【SS】衷心なりし我が慕情

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:26:39

    「がっ…!?」
    机の足に引っかかり盛大に転倒する。
    幸い通学鞄が下敷きになり大事には至らなかった。
    「大丈夫ッスかヤエノ!」
    「え、えぇ…ご心配には及びません。」
    「…いや、心配するッス。最近のヤエノ、少しおかしいッスもん。よく階段で足を踏み外しそうになったり、昨日は戸が空いてないのに廊下に出ようとしてそのまま激突してたし…」
    最近の失態が想起される。階段を踏み外しそうになった際、度々バンブーさんやフジさんに助けて頂いたこと。昨日、戸が閉まってることに気付かずそのまま激突し、鼻血を出してしまったこと。
    「もしかして何か悩んでたりしてるんじゃないッスか?良ければ相談に乗るッスよ!」
    「…お心遣い、感謝致します。ですがこれは己の問題。自ら解決します故、お気になさらず」
    そう、これはあくまで己の問題。余人に相談すべき内容では無い。
    「やっぱり何か悩んでたッスか…まぁヤエノがそう言うなら無理にとは言わないッス、ただ本当にどうしようもない時は気にせず相談してくださいッスよ!」
    「…ありがとうございます。」

    バンブーさんに別れを告げ、教室を後にする。
    一方で、心に覆い被さった憂いは徐々に広がっている。まるで逃げ場を塞ぐ炎の様に。
    「…くっ…!修行が足りぬ…惑わされるな…!」
    校舎から飛び出し無我夢中で走り出す。
    焦りの様な、しかし何処かで恐怖している様な感情。
    何故このような想いに駆られるのか、何故こんなにも焦燥しているのか、
    先日見たあの光景のせいだろうか

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:28:15

    その日は日用品を揃えておく為に1人で買い出しに出た日だった。
    買い物を済ませ帰路に着く途中、偶然トレーナー殿を見つけた。
    「ト─」
    呼び掛ける寸前で出そうとした声が喉に戻ってきた。
    トレーナー殿の隣に女性の姿があった。まだ幼げが残った、それでいて麗らかで私とは対照的な穏やかなその女性は楽しそうにトレーナー殿と並んで歩いていた。
    どれ程の時間呆気に取られていただろう。
    気付けば2人はもう何処にもおらず、唯1人で立ち尽くしていた。

    その女性は誰ですか?
    疑問がふつふつと湧き出てくる
    お二人で何をしていたのですか?
    身体が熱に包まれる
    トレーナー殿は─どうして凄く嬉しそうな顔をしているのですか?

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:29:28

    気付けばいつもの河川敷にいた。
    荒い呼吸を整え、『形』を演じる。
    冷静さを欠いた脳が段々と落ち着いていく。
    「……フゥ……」
    自分は何に焦っているのか、恐れているのか、大方見当は付いている。あの女性がトレーナー殿の想い人だと早合点し、浅ましく嫉妬しているだけなのだ。挙句の果てに自分は拒まれたのでは無いかと勝手に恐れている。なんと愚かな事だろうか
    仮に想い人であったとして私に干渉する権利などあるはずも無い。トレーナー殿が誰を愛そうとそれはトレーナー殿の自由なのだから

    ─本当に?
    「ッ…!」
    いつかの様に激情がそう問うてくる
    私の『烈火』への迷いを断ち切ってくださった
    私の全てを受け入れ支えてくださった
    私を─曇りなき瞳で信じてくださった!
    その瞳が私以外に向けられている!!
    「…ァァァァアアア!!」
    何故貴方は幸福そうな顔をしていた!!
    何故貴方は私以外を見ていた!!
    何故だ!!
    何故!!!

    「何故ッ……!」

    眼前が涙で霞む。『形』はとうに崩れ、その場に座り込む
    身体が震えている。先刻までは業火の様な熱さだったのに今は冷たい何かに身を縛られている
    それは幼き頃に感じた孤独感に近かった

    「ヤエノ!」
    聞きなれた声がした

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:30:05

    「…落ち着いた?」
    「…はい」
    トレーナー殿に声をかけて頂いた後、私は暫く泣いていた。それがどのような感情から来るものだったかはわからない。その間、トレーナー殿は何も言わず傍に居てくれていた。
    「少し座ろうか」
    2人で土手の上に座る。日は既に沈みかけ、空は黄金色に染まっていた
    「トレーナー殿は何故此処に…?」
    「何回か連絡したんだけど繋がらなかったからさ、もしかしたらここで修行してるのかなって思って」
    通学鞄から携帯を取り出す。通知には何件かメッセージが来ていた
    「…申し訳ありません。お手数を掛けてしまい…」
    「いや、大丈夫だよ。…何かあったなら聞かせて欲しい」

    「…スゥー…フゥゥーー……」

  • 5二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:30:41

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  • 6二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:30:56

