- 1二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 23:01:57
- 2二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 23:02:19
待ってました!!!!!!!!!!!
- 3福丸は俺22/01/19(水) 23:02:52
- 4二次元好きの匿名さん22/01/19(水) 23:04:00
待ってた
200行っちゃったから言えんかったけど前スレめちゃめちゃ良かった - 5福丸は俺22/01/19(水) 23:06:57
透ちゃん。
雛菜ちゃん。
それからきっと、円香ちゃん。
みんなプロデューサーさんが好き。
そしてきっと、わたしも。
プロデューサーさんとお話しすると嬉しい。
プロデューサーさんと一緒にいるとホッとする。
プロデューサーさんが他の子と楽しそうにするのは……ちょっと嫌だな。 - 6福丸は俺22/01/19(水) 23:08:37
「で? それでお姉ちゃんはどうしたいの?」
「えっ……」
「プロデューサーさんが好きって分かったんだよね?」
「そのあとは? 告白した?」
「ななな何言ってるの……!? 告白なんて……!」
「え? 告んないの? なんで?」
「だ……だってプロデューサーさんは大人の人だから……」
「えーそんなの関係なくない?」
「私の友だちにも社会人と付き合ってる子いるし」
「ぴぇ……」 - 7福丸は俺22/01/19(水) 23:25:55
「とにかくさぁ、好きなら好きで行動起こさないと」
「ほっといたら他の人に取られちゃうよ?」
「…………うん」
──わたしはプロデューサーさんとどうなりたいのかな。
妹の言葉で初めてわたしは「好き」の先を考えました。
でも、プロデューサーさんと付き合うとか……
「ぴゃ……」
考えただけで顔が真っ赤。
もしプロデューサーさんとずっと一緒にいられたら、きっとすごく幸せだと思う。
……でも、ダメだよね。そんなの。
プロデューサーさんの周りには綺麗な人がいっぱい。
わたしに勝ち目なんてありません。
それに、わたしはアイドルで、プロデューサーさんはプロデューサー。
それ以上を求めるなんて……。 - 8福丸は俺22/01/19(水) 23:28:43
「おつかれ。レッスン終わりか?」
「あっプロデューサーさん。お疲れ様です……!」
レッスンを終えて事務所に戻ると、いつものようにプロデューサーさんがデスクワークをしていました。
「最近調子良いみたいだな。トレーナーも目に見えて上達してきたって褒めてたよ」
「は、はい……! 今日は今までできなかったステップもできるようになったんですよ……!」
「ははっ、そっか。次のオーディションが楽しみだな」
「あ……あの、プロデューサーさん」
「ん?」
「レッスンの成果……見てもらえませんか?」
「えっ?うん。だから今度のオーディションで……」
「い、いえ……! 今ここで、プロデューサーさんに見て欲しいんです……!」
「…………!」
「……分かった。しっかり見せてもらうよ」 - 9福丸は俺22/01/19(水) 23:30:25
「はぁ…………はぁ…………ど、どうですか……?」
「……驚いた」
「こんなに上達していたなんてな……」
「えへへ……これくらいよゆーですよ!」
「これからもっともっと上手になるんですから……!」
「そうだな。小糸なら絶対もっと上を目指せるはずだ!」
「これからも一緒に頑張っていこう!」
「…………!」
「はい……!」
プロデューサーさんに褒められるのは、とても嬉しい。
先生やトレーナーさん、もしかしたらお母さんに褒めてもらうよりも……。
それだけで、わたしの胸は高鳴る。
──だから今は、もう少しこのままで。 - 10福丸は俺22/01/19(水) 23:33:21
Twitterのフォロワーの中に最近になってあにまん掲示板を認知したシャニマスユーザーがいるので少しやりづらさを感じる今日このごろ
- 11二次元好きの匿名さん22/01/20(木) 01:34:21
眼福丸小糸
- 12二次元好きの匿名さん22/01/20(木) 12:50:07
ぴぇ
- 13二次元好きの匿名さん22/01/20(木) 13:37:24
小糸妹の同級生(最高でも中学三年生)と付き合ってる社会人はヤバいですよ!
- 14福丸は俺22/01/20(木) 22:39:14
「そうだ、小糸。今度の撮影の仕事の後って用事あるか?」
「……? 何もないですよ……?」
「それなら終わった後、あの喫茶店に行かないか?」
「頑張ってるご褒美……みたいな感じでさ」
「そんな、ご褒美なんてわたし……!」
「い……いいんですか?」
「あはは、そんな気にしなくていいよ」
「実を言うと、俺がまた行きたいとおもってたんだ。その口実と思ってくれていい」
「そ、それなら行きたいです……!わたしもまた」 - 15福丸は俺22/01/21(金) 01:54:31
「よし、決まりだな」
「はいっ。 楽しみにしてますね……!」
「えへへ……」
「なんだ。随分嬉しそうだな」
「そんなにあの店を気に入ってくれたなら俺も嬉しいけど」
「だ、だってホットケーキもクリームソーダもすっごく美味しくて……」
「また行けるって思ったらちょっと気が早いですけど、今度は何食べようって……!」
「ははっ、その気持ち分かるよ」
「ホットケーキ美味かったもんな」
「はい……! でも、楽しみな理由はそれだけじゃないですけど……!」
「えっ? 何かあるのか?」
「ぷ、プロデューサーさんには秘密です……!」 - 16二次元好きの匿名さん22/01/21(金) 12:09:24
保守っぴぇ
- 17二次元好きの匿名さん22/01/21(金) 21:03:33
保守
- 18二次元好きの匿名さん22/01/22(土) 08:03:13
ぴ
- 19二次元好きの匿名さん22/01/22(土) 19:05:34
保守
- 20福丸は俺22/01/22(土) 22:47:47
「えっ、お姉ちゃんプロデューサーさんと仕事終わりに喫茶店行くの!?」
「う、うん……」
「えーそれもうデートじゃん!」
「で……デート……!? ち、違うから……!そんなのじゃなくて……!」
「どう考えてもデートじゃん! あっそうだ変装していった方がいいよ! 悪徳記者とかに撮られたらシャレになんないから!」
「ぴゃ……!?」
「ちょ、ちょっと待って……! プロデューサーさんと喫茶店に行くくらい普通だから……!」
「ま、前にも行ったことあるし、他のみんなもプロデューサーさんと一緒にお出掛けとかしてるし……!」
