- 1二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 21:30:03
「えっ?なんでいきなりそんなこと」
外では雪が降り積り、トレーナー室の中では女2人がこたつに入って蜜柑をつまみに、話に花を咲かす、そんな新年の冬の日の日だった。
私のトレーナーが、そんな事を唐突に聞くもんだから、少し驚いてしまった。
彼女は、私から見ればどちらかと言えばリアリストに分類される人間だ。そんな彼が急にsfチックな話題を出すのは何かあったんだろう。
「大丈夫?なんか変なものでも食べた?」
「え?いや、昨日の夜食ったのはカニチャーハンとうどんだし、今日の朝は鯖の味醂干しだよ?特に変じゃないとは思うけど」
「モノの例えだよ…」
私のトレーナーはリアリスト寄りの人のはずなのだが、かなりの天然さんでもある。ジョークを言っても真に受けてしまうから、彼女のことを苦手に思ってる人も多いらしい……天然なところは結構可愛いと思うだけどなぁ。
「いやさ、僕だってたまにはこう言うこと言うよ?単純に宇宙人がいたとしてパーマーはどうするのかなってのが気になっただけで」
ふむ、話題作りのためだろうか。だとしても話題に選ぶのには、かなり突飛な話題だけど。
それにしても、宇宙人がいたら、か。趣味じゃなかったのでそう言うことは考えたことがほとんどなかった。たしかに、この星から見える星だけでもかなりの数がある。私たち以外の生命体がいたとしても不思議ではない……のかもしれない
「うーん、まぁ、私は何もしないかな。不干渉」
もちろん、挨拶を求められたら応じるつもりではあるけど…
「なるほど、じゃぁ、初めまして!地球人!」
私の回答に、トレーナーは見事なトンチンカン返答。キャッチボールが事故ってるぞ君。まぁ、彼女が大抵こうやる時は乗ってあげるのが吉だ。……本当にリアリストなのだろうか?
「あぁ、初めまして…」
「メルシー!ナイスチューミーチュー!キエテコシキレキレテ!」
そして、トレーナーの返答は世界のあいさつ…ちょっと待って、キエテ…なに?なんて言ったの?どこの国の言葉?! - 2二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 21:31:55
キエテ・カレカレータ…
- 3二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 21:46:30
ぼ、僕っ娘トレーナー……
- 4二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 21:47:33
最後に立ちはだかる相手は誰だ?
- 5二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 21:48:10
なんだバード星のパーマン知ってるってネタかとそれでウマ娘はかつての馬のパーマンが種族ごと人間に変えられたときにウマソウルを宿す事になったとかそういうネタかと思った
- 6二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 21:49:41
私のトレーナーは優秀だ。
理論と計算によって作り上げたトレーニングを至高とし、楽観的思考を持たない、知識の吸収を常日頃の日課とする、トレーナーとしてはこれ以上ないくらいの人間だ。
しかし、自身の理論を捻じ曲げられないほど頭の硬い人物でもなく、私の体調に合わせて柔軟にトレーニングを組み直してくれるほど、その場での応用力もある人だ。
私が思ったように勝てなくて、家からも白い目で見られて迷走していた時も、とにかく私が勝てるよう、本当に色々なことを試してくれて、専門外のはずの障害レースのトレーナーの資格でさえ取ってくれた。結果に結びつくまで長い時間がかかってしまったけれど、今ではステイヤーとしてG1で、ですら戦えるほどになった。
本当に感謝してもしきれないくらい、トレーナーにはお世話になった。
だからこそ、最近の彼女が心配なのだ。
担当契約を結んだ当初は、バリバリのキャリアウーマンといった感じで、まさにできる女といった感じだったのだが、二年目が始まったくらいから日々のちょっとした所で、彼女の天然が発動するようになった。
初めこそ、私も「あぁ、可愛いとこあるんだな」くらいで済んでいたのだが、最近は彼女の天然が常時発動どころか、周りから見ればトンチキすぎる行動も取るようになっていた。というか、なんか周囲の大人とずれていると言うか、何というか…
この前なんか、彼女が箒に跨っていたところを私が発見したら
「パーマー!ちょうどいいところに来たね。ちょっと一緒に空のドライブに行こうぜ!ベイベ!」
と、誘ってきた。いや、アニメじゃないんだから飛べるわけないでしょ…26歳の大人の女が魔法使いごっこは見てられないよ……
というか、26だよね?私のトレーナー26だよね?出会った時から幼児退行して今、5歳くらいじゃないの??
