獅子の首領は新潟千直の夢を見るか？

1二次元好きの匿名さん21/09/04(土) 15:01:43

新潟芝1000。驀進特別。私を含めた16名のウマ娘がゲートに入る。私は15番人気。それはそうだ。前回と前々回でビリをとった2勝レベルのウマ娘を見るファンなんてそうそういない。
…多少は凹むけど。でも仕方ない。そう自分に言い聞かせる。
ここまでの敗北には私の決定的な欠点が災いしていた。

コーナリングが壊滅的に苦手で、コーナーで減速してしまうのだ。何度トレーナーさんと試行錯誤してもこれだけはなかなか上達しないままクラシックシーズンを終えてしまった。その中でトレーナーさんは私にこんな提案をしてきた。「これからは直線競バを重点的に出走しないか。」と。
最初は私も流石にそれは…と思ったが、この状況で短距離G1出走を見据えた話をするのも無理な話だと考えた。高松宮記念のある中京レース場とスプリンターズステークスのある中山レース場、どちらも序盤でカーブのあるレース場だ。コーナーが苦手なウマ娘のごまかしがきかないレース場だ。だったら今までの2勝距離である1000m、直線競バで3勝目をあげるのが第一優先事項というのは理にかなった話だろう。

スタート前。心臓が鳴る。私は今見ている観客には端役に見えるかもしれない。でもここでの私は違う。直線でのスピードは誰にも負けないつもりだ。トレーナーさんと準備もばっちりしてきた。今日はイケる。そういう確信が初めてレース前にできた。

ゲートが開いてウマ娘達が一斉にスタートする。私は走った。他のウマ娘を突き放すようにひたすら加速し続けた。冷たい風が頬に掠める。後ろは振り向かない。ただひたすらにこの真っ直ぐな道を駆ける。残り100m。イケる。これならイケる。勝てる、私は勝てる！！

『大楽勝だ！ライオンボス、ゴール板を駆け抜けた！これは見事な走り！ライオンボス！これは鮮やかに直線を駆け抜けました！！』

勝った。3勝目だ。5バ身差での勝利だ。トレーナーさんが手を挙げて喜んでいる。冷めやらぬ興奮とレース後の疲れのせいか手が震える。初めての感覚だ。我ながらこれは自惚れた考えだとも思うが、まるでここは私の走るために用意された場所であったかのようだ。そう思いながら私はトレーナーさんの元へ駆け寄った。

__彼女の名前はライオンボス。後に「千直王者」と呼ばれるウマ娘である。