「え、そーなの? じゃあお姉ちゃんも負けてらんないじゃん!」
「お茶した後に、買い物に付き合ってもらうとか、どこか遊びに行くとか……あとは次のデートの約束をその日のうちにしちゃうの!わかった!?」
「な、なんでそんなに詳しいの……? わたしの方がお姉ちゃんなのに……」
「明日プロデューサーさんに用事聞いてみる……!」 - 21福丸は俺22/01/22(土) 23:11:22
翌日。わたしは学校が終わって、図書室で宿題と少しの自習を済ませると、早足で事務所に向かいました。
今日はレッスンもお仕事もなかったけど、プロデューサーさんとお話するためです。
メールで予定を聞こうかと思ったけど、自然な流れで聞こうとするとなんだか文章を考えるのが恥ずかしくて結局やめました。
「ぷ、プロデューサーさん……!」
「あ……」
「今度、山にハイキングに行くんですっ。……よかったらプロデューサーさんも一緒に行きませんか?」
「真乃とハイキングか、ははっ、楽しそうだな」
「最近運動不足だし丁度良いかもな!」
「ほわっ、決まりですね……」
事務所に入ると他のユニットの人がいて、プロデューサーさんと楽しそうに喋っていました。 - 22福丸は俺22/01/22(土) 23:26:49
プロデューサーさんもわたしと話しているときよりも、ずっと楽しそうに見えました。
そっか……そうだよね。
わたしは別に特別じゃなくて……プロデューサーさんはみんなに優しい……。
わたしと一緒に喫茶店に行くのなんて……プロデューサーさんにとってはなんでもないことなんだろうな。
「…………!」
わ、わたし……二人の話を盗み聞きして……。
ど、どうしよう……今ならまだ気づかれてないし、一度出て……
「おお小糸。お疲れ!」
「ほわっ、お……おつかれさまっ」
……見つかっちゃった。
「あ……お、おつかれさまです……」
わたしの声……二人に聞こえたかな……
どうも場違いな気がして、わたしはボソボソ声でしか喋れませんでした。
「あ……そ、それじゃプロデューサーさん、私行きますねっ」
「あぁ、お疲れ。気をつけてな」 - 23福丸は俺22/01/22(土) 23:32:53
他のユニットの人が事務所を出て、プロデューサーさんと二人きりになりました。
「小糸、どうしたんだ?」
「今日はスケジュールなかったよな?忘れ物か?」
「あ、ええと……」
……そうだ。プロデューサーさんに予定を聞かないと。
「あの、プロデューサーさんは……」
それで、喫茶店に行ったあと用事が何もなかったから買い物に誘って……
「わたしのこと、どう思いますか?」 - 24福丸は俺22/01/22(土) 23:37:45
- 25二次元好きの匿名さん22/01/23(日) 08:43:28
あにまんに蔓延る実質福丸小糸と違い全力で福丸小糸を目指すその姿勢、至高の領域に近い
福丸小糸になれ1 - 26二次元好きの匿名さん22/01/23(日) 18:58:33
保守
- 27福丸は俺22/01/23(日) 20:10:36
「……えっ」
……あれ? な、なんで……
なんでわたし……こんなこと……
「……小糸は、大切なうちのアイドルだよ」
「努力家で、どんどん成長して……」
「そうじゃなくて……っ!」
──あぁ、駄目だ。 もう止まらない。
「ノクチルのみんなや他のユニットの人達と比べて……! プロデューサーさんにとってのわたしって、どうですか!?」
「…………!」
「ちゃんと魅力的に見えますか……!?」
「それは……」
……プロデューサーさんが困ってる。
──わたしのせいだ。
わたしが変なこと聞いたから……。 - 28福丸は俺22/01/23(日) 20:21:13
「…………ッ」
プロデューサーさんは黙ってしまいました。
必死に言葉を探すように。
──それはきっと、わたしを傷つけないように。
「……ごめんなさい。プロデューサーさん」
「……小糸」
「わ……わたし、最近変なんです……!」
「なんであんなこと言ったのか……分からなくて……」
「ぜ、全部忘れてください……!」
「…………」
「わたし、今日は帰ります……ほんとうにごめんなさい……」
「待ってくれ……! 小糸!」
プロデューサーさんの静止を振り切って、わたしは逃げるように事務所を飛び出しました。 - 29福丸は俺22/01/23(日) 20:44:31
事務所を飛び出して、その帰り道。
「はぁ……」
明日から、どんな顔してプロデューサーさんに会えばいいんだろ……。
プロデューサーさんはきっと、真剣に向き合ってくれると思う。
わたしが落ち込まないように、自信を無くさないように、精一杯の優しい言葉をかけてくれると思う。
…………でも今は……
「……いっそ、全部忘れてほしいなぁ」
「…………あ、もう真っ暗……」
早く帰らないと……
「あっ! ああああのさぁ!」 - 30福丸は俺22/01/23(日) 20:47:45
「えっ…………」
早足で帰ろうと思った矢先、男の人に声を掛けられました。
「わ……わたし……ですか……?」
「き、き、きみ。こいっ!小糸ちゃん、だよね!?」
「ノクチルのさぁ!」
「え……あ、はい…………」
男の人は少し小太りで、全体的に黒い服装で……こんなことを言うのも悪いけど、挙動が少し変に感じました。
そして、側には一台のワゴン車……。 - 31二次元好きの匿名さん22/01/23(日) 21:53:06
逃げて……逃げて……
- 32福丸は俺22/01/24(月) 06:13:36
「おおお俺っ!小糸ちゃんの大ファンでっ!」
「あ……ありがとうございます……」
怖い。
な、なんか気持ち悪いよ……。
ファンの人にこんなこと思っちゃだめなのに……。
「わ……!わたし、急いで帰らないといけないので……!」
「おっ!おっ! 送ってく……!」
「ぴゃ……!?」
「俺の!俺の車で送ってくッ! 」
「ほらッ!乗って! 早く!」
男の人は、少しずつ距離を詰めてきました。 - 33福丸は俺22/01/24(月) 06:24:13
「い、いえ……! 大丈夫ですから……!」
怖い……早く逃げなきゃ……
「ほらッ! 飴もあるから!」
「いいいいっぱいあるからッ!!」
「え、飴……!?」
飴に気を取られて、一瞬止まってしまった。
それがいけなかった。
「小糸ちゃんッ!!」
……男の人は、わたしに掴みかかってきました。
「た……助けて……っ!」
「プロデューサーさんっ!!」 - 34福丸は俺22/01/24(月) 06:26:43
…………
…………
…………
…………あれ……?
