice1d100=67 (67)

    「を探している」dice1d100=7 (7)

    黒贄 山羊dice1d100=25 (25)

    404号室dice1d100=54 (54)

    502号室dice1d100=54 (54)

    ミノタウロスdice1d100=58 (58)

    【はくちのおう】の成り損ないdice1d100=3 (3)

    101号室dice1d100=61 (61)

    i階dice1d100=79 (79)

    無限エレベーター/地階dice1d100=67 (67)


    81~100 踏破済、調査完了

    61~80 踏破済、調査途中

    41~60 踏破済、未調査

    21~40 未踏破

    1~20 未発見

  • 628◆xaazwm17IRZa24/03/08(金) 19:01:29

    【踏破済、調査完了】……ギミックは全て理解しており、もはやこれで死ぬことはない
    透明なレ◯ブロック

    【踏破済、調査途中】……攻略は完了しているが、細かいギミックを探るためにあえて死に覚え中
    茶室、危(アブ)、ただのプール、∞階(はちかい)、サーバールーム/「管理人」、101号室、i階、無限エレベーター/地階

    【踏破済、未調査】……攻略は完了しているが、未解明のギミックが多い、三割程度の確率で死ぬ
    ウォールマン、404号室、502号室、ミノタウロス、

    【未踏破】……攻略中、未だ対処法が判明していない
    エレベーター、ひとりの部屋、411号室・赤松さん宅、貴方の良き友人☺、0.5階、ライブラリー・フォー・イディアツ、魔擬き、水没フロア、黒贄

    【未発見】……オオカワウソも知らない
    A、サロンスペース、「を探している」、【はくちのおう】の成り損ない

  • 629◆xaazwm17IRZa24/03/08(金) 19:06:24

    皆さんアイデアありがとうございます……!

    これだけで一つの企画が開けそうなくらい集まって嬉しいです……!

    集めておいて大変申し訳ないですが、攻略シーンを一つずつ描写すると、一か月以上かかってしまいそうなので、登場するギミックはかなり絞られるかと思います……!
    ご了承頂けると幸いです……!

  • 630二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 19:13:28

    そりゃあそうでしょう
    まぁ未登場未踏破部屋はスレ民の二次創作ssあたりに期待しときますか

  • 631二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 20:38:19

    人に案を委ねるならこういう事も当然あるので自分は大丈夫ですよ!
    (しかし透明なレ◯ブロックが完全攻略されたのは草)

  • 632二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 21:01:10

    逆に◯ゴブロック踏んづけて死ぬ魔法少女がいるのか気になるよ

  • 633二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 21:24:15

    自分を百人増やして人海戦術で透明なレ◯ブロックの痛みで悶えながらも攻略したんかね

  • 634二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 21:40:01

    マンション産マジックアイテム案
    【名前】透明なレ◯ブロック
    【概要】どんな者だろうが踏んだら滅茶苦茶痛く感じる透明なレ◯ブロック
    怪異にも魔法少女にも踏んだら痛く感じる為逃走に使ったり罠として使う
    ただし透明な為うっかり自分も踏んでいまう事もあるので注意しよう

  • 635二次元好きの匿名さん24/03/08(金) 21:48:40

    安全そうなサロンスペースが未発見なのは意外だ

  • 636透明レ◯投げマン24/03/08(金) 23:28:49

    自案をまた他の人に投げられるとは思わなかった…
    オオカワウソの踏破済みと未踏破な部分は割とバランス良さげか?

  • 637二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 00:06:45

    厄ネタが未踏破か未発見にいったのは丁度いいな謎が多く熟練者でも分からない存在とかそそる

  • 638◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:39:11

    短いですが、投下します……!

  • 639◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:39:34

    【木羽 マミ/ビリーバー 死亡】
    【残り 34人】

  • 640◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:39:59

     私の名前はビリーバー。本名は木羽マミ。あにまん市立第二中学校の生徒会長にして超常現象調査部の唯一の部員にして部長だ。

     そして、既に死人である。
     
     といっても、幽霊になったわけではない。
     この手記が読まれている時に、既に私は死んでいるのだ。
     私は、未来視でそれを知っている。知っていて、今、手記を書いている。

     この手記に記された情報をどう使うのか、それは読者である君に任せる。
     精々、上手く活用したまえ。

  • 641◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:40:24

     魔法王を名乗ったアンドロメダ星人から殺し合いを宣告された後、私は質素な作りの部屋にワープしていた。
     テレビ、椅子、テーブル、雑誌類を一通り揃えただけの、旅館の休憩スペースのような場所で、私はしばし書き物をすることにした。(私が普段調査に持っていく鞄には、当然筆記用具が一式入っている)
     椅子に腰かけ、テーブルにノートを広げ、書き物をしていると、一つだけ備え付けられていたドアが開かれた。
     とある事情により疲弊していた私は、頼みの綱である超能力——未来視が使えず(もっとも使えたとしても出口は開かれるドアしかない以上、あまり意味は無かっただろうが)、みすみす他星人との接触を許してしまうことになった。
     他星人、それは獣の耳と尻尾を生やした獣人だった。髪は灰色、目は赤く、歯は鋭く尖っている。
     獣人は質素な部屋を注意深く観察し、ゆっくりと中に入って来た。

  • 642◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:40:52

     その動きから、確かな知性を感じた私は、獣人と接触することにした。

    「やぁ、私はビリーバー。地球人だ」

     私の言葉を聞くと、獣人は思慮深い瞳で私を眺めた。彼女が私に好奇心を抱いていることを私は察した。
     私もまた、この獣人に強い好奇心を抱いているかだ。

    「オオカワウソ! 魔法少女だよー!」

     楽しそうにオオカワウソは言う。魔法少女……それはアニメなどがよく作られている、あの魔法少女だろうか。どうやら宇宙でも日本のサブカルは人気のようだ。
     あるいは、魔法少女というのは、彼女たちの言葉で、『戦士』や『探検家』、『大使』という意味なのかもしれない。
     宇宙人との交流に胸をときめかせながら、私は更なる情報を得ようとした。
     しかし。

    「みんなー! ここ、安全だよー!」

     ドアの外に向かって、オオカワウソが声をかける。
     信じられない事が起こった。

  • 643◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:41:23

     わーい! 安全、安全! 誰かいるー、誰かいるよー!
     口々に聞こえてくるのは、オオカワウソとまったく同じ声。
     そして、部屋の中に次々と、オオカワウソと同じ顔の獣人が入って来た。

    「新部屋だー! わーい」

    「大発見! 大発見!」

    「調べよう! ねぇ、調べよう!」

    「これは誰? 何に使うの?」

     興奮しきった様子で口々に喚くオオカワウソ達。
     この時、私は自らの思い違いに気づいた。
     最初の場所で、各自の恰好を見た時、全員が違う姿をしていた。
     なので、アンドロメダ星人によってそれぞれの星の代表が拉致されたのだと勘違いをしていた。
     違う。
     少なくともオオカワウソ星人は、群れ(コロニー)で来ている。
     狭い部屋の中に三十人あまりでおしかけたまったく同じ顔の獣人を相手にして、私の知的好奇心は更に高まるのだった。

  • 644◆xaazwm17IRZa24/03/09(土) 01:42:12

    投下を終了します……!

    続きは明日投下します……!

  • 645二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 01:43:15

    うーんこれは自己紹介ならぬ死後紹介(厳密にはまだ死んでないけど)

  • 646二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 02:01:45

    オオカワウソ可愛いないやでも元があれだからな…

    これで人間の子供の笑い声のような鳴き声上げながら集団で狩りをするとか怖いだけど意外と社会性が強く群れの絆を重んじる性向があり、餌を獲れなくなった老カワウソのために代わりに餌を獲ってあげる等の優しさもあるらしい

  • 647二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 02:10:41

    読む前からキャラの生死が察せられる生存ダイスシステムを逆手にとった粋な描写

  • 648二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 09:19:31

    オオカワウソの触れ合いコーナー(死)

  • 649二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 14:54:27

    運営はバグになったオオカワウソ捕らえてそうだし、パラサイトドールの洗脳を経て>>605の人の実験体にしたりで幾らでも悪用してそう

  • 650二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 15:31:32

    設定見返したらオオカワウソ普通に他者を攻撃するんだな
    なんか無害な友好型と勘違いしてた

  • 651二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 15:59:23

    探索の邪魔しなきゃ基本無害けど「近くにいた...お前が悪い」は普通にするし非常時なら人をもぐもぐするから中立・悪ぽいだよな

  • 652二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 17:51:19

    >>649

    残虐!絶滅収容所流人体実験が簡単に実行できるのもそうだし、洗脳したまま魔法使わせればいくらでも洗脳状態のオオカワウソを量産できるね

    パラサイトドールの洗脳はティターニアの光剣でもないと解除できないし

  • 653二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 18:06:31

    ただパラサイトドール自己中のクズだからやれと言われて動きそうじゃないんだよな、めんどくさいの一言で断れそう

  • 654二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 18:16:50

    考えてみるとああああ、パラサイトドールの天敵何だな洗脳も拒絶出来て自分の存在、傷、気配、死も拒絶出来るとか強いな性格はアレだけど、それにああああって金持ちのボンボンとか嫌ってそうだし

  • 655二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:06:16

    >>654

    パラサイトドール曰く相性ゲーは同格同士でしか成立しないって話だから知らないうちに洗脳されてそう

  • 656二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:17:22

    >>653

    裏を返せば目的成就のためなら自発的にやりそうだけど

    事実としてスピードランサーやクリックベイトあたりの有用そうな魔法少女には自分から唾つけてるし


    あとパンデモニカとか自前で洗脳できそうなのパラサイトドール以外にもいるしね

  • 657二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:25:04

    >>655

    意外とアイツ生まれた時から魔法使える組だから同格レベルありそうなんだよね、しかもありとあらゆる現象、魔法、己の死、自身の存在すらもを拒絶するって書いているから魔法だけなら最強に入りそうなんだよ実際ティターニアの魔力を食う魔法を拒絶したし

  • 658二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:31:43

    >>657

    しかもあの時制限無しのスーパー・マジカル・ストラッシュだっただよなそれを無傷で拒絶したしマジで性格以外は生存最強では?

  • 659二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:46:35

    >>657

    >>658

    そこはパラサイトドールの素性によるかな

    真の正体が本当に「魔法国に伝わる災厄の黒龍」ならもう神の領域だし十中八九無理でしょう

  • 660二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:54:10

    どうなんだろうねパラサイトドール、どこぞの這いよる混沌の化身なのか、人間形態になれる黒龍なのかそれとも、ただの強い魔法少女なのかただ確定しているのは、パラサイトドールはこの世で最も権力がある一族の末っ子であることだけだ

  • 661二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 19:57:41

    >>659

    仮に「魔法国に伝わる災厄の黒龍」なら是非とも無貌の神とバトルして欲しいな丁度舞台が整っているし無貌のパパ(成り損ない)もいるし

  • 662二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 20:07:47

    災厄の黒龍VS.無貌の神VS黒贄(サーキック・カルト)VSダークライが始まったらあにまん壊れる!!

  • 663二次元好きの匿名さん24/03/09(土) 20:17:19

    >>662

    無貌の神と愉快な信仰者達「のりこめー^^」

    運営「帰れ」

    黒贄、ダークライ「帰っていいですか?」

  • 664二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:46:10

    保守しておこう

  • 665二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:46:11

    この後、ジュースサーバー君は一部始終を見た…!

  • 666二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:46:31

    >>657

    生まれた時から魔法使えて2000年以上生きてる奴が「天蓋」なんだから、生まれたときから魔法使えるだけで「天上」にはならんと思うけどなぁ……

    今のところパラサイトドールと同格扱いっぽいの邪神ちゃんだけじゃね?

  • 667二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:54:32

    このレスは削除されています

  • 668二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 01:57:52

    …元々強い奴らの制限が余り機能せず弱者の切り札がクソ燃費化されて運営の気まぐれ洗脳があるとかデスゲーム単体で見たらかなりク・ソゲーじゃね?

  • 669二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:04:01

    >>668

    運営が参加者を殺しに行くとかジグソウがショットガン持って殺し行くレベルで理不尽

  • 670二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:20:08

    >>668

    真面目に戦うのバカみたいだな逃げよ、何ッ!?ルールを破っていないのに運営が殺しくる

  • 671二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:25:12

    なあ このパラサイトドールは最強って本当か?
    ああこいつが相性ゲーでトップを取っているからテンガイでも洗脳されて無様に殺されるんだ

  • 672二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:33:20

    >>670

    直接手を下されたのはブラックブレイドだけだし、あの場面で放置したらゲーム終了だから仕方ないとは思う

    むしろわざわざ出張ることになったのは、主催陣営が脆いことの証左なんじゃね

  • 673二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:37:37

    …もしかしてこれパラサイトドール便りの運営ガバガバデスゲーム?

  • 674二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:45:11

    ブラックブレイドがマジで何でも斬れる状態なら未登場組含めても対抗できるのパラサイトドールくらいだしな
    (ああああなら何でも斬れると何でも拒絶できるで生存は出来るけど攻撃手段無いし……)

    本人も言ってるけど天上設定なかったらパラサイトドールでも勝てないらしいし、改めてつよつよ能力だわ

  • 675二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:48:32

    天上って一体どうなったら成れるんだろうな?テンガイは時間を掛けて天外にいたったけどパラサイトドールは黒竜設定抜きで考えたらどうなんだろう?

  • 676二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:51:19

    >>675

    …分からんこの世で最も権力がある一族が生まれた時から強いハイブリット種族とか?

  • 677二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 02:54:38

    そうか、テンガイは「天蓋」かもしれんし「天外」かもしれんのか、「天害」の可能性もあるし

  • 678◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 02:57:53

    お待たせしました、投下します……!

  • 679◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 02:58:16

     実に興味深い。
     オオカワウソ達から話を聞き、私の知的好奇心は大いに満足した。
     まず、彼女たちはコロニー(群れ)ではない。
     全て、同一個体である。
     私の当初の推察通り、アンドロメダ星人によって開かれたこのデスゲームは、各惑星から一人ずつ拉致されている。
     オオカワウソも例外ではなく、殺し合いの説明を受けたのは一体のみだ。
     地球人と違うのは、彼女たちは——増えるのだ。
     地球人が生殖活動によって増えるのに対し、オオカワウソは単一での生殖を可能にしている。

  • 680◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 02:58:38

     否、生殖ですら無いのかもしれない。
     部屋に置いてあった雑誌を「増やし」、ジュースサーバーも「増やし」、私でさえも「増やそう」とした様子を見るに、これは彼女たち固有の能力であるようだ。
     また、オオカワウソ達は一つの集団として機能し、個々に個性の違いは見受けられない。外見だけでなく、どうやら内面にも違いはないようだ。
     しかし、同一意識というわけではない。個々が独立した意識を持っており、独自の判断を下せる。
     それでいて、一個体の死に頓着しない。我々地球人の感覚で行くと、増えた一個体であろうと、死んでしまえばそこで意識が断絶するのだから、死の恐怖などを感じると思うのだが、オオカワウソ達にはそれが無いようだ。
     人型であり、人語を介するが、その性質は蟻に近いのかもしれない。もっとも蟻のように女王蟻と働き蟻のような個体差すら存在しないが。
     では、オオカワウソは知能が低いかといえば、そんなことはない。
     たのしー! と幼児のように天真爛漫な様子を見せているが、これは地球人とは感情の構造が異なるからだ。知能自体は極めて高いと言える。
     最初、彼女たちは情報を提供しなかった。

  • 681◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 02:59:01

     情報が欲しいなら見返りを要求する、との彼女たちの言葉に、私は自らの未来視を明かし、彼女たちに協力することを約束した。
     するとオオカワウソの一体が私に触れた。

    「あれ? 増えないよ?」

    「何で? 何で?」

    「増えないなら希少だよ、大事にしないと」

     どうやら彼女たちは私を増やそうと思ったらしい。しかしそれは上手くいかなかった。
     オオカワウソ達から話を聞いたが、他の魔法少女(他星人……と私は解釈した)でも増やすことは出来るらしい。
     最近ロストしてしまったああああというフレンズも、増やして運用していたようだ。
     地球人同士なら「許可なく増やそうとしないで!」と怒ったが、相手は異星人。常識が違うのだから、怒っても仕方がない。
     ただ、自分と同一個体が出現するというのも、地球人である私からするとかなり嫌悪感がある。

  • 682◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 02:59:26

     ドッペルゲンガーを見ると死期が近いというが、やはり地球人の無意識には同一存在への嫌悪感があるのだろう。
     増やされたとき、どちらが本当の私か、とアイデンティティの崩壊が起きる可能性もある。
     さて、協力すると言ったことでオオカワウソは警戒を解き、様々な情報を私に教えてくれた。
     前記したオオカワウソの特性。それ以外にも此処があにまんマンションの内部であることや、オオカワウソの一部は既にマンション外部へ行ったことなど。

    「マンション探検も進めたいけど、殺し合いも気になる! 気になる!」

    「だからね、チーム分けしたの!」

    「Aチームはマンション探検チーム! 今まで通り、マンション探検を進めるの!」

    「Bチームは市外探索チーム! 会場の外に出るとどうなるのか実験!」

    「Cチームは情報統制確認チーム! 殺し合いのことを他の人に伝えるとどうなるか実験!」

    「Dチームは対運営チーム。魔法王の打倒を目指して他の魔法少女と協力!」

    「Eチームは優勝狙いチーム。他の魔法少女を襲って優勝を目指すの!」

  • 683◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 02:59:53

     つまり、私が遭遇したのはAチームだ。
     元々は各チーム十人規模だが、此処まで辿り着く過程で、徐々に増やしていったのだという。

    「ここは知らない場所!」

    「でも、第一発見者はビリーバーだから、部屋の名前決めていいよ!」

    「ふむ……では、『サロンスペース』というのはどうだろう?」

     私の案にオオカワウソはいい名前! と褒めてくれる。……いささか照れるな。
     一通りの情報交換(オオカワウソの持つ情報は圧倒的だったが)が終わり、約束通り、私はオオカワウソに協力することにした。
     疲労もやや回復し、未来視もある程度使えるようになった。
     協力……つまり、あにまんマンション探索である。
     オカルトを愛好している私だが、あにまんマンションは視ないようにしてきた。
     何故なら——入ると死ぬと、知っているからだ。
     未来視の有効な使い方として、何か行動を起こす前に未来視を発動し、その行動の結果を見る、というものがある。

  • 684◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 03:00:17

     私は何度か、あにまんマンションに探索に行く自分の未来を見た。
     ——未来は、無かった。
     入ると死ぬのだ。
     故に私は、あにまんマンションに近づくことはなかった。
     が、今回は既に内部に入ってしまっている。初期位置があにまんマンション内なので、仕方がない。
     何人かのオオカワウソをサロンスペースに残し、私たちは次のエリアへと向かう。

    「あ、ビリーバーにもこれあげる」

    「む? これは何だい」

    「透明なレ〇ブロック、踏むと痛いから逃げる時に使ってね」

    「………………」

     あにまんマンションの闇は深い。

  • 685◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 03:00:38

    投下を終了します……!

