【SS注意】あるトレーナーとウマ娘の物語の終わり

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:24:20

     桜が舞っていた。
     風が吹く度に枝に縫い付けられていた花弁が力を失い、風に抱かれて落ちていく。今が三月ということを考えると地球温暖化だなんだと心配になるが、ともかく風情はバッチリだ。

     そんな中、トレセンの校門前は多数のウマ娘でざわついていた。
     理由は簡単。先ほど卒業式が終わったばかりなのである。いつものトレセン制服の胸元に、いつものリボンとは別に花びらを付けたウマ娘たちが、ワイワイと話し込んでいた。


    「じゃ行くよー?はい、チーズ!」
    「ちーずっ!……あ、待ってまばたきしちゃったやり直しー!」


    「うう……先輩お世話になったっスぅ~……!」
    「今生の別れってわけじゃないんだから、そんなに泣かないの。あなたは才能があるんだから、私がいなくてもちゃんと走りに取り組んでね?」
    「はいっス!!」


    「あなた、どこの大学行くんだっけ?」
    「K大。ほら、あの心理学に特に力いれてるとこ」
    「あーあそこかー……。レースは続けるつもり?」
    「まさか。もう自分の限界は悟りましたよっと」


     見渡す限り、青春が渦巻いていた。
    『卒業式の1ページ』というテーマにおいて、これをインスパイアしたものを提出すれば平均点以上は狙えそうな光景である。

     そんな、少し眩しい光景を、校門から離れた位置で見つめるウマ娘とトレーナーがいた。
     トレーナーの方は、三年前にトレーナーになったばかりの、特段優秀というわけでもない一般トレーナーである。
     そして隣にいる栗毛の大人しそうなウマ娘もまた、トレセンには掃いて捨てるほどいる一般ウマ娘。

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:26:28

     ウマ娘の名は───いや、言ったところでどうせ知っている者はいないだろう。
     彼女は『最初の三年間』において、重賞レースで一度も勝てなかった、レース界隈においては掃いて捨てるほどいるウマ娘である。

    「……終わっちゃいましたね」

     ウマ娘の方の唇が、小さく動いた。
     覚悟は既にしていたのか、言葉と裏腹に声音に悲壮感はあまり感じられなかった。

    「……ああ」

     目を伏せて答えるトレーナー。
     ……彼女の『終わった』という言葉には、二つの意味があった。一つは青春時代。トレセンで過ごした学校生活が終わってしまったという意味。

     もう一つは───

    「トゥインクルシリーズ……やっと、『楽しいかも』って思え始めてきたとこだったのになぁ……」

     トレーナーと彼女が二人三脚で臨んでいた、トゥインクルシリーズへの挑戦が終わったという意味。

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:28:08

     最初の三年間。
     それはウマ娘の担当を開始したときから課せられる、一種のタイムリミット。この三年間の間に、トレーナーとウマ娘は一定以上の成果を出さなければならない。出せなかった組は、担当契約を解除されてしまう。
     どんな場面でも、必ず最初にたづなさんから説明を受ける、誰でも知っているレースの掟だ。

     そしてその三年間の間に……トレーナーと栗毛のウマ娘は結果を残すことができなかった。
     できなかったから、彼女が高等部の時から始まった契約が、今彼女の卒業と同時に解消されようとしている。戦績によっては、ウマ娘が大学に行ってからもレースの専属契約が続く例もあるそうだが、この二人には無縁のようだった。

    「十八戦ぐらい走って、勝ちは一回だけですかぁ……ひどい戦績ですね」

     諦めたように彼女は笑っていた。
     その手には、一枚の紙切れが握られている。卒業生には皆配られる、トレセン在学中の戦績をわかりやすく纏めた物である。

     この三年間、彼女が一着を取れたのは、未勝利戦での一回だけだった。

     やれることはやったつもりだった。トレーニングにも人一倍取り組んだつもりだった。
     だけど、レースは過程を重視してはくれない。
     善戦しても健闘しても何も意味がない。重要なのは結果だ。結果だけなのだ。



     ワァァァァ、と不意にウマ娘の輪の方から声が聞こえた。
     顔を向けてみると、そこでは一人のウマ娘がチヤホヤとされていた。

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:30:31

     テレビや月間トゥインクルで見たことがあった。選抜レースの頃から才能に溢れていて、GIを何度も勝ち抜いていたウマ娘。
     ……そして、この栗毛のウマ娘の『同期』にあたるウマ娘だった。

