- 1二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:48:51
「すいませんっ! お待たせしましたーっ!」
街中のとあるカフェ。
この日、私────ソノンエルフィーは、涼花さんと打ち合わせのために待ち合わせをしていた。
けれど、大学の方で急用が発生して、一時間以上遅れて到着することになってしまった。。
もちろん涼花さんには連絡済み、彼女はは全く怒らないで、むしろ、気を付けてゆっくり来てねと言ってくれた。
……まあ、申し訳ない気持ちと、涼花さんに早く会いたい気持ちでいっぱいになって、走ってきちゃったんだけども。
そしてカフェに到着した私が見たのは────難しい顔で、スマホを眺める彼女の姿だった。
「……涼花さん?」
涼花さんに呼びかけてみるものの、スマホの画面に集中したまま、ぴくりとも反応しない。
眉間に皺を寄せて、悩まし気に考え込むように、スマホをじっと見つめていた。
普段の落ち着いた優しい顔とも、最高潮の時のキリッとした顔とも違う、珍しい顔。
……それを、私以外に向けていると思うと、少し、もやもやとした気持ちになる。
気が付けば。私は当てつけるように、大きな声で彼女の名前を呼んでしまっていた。
「涼花さーんっ!! お待たせしましたーっ!!」
「……っ! エッ、エルフィー? 来ていたの? ごめんなさい、ちょっと考え事をしていて」
涼花さんはぴくりと反応してから、申し訳なさそうな表情で謝罪を口にする。
その言葉を聞いて────私は我に返った。
待たせたのは私で、待っていてくれたのは涼花さんなのに、涼花さんに謝らせている。
とんでもなく恩知らずな行為をしていると気づいた私は、慌てて、彼女に対して頭を下げた。
「わっ、私こそすいませんでした! こんなに遅くなってしまって……!」
「いいのよ、遅れたのはエルフィーのせいじゃないでしょ? むしろ、用事の方は大丈夫だったの?」
「涼花さぁん……!」 - 2二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:49:19
遅れて来た挙句、あんな失礼な態度を取ったのに、涼花さんは優しく私に接してくれる。
相変わらず、なんて素敵で、かっこいい人なんだろう。
思わず、胸の奥がぎゅんぎゅんと高鳴ってしまいまそうだ。
……でも、これで終わりというのは、私の気が済まない。
だから私は、私らしく、正面からぶつかってみることにした。
「あの、涼花さん、さっき何やら難しい顔をしてましたよね?」
「……そんな、顔に出てた?」
「はい、すっごく……もし良ければ、私に、“相談”してみませんか……?」
言ってから、もう少し気の利いた言い方にすれば良かったな、と思った。
多分、U.A.F.の期間中に良く出ていた単語だったから、反射的に出てしまったんだろう。
でも、涼花さんはそんなことは気にせず、真剣な面持ちで私の言葉に向き合ってくれた。
「……そうね、貴方も決して、無関係というわけじゃないし」
「へっ?」
「エルフィー、少し知恵を貸してもらっても良いかしら?」
「ハッ……ハイッ! 貸す! 貸します! 貸させてください!」
私は、ついつい気持ちを高ぶらせてしまった。
挽回をするチャンスが来たこと。
そして、涼花さんが、私のことを頼ってくれたことが、とても嬉しくて。 - 3二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:50:07
「……涼花さんの、ファンですか?」
「ええ、そうみたい、会社にも応援の手紙が来てて……あっ、いえ、迷惑とかそういう話ではないのよ?」
立ち上がりかけた私を、少し慌てた様子で涼花さんは止める。
……ウマチューバーの界隈でもファンとの関係で悩まされる子はたくさんいるので、そういう話かと思ったが、違うようだ。
涼花さんは安堵のため息をつくと、ことの時代を再び話し始める。
「U.A.F.の開催の時、貴方と一緒に挨拶をしたことがあったじゃない?」
「ありましたねー! もう何年前でしたっけ? 感覚的にはつい昨日の出来事な気分ですけど」
「その時から、私個人のことを応援してくれる人が、何人かいてくれたみたいで」
なんとなく、覚えている。
私の配信のコメントの中で、涼花さんの名前が出て来たことが、何度かあったから。
涼花さんは、同性の私でも時々見惚れてしまうような、とても綺麗な人だ。
