- 11/824/02/29(木) 23:21:16
いつもと同じ朝、事件は起こった
その日は平日であるが授業がない日でたいていの生徒はブルレクにいそしむことにしている
タロも例にもれずクラスメイトとブルレクの約束をしていたが約束の時間よりも早く部室に行き部屋の掃除を行おうとしていた
そして部室に入るとタロの目に飛び込んできたのは荒らされた部室と大きな鉢植えに頭を突っ込んで倒れている人物だった
あまりの光景にタロは悲鳴を上げる
その声に反応してアオイ、スグリ、アカマツの1年生組、ゼイユ、ネリネの3年生組が顔を出した
そのあとに一般生徒も何人か様子を見に来る
アオイ「タロ、今の悲鳴は?」
スグリ「わや、だれか倒れてるべ…もしかしてカキツバタ?」
みんなが倒れている人物に目をやると確かにカキツバタの服装に似ている
タロが恐る恐る鉢植えを外すと白目をむいたカキツバタが顔を出した
あまりの表情にタロは鉢植えを落としてしまいカキツバタの額に当たって砕ける
タロ「あ…」
ゼイユ「死んだわね、さすがに…」
タロがオロオロとしている脇を通り抜け、アオイはカキツバタの脈をとり呼吸があるのを確認する
アオイ「まだ生きてるみたい。誰かストレッチャーを!」
海上にあるブルーベリー学園はおいそれと救急車など呼べない
そのため医務室への搬送にストレッチャーの使用講習を生徒たちは受けている
一般生徒が近くのストレッチャーを持ってきてくれたのでスグリとアカマツはカキツバタをストレッチャーに乗せようとしたが気を失っている男性は思いのほか重く、結局ほかの男子生徒とゼイユがカキツバタをストレッチャーに乗せ男子生徒はそのままカキツバタを医務室まで運んで行った
ゼイユ「あんたたち、力なさすぎ!」
弟の頭に軽くこぶしを落としながらゼイユは言う - 22/824/02/29(木) 23:21:40
ゼイユ「それにしても何があったのかしらね、こんなにぐちゃぐちゃで」
ネリネ「多分それはすぐにわかる」
アカマツ「なんでです?ネリネ先輩」
アカマツの問いにネリネは部屋の天井の隅を指さす
そこにあるのは防犯カメラだった
先ほども言ったようにブルーベリー学園は海上にある
そのため何かあった時のために個人の部屋などがあるプライぺーどエリア以外は防犯カメラが設置されている
アオイ「なるほど、あれを先生に確認してもらえば何があったのか…」
シアノ「ところがそうはいかないんだよね」
突如シアノ校長が部室に入ってきた
シアノ「僕も報告を受けてね、すぐさま防犯カメラの録画映像を確認したんだ。そしたら…」
タロ「そ、そしたら…」
シアノ「実は昨夜、システムメンテナンスのために順番にカメラを落としていて、犯行があったであろう時間は部室のカメラが落ちていたんだ」
それを聞いてため息をつく一同
シアノ「まあ、目を覚ませば真相を聞き出せるだろうし気長に待つしかないよね」
タロ「そういうの、よくないと思います」
タロは弱弱しくも両手を胸の前で交差しお得意のバッテンポーズをシアノに見せる
アカマツ「でもタロ先輩、ツバッさんは死んだわけじゃないしただの事故かもしれないから起きるのを待つしかないんじゃないですか?」
タロ「事故なら事故で…この惨状誰が片付けるるんですか?」 - 33/824/02/29(木) 23:22:10
タロは笑顔をアカマツに見せる
表情は笑顔であるがその裏には怒りの色が隠れているのを誰もが感じた
アカマツ「ひ、ひぃぃぃ!ご、ごめんなさい!!」
シアノ「い、一応警察には連絡してあるから現場保存のために片付けたりしないでね…そ、それじゃあ僕は仕事があるから…」
不穏な空気にいたたまれなくなったのかシアノはそそくさと部室を後にした
スグリ「…アオイ?どうしたんだべ?」
アオイ「う~ん…事故なのかなって…」
スグリ「なして?」
アオイ「状況的に鉢植えかぶって転んだんだと思うんだけど、ロッカーも傾いてるしいったいどんなことしたのかなって。それにそもそもなんで鉢植えなんか…」
アオイが顎に手を当てて考える
アカマツ「なんかそうしてると好まの休みに3人で見に行った映画の探偵みたいだな」
スグリ「おお、なんかかっこいいべ」
アオイ「えへへ、そうかな~」
