【SS注意】【トレウマ注意】【幻覚注意】かさぶた

1二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 13:33:03

「ううっ、スティル……」

トレーナー室のソファで身じろぎしている、トレーナーさん。
私、スティルインラブのトレーナーさんは、最近よくうたた寝をしています。
……お疲れでないと、よいのですけど。

「トレーナーさん？」

答えは、沈黙。
どうやら、ただの寝言だったようですね。
「春眠暁を覚えず」と言いますが、このポカポカと暖かい陽気ではそれも道理。

窓の外では、下級生たちが美術のスケッチをしています。
純真無垢に花壇の草木を見る目は、幼いながらも真剣そのもの。
私にも、あんな時期があったのでしょうか。

――今の私には、トレーナーさんしか見えないというのに。

今頃、クラスメイト達は数学の真っ最中でしょうか。
今日の日付は、私の出席番号と同じなので、もしかしたら当てられているかもしれません。
当の本人は、いないのですけれど。

2二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 13:33:36

「トレーナーさん」

回答がないのを確認してから、隣に腰掛ける。
……本当に、ぐっすりと眠ってしまって、この人は。
私じゃなかったら、襲われてしまっても文句は言えませんよ？

１時間早く、放課後を始めるこの時間は、至福の時間。
誰にも邪魔されない、私とトレーナーさんだけの時間。
たまに起きても、「自習でした」「ホームルームが早めに終わったので」と言えば納得してくれるトレーナーさんは、可愛い。

腕酌みをしているトレーナーさんの腕を、静かに解く。
起きないのをいいことに、その手のひらを、ゆっくり自分の身体に這わせた。
大事に、撫でられるように。

――いつか、こんな風に撫でてくれれば良いのですけど。

溜息を、つく。
すやすやと眠るトレーナーさんは、私に微塵も興味を示さない。
寝ていても、起きていても。
……女としての自信を、失いそうです。

3二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 13:33:53

ローテーブルの前に置かれた、マフィンに目を向けます。
朝、いつもより１時間早く起きて、作っておいたもの。
今日は、あなたとお菓子を食べたい気分だったのです。

ウマ娘によっては、自分の作ったお菓子に血や髪の毛などを入れる方がいるようですが。
そんな、不衛生なことはしません。
一度、豚の食用血液で試してみましたが、チョコレートは２０％入れた時点で血の臭いが主張してきてダメでした。

だから、今は入れるのは愛情だけで十分。
幸い、私に負けず劣らすお菓子の好きなあなたは、私のお菓子を喜んで食べてくれます。
それは、あなたが一口、私のお菓子を食べるたびに、あなたの身体が私の愛情製に置き換わっていくということ。

4二次元好きの匿名さん24/02/23(金) 13:34:29

……そろそろ、トレーナーさんが起き出す時間。
なのに、今日は眠りが深いのか、そんな様子が全然感じられません。
まったく。私に喰われてしまっても知りませんよ？

毎日の日課を済ませておきます。
トレーナーさんも知らない、トレーナーさんの盆の窪にある小さなかさぶた。
それを、爪でひっかいて剥がします。

じわり、と１ｍｍほどの玉のように浮き出る血。
それを、そっと舐めて止血します。
……トレーナーさんの血は、どんなお菓子よりも甘くて、魅惑的。
そして、私の唾液と、トレーナーさんの血液が混ざる倒錯した刺激。

彼の服の上から、アカイイトを目立たないように腕に回します。
それから、自分の腕にも。
……これは、私と言う忘れ物をしないための呪い。

ここまでしても、まだ目の覚める気配のないトレーナーさん。
本当に可愛い。許されるなら、駆け落ちして２人でどこかで暮らしたい。
……そうですね、札幌が良いでしょうか。

でも、今はまだ、その時じゃない。
決意を新たに、あなたの頬に少しだけ触れる程度の、やさしいキス。

これまでも、愛しています。
今でも、愛しています。
この先も、ずっと愛しています。

――私が、必ずあなたを男にして差し上げますから。