【SS・トレウマ注意】フレームイン

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:48:11

    トレーナーさんは凄い人だ。ジュニア級時点で大したことのなかった私の走りを開花させ、偉大な先輩方や強力な同期達と競えるほどにしてくれた。それで新人だというのだから驚きだ。感謝してもしきれない。この人抜きなど考えられない。だから、それ以外の可能性を無意識に除外していた。これからの競技人生はトレーナーさんと一緒にずっと歩いていくのだと思った。思っていたのに。

    「ダンツ、決めたよ」

    素晴らしい成績を出すごとに、トレーナーさんへの注目度は上がっていく。優秀なトレーナーに担当してもらえば自分も強くなれる。トレセン生であればそう考えるのは自明の理だ。トレーナーさんの担当を希望するウマ娘はどんどん増えていった。その需要に答えるように、トレーナーさんはチームを作って気になるウマ娘を受け入れていく。
    それは喜ばしいことだ。トレーナーさんのキャリアを考えれば、良いウマ娘を育てていくのはメリットしかない。入る報酬は増える。名声も手に入る。順風満帆ではないか。何も問題はない。トレーナーさんの事を思うなら、背中を押してあげるのが最良の選択肢。なのに…

    「どうして…」

    トレーナーさんが他のウマ娘と二人三脚で目標に向かうのを見るたびに。トレーナーさんと私との時間が減っていくたびに。モヤモヤとしたモノが私の心を犯していく。その正体は単純明快。トレーナーさんが私の担当であるという自負。そのトレーナーさんが他者に向ける熱量への嫉妬。そんなどうしようもない負の感情だ。

    「私、最低だ…」

    なんという我儘。なんという自分勝手。そんな自己中心的で醜い自己衝動で、トレーナーさんを縛ろうというのか。おこがましいにも程がある。だから迷惑をかけまいと、その感情を押し殺して過ごしてきた。それを悟られないように、細心の注意を払いながら接してきた。でも、この独占欲は際限無く膨れ上がっていく。だから少しでもそれを発散しようと、トレーナーとの時間を少しでも作ることを考えた。
    ある日の放課後、二人になったタイミング。パソコンとにらめっこしているトレーナーさんの隣に座る。画面を見る限り、今度の重賞レースの情報収集だろうか。作業が落ち着いてきたタイミングで話を振ることにした。

    「トレーナーさん、来週の休日なんですけど…」

    「ごめん、その日は…」

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:49:40

    中々話が纏まらない。トレーナーさんは多忙だ。忙しいのは分かっている筈なのに、トレーナーさんが遠くなっていく感覚がした。胸の疼きに耐えられず、私はトレーナーさんの肩により掛かる。

    「…ダンツ?」

    それに気づいた彼は、少し驚きつつこちらを見つめた。心配の色が入った目線に耐えられず、私の口は語る気の無かったことを紡ぎ出す。


    「本当は…」

    本当は、トレーナーさんには私だけを見てほしい。後輩達やチームメイトは大好きだ。トレーナーさんのウマ娘レースへの熱意は知っている。より多くのウマ娘を担当するのがトレーナーさん…ひいてはレース界の為になると分かっている。それでも、貴方にとっての一番になりたい。押し殺していた感情の吐露をトレーナーさんは黙って聞いている。
    トレーナーさんももう分かったと思うんですけど、私は言うほど良い子じゃないんです。そんなしょうもない嫉妬をしてしまう悪い子なんです。だから失望されたってしょうがない。そんな醜い自虐を免罪符にして、拒絶されてしまうって怯えながらも、こうして話すのを止められない。

    「ダンツ…」

    一通りの本心を吐いた後、トレーナーさんが口を開く。

    「…君の思いに全て答えることはできない」

    「…はい」

    当然の答えだ。子供の癇癪に全て付き合うことなんてできない。分かっていた筈だろう。それでも、目尻に溜まる涙を我慢できなくて。掠れた小声で返事をすることしかできなくて。今にも泣き出しそうになっていると、トレーナーさんが更に言葉を紡いた。

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:50:00

    「でも、ダンツは私の一番だ。それはずっと変わらない。」

    「…え」

    「そして、もし君が大人になってもその気があるのなら」

    ちょっと待ってほしい。話がおかしい方向に行ってないだろうか。だって、それはまるで生徒に告られた先生みたいで。そこまで考えが至って、改めて自分の発言を振り返ってみる。ああ、どう考えても熱烈なラブコールだ。そして、それに対してのトレーナーさんの返事は肯定的。これって、もしかしなくても…

    「あう……」

    顔が火傷しそうなくらい熱くなって、私は意識を手放した。そこから先は覚えていない。ただ分かるのは、暫くの間トレーナーさんの顔をまともに見れなくなったことだ。

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:50:33

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  • 5二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:51:51

    以上です。ダンツは湿度ありそうだなと思ったので

  • 6二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 17:55:00

    すき

オススメ

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