26って恋の一つでもして、人によっては家庭を築く歳なんじゃないの?あんな、側からみて頭おかしいと思われるようなことしちゃうの?いやだよ、あんな大人になるの……. - 7二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:40:33
今日は、私のトレーナーとショッピングモールに来ている。本日の予定は、トレーナーが兼ねてより行きたがっていたカフェでに行った後、頼んでおいた私の新しいシューズの受け取りだ。
最近働き詰めで、久しぶりの外出で嬉しいのか、トレーナーは、ニコニコしながら「1000のバイオリン」を鼻歌で歌いながら、私の半歩先をスキップ気味に歩いている。
これからいくカフェは、食べログの評判もよく、マックイーンも「あそこのフルーツタルトは絶品ですわ!こだわり抜かれた素材と丁寧に作られた生地の調和が素晴らしいですわ!カスタードもくどくなく、小さなお子様でやお年寄りの方でも美味しく食べられますわ!私としては水曜限定のラズベリーケーキもオススメですわ!」と太鼓判を押すほどだ。まぁ、その後マックイーンは彼女のトレーナーに引きづられてトレーニングに向かったわけだが。マックイーンの姿が見えなくなる直前、「スイーツ!!」と断末魔をあげていた気がするが、きっと気のせいだろう?
マックイーンが大絶賛した通り、出てきたフルーツタルトはとても美味しかった。くどくない甘さと、生地とフルーツの調和、確かにこれはリピーターになってしまいそうだった。
「ねぇ、パーマー。最近学校は楽しい?」
タルトを食べ進めていると、トレーナーが近況を聞いてきた。
「うん、楽しいよ。友達もたくさんいるし、走るのも楽しいし」
何より、トレーナーのことを見るのが楽しいしね…ちょっと心配になることもあるけど。
「ふふふ、やっぱり。ダイタクヘリオスってこといるパーマーとっても楽しそうだもん」
ダイタクヘリオス。この学校で1番の友達で、親友で恩人な少女。彼女のおかげで、今の逃げを戦い方とする今のステイヤーの私がいると言っても過言ではない。私にとってはトレーナーと同じくらいの恩人だ。そして、トレーナーと同じくらい理解し難い言動をするのだが、まだヘリオスの言葉は既存の言葉を改めたものだから、勉強すれば理解できるが、トレーナーが時折話す言葉は本当に意味がわからない。あまりにも特殊な言葉で何かのもじりかと思ったが、その気配もなさそうなので、いたずらに頭を悩ませるだけなのだ。
いったいなんなのだろうか、キエテとかカレカレ?とか全くわからない。
そんな私の心情など知らず、トレーナーはタルトを頬張りながらとても幸せそうな顔をしていた。 - 8二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:41:10
カフェから出ると、ショッピングモールの中央の柱上の空間に、人だかりができていた。皆同じように上の階を見ている。
トレーナーと私の2人は人だかりをかき分け、なんとかヘリまでたどり着いた。
そして、理解した。
上の階で小さな子供が今まさに、落ちようとしているのだ。6歳くらいだろうか、その小さな体が宙に浮いている。母親と思しき人物が必死に子供の手を取ろうとしているが、子供はヘリの下側の僅かな出っ張りに捕まっているため、手を掴むことができない。
私達がいるのが3階だから、あの子がいるのは5階だろうか。落ちたら大怪我は免れない。下手をすればそのまま死んでしまうだろう。
だが、しかして私たちにできることはない。今からあの子供のところに行っても、着いた頃にはとっくに落ちてしまっているだろう。できることといえば、ただ不幸な子供を憐れみ、何もできない自分に不甲斐なさを感じることくらいだろうか。
あぁ、今子供の左腕がヘリを離した。もう限界なのだろう。小さいからにはあまりにも辛すぎる状況だ。母親の悲鳴がこだまする。狂乱して子供の名前と思しき名を呼び続けるが、それで今落ちようとしている子供を救うことなどできない。
だが、隣にいるトレーナーは違った。突然ヘリに昇ったかと思うと、その上を爆走して行った。おおよそ人間技ではない。円環に連なっているヘリを走り、子供の真下まで行き、キャッチしようとでも言うのか。とても正気とは思えない。が、彼女にとってはこれが一番いい行動だったのだろう。落ちこぼれの私を、最後まで見捨てなかった真性のお人好しだ。目の前で危険に陥っている子供を見捨てることなどできないのだろう。
しかし、それでも後一歩足りなかった。ついに子供の手がヘリを離してしまったのだ。子供は一階へと真っ逆さまに落ちていく。トレーナーの手はとてもではないが届きそうにない。それをトレーナーもわかったのだろう。彼女はなんの躊躇いもなく、落ちていく子供の元へ"飛んで行った"。
落ちていく子供を掴み抱き寄せ、一階へと真っ逆さまに落ちていった。
数秒後に響く鈍い音、気がつくと私は走り出し、彼女の元へと走って行った。
一階では人だかりができていて、トレーナーの様子はよく見えなかった。人だかりをかき分け、彼女のもとへ向かう。どうか、生きているように、そう願わざるを得なかった。 - 9二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:41:32
人だかりの中心にいた彼女は、子供を堅く抱き寄せていた。幸い両者とも怪我はないらしい。泣きじゃくる子供を抱きしめ、「よく頑張った。君は強いぞ」と頭を撫で宥めていた。