  • 686二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 03:09:19


    Dチームと絆が芽生えた矢先にEチームの襲撃を受ける魔法少女、正直見てみたい

  • 687二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 06:27:39

    このレスは削除されています

  • 688二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 09:46:17

    友好チームと攻撃チームが両方あるの怖いな

  • 689二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 11:50:40

    優勝チームと対運営チームが既に衝突しているかもしれない哀しみ
    これEチームだけが独り歩きしてそうで恐いなぁ…

  • 690二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:30:17

    流石にホウレンソウはとっているでしょ、一応魔法少女同士なら連絡出来るぽいし

  • 691二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:35:00

    危ういのは情報教えた瞬間にキングスマンの花火みたいに一斉に「退場ッ」しないかだけど…(裁定出てましたっけ)

  • 692二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:43:57

    今の所ルール違反で死んだ奴が居ないからこオオカワウソが“検証”して分かるかもしれん

  • 693◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 22:54:34

    dice4d28=13 28 19 13 (73)

  • 694◆xaazwm17IRZa24/03/10(日) 22:56:15

    14. ただのプール
    28.無限エレベーター
    19.サーバールーム
    15.ライブラリー・フォー・イディアツ

  • 695二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 23:35:08

    むっ対処法が判明していない未踏破の”15”と
    残りは調査途中の”14”28”19”

  • 696◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:19:16

    投下します……!

  • 697◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:19:54

     あにまんマンションは、外観はごく普通のマンションである。
     ベージュ色の五階建てであり、あにまん団地と比べその規模は小さい。
     ベランダには洗濯物が干されており、夜になればカーテン越しに明かりが浮かび、テレビの音や家族の笑い声が外部に漏れ聞こえる。
     郵便物も届けられ、NHKやセールス、宗教勧誘なども時折訪れている。
     ネットで噂される様々な心霊スポットと比較するとあまりにまっとうであり、歓楽街や「糧鮴」の方がよっぽど危険、同じ心霊スポットというジャンルでもアニマ精神病院の方が雰囲気があると評判である。
     だが、私は決してあにまんマンションには近づかなかった。精神病院やAタワー、共同墓地などは何度と散策し、多少の危険は未来視で乗り越えてきた私でも、あにまんマンションだけは絶対に調査しなかった。
     にも関わらず、私は、オオカワウソと共にマンション内部を散策することになっている。
     これも運命か。
     あるいは、アンドロメダ星人の思し召しか。

  • 698◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:20:11

     サロンスペースを出る。
     暗い。
     何処までも続く真っ暗な廊下。先は視えない。
     ヘッドライトを点けたオオカワウソが先導し、続いてスコップとピッケルを構えた二人のオオカワウソが続く。
     その後ろを地図を持ったオオカワウソ、メモを取るオオカワウソ、ナイフを構えたオオカワウソが続く。
     その後ろを私が歩く。
     その後ろを雑誌を読み耽るオオカワウソ、サーバーを背負ったオオカワウソ、椅子を掴んだオオカワウソが続く。彼女たちが所持している物はサロンスペース(私が命名した)で複製した物である。
     その後ろを、ボーガンを持ったオオカワウソ、パチンコを持ったオオカワウソ、拳銃を持ったオオカワウソが続く。

  • 699◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:20:32

    その後ろを、拡声器を持ったオオカワウソ、盾を持ったオオカワウソ、懐中電灯を持ったオオカワウソが続く。
     これ程の大人数で探検をしたことは無い。また、これだけの装備を整えて探検もしたことは無い。
     ——心細い。
     孤独とは、集団の中で孤立することで発生する。
     自分以外全て同一個体であるという境遇は、私に孤独を感じさせた。サロンスペースに居た時は明るい雰囲気と非日常感で感覚は麻痺していたが、改めて暗い廊下を歩くと、正常な感覚を取り戻してしまう。

    「オオカワウソ君、君たちは今までどれくらいマンションを調査したんだい?」

     孤独を紛らわせるために、私は前を歩く、地図を持ったオオカワウソに声をかけた。
     地図を持ったオオカワウソは鬱陶しそうな表情で私を睨んだ。赤い目に犬歯を生やした少女の、苛ついた表情は、獣を想起させる。
     地図を持ったオオカワウソは、面倒そうに自らの頭を撫でた。
     瞬時に、オオカワウソが一人増える。

  • 700◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:20:53

     手ぶらのオオカワウソは私の横に並ぶと

    「今まで探検したのはねー」

     と楽しそうに話し始めた。
     地図を持ったオオカワウソは再び地図に視線を落とす。
     彼女たちは、完全に個体ごとに分業しているらしい。
     地図係は地図係であり、話し相手が欲しければビリーバー係が新たに作られる。
     地球人とは全く異なる生態だ。
     ビリーバー係のオオカワウソは、様々なことを教えてくれた。
     例えば、このあにまんマンションには心臓部があるらしい。此処に到達するまで様々な妨害があり、累計で一万を超えるオオカワウソとフレンズ(ああああという異星人)の犠牲が出たが、昨年遂に到達した。今、この心臓を壊すか壊さないかでオオカワウソは協議しているようだ。何が起きるのか確かめたい……という意見と、狩りにも心臓を模している以上、もし壊してマンションが死んでしまったら、完全攻略の前に探索が終わってしまう。
     ビリーバーはどう思うと問われ、私は実物を見ないと分からないと回答した。

  • 701◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:21:15

     例えば、ウォールマンという怪異が居る。壁の中に取り込もうとしてくる人型の怪異だが、物理攻撃が通用し、筋力も人間程度しか無いので、問題なく対処できるのだとか。
     今は壁に取り込まれるとどうなるのかの実験、そして恨み言の書き取り作業が行われているのだとか。
     私も、超能力者の特性ゆえか、人類の数倍の身体能力を備えている。不意を討たれない限り問題は無いだろう。未来視もあるし。
     また、「危」という文字を踏むと、自転車に乗った少年に激突される、という罠もあるから気をつけろと言われた。自転車程度大したダメージにならないのではないかと訊いたが、トラック並の衝撃らしい。なるほど、さすがにトラックに轢かれれば、私も死亡する可能性が高い。
     どうしてトラック並だと分かったのかと訊いたら、マンションの外で実際に比較実験をしたようだ。
     列車事故程のダメージでは無いのだとか。
     例えば、ただのプールが間取りを無視して出現したりもする。外観は25mプールだが、奥行きも水深も無限に広がっている。それだけであり無害なものだが、向こう岸に辿り着けなければ探索が進まないのでかなり難儀したのだとか。最終的には、水の中に入らない(カヌーや筏などを浮かべるとのこと)ことで無限の奥行きは発生しなくなり、向こう岸に渡れたらしい。

  • 702◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:21:46

     現在はあえて水の中に入り、奥行きや水深が本当に無限なのか実験中なんだとか。
     非常食も用意し、数か月間ずっと潜り続けているチームも居るのだという。
     興味深い話ばかりだった。
     真っ暗な廊下の中で、私は大いに気を紛らわせることが出来た。
     と、先頭を歩いていたオオカワウソが立ち止まった。
     私も合わせて足を止める。
     ——微かな、塩素の臭い。

    「ただのプールだぞー」

     先頭のオオカワウソが言う。

    「——場所が違うよ」

    「どうして? どうして?」

    「迷った? 迷った?」

    「変わってる! 配置が変わってる!」

  • 703◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:22:21

     口々に騒ぎ出すオオカワウソ。
     どうやらマッピングしていたものと、現実が異なっているらしい。

    「殺し合いしてるから、変わったのー?」

    「それともビリーバーが居るから?」

    「魔法王の仕業?」

    「ああああが居ないから?」

     ビリーバー係であるオオカワウソが、私に指示を出した。

    「未来視」

    「分かった」

     私は、三十分後の自分を対象に未来視を発動する。

    【私を含めたオオカワウソたちはプールの前で立ちすくしている。

    『カヌー組、まだかなー』

    『ああああがいれば、水面歩けて便利なのにね』

    『ちょっとお腹すいたね』

    『ビリーバーにする?』

  • 704◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:22:52

    『ビリーバーは一つしかないから駄目。サーバー使おう』

    『わーい、サーバー使うよー』】

     およそ三十分後の未来。
     少なくとも私たちは生存し、無事である。
     私を対象に未来視を発動した場合、指定した時間に死亡してれば何も視えない。
     私は、未来視の結果をオオカワウソに共有した。
     オオカワウソは未来視の通りに行動することを決めたらしく、新たに三人増やし、カヌーを持ってくるよう指示を出した。
     そのまま、三十分が経過した。
     私たちはプールの前で立ち尽くしている。
     配置が違うため、このプールがオオカワウソが知っているプールか確証が無いとして一人増やした個体が水に入り、反対側に向かって泳ぎ出した。
     しかし、半ばまで進んだところで、いつまで経っても、そこから動こうとしない。
     否、犬かきで進んでいるのは確かなのだが、まったく進んでいないのだ。
     無限の奥行きは事実であるらしい。

  • 705◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:23:18

     やがて力尽きたオオカワウソはプールの中に沈んでいった。
     二人目のオオカワウソもまた、半ばまで進んだ所でそれ以上進めなくなり、しばらく抵抗した後、こちらに帰還しようとした。
     が、やはりいつまで経ってもこちらに帰って来れず、一人目と同じように沈んでいった。

    「カヌー組、まだかなー」

    「ああああがいれば、水面歩けて便利なのにね」

    「ちょっとお腹すいたね」

    「ビリーバーにする?」

    「ビリーバーは一つしかないから駄目。サーバー使おう」

    「わーい、サーバー使うよー」

     未来視通りの会話が行われ、サーバー―からジュースが振る舞われる。
     私はコーヒーを所望した。
     いくら異星人とはいえ、目の前で知的生命体が二人死んだショックはかなり大きかった。

  • 706◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:23:46

     ドリンクタイムが終わり、三人目のオオカワウソが投下された。
     プールに入り、すぐ陸地に上がる。
     問題なく上がれた。
     そのまま三体目のオオカワウソは1m単位で進み、陸地に上がることを繰り返した。
     10mを超えた所で戻ってこれなくなり、三人目は沈んでいった。

    「ねぇ、ビリーバーを入れてみない?」

    「私たち以外ならどうなるか見てみたい!」

    「でも、ビリーバーは一つしかないよ?」

    「じゃあ駄目だね」

    「貴重だもんね」

    「ちょっと待ってくれ。未来視で何とかなるかもしれない」

     私がプールに入るという体で話を進めてもらい、私が自らを対象に未来視を発動する。そうすれば、私が死ぬことなく、結果を見れる。

    「すっごーい!」

  • 707◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:24:14

    「便利! 便利!」

    「増やしたいなぁ……」

     計画通り、オオカワウソは私をプールに入れるという体で話を進めてもらい(こういう機微を理解できるので、やはり彼女たちは非常に知能が高いと言わざるを得ない)、、私は自らに未来視を発動した。
     何も視えない。
     どうやら私もまた、辿り着けずに溺死したようだ。

    「ねぇ、カヌー班遅くない?」

    「トランシーバー、連絡はまだ?」

     笛を持っていたオオカワウソがトランシーバーを取り出す。

    「…………繋がらない」

    「えっ」

    「何で?」

    「困ったよ、困ったよ」

     異常事態が続いているようだ、と私は察した。

  • 708◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:24:39

     もしや、これも魔法王——アンドロメダ星人の策略なのだろうか。
     確かに、オオカワウソは恐らく、参加した異星人でもっともあにまんマンションに精通している。
     彼女がマンションに立て籠れば、他の参加者はオオカワウソを倒すことは出来ず、ゲームは時間切れ、あるいは地の利を生かしたオオカワウソの勝利で幕を下ろす。
     オオカワウソはマンションから出ないことを選択するだけで、限りなく優勝に近づける。
     それを、アンドロメダ星人は疎い、オオカワウソの地の利をナーフしたのか。
     地球人である身からすれば、異星人の考えは完全に読めない。
     とにかく、オオカワウソは協議を開始していた。

    「一旦引き返そうよ」

    「もう少し待ってみよう。非常食もあるし」

    「貴重だから駄目。サーバーで我慢しよう」

    「自分は食べてもお腹すくのが難点だよねー」

    「ねぇ、私たちを使ってカヌーを作らない?」

  • 709◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:25:17

    「骨と皮と肉を使えば、上手く作れるかな?」

    「その前に、浮き輪を試してみようよ」

     そう言って、スコップを持ったオオカワウソは、ビリーバー係のオオカワウソを殴りつけた。

     後頭部から血を流しながら倒れる、私と楽しそうに言葉を交わしていた個体。
     スコップを持ったオオカワウソは何度も彼女に叩きつける。彼女は痙攣をしてたが、やがて動かなくなった。

    「——な、なぁ」

    「どうしたのビリーバー?」

     スコップを持ったオオカワウソは返り血で身体を濡らしたまま私に返事をする。

    「さ、さっきみたいに増やして、じゃ、駄目だったのか?」

    「駄目。長期戦になるかもしれないから、魔力は節約しないと。もしもの時に残しておかないといけないし。ビリーバーの話し相手は今は必要ないでしょ?」

    「必要なーい」

    「リサイクル! リサイクル!」

  • 710◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:25:42

     きゃはははははははははははははははははははは。

     オオカワウソは楽しそうに笑いだした。
     そして、ビリーバー係だった彼女をプールに突き落とす。
     死体となった彼女は、ぷかりと浮いた。
     地図係だったオオカワウソがプールに飛び込む。そして、ビリーバー係を浮き輪画係にして、向こう岸目指して泳ぎ始めた。
     私はその様を、呆然と見るしかなかった。
     理解、しなければならない。
     相手は異星人であり、地球人の常識で測るものではない。
     10mまで進んだところで、地図係だったオオカワウソはバタ足を止めた。

    「何か流れてきたよー!」

     私たちはプールの奥を見る。
     25mプールにしか見えない、しかし奥行きも水深も事実上無限であるそのエリアに、いつの間にか、幾つもの漂流物が浮かんでいる。
     水で濡れ、脆くなり、塵に等しくなっているが。

  • 711◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:26:09

     これは。

    「……本?」

     豪華な装飾に彩られた分厚いハードカバーの本が、何冊もプールに浮かんでいる。
     それは、冒涜的な光景だった。
     オカルト探求のために書籍を読み漁る私にとって、本をプールに浮かべるという行為は酷く不快であり——今しがた話し相手が殺されたばかりにも関わらず、そのような怒りが自分に残っていることに驚いた。

    「これって、図書館の本じゃん!」

    「あの、ムカつく場所の本じゃん!」

    「どうしてここにあるの?」

    「何で? 何で?」

     オオカワウソたちが口々に言い合う。
     図書館、なるものもこのマンションにはあるらしい。
     地図係だったオオカワウソは、しばらく思案していたが、浮いていた本を手に取ると、こちらに帰還しようとした。

  • 712◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:26:33

    「待って、待って!」

    「まだ、流れてくるものがあるよ!」

     本だけではなかった。
     何時の間に出現したのか。
     人が、流れてくる。
     異形、である。
     スーツを着た男性であることは分かる。だが、頭が三角形なのだ。
     違う。怪物、ではない。
     三角コーンを頭に被せられているのだ。
     そのままぷかぷかとこちらに流れ着いてくる。

    「引き揚げよう!」

    「何だろう! 何だろう!」

     オオカワウソは次々と手を出し、三角コーンを頭に被った男性を陸地へ引き揚げる。

    「取れないよー? 外れないよー?」

  • 713◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:26:56

    「じゃあ斬っちゃおう」

     ナイフでざくざくと切断を始めるオオカワウソ。
     猟奇的な光景を前にして、私は立ち尽くし、未だプールを漂う地図係と、ビリーバー係の死体を見て。

    「あれは……」

     プールを埋め尽くすように、人が、流れてくる。
     様々な服装の、様々な年齢層の、皆一様に三角コーンを被らされて。

     『アイアムアフール』。

     三角コーンに書かれたその言葉が、妙に印象に残った。

  • 714◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 00:27:19

    投下を終了します……!

  • 715二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 01:18:44

    エネミー

    【名前】

    ゾルダート

    【説明】

    剣闘士を思わせる装甲甲冑と古風な軍服、銃火器や大楯で武装した兵士のようなエネミー。

    運営の魔法少女の手によって人間の死体と複数種のエネミーを掛け合わせる特殊な強化手術を施された結果、見かけからは想像もつかないほどに極めて頑強かつ、並の魔法少女を上回る身体能力誇っている。

    非常に高度な連携戦闘によって上位の実力を持つ魔法少女をも追い詰める。

    https://fearandhunger.wiki.gg/images/a/a1/Elite_Trooper.png


    【名前】

    フランメ・ゾルダート

    【説明】

    魔力を込めた特殊な燃料を媒体とした強力無比な火炎放射器で武装するゾルダート。

    専用の措置により、炎系統の攻撃に対して極めて高い耐性を有している。

    https://fearandhunger.wiki.gg/images/a/a3/Flame_Trooper.png

  • 716◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 01:43:44

    本日もたくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……!

    ペナルティに関しては、オープニングで具体的にどうなるのかうっかり書き忘れてしまい、ふわふわのまま進んでしまいました……!

    今後少しずつペナルティを破った場合どうなるのかを描写できればいいなと思っています……!

  • 717二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 02:13:53

    乙です、凄い数の三角コーンが集まってきてるがややこしい事態になってないことを願おう

  • 718二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 07:48:28

    さっきまで仲良くしていやオオカワウソが人外メンタルバリバリに豹変するところゾクゾクする

  • 719二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 12:38:19

    自分の浮き袋とか言う倫理観が無さが出っているの好き!

  • 720二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 12:55:51

    会話は通じるのに根本的な倫理観や死生観が違うとぞくぞくするよね
    人間とは違う別の生命体を見てるみたいで

  • 721◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 21:34:03

    短いですが、投下します……!

  • 722◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 21:34:26

     其処は、コンピュータの墓場、という印象を私に与えた。
     幾重にも累積されたモニターには、個別に異なる顔が映し出されている。
     あるモニターには青いドレスの騎士が。
     あるモニターには、全身を刺青が彩る褐色の少女が。
     あるモニターには、濡羽色の髪を揺らす少女が。
     あるモニターには、チョーカーを首に巻いたドレスの少女が。
     市内各地で展開している殺戮劇を、モニターは余すところなく照らしていた。
     キャスター付きの椅子に腰かけ、一人の男がそれを見ていた。
     スーツに身を包み、顔を布で隠した男。
     腕を生み、殺し合いを閲覧する男の表情は伺い知れない。そもそも布で視えないのでは、と私は疑問に思ったが、その場にいない以上ツッコミも入れられない。
     彼もまた、異星人なのだろうか。
     ドゥルルルン。

  • 723◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 21:34:53

     男の首が、刎ねられた。
     背後からの一撃。
     武器は、チェーンソー。
     ホッケーマスクを被り、巨大なチェーンソーを持った少女が、モニターを見ていた男を殺した。
     彼女は異星人か、地球人か、私には判断できなかった。
     ホッケーマスクから伸びる髪は桃色だが、それくらいなら髪染めでどうにでもなる。
     ホッケーマスクの少女は、お嬢様風の衣装の少女が映ったモニターをしばらく眺めていたが、のっそりと移動を始め、サーバールームを出て行った。

     私が死んでから二時間後の話である。

  • 724◆xaazwm17IRZa24/03/11(月) 21:35:10

    投下を終了します……!