だから、一目みただけでファンになってしまう人がいるのも、多少は理解出来る。
……まあ、外見だけで涼花さんを分かった気にならないで欲しいな、とも思ってしまうけども。
やがて涼花さんは、過去の記憶を思い出すように目を閉じて、柔らかな笑みを浮かべた。
「……彼らの応援の言葉には、たくさん励まされて、たくさん支えられたわ」
「それは、私にも、わかります」
言葉が持つ力というのは、良くも悪くも、とても大きなもの。
ウマチューバーとして活動を始めてから、改めて、身に染みて理解していた。
時にして、言葉は誤解と反感を招き、時には誰かを傷つける刃となってしまう。
それが原因で配信をやめてしまった人はたくさん見たし、私自身、苦い思い出もあった。 - 4二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:50:23
────そして反対に、想いのこもった言葉は、人を元気にする力を持っている。
トレセン学園での現役時代。
それは両手で数えられるくらいの人数かもしれない。
だけど、確かな応援の声が聞こえていたから、私は最後まで悔いなく走り切ることが出来た。
初めて、ワクワクアスリート系ウマチューバーとして動画を配信した時。
再生数はごくわずかで、コメントもなかなかつかなくて。
だけどただ一人が、楽しかったとコメントしてくれたから、私は今でも活動を続けている。
そして涼花さんと出会い、私の夢を元にたくさんの人と繋がって、ついには私達の夢を実現した。
それを考えれば、たかが言葉なんて、言えるはずもない。
「でも、会社の方針もあって、私個人からお手紙の返事とかは出来なくて」
涼花さんは、困ったように手を頬に当てた。
……ここまでくれば、流石の私も、涼花さんが何に悩んでいるかは、想像がついた。
きっと、送られた手紙には、すごい想いと熱意がこもっていたのだろう。
誰かの気持ちを決して蔑ろにはしない、本気には本気で応えてくれる。
涼花さんは、そういう人だから、だからこそ。
「別の方法で、何かお返しが出来ないかなって、考えていたの」 - 5二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:50:37
「────私の配信にまた出てみるのはどうでしょうか! 私も涼花さんと色々やりたいです!」
「運動能力では数段劣る私が、貴方の配信にただ出るだけでは、その魅力を損ねるだけになってしまうわ」
「そっ、そうなんですか!?」
「ええ、それにエルフィーの動画を見て応援してくれた人だから、貴方のファンでもあるの」
だからそういう結果は避けたい、と涼花さんは付け足す。
運動する涼花さんはとっても魅力的だとは思うけど、涼花さんが言うのだからそういうことなのだろう。
「仮に貴方の配信に出るとすれば、何かもう一押し欲しいところね」
「それじゃあ、たくさんお喋りしましょう! 涼花さんのお話、とっても面白いですから!」
「…………私は見る人を楽しませるような話は出来ないわ」
「ええっ!? 私は涼花さんの話だったら夜通し聞いてても飽きませんよ!?」
「……ふふっ、それはエルフィーだから、でしょ?」
私の言葉に、涼花さんは呆れたような、けれど少し嬉しそうな表情をした。
しかし、もう一押し、かあ。
考えてはみるけれど、なかなか妙案は浮かんでこない。
そもそも涼花さんが考えて、答えをなかなか出せない問題。
そんな簡単に解決できるようなことではないことは、明白だった。
こういう時は、別の視点からの発想が必要だ。
そして、そのための手段は、私自身がU.A.F.でやってきたこと、すなわち。
私はスマホを取り出して、涼花さんに向けて、言い放った。
「涼花さん────“相談”をしましょうっ!!」 - 6二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:50:51
『なるほど、それは難しい話ですね』
「そうなんですよー! ですからトレーナーさんの知恵をお借りしたくて!」
「すっ、すいません、お忙しいでしょうに、こんな私事で電話してしまって……」
『いえいえ、お二人には担当ともどもお世話になってますからね、これくらいはお安い御用ですよ』
スマホから、涼花さんとはまた違った意味で優しそうに響く、男性の声。
それはU.A.F.初代覇者であるウマ娘、その担当トレーナーのものであった。