「なんともない……?」
「……うちの福丸に何か御用ですか?」
「…………あ」
わたしと男の人の間に割って入った一つの背中。
それは……
「ななな何だよッ!? お前ッ!」
「俺はこの子の担当プロデューサーだ」
「ぷ……プロデューサーさん……!? どうして……」
「小糸の様子が変だったから追ってきたんだ。探しながらだったから、遅くなってごめん」 - 35福丸は俺22/01/24(月) 06:27:55
「もう一度聞く。うちの小糸に何か用か?」
「う……ううぅ……」
「用がないならこれで失礼する。……行こう、小糸」
「は、はい……!」
「ううぅ……!!」
「……そそそそうかッ!わ、わかったぞッ!」
「おまえらッ!アイドルとプロデューサーとか言って実はデキてんだろッ!」
「ぴゃ……!?」
「は……? 何を言って……」
「そそそうやってファンを嘲笑って馬鹿にしてんだろッ!」
「清純ぶって裏で⬛︎⬛︎⬛︎しまくってんだろッ!!」 - 36福丸は俺22/01/24(月) 06:31:36
男の人は車の扉を開け、中から細長い鉄の塊……バールのようなものを取り出しました。
「ひっ……!?」
「危ないな……小糸、離れてるんだ。それから人を呼んで……」
「この……腐れ⬛︎⬛︎⬛︎がッ!!」
男の人はバールを持ったまま、わたしに飛び掛かってきて、そして空へ向けて振り翳し……
「っ!!」
「危ないっ!!」
力一杯に振り下ろしました。
「ゴシュッ」と、鈍い音が鳴り響く── - 37福丸は俺22/01/24(月) 06:35:24
「う……うぅ……」
「ぷ、プロデューサーさん!!」
バールを受けたのは、プロデューサーさんの背中でした。
襲われそうになったわたしを、咄嗟にプロデューサーさんが庇ってくれたのでした。
「し、しっかりしてください……! 血が……!」
「く……う……」
「や、や、ややややった……ッ!やっちまった……ッ!」
「つ、つ、次は小糸ちゃん!お前だ……ッ!!」
「…………!」 - 38福丸は俺22/01/24(月) 06:38:49
「ま、待て……!」
「う、動いちゃだめです……!」
「ななな何で起き上がれンだよッ!?思い切り当たったのにッ!?」
「小糸には……! 指一本触れさせない……!」
「ききき気持ち悪いッ!⬛︎ねッ!!」
男の人は更にバールでプロデューサーさんを殴打します。
「や、やめてください……! プロデューサーさんが死んじゃう……!」 - 39福丸は俺22/01/24(月) 06:41:13
それでもプロデューサーさんは起き上がる。
「ハァ…………ハァ…………」
「あああ有り得ないッ……!こんなのッ……!」
「もう満足か……? だったら……」
「失せろ……!」
「…………!!」
「うっ……」
プロデューサーさんがギロッと睨みつけてそう言うと、男の人は怯えて、車も忘れて去って行きました。 - 40福丸は俺22/01/24(月) 06:44:10
「ひっく……!! えぐ……」
「怖い思いをさせたな……怪我はないか?」
「プロデューサーさん……! プロデューサーさん……!」
「ははっ……おい泣くな 高校生だろ?」
「…だって……!!!」
「プロデューサーさん……!!!…………!!!」
「腕が!!!」
「安いもんだよ。腕の一本くらい……」
「小糸が無事でよかった」
「……う……うう…………!!」
わたしは世の中には悪い人がいること……社会の苛酷さ、己の非力さ、なによりプロデューサーさんのわたしへの……担当アイドルへの想いを知りました。
そして……わたしのプロデューサーさんへの想いは、更に膨らんでいくのでした。 - 41二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 10:47:45
これやりたかっただけだろ!!
そういえば実質福丸小糸おじさんの作者だったな… - 42二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 18:58:17
保守
- 43二次元好きの匿名さん22/01/24(月) 20:05:44
たまには異常者出しとかないとな……
- 44二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 00:16:13
異常者出現をノルマにすな
- 45二次元好きの匿名さん22/01/25(火) 11:52:45
ぴゃ
- 46福丸は俺22/01/25(火) 22:19:03
「……で、入院ですか」
「はは……面目ない」
あの後、プロデューサーさんは気を失ってしまい、騒ぎを聞きつけて来た近所の人が取り乱すわたしの代わりに救急車を呼んでくれました。
一緒に病院へ行きたかったけど帰って休むように諭され、日を改めて円香ちゃんと一緒にお見舞いに来ました。
「ほ、ほんとうにごめんなさい。わたしのせいで……」
「昨日も言っただろ? 小糸が無事なら骨折くらいなんてことないよ」
「で、でも……」
「……なんてことないことないでしょ。入院している間は仕事が出来ない訳ですし」
「う……それはそうなんだが……」 - 47福丸は俺22/01/26(水) 01:46:57
「まったく……後先考えない人ですね」
「意味がわからない。武器を持った相手になんで真っ向からぶつかるんですか。他になんかあったでしょ」
「ははっ……手厳しいな」
「ま、円香ちゃん……! プロデューサーさんはわたしを庇ってくれたんだよ!」
「…………まぁ、小糸を助けてくれたことに関してはお礼を言います。この度はどうもありがとうございました」
「…………ああ」
「入院といっても10日間くらいだ。あとは通院しつつこれまで通り仕事に復帰するから安心してくれ」
「はい。浅倉と雛菜にもそう伝えておきます」 - 48福丸は俺22/01/26(水) 06:14:22
「円香は今日は雑誌の撮影だったよな?」
「えぇ。なのでそろそろ失礼します」
「行くよ、小糸」
「…………」
「小糸」
「ぴゃあっ!? な、なに? 円香ちゃん……!」
「聞いてなかった? そろそろ行くよ」
「ご、ごめんね……! ちょっと考えごとしてて……!」
「別にいいけど」
「お見舞いありがとう。二人とも気をつけてな」
「は、はい……!」
「…………」
「…………あの、プロデューサーさん」 - 49福丸は俺22/01/26(水) 06:18:22
「ん? どうした?」
「えっと、その……」
「た、退院した後も、しばらくギプスはつけたままなんですよね……?」
「そうだな。少なくとも1ヶ月はギプスを付けたまま仕事をすることになると思うよ」
「1ヶ月……!? そんなに……」
「……あ、でも本当に気にしなくていいからな?」
「でも……車の運転もできないし、骨折したのって利き腕だから、書類を書くのも大変ですよね……?」
「それはそうだけど」
「だ、だから……! わたしにプロデューサーさんの身の回りのお世話をさせてください……!」 - 50福丸は俺22/01/26(水) 06:37:36
「え……いやいや!それは悪いよ」
「入院に必要な物は社長やはづきさんが持ってきてくれたし、退院した後も色々サポートして貰えるから大丈夫だ」
