- 1二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:50:49下記のSSの続きに当たる話になります 少し時期遅れではありますが、今のタイミングでしか書けない話ということで一つ (SS注意)ヴェニュスパークに届け物をする話|あにまん掲示板 誰もが夢見る舞台、凱旋門賞まで残り数週間と迫っている時期。 俺はパリで────とあるマンションの部屋の前に立っていた。 ここまで来ておいて、本当に良いのだろうかと自問自答してしまう。 見るからに広大…bbs.animanch.com
- 2二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:51:112月14日、バレンタインデー。 
 年頃の女の子が通うトレセン学園においても、何かと色めき立つ日。
 お店などもバレンタインムード一色に染まって、俺でさえも何かとそわそわしてしまう日。
 そんな日に俺は────何故か、フランスにいた。
 理由はシンプルで、プロジェクトL’Arcの後始末に関係者がどうしても必要な案件があったから。
 こういうのは本来、佐岳さんや他のスタッフの役割だったが、生憎誰もが手いっぱい。
 どうしてもとお願いされ、俺も散々彼女らから世話になったので引き受けることになった。
 ……担当の娘からはそれはもう非難轟々だったけれど。
 そこはまあ、美味しいチョコでも買って帰って許してもらうことにしよう。
 「……それにしても」
 ちらりと、周囲を見回した。
 今、俺は目的地に向けて街中を歩いているのだが、ところかしこに赤いバラを持った男性の姿がある。
 恐らくは今日がバレンタインということが関係しているのだろうが、なかなか異彩な光景であった。
 日本ではバレンタインは女性のイベントというイメージだが、フランスではそうでもないのかもしれない。
 フランスで、女性────そのキーワードから、俺は一人のウマ娘を思い出す。
- 3二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:51:38透き通るような蒼い瞳、柔らかそうな栗毛の髪、美しくも凛々しい立ち振る舞い。 
 それでいて、ちょっとだけズボラな、可愛い年頃の女の子。
 「パーク、元気にしてるかな」
 ヴェニュスパーク、俺達にとってはライバルの一人であり、戦友ともいえる存在。
 このフランスで積み重ねて来た記憶において、決して忘れることの出来ない相手。
 ……今回の一件そのものは、ちょっと居合わせるだけで終わる内容。
 念のため一泊して帰る予定だったので、時間にはかなりゆとりのあるスケジュールになっている。
 「何度でも会いに行くって、約束したからな」
 俺は彼女との思い出を思い出して、笑みを浮かべてしまった。
- 4二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:52:14俺はパリで────とあるマンションの部屋の前に立っていた。 
 今日仕事をした、フランスのURAに当たる組織に、パークに挨拶がしたいと伝えたらここに行けと言われたのである。
 正確には『彼女は家にいますよ』と、すごい思わせぶりな笑顔で言われたのだが。
 ……いや確かに一度来たことはあるけどさ、というかなんで他のスタッフにも知れ渡っているんだろう。
 十中八九あのレジェンドの仕業だなと思いながらも、インターホンを押す。
 無機質な電子音の後、部屋の中からドタドタと騒がしい音が鳴り響いた。
 うわあ、すごいデジャブを感じる流れ、不味いなとは思いつつも、ここから出来ることなど何一つない。
 俺は諦観にも似た気持ちで、無情にも開かれる扉を眺める他なかった。
 「『ふわあ……はい、どちらさまですかー…………っ!?』」
 「……こんにちは、急に来て、ホントごめんね」
 眠たげなフランス語と共に現れたウマ娘は、俺を見た瞬間、ピンと耳と尻尾を逆立たせる。
 大きく見開かれる、透き通る青い瞳。
 柔らかそうな栗毛の髪はところどころぴょんと跳ねていて、寝起きであることを演出している。
 服装は『凱旋門賞』という漢字が書かれた黒いTシャツに、飾り気のない短パン一枚。
 ヴェニュスパークは────俺の顔を見たまま、完全に固まってしまった。
 ……まるで、あの時と一緒だな。
 過去の思い出とばっちり重なってしまい、俺は思わず、吹き出してしまう。
 そして、その直後、パークの顔が真っ赤に染め上がった。
- 5二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:52:27「なっ、なっ、なっ、なんで、アナタがいる、してますか!?」 
 「ちょっと所用でフランスに来たから、少し挨拶をって思ってさ、あと、これを」
 「……ふえ?」
 俺は、途中で購入した赤いバラの花束を、パークの前に差し出した。
 あの後、街中の様子を見ていたが、どうやらフランスにおける女性へのプレゼントはバラが定番らしい。