     ……初めは、あのウマ娘は目標だった。
     お世辞にも才能があるとは言い難い栗毛のウマ娘にとっては、目標で、憧れで、嫉妬の対象で、ライバル……でありたくて。同じレースに出たこともあった。
     だけど、どんどんと才能と実力を伸ばしていく彼女と、未勝利戦の中でもがいていく栗毛のウマ娘とでは、あっという間に差がついて。次第に『目標』としても形骸化していって。
     最終的に影すら踏ませてもらえず、彼女は次のステージへと進んでいってしまった。

     そして今も───あのウマ娘は、遠くから見つめている栗毛のウマ娘の存在に気づいた様子もなく……そのままウマ娘の輪と一緒に歩き去ってしまった。

    「…………」

     その光景を、栗毛のウマ娘は静かに見つめていた。彼女の瞳にどんな感情が浮かんでいたのか……トレーナーから把握することはできなかった。
     代わりに、ボソリと発せられた言葉があった。

    「私、最近思うようになったんです」

     トレーナーは静かにウマ娘の方を向く。

    「GIを取れるようなウマ娘っていうのは、きっと最初から、そういう星の元に生まれてくるんだって。運命で決まってるっていうか……そういう風にいるんだっていうような。私はどうやら、そんな器じゃなかったみたいです……」

     あはは、と自嘲するような表情になる彼女から、トレーナーは無言で目をそらした。

  • 5二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:33:38

    『そんなことはない』と言いたかった。『君だって頑張ったじゃないか』、『あの選抜レースの日に感じた輝きは、決して嘘じゃなかった』と。
     だが、トレーナーにその台詞を吐く資格はなかった。現に彼は、彼女を導いてやれなかった。彼女を勝たせてやれなかったのだから。
     黙りこくっていると、そんな心情を察したのか、ウマ娘はぶんぶんと手を振った。

    「いえいえ!トレーナーさんは何も悪くないんですっ!ただ私の能力が足りなかっただけで……!むしろトレーナーさんはいつも私のことを考えてトレーニングメニューを組んでくださったじゃないですか!そこは私、本当に感謝してるんです!!」

    「……でも、僕は……」

     顔を上げられないトレーナーにウマ娘は「そ、それにっ!」とスマホを取り出した。

    「トレーナーさんのお陰でっ、私……最後の年に出たGⅢのレースで、三着になることができたんですっ!重賞の舞台で、初めて掲示板に番号も載ったし、ライブだって前で踊れたんですよっ!!」

     スマホには、泣き笑いのような表情を浮かべた彼女が踊っている写真があった。トレーナーが撮り、彼女のスマホへと転送した写真だ。

    「これだって本当は、私には身に余るほどの栄光だったんです。トレーナーさんがいたから、私はGⅢレースで三着になれたんですよっ。このことは、帰ったら妹に一生自慢できますっ!」

     本当に嬉しそうに、彼女は笑っていた。その晴れやかな表情に「……そっか」とトレーナーの心はほんの少しだけ軽くなった。
     彼がようやく笑みを浮かべたことに安堵したのか、ウマ娘はスマホに目を戻した。スマホには、他にも様々な写真があって……それらを見ていると、色々な記憶が蘇ってくる。

  • 6二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:36:43

     初めて未勝利戦を勝って、感極まってトレーナーと手を取り合ったこと。
     レースの前日には決まってトレーナーお手製のカツ丼を食べていたこと。
     商店街でやってた福引きを二人で回して、二人ともティッシュしか当たらなかったこと。
     レースに負ける度にトレーナーと改善点を話し合って『反省ノート』を作ったこと。
     GⅢレースのウイニングライブ中にふとトレーナーと目が合って、アドリブで少し手を振ってみたこと。

    「─────」

     それらを思い出していると。
     彼女の胸に、不意に込み上げるものがあった。体中にとある衝動が駆け巡る。

     ダメだ、するべきじゃない、と理性が叫ぶ。

     当初はこのまま帰るつもりだった。トレーナーには現役中に散々迷惑をかけたのだ。ここで終わる自分と違って、トレーナーにはまだまだこれからがある。彼は来年になれば、どうせ自分のことなんか忘れてまた新しいウマ娘を担当することになるのだ。
     だからせめて、最後ぐらいはスッキリと、何事もなく終わらせるつもりだった。