    「…先日、買い出しに行った際、トレーナー殿が女性の方と並んで歩いておられるところを見ました。その…あの女性とはどういう関係なのでしょうか」
    「…へ?………あっ」
    「…」
    「…妹です」
    「……ゥゥゥゥァ……」
    「ヤ、ヤエノ?」
    想定外の台詞に項垂れる。散々激情に振り回された挙句、結局のところただの早合点であった
    そしてこの事に何処か安堵している己が居ることにも腹立たしい。
    「……なんかゴメン」
    「……いえ、違うのです。全ては己が未熟であるが故招いた事。…貴方が女性…妹殿と歩いておられる所を見た際、我が身は…嫉妬の炎で燃え上がりました。そしてそれと同時に…とても恐ろしくなりました。もし貴方が私を拒んだのならと思う度、孤独を感じてしまうのです。」
    「……」
    「…情けない話だ。己が烈火に振り回され、トレーナー殿と離れる事が何よりも恐ろしく感じている。……私は貴方にどうしようもなく焦がれてしまった。」
    目頭が熱くなる。愚劣でどうしようもない己の本音。叶わぬ物と解っていながら口に出さずにいられなかった

  • 7二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:30:58

    このレスは削除されています

  • 8二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:34:20

    「……これ、受け取って欲しいな」
    「……これは?」
    「開けてみて」
    手渡された紙袋の中には彩やかなマカロンと可愛らしいクマのぬいぐるみが入っていた
    「今日、ホワイトデーだからさ、そのお返しで用意したんだ。ただ、どういうものが良いのかわからなかったから妹とかに相談したりして選んだんだ。……もしヤエノが許してくれるなら、この先も俺に君を支えてさせてくれないか?」
    いつか見た曇りなき瞳、それは今まで変わることは無かった。
    「……はい」
    そう言うと彼はいつか見たようなとても嬉しそうな顔を浮かべた。
    「さっ、帰ろう!明日はトレーニングだからな!忘れないように」
    「─トレーナー殿」
    「ん?」
    「……もう暫く一緒にいてもよろしいでしょうか」
    「………わかった!」
    「…ありがとうございます、トレーナー殿」
    マカロンを1口頬張る。とても優しい味がした。

  • 9二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:34:58

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  • 10二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:35:36

    このレスは削除されています

  • 11二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:36:49

    良い

  • 12二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:37:28

    おしまい
    ここまで読んで頂きありがとうございます。
    大変申し訳ないのですが暴言と判断できるものは削除させていただいております
    改めてありがとうございます

  • 13二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:38:25

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:38:34

    好き

  • 15二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:39:57

    このレスは削除されています

  • 16二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:42:32

    このレスは削除されています

  • 17二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:48:33

    なんで荒れてるかは知らんが良いSSだったと思うぞ
    ヤエノの作品はあんまり見かけないから嬉しい

  • 18二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:49:41

    このレスは削除されています

  • 19二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:50:14

    ヤエメロすこ

  • 20二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:50:25

    幼少期ヤエノみたいな気質してるやつ居て草

  • 21二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:50:52

    渡したプレゼントがマカロンなのも良いね

  • 22二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:51:00

    スレ主まだいる?5、13、16も多分感想じゃなくて荒らしだよ
    ヤエノの内面の激しさと恋してる可愛さが両立してて良いSSだったよ

  • 23二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:51:03

    >>20

    一緒にしちゃだめだぞイメ損だぞ

  • 24二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:54:36

    や、なんか23時あたりからssスレに粘着するアンチがいるっぽいんだよね、スレ主気にしないでね

  • 25二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:55:05

    勘違いで嫉妬しちゃうヤエノはかわいいね

    ただ一つだけ…ヤエノのセリフの終わりに句点があったりなかったりするのは意識的にですかね?ヤエノ持ってないから台詞周りの部分がわからなくて…

  • 26二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:56:10

    >>22

    はい、おります。すいません。一応内容的には本文を見てくれていてその上での指摘なのでスルーしておきました。ただまぁやはり気持ちよく思わない方もいるかもしれないので対処しておきます。失礼しました

    改めて他の皆様も見て頂きありがとうございます

  • 27二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:56:30

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん24/03/13(水) 23:58:49

    このレスは削除されています

  • 29二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 00:04:44

    応援スレに推薦してもおK?

  • 30二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 00:05:19

    このレスは削除されています

  • 31二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 00:05:55

    嫉妬に狂うヤエノはかわいいもっと見たい

  • 32二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 00:07:11

    わんこやなぁ…

  • 33二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 07:34:13

    >>25

    返信がだいぶ遅れてしまいました

    句点多いと見づらい気がして意図的に減らしていました。ですが逆に混乱を招いてしまったようです。次からは統一するなりして気をつけます

    ありがとうございます

    >>29

    推薦ありがとうございます!

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