  • 725二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 23:48:13

    乙です!ペナルティの恐怖が近づいて来ている…

  • 726二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 07:39:48

    保守

  • 727二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 07:48:21

    ビリーバーの話し相手は今は必要ないでしょ?」

    必要であれば大事にするけど必要でなくなれば削減する
    まぁマンション内はこうでもしないと生き残れないよね…

  • 728二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 13:38:42

    ビリーバーが一人しかおらず未来視という技能を持ってるから重宝してるだけで
    特に能力がない相手の場合早い段階で「使おう」ってなるんだろうなオオカワウソ

  • 729二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 15:50:53

    地下鉄のコンコースで爆発が起こって列車の中には死体が残り、高校でも教室が吹き飛んで爆死死体と火傷を負った女の子が残されていたとか朝刊の三面ぶち抜き不可避なんだよね
    沙美ちゃんのとこに情報を求めて訪れる人もいそう。魔法少女に限らず事件を追う一般人も

    というわけで沙美ちゃん/ハスキーロアが運ばれた病院の場所案
    【名前】
    あにまん市立医療センター
    【説明】
    あにまん市駅の対面に位置する複合大型市立病院。あにまん市が設置する地方独立行政法人が運営している。敷地面積は約60,000m²と非常に大型。
    天下りや医療ミス、挙げ句の果てにモルグの身元不明死体を使った人体実験など黒い噂が絶えず、事実として多数の不祥事が出所不明の圧力で揉み消されている。

  • 730二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 21:18:26

    マンションのドロップアイテム案
    【名前】拡張パーツ
    【概要】どんな機械の性能もアップグレードする謎の機械の部品。手に取ると何処に取り付ければいいのか分かってしまうので説明書不要。精密部品につき取り扱い注意。

  • 731◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:20:51

    投下します……!

  • 732◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:21:26

    「退却だね」

     ヘッドライトを装備したオオカワウソが言った。

    「やっぱりプールを超えるにはカヌーが居るし、分からない部分が多すぎる」

    「知りたいけどねー、気になるけどねー」

    「調べよう! 調べよう!」

    「でも、足りないよ」

    「いつもより疲れるね、何でだろう?」

     口々に言い合うオオカワウソを横目に、私は疲労困憊して座り込んでいた。
     どこからともなくプールに流れてきた本と人間たち。
     オオカワウソたちは引き揚げたが、本は濡れて読むことが出来ず、三角コーンをかぶせられた人間たちは死亡していた。おまけに、頭部を切断しても、三角コーンは外れることはなく、中の顔を確認することが出来なかった。
     10m地点まで進んでしまっていた地図係のオオカワウソも帰還できず、沈んでいく。
     私は、オオカワウソの指示で、未来視を酷使した。
     再び私がプールに入るパターン。
     オオカワウソがプールに入るパターン。
     三角コーンを掴んで入るパターン。
     オオカワウソが増やした三角コーンを頭に被って入るパターン。
     いずれも、待っていたのは死。

  • 733◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:21:47

     様々なパターンを未来視で先取りしたオオカワウソたちは、遂に撤退を決意したようだった。
     この辺りの判断力は、さすが探検家だ。
     地球人とは価値観がまったく異なっているが、愚鈍でも幼稚でもない。
     私たちは再びヘッドライト係を先頭に、サロンスペースへと戻った。

     サロンスペースは、血で濡れていた。

     居残っていた10人あまりのオオカワウソ。
     彼女たちは、一様にぐちゃぐちゃに斬り刻まれて死んでいた。
     噎せ返るような血と臓物の臭いに、私は蹲った。
     オオカワウソたちに動揺は無かった。こういうことも日常茶飯事なのだろうか。

    「この切り口……刃物じゃないよね」

    「うん、切り口が搔きまわされてるね。こんな傷がつくのは、チェーンソーだよ」

    「誰の仕業かな? 誰の仕業かな?」

  • 734◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:22:14

    「赤松華?」

    「あいつがやるともっと粉微塵だよ」

    「魔擬きの奴ら?」

    「あいつらなら銃火器を使うはずだよ」

    「黒贄かな?」

    「確かにちょっと怪しいかも」

    「ミノタウロス?」

    「だいぶ前に倒したじゃん」

    「生き返った? 生き返った?」

    「だったらもっかい倒せばいいよ」

    「——他の参加者、ではないのかい?」

     私の言葉に、オオカワウソたちは一斉に振り返った。

    「私のように、初期位置がマンションだった参加者が居たのかもしれない。……あるいは、外からマンションに忍び込んだのか」

    「でもここ、けっこう深いよ。無理じゃない?」

  • 735◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:22:59

    「でも、もしそうなら……」

    「使えるかも」

     口々に話し合いを始めるオオカワウソ。
     私はふと、机の上に残した書き物を確認する。
     ……ふむ、無くなっている。どうやら下手人が持ち去ってしまったようだ。

    「一回、外に出ようか」

     が、その場に居るオオカワウソの総意となったようだ。
     マンション内と比較して、外部の方が安全である。例え殺し合いが行われているとしても。
     そこで、今後の方針を立て直す。それが、Aチームの結論。
     私とオオカワウソはサロンスペースを出ると、さっき進んだ方向とは反対方向へ歩きだした。
     ふと、すっかり血に慣れていることに私は気づく。
     私の得意ジャンルはオカルトで、ホラーではない。スプラッター耐性は人並の自負があったが、意外とグロ平気系中学生だったのか。

  • 736◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:23:21

     違う、きっと私は麻痺しているのだ。
     あるいは、異星人と異邦を探検するという興奮が、麻薬に近い作用を及ぼしているのかもしれない。
     30分も歩かないうちに、私とオオカワウソは、エレベーターの前に立っていた。

    「やっぱり配置が変わってるよ」

    「不思議だね」

    「素敵だね」

     ドアが開く。私たちは乗り込んだ。
     狭い。
     オオカワウソの群れに圧迫されながら、私は下降を感じていた。
     ——降りる。
     ——堕ちる。
     暗いから、てっきり地下だと思っていたが、どうやら私はずっと地上に居たらしい。サロンスペースやただのプールが何階にあったのか、あるいは「階」という概念すら曖昧なのか。

  • 737◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:23:42

     そういえば、オオカワウソは地図を持っていた。
     配置が大きく変わってしまい、地図係は実験要員として消費されてしまったが、例え役に立たなくても、異邦の地図は興味がある。外に出たら、見せて欲しい。何なら、家に持ち帰りたい。
     ふと、思った。
     オオカワウソにとって、役に立たない地図は、価値があるのだろうか。
     私にとっては価値がある。しかし、彼女たちにとって実用性が無ければ無価値なのだろうか。
     そういうわけでもないのだろう。
     今は使われてしまったビリーバー係のオオカワウソが言っていたが、オオカワウソは、既にマンションの最奥部、心臓部に到達している。
     オオカワウソが単純にあにまんマンションの攻略を目的としているなら、さっさと心臓部を破壊なりしてしまえば、きっとこの異邦は消え失せる。
     だが、オオカワウソはそれをしていない。
     未だ探検していない場所があるから。そんな悠長なことを言っている。
     きっと、彼女たちが探検をするのは——楽しいから、なのだろう。

  • 738◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:24:08

     その時、私は、引っ掛かりを覚えた。
     心臓部に到達したオオカワウソ。配置が変わったあにまんマンション。
     ……もしや、配置が変わったのは、オオカワウソの絶対的優位性を崩すため、だけではなく……心臓部へ辿り着くことを防ぐためだとしたら。
     あにまんマンションの心臓部は、マンションだけでなく、このゲームにおいて根幹を為すものだったとしたら。
     私は、エレベーターに密集しているオオカワウソに、思い付きを伝えようとした。
     上方で、轟音が響いた。
     思わず、上を見上げる。
     エレベーターの天井部が凹み。
     次の瞬間には、エンジン音と共に切り裂かれた。
     ホッケーマスクが、落ちてくる。
     視界一杯に、チェーンソーブレードが広がり。
     どぅる、という音が頭の中で響き、私は絶命した。

  • 739◆xaazwm17IRZa24/03/12(火) 21:24:27

    投下を終了します

  • 740二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 21:41:58

    そろそろ運営の動きも見たいし、運営の魔法少女には心臓部で改造してる姿が見たいねぇ。専門家としてああああちゃんを伴って

    このマンションを改造するぐらい手の込んだことできる運営の魔法少女って>>605の元武装親衛隊の人ぐらいしか思い浮かばないけど。パンデモニカの魔法はランダム性強すぎるし

  • 741二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 21:46:26

    おつです!マンション側が動いてたら
    おそかれはやかれオオカワウソ達も
    つんでたのかな?
    かなりの突然死だったな…本当に

  • 742二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 21:55:16

    >>740

    あにまん市の霊脈に接続するよう改造された心臓部を介して神経を操る魔法で市内の監視を行っているのかな?

    マンションの中なら実験材料も事欠かないだろうし

  • 743二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:16:39

    ただなー何かこのマンション設定を見た感じ平行世界にもあるんだよだからさ、心臓を潰した所で別のマンションが生きているし何より心臓が一つだと思わない

  • 744二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:20:35

    >>743

    しかもAの設定を追加すると未来にもあると言う…本当に心臓の情報は確か何だろうか自分には疑似餌の様にしか見えない

  • 745二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:25:28

    案外心臓の話は半分は本当で嘘かも知れないね、運営の魔法少女は表面上の情報しか分からずそれを真実だと考えて本当が何か分からず使っているだったら

  • 746二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:25:37

    >>743

    >>744

    言っとくけどマンションのギミック案全てを採用するかどうかはスレ主さん次第だからね?

    複雑すぎるとマンションばっかやることになるし、とりま採用された分の「心臓潰されるとマンションは終わり」の設定には従ってね

  • 747二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:31:14

    まあ気持ちは分かるよ理解不可能物が簡単で陳腐で運営の都合の良いように使われる物なるとか
    それに自分もそろそろ運営が好き勝手したしっぺ返しが来ないかなと思っている

  • 748二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:34:53

    ☺が一回誰かを唆して心臓を壊して運営も参加者も竜も神もテンガイも最強もある日突然世界ごと“埋まる”のも見てみたいな

  • 749二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:35:07

    まあ今はまだどちらの可能性もありうるから楽しみに待とうじゃないか
    そしてさらっと殺されるビリーバーェ…

  • 750二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:35:51

    人工的な怪異もいいけど純正の奴やそれに手を加えた形の怪異もアリ。案外心臓潰したらネッシーみたいな獣でも出てくるんじゃないですかね(笑) 冗談はさておき一巡目のマンション編も佳境かな

  • 751二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:40:49

    結局はダイス!ダイスで決まるまあ…そのうち運営側も生死ダイス振ると思うから
    パラサイトドールが死んだらどうなるんだろうな

  • 752二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:43:20

    >>751

    ■■少女・ナ■■ー■トテッ■「やったぜ(棚ぼた)」

  • 753二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:45:01

    しかしエ駄死(物理)ちゃんが無限湧きするオオカワウソをちぎっては投げちぎっては投げしてマンションから生還するのはほぼ確定か…
    これなんて無双ゲー?

  • 754二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:47:58

    しかし以外にもハニーハント物理も強いなどういう基準で身体能力決めているんだろう

  • 755二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:48:49

    ぶっちゃけるとマンションとか所詮は主題のバトロワの舞台装置に過ぎないんで設定詰め込まれても困るんだよね
    別にマンション自体を掌握してるわけでもないし運営が都合よく間借りしてるくらいでええやんけ

  • 756二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:51:59

    >>751

    運営もダイス振ったらある程度はヘイトも減るんじゃない?正直魔術王以外死んでも運営が動くし

  • 757二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:55:49

    マンションと同じで運営陣営もそこまで設定を詰め込まれても困るんだよね裏切りとか主義とか貴族妖精とか黒龍設定とか出されても困る…正直手に余っている様に感じる

  • 758二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 22:56:15

    ここで考察しててもアムロは実弾を好むとかのレベルの信憑性になるんじゃないスかね。でも語らずにただ眺めてるよりは与太でも話してる方が自分は面白いと思う。もち本気にして押し付けるのはNGだけど…!
    しかしこんなにハニーハントが殺傷性を発揮するってことは割とマンションはいかがわしい認定でもされてんすかね?

  • 759二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:00:55

    結局は採用するのはスレ主だから一部採用とか追加設定するのもスレ主だから、書かれたから全て!絶対に正しい!いやそれは違う!とかされても困るだよね

  • 760二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:14:30

    ただまあ現状運営は好き勝手やれる状態だからティターニア先生かテンガイにぶちのめされて欲しいと思った黒竜=パラサイトドールが邪魔すぎる

  • 761二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:16:50

    そういや設定上の最強ってパラサイトドールなの?

  • 762二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:25:50

    >>761

    テンガイが天蓋、パラサイトドール=黒竜がそれより上っぽい天上となるとそうなんじゃね。そこに対応できるのはアルセーヌ=邪神ちゃんだけかと

    となるとテンガイがヨシネの心臓を手に入れようとしているのはそれが天上へと至る方法である可能性が?

  • 763二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:29:47

    …強さのバランス崩壊しているなぁダイスで決まるにしても本当に死ぬのかコイツら

  • 764二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:37:24

    このレスは削除されています

  • 765二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:38:10

    マンションだけなら1章.2章みたいな感じで受けいられるが天上って何だよ!
    結局は才能があって強い奴が有利じゃねえか!天蓋にも至らない魔法少女は全員覚醒も出来ない不良品のゴミと同期じゃねえか!と思いますね本当に

  • 766二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:38:13

    >>763

    1クラスのデスゲームとかの規模に比べると設定段階でつよつよにしやすいからね

  • 767二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:39:17

    ダイスは絶対だからね
    どんなに死にそうにない(不死身設定のある)参加者でも永久退場は確定のはずよ
    (ニャル様が10以下出したらどうなるのか今すごく気になってる)

  • 768二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:40:00

    ははわざわざ設定で弱体化させたのが馬鹿みたいに思う…ふざけんなよ

  • 769二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:41:51

    不老不死キャラもバトロワ中は行動、再生出来ないまで追い詰められたみたいな感じになるかな

  • 770二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:44:05

    >>768

    どんまい、次からインフレに付いていける設定と能力を出すんだな

  • 771二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:44:43

    >>765

    ???「お前今メリィのこと馬鹿にしてたよな🤐もしかしてアンチ?🤔」

  • 772二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:47:02

    実際能力が戦闘向きじゃなくて身体能力も弱そうなキャラってどう戦うだろうね

  • 773二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:47:33

    >>769

    恐らく不死身対策を講じるか存在の根本レベルまで消すような出来事が起こるかも…?


    慰めにはならないけど前回投げたキャラは強キャラも含めて全員死んだから死ぬ悲しみは分かる(全員黒服と金持ちなんだけども)

  • 774二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:50:38

    正直言って前作見ていないから前作の話しをされても全然分からないだよね教えて!エ▫︎い人

  • 775二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:55:38

    >>774

    このスレから始まるバトロワだね

    学園異能バトロワって感じの作品で、暗黒金持ちと黒服は対運営編での主な敵枠(こちらもスレ民から募集)だよ

    出落ちした面々もそれなりにいたけどみんなキャラが立ってて魅力的だったなぁ…

    https://bbs.animanch.com/board/1712644/

  • 776二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:55:48

    >>765

    でもまあ覚醒していないのに最強とかテンガイとか言われているの前に言った井の中のカエルになりそうが本当になったな

  • 777二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:57:08

    極論ダイスで90以上出し続ければ一般人より弱かろうが優勝した上で運営壊滅させられるっていうメタ発言は置いておいて
    周囲がどんなぶっ飛んだ強さしてようが相性良ければどうとでもなるし、そもそも戦って勝つ必要がない
    勝てないやつにはソイツに勝てるやつをぶつけて倒してもらえばいいし、出来なくても自分が強くなれば勝てるのだ

  • 778二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 23:58:52

    ただし問題はそもそもソイツに勝てる人がいないことそして代々都合悪くいなくなることだ

  • 779二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 00:00:08

    前作の説明をもう他の人が分かりやすくしてた…ありがとうエ□いお方

  • 780二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 00:04:07

    いつ見ても支配が効かないパペッタンとフライフィアーを始末するための仕込みがガチガチで笑ってしまう

  • 781二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 00:15:33

    Q.キャラ間の格差酷すぎ!〇〇とか今後どうやって倒すんだよ!😡
    A.前作読もう!

    いやマジで前作を読んでくれ
    魔法少女どころか非能力者も混ざってるような高校生たちが身を削りながらも創意工夫で戦うジャイアントキリングものだから

  • 782二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 00:25:38

    >>781

    スレ主さんの伏線の張り方とか、弱者が強者を狩る攻略の方法とかが絶妙なのよね。キャラ設定やダイスの結果や人間関係がバタフライエフェクトしてくるのが本当に楽しかった

    作品の設定を決定するのは我々ではなくあくまでスレ主さんなので見守ろうね

  • 783◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:32:51

    明日休日なので、13話終わりまで書こうと思ったらこんな時間に……
    またお手すきの際に呼んでいただけると嬉しいです……!

    投下します……!

