すみません、ここに来れば

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:25:40

    ※※※


     春の兆しが見え始めた晴れやかな午後。
     中山レース場は熱気に包まれていた。
     最終コーナーを抜けて、13名のウマ娘がゴール板を目掛けて直線を競う。
     先頭の芦毛のウマ娘は、必死の形相で耳を絞り、何とか先着でその前を抜けようとした。

    「セイウンスカイ! セイウンスカイ! スペシャルウィーク!」

     だが、興奮したアナウンサーが叫ぶ通り、先頭のセイウンスカイと呼ばれたウマ娘の左後方からスペシャルウィークと呼ばれたウマ娘が突っ込んでくる。

    「スペシャルウィーク追い込む!」

     続くアナウンサーの言葉の時点で、スペシャルウィークはセイウンスカイと並ぶ。
     ゴール板直前、残り100Mあるかないかという位置だった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:26:02

    「スペシャルウィーク差し切ったぁあっ!!」

     そして、その勢いのままスペシャルウィークはセイウンスカイの半身先に、ゴール板の前を駆け抜けた。
     2人の後、4バ身離れてキングヘイローが僅かに3着へと滑り込む。
     勝者、スペシャルウィーク。
     最終直線から持ち前の根性を活かした加速、追い込み、バ群中段から一気に決めた。
     レース場の大歓声や賞賛の声はこの瞬間に全て彼女へ向けられた。

    「最後はスピカのスペシャルウィークがセイウンスカイを捉えました!」

     自身の勝利に気付き、ゴール後の流しをしながら観客席へと笑顔で手を振る。

    「きさらぎ、弥生で皐月は見えたか!」

     尚も興奮止まないレース場に、アナウンサーの声が響く。
     次が初のGⅠ挑戦となるスペシャルウィークに対し、早くも期待を寄せるようなコメントであったが、それだけ強いレースをしたという証左でもあった。
     彼女の戦績はこれで3勝1敗。その1敗もハナ差での2着であり、誰しもがスペシャルウィークというウマ娘の実力を疑う者はいなかった。
     また、それだけスペシャルウィークが期待されているのは、他にもライバルと言われているセイウンスカイとキングヘイローをこの弥生賞で打ち倒したからでもあった。

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:26:46

    「流石ね、スペシャルウィークさん」
    「あ~あ、後もう少しゴール板が近ければ、私が勝っていたんだけどねぇ~」

     全出走ウマ娘のゴール後の流しが終わり、観客席へとお礼を言い、頭を下げるスペシャルウィークにキングヘイローとセイウンスカイが歩み寄る。

    「あ、キングちゃん、セイちゃん。えっへへー、ブイ!」

     近づいてくる2人に気付き、スペシャルウィークは右手でVサインを見せ、己が勝利を誇示する。
     一見すれば敗者となった者たちへの煽りとも受け取られかねない行為だったが、彼女の人柄を知っている2人はそういう意味での行為ではないと気付いている。
     互いに目くばせをした後、勝者であるスペシャルウィークへと素直に拍手を送る。
     それから拍手を受けて気恥ずかしそうに後頭部を掻いて照れる彼女へと、キングヘイローが一歩前に出る。

    「今回は完敗よ。けれども、次の大舞台では負けない。GⅠは、皐月賞は私が頂くわ」
    「キングちゃん……わ、私だって、次も負けませんよ!」

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:27:11

     黄金世代。そのクラシック三冠の路線を選んだ3名。
     スペシャルウィーク。セイウンスカイ。キングヘイロー。
     皆はこの3人をライバルと捉え、クラシックレースの盛り上げに一役を買う起爆剤として活躍に期待を寄せた。
     その3人の内の2人が改めて、ライバル宣言とも呼べる言動を見せる。互いに握手を交わすところを見た観客たちは、レース直後と同じように盛り上がったのは言うまでもなかった。
     そんなスペシャルウィークとキングヘイローに対し、セイウンスカイはやや距離を取りつつ両手を上げて後頭部で組む。

    「はぁ~。セイちゃんとしては困っちゃうな~。スぺちゃんにキングちゃん。こりゃまた強力なライバルが現れたものです」

     そう軽口を叩きながら、2人に背を向けて控室へと向かう通路へと歩いていく。
     2人に聞こえるような声量だった為か、スペシャルウィークもキングヘイローも去っていくセイウンスカイへと視線をやり、それぞれ声を掛ける。

    「あら、スカイさんもこのキングヘイローの強力なライバルよ。次の皐月賞、あなたにも負けないのだから」
    「今回は勝たせて貰ったけれども、セイちゃんも強いから、次も負けないように私も頑張るよ!」
    「やれやれ。本当に困りますなぁ~。2人とも熱意に満ちて、近づくだけで火傷しそうですよ」

     そんな2人にセイウンスカイは更に軽口を重ねながらも右手を挙げて二人に手を振り、「セイちゃん疲れちゃったので先に休みますね~」と通路の奥へと消えた。

  • 5二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:27:31

    「セイちゃん、大丈夫かな?」
    「一度や二度の敗北でへこたれる程、スカイさんは弱いウマ娘ではないわ。それよりも、次こそは私がセンターで──」

     未だ興奮冷め止まぬレース場を後にし、2人のライバルの言葉が遠のき、残るは自身の足音のみとなった場所で、セイウンスカイは立ち止まる。
     眉根を寄せ、歯を噛みしめたその顔は、誰が見ても口惜しいそうと思われるものだった。

    「きさらぎ、弥生で皐月は見えたか、か」

     そして、自身の指先の爪が喰い込み、手の平に血が滲むのも構わず、彼女は先程のアナウンサーのコメントを口にした。
     その後、長く続く息を吐き、不敵な笑みを浮かべてセイウンスカイは再び歩みを進める。

    「そんなの、面白くない」

     彼女のその瞳には、雲一つない晴天の青空を想起させる炎が、宿っていた。

    「面白くないよね」

     ──GⅠ 皐月賞 まで、後42日。

  • 6二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:27:52



    ※※

    ※※※


    The WINNER

    GⅠ 皐月賞

    そのウマ娘は、フィジカルも、メンタルも──そして、血統も、優れているとは言えなかった

    だが彼女は、ありとあらゆる「策」を以てして、他を翻弄して魅せた

    「青空の逃亡者」

    「芦毛のトリックスター」

    その、ウマ娘は──


    次回、ウマ娘Call me KING 「皐月の空」

  • 7二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:28:17

    …みたいなウマ娘SSが見られると聞いてやってきたのですがありますかね?

  • 8二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:29:29

    ううんどういうことだ
    ……レース描写マシマシなSSってことか?

  • 9二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:31:23

    JRAのCMをモチーフにしたウマ娘SSがみたいってこと?

  • 10二次元好きの匿名さん24/03/10(日) 19:32:13

    >>8 >>9

    はい

    ありそうかなって思いまして(ついでに脳内イメージ整理の為の文字起こし)

  • 11二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 00:53:56

    このレスは削除されています

  • 12二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 07:29:16

    探して見ましたけど無さそうですし、需要も無いみたいっスね
    失礼しました

  • 13二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 08:22:31

    BLUE SKY
    お前は今どこで何をしている…

  • 14二次元好きの匿名さん24/03/11(月) 18:10:16

    あげ

オススメ

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