- 1二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 19:51:48
「む、私の故郷。カサマツのことか?」
クリスマスを間近に控えても日差し差し込む未来明るいトレセン学園。今の時間帯はちょうどお昼時、食べ盛りのウマ娘達が食堂に押し寄せ、あちらこちらでご飯のいい匂いと、山盛りによそられた白米が見られます。
そんな、大喰らいなウマ娘達の中でも、異彩を放っているのは、テラス席で天高く積まれたにんじんハンバーグと白米をかき込んでいる、芦毛でアホ毛がチャーミングなウマ娘。名前をオグリキャップと言います。
トレセン1の健啖家で、こと量を食べることに関しては彼女の右に出るものはいません。もはや毎食の恒例行事であるので、気に留める人はもうほとんどいませんが、彼女が地方のトレセンから転入してきた時は、まぁ、奇怪なものを見る目で見られていました。そんな話はもはや過去、プロのフードファイターすら泡を吹いて失神する食いっぷりは、学園外でも話題を呼び、最近ではフードファイターとしての仕事の依頼も来ており、当分食いっぱぐれる心配はなさそうです。もし、彼女が家庭に入った場合は、その家のエンゲル係数が心配ではありますが………
「あぁ、ちょっと気になってね。君から時たま聞いてはいても、話の途中のワンエピソードくらいだったし」
そんな彼女の目の前の席でヒトにしては大盛り(ウマ娘基準で言えば中盛り)の量のボウルパスタをフォークで回しとっているのは、彼女のトレーナー。彼は、新人にしてオグリキャップのトレーナーとなり、オグリと共に数々の功績を挙げてきた凄腕の若手トレーナーだ。もちろん、その功績の裏には、先輩からのイジメ、社会からのバッシング、人々の悪意など、栄光を掴むための土台としてはあまりに凄惨なものではあるが、その全ては過ぎ去ったものでもはや過去のことだ。今更ウジウジするようなものでもないし、この男もそう言った事にはあまり興味がなかった。
「そうだな、私の故郷のカサマツはとてもいい所だ。ご飯も美味しいし、親切でいい人も沢山いる。それに、共に走った仲間達もな」 - 2二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 19:51:56
食事中ではあるが、全く汚くなく、それでいてこの喧騒の中でもしっかり聞こえるくらいハキハキ喋れるのはもはや、才能の領域だろう。
ハンバーグを秒間3枚のペースで消費しながら、オグリの故郷の話は続く。
母親とよく行ったスーパーの話。
春に河川敷で四葉のクローバーを探した話。
コロッケをおまけしてくれる肉屋のおじさんの話。
ふきのとうが沢山生える山の話。
初めてレースで一着を取った時、近所の人たちみんなが喜んでくれた話。
今はもう無くなってしまった駄菓子屋の話。
………
ある程度、話終わった頃、山積みになっていたハンバーグもすっかりなくなっていた。
「……いいなぁ、オグリの故郷。とってもいいところじゃん」
男の方も随分と前に食べ終えて、今はオグリと話に華を咲かせていた。
「あぁ、カサマツはとてもいいところだ。ぜひトレーナーも………」
そこまで言って、オグリは何かを考えるように黙り込んでしまった。
「あの?オグリ?」
そして、真っ直ぐトレーナーの目を見て
「トレーナー、もし良かったら今度の休みに私とカサマツへ行かないか?」
その瞬間、周囲が静まり返った。トレーナーも固まっている。それはそうだろう、年頃の女子が自分のトレーナーを自分の故郷、自分の実家に連れ込もうとしているのだ。そんなのはもう逆駆け落ちだ。強制お前も家族だからの大安吉日すっぴんわっしょいである。
しかし、このウマ娘オグリキャップ、超が付くほどの天然さんなのだ。だから、自分の言葉がどういうふうに写っているのかわからない可能性があるのだ。
「あぁ、うん、わかった。冬休みも近いもんね、じゃぁ、そうしよう」
望んだ通りの返答が得られたからなのか、オグリはニコッと笑ってみせた。この笑顔を裏切れる男などこの世にいないのだ。 - 3二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 19:52:15
それから数日過ぎて、一大イベントであるクリスマスもそれほど大きな問題も起きず、今はそれぞれが年末年始に向けて学園の大掃除をしていた。