  • 784◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:33:20

     ホッケーマスクの異星人の奇襲は、ドンピシャだった。
     私はオオカワウソによる酷使、何より彼女たちに出会う前の使用で、一時的に未来視が使えない状態だった。
     オオカワウソたちもまた、ホームであるマンションの配置が変更され、浮足立っていた。(それが困惑なのか、それとも新たな探索に滾っていたのかは分からないが)
     とにかくにも、私は死んだ。
     脳天を、チェーンソーで切り裂かれる。
     私の被る帽子は円盤状だが、円盤程の強度は無い。あくまで円盤をモチーフにしているだけだ。
     相手が同じ地球人であったなら、超能力の恩恵で身体能力が常人を遥かに超えている私は、咄嗟に避けるなり、刃を受け止めるなり、出来たかもしれない。……いや、さすがに回転するチェーンソーの刃は受け止められないかも。
     ただ、異星人の武器は特別製なのか、ホッケーマスクの少女のチェーンソーは、まるで生身の少女を切り裂くように、私を切り裂いてしまった。

  • 785◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:34:06

     私は、脳で思考する生物だ。故に頭部をチェーンソーで斬られれば絶命する。
     絶命した私には目もくれずに、ホッケーマスクの少女は、残ったオオカワウソにブレードを向ける。

    「よくもビリーバーを……」

    「貴重だったのに……」

    「一つしか無かったのに……」

     エレベーター内のオオカワウソは怒りに燃えていた。
     目を爛々と輝かせ、ぐるる……と獣のように唸る。
     私のために怒ってくれることを喜ぶべきだろうか。

    「この切り口……」

     ヘッドライトをつけたオオカワウソが、私の死体を見下ろして言う。

    「サロンスペースの私たちを減らしたのもお前だな」

     こー、ほー。
     ホッケーマスクからは、呼吸音しか聞こえない。
     果たして彼女に知性はあるのか。そもそも生物なのか。私には分からない。

  • 786◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:34:28

     エレベーターは下降を続けている。
     どん、とホッケーマスクの少女は踏み込んだ。
     そして、チェーンソーを振り回す。
     エレベーターという閉所において、チェーンソーは最適に近い。
     掠れば致命傷になりうるし、取り回しも効きやすい。
     ましてや今のように敵が密集している状態ならば、ただ滅茶苦茶に振り回すだけでも全滅を狙える。
     事実、チェーンソーの刃が掠り、スコップ係が即死した。
     返す刀で懐中電灯係も死亡する。
     だが、その隙にピッケル係のオオカワウソと、ナイフ係のオオカワウソが接近し、それぞれの凶器を振るう。
     ホッケーマスクの少女は、ナイフの一撃を左腕で庇う。
     左腕にナイフが刺さる。
     そして、対応が遅れるピッケルの一撃が、ホッケーマスクの少女の脳天に突き刺さった。

  • 787◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:34:45

    「っ……」

    「ちっ……」

     ホッケーマスクの少女が呻き声を上げ、ピッケル係が舌打ちをする。
     ダメージは与えた。だが、致命傷ではない。
     戦闘は素人の私なりに考察するが、きっとオオカワウソのピッケルは普通のピッケル、きっと地球産のものだ。
     一方、ホッケーマスクの少女が振り回す巨大チェーンソーは、きっと宇宙人の技術で作られている。常人より頑丈な私を即殺できたのは、そのせいだろう。
     武器の性能が違い過ぎる。
     そして、チェーンソーの刃が追いつき、ナイフ係とピッケル係も首を斬り落とされる。
     と、ホッケーマスクの少女に、たたらを踏んだ。
     ピッケル自体は地球産でも、振るったオオカワウソは異星人、身体能力も高い。
     致命傷ではなくても、かなりのダメージを与えていたのか。
     その隙を、生き残ったオオカワウソは見逃さない。

  • 788◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:35:07

     銃声が響く。
     拳銃係のオオカワウソの銃弾が、ホッケーマスクの少女の心臓目掛けて撃ち込まれる。
     一発、二発、三発目からはチェーンソーでガードされる。
     やはり、地球の武器では、頑丈な異星人は殺しきれない。
     ボーガンの矢が脇腹に刺さるが、ホッケーマスクの少女は止まらない。

    「っ……!」

     だが、痛みは感じているのだろう。
     マスクの下から漏れる堪える声は、異星人でもあるにも関わらず、妙な親近感を覚えた。
     チェーンソーが振り回される。オオカワウソが血祭に挙げられていく。
     下降するエレベーターの中で虐殺は進行する。
     エレベーターに乗り込まれた時点で、結末は決まっていたのだろうか。
     あれだけ居たオオカワウソが次々と血溜まりに沈んでいく。

  • 789◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:35:32

     ホッケーマスクの少女も徐々に傷を負っていくが、その命が潰える前に、エレベーターのオオカワウソは全滅するだろう。
     ——彼女が、オオカワウソでなければ。
     ガン、とスコップが頭部に振り下ろされる。

    「っ!?」

     ホッケーマスクに罅が入る。
     驚愕の声を漏らしながら少女は自分に一撃を与えたオオカワウソを見る。
     スコップを構えているのはオオカワウソ。その足元にはスコップを持ったまま息絶えているオオカワウソ。

    「不死身……?」

     少女の喉から言葉が漏れた。

    「違うよ、増えるの」

     ざくり、とスコップが少女の背に突き刺さる。

    「ぐぅっ……」

  • 790◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:35:53

     少女は苦悶の声を上げながらチェーンソーを振り回し、背後のスコップを持ったオオカワウソを切り裂く。
     そして、エレベーター内を見渡し気づく。
     足元に敷き詰められたオオカワウソの死体。
     私の死体も、その中に混じっている。
     その上に立つ、全員がスコップを持ったオオカワウソの集団。
     荒い息を吐くホッケーマスクの少女。
     彼女はきっと気づいたのだ。
     今しがた死闘の末に壊滅させたオオカワウソの一団。
     それは、前哨戦に過ぎなかったと。
     巨大チェーンソー、そして少女の身体能力を加味し、オオカワウソたちは武器を選択した。
     オオカワウソは自分を増やせる。そして、アイテムも増やせる。
     スコップを持ったオオカワウソたちが、ホッケーマスクの少女に襲いかかる。
     きゃははははははははははははははははははははは。

  • 791◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:36:43

     子どものような笑みを浮かべながら、ホッケーマスクの少女を囲み、袋叩きにする。
     結果論だが、ホッケーマスクの少女は私を殺した段階で、即座にその場から逃げるべきだったのだ。
     このエレベーター内は、狩場だ。

    「うわあああああああああああああああああああああっ!」

     殺されたときは怪物のようにも思えた少女が、悲鳴を挙げながらもオオカワウソに立ち向かう。
     全身をスコップで殴打されながらもチェーンソーを振り回し、一人、また一人とオオカワウソを減らしていく。
     エレベーターは死体と臓物と血で溢れながら、下降を続ける。

    「きゃは」

     一人のオオカワウソが楽しそうに笑うと、自ら巨大チェーンソーの刃に飛び込んだ。
     ぎゃりぎゃり……!
     顔面をぐちゃぐちゃに斬り刻まれながら、オオカワウソは笑みを崩さない。

  • 792◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:37:05

     それで、意味が通じたのか他のオオカワウソも次々とチェーンソーに突っ込んでいく。

    「ひ、ひぃ……」

     狂気的な行動に、ホッケーマスクの少女は後ずさる。
     刃は回転を続ける。幾多のオオカワウソをぐちゃぐちゃにかき混ぜながら犠牲者を増やすべく活動を続ける。

    「きゃ——」

     新たに増やされるオオカワウソは刃の真下に現れる。当然、現れた瞬間に脳髄を切り裂かれる。
     きゃ、きゃは、きゃ、きゃきゃきゃ、きゃは、きゃ、きゃきゃ……。
     途切れ途切れの笑い声。
     ホッケーマスクの少女が続々とオオカワウソを葬っているにも関わらず、葬っている側の身体は恐怖で震え、オオカワウソは笑い続ける。
     そして——その時がやってくる。
     どぅる、どぅるるるるるるる……。
     刃の回転が遅くなる。

  • 793◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:37:33

     単純な話だ。
     オオカワウソの肉を巻き込みすぎたのだ。
     回転する刃に肉がこびりつき、回転は遅くなる。
     そして、斬り刻まれているオオカワウソの手が、ついにチェーンソーの刃に触れる。
     指が飛ばされ、手首が切断される。
     が、飛ばされた指の上から、手首の上から新たな手が重ねられる。

    「たの、しい……!」

    「これ……使える!」

     瞬間、『巨大チェーンソーを装備したオオカワウソ』が、エレベーター内に出現した。

    「っ!? …………がぁああああああああああっ!」

     ホッケーマスクの少女の判断は早かった。
     即座に自分と同じチェーンソーを持ったオオカワウソに特攻を仕掛ける。
     同じチェーンソー対決なら自分に分があると、そう証明するかのように。

  • 794◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:37:51

     素人である私の意見で恐縮だが、チェーンソー同士で戦うと考えるなら、やはり先に一撃を与えた方が勝つのだろう。
     どこを斬っても、致命傷になり得る。
     だから、先に一撃を入れるべく動いたホッケーマスクの少女の判断はきっと正しかった。
     オオカワウソも無限に発生するわけではないと、私は知っている。
     余力は残しておきたいとプールの前で言っていた。
     きっと増えるのには、増やすのには、どこかで限界がある。
     事実、巨大チェーンソーを持ったオオカワウソは一体しか出現しない。
     きっとオオカワウソにとっても地球産の道具を増やすのより体力を消耗するものなのだろう。
     だから、そうやってコストがかかった巨大チェーンソー係オオカワウソを、一撃で倒すことに成功すれば、ホッケーマスクの少女は戦闘のペースを握れたかもしれない。
     ……そうはならなかった。
     ぎゃりぎゃり。

  • 795◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:38:14

     横薙ぎに奮われた一撃は、盾によって防がれる。
     その盾は、人の形をしていた。
     ——私だ。
     巨大チェーンソーオオカワウソは、三つに増やした私の死体を盾にしてチェーンソーの一撃を食い止めた。
     どうやら生きている私は無理でも、死体なら増やせるらしい。
     増えるオオカワウソより、増えない私の方がやや頑丈だったのか。

    「ぐぅううう、嫌だ、こんな所で……!」

    「武器、ありがとう!」

     ドゥルルルルルルル!
     オオカワウソの振るったチェーンソーはホッケーマスクの少女を袈裟斬りにした。

    「あぁ……」

     少女はたたらを踏んだ。
     チェーンソーを掴んだままよろめく。
     勝敗は決した。

  • 796◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:38:45

     未だチェーンソーの刃は回転を続けているが、もはやホッケーマスクの少女の勝利は無い。
     そのまま敗北した少女はエレベーター内をふらふらと歩き、本能によるものなのか、下降を続けるエレベーターのドアにもたれるように倒れ込んだ。
     チェーンソーを回転させたまま。
     ギャギャギャギャ!
     エレベーターの階数ボタン……というにはボタンの数があまりに多い、漢字まで混じっているそのボタン群に、刃が振れ、火花が散る。
     ボタンは縦に切り裂かれていく。

    「げ」

     オオカワウソが顔を青白くさせた。彼女のそんな顔は、あいにく生前は視ることは出来なかった。
     次の瞬間、エレベーターは急速に下降を始めた。
     階数表示も目まぐるしく切り替わっていく。

    「五階」

    「4階」

  • 797◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:39:12

    「i階」

    「0・5階」

    「4階444444444444444444」

    「惨海」

    「六階」

    「七階」

    「∞階」

    「5階」

    「死階四肢四肢四肢四肢四肢四肢」

    「B1階」

    「B2階」

    「三階」

    「四階」

    「地下六階」

    「髯阪j縺溘i鬧�岼」

  • 798◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:39:31

     そして。

    「9223372036854775807階」

     エレベーターは、止まった。
     ドアが開く。
     ホッケーマスクの身体は外に投げ出される。
     僅かに胸が上下している。
     ——まだ生きている。
     殺された私としては、それは悔しがるべきなのか、あるいは喜ぶべきなのか。
     生き残ったオオカワウソたちは顔を見合わせた。私と一緒に冒険をしたメンバーはとっくに全滅していて、生き残った彼女たちはエレベーターの戦いの中で出現した個体だったけれど。
     彼女たちは慎重に外の様子を窺っている。
     狂気的な面と、探検家の面。きっと彼女たちには色んな側面がある。
     もう少し一緒に冒険したかった。けれど、彼女たちの苛烈な面に私がついていけなくなったかもしれない。

  • 799◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:39:56

    「知らないエリアだね」

    「どうする? どうする?」

    「戻り方も分からないよ」

    「じゃあ、進もう」

     死体が積み重なり、ボールプールのようになっているエレベーターから、オオカワウソたちは外に出る。

    「■■■―■」

     声が、響いた。
     ぎゅるり、と触手がホッケーマスクの少女に纏わりつく。
     そして、ホッケーマスクの少女は暗がりに引きずり込まれる。

    「何、こいつ!」

    「敵だよ! 敵だよ!」

    「私たちの物を、よくも!」

     オオカワウソの一団は周囲を警戒しながらエレベーターの外に出る。
     そして——立ち尽くした。

  • 800◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:40:31

    「何……これ……」

    「す、すっごーい」

    「全然わからん……」

     其処にあったのは、虚像。
     其処にあったのは、肉塊。
     其処にあったのは、触手の塊。
     どこまでも冒涜的な怪物。
     私は、これを知らない。
     きっとオオカワウソも知らないのだろう。
     なのに、私は自然と、之が何なのか知っていた。
     まるで脳に刻まれたかのように。
     之は、白■の王。正確には、その成り損ない。
     その真名は、「■■■―■」。
    「魔皇」にして「万物の王」。
     オオカワウソたちは、立ち尽くしていた。

  • 801◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:41:01

     その存在の大きさに。
     あるいは、あにまんマンションは、この存在が地下に封印されていたからこそ、魔境と化したのか。

    「ガッ……」

     触手に拘束されながら、ホッケーマスクの少女は血を吐く。
     此処に辿り着くまでに瀕死の重傷を負っているのだ。
     白■の王の成り損ないは、腐臭と粘着質な音を立てて、顎を開いた。
     私は未だにこの怪物の輪郭を掴めていなかった。
     得体が知れないのだ。
     成り損なったということは理解できる。
     それでも、この存在が神、邪神であろうと神々しさすら感じる。
     ホッケーマスクが割れて、私を殺した異星人の顔が明らかになる。
     マスクの下の顔は、普通の、恐らく同年代くらいの美少女だった。
     激しい戦闘で制服も破れ、中に着ていたであろう水着が露出する。
     少女は衰弱しきった顔で、苦悶の声を上げた。

  • 802◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:41:25

     顎が、徐々に近づいていく。
     嫌だ、と私は思った。
     殺されたくは無かった。
     会いたい人もいれば、知りたい事もあったし、欲しい物もあった。
     けれど、オオカワウソと一緒に居たことですっかり麻痺していたが、私たちは殺し合いをしているのだ。

    「……さま」

     私を殺した異星人にだって、きっと事情があったのだろう。
     悪いのは、アンドロメダ星人だ。
     私たちは殺し合いを強要され、その果てに成り損ないの化け物に喰われて終わり。
     そんなのは嫌だった。

    「ビリーバー……」

     と、少女は私の名前を呼んだ。

  • 803◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:41:50

     何故彼女が私の名を知っているのか。私は知っている。何故ならサロンスペースのオオカワウソを殺したとき、机の上に残しておいた私の書き物を、彼女は回収しているのだから。

    「貴女は、どこまで……」

     全部だよ、異星人。
     少女は、ゆっくりとスクーターに手を伸ばす。
     それは、無駄な抵抗だった。
     瀕死の異星人では、「■■■―■」は殺せない。
     オオカワウソたちでも、不可能だろう。
     エレベーターで他のオオカワウソや複製された私の死体と一緒にぐちゃぐちゃになっている私が生き返っても、意味が無い。
     けれど。
     スクーターが引かれる。
     刃が再び回転する。

  • 804◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:42:08

    「——触手(えっちなの)は許さないよ」

    【はくちのおう】の成り損ないはバラバラになった。

  • 805◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:42:43

     呆然とするオオカワウソの前で、バラバラになった触手が地面に落下する。
     拘束から解かれた少女は、うつ伏せに倒れ、死んだように動かない。
     その背後で、一撃で命を絶たれた白■の王の死骸が横たわる。
     宇宙に詳しくない私の推測だが、きっと少女のチェーンソーは、これらの宇宙生物に特攻なのだろう。
     ■■■―■が粒子となって消えていく。
     そして、反比例するように、少女の傷が消えていく。

    「……エネミーだったんだ、あれ」

    「エネミーを倒すと、魔力が……」

    「どうしよう、どうしよう」

  • 806◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:43:08

     少女が起き上がる。傷が全快している。破れたはずの制服が回復し、ホッケーマスクもまた再生している。やはり地球人とは違う体質なのか。
     追いつめられたのはオオカワウソだ。
     しかし、彼女たちの顔には怯えは視られない。

    「今の、すごい攻撃だったね」

    「欲しいね」

    「増やしたいね」

    「便利だね」

     強がりでは無いのだろう。
     きっと彼女たちは本気でそう思っている。
     ドゥルルルルルルルルルルルルル。
     オオカワウソの持つ巨大チェーンソーが回転する。
     それを、再臨した少女は、呼吸音と共に一瞥し。

    「今度は、私が奪う番」

     少女の背中から触手が伸びた。

  • 807◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:43:38

     それは、チェーンソーを持ったオオカワウソではなく、その傍らにいた、スコップを持ったオオカワウソに纏わりつく。

    「ぎゃあ」

    「大丈夫! その触手は、チェーンソーが特効だよ」

     チェーンソーを持ったオオカワウソが意気揚々とチェーンソーを振り下ろす。
     ぎゃりぎゃりと、触手に傷が入る。
     ——それだけだ。

    「あ、あれぇ? 一撃必殺のはずが」

    「違う」

     と、少女は言った。

    「それは、チェーンソーの効果じゃなくて、私の魔法」

     私の名前は、ハニーハント。
     と、少女は名乗った。

    「私の攻撃は——性的(エッチ)なものを即死させる」

     触手に捕まったオオカワウソが、ハニーハントの傍に引きずり出される。

  • 808◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:44:15

    「そして今、もう一つの権能を得た……!」

    「うわぁ」

     触手に縛られていたオオカワウソが、粒子化を始める。

    「え? 何で? 何で?」

    「マンションの中だと死体は残るはずなのに」

    「どうして? どうして?」

     あっという間に、スコップを持っていたオオカワウソは霧散する。

    「別にいいよ。減った分は、増やせば……」

     チェーンソーを構えたオオカワウソは余裕を維持したまま、次のオオカワウソを出現させようとして。

    「…………あれ?」

    「どうしたの? どうしたの? 出さないの?」

    「何で? 何で?」

    「——増えない」

     オオカワウソの顔は凍りついている。

  • 809◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:44:38

     それは、彼女たちの種族最大の特性が失われたことを意味していた。

    「——地上に戻れ! 仲間に伝えないと!」

     彼女たちは、一流だった。
     即座に残っていたメンバーは二手に分かれた。
     ハニーハントを足止めするグループと、地上に戻る手段を探すグループ。
     考えられる、最も合理的な手段。
     ——詳細な顛末を、書く必要は無いだろう。
     ハニーハントは傷を全快し、触手という新たな遠距離武器まで獲得した。
     一方、オオカワウソはエレベーターでの疲労を残したまま、増えるという最大の特性を失った状態で戦わなければ、あるいは逃げなければならなかった。
     ——あにまんマンションに留まっていたオオカワウソは全滅した。彼女たちは最期まで合理的に戦い、絶望的な状況でもハニーハントに一矢報いた場面もあった。だが、形勢を覆すことは出来ず、誰一人地上に帰る者はいなかった。