     だけど、やっぱり。

     目元が熱を帯びたのを、ウマ娘は感じた。

  • 7二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:38:20

    「どうした?」

     トレーナーが呼び掛ける。
     急に彼女が目を伏せ、黙り込んでしまったのだ。心配にもなるだろう。
     だが彼が近寄ろうとした瞬間、ウマ娘が先に動いた。

     スマホをポケットに戻しながら、トレーナーの方へ駆けた。そうして体当たりをするように、そのまま彼の胸に飛び込んだのだ。

    「おっ、おい!?」

     唐突に距離が近くなり、トレーナーが声をあげる。彼女はこんな、大胆にくっついてくるようなタイプではなかった。故に驚いているのだろう。
     それにここは公共の場だ。誰かに見られたら色々と面倒なことになる。
     そう思ってトレーナーは彼女を押し退けようとしたのだが……彼の体は動かなかった。

     栗毛のウマ娘が意地でも離れないと言わんばかりに背中に手を回してきたから───というのもあるが。
     抱き着いてきた彼女の体が微かに震え、嗚咽のような声を漏らしていたからだ。


    「……一着、取りたかったなぁ……」


     胸に、彼女の声が響いた。トレーナーの息が止まった。

  • 8二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:40:53

    公共の場だからってのが理由なあたりトレーナーもかなり一個人として入れ込んでますねえ

    1勝すれば重賞出れる世界だからこの3着も延々と重賞着外し倒してようやく掴んだものなんだろうし
    このつぶやきもそりゃそうだろうなあ……

  • 9二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:41:40

    「……もっと、勝ちたかったなぁ……」

    「…………」

     そんな資格が無いのは百も承知。しかしトレーナーは、無言で彼女の背に手を回した。ほんの少しでもいいから、少女の感情を共に背負ってあげたかったかった。

    「一着のパートのダンス、踊りたかったなぁ……」

     彼女が練習していた光景を思い出す。ずっと音楽をかけて、足の皮がめくれるまで練習し続けていた姿を。

    「一度でいいから、一番人気に推されてみたかったなぁ……」

     レースの前日にはいつもそう言っていたのを思い出す。大抵その後、『どうせ私はずっとドベの人気ですけどねっ』と自虐し、『でもそれぐらいの人気から一着を取ったら、きっと会場の皆さんひっくり返りますよっ!』と空元気を見せていたことも。

    「GIに出て、勝負服を着たかったなぁ……」

     二人で勝負服を考えたことを思い出す。夜遅くまで起きながら、彼女の希望を取り入れ、トレーナーが細部を修正してデザインした勝負服。
     結局それは形にならぬまま、紙切れの上だけの存在として終わった。

    「勝利の栄光を……もっとトレーナーさんにプレゼントしたかったなぁ……」

     トレーナーはウマ娘を更に強く抱き締め、自分の胸に彼女の顔を押し付けるようにする。きっと今の顔は、誰にも見られたくないだろうから。

    「あははっ……私、なんにも返せてないや……。ずっとトレーナーさんに教えてもらって、支えてもらっていたのに……!私はっ、なんにも、なんにもっ……!」

    「……そんなことない。そんなことないよ。僕だって、君に何もしてあげられなかった」

    「優しすぎるんですよ……トレーナーさんは。いっそ……『もっと才能がある娘をスカウトしてれば良かった』とか、そんな風に糾弾してくれた方が、私は───」

     どこか、恨むような声音だった。

  • 10二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:44:09

     彼女は抱き締めていた手をようやく解き、自分の目元をゴシゴシと拭う。
     密着していた体を離し、お互いの体が見える位置まで戻る。彼女の目元は赤くなっていたが、もう涙は見えなかった。

    「……君は、これからどうするんだ?大学、どこに行くつもりだったっけ?」

    「……T大です。私、そこでたくさん勉強して、将来はトレーナーになろうかなって思ってるんです」

    「そっか」

     思わずトレーナーの口許に笑みが浮かんだ。

    「君なら、きっと良いトレーナーになれるよ」

     紛れもない本心だった。そのことを感じ取ってくれたか、彼女もまた現役の時のように屈託なく笑う。

    「はいっ!将来、私と同じような娘を勝たせてあげられるような、そんなトレーナーになってみせますっ!」

    「……ああ。その意気だ」

    「トレーナーになれたら、またトレセン学園に戻ってくるつもりなんです!だから、もしその時に再会できたら……色々教えてくださいね!」

    「わかった」

     そこでようやく、二人揃って笑い合うことができた。……こうやって笑い合えたのなんていつぶりだろう?