U.A.F.の盛り上がりに、とても貢献してくれたお二人。
私は彼の指導を少しだけ受けたことがあるけれど、新人とは思えないほどの知識を持っていた。
……それに普段の雰囲気とか、担当の子に甘かったりするところが、なんだか涼花さんい似ている気がする。
そんなわけで、私にとっては親しみやすい人物だった。
『裏方という意味ではトレーナーも同じですからね、俺にファンとかはいないですけど』
「いえいえっ! 貴方にもちゃんとファンがいますよ! 私とか!!」
「……私も、担当の子だけじゃなく、貴方のことも応援していますよ?」
『ははっ、それはどうもありがとうございます……そうですね、役に立つかどうかはわかりませんけど』
去年のファン感謝祭の話なんですけど────と、トレーナーさんは前置きをする。
『担当ウマ娘の勝負服を着て、トレーナーが走るレースをする、という企画をやったんですよ』
「……勝負服を着て、ですか?」
『もちろん本物じゃないですけどね、参加者の大部分は女装で』
「なるほど! ちなみにトレーナーさんは参加したんですか!?」
『………………まあレースそのものの内容は、お話にならないようなものでしたよ』 - 7二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:51:08
おや、はぐらかされた。
このことに関しては今度、担当の子の方に聞くとして────私は、レースの光景を思い浮かべてみる。
ウマ娘ではなく、そのトレーナーが走るレース。
内容そのものはきっとお粗末なものだったに違いない。
恐らくはちびっこウマ娘の駆けっこにも劣るような、そんな走りだったとは思う。
けれど、だからといって盛り下がるかといえば、そんなことはないと容易に想像出来た。
『ファンの人達も、担当の子もすごい喜んでくれて、身体を張った甲斐があったなあって思いましたね』
「……そのウマ娘の勝負服を着ることによってその人物が誰のトレーナーなのかが一目瞭然となっていて知らない人も盛り上がりやすい……そもそも見た目のインパクトがあって話題性は抜群……内容は見劣りしたとしても楽しんでもらえる余地は十分にあるかもしれない……」
『……これは』
「はい……! キリッとしてきています……っ!」
涼花さんは真剣な眼差しで、小さく言葉を呟きながら、思考をフル回転させていた。
最高潮の時の、かっこいい顔。
普段の優しい顔も大好きだけど、この顔の時は動きもキレキレで、見惚れちゃうくらい。
やがて、涼花さんはスマホに向き直る。
「トレーナーさん、ありがとうございました、参考にさせていただきます」
『ええ、僅かながら力になれたようで何よりです』
「このお礼は必ず……エルフィー、貴方が配信の時に来ている服の予備は、何着かあったわよね?」
「はいっ! ウマチューバーとしての勝負服みたいなものですから、家に置いてありますっ!」
「そう、突然で申し訳ないのだけど、今日貴方の家に行っても良いかしら?」
「……っ! ハイッ! 大、大、大歓迎ですっ!!」
『……えっと、それじゃあお暇させていただきますね?』
「あっ、すいません切らないままこっちで話をしてしまって……!」
「ありがとうございましたっ! トレーナーさんも楽しみにしていてくださいねっ!?」
『そうさせてもらいますよ、それでは』
通話が切れて、一息。
私と涼花さんはお互いに視線を合わせて、笑みを浮かべるのであった。 - 8二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:51:23
カフェを出てから、数時間後。
私は、私の自宅で、尻尾を振りながら、涼花さんのことを待っていた。
今、涼花さんは別室でお着替え中である。
「あああ! 楽しみで、待ちきれませんっ!」
あの服は、私にとっては思い入れのあるものだった。
動きやすさを重視しつつ、私らしさを取り入れた、私が考えた服。
……現役当時、袖を通すこともなかった勝負服のイメージも、少し入っていたりする。
涼花さんの選んでくれる服も素敵で、大好きなのだけれど、あれに関しては別格のお気に入りなのだ。
サイズ的にも結構融通が効く服だったはずなので、涼花さんも問題なく着ることが出来るだろう。
「……っ!」
うずうずとする身体を必死で抑えていると、こつこつと小さな足音を、耳が捉えた。
思わず背筋を伸ばして、正座で身構えてしまう。
やがて足音が止まり、涼花さんが姿を現した────何故か、顔だけ。