「で、でも……! わたし、プロデューサーさんに大怪我させてしまったのに、何もお返しできてないんです……!」
「救急車を呼んだのだって、全然関係ない人で……わたし、泣いてるだけでした……!」
「……でも、小糸だって学校やレッスンでいっぱいいっぱいだろ? そんな無理して……」
「べ、勉強なんてよゆーですよ……! わたし、1年生の範囲なんてみんな予習してますから!」
「レッスンのない時だけでも……だめですか……?」
「うーん……しかしだな」 - 51福丸は俺22/01/26(水) 06:39:39
「…………はぁ」
「ほんと、デリカシーのない人ですね」
「ま、円香ちゃん……?」
「あなたが頑なに断ったところで、小糸が負い目を感じるだけでしょ」
「あ…………」
「それより気の済むまでやらせた方が小糸の為だと思いますが」
「…………」
「……そうだな。円香の言う通りかもしれない」
「…………!」 - 52福丸は俺22/01/26(水) 06:43:47
「……ごめん。小糸の気持ち全然考えられていなかったよ」
「い、いえ……! わたしが無理を言ったから……!」
「…………あくまで学業と仕事優先。夜は遅くならない内に帰る」
「……これだけは守ってほしい。それでもいいなら、頼んでもいいか?」
「…………! はい……!」
「円香ちゃん……! あ、ありがとう……!」
「別に」
「…………」 - 53二次元好きの匿名さん22/01/26(水) 17:41:57
保守
- 54二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 01:08:24
ぴゃ
- 55二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 10:44:05
保守
- 56福丸は俺22/01/27(木) 11:03:46
昨日今日で終わらすつもりだったのに疲れて寝落ちしちゃった……
- 57二次元好きの匿名さん22/01/27(木) 15:02:27
ゆっくりでええんやで
- 58福丸は俺22/01/27(木) 22:12:51
「あは〜小糸ちゃん嬉しそう〜」
「えっ、そ、そうかな……そう見える……?」
「しあわせ〜って顔してる〜! 昨日のお見舞いでお菓子でももらった?」
「そ、そんなのもらってないよ……!」
「え〜? じゃあなんで〜?」
「ぷ、プロデューサーさんがね! あと10日くらいで退院できるんだけど、しばらくはギプス取れないんだって……!」
「だからね、わたしが出来るだけお世話することになったんだよ……!」
「へ〜? そうなの?」
「えへへ……」
「それで、なんで小糸ちゃんは嬉しそうなの?」 - 59福丸は俺22/01/27(木) 22:28:53
「え…………」
「プロデューサーは小糸ちゃんを庇って怪我したんでしょ?」
「う、うん……」
「骨折で腕使えなくて大変なんだよね〜?」
「…………うん」
「それって小糸ちゃんが笑顔なのは変じゃない?」
「ねぇ?」
「だ、だって……」
「わたし、プロデューサーさんに何もできてないんだよ……!? だから、何かお返ししたくて……」
「…………」
「あは〜。そうなんだ〜」
「ひ、雛菜ちゃん、怒ってる……?」
「んー別に〜?」
「しあわせになれるといいね! 小糸ちゃんも、プロデューサーも」
「あ、ありがとう……?」 - 60福丸は俺22/01/27(木) 22:37:38
プロデューサーさんが退院するまで、何度かお見舞いに行きました。
チェインで必要な物を聞いて、プロデューサーさんの代わりに買いに行ったり。
お見舞いの品の中に果物の盛り合わせがあったので、りんごを切ってあげたり。
わたしの包丁さばきを見たプロデューサーさんは、それを心配そうにずっと見守っていました。
それから、最初に円香ちゃんと行ったときは透ちゃんと雛菜ちゃんは課題を忘れて行けなかったので、4人でお見舞いに行くこともありました。
病院ではお仕事ができなくて退屈だったのか、プロデューサーさんはお見舞いをとても喜んでくれました。
騒がしくしちゃって看護婦さんに何度か怒られちゃったけど……
そして、ついにプロデューサーさんの退院の日がやって来ました。 - 61福丸は俺22/01/27(木) 22:50:08
- 62二次元好きの匿名さん22/01/28(金) 01:38:35
雲行きが怪しくなってきた…
コロナお気をつけて… - 63二次元好きの匿名さん22/01/28(金) 12:23:50
- 64二次元好きの匿名さん22/01/28(金) 23:53:02
ぴゃ
- 65二次元好きの匿名さん22/01/29(土) 09:50:47
ぴゃい…!
- 66二次元好きの匿名さん22/01/29(土) 21:18:01
保守
- 67福丸は俺22/01/29(土) 21:26:42
「ぷ……プロデューサーさん……! コーヒー、入りましたよ……!」
「おお。ありがとう」
「片手使えないとコーヒーを一杯飲むのも一苦労だからな、助かるよ」
「こ、これくらいなら、いつでもやってあげますよ……!」
「えへへ……プロデューサーさんはわたしがいないとだめだめなんですからー!」
「ははっ……そうかもな」
「…………甘いなこれ」
「……小糸。最近レッスンはどうだ?学校も問題ないか?」
「…………っ」
「だ、だいじょうぶですよ! 全部順調ですから!」
「だからこのまま……このまま続けさせてください……!」
「…………そうか」
「分かったよ」 - 68福丸は俺22/01/29(土) 21:55:58
「はっ……はっ……」
「…………」
「ストップストップ!」
「…………! ……はい」
「福丸さん。今日のレッスンはここまでにしましょう」
「え……わ、わたし、まだ……」
「……ここ何日か動きにキレがない。集中もしてないようだし、これじゃやる意味がないわ」
「…………」
「……す、すみません…………」 - 69福丸は俺22/01/29(土) 22:06:32
「はぁ…………」
……レッスン失敗しちゃったな……明日はもっと頑張らないと………
「……ただいま」
「お姉ちゃんおかえりー」
家に帰ると、リビングで妹がテレビを観ていました。そして、その手には……
「…………! それ……」
「あ、この飴お姉ちゃんが貰ってきたやつだよね?」
「なんで勝手に食べてるの……!?」
「えー? だって全然手付けてなかったし……駄目だったならコンビニで買ってくるけど?」
「そうじゃなくて……!」
「…………プロデューサーさんに貰ったやつなのに……」
「まだ一個残ってるけど……」
「…………!」
「ちょっ、お姉ちゃん!?」
わたしは最後の飴を妹の手から奪い取るように掴み、制服のポケットに入れるとリビングを後にしました。 - 70福丸は俺22/01/29(土) 22:11:22
…………
…………
…………
……んん…………
「……え、い、今何時…………!?」
「どどどどうしよう……宿題……まだ終わってない……!」
昨日帰ってきて、宿題やろうと机に向かったら、晩ご飯も食べずに疲れてそのまま寝ちゃったんだ……
で、でもまだ、急いで学校行って授業始まる前に終わらせれば大丈夫……!
