「たばこ?」

  • 1二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 00:09:40

    「吸ってるの?」

    痛いくらいの冷たさの外気より、唐突なその声が何より身を刺した。

    「吸ってた、かな」

    そうなんだ、と彼女の声色は自然と横に近付いてきた。
    今は吸っていないし、今も吸っていた訳ではない。
    ただ、この寒さと、静かな冬の星空が、何となく煙の抜けた心を埋めてくれるからだった。

    「癖になってるんだ」
    「外にいるのが?」

    何だか、やけに気にしているようだった。
    そうだよ、と答えるとまた、そうなんだ、と声が返ってきた。彼女の心は、分かっているつもりでも、まだまだ分からない。何だか嬉しそうではあった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 00:10:06

    「吸わないの?」

    当たり前じゃないか、という言葉を、口にするより前に顔に出してしまっていたらしい。

    「あははは」

    彼女の掌の上で見事に転がされてしまっているらしい。
    久しく、煙草は買っていない。朧げではあるが、少なくとも、この職を手につける前には辞めていた。

    「見てみたいけどね、ちょっと」

    悪戯そうに笑いながら彼女が差し出してきたのは、ココアシガレットだった。
    普通のココアシガレットで、一瞬張り詰めた気をゆっくりと抜いた。

    「バレンタイン」

    ふふ、と短く笑ってそう言った。
    そう言われたら、受け取らざるを得ない。
    一本、抜き出したそれをそっと咥える。さっさと噛み砕けばいいものを、未練たらしく唇で遊ばせていた。

  • 3二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 00:10:35

    「うーん」

    自分の着ている少しよれたワイシャツを、彼女の鼻が音を立てて嗅いだ。

    「匂いしないね」

    当たり前だと言おうとしたが、存外真面目そうなその顔に言葉を挟むのは憚られた。
    そしてまた、大真面目な顔をして

    「アタシもしないかな」

    襟口を引っ張って嗅いだ。そして、にこりと笑う。

    「でも、一緒」

    照れ臭いセリフを、こうもさらりと言うものだから、思わず呆れて彼女の顔を見つめていた。

    「戻ろっか」

    虚空に円をいつまでも描いていたシガレットを、シービーはさっさと奪い取って食べてしまった。


    よく晴れた星空をもう一度見て、少し勝ち誇ったような顔の彼女の元へと帰っていった。

  • 4二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 00:31:27

    このレスは削除されています

  • 5二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 00:48:58

    このレスは削除されています

  • 6二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 00:57:16

    空気感が好き
    シービーはそういうことする

  • 7二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 01:00:49

    思いつきでバレンタイン重ねてくるのはめちゃくちゃやりそう

  • 8二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 01:19:37

    もうちょっと嫉妬感を出したかった

  • 9二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 01:39:56

    いつの間にかシービーに侵食されたい

  • 10二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 03:02:09

    なんてことなさそうな、切り取られた日常の一部みたいな雰囲気
    大好きです

  • 11二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 08:31:17

    >>6

    >>10

    ありがとう!

  • 12二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 11:31:02

    気が付いたら結婚はしてないけど子供がいそう

  • 13二次元好きの匿名さん24/02/19(月) 18:01:21

    >>12

    どっちかが籍入れるかってなったらそのままゴールインしそう

  • 14二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 01:48:07

    彼女の動向を観察するのは、存外に面白い。
    知的生命体として、考えのあった上で行動を起こしている、そういった真理のようなもので何とか彼女を形として認識出来るような気がするから。

    今しがたの事で言うと、ぶらぶらとハンモックに揺られていたかと思うと、すぅ、と長い脚を伸ばし、器用に降りる。そのまま冷蔵庫に向かうところを見ると、喉でも乾いたのだろうか、という予想を立て、それが当たるたびに、一人ほくそ笑んでいた。大分な趣味ではあるが。

    透明のコップの中の、これまた透き通った飲料水が、こく、こくという喉の音と共にその量を減らしていく。その都度、彼女の細い首は生理的な動作で嚥下していく。何だか、その光景から目を離せずにいると、いつの間にか、水を飲み干した彼女と、目が合った。
    逸らした。
    見咎められる間柄ではないのだから、とは思いつつも、心がそれを許さない。傷付き倒れた獲物をいざ喰らわんという風に、彼女はゆっくりと近付いてきた。

  • 15二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 01:48:34

    「えっち」

    眩しい脚を三角にして、横に座ってきたシービーの顔は、少し赤らんでいた。
    そういう気持ちが、無いかと言えば嘘にはなるが、今は、そんな気分でもない。どうこうしようとも思わない。

    「すっごい顔だなって思ったから」

    言われて、眉間にグッと力がこもっていたことに気付く。へにゃりと笑う彼女の指がそこに触ると、少しくすぐったい。
    そして、沸々と罪悪感が湧いてくる。
    嗅ぎ付けられるほどになってしまった自分が情けなく、彼女に申し訳ない。

    「あははっ」
    「またなってる」

    また、今度は別の意味でこもっていた力を、彼女が抜いてくれた。肩から、彼女の頭の感触と、生きている熱が伝わってくる。

    「気に、しないけど、ね」

  • 16二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 01:49:07

    珍しく、歯切れの悪い言葉を発した彼女の顔は、視線の逃げ場を、普段見ないであろうテレビの液晶に決めて、ぽっと赤くなっていた。

    「同じだもん」

    「アタシもさ」

    意を決して振り向いたらしい彼女の瞳は、潤みながらも燃えている。
    びっくりする。でも、悪い気はしない。これを、彼女も味わっていたのだろうか。

    「「今日さ」」

    声が重なる。

    「っ、あはははっ」

    堰が切れたように彼女は笑い始める。いくらか緩んだ顔を見て、その方が彼女らしいと少しホッとした。

    「やっぱり、似合わないね、こういうのは」

    そうだね、とだけ答えて、どこかに飛んでいったムードを追いかけることもなく、ただ、肩伝いの温かさを感じていた。

  • 17二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 02:03:05

    身を捨つるほどの祖国があったんだな

  • 18二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 02:23:45

    これくらい朴訥なほうがね
    良いよね

  • 19二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 02:25:07

    シービーは「エッチ」より「えっち」派

  • 20二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 05:38:31

    この曖昧な雰囲気がいかにもシービーらしいと思う

  • 21二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 11:28:25

    何かお題が欲しい

  • 22二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 15:25:56

    このレスは削除されています

  • 23二次元好きの匿名さん24/02/20(火) 15:32:22

    >>21晩酌でまったりちみちみ酒飲みながら、イチャイチャする話をください!!!!!

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