涼花さんは、顔を真っ赤に染めて、困惑した様子で視線を彷徨わせていた。
「涼花さん! 着替え終わったんですか!? それとも何か問題が!?」
「えっ、ええ……着替えは出来たわ……でも、これは私には、その、なんというか……」
「恥ずかしがらなくても涼花さんなら絶対にお似合いですよっ! ささっ! 是非見せてください!」
「……~~っ! エッ、エルフィー、絶対に笑わないでね?」
そう言いながら、涼花さんはぎゅっと目を閉じる、
そして、高いところから飛び降りるように、ぴょこんと姿を晒した。 - 9二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:51:42
────まず、涼花さんの名誉のためにも、説明をしておきたい。
涼花さんの体型は、一般的な成人女性としてみれば、健康的なものと言うべき体型である。
モデル体型、というほどではないけれど、平均よりも少し痩せ気味とまでいえる。
ただし、あくまでそれは、一般的な成人女性を基準とした話。
私達のように、アスリートとして身体を作っている人達と比べれば、その身体は少しふっくらしていた。
もちろんそれが悪いというわけではない、それが普通、当たり前の話なのである。
ただ、あの服に関しては、ワクワクアスリート系ウマチューバーの自分に合わせた服なわけで。
「……エルフィー、黙られると、正直辛いのだけど」
「………………は!? いえ、すいません、その、色んなところに目を奪われてしまいまして!」
「色んなところ?」 - 10二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:51:56
例えば、下半身。
動きやすさを追求した、左右で丈が違う、厚手のスパッツ。
伸縮性に富んでいて、あらゆる動作を邪魔しない、私にとって理想的な逸品。
しかしその伸縮性が────涼花さんの太腿の豊満さを、強調してしまっていた。
むちっとした瑞々しい肉感が、スパッツから少し、はみ出ているように見える。
今度膝枕をしてもらいたいな、自然とそんな願望を見る人に抱かせてしまうくらいだった。
例えば、腹筋。
この服装においては、なんの覆いもなく、完全に晒されてしまっているお腹。
普段からしっかり鍛えている私にとっては、かっちかちの腹筋は全く恥ずかしくない部分。
しかし、涼花さんのお腹は────とっても、柔らかそうに見えた。
別に弛んでなどはいないし、しっかりとくびれも出来ている。
けれどそのモチモチとしていて、触り心地の良さそうなお腹は、思わず手を伸ばしたくなるほどだった。
例えば、上半身。
これまた伸縮性の富んだノースリーブのインナーと、お気に入りのアウター。
機能性と趣味を兼ね備えた、我ながらセンスの良い組み合わせだと自負していた。
ところで────涼花さんは、着痩せするタイプである。
普段着ているような服ではあまりわからないけれど、結構なものをお持ちだったりする。
そして、この服のようなボディラインが出やすい服だと、その真の姿はさらけ出されてしまっていた。
それでも、堂々としていれば、あまり気にはならなかったと思う。
しかし涼花さんは、普段は肌を晒す服を着ないせいか、もじもじと恥ずかしそうに身体を動かしていた。
擦れ合い、むにむにと形を変える太腿。
手のひらでお腹を隠そうとして、その指の隙間から見え隠れするおへそ。
ぽよんと自己主張の激しい膨らみを押さえようと腕で覆い、余計ダイナミックになる胸。
今の涼花さんを表現する語彙を、私は持ち合わせていなかった。
でも私は、涼花さんに対して、どうしても本気の想いを、言葉を伝えたかった。
だから今、私の頭の中にある正直な感想を、ただただ一直線にぶつけることにする。 - 11二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:52:10
「涼花さんっ!! その格好────すっっっっごく、すごいですっ!!!」
なお、それを聞いた涼花さんは、両手で顔を覆い、その場にへたり込んでしまった。 - 12二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:52:31
「……私はプロデューサーなのだから、U.A.F.や他のイベントを成功させる働きで返すべきよね」
「言われてみればそうですねっ! さすがは涼花さんですっ!」