急いで準備しなきゃ……! - 71福丸は俺22/01/29(土) 22:13:06
「おはようございます……」
「おお小糸。今日も来てくれたんだな」
「は、はい……!」
「トレーナーさんの都合でレッスン中止ってチェインは見たんですけど……」
「俺のことが心配だったとか?」
「そ、そうなんです……!」
「ぷ、プロデューサーさんはわたしがいないとだめだめですもん……!」
「…………」
「…………それじゃ、一つ頼みを聞いてもらっていいかな」
「…………!」
「な、なんですかー? なんでも言ってください!」 - 72二次元好きの匿名さん22/01/29(土) 23:25:07
どうしよう怖い
- 73二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 09:27:49
ぴぇ……
- 74二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 18:07:48
忘れぬうちの保守
- 75福丸は俺22/01/30(日) 19:58:17
「喫茶店に……来るだけでよかったんですか……?」
「うん。前にまた行こうって話してただろ?」
「色々あって流れちゃってたからな。今日なら小糸もスケジュール空いてるし、丁度良いだろ?」
「そ、そうですね……!」
「さ、何でも好きな物を頼んでくれ」
「この頃小糸には色々してもらってるからな。奮発するぞ」
「そ、そんなこと言って、どうなっても知りませんよ……!」
「ははっ、臨むところだ」 - 76福丸は俺22/01/30(日) 20:30:57
「ふぅ……」
「美味いか? ホットココア」
「はい……! 飲むとホッとして、勉強の合間にもよく飲むんですよ……!」
「ははっ、小糸は甘い物が好きだもんな」
「えへへ……あ……で、でも……!苦いのだってよゆーで飲めますよ!」
「な、なんですかその目は……!疑ってるんですか、プロデューサーさん……!」
「そ、そんなことないぞ!」
「ココアか……俺も子どもの頃は好きだったけど、もう長いこと飲んでない気がする」
「たまにはそういうのもいいかもな」
「あ……じゃ、じゃあ……! わたしの分……!」
「ちょっと、の、飲んでみますか?」
「え……いや、大丈夫だよ」
「また別の機会に飲むから、気を使わなくていいよ。それは小糸が飲んでくれ」
「……そ、そうですか……そうですよね……」 - 77二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 21:07:09
小糸…
- 78福丸は俺22/01/30(日) 21:12:04
「……たまにはこういうのもいいだろ」
「え?」
「仕事や勉強のことは忘れてさ、こういう落ち着いた店でただ喋ったり、何もせずに過ごすんだ」
「……そうですね…………」
「こんなにのんびりした時間、しばらくありませんでした……」
「……うん」
「なぁ小糸」
「なんですか?プロデューサーさん」
「もう終わりにしようか」 - 79福丸は俺22/01/30(日) 21:29:56
「──え」
「もうやめよう」
「俺の身の回りの世話なんて、しなくていい」
「なんっ……で……」
「……小糸、無理してるだろう? 疲れが顔に出てる」
「最近、レッスンも上手くいってないよな。トレーナーから聞いたよ」
「そ……それは……」
「…………今日のレッスン、トレーナーの都合で休みになったって言ったよな」
「ごめん。あれは嘘だ。俺が休みにさせてもらった」
「…………!」 - 80福丸は俺22/01/30(日) 21:34:42
「ま……待ってください……!」
「わたし、大丈夫ですから……!明日からまたがんばれます……!」
「もういい……もういいんだよ」
「そもそもあんなこと頼むべきじゃなかった。俺が最初から断っていればよかったんだよな」
「い、嫌です……!そんなこと、言わないで……!」
「今日この店に来たのはさ、今までの御礼の意味もあるんだ」
「だからさ、今日はゆっくり過ごして、明日からまたレッスンや仕事を頑張っていこう」
「話……! き、聞いてください……!」
「見捨てないで……!!」
「………………」
プロデューサーさんはそれ以上何も言いませんでした。
困ったような目でわたしを見て……それからコーヒーを一口すすりました。 - 81福丸は俺22/01/30(日) 21:47:18
………これでよかったんだろうか。
小糸を家に帰した後、俺は事務所で一人項垂れていた。
小糸のためを思って言ったつもりだった。
本当はもっと他の言い方をしてやればよかったかもしれない。
見えなかったが、小糸は少し泣いていた。
そんな気がした。
だけど、だけど俺は……
「……プロデューサー」
背中の方から声をかけられる。
気づかなかった…….いつのまにか入って来てたらしい。
「…………円香か」 - 82二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 22:02:17
円香…助けて…
- 83福丸は俺22/01/30(日) 22:11:04
「どうして小糸を突き放すようなことを?」
「……ははっ、情報が早いな」
「……ふざけてるんですか? ゴ◼️クズ以下」
「小糸は一人で泣いていました。だから無理に聞き出しました」
「あなたは悪くない、と……そう何度も言っていましたが」
「…………そうか」
「だったら……小糸に会ったなら、分かるだろ」
「疲労でボロボロになった小糸を休ませるためにあえて強く突き放した、と?」
……俺は無言で頷いた。 - 84福丸は俺22/01/30(日) 22:19:35
「……だとしても他にやり方はあったのでは?」
「あなたは小糸が酷く傷つくと、承知の上で言葉を投げた」
「違いますか?」
「…………そんなことは」
「どうでしょうか」
「とっくに気づいてるんでしょ」
「……何がだ?」
「……小糸のあなたへの想い」
「あなたを、一人の男性として、好意を抱く気持ちにです」 - 85福丸は俺22/01/30(日) 22:23:51
「………………」
「……その通りだよ」
「円香の言う通りだ」
「俺は知ってたんだ」
「小糸の気持ちを」
「自意識過剰なようだけど、小糸が俺を好きだってことを」
「……ならどうして」
「……うん。せっかくだから円香には話しておくよ」 - 86福丸は俺22/01/30(日) 22:31:33
「まず言っておくけど、俺が担当するアイドルとそういう関係になることはないよ」
「絶対にないんだ」
「…………」
「円香や小糸はアイドルで、俺はそんなアイドルを預かるプロデューサーだ」
「そんな俺が、アイドルに手を出すなんて決してあっちゃいけないんだよ」
「それは親御さんやみんなのファン、更に言えば担当するアイドルのみんなを裏切る、最低の行為だ」
「だから小糸の気持ちに応えるわけにはいかない」
「……もちろん悲しませたくはないから、今まで気づかない振りをしていたわけだけど……」
──その時、扉の向こうで物音がした。 - 87福丸は俺22/01/30(日) 22:33:53
「誰かいるのか……!?」
扉を開けるも、そこには誰もいなかった。
「気のせいか……? 今日はもう誰も事務所には来ない筈だし……」
「…………小糸……」
「えっ……」
「小糸が隠れて聞いていたのかもしれません」
「…………!」
「そういえば……小糸の鞄、事務所に置きっぱなしだ……」 - 88福丸は俺22/01/30(日) 22:37:29
「しまった……聞かれたよな」
「追いかけないんですか」
「…………」
「……そんな資格ないよ」
「円香、頼めるか?」
「……資格?」
「なんですかそれ」
「……そんなの」
「私にもありません」 - 89福丸は俺22/01/30(日) 22:38:53
「私は小糸があなたとくっつけばいいと思っていました」
「…………円香?」
「なんで……そんなこと……」
「ご存知だと思うので言いますが」
「好きだったんです。あなたのことが」
「……浅倉と雛菜は」
「…………うん」
「あなたは一人しかいない。それを三人で取り合いなんてしたら、きっと拗れるでしょう?」
「でもあなたと結ばれるのが小糸なら、浅倉も雛菜も納得すると……そう思いました」
「……どうして、そう思ったんだ?」
「…………私達はみんな小糸が好きなんですよ」
「そして──あなたは、私達の他に小糸が心を開いた唯一の人だから」
「小糸にはあなたしかいないと、そう思ったんです」 - 90福丸は俺22/01/30(日) 22:40:37
