【SS】白色情人節

  • 1二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:14:51

    冬が終わり、午後の教室では春を告げるようなぽかぽかと暖かさに包まれる中。私は、教室にある時計ではなく新品の腕時計で時間を確認しつつ、頭の片隅で早く放課後にならないかなと想いながら授業を受けていた。
     
     今日は3月14日、白色情人節、いわゆるホワイトデー。バレンタインデーで女性から貰った物を男性がお返しをくれる日。なのだけど、日本独自で発祥した日で日本だけの習慣。そういう理由で、香港育ちの私には縁がなく、初めて迎える。
     
     といっても、私の誕生日が3月10日でその時にトレーナーからは誕生日プレゼントと、後日ディナーをご馳走してもらったの。そのディナーの帰りに彼から、14日少しの間でもいいから空けといてくれと頼まれていた。
     
     私的にはバレンタインデーで花束も貰って、この度の誕生日を祝ってもらい、もう十分気持ちを頂いたので無理しないで言ったの。けれど、日頃の感謝と君にとって、初めてのホワイトデーだから、無理しない範囲で頑張るから楽しみにしていてと言われたわ。
     
     そんなこと言われたら、期待せずにはいられない。おかげで、午後に入ってからの授業は早く終わらないかなって、時間を気にしながら過ごしている。
     
     もう、マジックは私の得意分野なのに、誕生日の日からトレーナーがかけるマジックに夢中になってる。いったい、いつの間にかマジックが上手くなったのかな。 

     そんな状況の自分に苦笑しつつも、彼と過ごす午後のひと時はどんな物になるのか楽しみで仕方がなかった。

  • 2二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:16:03

    ようやく、授業が終わり、放課後。少しだけ早足気味でトレーナー室に向かう。実は今日は、シュヴァルの誕生日でもある。私と同じ誕生日であるキタサンとの合同誕生日パーティを開いたように、シュヴァルの誕生日パーティも夕食も兼ねて開く予定。その為、今日はトレーナーと一緒にいられる時間がわずかしかない。
     
     だから、私はいつもよりも早くトレーナー室のドアの前に到着する。部屋をノックする前に、1ヶ月前のバレンタインのことを思い出す。あの時はチョコを渡すのに緊張して凄くドキドキしていたけど。でも、今日は、彼がどんなことをしてくれるか楽しみでワクワクする気持ちで扉をノックする。
     「はい、どうぞ」

     部屋の中からいつもの返事を聞いて、部屋に入る。
     
    「你好、トレーナー!」

    「こんにちは、クラウン」
     
     部屋に入ると目についたのは、机の上にある青色と白色の藤を逆さのように咲かせている花がフラワーアレンジメントとして飾られていた。

  • 3二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:16:50

    「驚喜!トレーナー、これってルピナスよね。私の為にありがとう」

     「どういたしまして。君に喜んでもらえて、準備した甲斐があった。そのアレジメント、帰る時に持って帰ってね」

     「好!  ありがとう、トレーナー」
     
     再三にわたってお礼をいう。この藤を逆さに咲いた花、ルピナスは私の誕生花にあたる花になる。この日に合わせて、トレーナーが飾ってきてくれたことが嬉しくて堪らない。 
     
     「さぁ、クラウン。そこに座って、ホワイトデーのお返しの持ってくるから、待っててね」

     「えぇ、分かったわ」

     そうして、ルピナスのアレジメントを前にしながら机に座る。ホワイトデーだから、どんなお菓子が来るのかな。私も調べたけど、彼もきっと、お菓子のお返しの意味は調べ済みのはず。マカロンやキャラメルだといいのだけども……。
     淡い期待を胸にしながら待っていると、トレーナーがついにお菓子を持ってきた。

  • 4二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:17:29

    「Wow!!」
     
     トレーナーが私の前に置いたのはなんと、私の故郷の香港のお菓子、エッグタルトだったことに思わず驚いてしまう。

    「驚訝!!トレーナーさんがエッグタルトを用意してくれるなんて」

    「君にとって初めてのホワイトデーだから、君に馴染み深いお菓子を用意した。……一応、手作りから、味にはあまり期待しないでくれ」

     「フフッ、もうトレーナーは。貴方が用意してくれたことが嬉しいの。それにあなた、お菓子作りができるなんて凄いじゃない」

     彼が少し自信なさげに言うものだから、私はそんな心配はないのにって伝える。
     当然ながら、日本に馴染み深いお菓子ではないエッグタルトにお返しの意味はない。それでも、彼は私を気遣って、私の為だけに用意してくれたという想いがさらに嬉しさを加速させる。

     「それじゃあ、いただくわね」

     私はそうしてて、一口、二口とエッグタルトを口にする。

     「……うん、美味しいわ。手作りでこの味なら、いい線いっているわ」

  • 5二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:18:30

    「君が気に入ってもらえたら何より嬉しいよ」
     
     トレーナーは私がエッグタルトを食べた感想を聞いて、ホッと安堵する。安心したのか、彼は私の腕時計を見て、

     「あっ、今日は付けて来たのか腕時計」

     「えぇ、そうね。だって、私とあなたのホワイトデーだからね」

     トレーナーは私の付けている腕時計に嬉しそうに言及する。
     その言葉に私は彼に見せるように時計を誇示する。この腕時計、トレーナーが私の誕生日プレゼントとして渡したものである。
     実は小物や装飾品のプレゼントにも隠されたメッセージがある。
     腕時計の場合、それは──





       『あなたと同じ刻を刻んでいきたい』

  • 6二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:22:48

     そうして、シュヴァルの誕生日会が始まるまでの一刻、トレーナーと楽しく過ごし、忘れられない日になった。

  • 7二次元好きの匿名さん24/03/15(金) 20:25:48

オススメ

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