- 1二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 18:03:44
「すごいウマ娘ばっかりだけど、いつか主役に!……なれるといいなぁ、なんて」
昔からそうだった。キラキラしている子達に追いつけなくて諦めることを繰り返した。そのくせ1番になることへの憧れは無くならなくて。予防線を張って自分を守ってる。そんな、臆病でつまらない私。そんな私を変えたのはトレーナーさんだった。
「走る理由なんて何でもいいんだよ」
華々しい同期の面々を差しおいて私を選んでくれた人。こちらを見据える目は真剣そのもので。私は私のままで良いのだと。無理に変わる必要も、自分を抑える必要も無いのだと教えてくれた。
「君は、何がしたい?」
「レースで走りたいです…いつまでも…!」
かくして私達は二人三脚を始めた。ひたむきに努力を続けた。それが実を結んだのか、アーリントンカップで重賞初制覇をあげることできた。そうして私も自信がついてきた頃に提案されたのは、クラシック三冠の一冠目である『皐月賞』。一生に一度の舞台に立てるのは光栄以外の何者でもなかった。無論そこには世代の強敵たちが集まった。重賞二勝のジャングルポケットさんに、三戦三勝の無敗だったアグネスタキオンさん。紛れもない格上だ。それでも、私は自分がどこまでやれるのか試してみたかった。上から離された3番人気だったが、私の努力が認められたのだと感じて嬉しかった。そして、本番がやってくる。
『伝説の始まりを、一瞬たりとも見逃すな!第〇〇回皐月賞!』
レース序盤は中団で待機。ジャングルポケットさんが出遅れたのか後方を走っている。最初のコーナーで蓋をされてしまったが、焦る必要はない。仕掛けるのは最終コーナーだ。向こう正面で徐々に前方に進出していくジャングルポケットさん。私はその後ろについていく。
「勝負だタキオン」
「…受けて立とう」
声が聞こえる。ああ、確かにこの二人は図抜けている。アグネスゴールドさんが回避した時点で、皐月賞の前評判では2強対決の様相だった。でも、それで終わらせるつもりは断じてない。レースは最終直線へ。私の前にスキマができた。この好機を逃す手はなかった。溜めた末脚はこの時の為。ゴールの前の坂を登った時点で、抜けたのはアグネスタキオンさん、ジャングルポケットさんに、この私。この差なら―――― - 2二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 18:05:32
「私だって…!!!」
加速加速加速加速―――!!スピードに乗って二番手に躍り出る。ジャングルポケットさんの息を呑む音がした。そうだ、私だってここにいる。無視なんてしていたら、足元を掬われるぞ。決死の覚悟で喰らいつく。アグネスタキオンさんがふとこちらを見て笑った気がした。一バ身。たったの一バ身なのに、最高速に届いている筈なのに捉えきれない。
「まだ…!!」
足を回せ。回転数を上げろ。少しでも前に身体を出せ。それでも、私は届かなくて。
『アグネス、アグネス、大丈夫!!』
「はあ———はあ———」
レースの結果は2着。無敗に傷をつけることは叶わなかった。茫然と掲示板を見ていると聞き覚えのある声に呼び止められる。
「よお、お前やるなぁ!次は負けねぇぞ」
「ジャングルポケットさん…」
「他人行儀だな、ポッケでいいぜ」
そう言ってニカッと笑う彼女にどう返そうか悩んでいると、今日の勝者までも現れる。
「ふぅん…私をここまで追い詰めたのは君らが初めてだ。これからも、良き競争相手であってくれたまえ」
二人と目が合う。その目は真剣そのものだ。つまるところ、私は彼女らのライバルとして認められたというわけで。それが堪らなく嬉しかった。
「私も次は勝ちます!」
これが始まり。私というウマ娘が主役になる為の大きな一歩である。 - 3二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 18:06:47
おわり
- 4二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 18:13:29
良いね
この感じ好き - 5二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 18:33:04
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- 6二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 19:46:08
ありがとうございます
- 7二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 20:14:28
キャラが分かってからのも待ってます
- 8二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 21:03:53
- 9二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 22:02:48
- 10二次元好きの匿名さん24/02/27(火) 23:35:16
このレスは削除されています
- 11二次元好きの匿名さん24/02/28(水) 10:30:54
レースSSって難しい