  • 810◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:45:07

     あにまんマンションは、外観はごく普通のマンションである。
     ベージュ色の五階建てであり、あにまん団地と比べその規模は小さい。
     ベランダには洗濯物が干されており、夜になればカーテン越しに明かりが浮かび、テレビの音や家族の笑い声が外部に漏れ聞こえる。
     郵便物も届けられ、NHKやセールス、宗教勧誘なども時折訪れている。
     ネットで噂される様々な心霊スポットと比較するとあまりにまっとうであり、歓楽街や「糧鮴」の方がよっぽど危険、同じ心霊スポットというジャンルでもアニマ精神病院の方が雰囲気があると評判である。
     そのエントランスに、ハニーハントは立っていた。
     彼女は、未来視持ちの私を殺し、一流の探検家集団を殺し、邪神の成り損ないまでも殺してのけ、見事異邦から脱出を果たした。

    「…………触手が出ない。マンション内限定の能力?」

     ホッケーマスクに覆われた顔は、感情を読み取らせない。
     私では、彼女の心までは探れない。

    「でも、奪った魔法は使える」

  • 811◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:45:35

     こー、ほーと無数の呼吸音が響く。
     エントランスから続々と姿を表すのは、いずれもホッケーマスクを被った制服の少女。
     ——複製された、ハニーハント。

    「……うん、あの子たちみたいに完全に複製ってわけじゃないね。本体の私と比べると身体能力も保有魔力も雑魚だし。固有魔法も使えない」

     新たな力を確かめるかのようにハニーハントは周囲を見渡す。

    「でも、この魔法は十分に使える」

     ドゥルルルルルルルルルルルルルル。

     ハニーハントのチェーンソーが回転を始める。
     それに呼応するように、他のハニーハントもチェーンソーを回し始める。
     歪なエンジン音が、マンション周辺に響き渡る。
     それは、まるで蜂の群れのようだった。

  • 812◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:45:52

    了 ビリーバー

  • 813◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:46:28

    「と、こんなものか」

     未来視した内容を手記として書き殴った木羽マミ、魔法少女名「ビリーバー」(もっとも彼女は自らを魔法少女とは知らないが)は、強張った身体を解すようにけのびをすると、そのままサーバーに向かった。
     オレンジジュースを口に含みながら、ビリーバーはこの後起こる未来について思いを馳せる。
     頭痛は消えない。【ここ数日】未来視を酷使し過ぎた。

    「——だけど、この未来は悪くない」

     ゲームが展開するにつれ、街に恐怖が満ちる。
     その恐怖を糧として、白■の王は、玉座に返り咲く。そうなれば、倒す手段は皆無だ。
     しかし成り損ないなら、相性バトルの世界に引きずり込める。

    「魔力リソースさえ確保できれば際限なく増殖するオオカワウソより、劣化増殖のハニーハントの方がマシだ」

     申し訳ない、とは思う。

  • 814◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:47:18

     これから色々親切にしてもらうオオカワウソにはババを引いてもらうことになるし、ハニーハントを殺人者にしてしまう。
     それだけではない。
     未来を選ぶということは、死者を確定させてしまうということだ。

    「済まない、フライフィアー」

     大親友の名を呟く。この未来では、彼女は序盤で死亡する。
     それを理解した上で、未来を確定させるためにビリーバーは手記を書いた。
     魔法少女を宇宙人と信じる、夢見がちで世間知らずの魔法少女の手記を。
     起こる事実は正確に、しかしそれを受けて自分がどう感じたかは捏造を。
     この手記をハニーハントが手に取り、白■の王をチェーンソーで倒すという未来を確定させるため。
     そして、更にハニーハントを経由して、【彼女たち】に手記を届けるため。

    「だが、この未来でも私たちの勝機は低い。限りなく零に近い。——だけど、零じゃない」

     ビリーバー。
     意味は、信じる人。
     と、サロンスペースの外で気配を感じた。
     ビリーバーは、オオカワウソとのファーストコンタクトの準備を始める。

  • 815◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:47:36

    「やぁ、私はビリーバー。地球人だ」

  • 816◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:47:55

    投下を終了します……!

  • 817◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 04:51:37

    補足

    ※B~Eチームのオオカワウソは存命ですが、固有魔法を失いました

    ※ハニーハントは新たに「劣化増殖魔法」と「触手魔法(マンション内限定)」を獲得しました

    ※【はくちのおう】の成り損ないは討伐されました。あにまんマンションの危険度が減少します

  • 818◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:01:11

    補足2

    ※基本的にダイスの結果を反映するために設定を使わせて頂いている面が大きいので、今後マンション周辺や運営周辺の設定をどこまで使うかは未知数です……ご了承いただけると幸いです……

    「〇〇というキャラをこの局面で退場させるならこの設定使わせていただくか……」という感じで話を作っているので、どの設定をいつ使うかはちょっと明言できないです……

    またその際に設定の変更があることもご了承いただけると幸いです……(なるべくそのまま使おうとは思っていますが)

  • 819◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:11:06

    各キャラの強さ関係はふわっとは決めています

    ただ、キャラの強さよりダイスの方が優先されるので

    パラサイトドールやアルセーヌ(邪神)でもダイス10以下ならその話で死亡します

    また、10以下の場合、不老不死や不滅系でも何らかの理由で死亡します

    また、
    例えば同じ話の生存ダイスでテンガイ9 メリィ91などのダイスが出た場合、テンガイはメリィに敗北(あるいは別の理由)でテンガイは死亡します。

    どれだけ強くても、キャラが立っていても、フラグを抱えていても、死ぬときは死ぬ企画なので、今更ですがご了承いただけると幸いです……!

  • 820◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:12:40

    14話の登場キャラ数dice1d4=1 (1)

  • 821◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:13:09

    dice1d44=22 (22)

  • 822◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:13:51

    31. 逝凪 素鈴/ワンフロムアウターが登場します……!

  • 823◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:14:48

    【逝凪 素鈴/ワンフロムアウター】

    生存ダイスdice1d100=73 (73)

    絆ダイスdice1d44=31 (31)

    関係性dice1d100=49 (49)

  • 824◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:16:52

    【逝凪 素鈴/ワンフロムアウター】

    生存ダイスdice1d100=73 (73)

    絆ダイスdice1d44=31 (31)→逝凪 素鈴/ワンフロムアウター

    関係性dice1d100=49 (49)→普通


    以上の情報を元に第14話を投下します……!

    舞台は旧アニマン音楽ホールです……!

  • 825◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 05:18:29

    本日もたくさんの感想ありがとうございます……! とても励みになります……!

    また、前作も評価していただきありがとうございます……!

    それでは、今後もよろしくお願い致します……!

  • 826二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 05:32:15


    絆ダイスで自分を引くパターン初めて見た

  • 827二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 06:43:07

    今日も良かった、乙
    エッチなのは駄目🙅死刑!!(チェーンソーぶんぶん)
    かみはバラバラになった
    次はものすごくぼっちな邪神分身体か、自分との絆が普通ってどうなんだ
    実はエネミーと契約出来るかとかSAN値減るのかとか色々気になっている

  • 828二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 07:36:24

    乙です
    まあ色々言われているパラサイトドールもダイス振ればあっけなく死ぬ世界だし天上とか天蓋とか強さ議論しても無駄だよね結局生存値が低い奴らからデウス・マキナの用に死ぬんだし

  • 829二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 07:42:14

    まあ!現状メアリースーザン以外振られて無いですけどね!いつ死ぬんでしょうね!

  • 830二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 08:01:32

    まあ運営はしゃないよ仮に運営陣営がダイス振って全員退場!したらゲームが本格的が回らなくなるから丁重に保護して強さを他の参加者より強さを盛って裏方に回さないと

  • 831二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 08:11:25

    参加者一通り終わってから運営と一般人の話やるって前に言ってなかったっけ
    その時に生存ダイス振るんでしょ

  • 832二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 08:14:01

    それまで運営は生存確定か…ダイス次第だけど先生とかテンガイみたいな強者組が死んで運営は残った雑魚を狩る光景が見えるだがどうなるかな

  • 833二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 08:23:30

    そもそも参加者扱いのメンダシウムの分身が10以下叩き出したからルールに則って運営側の本体ごと死んだのが希少なだけで、参加者の一巡後→運営、一般人の生存ダイスやるってのは最初にアナウンスされてたろ

  • 834二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 08:33:04

    乙です、全てが仕込みであったけど潜む巨悪は防げたか。未来視での指示ならビリーバーがエレベーターで最初に殺されたのも何だか納得です。……ワンチャン継承してないかな?

  • 835二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 10:28:46

    ハイエンドのお弁当に春巻作って上げた魔法少女の師匠は中華料理屋店主設定のブレイズドラゴンなんだろうか
    赤ん坊の時に親に捨てられたハイエンドを拾ったのが、幼い頃から戦場を渡り歩いていたらしい当時8歳のブレイズドラゴンだったりするのか

  • 836二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 12:38:03

    しかしマンションの全ての元凶っぽい邪神のなり損ないが倒されてマンションの危険度が減少したとなると、ビリーバーの推測ではマンションが根幹になってるらしいデスゲームにも影響があるのかどうか

  • 837二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 14:21:59

    マンション編面白かったな
    運営サイドの話になったらまた出てきそうだが…

    そしてビリーバーは死んだけどすごい爪痕を残していったなぁ

  • 838二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 16:39:43

    自分で自分に絆は低ければ自己嫌悪、高ければナルシストで説明つくけどこの出目はどうなるんだろうか

  • 839二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 16:41:07

    勘違いしとる人おるけどハッピーエンドを確約した企画ではないやろこれ

    ダイス次第では黒幕大勝利の可能性もある

  • 840二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 16:47:10

    魔法少女物で残酷設定とか鬱設定でキャ!キャ!しているけどバットエンド確定になるとこうなる面倒くさい生き物なのだ

  • 841◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:11:43

    短いですが、投下します……!

  • 842◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:12:17

     旧アニマン音楽ホール。
     元来は、様々な事情で家に帰れない魔法少女たちの棲家となっていたこの場所は、今、無人の空間となっていた。
     だがそれも、今この瞬間までの話。
     エントランスの扉がゆっくりと開かれ、一人の少女が顔を出す。
     星空のような美しいドレスに身を包む、十代中頃の少女。
     勝手知ったる様子で、少女は音楽ホールの中に入っていく。
     彼女が歩く度に、服から影のようなものが滴り落ちる。しかしそれは床を濡らすことなく、染みわたるように消えていく。
     どこまでも見透かすような支配者然とした瞳で、少女はホール全体を睥睨する。
     そして。

    「うう……一人は心細い……」

     一瞬でその空気は霧散した。

    「だ、誰か居ませんか~」

     迷子の少女のようにホールに声を響かせる。

  • 843◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:13:16

    「殺し合いなんて、素鈴には無理ですよ~」

     泣きべそまでかくが、それに応える者は居なかった。
     はぁ、と大きなため息をつき、少女は座席の一つに腰かける。
     少女の名は、逝凪素鈴。魔法少女名、ワンフロムアウター。
     日課は人助け、好きなものはかわいい動物、嫌いなものは生玉ねぎ。
     殺し屋、傭兵、殺人鬼が集うこの殺し合いでは珍しくまっとうな、王道を征く魔法少女の一人。

    「はぁ……これからどうしよう……」

     がっくりと肩を落とす素鈴。
     殺し合いなんて、絶対に駄目だ。けれど、どうやって止めればいいのか分からない。
     ぺちぺちと少女の肩を触手が叩いた。

    「シュマちゃん……」

     ワンフロムアウターの使い魔(仲間)の一人。
     少女の足元を粘体生物が纏わりつく。

  • 844◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:13:35

    「スラ君……」

     ワンフロムアウターの一番最初の仲間。
     二匹の使い魔に励まされ、少女の顔に徐々に元気が戻る。

    「そうだよね! 落ち込んでても仕方ないよね!」

     形状記憶メンタルとも称される彼女は、いつまでも落ち込みはしない。
     ぴょこんと椅子から立ち上がると、二匹の冒涜的な使い魔を伴って、ホールの散策を開始するのだった。

  • 845◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:14:12

    「誰も居なかったねぇ……」

     がっくりと肩を落としながらホールを後にするワンフロムアウター。
     伴っている触手とスライムも、どんよりとした雰囲気を漂わせている。

    「これからどうしよっか……二人はどう思う?」

     使い魔二匹と相談を始めようとしたその時。
     ワンフロムアウターは、弾かれたように、街のとある方向を向いた。
     目視できない遠方。……とある、マンションの方向に。

    「——おや、成り損ないが死にましたか」

     それまで持っていた素朴な雰囲気は影を潜め、神気さえ漂わせる雰囲気を漂わせながら、ワンフロムアウターは笑みを浮かべる。

    「——これは、【私】も安全圏ではないようですね……」

     浮かぶのは、諧謔。あるいは、憧憬か。
     触手が、少女の裾を掴み、引っ張った。

    「……ふぇ!? シュマちゃん、どうしたの? お腹空いた?」

     やれやれと、触手は肩(?)を竦める。

    「たはは、私も何だかお腹空いて来ちゃった……」

     ワンフロムアウターは変身を解除すると、コンビニに向かって歩き出した。

    「夜におやつ食べるのは駄目だけど……まぁ、今日くらいはいいよね!」

  • 846◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:14:36

    14話終了です……!

  • 847◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:15:15

    15話の登場キャラ数dice1d4=3 (3)

  • 848◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:15:47

    dice3d44=13 17 26 (56)

  • 849◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:17:27

    13.ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス
    32. 栗田 柿子/ジャスティスファイア
    12.冨島千秋
    が登場します……!

  • 850◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:18:40

    【ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス】

    生存ダイスdice1d100=22 (22)

    絆ダイスdice1d44=36 (36)

    関係性dice1d100=3 (3)


    【栗田 柿子/ジャスティスファイア】

    生存ダイスdice1d100=97 (97)

    絆ダイスdice1d44=23 (23)

    関係性dice1d100=70 (70)


    【冨島千秋】

    生存ダイスdice1d100=28 (28)

    絆ダイスdice1d44=43 (43)

    関係性dice1d100=56 (56)

  • 851二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:22:23

    おおぉ!ジャスティスファイアかなり高数値もしかするとワンチャンデスゲームが中止されるかも

  • 852◆xaazwm17IRZa24/03/13(水) 18:22:54

    【ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス】

    生存ダイスdice1d100=22 (22)

    絆ダイスdice1d44=36 (36)→らいと/フライフィアー

    関係性dice1d100=3 (3)→大嫌い



    【栗田 柿子/ジャスティスファイア】

    生存ダイスdice1d100=97 (97)

    絆ダイスdice1d44=23 (23)→木羽 マミ/ビリーバー

    関係性dice1d100=70 (70)→まぁまぁ好き



    【冨島千秋】

    生存ダイスdice1d100=28 (28)

    絆ダイスdice1d44=43 (43)→山田 浅悧/慈斬

    関係性dice1d100=56 (56)→普通


    以上の情報を元に第15話を作成します……!

    舞台は阿仁満温泉旅館です……!

  • 853二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:26:54

    >>851

    しかも今回の奴ら秩序側だから同盟組んで打倒運営!が出来るかもね(なおジャスティスファイア以外の生存ダイス)

  • 854二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:33:52

    うーん冷酷無比な性格らしいナターリヤが一番出目低いの死にそう

  • 855二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:39:38

    >>854

    前作や今までの生存ダイスの数値を見るに序盤でこの出目はねぇ

    ナサリーブラウンの例もあるから善人に囲まれててもあっさり死ぬのよね

  • 856二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:39:58

    これがクライオニクスvsジャスティスファイア回なら氷vs炎のドリームマッチが見られるじゃんね

  • 857二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:42:22

    間違ってたら申し訳ないがこれの次つまり
    16話で参加者の魔法少女は一巡でいいんだよね?
    残りの一人はマク=ハクさんだけだから
    登場確定になるから

  • 858二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:45:43

    シュマちゃんってシュマゴラス…

  • 859二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:46:23

    >>857

    そうだね。あと一人で一巡終了→運営と一般人視点→二巡目のはず

  • 860二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:56:33

    >>851

    単純に他の魔法少女の出番が潰れるのクソつまらんし、証拠集め切ったらデスゲームが中止云々は単なるフレーバーっしょ

    あとこの大怪獣決戦に米軍如きが介入してどうこうできるはずもないし

  • 861二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 18:59:45

    >>860

    そっかぁ黒龍設定とかテンガイ設定とかクゥトゥルフ神話設定もあるからてっきりあると思っていたよ確かに採用をするのはスレ主だからフレーバー採用されるまで単なるフレーバーか

  • 862二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:05:10

    死滅回遊の米軍よろしく化け物共の餌になって終わりそう

  • 863二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:05:16

    >>859


    ありがとう、そうなるとペース的にこのスレで

    一巡して次スレからは運営スタートなる感じかな?

    何にしても参加者一巡で死ぬのは最大で3人か

    死なないでほしいけど…二十代だからな…

  • 864二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:08:40

    うーむ此処のスレ主はパワーバランスを狂いそうなフレーバー受けれているから普通に見えるだけでクゥトルフ神話介入とかこのキャラ次元が違う強さ持つとかこのキャラ実は黒幕何ですしかも厄災の黒龍です!って設定他に出しても上手く処理できないよな、マジで凄いスレ主

  • 865二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:10:17

    日本語でおk

  • 866二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:13:21

    すれぬししゅご~い!

    >>865

  • 867二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:21:45

    >>861

    いや黒竜もテンガイもクトゥルフ関連も言ってみれば所詮はフレーバーよ?

    米軍乱入でデスゲーム中止はゲームシステムどころかメタ的な企画自体に介入してくるし流石にどうなのってだけよ


    あと黒竜設定も天蓋・天上設定も全部スレ主が膨らませたものだからね?

  • 868二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 19:58:11

    やっと来た出番なのに殆ど語られない素鈴ちゃんに悲しき現在……
    いやまぁ知り合い居ないしぼっちだし戦闘もなかったから語ることないのはそうなんだけどさ

  • 869二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 20:03:55

    >>868

    大怪獣決戦にメンタルが強いぐらいの子を出されてもねぇ(なお“お友達”)

  • 870二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 20:31:30

    まだまだ実力の底が見えてない人はめちゃくちゃ強いんですよね。OFOちゃんの今後に期待だ。

  • 871二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 20:36:30

    なんのバックグラウンドもない強者って意味ではヒートハウンドが一番異常な気がする
    設定に強さへの言及少なめだからこその強キャラ感というか…

  • 872二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 20:46:49

    頭の良さそうで応用が効く能力持ちが気になるかなオオカワウソ程とはいかなくても弱者なりに知恵と工夫を凝らして戦うとか好きだから楽しみ

  • 873二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 21:39:09

    OFOも本体自身は出て来る気はないらしいけど、誰かが変なことして引き摺り出されたら暴れるだろうし隠れた地雷ではあるんだよな

  • 874二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 21:45:55

    冨島千秋ちゃんも天敵と言っていい氷使いのナターリヤがいるし数値的にも危険域か

  • 875◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:45:21

    投下します……!