普段からウマ娘と並走できるくらい、トレーナーの運動能力は人並外れたものだったが、これはあまりにも異常だ。もしできたとして、ウマ娘が同じようなことをやればまず骨折は避けられないだろう。それを無傷でやってのけるのだからもやは超人の領域だ。
それこそ、宇宙人と言われても今の私は驚かないだろう。
その後、子供は大泣きする母親に連れられながら念の為、救急車で病院へと搬送された。トレーナーも乗るよう言われたが、無傷を主張し、そのままその場を去ってしまった。
そして、今はシューズを受け取り学園へと戻る帰り道の途中。
トレーナーは頬をぽりぽりとかきながら、申し訳なさそうな顔で「エキセントリックな1日でごめんねぇ」と笑っていた。
その姿からはあの超人的な身体能力は全く見て取れない。そこにいたのは26歳になっても天然が抜けない、いつも通りの私のトレーナーだった。 - 10二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:42:17
ハロー地球人の諸君、僕はこのトレセン学園のトレーナーの麗しい26歳の才女だ。え?お前も地球人なのになんでハロー地球人なんだって?まぁ、細かいことは気にすんな。そう言うの気にしてばっかりいると、スペシウムでお肌が焼けちゃうよ?
話を戻そう。
僕の担当バは「メジロパーマー」。そう、あのメジロパーマー。強靭なスタミナとそれを活かした逃げで長距離レースで活躍する最高のウマ娘。
出会った頃は名家のでの重圧もあって、思うように結果が出なかったけど、本人の弛まぬ努力と、頼れる友人たちのおかげで今の地位を確立したのだ。いや、本当、私のいる必要性あった?あの子強いから私いなくても駆け上がって行けそうだけどなぁ。
あ!あそこにいるのは愛しのパーマー!どうやら友達のダイタクヘリオスちゃんと一緒に次の授業に向かう途中らしい。なんだ、今の地球の子供はあんなに教科書を使うのか…….
少しの段差で足を引っ掛けてしまいそうだ。うーん大丈夫かな?って、言わんこっちゃない!えーい仕方がない、あんまり使う気はなかったけど、可愛い教え子が転ぶのは心苦しいからな。うん。
というわけで、僕は両手をジャンケンのチョキにして、2回打合せ円を書く。
「ぱるるーん」
両手で描いた円の軌道から光の円が発生したかと思うと、それは光の粒子となり、転びそうになっていたパーマーの体を浮かせ、元の体勢へと戻していく。
どうだ見たか、教え子を影ながら救うのもトレーなの役目なのだ。キエテカレカレータ。え?お前やっぱ人間じゃないだろ?だって?
ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ
乙女の正体を詮索するもんじゃナイゾ☆
ぱるる〜ん! - 11二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:43:24
と、いうわけでお送りしたsss(ショート・ショート・ストーリー)は、26歳の極々普通?なパーマートレーナーのお話でした
- 12二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:55:58
普通?
- 13二次元好きの匿名さん22/01/17(月) 22:56:41
そうか>>1のセリフそのものが伏線だったのか!
- 14二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 02:32:34
よくわからないけど面白かった
- 15二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 02:34:02
なんなのだ、これは どうすればいいのだ!?
- 16二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 02:38:34
パーマーだから宇宙人と聞いてパーマンかと思いきや
まさかのバルタン星人…それもタイニーバルタンとは畏れ入る
よかった - 17二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 13:02:54
- 18二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 13:18:07
そういえばタイニーバルタンって確か僕っ娘だっけ…
- 19二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 13:19:03
魔法少女やってるバルタン星人がいるのだ
- 20二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 13:35:26
ウルトラマンマックスのバルタン星人とは懐かしい…
- 21二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 15:34:36
- 22二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 15:35:27
どうでしょう?そうかもしれないし、そうでないかもしれません
- 23二次元好きの匿名さん22/01/18(火) 22:36:33
ぬあああああ懐かしい…