さて、オグリキャップとそのトレーナーも自分達のトレーナー室の掃除を行っていた。
オグリ最後の一年と言うこともあり、各方面からの仕事の依頼がとにかく多く、その関係で書類を詰めた段ボールが山積みで放置されていた。崩れればひとたまりもない量である。という事で、この2人の大掃除はこの書類を、トレセン学園の保管庫まで全て運ぶ事だった。
「いや、申し訳ないなぁ。いいのかオグリ?年末年始は家族と過ごした方がいいだろ?」
2人で黙々と掃除をしていると、トレーナーがオグリに年末年始のことについて聞いてきた。どうやら、彼はオグリと一緒にオグリの実家で年末年始を過ごすようだ。
「うん?構わないぞ。お母さんにはもうお願いしてあるからな。それに、トレーナーが来るのを聞いたトメさん達が一目見たいと浮き足立っていたようだったからな。私もトメさん達が嬉しそうで嬉しい」
当のオグリは、特に気にもしていないようだ。どこかトレーナーが実家に来るのがごく当たり前のことだと思ってるらしい。……恐ろしい子。
「それじゃぁ、オグリ。俺これ置いてくるよ」
そう言ってトレーナーは段ボールを2、3個積み上げて保管庫へ向かった。
さて、彼女の方は整頓作業もほとんど終わり、少々手持ち無沙汰になってしまった。次にもっていくダンボールを選別していると、重量が他とは違う箱が出てきた。
そこでやめておけば良かったのだが、彼女は自分の好奇心に耐えることができなかった。
その中に入っていたのは、ヘルメットとブレスレット、プロテクターのようなものが貼り付けられた全身服、そして銃だった。
ひとまず、銃は置いておいて、ヘルメットを手に取ってみることにした。フルフェイス型の物で、おでこの横には二本のアンテナのようなものが取り付けられていた。
次はブレスレット。銀色の無骨な物で、中央部には紫色のクリアパーツのようなものが嵌め込まれていた。どうやら押せそうである。
彼女が紫色のパーツを押そうとした時、トレーナーが戻ってきた。そして、オグリの手に持つブレスレットを発見すると、形相を変え叫んだ。
「ッ!!オグリ!それはダメだ!すぐに捨てるんだ!」
その声に驚いてしまったオグリは誤って、紫色のパーツに触れてしまった。 - 4二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:01:21
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- 5二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:22:52
オイオイオイ
- 6二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:33:27
え、これペダン星人の転送装置……
- 7二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:45:41
トレーナーは力の限りを持って、オグリへと飛びかかった。彼女が右手で持つブレスレットをはたき落とす。
しかし、トレーナーが考えて行動したのはそこまでで、飛んできた勢いのままオグリを押し倒す事になってしまった。
倒れる瞬間、オグリは自分の手からはたき落とされたブレスレットが、光となって消滅するのを見ていた。
「トレーナー、本当にすまなかった。私が余計な事をしたばっかりにトレーナーのブレスレットが….」
彼は押し倒してしまったオグリを立ち上がらせた後、見るからにしょんぼりしている彼女を、ソファに座らせ、自身は机を挟んで来客用に椅子に座っていた。
「いいんだよ、オグリ。いつか捨てようとしてた物だったから」
どこか悲しそうな表情で、トレーナーは笑って彼女を許した。
「しかし、あのブレスレットは光になって消えていった。きっとすごく高価な物だったんだろう?」
「いや、そんな高いもんじゃないさ。あんな転送装置なんて。………そうだ、じゃぁさ、君の罪滅ぼしのついでに聞いてくれないかな?俺の昔話。故郷を捨てた男の話を」
そう言って、トレーナーは彼の過去を語り始めた、どこか悲痛で物悲しそうな顔をして、今にも泣きそうなそんな目で。 - 8二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:47:42
イチャラブトレオグどこ...ここ..
