- 1二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 19:39:04
「ほらほら、トレーナーさん。ぼちぼち焼けてきましたよ」
「わ、わかった……」
とある休日。わたしヒシミラクルは、トレーナーさんと一緒にお好み焼き屋さんを訪れていました。
なんでもトレーナーさん、お好み焼きを焼く技術を磨きたいんだとか。
理由は……まあ大体察しが付くので、あえて聞かないでおきましょう。
お互いに一枚ずつお気に入りのトッピングをチョイスして、具材の入ったボウルが運ばれてきたのがついさっきの話。
なんでもない雑談をしつつ、たっぷりと空気を含んで混ぜ合わせたタネを、熱々の鉄板に投入して今に至る、といったところ。
「いや~。ひっくり返すのって緊張しますよね~、分かります分かります」
「セミプロでも緊張することってあるのか?」
「当たり前ですよぉ。まぁ、成功する自信はもちろんありますけどね」
ふふん、と鼻を鳴らす。
トレーナーさんは「へぇ」と感心しつつ、両手にコテを構えていました。
「頑張れ~。高みから応援してますよ~」
「いくぞ……。よっ! ……ああっ!」
「ありゃ~。ちょっと割れちゃいましたねぇ」
なんとかひっくり返りはしたものの、勢いが足らなかったか、そこには一角が欠けてしまったトレーナーさんの作品が。
露骨にしょんぼりするトレーナーさん。普段はあんなに頼りになるのに、なんだか子犬みたいで可愛いですねぇ。
「まあまあ、このくらいなら十分リカバリー出来ますし。お腹に入れば変わりませんから」
そんな感じでフォローしつつ、私の分も……よっ、と。
「おお……」と感嘆するトレーナーさん。
どうですか? これがお好み焼きセミプロの実力ですよ。 - 2二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 19:39:17
「やっぱり思い切りが大事なのかなぁ」
「そうそう。中途半端だと、さっきみたいに下が折れちゃいますし。コツは手首のスナップですかねぇ」
「スナップか……。そうだ!」
……あの、なんでそんな『トレーニングに活かせそう!』みたいな顔してるんです?
お好み焼き焼いてて閃くなんて、どんな柔らかい頭なんですか……。
「仕事熱心なのもいいですけど、まずは目の前のお好み焼きを食べましょうかねぇ。お互いのお気に入りですし、折角だからちょっと分けません?」
「え、でも俺のお好み焼き、ちょっと崩れちゃってるぞ?」
「まあまあ。こうやってセミプロの味を覚えるのも勉強ですし」
「そうか……。俺としてはありがたい限りなんだが……なんだかちょっと申し訳ない気もするな」
「それじゃあ、その申し訳なさは次回、次次回で晴らしていただくということで」
なんて、しれっとこれからのお出かけの約束なんてしてみたり。えへへ。
ま、あくまでもトレーナーさんの特訓に付き合うっていう体ですけどね。
「さあさあ、出来立てあつあつなうちに食べちゃいましょう。いただきま~す」
「いただきます」
ちょっと不格好な、トレーナーさんのお好み焼き。
でも、失敗したって大丈夫だって、トレーナーさんが教えてくれたから。
ふー、ふー、と、火傷しないくらいに冷まして、口に運ぶ。
「うん、大丈夫。ちゃんと美味しいですよ」
照れ笑いを浮かべつつ、トレーナーさんも私のお好み焼きを一口。
……出来れば、お好み焼きを焼くのがうまくなっても、こうやって一緒にお好み焼きをつつき合えると幸せなんだけどなぁ……。 - 3二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 19:40:30
- 4二次元好きの匿名さん24/03/12(火) 19:54:03
好き(ド直球)
何気ない事から感じる幸せって良いですよね
ありがとうございます