【ウマトレ♀SS】幼気マイプレシャス

1二次元好きの匿名さん24/03/07(木) 19:46:11

　下ろしていた瞼をそっと開ける。眼前に映るのは穏やかに微笑むトレーナーの寝顔。ゆるりと抱いた体が仰向けに倒れていくのを見て、狸寝入りじゃあなさそうだな、と安堵のため息をつく。
　トレーナーが私の前で眠そうにする、なんてのは、少なくとも一年としばらく前までは考えられないことだった。離れてった柔らかさを取り戻すように、今度は強く抱き寄せながら思い返す。

　迷いは断った、とはいえやることが変わる訳でもなし。トレーナーも、私も気を張り続けていた。トレーニングのために方々手を回す割には、睡眠時間もしっかり確保しているらしいのも相まって、いつ見てもその背筋はキッチリと伸ばされていた。
　だが今はどうだ？いい子ちゃんのド真ん中行くような女が、私の腕ん中でガキみてぇなツラ晒して寝こけてやがる！お昼寝は確かに体に良いけど、アラームかけないのはちょっと……なんてゴネにゴネて、でも私に捕まって抜け出せなくなった途端にコレだ。……気ぃ抜きすぎだろ、ったく。

　きっとさ、私も一緒に寝ちまった方がいいんだろうってのはわかってんだよ。ちっとばっかし明るくても、寝るには悪くねぇ気温だっつうのもあるが。……油断しきった顔なんてのを眺め回されてたって気づいて、気分悪くさせるのも嫌だしな。
　一呼吸して目を閉じようとしたその矢先。トレーナーが寝心地の悪そうに軽く身じろぐ。起こしちまったかとも思ったが、反らせない視界を占有するのは無防備な寝顔のまま。こりゃお手上げだな、とトレーナーが起きた時の言い訳に思いを馳せた。

　結んだ実は、赤く色づく。腰に回した腕から伝わる感触はしなやかで、隙間なく絡めとった距離は狂おしいほどに熱い。指先でくすぐってやればすぐに熱を持つ耳も、滑らかに指の間をすり抜ける癖の弱い髪も。感情が顔に表れやすい故に薄く鍛えられた頬も、寝ていればあどけなく、触れることを躊躇わせる。
　だから、完璧なタイミングで摘み取った赤い果実に、そのまま口を付けらんねぇのは惜しいけど。緩く開いた口元を閉ざすように唇を寄せる。今はまだ腹も空いちゃいねぇし、アンタからの扱われ方に意義を唱えるつもりもない。……ただ、それに限度があることくらいは、そろそろ気づいてくれよ、なぁ？