  • 876◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:45:58

    「それで、こんな時間に呼び出して、話とは何だ?」

     夜の公園のベンチに、スーツを着た白人男性が座っている。
     地味な顔つきをしており、たとえすれ違ってもすぐにその顔を忘れてしまうような、そんな雰囲気を纏っていた。
     男の名は、ジョン・ゲイリー。FBIである。
     彼の任務は共にあにまん市に潜伏している同僚・ジャスティスファイアとの連絡係。
     それとは別に、この日本での任務が終わればジャスティスファイアに告白しようと考えているが、それはあくまでジョンの個人的なミッションである。
     ジョンの周囲に人影は無い。
     それくらいの調査は既に済ませている。

    「ジョン・ゲイリー」

     と、どこからともなく声が聞こえた。

    「ケータイやメールでは駄目でした。直接会って伝えなければ」

  • 877◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:46:28

     人影が無く、声だけが聞こえるという状況でも、ジョンは取り乱さなかった。
     ジャスティスファイアの変身態なら、公園の様々な場所に隠れられると知っているからだ。

    (まぁ、変身していなくても、柿子なら気配を消して潜伏できるだろうけど)

     外見こそローティーンにしか見えないが、栗田柿子はFBI所属の優秀な隊員だ。
     潜伏能力や擬態能力ならあの伝説の傭兵・ナサリーブラウンを凌駕するのでは、とジョンは密かに思っている。

    「直接伝えたいこと……やはり、例の儀式か?」

     ジョンも柿子も、それを調べるためにアメリカからやって来たのだ。
     わざわざ柿子を疑似的な魔法少女に仕立て上げてまで。

    「はい。
     驚かないで聞いてください。
     既に私は、儀式に参加しています」

     ジョンは思わずベンチから立ち上がった。きょろきょろと夜の公園を見回すが、ジャスティスファイアの姿は見えない。

  • 878◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:46:56

    「……無事なのか」

    「はい、今のところは」

     今のところは。それはつまり、儀式が危険なものであることを示していた。

    「……それで、どんな儀式なんだ」

    「その前に、言っておかなければいけないことがあります」

     ジャスティスファイアの言葉は、どこまでも冷静だった。

    「恐らく、私はもうすぐ死亡します」

    「何だと!?」

     ジャスティスファイアとは対照的に、ジョンは容易く冷静さを失った。

    「どういうことだ!? それも儀式に関係しているのか?」

    「落ち着いてください、ジョン。確実に死ぬと決まったわけではありません。
     ただ、何らかのペナルティを負う可能性が高いです……そして、ゲームの目的を考えれば、死ぬ、と考えるのが妥当かと」

    「……それを聞いて、俺が受け入れると思ってるのか? 仲間を殺してまで情報を得ようとは思わない。ペナルティに接触せずに情報を獲得する術があるはずだ」

  • 879◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:47:21

    「ええ、私もそう思います。けれど、時間が無い。……早急に儀式を終わらせなば、犠牲者が増え続ける」

    「だが、そのために君が死のリスクを負う必要があるのか?
     今の君の証言だけでも貴重な情報だ。長官に直ちに伝えよう。そうすれば人員を増やして大規模な捜査が……」

    「それでは、遅い」

     ジャスティスファイアの言葉は、どこまでも落ち着いている。
     もうすぐ死ぬと宣言したにも関わらず、まるで取り乱す様子も無い。
     時折ジョンは、彼女のそういう面が怖くも感じる。
     米国育ちにも関わらず、柿子には、確かに日本人の神風精神が根付いている。

    「遅い、だって? 今すぐ連絡すれば正午には数十人のFBIがあにまん市に派遣される。米国と提携している魔法少女も何人か派遣されるはずだ」

    「——儀式の裏に居るのは、魔法の国です」

     なっ……とジョンの思考が驚愕で停止する。

    「もっとはっきり告げましょう。……儀式の主催者は、魔法王です」

  • 880◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:47:44

    「そ、それはつまり……」

    「ええ、儀式を中段させるためには魔法王を取り押さえる必要があります。
     つまり、米国と魔法の国は——全面戦争に突入します」

    「嘘だろ……!」

     それは、ジョンの想像を超える規模の話だった。
     ジョンの想定では、精々数人規模の魔法少女の集団。
     それが、魔法の国の王が、黒幕。

    「相手は魔法の国。恐らく米国だけでは足りない。……人間界の魔法少女を総動員することになるでしょう」

    「何が始まるんだ!?」

    「第三次大戦……魔法戦争です」

     ジョンの脳裏に拡がったのは、箒に乗った魔女と、戦闘機がドッグファイトえお展開する光景だった。
     馬鹿げている。
     だが、堅物のジャスティスファイアが冗談を言うわけがない。

  • 881◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:48:15

    「……まさか、ジャスティスファイア、君の狙いは」

    「私は、直ちに軍隊の出動を要請します。そして、諜報員の追加ならともかく、即座の軍隊出動を動かすには、私の証言だけでは足りない」

     故に、私は死ななければなりません、とジャスティスファイアは言った。

    「諜報員がペナルティで死亡すれば、緊急性への説得力が産まれる。……敵討ちの大義名分が立つ」

    「早まるな、ジャスティスファイア。君は……冷静さを欠いている。
     君が死ぬ必要はない。物的証拠を集めるんだ」

    「……私の変死体が、何よりの物的証拠になるはずです。
     それに、ペナルティは死とは限りません。
     事実、私は既に黒幕の名さえ明かしています。しかし、未だペナルティが訪れる様子はない」

     確かに、とジョンは思う。
     事件の黒幕さえ、部外者のジョンは掴んでしまった。
     しかし、ジャスティスファイアに何かが起こった様子は見られない。

  • 882◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:48:44

    「……私の決意は変わりません。今こうしている間にも、儀式の犠牲者が出続けているはずです」

    「……分かった。その代わり、姿を見せてほしい。もしもの場合、直ちに蘇生処置を行う必要がある」

    「ペナルティがどういったものか分かりません。巻き込む可能性があります」

    「だが、ペナルティがどういったものなのかも把握しないといけないだろう。……死体すら残らないものだった場合、私は記録として残さなければならない」

     片思いをする女性の死を、映像として残す。
     悪夢のような想像だったが、ジョンはそれを受け入れた。
     彼もまた、FBIに所属するエージェント。修羅場は潜っている。
     近くの茂みから、少女が姿を表す。
     日焼けをした、黒髪ショートのローティーンの少女。鍛えられ引き締まった体格は健康的な美を形作っていた。

    「ジョン、辛い役割をおしつけて申し訳ありません」

    「気にするな柿子」

     ジョンはスマホの録画機能を起動した。

  • 883◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:49:12

     愛を伝えるべきか、とジョンは惑った。
     だが、それは余分だと、切り捨てる。
     何年も共に任務をこなしてきた、二人の男女の視線が交わった。
     すっ、と柿子は小さく息を吸った。

  • 884◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:49:36

    「あにまん市では、魔法少女が集められ、殺し合いを強要されています」

  • 885◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:50:51

     変化は、劇的だった。

    「ガッ……ガアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

     苦悶の声を上げ、のたうち回る。
     全身に広がる、黒い紋様。
     呪いは、発動した。

    「そんな馬鹿な……」

     無事だった方は、呆然と立ち尽くす。

    「どうなってる……!?」

  • 886◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:51:20

     柿子からは、冷静さが霧散していた。

    「どうしてジョンの方なんだ!?」

    【「一つ、殺し合いが行われていることを非参加者に伝えること」】

     魔法王の言葉を思い出す。

    「まさか、伝えた方ではなく……」

     一切の不調が発生していないキリコ。
     苦悶の叫びをあげるジョン。

    「伝えられた方が死ぬのか!?」

    「ぐうううううううううううう、があああああああああああああああッ!」

     口内から血の泡を吹きながら、ジョンはスマホを手に取った。
     最期の力を振り絞り、とある場所に電話をかけようとする。

    (不味い……! もし、ジョンがFBIに今の情報を伝えれば……!)

     最悪の場合、FBIは全滅する。
     それを防ぐには。

    「くそっ、くそっ、畜生……! 済まない、済まないジョン!」

  • 887◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:51:55

     ジョンの額に風穴が空いた。
     苦悶の表情のまま絶命したジョンに駆け寄ると、柿子はそっと瞼を降ろす。

    『どうした、何があった?』

     液晶の向こうから聞こえてくるのは、FBI副長官の声だ。

    『ゲイリー捜査官、直ちに応答しろ』

    「……ゲイリー捜査官は殉職しました」

    『その声は……ジャスティスファイアか。何があった? 儀式が始まったのか?』

    (どう答える……?)

     正直に話せば、ジョンの二の舞だ。

    (伝えられたら死ぬ……では、自発的に知った場合は、その対象ではないのか? それとも、「知った」段階でアウトなのか?)

     もし知っただけでアウトなら……これ以上FBIが介入することは自殺行為だ。

    (駄目だ、情報が足りない……)

    「今はまだ……何も話せません」

    『何だと?』

  • 888◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:52:35

    「私を信じてください。今は何も話せないんです。……そして、あにまん市を調べることを、一時的に中止してください」

    『君は、何を言っているのか分かっているのかね』

    「とにかく今は、私の言葉を信じてください……これ以上、犠牲者が出る前に」

    『…………なるほど、そういうからくりか』

     副長官は優秀な男だ。
     柿子の言葉だけで、ジョンが死んだ理由を察したのだろう。

    『分かった。君から新たな連絡があるまで、この件に介入することは控えよう。ただ、ゲイリー捜査官の遺体だけはこちらで処理する』

    「ありがとうございます。新たな情報を獲得次第、追って連絡します」

     柿子は、自らのミスで死なせた同僚の遺体を茂みに隠すと、その場を後にした。

    (……想像以上に、恐ろしい事態だ)

     伝えられたら死ぬ。
     仮に、参加者の一人がネットに真実を書き込みでもしたら。
     待っているのは大量死だ。

    (この事実を、他の魔法少女に共有しなければ)

     柿子はジャスティスファイア……赤いシェパードに変身すると、夜の街を駆け始めた。
     異性として好意を抱いていた同僚の死を無駄にしないため、正義の炎を燃やしながら。

  • 889◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 01:52:53

    投下を終了します……!

  • 890二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 02:11:48

    乙です、ペナルティは秘密主義というよりは外部との連携を阻止するような効果になるのね…

  • 891二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 02:21:39

    気になってOP見返してみたら、確かに"誰が"ペナルティを受けるとまでは言ってなかったし

    1スレ目>> 6のルール説明もあくまで"市外に出た場合"の話だわ……

  • 892二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 07:45:11

    うわあ…ペナルティってそっちが罰するのか…
    単なる秘密主義かと思っていたけどこれはエグい

  • 893二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 11:30:59

    エネミー案
    【名前】
    グール
    【説明】
    死体に魔力を流し込む事で誕生する生ける屍。激しい飢餓感から生者を襲う。
    グールに殺された者もグールになってしまう。
    魔力で強化された肉体は魔法少女をして脅威だが、知性は無く動きも緩慢なため一般人でも対処できる。
    墓場や安置所の死体に大気中の魔力が混入したことで復活した自然発生タイプと、人為的に復活させられたタイプの2種類が存在する。

    糧鮴の抗争で運用されるような重武装を施された大量のグールは危険性が途端に跳ね上がり、銃火器で武装した一般人程度では対処不可能となる。(画像は分かりやすい例。OVA版ヘルシング二話より抜粋)

  • 894二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 12:36:06

    怪異とかエネミーとかって多分一般人生存ダイス振ってから出そうなんだよな登場人物が一人の時も大体独白で終わるし

  • 895二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 12:42:26

    >>894

    今まで出た奴らはガーゴイル、 スラグソウル、メンシュ・パンツァー、ゴリアテ、宣教師(ミショナリー)ぐらいか?

    大体キャラの強さを分かりやすくするための当て馬だけど

  • 896二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 16:56:24

    クライオニクスと冨島千秋が脱落と仮定すると0時から開始して夜明け前までに参加者の4分の1が脱落か
    デスゲーム物あまり詳しくないけどペースとしては早いんだろうか

  • 897二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:06:45

    >>896

    前作はもっとガンガン脱落してたような

    二巡目からは話の大筋決まってくるのもあってか、かなり緩やかになるけど

  • 898二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 21:12:34

    前作は第一回放送までに7人死んでるね
    今回は既に9人(アルセーヌ合わせると10人)死んでるから意外とペースは今回の方が早かったりする

  • 899二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 21:17:28

    >>898

    マジか。記憶違いだったわすまねえ

  • 900二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 22:01:30

    12話後編で本スレにはあったブラックブレイドの死亡通知がウィキの掲載版では無くなって場面転換してるんですが、ただのコピペミスですかね

    それともハスキーロアが魔法や葉月ちゃんの意志を継承したとかに関連づけた何らかの伏線ですかね。死んでるけど死んでないみたいな

  • 901二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 22:03:51

    マンション編の感想を書くタイミングを失ったので話の流れを切る感じになるけど投げときます

    ビリーバーに脳を焼かれました(要約)

    (↓感想書いたTe1egraphです)

    x.gd
  • 902◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:06:56

    ■■■■■■dice1d100=79 (79)

  • 903◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:26:18

    投下します……!

  • 904◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:27:15

    「まったく、どこまでも人を馬鹿にして……」

     ずんずんと音を立てながら木張りの通路を歩く、少女が一人。
     露出度の高いベリーダンサーのような恰好をしているが、その顔に余裕は無く、肩は怒りで震えている。

    「私は、魔法の国から魔法少女の犯罪を取り締まるよう命じられている……!」

     怒りを吐き出しながら少女は進む。

    「なのに、よりにもよって、魔法の国のトップが犯罪に手を染めて……無辜の魔法少女に殺し合いを命じるなんて……許せないっ!」

  • 905◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:28:44

     オープニングではハスキーロアを庇うために、魔法王に阿った態度を取ったが、正義感の強い千秋の心は怒りで煮えくり返っていた。

    「しかも、最初の場所が旅館ですって……! 私を、殺し合いの最中に
    のんびり温泉に浸かるような馬鹿だと侮辱しているのかしら……!」

     彼女の怒りに呼応するように、周囲に砂が展開される。
     激怒しているが、かといって冷静さを失わったわけではない。
     自分と同じように、ここが初期位置の参加者も居ると推測し、臨戦態勢は撮っている。
     ……本来なら、一般人が目撃されうる場では、魔法は使わない。
    だが。

    (この旅館に、一般人は居ない………)

     オープニングが終わり、客室で目を覚ましたとき、魔法の国の役人を名乗る男が、そう説明したのだ。
     此処は、魔法少女と運営関係者しか入れない場所。本来なら入場時に説明するが、千秋は初期位置が旅館の中なので、わざわざ説明に参ったと。

  • 906◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:29:10

     即座に千秋は男を拷問にかけたが、有益な情報は持っていなかった。魔法国に仕える一役人でしかなく、魔法王の狙い、このゲームの攻略法などは知らないという。
     文字通り砂を嚙まされた男に謝罪し、千秋は旅館を後にすると決めた。
     だが、その前に一通り散策し、情報を入手する。
     水は苦手だ。
     だが、温泉に浸からなければ問題は無いだろう。
     エステルーム、美容室などを順に回るが(もちろん利用はしない)、目ぼしい物は無く、無駄骨に終わった。
     温泉内も調べるかと考えたが、リスクを考慮し辞める。

    (それにしてもわざわざ温泉旅館を作るなんて。魔法王は何を考えて……)

    「はー、さっぱりしたザンス」

     女湯ののれんがはためき、幼い外見の少女が姿を見せた。

    (……嘘!? 本当に温泉使ってる魔法少女が居た!? しかも調査じゃなくて、がっつりレジャー目的で使ってる……!?)

    「んん?」

  • 907◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:29:58

     女湯から出てきた少女は、呆然と立つ千秋を前にして目を細める。

    「チミは誰ザンスか?」

    「……私は冨島千秋。……ゲームには、乗ってないわ」

    「はぁ?」

     少女はわけがわからないといった風に首を捻る。
     そして。

    「ああ、もうゲームは始まったんでザンスね。ご苦労なことでザンス」

     じゃ、精々頑張って、と手を挙げ、少女は千秋を無視して、売店へ向かおうとし。
     ——その行き先を、砂の壁が遮った。

    「なんの真似ザンス?」

    「——今、おかしくなかったかしら?」

    「何もおかしくないザンスよ。おかしいのはお前の頭ザンス」

    「——貴女の口ぶり、まるで参加者ではなく、運営側な気がするんだけど。
     気のせいかしら。気のせいよね。
     貴女もきっと、魔法王に命じられて殺し合いを強制されている『奴隷』よね。
     さぁ、奴隷同士、手を取り合って頑張りましょう」

  • 908◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:30:43

    「——ミーが、魔法王に命じられて、奴隷?」

     砂が、崩れた。
     砲弾でも撃ち込まれたかのように、大穴が空いている。
     分かっていて挑発した。
     この幼い少女は「運営側」だと理解したうえで、煽った。
     少しでも情報を得るために。
     だが。

    (藪蛇だったかしら……)

     少女の、拳による一撃で破壊された砂の壁を見て、千秋は戦慄する。
     何らかの固有魔法によるものではない。
     ——純粋な、身体能力による破壊。

    「ミーが、人間の、奴隷だと……?」

     額に青筋を浮かべながら少女は千秋の方へ振り返った。

    「許さん、絶対に許さんぞ……」

     怒。
     全身に怒気を漲らせながら、幼い少女——妖精貴族・アロンダイトは宣言した。

    「殺してやるぞ、魔法王」

  • 909◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:31:15

    (あれ?)

     思わぬ方向に怒りが向けられたことに、千秋は呆気に取られた。
     てっきり殺意は自分に向くと思ったが。

    (ああ、違う。こいつ、自分が魔法王の奴隷ではないことを証明したいのね。……なんて短慮で、負けず嫌い)

     幼いのは外見だけではないということか。

    「奇遇ね。私も魔法王には激怒していたの。協力しましょう」

    「はぁ? 何言ってんのクソ人間? 魔法王の前にまずはてめえらから血祭にあげてやんよ」

  • 910◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:32:02

    「魔法王は後回しでいいのかしら?」

    「ばーか、殺し合いを優勝者無しでぶっ壊してやったら、あいつ悔しがるだろ。処刑はその後だよ」

    「そっか。残念」

    (へぇ、悔しがるんだ)

     それは、企画した余興が失敗した程度の怒り?
     それとも、重大な儀式が完遂できなかった焦り?