  • 11二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:47:07

     気づけば、周りのウマ娘はまばらになっていた。皆話し終えたのか、会場を別に移して更に騒ぎにいったのか。
     どちらにせよ、二人もここに留まる意味は無くなってきた。

    「……それでは」

     まだ名残惜しげな様子を見せつつも、栗毛のウマ娘は一歩後ろに下がった。トレーナーも、右手を軽く上げる。

    「うん。それじゃあ、またどこかで。次に会う時は、お互い立派になっていたいね」

    「はいっ」

    『お世話になりました』と深々と礼をしてから───彼女はゆっくりと去ってしまった。

     その後ろ姿を、トレーナーは手を振りながら眺め続けていた。やがて角を曲がってその姿が見えなくなっても、トレーナーは無心になったように手を振っていた。


     こうして、とある一組のトレーナーとウマ娘の物語は、幕を下ろした。

  • 12二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:49:16

    終わりです。
    ネームドウマ娘が大成する中で歴史の闇に埋もれていくモブウマ娘のドラマって良いよねという作品でした。
    ここまでお付き合いしてくださった方々、ありがとうございました。

  • 13二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:49:43

    とても良かった、何回もこれがでた

  • 14二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:50:49

    最高の作品をありがとう

  • 15二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:52:51

    これもまた、栗毛の彼女の未来につながる話で、終わらずに続いていくんだという希望の話だと思った
    とても良かった。お気に入りにしておく

  • 16二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:53:10

    このレスは削除されています

  • 17二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:54:02

    このレスは削除されています

  • 18二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:55:04

    すみません投稿中にコメント投げない方が良かったね……あと2回も投稿ミスって失礼しました
    さておき選手としては歴史の闇に埋もれながらも、ここで抱いた少しの恨みが遠因で自分が言って欲しかったことを言い放ってしまった教え子やライバルになった恩師と衝突したり、
    皮肉にもそう言う普通じゃないドラマが想いの力を増幅して宣言通りの大成を果たしたりするウマ娘トレーナーの未来が見えるようだ

    あとティアラウマ娘の設定とかが広がった今この話を聞くと以前以上にありそうなやり取りだと思う
    こうしてトレーナーになったウマ娘が自分を担当したトレーナーと鎬を削るなんてこともあるんだろうな
    馬で言ったら名馬とは言えなかったけど名牝として凄いのを送り出した馬のソウルとかそういうの

  • 19二次元好きの匿名さん24/03/05(火) 23:57:56

    心に染みてきた

  • 20二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 00:09:35

    トゥルーエンドとかがある中でのビターエンド味を感じる。こういう雰囲気の作品好き

  • 21二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 00:26:35

    >>13

    読解力が無くて申し訳ないんですけど何回も♡押してくれたってことですかね?ありがとうございます!


    >>14

    ありがとうです!


    >>15

    ありがとうです!まさに『青春時代の思い出』として、これからも続いていくって感じです


    >>18

    正であれ負であれ、この経験はきっと未来で活かされるでしょうね。名選手名監督にあらずの逆バージョンみたいな感じで、もしかしたらトレーナーとしては大成するかもしれません。読んでくれてありがとうございました!


    >>19

    ありがとうです!


    >>20

    ありがとうです!私もそんな感じの終わりが好きなのでこんな感じになりました

  • 22124/03/06(水) 00:47:15

    人によっては蛇足というのは承知の上で、何年後かの栗毛のウマ娘ちゃん視点の超短編を思い付いたのですが、投下しても良いですか?

  • 23二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 00:49:59

    えー、スレ主から続編がもらえるようです
    良SSの続編はなんぼあってもいいですからね(待ってます)

  • 24二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 00:50:01

    >>22

    オナシャス!

  • 25124/03/06(水) 00:53:11

    >>23

    >>24

    ありがとうございます。先にも言った通り、人によっては蛇足となる話なのでご注意を

  • 26124/03/06(水) 00:56:28

    ───数年後


     はーいっ!皆頑張れーーっ!あと一周だよーーっ!!
     こらーー!そこのウマ娘たち手を……じゃない脚を抜かないーーっ!ほらラスト一周なんだから!出し切れーーっ!!

     いよーーしっ、頑張ったねーー!君が一着だ!さ、ゆっくり歩きながら水分補給しといでっ!
     コラ最後尾のそこのウマ娘ーー!一周目の勢いはどうしたーー?このままだと最下位だぞーー!