 だから、彼女への今までの感謝の気持ちを込めて、道中の花屋で用意してきたのだが。
 「えっ!? ええっ!? えええっ!?」
 パークは両頬を押さえながら、更に顔を朱色を濃くして、耳や尻尾をぴこぴこ彷徨わせていた。
 ……あれ、何か間違えたかな。
 いきなり花渡されても困るかもしれないし、引っ込めようかな、そう思った瞬間だった。
 「……~~~~っ!」
 パークは慌てた様子で身を翻し、飛び込むように部屋に滑り込んだ。
 そして扉をバタンと勢い良く閉じると、扉越しで聞こえるギリギリの声で、言葉を紡ぐ。
 「……アナタの気持ち、受け取るにも、ジュンビ、あるです」
 「そっ、そうだね、いきなり来て悪かったよ」
 「Ce n'est pas grave、でも、少し時間をショモウ、しますね、ふふっ」
 「……ははっ」
 俺達は扉を挟んで、二人して、小さな笑ってしまう。
 このやり取りが、あの時と同じものであると、思い出したから。
- 6二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:52:42「Désolé de te faire attendre!」 
 しばらくして、パークは元気良く現れた。
 髪をしっかりと整えて、メイクを施して、勝負服を彷彿とさせるデザインの服でめかしこんで。
 先ほどのズボラなイメージが吹き飛ぶほどに、清楚で、可愛らしくも、美しい姿に、一瞬見惚れてしまう。
 そんな俺の心境を知ってか知らずか、彼女ははにかんだ笑みを浮かべて、両手を差し出した。
 「……それじゃあ、ドウゾ」
 「あっ、ああ」
 さっきは、さらりと手渡そうとすることが出来たのに。
 いざ準備を整えたパークを前にすると、心臓がドキドキと音を鳴らしてしまう。
 年下の子を前に情けない────そう思いながら、俺は大きく深呼吸をして、彼女にバラの花束を手渡す。
 定番の、言葉を添えて。
 「ハッピーバレンタイン、パーク」
 「Merci beaucoup……えへへ♪」
 受け取ったパークは、とても嬉しそうに顔を緩めて、ぎゅっと花束を抱きしめた。
 そしてしばらくバラの香りを堪能したのち、ちらりとこちらを見る。
 「ところで、アナタはフランスのLa Saint-Valentinを、理解する、してますか?」
 「………………えっ、なんか違うの?」
 「……はあ、やっぱり、です」
- 7二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:52:54パークは呆れたように、大きくため息をついた。 
 さあっと、血の気が引く。
 もしかしてなんかヤバイことやらかしたのだろうか、頭の中が国際問題の文字で埋め尽くされる。
 顔を青くしているであろう俺に対して、彼女は悪戯っぽく微笑んだ。
 「フランスにおける今日は、La Fête des Amoureux、です♪」
 「……は?」
 パークとの会話では日本語を使っているが、俺もフランス語は話せるし、理解も出来る。
 だから、彼女の言葉の中にあったフランス語も、正しく理解することが出来た。
 La Fête des Amoureux────恋人たちのお祭り、という意味である。
- 8二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:53:11「フランスにおけるLa Saint-Valentinは男性から女性へ、愛を伝える日、です」 
 「……」
 「ギリ、なんてある、してません、必要なのは、愛だけです」
 「…………」
 「だから男性が贈り物をする相手も、結婚相手か……コイビト…………だけ、ですよ?」
 「本当にすいませんでしたぁっ! Je m’excuse profondément!」
 俺は自身の軽率な行動を後悔し、深々と頭を下げる。
 ……まさかフランスのバレンタインが、こんなにも日本と違うとは思わなかった。
 そりゃあパークもびっくりするよな、そう申し訳なく思いながら、俺は彼女の様子を窺う。
 彼女は、頬を膨らませて、不満気な表情を浮かべていた。
 「……謝る、されるとザンネン、してしまいます、この愛は偽物、ですか?」
 「いや、その、キミへの想いは本物なんだけど、性質が違うというか……!」
 「じゃあ、私を、愛する、してますか?」
 「えっと、その、だなあ……!」
 しどろもどろになりながら、思考を回転させる俺は、ふと気づいた。
 パークの肩が、微かに震えていることに。
 そして、その愛らしい口元が、ぴくぴくと動いていることに。
 じっと見つめる俺の視線に気づいたのか────彼女は耐えられないとばかり、破顔した。
- 9二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:53:25「ぷっ、ふふっ、あはっ、あははっ!」 
 「……パーク」
 「Je suis désolée、アナタの反応がカワイイ、してるから、つい……!」
