【SS】情人節

  • 1二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:31:43

    授業が終わると教室から出る生徒がいつもより早足ぎみで廊下を歩いて行く。私も例外なくその1人。急いでトレーナー室に向かう。
     今日は2月14日、情人節。大切な人に愛や感謝の想いを込めて物を贈る、いわゆるバレンタインデー。香港では男性が女性に花束を贈る日。でも、日本では女性が友達や大切な人にチョコを渡す日。
     おかげさまで今日の昼食中は賑やかで楽しい日だった。キタサンやダイヤ、シュヴァルにドゥラメンテさんとかとチョコの交換をした。いわゆる、友チョコというもので、それはもう大いに盛り上がった。お互いに作ったチョコを褒めたり、食べて味わったりして、すごく楽しんだ。
     普段ならこれだけでもいい思い出。だけど、まだ、一番お世話になっている人にチョコを渡せていない。
     今、多くのウマ娘達がターフに立つ覚悟のように胸を高鳴らせて大切な人の元に駆けていく。
     私も含め普段言えない感謝や胸に秘めた想いを伝えるが為に。
     程なくして、私はトレーナー室に到着。いつもの練習より距離は走ってないのに胸がドキドキする。彼にチョコを渡すシチュエーションを何度か頭の中でイメージしたのだけど、いざ本番となると緊張する。
     それもそうよね、だって、初めてバレンタインの日に手作りのチョコを渡すのだから。
     落ち着きを取り戻す為にも胸に手を当て、軽く息を整える。鼓動を少し静まるのを感じてから、ドアをノックする。

  • 2二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:35:59

    「こんにちは、トレーナー!」

    「こんにちは、クラウン」
     
     ドアを開けると彼は椅子に座って、仕事をしていた。私が入って来ると手を止め、こちらに体を向ける。そんな彼に近づきながら、緊張からか頬が少し赤くなる。鞄から白い包装紙でラッピングされた箱を取り出し、ついに渡す。

    「Happy Valentine’s Day! トレーナー。いつも私のために頑張ってくれてありがとう。これでも食べて、元気つけて」

     頭の中で何度もイメージトレーニングしたかいあってか、噛まずにスラスラと自分の気持ちを告げることができた。

    「ありがとう、クラウン」

     彼は私に感謝の言葉を述べながらとチョコ受け取る。すると、トレーナーは振り返り、用意していたのか花束を持って来て

    「ハッピーバレンタイン、クラウン。俺も君の走りに夢をもらっているよ。いつもありがとう」 
     そんな甘いセリフと共に花束を渡された。

     「好!  多謝晒トレーナー」
     
     ドキッと胸が今日一番弾む。予期せぬ自体に林檎のように顔が真っ赤になりながらも、なんとかお礼を言う。香港でのバレンタインを調べたのかな、嬉しいサプライズ。でも、その反面、なんか手練れているみたいで少し複雑な気持ち。
     だって、こっちは初めてで心臓がドキドキと緊張して渡したのに、トレーナーはなんだか余裕がある感じがするからか。

  • 3二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:37:26

     「それでトレーナー、せっかくだから開けて、食べてみて。気合い入れて作ったから、味には自身があるの」
     
    「そうか、それは楽しみだ。じゃあ、さっそく」

     少し釈然としない気持ちになりつつも私は彼の反応を見たくて、箱を開けるよう促す。トレーナーはそれを受け取り、丁寧にラッピングを解いて箱を開ける。中から出てくるのは様々な種類のチョコ。
     
     「おお、色々あるな。頑張って作ったな」

    「No problem。だって、一番大切な人に渡すものだもの。マジックと同じで色々と楽しんでもらいたいものよ」
     
     箱を空けた彼の反応は驚きと感心が入り混じったもの。用意した側からすれば、その反応だけでも嬉しい限り。

     「ふむ。どれにしようかな。……これから食べようか」

     トレーナーはどれを選ぶか少し悩んだ後、丸型のチョコを手に取る。
     ちゃんとできているか心配で何度も作って、味見もしたから大丈夫なはず。その様子を見ながら、私は知らない内に胸の上に拳を握りしめ、そう思わずにいられなかった。そして、トレーナーはチョコを口に入れ、味わいながら食べる。食べ終わると、口角を少し上げながら

    「美味しいよ、クラウン」

    「真係?」


    「ああ、本当」

     良かった、ちゃんと美味しかったんだ。ホッと安心して胸をなで下ろす。

  • 4二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:43:10

    「多謝晒。そう言ってもらえて作ったかいがあったわ」

     嬉しさからか、緊張で固くなった口元が緩み、笑顔になる。それと同時にふと、ある妙案が浮かんだ。

    「ねぇ、トレーナー今から時間あるかしら。せっかくだから、お茶にしない?少しゆっくり過ごしたいの」

    「クラウン、大丈夫。時間はあるよ。お茶にしようか。…でも、チョコは君の分はないから売店で買ってこようか」

    「唔使 多謝。トレーナー、私は午前中、ダイヤ達と食べたから、いらないわ。そのお気持ちで十分よ。その代わりにあなたのバレンタインの思い出を聞かせて、もらってもいいかしら」

     バレンタインだからか、日頃聞けない話題を彼に振った。チョコを美味しいと言ってもらえて、嬉しくて、浮かれ気味だからこそ聞ける。きっと、いつものノリでは聞けないだろう。もし、ダメだったら素直に引くつもりだ。

    「……そうか。ほろ苦い思い出ばかりで面白くはないけど、そのぐらいなら全然構わないが。お茶をしながら話そうか」

     彼は嫌がる様子もなく快諾する。

    「好。えぇ、ぜひ聞かせて頂戴」

     私はそう返事をしながら、ウキウキとした気持ちでトレーナー室に備え付けられたポットとお茶を用意する。
     もしかしたら、私と一緒で冷静な彼も少し浮かれているのかもしれない。
     空いた時間の差は埋まらない。せめて、今、あなたと一緒にいる時間は少しでも大切にしたいもの。
     だって、あなたと過ごす時間が、今の私にとって一番大切な時間なのだから。

  • 5二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:45:34

    1週間前になりますが、クラウンでバレンタインを書きました

  • 6二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 20:54:53

    香港では男性から女性に贈り物をするのがメインなんですね いいとこ取りできたら楽しいでしょうね

  • 7二次元好きの匿名さん24/02/21(水) 21:03:13

    いいね👍️

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