「まぁ、結果として失敗に終わった訳ですが」
「私は小糸を傷つけてしまった」
「あなたと同罪のようなものです」
「…………俺が小糸を好きにならない可能性は、考えなかったのか?」
「有り得ません」
「……そんなの、有り得ません」
「あの子と一緒に過ごして、あの子の心に触れて……あの子を愛おしく思わない人なんて、いるわけがないでしょう?」
円香はそう言って、優しく微笑んだ。
「……そうだな……」
「俺もそう思うよ」
「心から、そう思う」 - 91福丸は俺22/01/30(日) 22:48:40
「楽しかったんだ」
「小糸と過ごす時間は」
「大切な存在だった」
「かわいくて仕方がなかった」
「……だけど、俺達が傷つけてしまったんだな」
「…………」
「……円香」
「……謝らないでください」
「私にも、小糸にも」
「え…………」
「許されようとしないで」
「私も謝りませんから」
「…………」
「…………ああ。そうだな……」 - 92福丸は俺22/01/30(日) 22:55:38
「…………はぁ……」
鞄を取りに戻った事務所。
円香ちゃんとプロデューサーさんが話してるのに気づいて、つい聞き耳を立てた。
走って逃げ出して、辿り着いた夜の公園。
……わたし、バカみたい……。
プロデューサーさんを困らせただけで、プロデューサーさんはわたしのことなんてなんとも思っていなかったんだ。
ごめんなさい……プロデューサーさん。
困らせてごめんなさい。
迷惑掛けてごめんなさい。
好きになってごめんなさい。 - 93福丸は俺22/01/30(日) 22:57:06
──それは、小糸にとって初めて生まれた気持ちだった。
それは、恋と呼ぶには報われず──
それは、恋と呼ぶには──
「……あ、プロデューサーさんから貰った飴……」
カロ……
「…………あぁ」
「──苦いなぁ」
【恋と呼ぶには】 完 - 94福丸は俺22/01/30(日) 23:00:22
1.【実質福丸小糸おじさん】
2.【福丸小糸と僕】
3.【恋と呼ぶには】
これにて三作全て完結となります!
1ヶ月間お付き合いいただき&保守してくださった方ありがとうございました! - 95二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 23:07:11
乙……コーヒー飴のようにほろ苦いお話だった
- 96二次元好きの匿名さん22/01/30(日) 23:08:53
乙!
小糸…報われねぇ… - 97二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 05:51:11
小糸は曇らせてこそ輝く
- 98二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 16:48:25
ぴぇ……
- 99二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 20:53:19
よかった……よかったよ……
- 100二次元好きの匿名さん22/01/31(月) 20:59:50
小ネタの仕込み方もやたら上手かったな…
- 101二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 06:01:34
- 102二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 12:58:43
ぴ
- 103二次元好きの匿名さん22/02/01(火) 22:06:35
保守ぴぇ
- 104福丸は俺22/02/02(水) 06:36:29
小糸の笑った顔が好きだった。
無邪気に笑う、穢れのないその笑顔が好きだった。
小糸の怒った顔が好きだった。
からかわれるとすぐムキになるけれど、迫力のないその怒り顔が好きだった。
甘い物を食べる小糸を見るのが好きだった。
安っぽいお菓子を、小動物のように幸せそうに頬張るその姿が好きだった。
そして、俺が全て壊してしまった。
これから始まるのは既に終わった物語のその後。
読む必要のない『蛇足』の話。 - 105福丸は俺22/02/02(水) 06:36:54
4.【After.】
- 106二次元好きの匿名さん22/02/02(水) 11:22:12
まだ続いとったんかワレェ!!(歓喜)
- 107福丸は俺22/02/02(水) 22:29:21
あの日……小糸を泣かせたあの日。
俺は円香と一つの約束を結んだ。
「あの時、あの場にいた小糸に気づかなかった振りをする」
そういう約束を結んだ。
それが最善だと思った。
それが一番小糸を傷つけずに済む方法だと、そう思った。 - 108福丸は俺22/02/02(水) 22:48:08
それから小糸はあまり俺の前で笑わなくなった。
交わす言葉はぎこちなく、どこか遠慮がち。
「わたしがいないとだめだめなんですから」と言って笑う彼女の姿はもうどこにもなかった。
このまま小糸はアイドルを辞めてしまうかもしれない。
……文句は言えない。
こんな最低のゴ⬛︎クズ以下の男にプロデュースされたくなんかないだろう。
ただ、俺のせいで今までの小糸の努力が無駄になるのはダメだ。
もしその時が来れば、俺はノクチルのプロデューサーを降りてでも引き止めるつもりでいる。
信頼できる知り合いへ引き継いで、俺は小糸の前から姿を消す。
わがままを言うようだが、『アイドル』を嫌になるその時までは、小糸をアイドルでいさせてやりたい。 - 109福丸は俺22/02/02(水) 22:49:16
─6 years later─
- 110二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 01:46:06
一気に飛んだな
- 111二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 09:46:45
幸せになって…
- 112二次元好きの匿名さん22/02/03(木) 13:26:35
保守
- 113福丸は俺22/02/03(木) 22:29:03
アイドルユニット ノクチルは解散した。
喧嘩別れだとか音楽の方向性の違いだとか、あるいは痴情のもつれだとか、別にそういった理由ではない。
実に簡単な話だ。
透と円香、二人の高校卒業に合わせての解散だった。
透と円香はアイドルを辞めた後、役者の道へ進んだ。
役者になって分かったことだが、どうやら透の持つオーラは本物のようだ。
「あー……なんだっけ」
「……あ、そうだ」
「『髪に付いてたよ。マンモクスン』」
「カーーット!! はいオッケー!」
透の演技は全てが『浅倉透』でしかない。
むしろ『浅倉透』であることこそが彼女に求められている。
故に役作りなど必要ない。
それも透の持つカリスマ性あってのものだろう。 - 114福丸は俺22/02/03(木) 22:30:22
「……台本。またろくに読まなかったでしょ」
「えっ、うん」
「駄目だった? 演技」
「さぁ、いいんじゃない」
そして円香はその真逆。
誰よりも台本を読み込み、それに寄り添う。
彼女は持ち前の感受性の強さで脚本家の思い描いた通り……いや、それ以上の演技を魅せてくれる。
二人は役者としては正反対。
しかしどちらも天才女優として世間では持て囃されている。 - 115福丸は俺22/02/03(木) 22:32:48
雛菜はノクチルが解散した後、ファッションブランドを立ち上げた。
元々のファンの支持もあってか上々の滑り出しで、立ち上げてから数年経つ今でも女子高生を中心に人気のブランドだ。
また、雛菜自身も自他のブランド問わず、ファッションモデルとして活躍している。
自身のブランドの製品を他の3人に着せるのが好きらしい。
まぁ、円香にはいつも「かわい過ぎるから」と断られるようだが。
……そして、ノクチルのもう一人のメンバー、福丸小糸は…… - 116二次元好きの匿名さん22/02/04(金) 08:24:42
転ばぬ先の保守
- 117福丸は俺22/02/04(金) 15:08:35
今日は残業のため書けません
土日も休日出勤するのであまり書けないかも - 118二次元好きの匿名さん22/02/04(金) 22:18:15
ぴぇ
- 119二次元好きの匿名さん22/02/05(土) 01:41:15
ぴぇぴぇ
- 120二次元好きの匿名さん22/02/05(土) 08:31:09
ぴぇー!