- 9二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:50:26
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- 10二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 20:53:52
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- 11二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 21:56:31
男が生まれたのは、地球から見て遙か宇宙の果て第8銀河系にある側から見れば暗黒の星「ペダン星」彼はそこで、一般的な家庭の男児として生まれた。
男について語る前に、「レイオニクス」という存在について語らねばなるまい。
レイオニクスとはいわば「怪獣使い」怪獣を意のままに操ることのできる異能者達だ。知的生命体のいる星に1人ないし2人程度誕生し、潜在的に残虐性や凶暴性を持つ危険な存在だ。
男もレイオニクスだった。しかし、男はレイオニクスには珍しく、凶暴性や闘争本能がほとんどなく、それどころか草花を慈しんだり、他人に対しての献身を好む性格だった。
だが、彼は状況が悪かった。
ペダン星は将来"レイオニクスに星を蹂躙され滅びる"運命にあったからだ。それ故に、ペダン星では大規模な「レイオニクス狩り」が行われていた。レイオニクスの事情などお構いなしに、将来我々を脅かす、その正当であまりにも理不尽な理由だけで数多くのレイオニクスを殺していた。
同族である男も、その対象であった。だから、バレるわけにはいかなかった。
生き残るため、男は軍隊に入った。レイオニクスを殺すレイオニクスハンターの軍である。しかし、男はここである苦悩に襲われることになった。レイオニクスを殺す事、それは己の「同類」を殺すことになるのだ。
しかして、レイオニクスを殺す事を躊躇えば、それは将来の「同族」を殺す事になる。
男はこの二重苦に挟まれ苦しんでいた。彼の優しい心も彼を苦しめる一因になってしまった。いっそ、ただ本能のままに暴れる獣であれば彼も幾分かは楽だったのかもしれない。
そうして「同類」を殺し「同族」を憎み「自分」を恨んで、いく年かの月日がたった。 - 12二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 21:56:55
そんなある日、そんな彼を見かねた彼の仲間がこんな提案をした
「この星から逃げて、別の次元の宇宙で生きないか?」
それは男にとってはとても魅力的で、すぐに飛びついてしまった。もう、責任も苦悩も背負うのに疲れてしまったのだ。
それが、どんな結果を招くとも知らずに。
かくして、彼は仲間達の手を借り、自分が生まれた故郷の星を見捨てて逃げ出す事に成功した。
別の次元に渡った後は、レイオニクスとしての力を使い、賞金稼ぎとして日々食い繋ぐ生活で生きていた。ある程度生活が安定していた頃、次元を超え、故郷のニュースがからの頃に転がり込んできた。
少し前のペダン星で一番大きな新聞のニュースだ。日付は彼がペダン星を脱出した少し後のようだ。
紙面トップにはこう書かれていた。
『国家反逆罪の罪人の処刑実行!レイオニクスの逃亡の幇助の罪』
当てつけのように貼り付けられた写真には彼を逃してくれた仲間達が、十字架に磔にされ処刑される瞬間が写されていた。
彼が事実を理解した瞬間、彼は壊れてしまった。今までのうのうと生きていた自分が、仲間達の遺骸の上に立っている事実をようやく認識したのだ。
今日ニュースを見る前にだって、少し考えればわかる事だ。彼らは自分を逃した後ペダン星に残ったのだから、何かしらの罪に問われるのは当然の事だ。
絶望する男にできることは何もなかった。この身に吹き荒れる怒りと同じように、自身の力をペダン星に向ければ、それは自分が殺してきた「同類」と同じだ。そしてそれは殺してきた「同類」達への最大限の侮蔑で、何より自分を助けてくれた仲間達への最大級の裏切り行為だ。
だからこそ、男には何もできなかった。ただ浅慮な己を恨み、後悔するしかなかった。 - 13二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 21:58:09
それからどれだけ旅をしただろう。
もう随分とたって、色々と擦り切れてしまった。なんとか立ち直ったようにも見えるが、その実、彼にも自分がもう大丈夫なのか、大丈夫じゃないのかわからなくなっていた。
そして、気づいたら、随分と片田舎のチンケな青い星に立っていた。
確かここは「地球」だろうか。
彼も教科書でした読んだことがないが、はるか昔にペダン星に侵略行為と思われる行為をした「人間」という種族が住んでいる星だ。
「人間」はペダン星人ととてもよく似た外見をしているが、身体能力はペダン星人よりも遥かに劣るらしい。
だからこそ、彼は今、自分の目の前にいる「人間」の女のことがよくわからなかった。そいつの頭の上には他の生命体のような耳と思しき器官が生えており、尻尾も生やしていた。
そして、その人間と思しき存在の横に立つ、はるかに身長の低い人間の女は先ほどからよくわからない事を言っている。
地球後は理解し難いが、言語体系としては割とポピュラーな部類な物だ。
あー、つまりなんだ。背の低い女はここで住み込みで働く事を提案しているらしい。この施設の最高責任者なのだろうか。
生憎、この時の男には金がなく、当てもなかった。だから、この小さな淑女の好意に頼らざるを得ないのだ。 - 14二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 21:58:18