その後、私と落ち着きを取り戻した涼花さんは、同じソファーで温かいお茶を飲んでいた。
私の服を着たままの涼花さんは、心底疲れた表情で、ある種の悟りに至ったような結論を出す。
今日一日がほぼ無意味になる結論な気もするけれど、私は良いものを見れたので気にしないことにする。
…………涼花さんとペアルックの配信は、ちょっと、かなり、楽しみにしていたのだけれど。
おっと、楽しみ、で思い出した。
わざわざ私達に時間を割いてくれた人に、ちゃんと報告をしなくてはいけない。
そう考えて、私はスマホを取り出して、カメラを起動し、涼花に向ける。
「……エルフィー? 何でカメラを向けているの?」
「お世話になったトレーナーさんにも見せてあげようかと思いましてっ!」
「絶対にやめて」
涼花さんは真っ赤な顔とジトっとした目つきでスマホに手を伸ばし、レンズを遮った。
また珍しい表情だなと思いつつも、私は素直に諦めて、スマホを仕舞う。
────誰かに見せないなんて勿体ないなと思う反面、誰かに見せるのは勿体ないと思う自分がいる。
うん、トレーナーさんには今度、別の形でお礼をしよう。
そう考えながらも、私は再びスマホを取り出して、じっと涼花さんも見つめた。
「……涼花さぁん、一本だけ動画を残しちゃダメですか?」
「…………もう、誰にも見せないって条件なら、構わないわよ」
涼花さんは小さくため息をつき、参ったと言わんばかり苦笑いで、そう言ってくれた。
それじゃあ、この一枚は、とっておきの一枚にしなくちゃいけない。
私がすっと立ち上がると、涼花さんは目を丸くして、私を見つめた。 - 13二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:53:04
「それじゃあ、すぐ準備をしてきますね!」
「えっ? ええ……?」
困惑した様子の涼花さんを置いて、私は部屋を出て、クローゼットへと向かった。
服の在処はすぐにわかるし、着替えには時間はかからないので、すぐに戻ることが出来るだろう。
────なにせ、何度も着ている服なのだから。
動きやすさを追求した、左右で丈が違う、厚手のスパッツ。
伸縮性の富んだノースリーブのインナーと、お気に入りのアウター。
ぱぱっとそれらに身を包んで、涼花さんの下へと戻る。
涼花さんは一瞬きょとんとした顔をするものの、やがて納得したように、柔らかく微笑んでくれた。
「さあ、涼花さん、一緒にお願いしますっ!」
私は抱き着くように涼花さんにくっついて、インカメラのレンズを自分に、自分たちに向ける。
スマホの画面には、全く同じ服を着た、私と涼花さんの笑顔が映っていた。
ぴこんと、録画が開始を示す音が鳴る。
「輝く汗はっ!」
「……世界を繋ぐ」
「……! ワクワクアスリート系ウマチューバー、ソノンエルフィーと!!」
「ふふっ、そのパートナー、都留岐涼花です」
ぴこんと、録画を停止する。
残されたのは、世界のどこにも配信されることはない、とても短い動画。
内容を知っているのは、この世で私と、涼花さんだけ。
そんな当たり前の事実が、とっても嬉しくて、心がぽかぽかと温かくなる。
私はぎゅっとスマホを胸に抱きしめて、口元を緩ませながら、涼花さんに言った。
「これは────二人だけのヒミツ、ですねっ!!」 - 14二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:53:34
お わ り
配信 者って書き込めないって事実に気づいて少し焦りました - 15二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:55:46
- 16二次元好きの匿名さん24/02/26(月) 23:58:11
良……
- 17124/02/26(月) 23:58:18
- 18124/02/27(火) 00:08:08
そう言っていただけると幸いです
- 19二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 00:09:18
良質なSSサンスクです!
涼花さん普通に身体付きいいから結構なキャラの勝負服着こなせそう 涼花エルフィーのコンビでトレーナーと担当とかでやってる世界線もありそうって思いましたわ
NGワードの信/者で引っかかった感じですね こればっかしはしゃーないです - 20124/02/27(火) 07:47:25