    (もう少し情報を得たいけど、そういうわけにもいかないか)

    「ミーの名前は、アロンダイト」

     魔力が集合し、少女の矮躯を遥かに超える大剣が姿を表す。

    「貴族妖精、アロンダイトだ。覚えてくたばれクソ人間!」

     大剣が、振り下ろされる。
     砂の盾は間に合わなかった。
     千秋は、頭部から一直線に両断される。
     破壊は、それだけでは済まなかった。

  • 911◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:32:29

     剣によって生じた衝撃波が床と天井を切り裂き、断絶を引き起こす。
     雑多に商品が置かれた売店も、木張りの長い通路も、化物が描かれた悪趣味な絵画も、皆一様に切断され、微塵と化す。
     ブラックブレイドのように万物を切断する魔法——ではない。
     純粋な膂力。
     妖精貴族・アロンダイト。その身体スペックは、生身で魔法少女を優に超える。人類をブッチギリで凌駕した、種族差。
     一撃で大破壊を展開したアロンダイトは、大剣を担ぎ——不快そうに顔を歪めた。

    「クソ人間が。——こざかしい魔法、覚えやがって」

     両断された千秋は、左右非対称の笑みを浮かべる。

    「生憎、これしか能が無くてね」

     切断面から零れるのは、血や臓腑ではなく——砂。
     砂場の城を壊したかのように、彼女の身体は砂の粒子と化し、やがて一つの人型へと集合する。
     顕れるのは冨島千秋。露出する肌には傷一つ無い。

  • 912◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:32:59

    「『体を砂に変えられるよ』。それが、私の魔法。アロンダイト、貴女じゃ私を殺せない」

    「——不愉快ザンスねぇ……」

     額に青筋を浮かべながら、アロンダイトは吐き捨てる。

    「その、『○○できるよ』みたいな魔法名。ここ数世紀は流行ってるザンスが、ミーは昔の『○○をする魔法』の方が好きだったザンス。魔女を魔法少女と呼ぶようになってからでしょ、呼び方が変わったのは」

    「あら、意外とお年寄りだったのかしら。なら良かったわ」

     千秋の手に砂が集まる。現れるのは、砂の剣。

    「遠慮なく拷問できる」

     千秋に剣の経験は無い。
     しかし、彼女もまた魔法少女。アロンダイトと比較すれば劣っているが超人的な身体能力は有している。
     人間に振るえば骨ごと一刀両断できる程の一撃。それを、アロンダイトは無造作に大剣で受けとめる。
     体格は、遥かに千秋の方が有利だ。

  • 913◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:33:34

     だが、そんな人間界の常識は意味が無いと言わんばかりに、アロンダイトの剣は微塵も動かず、振り下ろした千秋の剣が衝撃に耐え切れず崩壊する。

    「ふん、所詮は砂遊びしか出来ない幼稚な魔法ザンス」

    「くっ……」

     千秋の顔が悔し気に歪み。

    「——砂、舐めんな」

    「がっ………………!」

     アロンダイトの顔が、驚愕で歪んだ。
     剣を象っていた砂は飛び散った。
     強固さは失われ、滑らかな流砂へと戻り——それは、アロンダイトの鼻と口を覆った。

    「……っ! ……っ!?」

     生理的不快感(果たして妖精が人類と同じ生理なのかは置いておくとして)から、アロンダイトは顔に纏わりついた砂を指で強引に引きちぎる。
     砂は、鉄に限りなく近い強度を持っていた。

  • 914◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:33:56

     が、指でコンクリートを引き裂けるアロンダイトの膂力にかかれば、大した強度ではない。
     顔を覆っていた砂を引き剝がし、怒りの声を上げようとして。

    「おのれ、クソに……っ!」

     ——再び砂が集まり、アロンダイトの顔面を覆う。

    「言ったでしょ、砂舐めるなって」

     冨島千秋に、物理攻撃は通用しない。必然、千秋が操る砂もまた物理攻撃は通用せず、アロンダイトの抵抗も無為に終わる。
     鼻と口を塞がれ呼吸を、目を塞がれ視界を奪われる。

    「じゃあ、拷問始めよっか♡」

  • 915◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:34:21

    投下を終了します……!

  • 916二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 22:43:13

    技量とか無さげな上にプライドは高いあたり所詮は管理係の役人ですね
    アロンダイトちゃんこの性格だし運営陣営の全員から嫌われてそう

  • 917二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 22:51:22

    手数の差で負けたか…対抗手段が無い何も出来ないパワー型はこうなる宿命かな…

  • 918◆xaazwm17IRZa24/03/14(木) 22:56:39

    >>901

    Te1egraphでの感想ありがとうございます……!

    ビリーバーの描写に関しては「未来視→死亡表記からスタート」という思いつきから膨らませてみました

    書いていくうちにオカルト探求者とマンション探索者で似通った面があると気づき、描写を盛っていきました。

    楽しんで頂けたのなら幸いです……!




    >>900

    申し訳ありません……!

    すぐ修正します……!



    >>898

    確か前作は一巡10日間くらいで書いていたので、ペースが遅いと感じられるのかもしれません……!

    ペースが遅い理由としましては

    ・私の時間管理の下手さ

    ・全員超人なので簡単には死なない

    ・全員超人なので戦闘が派手になりやすい

    などがあると思います……!


    企画自体がだいぶ長期戦になると思いますが、皆さんとしてはもう少し展開を早くした方がいいでしょうか……?

  • 919二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 23:06:07

    ペースとしてはこのままでいいんじゃないかな。元々長期企画だし

  • 920二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 23:11:11

    面白く読ませてもらってます
    私はスレ主さんのペースでやりたいようにで
    良いと思います
    最後まで付き合うつもりですので…少なくとも
    私が書いた参加者の最後を見届けるまでは……
    ちなみに私は前スレで5人書いたよっと書いた
    者ですが……何と半分の
    二人が序盤で死んでしまいました……
    うう…悲しいけどいいキャラしてたので嬉しい
    ちなみになくなったのは空とナサリーです
    生きている3人には頑張ってとエールを
    あ、スレ主さんにも

  • 921二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 00:01:14

    長期戦になればそれだけ長く楽しめるのでOKです!

  • 922二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 01:02:20

    アロンダイトを見るに後で投げられた分も居るとすると、運営側の戦闘要員はヴェンデッタ、勇者、グレンデルの3人か。全員別ベクトルで狂人だし割と仲良く組んで仕事してそう

  • 923二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 01:54:03

    乙でした~ 物理攻撃相手に砂化は良く刺さる……

    ペースについては概ね皆と同意見です
    ただ、如何せん登場人物が前作の比じゃない(初期メンバーだけで44+5人!)ので、設定の掘り下げは現段階で無理をしてまでやる必要はないかなとも思いますね
    今生き残ってる全員が前作終盤並みの情報密度だと完結より先に一周年を祝うことになるんじゃないでしょうか

  • 924◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 02:13:07

    皆さん貴重なご意見ありがとうございます……!


    背中を押して頂いたので、基本的に今のペースを維持していこうかなと思います


    ただ、>>923さんの仰られる通り、無理をしてまで掘り下げはやらないよう注意します(油断すると各キャラのバックストーリーを盛りたくなるので、ある程度自重します)

    目標としては、まどマギ映画の前には完結させたいです……!


    それでは、本日もありがとうございました……!

    今後もよろしくお願い致します……!

  • 925二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 07:49:30

    あまり事情を聞かされていない運営の戦闘要員って情報で扇動しやすいなぁ

  • 926二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 12:50:49

    前作知らんからこのペースで良いと思う
    別に前と同じにしなきゃならない決まりはないし

  • 927二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 13:20:29

    こんな企画他にないから自分は最後まで追い続けると思うし、むしろ長期戦でやってくださるなら大歓迎だな
    いろんなキャラに掘り下げや新設定が生えてくると思うと今からワクワクが止まらない

  • 928二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 13:21:49

    ダイス値的にアロンダイトは人質として生かされそうだけど当の冨島ちゃんは死ぬかもしれないんだよな…果たしてどうなるか

  • 929二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 13:39:08

    少し遡るけどもしもオオカワウソの魔法が「増えた分弱くなる」なら、便宜上本体に相当する個体はとんでもなくムキムキで強いのかもしれない

  • 930二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 13:43:05

    アロンダイトさんもいまは運営側の魔法少女1人目としてお披露目ぐらいかもしれないね、しかしまあ魔法国で頑張ってる子を利用するだけでなく強者を傍にポップさせるなんて魔法王っていうのは結構鬼畜なんだな。

  • 931二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 21:10:55

    今までそういう痛みを経験したこと無かったから拷問でプライドが折れるか、腐っても強者側で耐え続けた後に殉職するか

  • 932二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 22:25:25

    そういえばバトロワあるあるの会話不可能系バーサーカーがいねえなと思ったので、運営側の魔法少女とエネミーの中間みたいなキャラ案

    【名前】アグネア・ミストリル
    【変身前・変身後の外見】
    赤黒く変色した騎士甲冑を纏う金髪紅眼の女性
    長髪を振り乱し、血涙を流している
    【年齢】36歳
    【性格】
    元は清廉潔白な騎士として理想的な人物
    現在は理性を完全に無くし、運営以外の全てに見境なく襲いかかる
    【得意な魔法】
    『太陽が味方してくれるよ』
    太陽の炎熱を肉体から放出するだけの魔法だが、規格外の魔力量により戦略兵器級の破壊力を持つ
    聖剣(マジックアイテム)に魔力を収束させることで業火の斬撃を遠近に連発し、最大解放時には射線上の全てを薙ぎ払って根こそぎ焦土と化す
    【詳細】
    魔法国最強の騎士と謳われる魔法王近衛騎士団長。同時に魔法王の姪でもある
    パラサイトドールの支配を受けただけでは操りきれなかったので脳を不可逆なほどに弄られた
    そのため神業の剣技も冷静な判断力も完全に失ったが、固有魔法とパワー&スピードは健在
    【備考】
    有事の際に解き放たれてデスゲーム参加者に襲いかかる(細やかな指示はできないが撤退命令ぐらいならできる)
    騎士として自分を討ってくれる誰かを待ち望んでいる

  • 933二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 23:17:02

    相性的にヒートハウンドなら完封出来そうなのやっぱあの犬やべえなって再確認

  • 934◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:25:39

    投下します……!

  • 935◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:26:43

     冨島千秋は、アロンダイトを完封した。
     起こった事象だけを抜き出せば、そう表現できる。
     しかし、これは薄氷の上の勝利だった。
     体を砂に変えられる千秋だが、一定の限界がある。
     全身を完全に砂に変えてしまった場合、元には戻れない。事実上の死を意味する。
     つまり、アロンダイトがその身体スペックを生かし、千秋を刻み続ければ、千秋は敗北していたのだ。
     また、そもそもアロンダイトは本領を発揮していなかった。死亡した魔法少女のステッキから武器を錬成できる魔法。それが、アロンダイトの固有魔法であり、日が昇れば彼女は死亡した参加者から好みの者を見繕い、武器化する予定であった。が、未だ序盤であり、アロンダイトは死者をステッキ化していない。
     貴族妖精のスペックを鑑みれば、ステッキなど無くとも参加者如きごり押しで潰せるという慢心。

  • 936◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:27:14

     現れた千秋をただ砂に変わるだけ、天蓋に到達すらしていない雑魚と判断したこと。
     それが彼女に敗北を突き付けた。
     確かに、千秋の魔法は他の魔法少女と比較し、お世辞にも極上とは言えない。
     物理攻撃の無効化ならヒートハウンドの方がより殺傷力があり、武器の錬成ならアレヰ・スタアの方がより多岐に渡る。
     だが、冨島千秋の強みは、そこにはない。
     彼女の最大の長所は、「魔法の国で魔法少女の犯罪を取り締まっている」というその経歴にある。
     魔法の本家本元、魔法の国。そこで行われる魔法少女犯罪は、当然ながら人間界のそれとはレベルが違う。
     弱冠十七歳にしてそれらの凶悪犯を捕縛する任務をこなす千秋は、対魔法少女戦闘の経験ならば、参加者でも10指に入る。
     故に、アロンダイトという格上の存在に対しても、勝利を収めることが出来た。
     一つ、問題があるとすれば。
     アロンダイトは、魔法少女ではなく、貴族妖精であるという部分だが。

  • 937◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:27:54

     顔を完全に砂に覆われ、アロンダイトは動きを止めた。
     耳だけは残している。千秋の言葉を届けるためだ。

    「さて、窒息したくなかったら魔法王のことについて吐いてもらおうかしら」

    「……………………」

     アロンダイトは黙している。

    (戦意喪失した……?)

     果たして魔法少女は窒息するのか。身体能力十倍の魔法少女が、呼吸を封じられた程度で死ぬのか。
     千秋の経験上、場合による、というのが最も正解に近い。
     千秋はこれまで様々な悪しき魔法少女にこの「拷問」を仕掛けてきたが、窒息した例は無い。
     呼吸を封じられるという恐怖に、パニックになるか、戦意を喪失するかのどちらかだ。
     どちらにせよ、後は脅しながら情報を奪うだけで済む。
     アロンダイトは、後者だった。
     千秋はそう判断した。
     ——事実は、異なっている。
     アロンダイトは、戦意を喪失したわけではない。
     むしろ怒りがボルテージを超え、一時的に冷静さを取り戻させていた。
     更に付け加えるなら、彼女は人間ではなく、妖精。

  • 938◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:28:21

     上級妖精は、窒息という概念が存在しない。
     世界に魔力がある限り、彼らの生態は保たれる。
     今、アロンダイトの内心を占めているのは、窒息の恐怖や、視界を封じられた絶望ではなく——温泉から出たばかりなのに顔を砂で汚された怒りであった。
     大剣が、千秋の首を絶つ。
     当然、それは意味を為さない。
     アロンダイトに窒息の概念が無いように、冨島千秋に斬首の概念は無い。
     返す刀で袈裟切りに斬られる。ただ、砂だけが飛び散る。
     すかさず三撃目。大人でも容易には持ち上げられない大剣を、人間では発揮できない速度で振るう。戦闘慣れしていても、千秋はハイエンドや抜刀金程の近接戦闘能力は持ち合わせていない。
     砂が飛び散る。

    「くっ……」

     千秋は、退いた。
     剣が届かない範囲へと、逃げた。

  • 939◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:28:50

     このまま斬り刻まれ続ければ、完全に砂にされてしまう。
     そうなれば終わりだ。

    (大丈夫、視界は封じ……嘘っ!)

     足音は発していない。その程度の芸当は出来る。
     だが、視界を封じられているはずのアロンダイトが、千秋が逃げた方向に追撃を加える。

    (聴覚……いや、何か別の感覚器官を持っているの?)

     胴を両断されながら、千秋はアロンダイトの超感覚の正体を探る。

    (まずは、耳を……)

     アロンダイトの耳めがけて、砂をけしかける。
     斬っても払っても無駄だ。砂に物理攻撃は効かないのだから。
     頭部を全て砂で覆ってやる、という千秋の目論見は

    「っ!?」

     視界で捉えているかのように、砂を屈んで回避したアロンダイトに崩される。

    「————」

  • 940◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:29:11

     アロンダイトが全身に魔力を滾らせた。
     剣が、円を描く。
     敵対する千秋にさえ、美しさを感じさせる動き。
     アロンダイトが剣術を習得していないことは、今までの戦いから察している。
     にも関わらず、その無造作な動きには美が宿った。
     純粋暴力。圧倒的膂力。膨大魔力。
     繰り出されるのは、斬撃であり、大破壊。
     破砕音すらしなかった。旅館が真横に両断される。
     かくして阿仁満温泉旅館は、利用者一人という結果を残し倒壊したのだった。

  • 941◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:29:40

     大質量によって粉砕する。それは、冨島千秋の無敵性を攻略する上で、有効な戦術である。
     勿論アロンダイトにそこまでの考えは無く、また百戦錬磨の千秋もまた、建物の倒壊如きで全身砂化に追い込まれることはない。
     瓦礫を踏みしめながら千秋は未だ顔面を砂で覆われたアロンダイトを睨む。

    (さて、どうしようかしら)

     アロンダイトが砂を意に介さず戦闘を行えることは理解した。
     だが、その攻撃は物理に特化している。魔法少女基準から見ても異常な身体能力なのは事実だが、それだけ。
     冨島千秋がアロンダイトに敗北することはあり得ない。

    (問題は、どう勝つか)

     アロンダイトを殺そうとまでは思っていない……今はまだ。
     あくまで運営側の一人であり、挑発したのは情報を得るためだ。
     だが、砂責めに対してアロンダイトは苦に思っていない。
     そして、アロンダイトを拘束できる程の力は、千秋の砂には無い。

    (砂漠で戦えばそういうことも出来たんだけど……むしろこの場所はアウェーね)

     旅館自体は破壊されたが、温泉そのものは無事である。

  • 942◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:30:08

     温泉……温まっているとはいえ、主成分は水であり、水は千秋の天敵だ。
     アロンダイトが温泉を戦闘に活用すれば、形勢は逆転する。水をかけられたからとって物理攻撃無効が破られるわけではないが、砂の動きが遅くなり、先ほどやってのけた顔に張り付かせたり、壁を作ったり、剣を作ったりといった芸当に時間がかかるようになるのだ。

    (アロンダイトがそれに気づく前に戦闘を終わらせたいけど……そう簡単にはいかわないよね)

     千秋は白い息を吐いた。
     正面からやり合えばアロンダイトが圧倒する。

    (斬られながら、少しずつ砂で削るか)

     あれだけ身体能力に優れていると、恐らく防御力も相当なものだろう。
     千秋の砂で作った剣では有効打にならないかもしれない。

    (——膠着してるわね。何か状況を動かすきっかけがあれば……。
     それにしても旅館を吹き飛ばしちゃって。おかげで寒いじゃない……)

     …………は?
     千秋はアロンダイトから目を逸らした。

  • 943◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:30:35

     作戦によるものではなく、純粋な驚愕によるものだった。
     右手が震えている。
     恐怖でもなければ、武者震いでもない。
     ——寒くて震えている。

    (な、何この冷気は……!?)

     今は、屋外に出たからといって震える程の季節ではない。
     そもそも、魔法少女にはある程度の防寒性能がある。
     千秋もベリーダンサー風の恰好をしているが、今まで活動の中で寒さを感じたことがない。
     それが今は、寒い。
     否、もはや寒さは痛みへと変わり始めていた。
     周囲を見渡す。
     切断された柱が、崩れ落ちた屋根が、申し訳程度に残った床が
     ——一様に凍りついている。

    (ヤバい、これはマジでヤバい……!)