ゼイユ「何やってるのよ…」
ゼイユがため息をつきながら頭を抱えていると女子生徒が2人部室の中を覗き込んできた
ネリネ「…どうかした?」
女子生徒A「あ、あのカキツバタ先輩が倒れたって…」
ネリネ「多分事故。本人はまだ目を覚まさないけど医務室に運んだから大丈夫」
女子生徒B「よかった~。…あれ?カキツバタ先輩、昨日大きな鉢植えに大きな種を入れて運んでたみたいですけど部室にないんですね」
ネリネ「鉢植えはさっきタロが壊した。種は知らない」
女子生徒A「でも変だったよね。カキツバタ先輩運びながら『ねぃねぃ』言ってて」
女子生徒B「そうそう、なんか鳴き声みたいに笑いながら言ってた」
ネリネ「カキツバタはそういうやつだから気にしたら負け。ここに警察が来る予定だから入らないようにね」
女子生徒A・B「は~い」 - 44/824/02/29(木) 23:22:30
2人の女子生徒はそのまま去っていった
アオイ「大きな種ってなんだろうね」
ゼイユ「何か育てる気だったんじゃない?どうせ1日と持たずに枯れさせてたでしょうに」
アカマツ「あはは、否定できない…」
タロ「スグリ君、どうかしました?」
スグリ「今回の事件の全容、わかったかもしんね」
その言葉にその場の全員がスグリに目を向ける
そしてアオイはスグリの目を見て問う
アオイ「え?本当?」
スグリ「い、いやわかったといっても予想だし…勝手な憶測で…間違って…」
ゼイユ「どうせ探偵ごっこなんでしょ?なら間違ってたっていいじゃない。スグの考えを話しなさいよ」
ゼイユに背中を叩かれて1歩前に出るスグリ
そしてそのままロッカーの前に行く
スグリ「そもそも最初から大の男の頭がすっぽり入るほどの鉢植えがをかぶってるのが気になってたんだ。それにさっきの話だとその中に大きな種を入れていた。なのにこの部屋にはあの鉢植えに入っていたであろう土なんかがない」
アオイ「そう言われてみれば」
タロ「割れた鉢植えにも土はついてませんね」
タロは割れた破片を見ながら言う
スグリ「そして『ねぃねぃ』と鳴き声のように言っていたという話。あれがもし、鳴き声だとしたら?」
アカマツ「ど、どういうことだよそれ?」
ネリネ「…もしかして鉢植えに入っていたのはポケモン?」
それを聞いてスグリは頷く - 55/824/02/29(木) 23:22:46
スグリ「大きな種を持って『ねぃねぃ』鳴くポケモン、もう1種しかいないべ」
スグリはロッカーをひとつずつ開けていく
最後にあけたロッカーの中でフシギダネが眠っていた
ゼイユ「フシギダネ…」
スグリ「カキツバタは鉢植えにこいつをいれて部室に運んでたんだべ」
タロ「でもなんで?捕まえたのならボールに入れれば…」
アオイ「もしかして野生の子かな?右前足に包帯が巻いてある」
アオイが示す先、たしかに白い包帯が巻かれていた
スグリ「まあどうしてこの子を連れてきたのか、後はカキツバタに聞くしかないべ」
スグリの提案通り医務室に向かいカキツバタの見舞いに行く
ロッカーで寝ていたフシギダネはアオイが抱きかかえている
アオイ「この子結構大きいね。最大とまではいかないけど大型だ」
スグリ「抱っこするのも面倒だからどこからか鉢植え持ってきたんだな」
アカマツ「台車の方が早そうだけどね」
医務室に入るとカキツバタは目を覚まし、額を包帯でぐるぐる巻きにされていた
カキツバタ「おう、どうしたんだそろいもそろって」
アオイ「みんな心配したんだよ。ほら、この子も…」
アオイがフシギダネを差し出す
当のフシギダネはいまだに気持ちよさそうに眠っている
カキツバタ「保護してくれてたのかキョーダイ。よかったな」 - 66/824/02/29(木) 23:23:03
カキツバタがフシギダネを抱き寄せるとフシギダネは目を覚ました
フシギダネ「ダネィ」
カキツバタ「ねぃ」
フシギダネ「ダネィダネィ!」
カキツバタ「ねぃ」
なんとも不思議な光景に一同は唖然とする
ゼイユ「そもそもそのフシギダネはどうしたのよ?」
カキツバタ「ポーラエリアに迷い込んだのを保護したんだ。ケガもしてたから一度部室で手当てしようと思ってな」
タロ「それで大きな鉢植えに入れて運んでたのね」