- 121二次元好きの匿名さん22/02/05(土) 19:48:16
ぴぇ〜ぴぇっぴぇっぴぇ!
- 122二次元好きの匿名さん22/02/06(日) 06:58:21
ぴゃ
- 123二次元好きの匿名さん22/02/06(日) 10:08:47
絶滅したと思われた実質福丸小糸達はここに集結していたのか…
- 124二次元好きの匿名さん22/02/06(日) 19:49:45
ぴゃぁっ!? ななななんですか……?
- 125福丸は俺22/02/06(日) 23:20:11
「はぁ〜……」
「ぷ、プロデューサーさん……? ど……どうしたんですか……?」
「あ〜!小糸さん!聞いてくださいよ〜!」
「ぴゃ……!? な、なに……!?」
「プロデューサーさんがすっごい怒るんですよ〜! 私何にも悪いことしてないのに!」
「悪いことしてないといえばそうなんだが……アイドルとしての自覚が足りないというか……」
「……えっと、な……何があったんですか?」
「実はな……先日この子が新人アイドルとしてデビューしてから、宣伝も兼ねてツイスタの公式アカウントを任せてたんだよ」
「俺もこまめにチェックしてたんだけど……今日になってやけに反応が多くてな」
「何事かと思ったら……彼氏とのツーショット写真をアップしてて……炎上してた」 - 126福丸は俺22/02/06(日) 23:20:48
「え、炎上ですか……?」
「あぁ……幸い、と言っていいのか分からないけど、売り出したばかりで知名度はまだそこまでないからそれほど大きな燃え方ではないんだが」
「写真はすぐに消したけど、多分保存してる人もいるだろうな……これからの活動にも響くと思う」
「た、大変じゃないですか……!」
「でもおかしくないですか〜?」
「ファンの皆は私達アイドルを応援してくれてるわけですよねー?」
「つまり、私達が幸せになったら嬉しいんでしょ?」
「う、うん……」
「じゃあなんで私が彼氏とラブラブの写真貼ったら叩かれなきゃいけないんですか? 意味わかんない!」 - 127福丸は俺22/02/06(日) 23:21:26
「君の言うことは一理ある。……でも、アイドルとファンの関係っていうのはそう簡単じゃないんだよ」
「アイドルっていうのは言ってしまえばファンに夢を売る商売だ」
「より多くの人にとっての推しの子になるためには、より多くの人にとっての夢……理想の女の子でいなければならない」
「つまり、彼氏のいない清純派じゃないと人気は出ないってことですか?」
「……まぁそんなとこだな」
「うわーオタクキ⬛︎っ!! 最悪!!」
「私にアイドルに夢見るのは勝手だけど処女厨こじらせんなし! オタクが私にワンチャン感じんな!」
「ぴゃ……! だ、だめだよ、アイドルがそんな言葉使っちゃ……!」 - 128福丸は俺22/02/06(日) 23:22:10
「別にうちの事務所は恋愛禁止とは言わないよ」
「でも、変装して隠れて会うとか、表には出ないように出来るだけ気をつけて貰わないと……」
「えーそんなの無理ですよ! 彼氏といっぱいデートしたいし、ツイスタでみんなにも見て欲しいし!」
「ねー小糸さんもおかしいと思いません!? ていうか小糸さんはどうしてるんですか!?」
「…………!」
「…………っ」
「わ、私は恋人とかいないから……!」
「ほんとですかー? じゃあ好きな人は?」
「…………! そ……それは…………」
「……小糸。そろそろレッスンの時間じゃないか?」 - 129福丸は俺22/02/06(日) 23:24:16
「え…………あ……そ、そうですね……!」
「ご、ごめんね! 話はまた今度……!」
「あ、あまりプロデューサーさんを、困らせちゃだめだよ!」
「えー、ちょっと小糸さん!」
「……行っちゃった」
「…………」
「……でもすごいですよねぇ。あんなに一生懸命レッスン頑張って」
「ずっとあんな感じなんですか?」
「ん、あぁ──今年で7年目だけど、昔から小糸はああだったよ」
「ただ、今より少し人と話すのが苦手で」
「そして今より……焦っていた」 - 130二次元好きの匿名さん22/02/07(月) 01:14:33
7年後ってことは23歳か…
- 131二次元好きの匿名さん22/02/07(月) 07:24:52
保守
- 132二次元好きの匿名さん22/02/07(月) 18:37:22
保守
- 133福丸は俺22/02/07(月) 23:14:18
「フゥン……」
「でもなんであんなにがんばるんですかね?」
「正直、小糸さんって歌もダンスも今のウチの事務所でかなり上位じゃないです?」
「うん。まぁそうだな。古株っていうのもあるが」
「ビジュアルだってちっちゃくて最強にかわいいですし! 多少贔屓目入っちゃってるかもですけど」
「だったらあそこまでレッスン頑張らなくても良いんじゃ? ただでさえお仕事で忙しいのに」
「それに、小糸さんはもうすぐ……」
「…………追いつきたい背中があるんだよ」 - 134福丸は俺22/02/07(月) 23:14:55
「え?それってもしかしてノクチルの3人ですか?」
「あぁ。小糸はアイドルになりたての頃……いや、それよりもずっと前から3人に追いつくために頑張ってきたんだ」
「えーいやいや無理でしょ。あの3人は天才っていうか、もう化け物ですもん」
「追いつく以前に同じ土俵に立ってないっていうか……どんどん離されるだけじゃないですかね。追いかける前に諦めますよ。ふつー」
「……それでも、小糸はひたむきに、懸命に、まっすぐに走り続けたんだよ」
「……そんなの、異常じゃないです?」
「あんな才能の塊3人と一緒にいて、諦めずに追いかけ続けるとか……それこそ化け物の域じゃないですか」 - 135福丸は俺22/02/07(月) 23:15:37
「ははっ、凄いよな」
「でもあまり先輩アイドルを化け物とか言うんじゃないぞ」
「あ、ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったんですけど……」
「……確かにあの3人が才能に恵まれていたのは否定しないよ」
「でも、透も円香も雛菜も、それに甘えずに努力したからこそ今があるんだ」
「だからあまり天才とか才能って言葉で片付けて欲しくはないな」
「……はーい」 - 136福丸は俺22/02/07(月) 23:16:06
翌日。
事務所でデスクワークをしていると、一通の新着メールに気がついた。
これは……すぐに連絡しないとな。
「……もしもし小糸か。今大丈夫か?」
「今度のライブで歌う新曲の話なんだけどさ」
「実は、作曲家の方が曲を作るにあたって、一度小糸と会って話がしたいと言うんだ」
「小糸さえよければなんだけど……うん、うん。そうか、頼めるか」
「それじゃ詳細な話は後で事務所に来たときに話そうか」 - 137二次元好きの匿名さん22/02/08(火) 07:15:04
保守
- 138二次元好きの匿名さん22/02/08(火) 15:58:52