  • 944◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:30:55

     千秋に物理攻撃は通用しない。例え水をかけられたところで修復が遅れるだけで、無敵性は失われない。
     だが、駄目だ。
     凍るのは駄目だ。
     凍ってしまえば、砂の流体は、ただの固体となる。
     罅割れの音が響く。
     アロンダイトの顔面を覆っていた砂が凍っている。
     そうなってしまえば、後は早い。アロンダイトが指の力で強引に砂を引き剥がす。凍った砂に、元に戻ろうとする力は無い。
     幻想的な美しさで構成された顔を大気に晒し、アロンダイトは——後方を睨んだ。
     ゆっくりと、まるで散歩のように優雅な足取りで、一人の美女だった。
     白のケープコートにウシャンカを被り、デニールが濃い黒ストッキングを履いた、金髪碧眼の美女。
     現在のあにまん市ではいささか季節外れの恰好。
     にも関わらず、彼女の周囲は道も周辺の草木も、空気までもが凍りつく程の冷気に覆われていた。

  • 945◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:31:51

    (嘘でしょ……よりにもよって、彼女と鉢合わせするなんて……)

     千秋は、自分の悪運を呪った。
     彼女のことは——知っている。
     大手魔法少女事務所に属し、様々な伝説を築いた少女。
     曰く、凶暴なウェアウルフの群れを、生息している森を凍結させることで解決したという。
     曰く、『政府』に逆らった武装組織を、協力した魔法少女共々皆殺しにしたという。
     曰く、彼女の祖国では、政争に負けた者は、真夏のビーチに凍死体で発見されるという。
     冬将軍、氷の女王、白い死神——とある北の大国で、最強と謳われる魔法少女。
     ナターリヤ・ミシェンコフ、魔法少女名、クライオニクス。
     遍く生物が死に絶える『絶対』が、千秋とアロンダイトの前に顕現した。

  • 946◆xaazwm17IRZa24/03/15(金) 23:32:17

    投下を終了します……!

  • 947二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 02:03:46

    アロンダイトさん、真っ当に強かった
    そういえばまだ一切魔法を使ってないんだよな

  • 948◆xaazwm17IRZa24/03/16(土) 02:39:49

    >>926

    >>927

    ありがとうございます、基本的には今まで通りのペースでやって行こうかなとは考えています



    >>932

    アイデアありがとうございます……!


    運営側もそろそろ登場させたいとは考えているのですが、どこまで出せるか、どれくらい活躍させられるかは、ちょっと今の段階では何とも言えないです……!


    とりあえず、最初の運営パートはキャラクター募集時に集められた六人(既に一人亡くなっていますが)を運営側のメインキャラとしてダイスを振り、他のキャラはひとまずエネミーと同じくダイスが振れないNPCとして一部活用しようと思っています


    運営側キャラの扱い方やエネミーの運用などについてご不明な点があれば気軽にお申しつけください……!


    それでは本日もありがとうございました……!

  • 949二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 08:29:36

    運営側の狂言回しが6人(5人)でダイス振って、今話のアロンダイトみたく前線に出張る時は後で投げられた組も生死判定するって感じですかね

  • 950二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 10:10:50

    人間の形をしてるけど構造が違うゴリラと相性最悪の魔法持ち
    やっぱ初期配置の運って大事ね

  • 951二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 11:25:43

    千秋ちゃんとクライオニクスで協力して打倒運営…って空気じゃなさそうだな…

  • 952二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 11:48:33

    とりあえず1巡目の運営側の話は
    ①全ての事情を知ってる中枢組(パラサイトドール、パンデモニカ)
    ②雇われ組(ああああ、オシウリエル)
    ③何も知らない、従わされてる組(オートクチュール)
    で分けてダイス振って話作る感じになるんでしょうかね?
    そこに使えそうな後から投げられた運営組やらエネミーやらをNPCとして登場させるみたいな

  • 953二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 14:25:39

    運営側で生存ダイス1桁を叩き出す運のない子が出てきてほしいような一巡目は粘ってほしいような

  • 954二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 18:14:30

    このレスは削除されています

  • 955二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 18:15:02

    上級妖精、世界に魔力がある限り不死身ってことは逆に言えば魔力を絶てば死ぬのか
    マジカルストラッシュなら消し飛ばせるのかな

  • 956二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 19:07:47

    MPがそのまま体力になってるやつだ

  • 957二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 20:30:48

    現状の判明してる人達ヨーイドン・バトルした場合ティターニアがほんとよく刺さるっすね

  • 958二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 20:34:27

    最強って呼ばれてるのは伊達じゃないな
    格下で相性勝ちしようとすると誰が勝てそうかね?

  • 959二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 21:02:20

    魔力自体に干渉してくるなら格下の時点で相性勝ちもクソもないのでは? 性格的に隙は割とあるんで暗殺とか狙撃とかならまた違ってくるんだろうけど
    強制タイマン前提ならスピードランサーみたいな同格っぽい強者をぶつけるか、更に格上の化け物で捻り潰すくらいじゃないの

  • 960二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 21:25:23

    本当に格上狩りだなティターニア先生…
    黒竜にも妖精にも刺さったし、ニャルセーヌにも特攻になったりするかな

  • 961二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 21:27:05

    この場合の最強って945で言ってるクライオニクスの事じゃないのか
    絶対零度の冷気に直接勝つのは炎系じゃないと厳しそう

  • 962二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 21:41:13

    両方とも考えればいいじゃない
    ティターニア先生の魔力干渉に関してはめちゃんこ消費が激しいのでタイマンだとしても連発は出来ないからな
    それでも充分当てられる程度には範囲も広そうだし技術もあるから相性がいいのは特別機動力が高い奴らになる
    滞空してるので通常攻撃も避けやすく上から攻撃出来るスカイウィッチや、デカいのは避けて通常攻撃は素の硬さでほぼ無傷で耐えれそうなハートプリンセスは相性良さげ

  • 963二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 21:55:52

    クライオニクスはまだ描写がないから格上格下とかの定義は出来ないしわかんないけど、わかりやすく倒せるのはやっぱ炎系になるのかな
    とはいえ手がない訳では全然なく長射程持ちによる冷気の届かない場所から完封とかどっかの魔王みたく無敵でやり過ごすとか出来ない訳じゃない
    ティターニアと違って物量で押し潰すのも不可能ではないのもまだマシな点かな

  • 964二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 22:53:22

    北の大国で最強ならティターニアより格上とも取れるが…マジカルストラッシュが無法すぎるしやっぱりあにまん市の魔法少女はレベルが高いのかな

  • 965二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 22:55:38

    >>959

    黒龍がわざわざ討伐依頼で釣って洗脳するレベルと考えるとスピードランサーもティターニアクラスはありそうね

    そうすると黒龍も完全に想定外らしい洗脳解除されたのは対運営的に割とデカいか? まぁダイス次第なんだけども

  • 966二次元好きの匿名さん24/03/16(土) 23:18:59

    テンガイが自分を基準にしたと考えるくらいだし全体的に相当レベル高い奴らが集まってる都市ではあると思う

  • 967二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 00:25:31

    ぶっちゃけ魔力制限が無かったらどこぞのカワウソ科は草をキメながら自分で町を埋める程増やせるし、ティターニア先生は遠距離エク〇カリバーブッパ(マジカルストラッシュ)のごり押しが出来てるし、テンガイはテンガイだしそれ以外の魔法少女使い方次第でヤバい事が出来る奴もマジで制限あって良かったと思う

  • 968◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:04:33

    投下します……!

  • 969◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:05:53

    (さて、どうするか……)

     クライオニクスは、冨島千秋の天敵だ。
     砂を操る千秋にとって、万物を凍らせるクライオニクスは相性が悪すぎる。
     だが——相性差を覆す手段を持てないのならば、魔法国で犯罪の取り締まりなど出来るはずがない。

    (どこまで食い下がれるかしら……)

     既に攻撃は開始されている。
     が、未だクライオニクスの真意は不明だ。闘争している二人の危険人物を倒しに着た正義の味方、という可能性もあるし、単純に温泉入りに来たらぶっ壊されて激おこなだけかもしれない。

    (私としても、クライオニクスと戦闘はなるべく避けたいところ……)

     脳をフル回転させ瞬時に様々な策を模索する千秋と比較して、アロンダイトの感情はシンプルだった。
     クライオニクスが場を凍らせたことにより、アロンダイトは鬱陶しい砂のマスクから解放された。
     助けられた、とも解釈できる。

  • 970◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:06:28

    それに対してアロンダイトは

    「おい、誰がミーを冷やしていいって言った?」

     ——激怒していた。

    「クソ人間が。弁えろ」

    「ごめんなさい」

     クライオニクスの口から出たのは、謝辞だった。
     しかし、その眼はどこまでも冷徹であり、罠に嵌った獲物を見る猟師のそれであった。

    「私は、寒いのが好きなの」

    「クソ人間の好みとか知らねぇザンス」

    「…………ふふ」

     クライオニクスは口元に手をやり、おかしそうに笑った。

    「……ザンス……ふふ、ザンス……ぶふっ、ザンス……」

    (あ、ツボに入ってる)

     氷の女王の意外な一面に、千秋は驚かされる。

  • 971◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:07:09

    (いや、年齢的には私と変わらないし……イメージと実像が乖離しているのって、よくあることだし)

     それこそ、名君と謳われた魔法王が殺し合いを開催するように。
     クライオニクスとの和解の可能性に希望を見出し始めた千秋とは裏腹に、アロンダイトは濃密な殺意をクライオニクスにぶつけていた。

    「——おい、クソ人間。チミは今、高貴なる妖精語を冒涜したザンスか?」

    「ぼ……冒涜してないザンスよ……ふふ、ミーは全然、チミのこと冒涜してないザンスよ……」

    「——もういい」

     場の主導権は、クライオニクスが握っている。既に世界は冷え切っており、千秋もアロンダイトも魔法少女・妖精貴族の耐寒性能を上回られて冷却されている。
     容易には動けない。人間が極寒状態でパフォーマンスを発揮できないように、千秋もアロンダイトも、重いデバフを背負わされている。
     ——という千秋の想定は、外れていた。
     アロンダイトは、地を蹴った。

    (なっ、あいつ、まだこんなに動けて……!)

  • 972◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:07:33

     もはや魔法の国にも、貴族妖精は数える程しか居ない。そして彼女たちは人前に姿を見せることは少なく、魔法の国で働く千秋にも、そのスペックは把握できていない。
     貴族妖精とは、元来魔法の国における貴族階級であり、同時に戦士階級でもあった。
     今でこそ魔法の国の軍事力は魔法少女が担っているが、かつては貴族妖精が他種族との戦争や魔物との戦いに駆り出され、戦果を挙げてきた。
     人間界を超える異常環境が多く存在する魔法世界において、悠久の時を戦い続けた貴族妖精は、あらゆる環境への適応性を備えている。
     魔法少女さえ凍てつく環境においても、アロンダイトは人知を超越した身体性能を発揮する。
     クライオニクスは目を見開いた。
     柔術や剣術を習得しておらず、千秋のように物理攻撃を無効化する術を持たないクライオニクスにとって、身体能力が優れた存在と素手での肉弾戦は専門外だ。
     冷却状態での高速移動を、彼女は想定していなかった。

  • 973◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:08:00

     アロンダイトは一瞬で距離を詰め、貴族妖精の誇りを侮辱した不埒者に粛清の一撃を放つ。
     ——放とうとした。

    「貴様っ……!」

     氷の翼が、それを阻んでいる。
     アロンダイトの動きよりなお速く、クライオニクスの背から生えた翼は、本体の身を護るべく、殻の役割を果たした。
     轟音と共に羽が舞う。
     アロンダイトの一撃は、クライオニクスの翼の一部を破損させた。
     ショットガンの一撃ですら傷一つつかない翼に、確かな損害を与えたのだ。

     「思ったよりやるのね」

     本気で関心したように、クライオニクスは呟く。

    「けど、——触れたわ」

     クライオニクスの言葉は、既にアロンダイトに届いていなかった。
     其処に在ったのは、氷像。

  • 974◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:08:30

     限りなく絶対零度に近い超低温で凍らされた貴族妖精の姿だった。
     クライオニクスの魔法、『触れたものを凍らせるよ』。
     触れずとも、冷気により万物を冷却させ、フィールドを強制的に作り替える。
     それでもなお抵抗する者は、直に触れることで超低温で凍らせる。
     そして、「触れる」の対象は自身の肉体だけでなく、一瞬で伸縮する、背から生える氷の翼も該当する。
     遠ければ冷気で凍死し、近づけば翼で即死する。
     徹底した理不尽を、クライオニクスは敵対者に強要する。
     興味失ったようにクライオニクスは視線を千秋に向けた。

    「クライオニクス……」

    「何かしら、冨島千秋」

    (っ……、向こうもこっちのことは知ってるのね、じゃあブラフは使えない……)

    「クライオニクス、私はゲームに乗ってない。今あなたが倒したのは、運営側の魔法少女よ。……情報交換をしようじゃない」

    「いえ、情報交換はしないわ」

  • 975◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:09:11

     クライオニクスはコートに手を突っ込んだまま、白い息を吐いた。

    「冨島千秋。あなたの持っている情報を全て渡しなさい」

    「……そうしたら見逃してくれるのかしら」

    「…………? 何故私があなたを見逃さなくちゃいけないの?」

     首を傾げるクライオニクスに、千秋はおいおいと内心で肩を竦める。

    (本当に女王様ってわけ……アロンダイトといい、このゲームには人格破綻者しか居ないの?)

     ただ、これでクライオニクスのスタンスは把握できた。
     彼女はゲームに乗っている。

    (……どこまで足掻けるか分からないけど、万策尽きたわけじゃない。……私が今、出せる手は)

     少しでも場を引き延ばすべく、千秋は口を開こうとし。
     ——世界に、炎が灯った。
     其れは、流星の落下に似ていた。

  • 976◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:09:32

     空から堕ちてきた火の玉は千秋とクライオニクスの間に落ち、周囲を炎で染め上げた。
     冷え切った空気が、暖められる。

    (っ、動く……)

     第三者の乱入、そして炎で周囲を焼き尽くそうとはしない配慮から、千秋は瞬時に炎の主を味方と判断した。
     千秋の行動は素早かった。
     自身の足元に疑似的な砂嵐を出現させ、全力でクライオニクスから距離を取る。
     同時に、彼女の死角から砂による一撃を浴びせる。
     前者は上手く行った。
     籠める魔力は一瞬だったため、距離は十メートル程度しか開けられなかったが、それでもクライオニクスから距離を取ることには成功した。
     後者は失敗した。
     確かに死角から攻撃したにも関わらず、そして弾丸並の速度による一撃であったにも関わらず、翼は瞬時に対応した。
     砂が氷へと変わる。

  • 977◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:10:15

    (クライオニクスの視線すら動いていない……自動防御ってわけね)

     炎の中から現れたのは——犬である。
     機械仕掛けのシェパート犬。

    (誰かの使い魔かしら)

    「ふふ、可愛いワンちゃん……でも、いいのかしら」

     自身の天敵とすら言える、炎系の敵を前にしも、クライオニクスは余裕を崩さない。

    「——熱量が足りていないわ」

     炎が、一斉に消滅する。
     一度は暖められた空気が再び冷却される。

    「それに、冨島千秋。まだそこは、私の領域よ」

    「くそっ……」

     再び、四肢の自由を奪われる。
     底が知れない。

  • 978◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:10:53

     千秋が今まで相対した凶悪犯でもここまで強力な魔法少女は片手の指で数える程しかいない。
     犬が、千秋の周囲に炎を向けようとする。

    「いい! 私に構うな! それより、翼に気をつけて!」

     千秋の言葉に、弾かれたように犬はその場を飛び退く。
     犬が居た場所を、伸びた翼が掠める。
     触れた場所は、一瞬で凍りつく。
     千秋の逃走を阻止し、彼女を助けようとする犬を奇襲するクライオニクスの作戦だった。

    「あら、速いわ」

    「私の名は、ジャスティスファイア」

    「喋れるのね、私の名前はクライオニクス。魔法少女名にジャスティスをつけるそのセンス……もしかしてアメリカ人かしら」

    「ご明察です……じきにこのゲームは米軍の介入によって幕を下ろします。優勝を狙っても無益です」

    「そう、米軍が……」

  • 979◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:11:18

    (え、マジで……そんなの出来るの?)

     思いがけない言葉に千秋は驚愕する。米軍介入。
     もし本当なら心強いが……。

    「軍隊は、嫌いだわ……」

     クライオニクスの声色は、微かに沈んだ。

    「それに、ゲームが壊されてしまうと、困る……」

     だから、その前に全てを凍らせましょう。

    「このゲームは絶対に破壊します。私の正義にかけて」

     だから、邪魔する一切は燃やし尽くします。
     氷の魔法少女クライオニクス、炎の魔法少女ジャスティスファイア。
     相反する概念を体現する二人の強者が激突する。

  • 980◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 03:11:38

    投下を終了します……!

  • 981二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 03:12:54

    乙でした
    そろそろ次スレを立てないと死ぬぜ!

  • 982二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 03:54:10

    アロンダイト、多分まだ死んでないしこの場で一番強いはずなのにあまりに三下過ぎてみんなから舐められまくってるの笑う

  • 983二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 03:57:37

    クライオニクス、調べたら人体冷凍保存って意味の名前なのか
    冷気を操るわけじゃなくて凍結の概念を司る能力なんだろうな

  • 984◆xaazwm17IRZa24/03/17(日) 04:33:41

    本日もたくさんの感想ありがとうございます……!



    >>981

    ありがとうございます、明日になったら次スレ立てます!



    >>952

    ダイス自体は一気に振ろうかなと考えています

    話自体はもしかしたら幾つかパート分けするかもです……!

  • 985二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 10:41:48

    >>982

    語尾がザンスで強キャラの印象を与えるのはなかなか厳しい

  • 986二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 11:36:34

    >>982

    アロンダイトは強い小物キャラに落ち着いたからザンスちゃん相手に巻き返せれるかと言うと…

  • 987二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 13:14:12

    これ、FBIの介入は運営側に気づかれてないって設定だったのにアロンダイトの前で喋っちゃったのはめちゃめちゃ悪手だな
    すぐ報告しに帰るようなキャラじゃなさそうだし大丈夫かな…?

  • 988二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 13:17:21

    まぁ運営側の情報収集能力えげつないし、あにまん市に潜入してる工作員はもう割り出されて運営の実働部隊がブッ殺して回ってそうだし遅かれ早かれかな

  • 989二次元好きの匿名さん24/03/17(日) 20:40:53

    次スレまで保守

  • 990二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 01:16:55

    保守しておこう
    次スレはまだかな

  • 991◆xaazwm17IRZa24/03/18(月) 01:54:13
  • 992二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 02:12:19

    立て乙デース

  • 993二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 02:15:04

    たておつ梅

  • 994二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 02:23:42

    立て乙です

  • 995二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 07:43:07

    埋め

  • 996二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 07:53:35

  • 997二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 08:26:12

    埋め

  • 998二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 08:37:10

    埋め

  • 999二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 08:37:21

  • 1000二次元好きの匿名さん24/03/18(月) 08:37:32

    うめ

オススメ

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