カキツバタ「そうそう、それで治療を終えたら嬉しそうに駆け回って足を引っかけられて…で、気が付いたらここにいたってわけ」
ネリネ「転んで鉢植えが偶然頭にフィットしたということ…そんな偶然…」
ネリネは首をかしげる
スグリ「いや、鉢植えが頭に入ったのは偶然じゃないと思うべ」
ネリネ「え?」
スグリ「多分あのフシギダネがカキツバタを鉢植えに入れて運ぼうとしたんだべ、自分がしてもらったように」
アカマツ「なるほど。でも人間の体なんかはいらないから頭だけ」
ゼイユ「もしかして部室が荒れてたのって…」
タロ「フシギダネがカキツバタを運ぼうとしたから?」
カキツバタ「(実は治療の時に暴れられて荒れたってのは言わない方がいいかもねぃ)」
カキツバタはみんなの会話を聞きながら思う - 77/824/02/29(木) 23:23:20
アオイ「でも疲れちゃったからロッカーで寝ちゃったってこと?」
スグリ「まあ、そう考えれば筋は通るべ」
アオイ「スグリすごい!!」
スグリ「な、なんだべ突然!?」
アオイ「だってほんのちょっとの情報でフシギダネの事見抜いたんだよ!?とってもすっごいよ!!本物の探偵みたい!!」
カキツバタ「いったいキョーダイは何に興奮してるんだ?」
ゼイユ「気にしないでいいわよ、ただおこちゃまなだけだから」
ネリネ「それよりその子のことはどうする?コーストエリアに返す?」
ネリネの問いを聞いてカキツバタがフシギダネと目を合わせる
カキツバタ「そのつもりなんだけどねぃ」
フシギダネ「ダネィ」
タロ「随分となつかれちゃったようね。そのまま手持ちに入れては?」
カキツバタ「オイラ、ドラゴン使いだからフシギダネはねぃ…」
フシギダネ「ダネィ!」
しばらく見つめあうカキツバタとフシギダネ
カキツバタ「ま、ジュカインもいるし何とかなるかねぃ。お前、オイラと一緒に暮らすか?」
フシギダネ「ダネィダネィ!!」
カキツバタの問いかけにフシギダネは嬉しそうに答える
カキツバタ「そうか。それじゃあ…わりタロ、モンボ1つくれないか?」
タロ「予備ぐらい持っておきなさいよ」
タロはモンスターボールを手渡す
カキツバタはモンスターボールをフシギダネの額に当ててゲットすることに成功した - 87/824/02/29(木) 23:23:34
カキツバタ「よろしくな、フシギダネ」
タロ「ところでカキツバタ、部室の件ですが」
カキツバタ「あ~、そういえばオイラなんで額を出血するようなけがを負ったのかねぃ。聞いたところによると誰かが鉢植えを…」
タロ「後で掃除お願いしますね」
タロは和気あいあいとしていた1年生組に雑用を押し付けてそそくさと医務室から出て行った
アカマツ「え?タロ先輩?」
スグリ「な、なんでオレたちが?」
アオイ「タロ!さすがにそういうのはよくないと思うよ!!」
1年生組は抗議のためにタロの後を追って医務室から出ていく
ゼイユ「それじゃあ、あたしたちも用があるから」
ネリネ「今日はゆっくり休んだ方がいい」
そういってゼイユとネリネも出て行った
医務室で一人になったカキツバタはフシギダネをボールから出す
フシギダネ「ダネィ」
カキツバタ「ねぃ」
そしてフシギダネをなでながらベッドに横になり、フシギダネの育成計画を考えるのであった
ー終ー - 9/824/02/29(木) 23:23:59
あ、最後通し番号間違えた
- 10二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 03:25:50
すげぇ面白かった
- 11二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 09:58:52
ほしゅ
- 12二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 10:11:29
すげーいい話だった……なごむ
- 13二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 13:26:33
かわいかったです…
- 14二次元好きの匿名さん24/03/01(金) 17:31:09
カキツバタの生死に関して諦めの早いゼイユさん