    「せ、せんせーっ!もういいじゃんたくさんはしったんだからー!やすみたいよー!」

     だからあと一周で休めるんでしょうがー!ほら頑張れーーっ!ここであと一人抜かせるか抜かせないかで変わるぞーー!!
     ……実は先生も若い頃はこのちびっ子クラブで頑張ってたんだから!君たちの大先輩である先生も同じ練習したんだから、君たちも頑張れーー!!頑張れば先生みたいに将来GⅢレースで三着になれるぞーー!!

    「うっそだー!他のせんせーから聞いたぞー!せんせーこないだ初めてこのクラブに来たバイトだってーー!うそつきー!」

     うぐっ。ちっ、バレたか……。

    「どうせじーすりーレースで3着になれたのだってうそなんでしょー!!」

     何を言うかぁっ!!そっちは本当だって!!もう一周増やすよまったく……。


     先生の学生時代唯一の武勇伝にまでケチつけるんじゃないよもう……

  • 27124/03/06(水) 01:00:41

     んじゃ、お疲れ様でしたー。

     はぁー、やっと終わった……まったくちびっ子のウマ娘は元気だねぇ……。あー、肩と腰が痛い……本格化終えるのってヤだなぁ……。

     ……もうこんな時間かぁ。次のシフトは確か明後日だったはずだから……明日は暇かぁ。今夜どうしようかな?
     空いてる友達もいないし……テレビは最近面白いのやってないし……やらなきゃいけないことも……あるけどめんどくさいしなぁ……。

     はぁ……。仕方ないし、たまには近くのコンビニでお酒でも買って一人寂しくネットサーフィンしてようかなっと……。


     ────んん??

     ……えっ、嘘。え??


     ……トレーナー、さん??

  • 28124/03/06(水) 01:04:58

     うわっ、やっぱりトレーナーさんだ!!私です!!ほら、あのっ、トレセン学園の……あっ……覚えててくれたんですか!!
     はい!私は少し髪の毛伸ばしましたけど……あはははっ!トレーナーさんは全然変わってませんね!!あの時のまんまですっ!!
     うわぁ……!まさかこんな所で、こんな形で再会できるなんて……!嬉しいような、それでいて気不味いような……。

     はい。トレセンの卒業式以来ですから……四年ぶり、ぐらいですかね?
     私はまだトレーナーを目指して頑張ってますよ?はい。それで、この間トレーナー試験を受けてみたんですけど……。

     はい、普通に落ちましたね。
     やっぱり壁は高かったです……。トレーナーさんアレに合格してたんですか……?とんでもないですね……。

     それでまぁ……今はフリーターって感じで、ちびっ子クラブのコーチのバイトをしながら、来年の試験に向けて勉強中って感じです。
     はい。トレーナーさんの方は……あ、やっぱり待ってください。こんな風に外で立ち話し続けるのもアレですし……。

     トレーナーさんもお仕事終わりですよね?暇ですよね?
     じゃあこれから一緒に何か食べに行きましょうよ!私カツ丼が美味しい店知ってるんです!
     ……いやもう、あれ以来すっかりカツ丼が好物になっちゃいまして。大事な日の前は必ず食べるようにしてます。お陰で体重もちょっと増えちゃったんですよ?

  • 29124/03/06(水) 01:07:08

    さぁさぁさぁ!早く行きましょうよっ!あの店、お酒も出せるみたいですから!トレーナーさんもきっと気に入りますって!ほら早くっ!

     ……公共の場だぞ?なーに固いこと言ってるんですかぁ!私とトレーナーさんの仲でしょう?それに、私もう子供じゃありませんし!

     ……せっかく再会できたんですから。


     あの頃の話を肴に、一緒に飲みましょう?

  • 30124/03/06(水) 01:08:06

    今度こそ終わりです。
    お目汚し失礼しました

  • 31二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 01:09:48

    いい…とてもすきだ
    ありがとう、つづきを載せてくれて。とても良かったです。

  • 32二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 01:13:50

    いいね……当時は辛い結果に終わっちゃったけど大人になってからは笑い話にできるっていうのがなんかすごく良い塩梅

  • 33二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 01:14:47

    とっても好きだ

  • 34二次元好きの匿名さん24/03/06(水) 01:43:11

    >>31

    ありがとうございます!楽しめたのでしたら本当に良かったです!


    >>32

    ありがとうございます!まさにそれを目指していたので、そう思えたのでしたら良かったです!


    >>33

    ありがとうございます!

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