用務員として、働きながらこの施設「ウマ娘トレーニングセンター学園」通称「トレセン学園」及び、ウマ娘という存在についての調査、そしてウマ娘を指導する「トレーナー資格」取得の為の勉強を始めた。もっとも、勉強に関してはペダン星のそれよりも遥かに劣る物である為、さほどの問題はなかった。
調査を進めていうにつれ、ウマ娘の生命体としての滅茶苦茶な性質がわかってきた。まず、彼女達のような特徴を有する人間は、女しか存在しない。そして、身体構造の大部分は人間のそれと変わらないのだ。多少体が頑強程度でしかない。それでいて人並外れたパワーを誇る、肉体強度が身体能力に耐えられない、生命体として破綻し過ぎている存在なのだ。
知れば知るほど困惑が強くなる。彼が出会った中で最も怪奇な生命体と言っても過言ではない。
トレーナー資格を得た後、彼はトレセン学園に、トレーナーとして再就職を果たした。
彼を拾ったあの小柄な女「秋川やよい」は彼がトレーナーになった事をとても喜んでいた。
そして、トレーナーになった彼は運命の出会いをする事になる。彼の担当ウマ娘オグリキャップとの出会いである。
それからの彼の軌跡は、ウマ娘オグリキャップの軌跡だ。
強いて言えば、彼の軌跡にはどこか見殺しにした仲間達への贖罪が含まれていた事くらいだろうか。 - 15二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 21:58:43
「そうか、そんな事があったんだな……」
彼の壮絶な過去を聞き、オグリはその顔を曇らせていた。
当たり前だ。こんな話を、それも数年間共に汗を流し歩んできたパートナーがずっと心の中に隠し持っていたのだから。彼の胸中は察するに余りあるのだ。
「もう、ほとんど気にしてないけどね。………この前、故郷の話をしたのはただ単に昔のことを思い出したからなんだ……」
彼もまた曇っていた。こんな話を担当にしてしまった自分の弱さが嫌になっていた。
こんな話など自分が死ぬまで墓に持っていけば良かったのだ。誰かに共有できるほど彼の責任が少ないわけではない。
それでも、オグリの中では何か思う事があったらしい。おもむろにソファーから立ち上がると、その胸にトレーナーを抱きしめた。
「あのっ?!オグリ?なにを……」
トレーナーはオグリから離れようとするが、彼がもがくたび、オグリが彼を抱く力は増していく。そして、トレーナーが抵抗を止めると彼の頭を撫で始めた。
「トレーナーは強いな。あぁ、とっても強い。ずっとずっと頑張ってきたんだな。私には想像もつかないくらい苦労してここまで来たんだろう?それなのに私が辛いときは励ましてくれて、どんなに傷ついても守ってくれた。トレーナーはとっても強い。
きっと、トレーナーは自分のことを許せないんだろう?だから、私がトレーナーを許す。頑張った、よくここまで頑張った。ここまで生きてくれて、私のトレーナーでいてくれてありがとう」
男の双眸からは熱いものが流れて止まらなかった。オグリの抱擁は強引で、その言葉も不器用で他人を励ますならとても褒められたものではなかった。だが、それは何よりも男が欲しかったものだった。
オグリの胸の中で嗚咽を漏らし続けるトレーナーは一つ理解した事があった。
男がオグリの担当として東西奔走している間、彼は昔のことを思い出す事がほとんどなかった。それくらいオグリとの日々は驚きと笑いにあふれたものだった。
もう、男は大丈夫だったのだ。
それからしばらくの間、芦毛の少女とその胸で泣く傷だらけの男の2人だけの時間が、まるで世界から隔離されたようにゆっくりゆっくりと流れていた。 - 16二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:00:31
以上、「怪物」オグリキャップと「怪獣使い」のトレーナーの話でした。
優しさが時に己を傷つけても、巡り巡って自分を救ってくれるんですね - 17二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:01:12
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- 18二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:02:15
…?オグリが慰めてくれるんだぞ…?
- 19二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:06:07
急に特撮話になって困惑した
- 20二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:07:35
俺が読みたい、俺が書きたい
二次創作のクロスオーバーなんてそれでいいんだよ
お前…カッコいいぜ - 21二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:11:09
このレスは削除されています
- 22二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:15:19
- 23二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 22:26:09
このレスは削除されています
- 24二次元好きの匿名さん22/01/20(木) 00:49:21
1は誰かの苦悩を受け止めるオグリを書きたかったんだ
ペダン星人の事は知らなかったけど読んでよかったんだ
- 25二次元好きの匿名さん22/01/20(木) 07:08:48
?😧‥🤔🤔🤔🤔🤔
- 26二次元好きの匿名さん22/01/20(木) 07:19:06
ならペダン星人の設定はいらないんじゃ……