 「……まあ、俺もデリカシーがなかったよ、反省する」
 「……でも嬉しい、してる、本当です、ほら」
 「ちょっ」
 そう言ってパークは、花束ごと、正面からぎゅっと抱き着いて来た。
 バラの芳しい香りと、彼女自身の甘い香りが、鼻腔をくすぐる。
 そしてその小さな身体から伝わってくる、柔らかな感触と、優しい温もり、そして早鐘を鳴らす心臓の音色。
 彼女はぽんと俺の胸の上に頭を寄せると、頬を赤くしながら、心地良さそうに目を細めた。
 「……ドキドキ、伝わる、してますか?」
 「……ああ」
 「ふふっ、アナタのドキドキも、聞こえる、ですね?」
 「そりゃあ、キミみたいな子にこうされればね、誰だってそうなるさ」
 パークは、その言葉を聞いて、ゆっくりと目を閉じた。
 そして、囁くような、とても小さな声で、そっと呟く。
 「────愛を伝えに来てくれて、アリガトウ、です」
- 10二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:53:40「あっ、バラとアナタと一緒に写真を撮る、忘れる、してました」 
 「……写真?」
 「アナタとの思い出を残す、したいですから……あの娘とも、共有する、したいですからね?」
 「そっか、まあ帰りも送るつもりだから、その時に撮ろうか」
 「C'est clair! ふふっ、Chevalier、ですね?」
 「はいはい、お姫様」
 あの後、俺はパークと共に、パリの街へと繰り出していた。
 たくさんの人の中、はぐれないように、しっかりと手を繋いで。
 彼女はいつかの約束を守るかのように、俺の前に立って、先導してくれていた。
 食事に行こうと彼女が提案してくれたので、それに乗った形である。
 ……というか、この行先。
 「……もしかして、前に言ったカフェに連れてこうとしている?」
 「voilà、良くわかる、しましたね?」
 「まあ印象深いから……でも、せっかくだらレストランとかでも」
 「今日、パリのレストランは予約でいっぱい、ですよ?」
 「マジか」
 まさか、そんなところにまで影響が出るとは。
 パークに感謝を伝えるために来たのに、結局、お世話になりっぱなしである。
 彼女はあまり気にしてないだろうが、どうにも申し訳ない気分になってしまう。
 だから俺は、彼女に提案をした。
- 11二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:53:54「パーク、なんかプレゼントを贈らせてくれないかな?」 
 「……バラ、貰う、しましたよ?」
 「そうなんだけど、結局色々お世話になったから、なんかもう一つ……バレンタインの定番とかある?」
 「Lingerieとか」
 「…………それ以外でお願いします」
 「ふふっ、ジョーダンです、ジョーダン♪ 『……それなら、一つだけ、私からお願いを』」
 パークは揶揄うような笑みを浮かべた後、少し寂しそうな表情になった。
 軽い足取りのまま俺の隣に並んで、耳元に顔を寄せる。
 そして、彼女は小さな声で、お願いを口にした。
 「『また、必ず、私へ愛を伝えに来てくださいね?』」
- 12二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 01:54:11お わ り 
 また会おうねパークちゃん
- 13二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 02:02:49すごく良かったのになぜ深夜に! 
 またどっかで出番あるといいよね
 ウマレーターでこっそり密会しててほしい
- 14二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 02:03:15王の帰還 
 バレンタインに終わった直後だし...あと数日でもう会わないな...
 だからこのタイミングが...パークちゃん...
 ヴェニュスパークのデザインと属性マジでこの1年で最高と思う
- 15二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 02:39:45このレスは削除されています 
- 16124/02/21(水) 06:49:47
- 17二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 13:52:13いいSSでした・・・ 
- 18124/02/21(水) 18:53:54そう言っていただけると嬉しいです 
- 19二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:32:19うーんこの小悪魔 担当ちゃんの頭痛の種が増えましたなぁ 
- 20124/02/21(水) 22:15:45後日担当ちゃんのスマホにはバラを抱えたパークちゃんとトレーナーのツーショット写真が来るとか何とか