- 1二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 22:45:04
暗闇の中で目を覚ます。眼前に映るのは消灯されたシーリングライト。柔らかでよく動くウマ娘特有の耳に首元をくすぐられて、今このときが朝ではないことをようやく認識した。
朝を待たずに覚醒してしまうのは、一年と少し前を最後にして、もうすでに治ったものだと思っていたのだけれど。のしかかる愛しい重さは脇に置いて、余裕のなかったあの頃を思い出す。
今のままでは届かない、その可能性は私を間違いなく蝕んでいた。とはいっても、夜半にああ今日も朝まで寝続けられなかった、とため息を吐くくらい。不健康であっても体調に差し障りはなく、覚悟を決めた途端に泡と消えるようなものだった。
それが過去のことであると再認識して、思わず笑みが溢れてくる。レースに絶対はないけれど、今の私に不安なんてすこしもない。私の愛が誰よりも強いんだ、って胸を張って貴方の隣に立てるようになった。
体にはあまりよくないけど、きっと必要なことだったんだと思う。だってこんなにも幸せで、ちゃんと寝るよりも元気になれそうなのだから。ベッドの端に追いやられていたタオルケットを掛け直して目を閉じようとしたその矢先。力強く体を引き寄せられる。
背中に手を回してトントンと、まるで幼い子を寝かしつけるみたいに。起こしてしまったのかなと思ったけれど、甘やかな紫の瞳は瞼の奥。年の離れた女の子に子供扱いされるのが、恥ずかしいのに嬉しくて。なんだか眠れなくなってしまいそう。
花は開き、実を結ぶ。伸ばした指先が触れる先はどこも柔らかで、魅せられるままに詰めた距離はどうしようもないほどに甘い。すこし平べったくてふにふにとした耳も、雨の日には爆発してしまうふわふわの髪も。あまり表情が変わらない故にもちもちとした頬も、きっと、今だけは私の思うがまま。
けれど、青いうちに摘み取ってしまった愛らしい果実を、青いまま食べてしまうのは惜しいから。いい子ぶって今度こそ目を閉じる。規則正しい心臓の音と、だいぶんと間隔の大きくなってきた背中のリズムに身を任せて。真夜中の内緒ごとに幕を下ろした。 - 2二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 22:46:51
おしまい
ひたすら甘いSSに挑戦したくなったので書きました
ちょっと攻めすぎたかも - 3二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 22:48:09
お読みくださりありがとうございます
前作はこちら
【トレウマSS】インターコネクティング・ハート|あにまん掲示板ナカヤマとトレーナーの旅行で起きたアクシデントとその先のお話です〈注意〉・トレーナーは女性・トレーナー視点あり・若干のお色気描写bbs.animanch.comペース上げすぎでもたないかもしれないと恐れています
- 4二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 22:50:03
この距離感、信頼感すき
応援スレに推薦しても良いですか? - 5二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 22:50:43
台詞が無いのは初めて読みましたが……なんというか、官◯小説っぽくてときめきますわ……
乙でした - 6二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 23:31:00
- 7二次元好きの匿名さん24/02/29(木) 23:57:05
ん~ドキドキ!♀トレの距離感良いな…
- 8二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 07:06:41