【SS】金細工師〜オカンと暴君と、時々、オンナ〜

1二次元好きの匿名さん24/03/14(木) 23:04:27

「かーちゃん、とーちゃんは？」
「風呂に入った所だ。貴様ももう大きいのだから一人で寝るがよい」
「なんでまた体操服着てんの？」
「ただの体型チェックだ。昔の名選手に取材が来る事も稀にあるのでな。王が無様に弛んだ姿を衆目に晒す訳には行かぬ」
「かーちゃんが学校いたのっていつ？」
「10年前までだ」
「体操服いらなくなったのは？」
「……10年前だな」
「なんで体操服新しいの」
「疾く寝よ」

　布団を温めながら待つ事しばし、“とーちゃん”が寝室に現れた。

「あの子はもう寝た？」
「さっきな。……待たせおって」
「申し訳無い、我が君。今宵も美しい」

　手を取って甲から口づけると顔に、腕に、脚に赤みが差してゆく。湯上がりのように石鹸と肌の匂いが立ち、とーちゃんの口元も綻んだ。
　その手を取り返して布団に引きずり込み、枕元のリモコンで照明を消せば、月明かりの中に白い前髪が映える。

「今この場は王でも母でも無い」
「そうだな、オルフェ」
「○○○……」

　暴君の鎧を脱ぎ捨てて。
　母親の荷を肩から下ろし。
　一人の女としての言葉を知る者は、この世にただ一人。