ぴゃ
- 139福丸は俺22/02/08(火) 22:12:22
- 140二次元好きの匿名さん22/02/08(火) 22:16:32
仕事なら仕方ない
- 141二次元好きの匿名さん22/02/09(水) 07:33:29
保守
- 142二次元好きの匿名さん22/02/09(水) 15:44:32
ぴゃ
- 143二次元好きの匿名さん22/02/09(水) 23:21:33
ぴゃぴゃぴゃぴゃ
- 144二次元好きの匿名さん22/02/10(木) 09:32:04
ぴゃぴゃぴゃっ
- 145二次元好きの匿名さん22/02/10(木) 18:46:02
ぴゃ〜ぴゃっぴゃっぴゃ
- 146二次元好きの匿名さん22/02/10(木) 23:49:28
保守
- 147二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 10:44:50
小糸ちゃんの目を舐めたい
- 148二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 20:27:55
ここは実質福丸小糸の俺の眼球で我慢してもらおう
- 149二次元好きの匿名さん22/02/11(金) 23:22:51
ぴゃっぴゃっぴゃ
- 150二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 10:25:41
ぴぇ
- 151二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 20:35:56
ぴゃっぴゃっぴゃ
- 152二次元好きの匿名さん22/02/12(土) 22:25:43
保守
- 153福丸は俺22/02/12(土) 23:22:43
「……よし、じゃあ今度の土曜日の14時に○○ビルでな」
「は、はい……」
「あの……プロデューサーさん?」
「ん? どうした?」
「どうして作曲家の人は、私に会いたいと言ってきたんでしょうか……?」
「い……今までそんなことなかったので……」
「うーん、業界では有名な人だからなぁ」
「良い曲を提供するためには相手の人となりを知る必要がある……とかそんな感じじゃないか?」
「な、なるほど……」 - 154福丸は俺22/02/12(土) 23:23:54
「小糸にとっても今度の新曲は大事な物になるしな」
「普段は依頼が殺到しててなかなか引き受けてもらえないらしいし、今回は運が良かったよ」
「そうなんですか……」
「……あの、プロデューサーさん」
「ん?」
「…………わたし、がんばります」
「どんな凄い曲がでてきても、負けないくらいがんばりますから……」
「…………」
「……あぁ、期待してるよ」 - 155福丸は俺22/02/12(土) 23:24:26
「…………」
「…………」
──気まずい沈黙。
あの日からの俺と小糸はいつもこうだ。
交わす言葉の殆どは仕事に関することで、それ以外に何を話せばいいのか……いつのまにか俺には分からなくなっていた。
「……ん、陽が落ちてきたな」
…………でも、それもそろそろ終わりにしたい。
「えっと……小糸、たまには夕飯でも食べて帰るか?」
「えっ…………」
「この時間ならまだ家に夕飯要らないって連絡すれば間に合うよな?」 - 156福丸は俺22/02/12(土) 23:25:12
「はい…………えっと、でもその、ごめんなさい……」
「あー……いや、いいんだ。急に誘われても困るよな」
「い、いえ……! 誘っていただいたことは嬉しいです……!」
「でも実は今日、このあと人と会う約束があるんです」
「そ、そうか……ノクチルの誰かか?」
「わ、わたしだって透ちゃん達以外にも交友関係あるんですよ……!」
「この前、高校で同じクラスだった子から急にチェインがきたんですよ」
「全然話したことなかった子なのでびっくりしたんですけど、クラス替えしてすぐにクラスのみんなでチェイン交換してたの思い出して……」
「そ、それで色々話がしたいって言うので、今日二人で飲みに行くことになったんです……!」
「ははっ、そうか……それなら仕方ないな」
「……なぁ小糸」 - 157福丸は俺22/02/12(土) 23:28:10
- 158福丸は俺22/02/12(土) 23:35:19
お待たせしてしまって申し訳ありません!
そして保守ありがとうございます!
今日は日中に時間が取れたのでSwitchで配信されたばかりの某レトロRPGを軽く遊んでいました。
仲間キャラの名前を自分で決める仕様なので、紅一点の名前を「コイト」に設定したんですけど、レトロゲー特有の新しいマップに行ったら急激に敵が強くなるゲームバランスによって仲間になったばかりの小糸ちゃんが最強の防具を持たせているにも関わらず、あっという間に死んでしまいます。
何度時間を巻き戻しても、行動パターンを変えても死んでしまう小糸ちゃんをただ指を咥えて見ていることしかできず、気がついたら夜になっていました。 - 159二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 00:13:55
- 160二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 01:05:32
なんてもん選んだんだお前
- 161二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 01:08:17
1の身の回りのもの全部福丸小糸なのか(困惑)
- 162二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 01:22:36
作曲家ってもしかして……!
- 163二次元好きの匿名さん22/02/13(日) 12:48:38
ぴゃ
- 164福丸は俺22/02/13(日) 22:01:18
「これを機に仲良くなれると良いな!」
「は、はい……! そ……そうですね……!」
「……あ、待ち合わせの時間があるのでそろそろ行きますね……!」
「おう、あまり飲み過ぎないようにな」
よし、楽しく話せたな。
あんなに楽しそうな小糸、久し振りに見たなぁ。
足早に事務所を発つ小糸の背中を見送りながらそう思った。 - 165福丸は俺22/02/13(日) 22:09:52
「……あ、ここだ……!」
待ち合わせに指定された駅の広場。
わたしは余裕を持って20分早く到着しました。
「えっと……まだ来てない……?」
まだ待ち合わせには早いもんね。
会うのは高校以来だから、お化粧とかで分からないのかもしれないけど……。
「…………」
……なんだかドキドキする。
これからよく知らない子と二人で会うから?
それとも……あの頃作れなかった友達が、今日出来るような気がするから?
答えは分からないけど……
──どうか、あの子が来るまでに、この胸の高鳴りが収まりますように。